(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240611BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240611BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2022036014
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】成島 範昭
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144413(JP,A)
【文献】特開2008-268883(JP,A)
【文献】特開2007-272061(JP,A)
【文献】特開2019-098923(JP,A)
【文献】実開平04-057881(JP,U)
【文献】特開2010-208580(JP,A)
【文献】特開2006-091104(JP,A)
【文献】実開昭63-156834(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されており、かつウインドシールドと対向する開口を有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、画像の表示光を出力する画像表示装置と、
前記筐体の内部に配置され、かつ前記開口を介して前記ウインドシールドと対向しており、前記表示光を前記ウインドシールドに向けて反射するミラーと、
前記開口に配置された透明なカバーと、
を備え、
前記筐体は、前記車両に設けられた遮光壁が前記開口における車両前側の端部から車両上方に向けて延在するように配置され、
前記カバーは、前記ウインドシールドと対向する外側面と、前記ミラーと対向する内側面と、を有し、かつ画像横方向と直交する断面において前記筐体の内方に向けた湾曲形状を有し、
前記遮光壁は、第一の外光に対して前記外側面を遮蔽し、
前記第一の外光は、前記カバーに向けて前記ウインドシールドを透過する外光のうち、前記遮光壁が無いと仮定した場合に前記車両のアイポイントへ向かう
前記表示光の光路に沿って前記外側面によって反射される外光であり、
前記内側面は、前記画像の歪み又は収差を補正するように形成された自由曲面であり、
前記断面における前記外側面に対する前記内側面の角度差は、第二の外光を前記遮光壁によって遮らせることができる範囲の値であり、
前記第二の外光は、前記カバーに向けて前記ウインドシールドを透過する外光のうち、前記カバーに入射して前記内側面によって反射されると仮定した場合に前記アイポイントへ向かう
前記表示光の光路に沿って反射される外光である
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記角度差は、前記内側面によって前記車両のアイリプスの下端に向かう
前記表示光の光路に沿って反射される前記第二の外光を前記遮光壁によって遮らせることができるように設定される
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記角度差は、前記外側面における第一の入射角と下限角度との差分の半分よりも小さく、
前記第一の入射角は、前記車両のアイリプスの下端へ向かうように前記外側面によって反射される前記第一の外光が前記外側面に入射する入射角であり、
前記下限角度は、前記外側面の法線に対する仮想線の傾斜角度であり、
前記仮想線は、前記外側面の各位置と前記遮光壁の上端とを結ぶ直線である
請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドアップディスプレイ等の車両用表示装置がある。特許文献1には、予め設定された特定方向に対して光に光学的作用を与え、且つ該光を透過させる光学手段と、光学手段を介して反射手段に映像光を投射する映像投射手段と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用表示装置において、部品数を増やすことなく表示品質を向上できることが望ましい。例えば、筐体に設けられた透明なカバーによって画像の歪み等を補正することができれば、部品の追加が不要となる。ここで、補正機能に基づいてカバーの形状を設計する場合に、外光によるゴーストが発生しないように留意する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、画像品質の向上と、ゴーストの抑制とを両立可能な車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置は、車両に搭載されており、かつウインドシールドと対向する開口を有する筐体と、前記筐体の内部に配置され、画像の表示光を出力する画像表示装置と、前記筐体の内部に配置され、かつ前記開口を介して前記ウインドシールドと対向しており、前記表示光を前記ウインドシールドに向けて反射するミラーと、前記開口に配置された透明なカバーと、を備え、前記筐体は、前記車両に設けられた遮光壁が前記開口における車両前側の端部から車両上方に向けて延在するように配置され、前記カバーは、前記ウインドシールドと対向する外側面と、前記ミラーと対向する内側面と、を有し、かつ画像横方向と直交する断面において前記筐体の内方に向けた湾曲形状を有し、前記遮光壁は、第一の外光に対して前記外側面を遮蔽し、前記第一の外光は、前記カバーに向けて前記ウインドシールドを透過する外光のうち、前記遮光壁が無いと仮定した場合に前記車両のアイポイントへ向かう光路に沿って前記外側面によって反射される外光であり、前記内側面は、前記画像の歪み又は収差を補正するように形成された自由曲面であり、前記断面における前記外側面に対する前記内側面の角度差は、第二の外光を前記遮光壁によって遮らせることができる範囲の値であり、前記第二の外光は、前記カバーに向けて前記ウインドシールドを透過する外光のうち、前記カバーに入射して前記内側面によって反射されると仮定した場合に前記アイポイントへ向かう光路に沿って反射される外光であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置において、カバーの内側面は、画像の歪み又は収差を補正するように形成された自由曲面であり、外側面に対する内側面の角度差は、第二の外光を遮光壁によって遮らせることができる範囲の値である。第二の外光は、カバーに向けてウインドシールドを透過する外光のうち、カバーに入射して内側面によって反射されると仮定した場合にアイポイントへ向かう光路に沿って反射される外光である。本発明に係る車両用表示装置は、画像品質の向上と、ゴーストの抑制とを両立できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両用表示装置が搭載された車両を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両用表示装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車両用表示装置の断面図である。
【
図4】
図4は、アイポイントの上端および下端に対応する光路を示す図である。
【
図5】
図5は、第一の入射角および下限角度を説明する図である。
【
図6】
図6は、カバーの各点に対する第一の外光を示す図である。
【
図7】
図7は、アイポイントに向けて反射される外光を示す図である。
【
図8】
図8は、遮光壁によって遮られる第二の外光を示す図である。
【
図9】
図9は、角度差の設定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図9を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置に関する。
図1は、実施形態に係る車両用表示装置が搭載された車両を示す図、
図2は、実施形態に係る車両用表示装置の斜視図、
図3は、実施形態に係る車両用表示装置の断面図、
図4は、アイポイントの上端および下端に対応する光路を示す図、
図5は、第一の入射角および下限角度を説明する図、
図6は、カバーの各点に対する第一の外光を示す図、
図7は、アイポイントに向けて反射される外光を示す図、
図8は、遮光壁によって遮られる第二の外光を示す図、
図9は、角度差の設定方法を説明する図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用表示装置1は、自動車等の車両100に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置である。車両用表示装置1は、画像の表示光Ltをウインドシールド110に向けて投影する。ウインドシールド110は、車両100のアイポイントEPに対して車両前方に位置しており、かつ車両前後方向D1においてアイポイントEPと対向している。表示光Ltは、ウインドシールド110の反射面110aによってアイポイントEPに向けて反射される。車両100のドライバは、表示光Ltによって虚像Viを視認することができる。虚像Viは、車両100の前方の対象物に重畳されて表示されてもよい。虚像Viは、車両100のメータ画像であってもよい。
【0012】
車両用表示装置1は、筐体2、画像表示装置3、ミラー4、カバー5、および制御部6を有する。筐体2は、アイポイントEPに対して車両前方に配置されており、例えば、インストルメントパネル120に収容されている。筐体2は、遮光性の材料で形成される。筐体2は、車両上下方向においてウインドシールド110と対向する開口21を有する。例示された開口21は、筐体2の上面に配置されており、筐体2の前端部に位置する。
【0013】
画像表示装置3およびミラー4は、筐体2の内部に配置されている。画像表示装置3は、画像の表示光Ltを出力する装置である。例示された画像表示装置3は、表示器31およびバックライトユニット32を有する。表示器31は、例えば、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)等の液晶表示装置である。画像表示装置3は、バックライトユニット32の光によって表示光Ltを生成する。表示器31およびバックライトユニット32は、制御部6によって制御される。
【0014】
ミラー4は、表示光Ltをウインドシールド110に向けて反射する反射部材である。ミラー4は、凹状の反射面41を有しており、画像を拡大することができるように構成されている。ミラー4の反射面41は、例えば、画像補正機能を有する自由曲面である。より詳しくは、反射面41の形状は、ウインドシールド110の反射面110aにおいて表示光Ltが反射されるときに生じる画像の歪みを補正するように設計されている。反射面41によって反射された表示光Ltは、更に、ウインドシールド110によってアイポイントEPに向けて反射される。
【0015】
カバー5は、筐体2の開口21に配置され、開口21を閉塞している。カバー5は、透明な部材であり、例えば、透明な樹脂で成型される。カバー5の形状は、筐体2の内方に向けて湾曲した形状である。カバー5の湾曲形状は、外光を遮光壁130に向けて反射するように定められている。
【0016】
遮光壁130は、インストルメントパネル120に設けられている。遮光壁130は、低い反射率を有しており、外光を吸収することができる。遮光壁130の表面形状は、光を拡散させる形状であってもよい。筐体2は、遮光壁130に対してアイポイントEPの側に配置される。より詳しくは、筐体2は、遮光壁130が開口21における車両前側の端部から車両上方に向けて延在するように配置される。つまり、遮光壁130は、カバー5に対して車両前方に配置されており、かつ車両上下方向D2に沿って延在している。より詳しくは、遮光壁130は、車両上下方向D2に沿って延在する対向面130bを有する。対向面130bは、開口21における車両前側の端部から車両上方に向けて立設されており、かつアイポイントEPと対向している。対向面130bは、車両上方へ向かうに従ってアイポイントEPの側へ近づくように、車両上下方向D2に対して傾斜している。
【0017】
カバー5は、外側面51と、内側面52と、を有する。外側面51は、車両上側を向く面であり、ウインドシールド110と対向している。内側面52は、車両下側を向く面であり、ミラー4と対向している。
【0018】
図2には、カバー5の斜視図が示されている。カバー5は、第一方向X、第二方向Y、および第三方向Zを有する。第一方向Xは、虚像Viの画像横方向に対応した方向であり、第二方向Yは、虚像Viの画像縦方向に対応した方向である。第三方向Zは、車両上下方向である。第三方向Zは、例えば、第一方向Xと直交している。
図1および
図2から分かるように、カバー5は、YZ平面において筐体2の内方に向けた湾曲形状を有する。YZ平面は、画像横方向と直交する断面である。YZ平面における外側面51の形状は、湾曲形状であり、例えば、円弧形状である。外側面51は、車両上下方向の下側に向けて湾曲している。XZ平面における外側面51の形状は、例えば、直線形状である。
【0019】
図2に示すように、外側面51は、上方から入射する外光L1を遮光壁130に向けて反射するように形成されている。外側面51の形状は、例えば、ウインドシールド110を透過して外側面51に入射する外光L1を遮光壁130に向けて反射することができる形状である。遮光壁130は、カバー5によって反射された外光がアイポイントEPに向かうことを抑制し、虚像Viの視認性を向上させることができる。例示された外側面51は、第二方向Yに沿って遮光壁130へ近づくに従って車両下方へ向かうように傾斜している。
【0020】
内側面52の形状は、自由曲面である。例えば、YZ平面における内側面52の形状、およびXZ平面における内側面52の形状は、自由曲線である。内側面52の形状は、画像の歪み又は収差を補正するように定められている。内側面52は、例えば、ミラー4の反射面41において発生する歪み、およびウインドシールド110の反射面110aにおいて発生する歪みの少なくとも一方を補正するように設計される。内側面52は、例えば、反射面41において発生する収差、および反射面110aにおいて発生する収差の少なくとも一方を補正するように設計される。内側面52は、画像の歪みおよび収差の両方を補正してもよく、画像の歪みおよび収差の何れか一方を補正してもよい。
【0021】
以下に説明するように、遮光壁130は、アイポイントEPへ向けて反射されてしまうような外光からカバー5を遮蔽することができるように配置されている。
図1に示すように、車両用表示装置1は、アイポイントEPへ向かう表示光Ltの光路10を有する。光路10は、カバー5を透過してアイポイントEPへ向かう表示光Ltの光路である。
図1には、光路10の一部として、画像の上端に対応する光路11、画像の下端に対応する光路13、および画像中央に対応する光路12が示されている。
【0022】
図3を参照して説明するように、ウインドシールド110を透過した外光がカバー5により光路10に沿って反射されてしまうと、外光がアイポイントEPに到達して画像の視認性を低下させてしまう。
【0023】
図3には、第一の外光L11が示されている。第一の外光L11は、カバー5に向けてウインドシールド110を透過する外光のうち、遮光壁130が無いと仮定した場合にアイポイントEPへ向かうように外側面51によって反射される外光である。第一の外光L11は、遮光壁130が無いと仮定した場合、遮光壁130の位置を通過して外側面51の反射位置51fに入射する。反射位置51fに対する第一の外光L11の入射角は、アイポイントEPへ向かう光路10に沿って反射されるような角度である。遮光壁130が無い場合、外側面51によって反射される反射光L21が光路10に沿ってアイポイントEPへ到達してしまう。
【0024】
遮光壁130の形状および配置は、第一の外光L11からカバー5を遮蔽することができるように定められている。言い換えると、車両用表示装置1は、第一の外光L11がカバー5によって遮蔽されるように配置される。車両用表示装置1は、遮光壁130によって第一の外光L11が遮断されることにより、虚像Viの視認性を向上させることができる。なお、遮光壁130がインパネ面130cを有する場合、遮光壁130は、インパネ面130cによって第一の外光L11を遮ることができる。インパネ面130cは、車両上方を向く面であり、対向面130bの上端130aからウインドシールド110に向けて延在している。
【0025】
ここで、
図4を参照して説明するように、目の位置に応じて表示光Ltの光路10は異なる。
図4には、車両100のアイリプスELが示されている。アイリプスELは、予め定められた空間領域であり、ドライバの目の位置が分布する領域として想定された領域である。
図4には、二つの光路10d,10uが示されている。実線の光路10dは、アイポイントEPの位置がアイリプスELの下端Edである場合の光路10である。破線の光路10uは、アイポイントEPの位置がアイリプスELの上端Euである場合の光路10である。
【0026】
図4に示すように、アイポイントEPの高さ位置に応じて、カバー5に対する第一の外光L11の入射角も異なる。
図4に実線で示す第一の外光L11は、アイリプスELの下端EdのアイポイントEPに対応する。
図4に破線で示す第一の外光L11は、アイリプスELの上端EuのアイポイントEPに対応する。
図4から分かるように、アイポイントEPがアイリプスELの下端Edへ近づくに従って、第一の外光L11と遮光壁130との交差位置が上方に移動する。本実施形態の遮光壁130は、アイポイントEPがアイリプスELの下端Edに位置する場合であっても第一の外光L11に対してカバー5を遮蔽できるように構成されている。言い換えると、車両用表示装置1は、アイリプスELの下端Edに対応する第一の外光L11がカバー5によって遮蔽されるように配置される。
【0027】
図5を参照して説明するように、カバー5の各点は、下限角度αを有する。下限角度αは、YZ平面における角度、すなわち第一方向Xから見た場合の角度である。なお、以下に説明する第一の入射角i11、第一の傾斜角度θ1、および第二の傾斜角度θ2等の角度は、何れもYZ平面における角度、すなわち第一方向Xから見た場合の角度である。
【0028】
下限角度αは、カバー5の各点における法線NLに対する仮想線ILの傾斜角である。仮想線ILは、カバー5の各点と遮光壁130の上端130aとを結ぶ直線である。第一の入射角i11は、遮光壁130が無いと仮定した場合に第一の外光L11がカバー5の各点に入射する場合の入射角である。遮光壁130は、外側面51の各点に対して下限角度αが第一の入射角i11よりも小さな角度となるように設けられている。
【0029】
図6には、カバー5の各点に対する第一の外光L11が示されている。
図6に示すように、各点に対する第一の外光L11は、遮光壁130によって遮られる。つまり、遮光壁130の上端130aの位置は、カバー5の各点に対して第一の外光L11が対向面130bと交差するように設定されている。一方、カバー5は、光路11,12,13に沿った光L2が外側面51に入射したとすれば、その光L2を反射して遮光壁130に集光できるように構成されている。外側面51の形状は、遮光壁130の上端130aよりも下方の位置に光L2の反射光を集光できる形状である。
【0030】
つまり、カバー5の湾曲形状は、外側面51の各点において下限角度αが第一の入射角i11よりも小さな角度となるように定められている。以下の説明では、第一の入射角i11と下限角度αとの差分の角度を単に「差分δ」と称する。
【0031】
ここで、本実施形態のカバー5では、内側面52の形状が自由曲面であるため、外側面51と内側面52との間に角度差が発生する。
図5には、基準の方向Hに対する外側面51および内側面52の傾斜角度θ1,θ2が示されている。傾斜角度θ1,θ2は、YZ平面における角度、すなわち画像横方向と直交する断面における角度である。基準の方向Hは、外側面51および内側面52に対して共通の方向であり、例えば、水平方向である。
【0032】
第一の傾斜角度θ1は、基準の方向Hに対する外側面51の傾斜角度である。第二の傾斜角度θ2は、基準の方向Hに対する内側面52の傾斜角度である。以下の説明では、第一の傾斜角度θ1と第二の傾斜角度θ2との角度差を単に「角度差Δθ」と称する。角度単位は、例えば、[°]である。
Δθ=θ1-θ2 (1)
【0033】
なお、カバー5が湾曲しているため、第一の傾斜角度θ1および第二の傾斜角度θ2は、第二方向Yの位置に応じて変化する。例示されたカバー5では、車両前方へ向かうに従って傾斜角度θ1,θ2が減少する。上記式(1)における傾斜角度θ1,θ2の値は、外側面51および内側面52における互いに対向する部分の角度の値である。例えば、
図5では、点P1と点P2とが第三方向Zにおいて互いに対向している。点P1,P2は、第二方向Yの同じ位置の点である。この位置における角度差Δθは、点P1における第一の傾斜角度θ1、および点P2における第二の傾斜角度θ2から算出される。
【0034】
ここで、角度差Δθの値が大きい場合、
図7を参照して説明するように、外光がカバー5の内側面52によってアイポイントEPに向けて反射されてしまうことがある。
図7に示す比較例のカバー5では、第一の傾斜角度θ1と第二の傾斜角度θ2との角度差Δθが大きい。角度差Δθは、遮光壁130へ向かうに従って内側面52が外側面51へ近づくように設けられている。
【0035】
図7には、第二の外光L12が示されている。第二の外光L12は、カバー5に向けてウインドシールド110を透過する外光の一部である。第二の外光L12は、カバー5に入射して内側面52によって反射された場合にアイポイントEPへ向かう光路10に沿って外側面51から出射する外光である。
【0036】
内側面52によって反射される外光が光路10に沿って出射する条件は、角度差Δθによって変化する。より詳しくは、外側面51の法線NLと光路10とがなす角度β、および角度差Δθによって、第二の外光L12となる外光の入射角i12が決まる。なお、入射角i12は、外側面51に対する外光の入射角である。
【0037】
第二の外光L12の入射角i12の値は、角度差Δθが大きくなるに従って小さな角度となる。つまり、角度差Δθを大きくし過ぎると、第二の外光L12が遮光壁130によって遮られることなくカバー5に入射してしまう。第二の外光L12がアイポイントEPに向けて反射されてしまうと、虚像Viの視認性が低下してしまう。
【0038】
本実施形態の車両用表示装置1では、以下に
図8を参照して説明するように、第二の外光L12が遮光壁130によって遮られるように角度差Δθに制限が設けられている。
図8に示すカバー5では、第一の傾斜角度θ1と第二の傾斜角度θ2との角度差Δθが上限値よりも小さい。上限値は、第二の外光L12を遮光壁130によって遮らせることができるように定められている。
【0039】
角度差Δθが制限範囲内の値とされることで、
図8に示すように、遮光壁130は第二の外光L12に対してカバー5を遮蔽することができる。
図8には、遮光壁130が無いと仮定した場合の第二の外光L12の進路L12iが示されている。
図8に示す第二の外光L12は、カバー5に入射して内側面52によって反射されると仮定した場合にアイポイントEPへ向かう光路10に沿って反射されるような外光である。進路L12iが遮光壁130と交差しているため、第二の外光L12はカバー5に到達することができない。よって、本実施形態の車両用表示装置1は、外光によるゴースト等の発生を抑制し、虚像Viの視認性を向上させることができる。
【0040】
角度差Δθの大きさの上限は、以下のように定められてもよい。
図9には、内側面52に対する第二の外光L12の入射角および反射角i13が示されている。内側面52に対する入射角および反射角i13は、それぞれ角度差Δθに応じて変化する。よって、外側面51に対する第二の外光L12の入射角i12は、設定される角度差Δθの2倍に応じた影響を受けることになる。
【0041】
本実施形態の車両用表示装置1では、角度差Δθの値が
図5に示す差分δの半分よりも小さい。例えば、外側面51の点P1における差分δが6°である場合、角度差Δθは3°よりも小さくされる。角度差Δθが差分δの半分よりも小さいことで、第二の外光L12が遮光壁130によって遮られ、虚像Viの視認性が向上する。なお、角度差Δθは、差分δの半分の値に対して十分に小さな値とされてもよい。例えば、差分δが6°である場合、角度差Δθは、1°以下とされてもよい。
【0042】
なお、角度差Δθは、アイポイントEPがアイリプスELの下端Edに位置するときの光路10dに基づいて定められることが好ましい。法線NLに対する光路10の角度β(
図7参照)は、アイポイントEPがアイリプスELの下端Edにある場合に最小となる。従って、角度差Δθは、アイリプスELの下端Edに向かう光路10dに沿って反射されるような第二の外光L12を遮光壁130によって遮らせることができるように設定されることが望ましい。
【0043】
また、遮光壁130は、下端EdのアイポイントEPに対して第二の外光L12を遮ることができるように設けられることが好ましい。このように配置された遮光壁130は、ドライバの目の高さ位置にかかわらず虚像Viの視認性を向上させることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の車両用表示装置1は、筐体2と、画像表示装置3と、ミラー4と、透明なカバー5と、を有する。筐体2は、車両100に搭載されており、かつウインドシールド110と対向する開口21を有する。画像表示装置3は、筐体2の内部に配置され、画像の表示光Ltを出力する。ミラー4は、筐体2の内部に配置され、かつ開口21を介してウインドシールド110と対向している。ミラー4は、表示光Ltをウインドシールド110に向けて反射する。カバー5は、開口21に配置されている。筐体2は、車両100に設けられた遮光壁130が開口21における車両前側の端部から車両上方に向けて延在するように配置される。
【0045】
カバー5は、ウインドシールド110と対向する外側面51と、ミラー4と対向する内側面52と、を有する。カバー5は、画像横方向と直交する断面において筐体2の内方に向けた湾曲形状を有する。遮光壁130は、第一の外光L11に対して外側面51を遮蔽する。第一の外光L11は、カバー5に向けてウインドシールド110を透過する外光のうち、遮光壁130が無いと仮定した場合に車両100のアイポイントEPへ向かう光路10に沿って外側面51によって反射される外光である。
【0046】
カバー5の内側面52は、画像の歪み又は収差を補正するように形成された自由曲面である。上記の断面における外側面51に対する内側面52の角度差Δθは、第二の外光L12を遮光壁130によって遮らせることができる範囲の値である。第二の外光L12は、カバー5に向けてウインドシールド110を透過する外光のうち、カバー5に入射して内側面52によって反射されると仮定した場合にアイポイントEPへ向かう光路10に沿って反射される外光である。本実施形態の車両用表示装置1は、外光がアイポイントEPに向けて反射されることを抑制し、虚像Viの視認性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態の角度差Δθは、内側面52によって光路10dに沿って反射されてしまうような第二の外光L12を遮光壁130によって遮らせることができるように設定される。光路10dは、車両100のアイリプスELの下端Edに向かう光路10である。よって、本実施形態の車両用表示装置1は、アイリプスELの全体について虚像Viの視認性を向上させることができる。
【0048】
本実施形態の角度差Δθは、外側面51における第一の入射角i11と下限角度αとの差分δの半分よりも小さい。第一の入射角i11は、遮光壁130が無いと仮定した場合に車両100のアイリプスELの下端Edへ向かうように外側面51によって反射される第一の外光L11が外側面51に入射する入射角である。下限角度αは、外側面51の法線NLに対する仮想線ILの傾斜角度である。仮想線ILは、外側面51の各位置と遮光壁130の上端130aとを結ぶ直線である。外側面51の各位置について角度差Δθが差分δの半分よりも小さいことで、遮光壁130によって第二の外光L12を適切に遮蔽することが可能となる。
【0049】
本実施形態の車両用表示装置1は、カバー5の内側面52によって収差補正がなされる。よって、表示品質を保ちつつミラー4による拡大倍率を大きくすることができる。よって、ミラー4や画像表示装置3の小型化により、車両用表示装置1の全体の小型化を実現することができる。
【0050】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両用表示装置
2:筐体、 3:画像表示装置、 4:ミラー、 5:カバー、 6:制御部
10,10d,10u:光路
11:画像の上端に対応する光路、 12:画像中央に対応する光路
13:画像の下端に対応する光路
21:開口
31:表示器、 32:バックライトユニット
41:反射面
51:外側面、 52:内側面
100:車両、 110:ウインドシールド、 110a:反射面
120:インストルメントパネル
130:遮光壁、 130a:上端、 130b:対向面、 130c:インパネ面
D1:車両前後方向、 D2:車両上下方向
EP:アイポイント、 EL:アイリプス、 Ed:下端、 Eu:上端
i11:第一の入射角、 i12:第二の表示光の入射角
IL:仮想線
L1:外光、 L2:光、 L11:第一の外光、 L12:第二の外光
Lt:表示光
NL:法線
Vi:虚像
X:第一方向、 Y:第二方向、 Z:第三方向
α:下限角度、 δ:差分
θ1:第一の傾斜角度、 θ2:第二の傾斜角度、 Δθ:角度差