IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノートン ウォーターフォードの特許一覧

<>
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図1
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図2
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図3
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図4A
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図4B
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図5
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図6
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図7A
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図7B
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図7C
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図7D
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図8
  • 特許-電子機器を有する薬送達デバイス 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電子機器を有する薬送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20240611BHJP
   G16H 20/13 20180101ALI20240611BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
G16H20/13
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021568726
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020063741
(87)【国際公開番号】W WO2020234201
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】62/849,552
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン オリべラス,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】バック,ダニエル
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526445(JP,A)
【文献】特表2017-525511(JP,A)
【文献】国際公開第2018/091678(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236187(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
G16H 20/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
プロセッサ、通信回路、および、メモリを備える外部デバイスと、
マウスピース、薬剤、機械式投与カウンタ、および、電子モジュールを備える吸入器と、を備え、
前記電子モジュールは、プロセッサ、および、通信回路を備え、
前記電子モジュールの前記プロセッサは、投与イベントを記録し、当該投与イベントに関連付けられた信号を前記外部デバイスに送信するように構成されており、
前記外部デバイスの前記プロセッサは、
前記機械式投与カウンタの機械的投与値を決定し、
前記投与イベントに関連付けられた前記信号に基づいて電子的投与値を決定し、
前記機械的投与値と前記電子的投与値との間の不一致が閾値を超えることを判定し、および、
前記不一致に基づいて、ユーザ、前記吸入器の製造会社、または、ヘルスケアプロバイダー(HCP)に通知を提供するように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記機械式投与カウンタは、前記吸入器の作動に基づいて減分するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記吸入器は、マウスピースカバーを備え、
前記電子モジュールの前記プロセッサは、前記マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされて前記マウスピースを露出させるとき、前記投与イベントを記録するように構成されており、
前記機械式投与カウンタは、前記マウスピースカバーが前記開位置から前記閉位置へ動かされて前記マウスピースを覆うとき、減分するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記吸入器は、さらに、当該吸入器を通る空気流を測定するように構成されたセンサを備え、前記電子モジュールの前記プロセッサは、前記センサからの測定値が閾値を超える流量を示すとき、前記投与イベントを記録するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記外部デバイスの前記プロセッサは、前記機械的投与値を決定するために、前記ユーザまたは前記製造会社の技術者に、前記機械的投与値を前記外部デバイスに入力するよう促すように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記外部デバイスの前記プロセッサは、前記機械的投与値を決定するために、前記外部デバイスのカメラを使用するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記外部デバイスの前記プロセッサは、前記電子モジュールから受信する前記投与イベントに関連付けられた信号毎に、前記電子的投与値を減らすように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記電子モジュールの前記プロセッサは、記録された投与イベントに基づいて前記電子的投与値を決定し、当該電子的投与値を前記外部デバイスに送信するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記外部デバイスの前記プロセッサは、当該外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションによって、前記吸入器の1つ又は複数の発光ダイオード(LED)を点灯することによって、または、前記吸入器のまたは前記外部デバイスのスピーカを通して可聴信号を出力することによって、前記ユーザに前記通知を提供するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記吸入器は、さらに、当該吸入器を通じた吸入の特性を測定するように構成されたセンサと、前記電子モジュールの電力状態を変化させるように構成されたスイッチと、を備え、
前記電子モジュールの前記プロセッサは、前記センサからのフィードバックに基づいて第1の投与イベントを記録し、かつ、前記スイッチの作動に基づいて第2の投与イベントを記録するように構成されており、
前記外部デバイスの前記プロセッサは、前記機械的投与値と前記第1の投与イベントを用いて計算された電子的投与値との間の不一致に特有の第1の通知を提供し、かつ、前記機械的投与値と前記第2の投与イベントを用いて計算された電子的投与値との間の不一致に特有の第2の通知を提供するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記薬剤は、硫酸アルブテロール、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸HFA、または、プロピオン酸フルチカゾン及びサルメテロールを備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
システムであって、
プロセッサ、通信回路、および、メモリを備える外部デバイスと、
マウスピース、マウスピースカバー、薬剤リザーバ、ベローズ、投与カップ、および、電子モジュールを備える吸入器と、を備え、
前記電子モジュールは、プロセッサ、スイッチ、センサ、および、通信回路を備え、
前記電子モジュールの前記プロセッサは、
前記吸入器の前記マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされて前記マウスピースを露出させるとともに前記スイッチを作動させることに応答して、投与イベントを記録するように構成されており、前記マウスピースカバーが前記閉位置から前記開位置へ動かされると、前記ベローズが圧縮して、1回分の用量の薬剤を前記薬剤リザーバから前記投与カップへ送達して当該1回分の用量の薬剤をユーザによる吸入のために準備するようになっており、
前記電子モジュールの前記プロセッサは、さらに、
前記ユーザによる前記吸入器の前記マウスピースを介した吸入の間に前記センサからの測定値が吸入を示す閾値を超えることに応答して、吸入イベントを記録し、および、
前記投与イベントおよび前記吸入イベントを示す信号を前記外部デバイスへ送信するように構成されており、
前記外部デバイスの前記プロセッサは、
前記吸入器の投与イベントの数と前記吸入器の吸入イベントの数との間の不一致が閾値を超えることを判定し、および、
前記不一致に基づいて、前記ユーザ、前記吸入器の製造会社、または、ヘルスケアプロバイダー(HCP)に通知を提供するように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
システムであって、
マウスピース、マウスピースカバー、および、電子モジュールを備える吸入器を備え、
前記電子モジュールは、プロセッサ、スイッチ、センサ、および、通信回路を備え、
前記電子モジュールは、
前記スイッチの作動に応答して、投与イベントを記録し、
ユーザによる前記吸入器の前記マウスピースを介した吸入の間に前記センサからの測定値が吸入を示す閾値を超えることに応答して、吸入イベントを記録し、および、
前記投与イベントおよび前記吸入イベントを示す信号を外部デバイスに送信するように構成されており、
前記システムは、さらに、
前記外部デバイスに存在するコンピュータ可読記憶媒体を備え、
前記コンピュータ可読記憶媒体は、
コンピュータ実行可能命令であって、前記外部デバイスのプロセッサによって実行されると、前記外部デバイスの前記プロセッサに、前記吸入器の投与イベントの数と前記吸入器の吸入イベントの数との間の不一致が閾値を超えることを判定させ、かつ、前記不一致に基づいて、前記ユーザ、前記吸入器の製造会社、または、ヘルスケアプロバイダー(HCP)に通知を提供させるコンピュータ実行可能命令を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記吸入器は、さらに、ベローズおよび投与カップを備え、
前記マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされると、前記ベローズが圧縮して、1回分の用量の薬剤を薬剤リザーバから前記投与カップへ送達して当該1回分の用量の薬剤を前記ユーザによる吸入のために準備するようになっている、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記スイッチは、前記吸入器の前記マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされて前記マウスピースを露出させることに応答して、作動されるように構成されている、
請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされると、1回分の用量の薬剤が前記ユーザによる吸入のために準備されるようになっている、
請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記コンピュータ可読記憶媒体は、前記外部デバイスの前記プロセッサによって実行されると、前記外部デバイスの前記プロセッサに、機械的投与値を決定するために、前記ユーザまたは前記製造会社の技術者に、前記機械的投与値を前記外部デバイスに入力するよう促す通知を生成させるように構成されている、
請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記コンピュータ可読記憶媒体は、前記外部デバイスの前記プロセッサによって実行されると、前記外部デバイスの前記プロセッサに、機械的投与値を決定するために、前記ユーザに、前記外部デバイスのカメラを使用するよう促させるように構成されている、
請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
システムであって、
マウスピース、機械式投与カウンタ、および、電子モジュールを備える吸入器を備え、
前記電子モジュールは、プロセッサ、センサ、および、通信回路を備え、
前記電子モジュールは、
ユーザによる前記吸入器の前記マウスピースを介した吸入の間に前記センサからの測定値が吸入を示す閾値を超えることに応答して、吸入イベントを記録し、および、
前記吸入イベントを示す信号を外部デバイスに送信するように構成されており、
前記システムは、さらに、
前記外部デバイスに存在するコンピュータ可読記憶媒体を備え、
前記コンピュータ可読記憶媒体は、
コンピュータ実行可能命令であって、前記外部デバイスのプロセッサによって実行されると、前記外部デバイスの前記プロセッサに、前記機械式投与カウンタの機械的投与値を決定させ、前記機械的投与値と吸入イベントの数との間の不一致が閾値を超えることを判定させ、かつ、前記不一致に基づいて、前記ユーザ、前記吸入器の製造会社、または、ヘルスケアプロバイダー(HCP)に通知を提供させるコンピュータ実行可能命令を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項20】
前記センサは、前記吸入器を通る空気流を測定するように構成されており、前記電子モジュールは、前記センサからの測定値が閾値を超える流量を示すとき、前記吸入イベントを記録するように構成されている、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コンピュータ可読記憶媒体は、前記外部デバイスの前記プロセッサによって実行されると、前記外部デバイスの前記プロセッサに、前記機械的投与値を決定するために、前記ユーザまたは前記製造会社の技術者に、前記機械的投与値を前記外部デバイスに入力するよう促させるように構成されている、
請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記コンピュータ可読記憶媒体は、前記外部デバイスの前記プロセッサによって実行されると、前記外部デバイスの前記プロセッサに、当該外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションによって、前記吸入器の1つ又は複数の発光ダイオード(LED)を点灯することによって、または、前記吸入器のまたは前記外部デバイスのスピーカを通して可聴信号を出力することによって、前記ユーザに前記通知を提供させるように構成されている、
請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年5月17日に出願された仮米国特許出願第62/849,552号の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薬送達デバイスは、様々な投与経路を介した患者の体内への薬剤の送達を容易にする。典型的な投与経路には、経口、局所、舌下吸入、注射などが含まれる。このデバイスは、種々の疾患、病気、および医学的状態を治療するための薬剤を送達するために使用され得る。吸入デバイスは、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および嚢胞性線維症(CF)を処置するために用いられ得る。薬送達デバイスは治療処置の一部として適切な1用量の薬剤を患者に送達するように設計されるが、特定の処置の有効性は患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスなどの非生理学的な要因によって影響され得る。
【0003】
薬物療法において、アドヒアランスは、患者が処方された投薬レジメンに従っている程度を指し得る。例えば、患者の処方箋が毎日2回の用量を必要とし、患者が1日2回の用量を服用している場合、患者は100%のアドヒアランスであると考えることができる。患者が1日1回しか服用していない場合、患者はたった50%のアドヒアランスであるとみなすことができる。後者の場合、患者は当該患者の医師によって処方された処置を受けていないかもしれず、これは治療処置の効力に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
コンプライアンスは、特定の薬送達デバイスを用いるときの患者の技術を指し得る。患者が医師または製造業者によって推奨される方法でデバイスを用いている場合、デバイスは所望の用量の薬剤を送達する可能性が高く、患者はコンプライアンスに準拠しているとみなすことができる。しかし、デバイスが薬投与中に適切に用いられていない場合、デバイスが適切な用量の薬剤を送達する能力は損なわれ得る。したがって、患者は、コンプライアンスに準拠していないとみなすことができる。吸入デバイスの場合、例えば、患者は、1用量全部の薬剤がデバイスから患者の肺に送達されることを確実にするために最低限の吸気努力を達成する必要があるかもしれない。小児および高齢者などの一部の患者では、肺機能の制限などの身体的制限ゆえに、完全なコンプライアンスのための要件を満たすことは困難かもしれない。従って、アドヒアランスと同様に、完全なコンプライアンスを達成できないことは、処方された処置の有効性を低下させ得る。
【0005】
患者が完全なコンプライアンスを達成する能力は、薬剤のいくらかの物理的特性によってさらに複雑になり得る。例えば、いくつかの呼吸器系薬剤は微粒子からなるかもしれず、及び/又は、いかなる臭いまたは味も欠いているかもしれない。したがって、吸入デバイスを用いる患者は薬剤が吸入されていることを直ちに検出または検知することができないかもしれない、及び/又は、吸入された薬剤の量が処方箋に従っているのかどうかを知ることができないかもしれないので、患者はコンプライアンスに準拠していない使用を修正することができないかもしれない。
【発明の開示】
【0006】
[概要]
システムは、外部デバイス、および、吸入デバイス(例えば、吸入器)を含んでよい。外部デバイスは、プロセッサ、通信回路、および、メモリを含んでよい。吸入器は、マウスピース、薬剤、機械式投与カウンタ、および、電子モジュールを含んでよく、当該電子モジュールは、プロセッサ、通信回路、および、吸入器を通る(例えば、吸入器の流路を通る)空気流を測定するように構成されたセンサを備えてよい。機械式投与カウンタは、吸入器のマウスピースカバーが(例えば、マウスピースを覆うために)開位置から閉位置へ動かされるとき、減分してよい(値を減少させてよい)。センサは、例えば、圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、音響センサ、光センサ、配向センサ、及び/又は、同様のものといったセンサの任意の組合せを含んでよい。圧力センサは、吸入器を通じた圧力変化(例えば、圧力降下など)を測定するように構成されてよい。音響センサは、当該音響センサの横を通って流れている空気を測定するように構成されてよい。センサは、カプセルと吸入器のカプセルホルダとの衝突の頻度を測定するように構成されてよい。光学センサは、パウダー粒子の当該センサの横の通過を測定するように構成されてよい。
【0007】
電子モジュールは、吸入器のマウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされてマウスピースをユーザに露出させるとき、投与イベント(dosing event)を記録してよい。電子モジュールは、本明細書で説明される処理を実行することができるプロセッサを含んでよい。電子モジュールは、吸入器のマウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされるときに作動されるスイッチを含んでよい。スイッチは、電子モジュールを、電力状態間(例えば、オフまたはスリープ状態とアクティブ状態との間)で変更するために用いられてよい。代替的に又は追加的に、電子モジュールは、センサからのフィードバックが閾値を超えるとき(例えば、圧力センサからの圧力測定値が閾値を超えるとき)、投与イベントを記録してよい。例えば、いくつかの例では、電子モジュール(例えば、及び/又は、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーション)は、センサからのフィードバックを使用して、マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされることに基づいて生じる投与イベントを検証するように構成されてよい。例えば、電子モジュールは、センサからのフィードバックが良好なまたは妥当な吸入を示しているかどうかを判定してよく、その場合、その判定を用いて、マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされることに基づいて生じる投与イベントを検証してよい。電子モジュールは、投与イベントを示す信号を外部デバイスに送信するように構成されてよく(例えば、信号は電子的投与値(electronic dose reading)(例えば、投薬イベントの累積)でよい)、信号は投与イベントを含んでよく(例えば、投与イベントが、スイッチの作動に基づく、閾値を超えるセンサデータから決定された吸入パラメータに基づく、などの場合)、及び/又は、信号は、センサからの生データでよい。
【0008】
外部デバイスは、機械式投与カウンタの機械的投与値(mechanical dose reading)を決定してよい(例えば、受け取ってよい)。例えば、外部デバイスは、外部デバイスのカメラを使用して(例えば、機械式投与カウンタの写真を撮るように、または、機械式投与カウンタに向けて外部デバイスのカメラを保持するように、ユーザに促すことによって)機械的投与値を決定してよく、外部デバイスに(例えば、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションに)機械的投与値を手動で入力するようにユーザに促して機械的投与値を決定してよく、及び/又は、技術者による直接入力を介して機械的投与値を決定してよい(例えば、誤用または任意の他の理由により、吸入器が販売業会社またはそれらのエージェントに戻される場合)。
【0009】
外部デバイスは、投与イベントを示す信号に基づいて、電子的投与値を決定してよい。例えば、外部デバイスは、電子モジュールから受信する投与イベントを示す信号毎に、電子的投与値を増分してよい(値を増やしてよい)。代替的に又は追加的に、電子モジュールは、記録された投与イベントに基づいて電子的投与値を決定し、当該電子的投与値を外部デバイスに送信してよい。
【0010】
外部デバイスは、機械的投与値と電子的投与値との間の不一致(discrepancy)が閾値を超えることを判定し、ユーザ、吸入器の販売会社、及び/又は、ヘルスケアプロバイダー(HCP)に当該不一致を通知してよい。例えば、外部デバイスは、当該外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションによりユーザに通知を提供することによって、吸入器の1つ又は複数の発光ダイオード(LED)を点灯することによって、吸入器のまたは外部デバイスのスピーカを通して可聴信号を出力することによって、外部デバイスまたはDHPにテキスト、電子メール、またはインスタントメッセージを送信することによって、及び/又は、DHPに通知を提供することによって、不一致をユーザに通知してよい。
【0011】
吸入器は、マウスピースおよびマウスピースカバーを備える本体と、薬剤と、吸入器を通る(例えば、吸入器の流路を通る)空気流を測定するように構成されたセンサとを含んでよい。センサは、例えば、圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、音響センサ、光センサ、配向センサ、及び/又は、同様のものといったセンサの任意の組合せを含んでよい。圧力センサは、吸入器を通じた圧力変化(例えば、圧力降下など)を測定するように構成されてよい。音響センサは、当該音響センサの横を通って流れている空気を測定するように構成されてよい。センサは、カプセルと吸入器のカプセルホルダとの衝突の頻度を測定するように構成されてよい。光学センサは、パウダー粒子の当該センサの横の通過を測定するように構成されてよい。
【0012】
吸入器は、機械式投与カウンタおよび電子式投与カウンタといった複数の投与カウンタ、2つの異なる電子式投与カウンタなどを含んでよい。機械式投与カウンタおよび電子式投与カウンタ(例えば、および、場合によっては複数の異なる電子式投与カウンタ)は、吸入器で生じる異なる作動または動作に基づいて、カウントされた投与を増分または減分するように動作されてよい。例えば、機械式投与カウンタは、マウスピースカバーが開位置から閉位置へ動かされてマウスピースをユーザに対して覆うときに減分するように構成されてよく、電子式投与カウンタは、マウスピースカバーが閉位置から開位置へ動かされてマウスピースを露出させるときに投与イベントを記録するように構成されてよく、及び/又は、圧力センサからの測定値が閾値を超えるとき(例えば、流量が閾値を超えるか、または特定の範囲内に入るとき)に投与イベントを記録するように構成されてよい。
【0013】
吸入器は、投与イベントを示す信号を外部デバイスに送信するように構成された通信回路を含んでよい。吸入器は、機械式投与カウンタと電子式投与カウンタとの間の不一致が閾値を超えると判定してよく、かつ、不一致をユーザに通知するように構成されてよい。例えば、吸入器は、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションによりユーザに通知を提供することによって、吸入器の1つ又は複数の発光ダイオード(LED)を点灯することによって、吸入器のまたは外部デバイスのスピーカを通して可聴信号を出力することによって、外部デバイスまたはDHPにテキスト、電子メール、またはインスタントメッセージを送信することによって、及び/又は、DHPに通知を提供することによって、不一致をユーザに通知してよい。
【0014】
機械式投与カウンタと電子式投与カウンタとの間の不一致は、吸入器の欠陥、及び/又は、ユーザによる吸入器の誤用または誤操作を示す。例えば、吸入器の欠陥は、機械式投与カウンタ及び/又は電子式投与カウンタが不正確に作動することをもたらし得る。このような欠陥は、また、吸入器の用量送達機構が誤作動することをもたらし得るものであり、これは、ユーザが適切な用量の薬剤を受け取ることを妨げるかもしれない。さらに、投与カウンタ間の不一致は、ユーザによる吸入器の誤用または誤操作を示し得るものであり、これは、不一致が検出された場合には、早期に防止され、補正されてよい。吸入器及び/又は外部デバイスは、2つ以上の投与値(例えば、機械的投与値および電気的投与値)の間の不一致が閾値を超えるときに、通知(例えば、アラートといったフィードバック)を提供するように構成されてよく、当該通知は、吸入器の欠陥及び/又はユーザによる吸入器の誤用または誤作動をユーザまたはHCPに警告する。
【0015】
吸入器は、マウスピースおよび薬剤を備える本体を含んでよい。吸入器は、また、電子モジュールを含んでよく、当該電子モジュールは、プロセッサと、メモリと、吸入器内またはその周囲の近傍の温度を測定するように構成された温度センサと、吸入器内のまたはその周囲の近傍の湿度を測定するように構成された湿度センサとを含む。電子モジュールは、温度測定値が温度範囲外にあること、及び/又は、湿度測定値が湿度範囲外にあることを判定してよい。電子モジュールは、温度測定値が温度範囲外にあること、及び/又は、湿度測定値が湿度範囲外にあることをユーザに通知して、ユーザに知らせてよい。例えば、電子モジュールは、温度測定値が温度範囲外にあること、または、湿度測定値が湿度範囲外にあることを示す信号を外部デバイスに送信して、ユーザに通知してよい。
【0016】
いくつかの例では、電子モジュールはまた、配向測定を行うように構成された配向センサを含んでよい。そのような例では、電子モジュールは、1回分の用量の薬剤がユーザへの送達のために準備されることをもたらす吸入器の作動の間に、または、ユーザへの1回分の用量の薬剤の送達の間に、吸入デバイスが不適切な位置にあることを判定してよく、そして、吸入デバイスが不適切な位置にあったことをユーザに通知してよい。
【0017】
ある例では、電子モジュールはまた、吸入器内の圧力変化を測定するように構成された圧力センサを含んでもよい。そのような例では、電子モジュールは、圧力測定値が、ユーザへの1回分の用量の薬剤の送達を示す閾値を超えることを判定し、圧力測定値に基づいて吸入イベントを記録してよい。電子モジュールは、温度測定値および湿度測定値を吸入イベントと関連付けてよい。吸入器は、関連付けられた温度測定値および湿度測定値を用いて、1回分の用量の送達の有効性を判定してよい。代替的に又は追加的に、電子モジュールは、吸入イベント、および、関連付けられた温度測定値および湿度測定値を外部デバイスに送信してよく、外部デバイスは、関連付けられた温度測定値および湿度測定値を用いて、1回分の用量の薬剤の送達の有効性を判定してよい。
【0018】
電子モジュールは、吸入器内の第2の位置における圧力変化を測定するように構成された第2の圧力センサを含んでよい。そのような例では、電子モジュールは、2つの圧力センサのそれぞれからの圧力測定値が閾値を超えることを判定し、当該判定に基づいて部分閉塞イベント(partial blockage event)を記録してよい。
【0019】
吸入器は、当該吸入器がパウチから出されるときを検出してよい。例えば、電子モジュールは、湿度センサから湿度測定値を定期的に受信し、続く湿度測定値間の湿度変化が閾値を超えることを判定し、当該湿度変化に基づいて「パウチ外」イベント("out-of-pouch" event)を記録してよい。
【0020】
システムは、吸入器およびスマートパウチを含んでよい。吸入器は、マウスピースおよび薬剤を含んでよい。スマートパウチは、通信回路と、スマートパウチ内のまたはその周囲の近傍の湿度を測定するように構成された湿度センサと、プロセッサとを含んでよい。スマートパウチは、吸入器がパウチから取り出されたときを判定し、吸入器のパウチからの取出しをメモリに記録するように構成されてよい。例えば、スマートパウチのプロセッサは、続く湿度測定値間の湿度変化が閾値を超えることを判定し、当該湿度変化に基づいて「パウチ外」イベントを記録し、「パウチ外」イベントを吸入器または外部デバイスのうちの1つ又は複数に送信してよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1は、例示の吸入デバイスの正面斜視図である。
【0022】
図2は、例示の吸入デバイスの断面内部斜視図である。
【0023】
図3は、吸入デバイスの内部アセンブリの分解側面斜視図である。
【0024】
図4Aおよび4Bは、吸入デバイスの例示の投与カウンタの拡大斜視図である。
【0025】
図5は、トップキャップが取り外されて電子モジュールを露出させている状態の吸入デバイスの分解斜視図である。
【0026】
図6は、吸入デバイスのトップキャップおよび電子モジュールの分解斜視図である。
【0027】
図7Aは、吸入デバイスのマウスピースカバーが閉位置にある状態の吸入デバイスの部分断面図である。
【0028】
図7Bは、マウスピースカバーが部分開位置にある状態の吸入デバイスの部分断面図である。
【0029】
図7Cは、マウスピースカバーが部分開位置にある状態の吸入デバイスの部分断面図である。
【0030】
図7Dは、マウスピースカバーが全開位置にある吸入デバイスの部分断面図である。
【0031】
図8は、圧力測定値と吸入デバイスの流路を通る空気流量との間の例示的な関係のグラフである。
【0032】
図9は、吸入デバイスを含む例示のシステムの図である。
【0033】
[詳細な説明]
本開示は、薬送達デバイスに関連する使用状況およびパラメータを検知、追跡、及び/又は、処理するためのデバイス、システム、および、方法を説明する。デバイス、システム、および、方法は、ユーザの肺に薬剤を送達するための呼吸作動式吸入デバイスと関連付けて説明される。しかしながら、説明された解決策は、注射器、定量吸入器、ネブライザー、経皮パッチ、または、移植可能物などの他の薬送達デバイスに等しく適用可能である。
【0034】
喘息およびCOPDは、気道の慢性炎症疾患である。これらはいずれも、気流閉塞および気管支痙攣の変化しかつ再発する症状によって特徴づけられる。症状には、喘鳴、咳、胸部圧迫感、息切れなどがある。症状は、誘因を回避することによって、および、薬剤、特に吸入される薬剤の使用によって管理される。薬剤は、吸入コルチコステロイド(ICS)および気管支拡張剤を含む。
【0035】
吸入コルチステロイド(ICS)は、呼吸器疾患の長期制御に用いられるステロイドホルモンである。これは、気道の炎症を軽減することで機能します。例示は、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオネート/ジプロピオネートHFA)、フルチカゾン(プロピオネート)、モメタゾン(フロ酸)、シクレソニド、および、デキサメタゾン(ナトリウム)を含む。括弧は、例示(例えば、好ましい例示)の塩またはエステルの形成を示す。
【0036】
異なるクラスの気管支拡張剤は、気道の異なる受容体を標的とする。2つのよく使われるクラスは、β2-アゴニストと抗コリン剤である。β2-アドレナリンアゴニスト(または“β2-アゴニスト”)は、平滑筋弛緩を誘導するβ2-アドレナリン受容体に作用し、気管支経路を拡張させる。それらは、作用の持続時間によって分類される傾向がある。長時間作用性のβ2-アゴニスト(LABA)の例示は、フォルモテロール(フマル酸)、サルメテロール(キシナホ酸)、インダカテロール(マレイン酸)、バンブテロール(塩酸)、クレンブテロール(塩酸)、オロダテロール(塩酸)、カルモテロール(塩酸)、ツロブテロール(塩酸)およびビランテロール(トリフェニル酢酸)を含む。短時間作用性のβ2-アゴニスト(SABA)の例示は、アルブテロール(硫酸)およびテルブタリン(硫酸)を含む。
【0037】
典型的には、短時間作用性の気管支拡張剤は、急性気管支収縮を速やかに緩和し(そして、しばしば「レスキュー」薬または「リリーバー」薬と称され)、一方で、長時間作用性の気管支拡張剤は、より長期の症状の制御および予防を助ける。しかしながら、速効型の長時間作用性の気管支拡張剤は、フォルモテロール(フマル酸)のように、レスキュー薬として使用されてもよい。したがって、レスキュー薬は、急性気管支収縮を緩和する。レスキュー薬は、必要に応じて/必要なときに(pro re nata)服用される。レスキュー薬はまた、例えばICS-フォルモテロール(フマル酸)、典型的にはブデソニド-フォルモテロール(フマル酸)またはベクロメタゾン(ジプロピオン酸)-フォルモテロール(フマル酸)といった組合せ製品の形態であってもよい。したがって、レスキュー薬は、好ましくは、SABAまたは速攻作用性のLABA、より好ましくはアルブテロール(硫酸)またはフォルモテロール(フマル酸)、最も好ましくはアルブテロール(硫酸)である。
【0038】
抗コリン剤(または「抗ムスカリン剤」)は、神経細胞の受容体を選択的に遮断することにより、神経伝達物質のアセチルコリンを遮断する。局所適用では、抗コリン剤は、気道に存在するM3ムスカリン受容体に主に作用し、平滑筋弛緩をもたらし、したがって気管支拡張作用を生じさせる。長時間作用性のムスカリンアンタゴニスト(LAMA)の例示は、チオトロピウム(臭化物)、オキシトロピウム(臭化物)、アクリジニウム(臭化物)、ウメクリジニウム(臭化物)、イプラトロピウム(臭化物)グリコピロニウム(臭化物)、オキシブチニン(塩酸または臭化水素酸)、トルテロジン(酒石酸)、トロスピウム(塩化物)、ソリフェナシン(コハク酸)、フェソテロジン(フマル酸)、および、ダリフェナシン(臭化水素酸)を含む。
【0039】
ドライパウダー吸入器(DPI)、加圧定量吸入器(pMDI)またはネブライザーを介してといった吸入による送達のためにこれらの薬剤を調製および処方する際に、多くのアプローチが取られている。
【0040】
GINA(Global Initiative for Asthma)ガイドラインによれば、喘息の治療に段階的なアプローチをとることができる。軽度の喘息を表すステップ1では、患者には、必要に応じて、硫酸アルブテロールなどのSABAが投与される。患者にはまた、必要に応じて低用量ICS-フォルモテロールが投与されてもよいし、または、SABAが服用される場合には必ず低用量ICSが投与されてもよい。ステップ2では、定期的な低用量ICSがSABAと並行して投与されるか、必要に応じて低用量ICS-フォルモテロールが投与される。ステップ3では、LABAが追加される。ステップ4では、用量を増やし、ステップ5では、抗コリン剤または低用量経口コルチコステロイドといった、さらなるアドオン治療が含まれる。したがって、それぞれのステップは、治療レジメンと見なすことができ、呼吸器疾患の急性重症度の程度に応じてレジメンのそれぞれが構成されてよい。
【0041】
COPDは、世界中において主要な死因である。それは、慢性気管支炎、肺気腫を含みまた小気道を伴う異質の長期疾患である。COPDの患者に生じる病理学的変化は、圧倒的には、気道、肺実質および肺血管系に局在する。表現型的には、これらの変化は、気体を吸収し放出する肺の健康な能力を低下させる。
【0042】
気管支炎は、気管支の長期的な炎症を特徴とする。共通の症状には、喘鳴、息切れ、咳嗽および喀痰の喀出などがあり、いずれも不快感が強く、患者の生活の質に有害である。肺気腫は、長期の気管支の炎症にも関係しており、その炎症反応は、肺組織の崩壊や、気道の進行性狭窄をもたらす。時間が経つにつれて、肺組織はその自然な弾性を失い、拡大する。このようにして、ガスが交換される効力は減少し、呼吸気はしばしば肺内に閉じ込められる。これは、局所的な低酸素症をもたらし、吸入の度に、患者の血流中に送達されている酸素の体積を減少させる。したがって、患者は、息切れや呼吸困難を経験する。
【0043】
COPDを患って生きている患者は、これらの症状の、すべてではないにしても、いくつかを日常的に経験する。それらの重症度は、一連の要因によって決まるであろうが、最も一般的には、疾患の進行と相関するであろう。これらの症状は、その重症度とは無関係に、安定のCOPDを示しており、この病態は、様々な薬の投与を通して維持され、管理される。治療は、様々であるが、しばしば吸入気管支拡張剤、抗コリン剤、長時間作用性および短時間作用性のβ2-アゴニストおよびコルチコステロイドを含む。薬剤は、しばしば、単独療法として、または、併用治療として投与される。
【0044】
患者は、GOLDガイドライン(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease, Inc.)で定義されたカテゴリーを用いてCOPDの重症度により分類される。カテゴリーは、A~Dとラベル付けされ、治療の推奨される第1の選択はカテゴリーによって異なる。患者グループAは、必要に応じて、短時間作用性のムスカリンアンタゴニスト(SAMA)、または、必要に応じて短時間作用性のβ2-アゴニスト(SABA)が推奨される。患者グループBは、長時間作用性のムスカリンアンタゴニスト(LAMA)または長時間作用性のβ2-アゴニスト(LABA)が推奨され、患者グループCは、吸入コルチコステロイド(ICS)+LABA、または、LAMAが推奨される。患者グループDは、ICS+LABA、及び/又は、LAMAが推奨される。
【0045】
喘息またはCOPDのような呼吸器疾患に罹患している患者は、その状態のベースラインの日々の変動を超えて周期的な増悪に苦しむ。増悪とは、呼吸器症状が急性に悪化し、追加治療、すなわち維持療法を超えた治療を必要とする状態のことである。
【0046】
喘息の場合、中等度の増悪に対する追加治療は、SABA、経口コルチコステロイド及び/又は制御された流量の酸素(後者は入院を必要とする)の繰返しの投与である。重度の増悪は、抗コリン(典型的には臭化イプラトロピウム)、噴霧化されたSABAまたはIV硫酸マグネシウムを追加する。
【0047】
COPDの場合、中等度の増悪に対する追加治療は、SABA、経口コルチコステロイド、及び/又は、抗生物質の繰返しの投与である。重度の増悪は、制御された流量の酸素、及び/又は、呼吸補助を追加する(いずれも入院を必要とする)。本開示の意味の範囲内での増悪は、中等度および重度の両方の増悪を含む。
【0048】
図1は、例示の吸入デバイス100の正面斜視図である。例示の吸入デバイス100は、呼吸作動式吸入デバイスでよい。吸入デバイス100は、トップキャップ102と、メインハウジング104と、マウスピース106と、マウスピースカバー108と、通気口125とを含んでよい。トップキャップ102は、メインハウジング104に機械的に取り付けられてよい。マウスピースカバー108は、開閉してマウスピース106を露出させることができるように、メインハウジング104にヒンジ止めされてよい。ヒンジ接続されたものが例示されているが、マウスピースカバー108は、他のタイプの接続を介して吸入デバイス100に接続されてよい。さらに、いくつかの代替実施形態では、マウスピースカバー108は省略されてよい。
【0049】
図2は、吸入デバイス100の内部断面図である。メインハウジング104の内部において、吸入デバイス100は、薬剤リザーバ110、および、用量送達機構を含んでよい。例えば、吸入デバイス100は、薬剤リザーバ110(例えば、ホッパ)、ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク118、投与カウンタ111、透明窓147、投与カップ116、投与チャンバ117、脱凝集器121、および、流路119を含んでよい。薬剤リザーバ110は、ユーザへの送達のために、ドライパウダー薬剤などの薬剤を含んでよい。ヨーク118は、マウスピースカバー108の動きがヨーク118の動きをもたらすように、マウスピースカバー108に機械的に(例えば、直接的にまたは間接的に)連結されてよい。例えば、マウスピースカバー108が(例えば、閉位置から開位置へ)動かされてマウスピース106を露出させるとき、ヨーク118は吸入デバイス100内で上下に(例えば、トップキャップ102に向かって、またはトップキャップから離れるように)動いてよい。ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク118、投与カップ116、投与チャンバ117、および、脱凝集器121の組合せが例示されているが、用量送達機構は、記載された構成要素のサブセット(一部)を含んでもよく、及び/又は、吸入デバイス100は、(例えば、吸入デバイスのタイプ、薬剤のタイプなどに応じて)異なる用量送達機構を含んでよい。例えば、いくつかの例では、薬剤は、ブリスターストリップに含まれてよく、用量送達機構(例えば、1つ又は複数のホイール、レバー、及び/又は、アクチュエータ)は、ブリスターストリップを前進させ、1回分の用量の薬剤を含む新しいブリスターを開け、その1回分の用量の薬剤を、ユーザによる吸入のために投与チャンバ及び/又はマウスピースで利用可能にするように構成されてよい。
【0050】
図1の例示の用量送達機構において、ヨーク118の動きによって、ベローズ112が圧縮して、1回分の用量の薬剤を薬剤リザーバ110から投与カップ116へ送達する。その後、ユーザは、マウスピース106を通じて吸入して、1回分の用量の薬剤を受けてよい。ユーザの吸入から生じる空気流は、投与カップ116内の薬剤の凝集体を崩すことにより、脱凝集器121が1回分の用量の薬剤をエアロゾル化することをもたらしてよい。脱凝集器121は、流路119を通る空気流がある流量に合致するか、またはある流量を超えるか、または、特定の範囲内にある場合に、薬剤を(例えば、完全に)エアロゾル化するように構成されてよい。エアロゾル化されると、1回分の用量の薬剤は、投与カップ116から投与チャンバ117内へ、そして、流路119を通り、マウスピース106からユーザへ移動し得る。流路119を通る空気流がある流量に合致しないか、または、ある流量を超えないか、または、特定の範囲内にない場合、薬剤の一部または全部が投与カップ116内に残っているかもしれない。投与カップ116内の薬剤が脱凝集器121によってエアロゾル化されていない場合には、マウスピースカバー108がその後に開かれたときに、別の1回分の用量の薬剤が薬剤リザーバ110から送達されないかもしれない。したがって、1回分の用量の薬剤の少なくとも一部は、当該用量が脱凝集器121によってエアロゾル化されるまで、投与カップ内に溜まっているかもしれない。
【0051】
ユーザがマウスピース106を通して吸入すると、空気が通気口125に入り、薬剤をユーザに送達するための空気の流れを提供することができる。流路119は、投与チャンバ117からマウスピース106の端まで延在してよく、投与チャンバ117およびマウスピース106の内部部分を含んでよい。投与カップ116は、投与チャンバ117内に、またはそれに隣接して存在してよい。
【0052】
図3は、吸入デバイス100の内部アセンブリ101の分解後方斜視図である。内部アセンブリ101は、メインハウジング104内に収容されてよい。内部アセンブリ101は、薬剤リザーバ110を含んでよく、当該薬剤リザーバは、開口端113および圧力リリーフシステムを含んでよく、当該システムは、リリーフポート123を含む。薬剤リザーバ110のベースは、スペーサ138に固定されてよく、当該スペーサは、脱凝集器121に固定されてよい。脱凝集器121は、2つの直径方向の両側の入口ポート162を含んでよく、これらは、投与チャンバ117の円形断面に対して実質的に接線方向に延在する。放射状の翼(図示されない)が、投与チャンバ117の頂部に位置されてよく、さらに、直径方向の両側の入口ポート162を通って入る呼吸により誘発される空気流の少なくとも一部が放射状の翼と衝突するように寸法付けされてよい。上述のように、1回分の用量の薬剤がエアロゾル化されるとき、当該用量は、投与カップ116から投与チャンバ117内に移動することができる。1回分の用量の薬剤は、それから、脱凝集器121の出口ポート160に移動し、ユーザによる吸入のために、マウスピース106を通過することができる。
【0053】
内部アセンブリ101は、カップアセンブリ196を含む用量計量システムを含んでよい。カップアセンブリ196は、カップ131およびボス133を有するスレッド127を含んでよい。カップアセンブリ196のスレッド127は、薬剤リザーバ110の下のスペーサ138のスライドチャネル152内にスライド可能に受け入れられてよい。カップスレッド127は、カップスプリング149によって、薬剤リザーバ110のディスペンサポート(図示されない)から送達通路に向かってスライドチャネル152に沿って付勢されてよく、当該カップスプリングは、薬剤リザーバ110に固定されてよい。内部アセンブリ101は投与カウンタ111を含んでよく、当該投与カウンタは、マウスピースが開かれたまたは閉じられたときに投与カウンタ111が増分または減分するように、マウスピースカバー108と機械的に(例えば、直接的にまたは間接的に)連結されてよい。投与カウンタ111は、機械式投与カウンタと称してよく、投与カウンタ111によって表示される値(例えば、カウントまたは数)は、機械的投与値(mechanical dose reading)と称してよい。投与カウンタ111は、最初に、薬剤リザーバ110内の薬剤の全投与回数に設定されてよい。したがって、投与カウンタ111は、マウスピースカバー108が開位置から閉位置へ(または閉位置から開位置へ)動かされるたびに、1つずつ減少するように構成されてもよく、それによって、薬剤リザーバ110内の残りの用量の投与回数を示す。あるいは、投与カウンタ111は、最初にゼロに設定されてもよく、マウスピースカバー108が開位置から閉位置へ(または閉位置から開位置へ)動かされるたびに、1つずつ増加するように構成されてよく、それによって、薬剤リザーバ110から送達された用量の総投与回数を示す。
【0054】
マウスピースカバー108に機械的に連結されたものが例示されているが、吸入デバイス100が異なる用量送達機構を含む場合といった代替の実施形態では、吸入器100の投与カウンタ111は増分するまたは減分するために吸入デバイス100の他の構成要素に連結されてよい(例えば、機械的に連結されてよい)。例えば、投与カウンタ111は、例えばユーザによる吸入のための1回分の用量の薬剤を準備するスイッチ、レバー、またはツイストキャップに連結されてよい(例えば、機械的に連結されてよい)。
【0055】
図4Aおよび4Bは、吸入デバイス100の投与カウンタ111の拡大斜視図である。投与カウンタ111はリボン137を含んでよく、リボンは、その上に印刷された連続する数字または他の適切なしるしを有してよい。しるしは、ハウジング104(図2参照)に設けられた透明窓147と整列してよい。投与量カウンタ111は、回転可能なボビン153および回転可能なインデックススプール157を含んでよい。リボン137は、ボビン153に巻かれ、かつ、受けられてよい。ボビン153の第1端161は、スプール157に固定されてよい。リボン137がボビン132から繰り出されるとき、スプール157が回転または前進されることに伴いしるしが連続的に表示されてよい。
【0056】
スプール157はヨーク118が動くと回転するように配置されてよく、これにより、1回分の用量の薬剤がリザーバ110から投与カップ116内に送達されてよい。したがって、リボン137上のしるし(例えば、数字)は、別の1回分の用量が吸入デバイス100によって投与されたことを示すために前進してよい。リボン137上のしるしは、スプール157の回転に伴ってしるし(例えば、数字)が増加または減少するように配置されてよい。例えば、数字はスプール157の回転に伴って減少して、吸入デバイス100内に残っている用量の投与回数を示してもよく、または、数字はスプール157の回転に伴って増加して、吸入デバイス100によって投与された用量の投与回数を示してもよい。スプール157は、半径方向に延在する歯169を含んでよく、当該歯は、ヨーク118上の歯止め(図示せず)と係合するように構成されてよい。歯止めは歯169と係合し、ヨーク118の動きに伴って(例えば、マウスピースカバー108が開けられているまたは閉じられている際)にインデックススプール157を前進させるように構成されてよい。
【0057】
投与カウンタ111は、投与カウンタ111をリザーバ110に固定するように構成されたシャーシ171を含んでよい。シャーシは、ボビン153およびインデックススプール157を受けるための1つ又は複数のシャフト173を含んでよい。シャフト173はフォーク状でよく、そして、1つ又は複数の半径方向突起175を含んでよく、当該突起は、シャフト173上のスプール157及び/又はボビン153の回転に対する弾性抵抗を生じさせるように構成されてよい。クラッチスプリング177は、インデックススプール157の端に受けられ、かつ、シャーシ171に固定され(例えば、ロックされ)て、スプール157の単一方向(例えば、時計回りまたは反時計回り)の回転を可能にしてよい。
【0058】
図5は、例示の吸入デバイス100の分解斜視図であり、トップキャップ102が取り外されて電子モジュール120が露出している。トップキャップ102は、電子モジュール120を収容してよく、当該モジュールは、プリント回路基板(PCB)アセンブリ122を含んでよい。PCBアセンブリ122は、センサシステム128および無線通信回路129といった1つ又は複数の構成要素を含んでよい。トップキャップ102は、メインハウジング104上の凹部に係合する1つ又は複数のクリップ(図示されない)を介してメインハウジング104に取り付けられてよい。トップキャップ102は、接続されたときにメインハウジング104の一部に重なってよく、例えば、それにより、実質的な空気圧シールがトップキャップ102とメインハウジング104との間に存在するようにしてよい。メインハウジング104の頂面は、1つ又は複数(例えば、2つ)のオリフィス146を含んでよい。オリフィス146の1つは、スライダ140を受けるように構成されてよい。例えば、トップキャップ102がメインハウジング104に取り付けられているとき、スライダ140はオリフィス146の1つを介してメインハウジング104の頂面を突出してよい。トップキャップ102は、メインハウジング104に取外し可能に取り付けられてよい。代替的または追加的に、電子モジュール120は、メインハウジング104内に一体化されてよく、及び/又は、電子モジュール120を収容するトップキャップ102は、メインハウジング104に取外し不能に取り付けられてよい。
【0059】
さらに、いくつかの例では、電子モジュール120は、吸入デバイス100の外部にあり吸入デバイスから分離している別のデバイスでよい。例えば、電子モジュール120は、アドオンデバイス内に存在してよく、アドオンデバイスは、吸入デバイス100に取り付けられ、その後に、例えば吸入デバイス100が薬剤を切らしたまたは有効期限切れになった場合に吸入デバイス100から取り外されるように構成されるものである。そのような場合、ユーザは、ユーザが新しい吸入デバイス100を受けとるたびに、電子モジュール120を含むアドオンデバイスを、ある1つの吸入デバイス100から別の1つの吸入デバイスへ取り付けてよい。アドオンデバイスは、(例えば、センサが吸入デバイス100のマウスピース及び/又は流路と流体連通するように)、メインハウジング104、マウスピース、及び/又は、吸入デバイス100のメインハウジング104に収容された薬剤キャニスタといった吸入デバイス100の任意の構成要素に取り付けられるように構成されてよい。
【0060】
図6は、トップキャップ102および電子モジュール120の分解斜視図である。図6の通り、スライダ140は、アーム142と、ストッパ144と、末端ベース145とを規定してよい。末端145は、スライダ140の底部でよい。スライダ140の末端145は、メインハウジング104内にあるヨーク118に当接するように構成されてよい。トップキャップ102は、スライダスプリング146およびスライダ140を受けるように構成されたスライダガイド148を含んでよい。スライダスプリング146は、スライダガイド148内に存在してよい。スライダスプリング146は、トップキャップ102の内面に係合してよく、スライダスプリング146は、スライダ140の上部(例えば、近位端)に係合(例えば、当接)してよい。
【0061】
スライダ140がスライダガイド148内に設けられるとき、スライダスプリング146は、スライダ140の頂部とトップキャップ102の内面との間で部分的に圧縮されてよい。例えば、スライダスプリング146は、マウスピースカバー108が閉じられているとき、スライダ140の末端145がヨーク118と接触したままであるように構成されてよい。スライダ140の末端145はまた、マウスピースカバー108が開閉されている際にも、ヨーク118と接触したままであってよい。スライダ140のストッパ144は、例えば、スライダ140がマウスピースカバー108の開閉を通してスライダガイド148内に保持されるように、スライダガイド148のストッパと係合してよく、逆もまた同様である。ストッパ144およびスライダガイド148は、スライダ140の上下(例えば、軸方向)移動を制限するように構成されてよい。この制限は、ヨーク118の上下移動よりも小さくてよい。したがって、マウスピースカバー108が開位置へ動かされる際、ヨーク118はマウスピース106に向かって上下方向に動き続けてよいが、ストッパ144は、スライダ140の末端145がヨーク118にもはや接触しなくなるようにスライダ140の上下移動を止めてよい。
【0062】
電子モジュール120は、センサシステム128、無線通信回路129、スイッチ130、電源(例えば、バッテリ126)、バッテリホルダ124、インジケータ(例えば、発光ダイオード(LED))、コントローラ(例えば、プロセッサ)、及び/又は、メモリといった1つ又は複数の構成要素を含んでよい。本明細書で使用される場合、用語「コントローラ」および「プロセッサ」は、互換的に使用されてよい。電子モジュール120の構成要素のうちの1つ又は複数は、PCB122上に取り付けられ、これに電気的に接続されてよい。コントローラ及び/又はメモリは、PCB122とは物理的に区別できる構成要素でよい。あるいは、コントローラおよびメモリは、PCB122に取り付けられたチップセットの一部でよい。例えば、無線通信回路129は、電子モジュール120用のコントローラ及び/又はメモリを含んでよい。電子モジュール120のコントローラは、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の適切な処理デバイスもしくは制御回路を含んでよい。メモリは、コントローラによって実行されると、コントローラに、本明細書で説明される電子モジュールのプロセスを実施させるコンピュータ実行可能命令を含んでよい。
【0063】
コントローラは、メモリからの情報にアクセスし、メモリにデータを記憶してよい。メモリは、取外不能なメモリ及び/又は取外可能なメモリなど、任意のタイプの適切なメモリを含んでよい。取外不能なメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスク、または任意の他のタイプのメモリ記憶デバイスを含んでよい。取外可能なメモリは、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリスティック、セキュアデジタル(SD)メモリカードなどを含んでよい。メモリは、コントローラの内部にあってよい。コントローラはまた、サーバまたはスマートフォン上など、電子モジュール120内に物理的に位置していないメモリからデータにアクセスし、その中にデータを格納してよい。
【0064】
バッテリ126は、PCB122の構成要素に電力を供給してよい。バッテリ126は、例えばコインセルバッテリのような、電子モジュール120に電力を供給するための任意の適切な電源であってよい。バッテリ126は、再充電可能であっても、再充電不可能であってもよい。バッテリ126は、バッテリホルダ124によって収容されてよい。バッテリホルダ124は、バッテリ126がPCB122と連続的に接触し続けるように、及び/又は、PCB122の構成要素と電気的に接続するように、PCB122に固定されてよい。バッテリ126は、バッテリ126の寿命に影響を及ぼし得るバッテリ容量を有してよい。以下でさらに説明されるように、バッテリ126からPCB122の1つ又は複数の構成要素への電力の分配は、バッテリ126が吸入デバイス100及び/又はその中に含まれる薬剤の有効寿命にわたって電子モジュール120に電力を供給することができることを保証するように管理されてよい。
【0065】
スイッチ130は、吸入デバイス100の用量送達機構によって作動されてよい。本明細書中に記載される例示の用量送達機構を用いて組み込まれる場合、スイッチ130は、マウスピースカバー108が閉位置から開位置へ動かされている際に、スライダ140によって作動されてよい。吸入デバイス100が異なる用量送達機構を含むなら、スイッチ130が用量送達機構の異なる構成要素によって作動されてよいことが理解されるべきである。スイッチ130が作動されると、電子モジュール120は、オフまたはスリープ状態からアクティブ状態へといったように、電子モジュール120を状態変化させる信号を生成してよい。アクティブ状態にあるとき、電子モジュール120のコントローラは、センサシステム128を立ち上げ、当該システムに電力供給して、センサシステム128が測定値を取得できるようにしてよい。さらに、電子モジュール120は、スイッチ130が作動されるたびに、投与イベント(例えば、用量送達イベントまたは作動イベントと称してもよい)を格納してよい。以下でより詳細に説明されるように、電子モジュール120は、それぞれがそれぞれの電力消費レベルを有する複数の電力状態を有してよい。例えば、電子モジュール120は、システムオフ状態、スリープ状態、及び/又は、アクティブ状態で動作するように構成されてよく、電子モジュール120はオフ状態の間、最小量の電力を消費し(例えば、電力がないか、またはクロックを実行するのにちょうど十分である)、スリープ状態は(例えば、メモリ、通信回路、及び/又は、タイマーまたはクロックを駆動するために)オフ状態よりも多くの電力を使用し、そして、アクティブ状態は(例えば、潜在的にスリープ状態よりも速い通知モードで、コントローラ、1つ又は複数のセンサを駆動し、及び/又は、タイマーまたはクロックを駆動するために)最大量の電力を使用する。
【0066】
センサシステム128は、圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、音響センサ、光学センサ、配向センサ、及び/又は同様のもののといった、1つ又は複数のセンサを含んでよい。圧力センサは、気圧センサ(例えば、大気圧センサ)、差圧センサ、絶対圧力センサ、及び/又は同様のものを含んでよい。センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)、及び/又は、ナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)技術を採用してよい。圧力センサは、電子モジュール120のコントローラに瞬間的な圧力値、及び/又は、時間にわたり集計された圧力値を提供するように構成されてよい。図2及び図5に示すように、圧力センサは、吸入デバイス100内に存在してもよいが、流路119の外側にあってもよい。したがって、圧力センサ(単数又は複数)は、吸入デバイス100内の複数の大気圧を測定するように構成されてよい。
【0067】
電子モジュール120(例えば、及び/又は外部デバイスに存在するモバイルアプリケーション)は、センサシステム128からの測定値を使用して、1つ又は複数の投与イベントを決定してよい。例えば、電子モジュール120は、センサシステム128からの1つ又は複数の測定値を1つ又は複数の閾値と比較して、吸入イベントを、吸入なし/低吸入イベント、妥当な吸入イベント、良好な吸入イベント、過剰吸入イベント、及び/又は、呼息イベントとして分類するように構成されてよい。例えば、電子モジュールは、センサシステム128からの測定値が特定の範囲(例えば、200リットル毎分(L/min)から45L/minの間)の流量を示す場合、良好な吸入イベントを生成し、センサシステム128からの測定値が別の範囲(例えば、30L/minおよび45L/minの間)の流量を示す場合、妥当な吸入イベントを生成し、センサシステム128からの測定値が閾値(例えば、30L/min)未満の流量を示す場合、吸入なしイベントを生成し、センサシステム128からの測定値が上限閾値より大きい(例えば、200L/minより大きい)流量を示す場合、過剰吸入イベントを生成してよい。
【0068】
温度センサは、サーミスタ、熱電対、抵抗温度検出器、温度センサチップ等を含んでよい。温度センサは、電子モジュール120のコントローラに、温度値、及び/又は、時間にわたり集計された温度値を提供するように構成されてよい。温度センサは、吸入デバイス100に近接する空間における外部温度を測定するように構成されてよい。したがって、メインハウジング104及び/又はトップキャップ102は、温度センサがハウジングの外部の周囲温度を測定することを可能にする開口(例えば、通気口)を含んでよい。
【0069】
代替的に又は追加的に、温度センサ(単数または複数)は、吸入デバイス100のトップキャップ102、メインハウジング104、及び/又は、マウスピース106のうちの1つ又は複数の内部など、吸入デバイス100内の温度を測定するように構成されてよい。内部温度および外部温度の両方を測定する能力は、電子モジュール120が当該電子モジュール120の構成要素の動作温度、ユーザが吸入デバイス100を通じて吸入するときに吸入デバイス100を通って流れる空気の温度などを決定することを可能にし得る。したがって、電子モジュール120は、電子モジュール120の1つ又は複数の構成要素(例えば、圧力センサのように別のセンサといった)の過温度状況、吸入デバイス100の過温度状況、しきい値を超える周囲温度など、過温度状況または不足温度状況を検出するように構成されてよい。電子モジュール120は、通信回路129に、過温度状況、周囲温度値、及び/又は、吸入デバイス100の内部の温度値(例えば、吸入デバイス100の流路を通して検出される温度変化など)を示す温度メッセージを外部デバイス(例えば、モバイルデバイス)に送信させるように構成されてよい。
【0070】
温度センサは、電子モジュール120上に位置してよい。例えば、いくつかの実施形態では、温度センサが圧力センサ内に埋め込まれてよい(例えば、気圧センサ内に埋め込まれてよい)。電子モジュール120の他の構成要素の温度及び/又はユーザの手の温度は、温度センサの測定値に影響を及ぼすかもしれない。従って、いくつかの実施形態では、温度センサの少なくとも一部が、メインハウジング104内といった、電子モジュール120の外部に位置してよい。そのような例では、温度センサは、電子モジュール120のコントローラへの電子接続を含んでよい。さらに、ユーザの手の温度により影響を受けることを回避するために、温度センサは、メインハウジング104の前部103に、または、メインハウジング104の底107に位置してよい。例えば、温度センサは、通気口125に近接する(例えば、その上方の)領域105(例えば、図5に例示される)内で、メインハウジング104の前部103に位置してよい。温度センサは、また、メインハウジング104の底107に配置されてもよく、これにより、例えば、マウスピースカバー108は、マウスピースカバー108が開位置にあるとき、ユーザが温度センサの近くに指を置くことを阻止することができる。
【0071】
温度センサは、電子モジュール120がアクティブ状態にあるとき(例えば、本明細書に記載されるように、アクティブ状態の測定モードにあるとき)、温度測定値を取得するように構成されてよい。例えば、温度センサは、圧力センサが圧力測定を行っているのと同時に温度測定を行うように構成されてよく、これは、例えば、マウスピースカバー108が開位置に動かされた後、所定の時間(例えば、1~3分)の間ででよい。代替的に又は追加的に、温度センサは、マウスピースカバー108が閉状態にある間(例えば、電子モジュール120が、定期的にスリープ状態から立ち上がって通知状態に入るとき)、圧力測定値を定期的に取得してよい。
【0072】
湿度センサは、容量センサ、抵抗センサ、熱伝導率センサ、及び/又は、同様のものを含んでよい。湿度センサは、電子モジュール120のコントローラに、湿度値、及び/又は、時間にわたって集計された湿度値を提供するように構成されてよい。湿度センサ(単数または複数)は、環境条件(例えば、吸入デバイス100の周りの領域における外部湿度レベル)、及び/又は、吸入デバイス100内の特定の位置内の湿度レベルを測定するように構成されてよい。湿度センサは、相対湿度を測定するように構成されてよい。
【0073】
湿度センサは、電子モジュール120に位置してよい。例えば、湿度センサは、電子モジュール120に組み込まれてよい。湿度センサは、ユーザの手の湿気によって影響されるかもしれない。従って、いくつかの実施形態では、湿度センサの少なくとも一部は、メインハウジング104内などといった、電子モジュール120の外部に位置してよい。そのような例では、湿度センサは、電子モジュール120のコントローラへの電子接続を含んでよい。さらに、ユーザの手によって生じる湿気による影響を回避するために、湿度センサは、メインハウジング104の前部103に、またはメインハウジング104の底107に配置されてよい。例えば、湿度センサは通気口125に近接して(例えば、上方の)領域105(例えば、図5に例示されている)内で、メインハウジング104の前部103に位置してよい。湿度センサは、また、メインハウジング104の底107に位置してよく、それにより、例えば、マウスピースカバー108は、マウスピースカバー108が開位置にあるとき、ユーザが湿度センサの近くに指を置くことを阻止してよい。
【0074】
湿度センサは、吸入デバイス100の外部の周囲湿度といった湿度を測定するように構成されてよい。したがって、メインハウジング104及び/又はトップキャップ102は、湿度センサがハウジングの外部の周囲湿度を測定することを可能にする開口(例えば、通気口)を含んでよい。代替的に又は追加的に、湿度センサは、吸入デバイス100のトップキャップ102、メインハウジング104、及び/又は、マウスピース106のうちの1つ又は複数の内部といった、吸入デバイス100内の湿度を測定するように構成されてよい。内部湿度および外部湿度の両方を測定する能力は、電子モジュール120が、ドライパウダー薬剤が凝集するリスクがあるかどうかの判定を可能にし得る。従って、電子モジュール120は、過剰湿度状況または不足湿度状況を検出するように構成されてよく、そして、通信回路129に、湿度メッセージを外部デバイス(例えば、モバイルデバイス)に送信させるように構成されてよい。
【0075】
湿度センサは、電子モジュール120がアクティブ状態にあるとき(例えば、本明細書に記載されるように、アクティブ状態の測定モードにあるとき)、湿度測定値を取得するように構成されてよい。例えば、湿度センサは、圧力センサが圧力測定を行っているのと同時に湿度測定を行うように構成されてよく、これは、例えば、マウスピースカバー108が開位置へ動かされた後、所定の時間(例えば、1~3分)の間であってよい。代替的に又は追加的に、湿度センサは、マウスピースカバー108が閉状態にある間(例えば、電子モジュール120が周期的にスリープ状態から立ち上がって通知状態に入るとき)、定期的に圧力測定を行ってよい。
【0076】
配向センサは、加速度計、重力(G)センサ、ジャイロスコープ、磁力計等を含んでよい。配向センサは、電子モジュール120のコントローラに、配向値(例えば、加速度、回転、方向など)、及び/又は、時間にわたって集計された配向値を提供するように構成されてよい。配向センサは、電子モジュール120に位置してよい。例えば、配向センサは、電子モジュール120内に組み込まれてよい。
【0077】
配向センサは、電子モジュール120がアクティブ状態にあるとき(例えば、本明細書に記載されるように、アクティブ状態の測定モードにあるとき)に、配向測定を行うように構成されてよい。例えば、配向センサは、圧力センサが圧力測定を行っているのと同時に配向測定を行うように構成されてよく、これは、例えば、マウスピースカバー108が開位置に動かされた後、所定の時間(例えば、1~3分)でよい。したがって、電子モジュール120は、配向センサからのフィードバックを使用して、1回分の用量の薬剤が薬剤リザーバ110から投与カップ116に計量されるとき、及び/又は、ユーザによる1回分の用量の薬剤の吸入中に、吸入デバイス100が適切な配向にあったかどうかを判定するように構成されてよい。
【0078】
例えば、電子モジュール120は、配向センサからのフィードバックを使用して、吸入デバイス100が上下逆さま(すなわち、キャップ102がマウスピースより下方に配向している)といった不適切な位置で使用されているかどうかを判定するように構成されてよい。吸入デバイス100(例えば、または任意のpMDI)の不適切な配向は、吸入デバイス100の誤使用を示し得る、というのも、例えば、吸入デバイス100が不適切な位置にあるときには薬剤が適切に投与されないかもしれないからである。さらに、ユーザの中には、横になっているときに吸入デバイス100を使用する者もいる。したがって、配向センサからのフィードバックにより、電子モジュール120は、吸入器の使用(例えば、薬剤の送達、バルブ再補充などの薬剤の準備、及び/又は、同様のもの)がネガティブな影響を受けたこと、したがって、1回分の用量の薬剤が適切に送達されないかもしれないといったことを判定し、ユーザに通知することができる。
【0079】
電子モジュール120のコントローラは、センサシステム128からの値(読取値)に対応する信号を受信してよい。コントローラは、センサシステム128から受信した信号を用いて、1つ又は複数のパラメータ(例えば、ピーク流量、ピーク流量までの時間、吸入量、吸入持続時間、温度、湿度レベル、吸入デバイス100の配向など)を計算、推定、または、他の方法で決定してよい。流量パラメータは、例えば、吸入デバイス100の流路119を通る空気流のプロファイルを示し得る。例えば、圧力センサが0.3キロパスカル(kPA)の圧力変化を記録する場合、電子モジュール120は、その変化が流路119を通る約45リットル/分(Lpm)の空気流量に対応するものであると決定してよい。図8は、センサシステム128によって得られた圧力測定値と、流路119を通る空気流量との間の例示の関係を示すグラフ800を表す。図8に示されるプロファイルは単に例示的なものであり、決定された空気流量は、吸入デバイス100およびその内部構成要素のサイズ、形状、及び/又は設計に依存し得ることが理解されるのであろう。
【0080】
図9を参照してより詳細に説明されるように、吸入デバイス100は、外部デバイス(例えば、モバイルデバイス902、ウェアラブルなど)にデータを転送するための、Bluetooth無線といった通信回路を含んでよい。外部デバイスは、ユーザへのデータの表示を可能にするために、ソフトウェア(例えば、モバイルアプリケーション)またはウェブインターフェースを含んでよい。吸入デバイス100は、吸入デバイス100のセンサのうちの1つ又は複数から受信したデータを外部デバイスに転送してよい。例えば、温度センサおよび湿度センサによって決定された温度データおよび湿度データは、(例えば、外部デバイスの位置に基づくより一般的な気象データとは対照的に)、吸入デバイス100が使用された微小環境を示し得る。吸入デバイス100が使用される状況(例えば、屋内でよい)は、一般的な位置ベースの気象情報とは異なってよい。
【0081】
上述のように、センサ(例えば、温度センサ、湿度センサ、及び/又は配向センサ)は、吸入器の使用時に測定値を検出してよく、または定期的な測定値を取得してもよい。さらに、電子モジュール120は、吸入デバイス100が保護パウチから取り出された日に、ベースライン湿度測定値を決定してよい。パウチは、ユーザによる吸入デバイス100の最初の使用の前に、吸入デバイス100がユーザに送達されるパッケージングでよい。例えば、吸入デバイス100は、パウチから取り出されるとき、制御された低湿度環境にあってよい。その後、吸入デバイス100は、湿度測定が定期的に行われる場合、湿度のスパイク(急な上昇)を決定してよい。
【0082】
吸入デバイス100は、当該デバイスがパウチから出されたときを、例えばセンサシステム128から受信した測定値に基づいて、検出してよい。吸入デバイス100は、当該デバイスがパウチから出されたことを検出すると、パウチ外イベント(out-of-pouch event)を生成してよい。パウチ外イベントは、パウチから出されたときの吸入デバイス100の1つ又は複数の特性、例えば、それがパウチから出された時刻、吸入デバイス100の相対温度または相対湿度、及び/又は、吸入デバイスがパウチから出されたときの環境などを示してよいが、これらに限定されない。
【0083】
吸入デバイス100はまた、当該デバイスがパウチから出されたかどうか、及び/又は、吸入デバイス100がパウチから取り出されたことと吸入デバイス100の最初の使用との間の遅延量を、例えば、センサシステム128から受けた測定値(例えば、特定の閾値を超える湿度変化など)に基づいて、検出してよい。さらに、吸入デバイス100は、「パウチ外」時間を割り出してよく、「パウチ外」時間は、当該吸入デバイス100がパウチから出されてからの合計時間でよく(例えば、および、吸入器の寿命を示してよい)。吸入デバイス100は、吸入デバイス100がパウチから出されたときを記録し、吸入デバイス100がパウチから出ている総時間量を記録し、パウチ外時間が閾値時間を超えたとき(例えば、投与イベントの総数または吸入デバイス100の最初の使用からの時間に基づくのではなく)、ユーザに通知(例えば、場合によりモバイルアプリケーションを介して)を提供してよい。
【0084】
いくつかの例では、パウチは、スマートパウチでよい。例えば、スマートパウチは、電子機器(例えば、電子モジュール120の構成要素の全てまたはサブセットなど)を含むパウチに相当してよい。例えば、スマートパウチの電子機器は、吸入デバイス100がパウチから出されるときの吸入デバイス100の環境の湿度及び/又は温度を決定するように構成されてよい。次いで、スマートパウチは、場合によっては吸入デバイス100がパウチから出されたときのタイムスタンプと共に、温度測定値及び/又は湿度測定値を外部デバイス及び/又は吸入デバイス100に伝達してよい。いくつかの例では、パウチ及び/又は吸入デバイス100は、近接場通信(NFC)チップセットを含んでよく、パウチ及び/又は吸入デバイス100は、NFC通信プロトコルを用いて、吸入デバイス100がパウチから離れるときを検出することができる。
【0085】
吸入デバイス100は、定期的に、及び/又は、吸入器の使用(例えば、マウスピースカバー108の開放によって、及び/又は、吸入を示す閾値を超える圧力測定値によって判定される)時に、温度測定値、及び/又は、湿度測定値を受信してよい。吸入デバイス100及び/又は外部デバイスは、定期的な温度測定値及び/又は湿度測定値を用いて、吸入デバイス100が保管されている状況を監視し、割り出してよい。吸入デバイス100及び/又は外部デバイスは、温度測定値及び/又は湿度測定値が使用説明書(IFU)によって規定されている限度を超える場合(例えば、測定値が限度を一回超える場合、及び/又は、所定の期間に渡って限度を複数回超える場合、及び/又は、同様の場合)に、ユーザに警告してよい。吸入デバイス100及び/又は外部デバイスは、吸入デバイス100が使用される時に、吸入デバイス100の温度、及び/又は、湿度(例えば、及び/又は吸入デバイス100を周囲の環境)を決定してよい。例えば、吸入デバイス100は、浴室またはシャワー室といった高温及び/又は多湿環境で使用または保管される場合、吸入デバイス100のドライパウダー薬剤は、悪影響を受けるかもしれない。
【0086】
吸入デバイス100(例えば、及び/又は外部デバイス)は、温度測定値及び/又は湿度測定値に基づいて、吸入デバイス100が故障するかもしれないことを判定または予測するように構成されてよい。例えば、温度測定値及び/又は湿度測定値が、吸入デバイス100が所定の閾値を超える、または、所定の使用回数(例えば、10回より大きい閾値)において当該閾値を超える温度または湿度を有する環境で使用されることを示す場合、吸入デバイス100は、吸入デバイス100が故障または誤作動する可能性が非常に高いと判定してよく、そして、吸入デバイス100はそれに応じて(例えば、搭載LEDの使用を通じて、外部デバイスを通じてなど)ユーザに警告してよい。
【0087】
いくつかの例では、吸入デバイス100は、複数の圧力センサを含んでよい。そのような場合、これらの圧力センサは、吸入デバイス100内の異なる場所に位置してよい。したがって、吸入デバイス100は、所定の閾値を超える複数の圧力センサの圧力測定値間の差に基づいて、吸入デバイス100の部分閉塞を検出するように構成されてよい。例えば、吸入デバイス100は、所定の閾値を超える複数の圧力センサの圧力測定値間の差に基づいて、薬剤(例えば、ドライパウダー薬剤)が通気口125を閉塞していることを判定するように構成されてよい。吸入デバイス100は、所定の閾値を超える複数の圧力センサの圧力測定値間の差に基づいて、ユーザ、吸入器の製造会社、またはヘルスケアプロバイダー(HCP)に通知を提供してよい。吸入デバイス100は、通知を直接提供してよく(例えば、音声アラート及び/又は光源を点灯することなど)、及び/又は、データ及び/又は通知を外部デバイス(例えば、スマートフォン)に送信してよく、外部デバイスは、通知をユーザに提供してよい。
【0088】
吸入デバイス100の使用時の湿度及び/又は温度は、ユーザの肺への薬剤の送達に影響を及ぼすかもしれない。例えば、ユーザの肺/気道は、より高い湿度ではより開放されるかもしれないし、より低い温度ではより収縮されるかもしれない。したがって、吸入デバイス100の薬送達は、弛緩した気道または収縮した気道によって影響を受けるかもしれず、これは、例えば、ユーザにおける制御された喘息または制御されていない喘息のいずれかにつながるかもしれない。
【0089】
電子モジュール120のコントローラは、例えば、吸入デバイス100がどのように使用されているか、吸入デバイス100が使用または保管されている状況、及び/又は、使用または保管が1用量の薬剤の送達に影響を及ぼし得るかどうかの評価の一部として、センサシステム128から受けた信号及び/又は決定されたパラメータを、1つ又は複数の閾値または範囲と比較してよい。例えば、決定された空気流指標が特定の閾値未満の空気流量を有する吸入に対応する場合、電子モジュール120は、吸入デバイス100のマウスピース106からの吸入がなかったか、または不十分な吸入があったと判定してよい。決定された空気流指標が特定の閾値を超える空気流量を有する吸入に対応する場合、電子モジュール120は、マウスピース106からの過剰な吸入があったと判定してよい。決定された空気流指標が特定の範囲内の空気流量を有する吸入に対応する場合、電子モジュール120は、吸入が、「良好」である、または1回分の用量の薬剤全部が送達されることをもたらすであろう、と判定してよい。
【0090】
上述のように、電子モジュール120は、LEDなどのインジケータを含んでよい。インジケータは、吸入デバイス100の使用及び/又は吸入デバイス100が使用または保管されている状況に関するフィードバックを、ユーザに提供するように構成されてよい。
したがって、一例では、吸入デバイス100の配向が配向範囲(例えば、図1および図2に例示される軸「A」によって定義されるような、最適な配向角度から45度を超える任意の測定された配向角度)の外にある場合、LEDを点灯させ、色変化させ、及び/又は、点滅させてよい。同様に、電子モジュール120は、吸入デバイス100の周囲温度及び/又は内部温度が温度範囲外(例えば、吸入デバイス100に対して特有の保管範囲外)にある場合、電子モジュール120は、LEDを点灯させ、色変化させ、及び/又は、点滅させてよい。さらに、吸入デバイス100の周囲湿度及び/又は内部湿度が湿度範囲外にある場合、電子モジュール120は、LEDを点灯させ、色変化させ、及び/又は、点滅させてよい。いくつかの例では、湿度範囲は、IFU内で特定された相対湿度範囲であり、例えば、特定の期間(例えば、アルブテロール含有吸入器では特定の湿度を超える湿度で13ヶ月、フルチカゾン含有吸入器では1ヶ月)と関連付けられてよい。
【0091】
吸入デバイス100で実行されるものとして記載されているが、パラメータは1つ又は複数の外部デバイスにより(例えば、部分的にまたは全体的に)計算及び/又は評価されてよい。より具体的には、電子モジュール120内の無線通信回路129は、トランスミッタ、及び/又は、レシーバ(例えば、トランシーバ)、および、付加的な回路を備えてよい。例えば、無線通信回路129はBluetoothチップセット(例えば、Bluetooth Low Energyチップセット)、ZigBeeチップセット、Threadチップセットなどを含んでよい。かくして、電子モジュール120は、データ(例えば、圧力測定値、温度、湿度レベル、吸入器の配向といった、コントローラによって決定されたパラメータ)を、スマートフォンといった外部デバイスに、無線で提供してよい。外部デバイスは、受信した情報を処理するための、および、本明細書で説明される任意の通知及び/又はコンプライアンスおよびアドヒアランスフィードバックを、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して吸入デバイス100のユーザに提供するためのソフトウェアを含んでよい。
【0092】
図7A-7Dは、マウスピースカバー108が開かれてマウスピース106を露出させるとともに1回分の用量の薬剤を流路119で利用可能にする際の吸入デバイス100の内部動作の一例を説明する。吸入デバイス100の他の例が本明細書で説明される動作のサブセット(一部分)を含んでよいことを理解されたい。図7Aを参照して、スライダ140の末端145は、メインハウジング104内に存在するヨーク118に当接するように構成されてよい。マウスピースカバー108が閉位置にあるとき、スライダ140のアーム142は、スイッチ130と接触していなくてよい。さらに、スライダスプリング144およびベローズスプリング114は、圧縮状態であってよい。マウスピースカバー108が開かれてマウスピース106を露出させる際に、ヨーク118は、例えば、ヨーク118とマウスピースカバー108との間の機械的接続ゆえに、メインハウジング104内で上方に動いてよい。ヨーク118の上方への動きによって、例えば図7Bに示されるように、スライダ140がトップキャップ102内で上方に動き、スライダスプリング144およびベローズスプリング114をさらに圧縮させてよい。
【0093】
マウスピースカバー108が例えば図7Cに示されるように全開状態に向かって移動し続ける際に、マウスピースカバー108は、ヨーク118が(例えば、ベローズスプリング114によって加えられる下向きの力により)メインハウジング104内に下降することをもたらしてよい。ヨーク118の動きは、スライダ140が(例えば、スライダスプリング144によって加えられる下向きの力により)降下することをもたらしてよく、これにより、スライダ140のアーム142がスイッチ130に係合し、スイッチ130を作動させ始めてよい。スライダ140の末端145がヨーク118の頂部上に載置され得るので、スライダ140の下方への移動は、ヨーク118の位置によって制限されてよい。
【0094】
マウスピースカバー108が開き続けている際に、図7Dに示されるように、スライダ140のアーム142がスイッチ130を(例えば、完全に)作動させてよく、これにより、オフ状態またはスリープ状態からアクティブ状態へといった、電子モジュール120を状態変化させる信号を生成してよい。したがって、電子モジュール120のコントローラは、センサシステム128を立ち上げ、当該システムに電力を供給して、センサシステム128が測定値を取得できるようにしてよい。さらに、マウスピースカバー108の開放によってもたらされるヨーク118の運動により、ヨーク118がベローズ112を圧縮して、1回分の用量の薬剤が薬剤リザーバ110から投与カップ116へ送達され、その結果、当該薬剤が流路119で利用可能になってよい。薬剤は、ユーザがマウスピース106から吸入するとき、投与カップ116から流路を通ってマウスピース106外へ送達されてよい。また、マウスピースカバー108が全開位置に達すると(例えば、図7Dに示されるように)、スライダ140はもはやヨーク118と接触しなくてよい(例えば、ストッパ144は、スライダ140がもはやヨーク118と接触しなくなるようにスライダ140の上下移動を止めてよい)。
【0095】
電子モジュール120は、複数の電力状態を有し、その各々がそれぞれの電力消費レベルを有してよい。例えば、電子モジュール120は、システムオフ状態、スリープ状態、及び/又は、アクティブ状態で作動するように構成されてよい。電子モジュール120がアクティブ状態にある間、電子モジュール120は、測定モード、データ格納/データ処理モード、通知モード、及び/又は、接続モードといった1つ又は複数のモードで作動してよい。電子モジュール120が一度に複数のモードで作動してよい(例えば、モードが重複してよい)ことが、理解されるであろう。
【0096】
測定モードでは、電子モジュール120のコントローラは、センサシステム128の電源をオンにしてよい。コントローラは、センサシステム128に、所定の期間(例えば、60秒まで)、及び/又は、マウスピースカバー108が閉じられるか、または、圧力変化が検出されなくなるまで、圧力測定値、温度値、湿度値、配向値などを取得させてよい。コントローラは、電力を更に節約するために、センサシステム128が値を取り込んでいる間に電子モジュール120の1つ又は複数の構成要素をオフにしてよい。センサシステム128は、任意の適切なレートで値をサンプリングしてよい。例えば、センサシステム128は、100Hzのサンプリングレートを、したがって10ミリ秒のサイクル時間を有してよい。センサシステム128は、測定サイクルが完了した後に、測定完了割込みを発生させてよい。割込みは、コントローラを立ち上げるか、または、コントローラに、電子モジュール120の1つ又は複数の構成要素をオンさせてよい。例えば、センサシステム128が1つ又は複数の圧力測定値、温度値、湿度値、配向値などをサンプリングした後、または、サンプリングしている間に、コントローラはデータを処理及び/又は格納し、測定が完了すると、センサシステム128の電源をオフにしてよい。
【0097】
いくつかの例では、電子モジュール120のコントローラは、温度センサ及び/又は湿度センサに、測定モード間の都度、単一の測定値を取得させるように構成されてよく、配向センサに、測定モードを通して、周期的(例えば、連続的)に測定値を取得させるように構成されてよい。従って、電子モジュール120のコントローラは、マウスピースカバー108が閉位置から開位置に動かされることに応答して、単一の温度測定値及び/又は単一の湿度測定値を記録するように構成されてよく、そして、追加的に、電子モジュール120のコントローラは、マウスピースカバー108が閉位置から開位置に動かされることに応答して、吸入デバイス100の配向を周期的(例えば、連続的)に監視するように構成されてよい。
【0098】
データ格納/データ処理モードでは、コントローラは、電子モジュール120内のメモリの少なくとも一部を電力供給によりオンにしてよい。コントローラはセンサシステム128からの値を処理して、パラメータ(例えば、利用状況及び/又は保管状況)を演算し、推定し、計算し、または他の方法で決定し、当該パラメータをメモリに格納してよい。コントローラはまた、値及び/又はパラメータを1つ又は複数の閾値または範囲と比較して、吸入デバイス100がどのように使用されているか、及び/又は、デバイス100が使用されている状況を評価してもよい。比較の結果に応じて、コントローラは、インジケータを駆動して、吸入デバイス100のユーザにフィードバックを提供してよい。上述したように、電子モジュール120は、測定モード、および、データ格納/データ処理モードで同時に作動してよい。
【0099】
接続モードでは、通信回路およびメモリが電力供給によりオンにされてよく、電子モジュール120がスマートフォンなどの外部デバイスと「ペアリング」されてよい。コントローラは、メモリからデータを取り出し、そのデータを外部デバイスに無線で送信してよい。コントローラは、メモリに現在格納されているデータのすべてを取り出し、送信してよい。コントローラはまた、メモリに現在格納されているデータの一部を取り出し、送信してもよい。例えば、コントローラは、どの部分が既に外部デバイスに送信されているか判定することができ、それから、以前に送信されていない部分を送信することができてよい。代わりに、外部デバイスは、特定の時刻の後にまたは外部デバイスへの最後の送信の後に、電子モジュール120によって収集された任意のデータなど、コントローラから特定のデータを要求してよい。コントローラは、もしあれば、メモリから特定のデータを取り出し、その特定のデータを外部デバイスに送信してよい。
【0100】
さらに、外部デバイスに接続されると、電子モジュール120は、当該モジュール120に格納されたデータへのアクセスを管理するために、Bluetooth special interest group(SIG)キャラクタリスティックを送信するように構成されてもよい。Bluetooth SIGキャラクタリスティックは、吸入デバイス100の製造会社名、吸入デバイス100のシリアル番号、吸入デバイス100のハードウェア改訂番号、及び/又は、吸入デバイス100のソフトウェア改訂番号のうちの1つ又は複数を含んでよい。外部デバイスに接続されると、電子モジュール120は、メモリからデータを取り出し、そのデータを外部デバイスに送信してよい。
【0101】
センサシステム128の値から、1つ又は複数のパラメータ(例えば、使用状況及び/又は保管状況)を決定した後、吸入デバイス100は接続モードにあるとき、パラメータ及び/又は関連するタイムスタンプ(例えば、内部カウンタに基づく)を外部デバイスに送信してよい。例えば、スイッチ130によって生成された信号、センサシステム128によって取得された測定読取値は、タイムスタンプされ、メモリに格納されてよい。前述のパラメータは、吸入デバイス100に関連する様々な使用状況及び/又は保管状況を示し得る。例えば、スライダ140の動きによりスイッチ130が「オン」と「オフ」との間で移行する際に、電子モジュール120のコントローラは、スイッチ130からの信号を使用して、各移行を記録しかつタイムスタンプしてよい。さらに、「オン」と「オフ」との間でのスイッチ130の移行はマウスピースカバー108の位置(例えば、開位置または閉位置)に相関し得るので、電子モジュール120がマウスピースカバー108の位置を経時的に検出し、追跡できるようにしてよい。電子モジュール120が、吸入デバイス100の流路119を通じた薬剤の送達を妨害することなく、マウスピースカバー108のステータスを検知および追跡できるようにしてよいことが理解されるであろう。
【0102】
吸入デバイス100は、1つ又は複数の機械式投与カウンタ及び/又は電子式投与カウンタの任意の組合せといった、複数の投与カウンタを含んでよい。機械式投与カウンタおよび電子式投与カウンタは、吸入器で起こる異なる作動や動作に基づいて、カウントされた用量を増分または減分する(例えば、投与イベントを記録する)ように動作させられてよい。上記のように、吸入デバイス100は、投与カウンタ111といった機械式投与カウンタを含んでよく、投与カウンタ111によって表示される値(例えば、カウントまたは数)は、機械的投与値(mechanical dose reading)と称されてよい。機械的投与値は、機械式投与カウンタ111によって、または、それに基づいて決定される投薬カウントに対応してよい。投与カウンタ111は、マウスピースカバー108が開かれるたびに、またはマウスピースカバー108が閉じられるたびに、前進(例えば、増分または減分)してよい。機械式投与カウンタ111はマウスピースカバー108の動きに基づいて作動されるものとして記載されているが、他の例では、機械式投与カウンタ111は、他の形態を取ってよく、及び/又は、吸入デバイス100の他の動作(例えば、薬剤が分配または準備されることをもたらし得る、吸入デバイス100のボタンのプッシュ、ダイヤルの回転、レバーまたはスイッチの動きなど)に基づいて動作されてよい。
【0103】
吸入デバイスは、例えば吸入デバイスの作動(例えば、マウスピースカバー108の動き、内部スイッチの作動など)に基づいて、及び/又は、センサシステム128からのフィードバックに基づいて(例えば、特定の閾値を超える流量を示すセンサシステム128からの測定値に基づいて)、投与イベントを記録する電子モジュール120を含んでよい。異なるセンサが、投与イベントが発生したかどうかを判定するための対応基準または閾値と関連付けられてよい。結果として、異なる状況は、第1のセンサからのデータに基づいて投与イベントの記録をもたらすものの、第2のセンサからの投与イベントの記録をもたらさないかもしれない。センサからのデータが吸入デバイスの電子モジュールによって、及び/又は、外部デバイスのプロセッサによって使用されて、投与イベントを記録するかどうかを判定する場合、記録された投与イベントは、電子的投与値(electronic dose reading)と称されてよい。
【0104】
電子的投与値は、スイッチ130が作動される場合に基づいて(例えば、マウスピースカバー108の開放の間にスイッチ130が作動されることに応答して生成される信号に基づいて)決定される投薬カウントまたは数値でよい。代替的に又は追加的に、電子的投与値は、吸入デバイス100に存在するセンサからのセンサデータを解析または処理することに基づいて決定される投薬カウントまたは数値でよい。電子的投与値データの例は、スイッチ130が作動されることに基づいて受信または生成される信号、及び/又は、圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、音響センサ、光学センサ、配向センサの1つ又は複数(または、これらの任意の組合せ)、及び/又は、吸入デバイスの任意のセンサからの任意の他の生データまたは処理されたデータを含んでよい。
【0105】
1つ又は複数のセンサからの1つ又は複数の電子的投与値/電子的投薬カウントは、互いに比較され、及び/又は、機械的投与値/機械的投薬カウントと比較されて、不一致(discrepancy)があるかどうか、及び/又は、不一致が閾値を超えるかどうかを判定してよい。一例では、1つ又は複数のセンサの第1のセットからの第1の電子的投与値を、1つ又は複数のセンサの第2のセットからの第2の電子的投与値と比較して、不一致があるかどうか、及び/又は、不一致が閾値を超えるかどうかを判定してよい。
【0106】
例えば、電子モジュール120は、スイッチ130と、圧力センサといった1つ又は複数のセンサとを含んでよい。電子モジュール120は、スイッチ130が作動されるたびに、投与イベントを記録してよく、これは、例えば、マウスピースカバー130が閉位置から開位置に動かされるときに実行され得る。例えば、スイッチ130がマウスピースカバー108の開放により作動されるたびに、スイッチ130によって生成された信号は、投与イベントとしてカウントされてよい。したがって、スイッチ130の作動の回数および投与カウンタ111における前進の回数は、投与トラッキングに関して同じ(または少なくとも類似の)結果をもたらすであろう。しかしながら、場合によっては、例えばユーザによる吸入デバイス100の誤作動ゆえに、スイッチ130の作動の回数および投与カウンタ111における前進の回数が異なるかもしれない。
【0107】
電子モジュール120によって収集され、格納されたデータ(例えば、記録された投与イベント)はまた、吸入デバイス100から送達された用量の投与回数を推定するために、及び/又は、薬剤リザーバ110内に残っている用量の投与回数を見積もるためにも使用されてよい。吸入デバイス100は、マウスピースカバー108が60回開かれると、60回分の用量を送達したとみなしてよい。吸入デバイス100は、所定の総投与回数、例えば全200回分の用量を送達するのに十分な薬剤を薬剤リザーバ110内に保管するように構成されてよい。したがって、吸入デバイス100は、マウスピースカバー108が60回開かれた後に140回分の用量が残っているとみなしてよい。
【0108】
スイッチ130が作動される都度に基づく投与のカウントに加えてまたはその代わりに、例えば、センサシステム128からの圧力センサが閾値(例えば、30リットル/分(L/min))を超える圧力測定値を提供するたびに、電子モジュール120は投与をカウントしてよい。電子モジュール120は、センサシステム128が閾値を超える圧力測定値を提供するたびに、投与イベントを記録(例えば、メモリに格納)してよい。上述のように、前回分の1用量の薬剤が脱凝集器121によって適切にエアロゾル化されず、及び/又は、投与カップ116から移送されなかった場合、ユーザがマウスピースカバー108を開くと薬剤が薬剤リザーバ110から送達されないかもしれない。したがって、マウスピースカバー108の開放または閉鎖に基づいて送達される用量の投与回数をカウントすることは、例えば、ユーザがマウスピース106から吸入することなくマウスピースカバー108を開閉する場合、吸入デバイス100によって送達される用量の実際の投与回数を正確に反映しないかもしれないことが理解されよう。
【0109】
例えば、吸入デバイス100内の脱凝集器121は、流路119を通る空気流量が30L/minなどの閾値を超えると、投与カップ116内の薬剤を(例えば、完全に)エアロゾル化するように構成されてよい。したがって、センサシステム128によって測定されたピーク空気流量が閾値(例えば、30LPM)を超えるたびに、1回分の用量が送達されたものとしてカウントされてよく、それによって、マウスピースカバー108が開かれたが、投与カップ116内の薬剤が、脱凝集器121によって部分的にだけエアロゾル化された(または全くエアロゾル化されなかった)状況を考慮することができる。
【0110】
吸入デバイス100(例えば、電子モジュール120のコントローラ)及び/又は外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションは、吸入デバイス100の2つ以上の投与カウンタ(例えば、機械的投与値及び/又は電気的投与値の任意の組合せ)の間の不一致を検出するように構成されてよい。検出された不一致は、投薬を検出する第1の方法及び投薬を検出する第2の方法を用いて決定された検出投薬における任意の相違であってよい。吸入デバイス100及び/又は外部デバイス(例えば、モバイルアプリケーション)は、機械式投与カウンタ(例えば、投与カウンタ111)によって表示される値に基づいて、及び/又は、スイッチ130の作動に基づく及び/又は吸入デバイス100の1つ又は複数のセンサから受信される信号に基づいて、検出投薬を決定してよい。例えば、吸入デバイス100及び/又は外部デバイスは、投与カウンタ111によってカウントされた投与回数と、電子モジュール120によってカウントされた投与回数との間の不一致を検出するように構成されてよい。代替的に又は追加的に、吸入デバイス100、及び/又は、外部デバイスは、電子モジュール120の2つの異なるセンサから受信した信号に基づいて、及び/又は、スイッチ130の作動に基づいてカウントされた用量の投与回数と電子モジュール120のセンサから受信した信号とに基づいて、カウントされた投与回数の間の不一致を検出するように構成されてよい。不一致は、用量の投与カウント数の差として検出されてよい。例えば、任意の数のおよび組合せの投与カウント検出方法が用いられてよく、任意の2つ以上の用量カウント検出方法の間の差が、不一致と見なされてよい。
【0111】
一例として、投与イベント(例えば、投与カウント)は、圧力センサからの値といった空気流指標を用いて判定されてよい。投与イベント(例えば、投与カウント)は、スイッチ130の作動に基づいて判定されてよい。投与イベント(例えば、投与カウント)は、デバイスの温度センサ、湿度センサ、及び/又は配向センサといった別のセンサからのフィードバックに基づいて判定されてよい。電子モジュール120のコントローラは、流路119を通る空気流が閾値(例えば、30LPM)を超えるたびに、スイッチ130が作動されるたびに、及び/又は、吸入デバイス100の1つ又は複数の他のセンサからのフィードバックに基づいて、投与イベントを追跡するように構成されてよい。
【0112】
吸入デバイス100(例えば、電子モジュール120のコントローラ)、及び/又は、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションは、2つ以上の投与カウンタによってカウントされた投与回数及び/又は投与値の間の不一致が投与不一致閾値(例えば、5回分の用量不一致)を超える場合に、吸入器の誤用または欠陥についての通知(例えば、警告)を特定および提供するように構成されてよい。例えば、電子モジュール120は、不一致が投与不一致閾値を超える場合、LEDを点灯させ、色変化させ、及び/又は、点滅させてよい。代替的または追加的に、モバイルアプリケーションは、不一致が投与不一致閾値を超える場合に通知を提供してよい。さらに、モバイルアプリケーションは、不一致が投与不一致閾値を超える場合、カスタマーサービスセンターに電話をかけるように、及び/又は、吸入デバイス100の使用のための指示を説明するビデオを再生するように、ユーザに促してよい。さらに、吸入デバイス100(例えば、電子モジュール120のコントローラ)、及び/又は、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションは、投与イベント(例えば、スイッチ130の作動に基づく、または、機械的投与値に基づく)と吸入イベント(例えば、電子モジュール120の1つ又は複数のセンサからのフィードバックに基づく)との間の差が投与不一致閾値を超える場合に、吸入器の誤用または欠陥についての通知を特定しかつユーザに提供するように構成されてよい。
【0113】
例えば、吸入デバイス100、及び/又は、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションは、不一致のタイプに特有(固有)の通知を提供してよい。通知は、ユーザ、吸入器の製造業会社、またはHCPに提供されてよい。例えば、不一致が、ユーザが、当該ユーザが吸入デバイスを通じて吸入した回数よりも多い回数(例えば、吸入デバイス100の1つ以上のセンサからのフィードバックに基づく)、マウスピースカバーを操作した(例えば、または吸入デバイス100の別の機械的作動構成要素を操作した)ことを示す場合、吸入デバイス100が作動されるたびに、通知は、ユーザ、吸入器の製造会社、またはHCPに、ユーザが吸入していないことを通知してよい(例えば、または、ユーザが複数の低吸入イベントまたは吸入なしイベントに基づいて十分に強く吸入していない場合、通知は、適切な吸入の仕方をユーザに指示してよい)。さらに、不一致が、ユーザが、スイッチ130が作動された回数よりも多い回数、マウスピースカバーを操作した(例えば、または吸入デバイス100の別の機械的作動構成要素を操作した)ことを示す場合、通知は用量送達機構と電子モジュールのスイッチ130との間の接続に不具合があること(例えば、機械的破損、水による損傷などといった電気的故障)を示してよい。不一致が、電子的投与値(例えば、スイッチ130が作動されること及び/又はセンサデータに基づく)より少ない回数、ユーザがマウスピースカバー(例えば、または、吸入デバイス100の別の機械的作動構成要素)を操作したことを示す場合、通知は、機械式投与カウンタ111及び/又は用量送達機構に欠陥があるかもしれないことを示してよい。
【0114】
より一般的には、吸入器の使用に基づくセンサデータ間に期待される関係があってよく、不一致が生じているか、および、エラーの原因が何であるかを判定するために、2つ以上のセンサからのデータ間に差分閾値が設定されてよい。従って、2つの異なるセンサからのデータ間の値の差に対する閾値は、それらの2つのセンサに対して特有であってよい。一例として、圧力センサおよび音響センサからの値に特有の不一致閾値が存在し得る場合である。圧力センサおよび音響センサからの値に特有の不一致閾値は、圧力センサおよび機械式センサからの値に特有の不一致閾値とは異なる場合がある。センサ特有不一致閾値を超過したことに基づいて通知が提供されてよい。様々なセンサ特有不一致閾値を超えることは、様々なタイプのイベントまたはエラーであると解釈され得る。例えば、圧力センサからのデータと音響センサからのデータとの間の不一致(例えば、第1のセンサ対センサ閾値を超える)は、センサのうちの1つ又は複数で欠陥が生じたことを示す通知をもたらしてよい。別の例では、圧力センサからのデータと機械式センサからのデータとの間の不一致(例えば、第2のセンサ対センサ閾値を超える)は、患者が適切に吸入していないことを示す通知をもたらしてよい。
【0115】
吸入デバイス100は、個々の投与イベント、生のセンサデータ、及び/又は、電子モジュール120によってカウントされた投与回数を、外部デバイスに(例えば、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションに)通信してよい(例えば、無線で通信してよい)。例えば、電子モジュール120は、(例えば、スイッチ130の作動、及び/又は、1つ又は複数のセンサからのフィードバックに基づいて)1つ又は複数の電子的投与値を決定してよく、または、電子モジュール120は、(スイッチ130の作動、及び/又は、1つ又は複数のセンサからのフィードバックに基づいて(例えば、このフィードバックが閾値を超える場合など))投与イベント及び/又は生のセンサデータをメモリに格納し、投与イベント及び/又は生のセンサデータを外部デバイスに送信してよく、そして、外部デバイスは、(1つ又は複数の)電子的投与値を計算してよい。外部デバイスは、例えば、モバイルアプリケーションに投与回数を手動で入力するようにユーザまたは技術者に促すことによって、外部デバイスのカメラを用いて(例えば、投与カウンタ111の写真を撮るように、または、投与カウンタ111に向けてカメラを保持するようにユーザに促すことによって)、及び/又は、同様のものによって、機械的投与値(例えば、投与カウンタ111によってカウントされる投与回数)を決定してよい。
【0116】
投与カウンタ111によってカウントされた投与回数と電子モジュール120によってカウントされた投与回数との間の不一致が投与不一致閾値を超えるときを判定することは、臨床試験結果を検証すること、患者の非正常な使用を検出すること、装置の欠陥を検出することなどにおいて有用かもしれない。不一致は、例えば、吸入デバイス100の使用前または使用後に、ユーザがマウスピースカバー130を完全に開放及び/又は閉鎖しないことに起因し得る。不一致は、例えば、ユーザが1回分の用量の薬剤を適切に吸入していない(例えば、1回分の用量の薬剤が吸入デバイス100から出てユーザの肺に入るのに十分な力で吸入しない)ことに起因し得る。
【0117】
投与不一致閾値は、吸入デバイス100の寿命を通じて可変でよい。吸入デバイス100の寿命にわたって決定される、投与カウンタ111に関連する自然な機械的エラー率が存在するかもしれない。例えば、投与カウンタ111は、薬剤リザーバ200の全200回分の用量の投与の過程の間、+/-5回分の投与のエラー率を有するかもしれない。すなわち、吸入デバイス100の適切な使用を仮定すると、投与カウンタ111は、全200回分の用量の投与の過程の間に、せいぜい+/-5回分の投与、はずれているかもしれない。同様に、電子モジュール120によって実行される空気流指標測定に関連するエラー率があるかもしれない。エラー率は、薬剤リザーバ110の全容量の投与に基づいて決定されるので、投与不一致閾値は、薬剤リザーバ内に残っている用量の投与回数に基づいて可変であってもよい。したがって、投与不一致閾値は、薬剤リザーバ110内に残っている用量の投与回数に基づいて変化してよい。
【0118】
投与不一致閾値は、薬剤リザーバ110内の推定残存用量が減少するにつれて、線形にまたは対数的に増加してよい。例えば、投与不一致閾値は、電子モジュール120が薬剤リザーバ110内に残存している用量の投与回数が第1の範囲(例えば、200~150回分の用量が残っている)にあると推定する場合、第1の数値(例えば、2回分)、推定された残存用量が第2の範囲(150~50回分残存)にある場合、第2の数値(例えば、4回分)、および、推定された残存用量が第3の範囲(50回分未満残存)にある場合、第3の数値(例えば、5回分)でよい。
【0119】
電子モジュール120のメモリに格納されたデータ(例えば、スイッチ130によって生成された信号、センサシステム128によって取得された測定読取値、及び/又は、電子モジュール120のコントローラによって演算されたパラメータ)は、外部デバイスに送信されてよく、この外部デバイスは、データを処理および分析して、吸入デバイス100に関連する使用パラメータを決定してよい。さらに、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションは、電子モジュール120から受信したデータに基づいて、ユーザのためにフィードバックを生成してよい。例えば、モバイルアプリケーションは、毎日、毎週、または毎月のレポートを生成し、エラーイベントまたは通知の確認を提供し、ユーザに教育的なフィードバックを提供し、及び/又は、同様のものを提供してよい。
【0120】
吸入デバイス100及び/又は外部デバイスは、(例えば、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションを介して)吸入デバイス100のユーザの使用に基づいてユーザに通知を提供するように構成されてよい。例えば、吸入デバイス100及び/又は外部デバイスは、(例えば、外部デバイスに存在するモバイルアプリケーションを介して)パウチ関連イベント(例えば、パウチ外イベント(out-of-pouch event)、パウチから出ている時間)に基づいて、2つ以上の投与カウンタ値(例えば、機械式投与カウンタおよび電子式投与カウンタからの値)の間で検出された不一致に基づいて、センサシステム128からのフィードバックに基づいてなどで、通知を提供してよい。通知は、各イベントに固有でよい。通知は、例えば、LEDの点灯、吸入デバイス100または外部デバイスのスピーカを介した可聴出力の生成、モバイルアプリケーションを介したメッセージの提示、エラービデオまたは使用のためのインストラクションの提示、テキスト、電子メール、またはインスタントメッセージを外部デバイスまたはDHPに送信することによる、及び/又は、DHPに通知を提供することによるものでよい。
【0121】
図9は、吸入デバイス100、外部デバイス(例えば、モバイルデバイス902)、パブリック及び/又はプライベートネットワーク904(例えば、インターネット、クラウドネットワーク)、ヘルスケアプロバイダ906、および、第三者908(例えば、友人、家族、製薬会社など)を含む例示のシステム900の図である。モバイルデバイス902は、スマートフォン(例えば、iPhone(登録商標)スマートフォン、Android(登録商標)スマートフォン、またはBlackberry(登録商標)スマートフォン)、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、ワイヤレス対応メディアデバイス(例えば、MP3プレーヤ、ゲームデバイス、テレビ、メディアストリーミングデバイス(例えば、アマゾンファイアTV、ネクサスプレーヤなど)など)、タブレットデバイス(例えば、iPad(登録商標)ハンドヘルドコンピューティングデバイス)、Wi-Fiまたはワイヤレス通信対応テレビ、または、任意の他のインターネットプロトコル対応デバイスを含んでよい。例えば、モバイルデバイス902は、Wi-Fi通信リンク、Wi-MAX通信リンク、Bluetooth(登録商標)またはBluetoothスマート通信リンク、近距離通信リンク、セルラー通信リンク、テレビジョンホワイトスペース通信リンク、または、これらの任意の組合せを介して、RF信号を送信及び/又は受信するように構成されてよい。モバイルデバイス902は、パブリック及び/又はプライベートネットワーク904を介して、ヘルスケアプロバイダ906、及び/又は、1つ又は複数の第三者908(例えば、友人、家族、製薬会社など)にデータを転送してよい。
【0122】
上述のように、吸入デバイス100は、データをモバイルデバイス902に転送するために、Bluetooth無線のような通信回路を含んでよい。データは、スイッチ130によって生成された信号、センサシステム128によって取得された測定読取値、及び/又は、電子モジュール120のコントローラによって演算されたパラメータを含んでよい。吸入デバイス100は、例えば、プログラム命令、オペレーティングシステム変更、投薬情報、アラートまたは通知、受領通知などのデータを、モバイルデバイス902から受信してよい。
【0123】
モバイルデバイス902は、データを処理し、分析して、吸入デバイス100に関連する使用パラメータを決定してよい。例えば、モバイルデバイス902は、データを処理して、吸入なしイベント、低吸入イベント、良好な吸入イベント、過剰吸入イベント、及び/又は、呼息イベントを識別してよい。モバイルデバイス902はまた、データを処理して、過少使用イベント、過剰使用イベント、および、最適使用イベントを識別してもよい。モバイルデバイス902は、データをさらに処理して、送達された用量の投与回数及び/又は残りの用量の投与回数を推定し、かつ、エラー状況を、例えばタイムスタンプエラーフラグに関連付けられたエラー状況を識別してよい。モバイルデバイス902は、ディスプレイ上のGUIを介して使用パラメータを視覚的に提示するためのディスプレイおよびソフトウェアを含んでよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9