(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ハイスループット蛍光フローサイトメーターを用いる細胞選別
(51)【国際特許分類】
G01N 15/1429 20240101AFI20240611BHJP
G01N 15/14 20240101ALI20240611BHJP
G01N 15/1434 20240101ALI20240611BHJP
G01N 15/149 20240101ALI20240611BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01N15/1429 300
G01N15/14 C
G01N15/1434 100
G01N15/149
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2022063562
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2018568176の分割
【原出願日】2017-03-17
【審査請求日】2022-04-20
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ディーボルト,エリック
(72)【発明者】
【氏名】オースレイ,キーガン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジョナサン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0213915(US,A1)
【文献】特表2016-504598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233704(US,A1)
【文献】特開2015-152593(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060163(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/018087(WO,A1)
【文献】米国特許第05485530(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0276387(US,A1)
【文献】特開2010-190652(JP,A)
【文献】特表2009-537021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/1429
G01N 15/14
G01N 15/1434
G01N 15/149
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローサイトメトリーシステム内の
粒子を選別する方法であって、
フローサイトメトリーシステムを粒子が通過する際に前記粒子を照射して前記粒子から蛍光放射線を誘発することと、
前記粒子からの前記蛍光放射線を検出して時間蛍光データを生成することと、
前記時間蛍光データを処理して、前記粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることと、
前記粒子の少なくとも1つの特性の推定値に基づいて、前記粒子に関する選別決定を行うことと
、
行われた選別決定に基づいて粒子を選別することと
を有する、方法。
【請求項2】
前記時間蛍光データを処理することは、
前記時間蛍光データに関連するうなり周波数を分析して、前記
粒子の推定値を生成すること、
時間蛍光波形を生成し、前記時間蛍光波形に対応する蛍光シグナルの共局在化の尺度を得ること、
時間蛍光波形を生成し、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを前記時間蛍光波形の少なくとも1つに適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成し、その後、前記時間蛍光波形を点ごとの乗算により結果の乗算波形を生成し、前記フィルタリングされた波形を積分して積分値を得て、前記積分値を所定の閾値と比較して、前記共局在化の尺度を得ること、
時間蛍光波形を生成し、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを前記時間蛍光波形の少なくとも1つに適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成し、その後、前記時間蛍光波形の点ごとの乗算により結果の乗算波形を生成し、前記乗算波形を積分して積分値を得て、バックグラウンド値を前記積分値から減算し、得られた値を、強度によってスケーリングして、最終値を生成し、前記最終値を予め定められた閾値と比較して、前記共局在化の尺度を得ること、または
前記時間蛍光データのフーリエ変換を得て、前記粒子からの蛍光放射線を誘発するために高周波と異なるフーリエ変換の周波数を決定し、異なる周波数でのフーリエ変換値の合計を得て、前記合計を所定の閾値と比較して選別決定を行うこと
の一つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時間蛍光データを処理することが、前記時間蛍光データに基づいて蛍光画像を生成することなく実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの特性は、前記粒子の内部成分と関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの特性は、前記粒子の寸法サイズ、2つの異なる
次元に沿った前記粒子のサイズの比、前記粒子と関連する2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、前記蛍光放射線の尖度、前記蛍光放射線の空間的分布の尺度、前記粒子の位置または方向の尺度、前記粒子の離心率の尺度、基準粒子に対する前記粒子の類似性の尺度、前記粒子の1つ以上の空間フーリエ成分の組み合わせ、前記粒子が照射放射線の焦点内に存在する程度の尺度のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
100マイクロ秒未満である潜時にて前記粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記潜時は約20マイクロ秒未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子を照射することは、ビームレットが前記粒子内の少なくとも2つの空間位置を照射するように、少なくとも2つのビームレットを含む光学的放射線ビームに前記粒子を暴露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2つの空
間位置が部分的に重複している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子を少なくとも2つの蛍光マーカーで染色することをさらに有し、各マーカーが、照射に応答して蛍光放射線を放射するように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記マーカーから発散される蛍光シグナルを収集及び数値化して、各々が前記マーカーの1つに相当する時間蛍光波形を生成することをさらに有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記時間蛍光データを処理することは、蛍光データを操作して、
前記
粒子のサイズの推定値を得て、推定された
粒子のサイズに基づいて選別決定を行うこと、または
2つの異なる次元に沿った
粒子サイズの比を得て、前記比を利用して選別決定を行うこと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子の横方向サイズの推定値は、検出された時間蛍光データを2乗すること、2乗された蛍光データにバンドパスフィルタを適用すること、フィルタリングされたデータを積分すること、及び、フィルタリングされたデータを所定の閾値と比較することによって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
粒子を選別するためのシステムであって、
高周波変調された光学的放射線で粒子を照射するための照射システムと、
照射に応答して前記粒子から発せられる蛍光放射線を検出して時間蛍光データを生成するための検出システムと、
前記時間蛍光データを受信し、このデータを処理して前記粒子に関する選別決定に到達するために前記検出システムと通信する分析モジュールと、
前記粒子をその流路から分別して選別決定に基づいて容器を分離し得るアクチュエータと
を備える、システム。
【請求項15】
前記分析モジュールは、格納された指示を有するメモリを備えており、前記分析モジュールにより前記指示が実行された場合に、前記指示は前記分析モジュールに前記時間蛍光データを、
前記時間蛍光データに関連するうなり周波数を分析して、前記
粒子の推定値を生成すること、
時間蛍光波形を生成し、前記時間蛍光波形に対応する蛍光シグナルの共局在化の尺度を得ること、
時間蛍光波形を生成し、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを前記時間蛍光波形の少なくとも1つに適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成し、その後、前記時間蛍光波形を点ごとの乗算により結果の乗算波形を生成し、前記フィルタリングされた波形を積分して積分値を得て、前記積分値を所定の閾値と比較して、前記共局在化の尺度を得ること、
時間蛍光波形を生成し、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを前記時間蛍光波形の少なくとも1つに適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成し、その後、前記時間蛍光波形の点ごとの乗算により結果の乗算波形を生成し、前記乗算波形を積分して積分値を得て、バックグラウンド値を前記積分値から減算し、得られた値を、強度によってスケーリングして、最終値を生成し、前記最終値を予め定められた閾値と比較して、前記共局在化の尺度を得ること、または
前記時間蛍光データのフーリエ変換を得て、前記粒子からの蛍光放射線を誘発するために高周波と異なるフーリエ変換の周波数を決定し、異なる周波数でのフーリエ変換値の合計を得て、前記合計を所定の閾値と比較して選別決定を行うこと
の一つ以上により処理させる、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例えば、試料の蛍光分析を介してフローサイトメーターを通って流れる粒子の特性を決定するためのデバイス及び方法に関し、より詳細には、粒子を選別する、例えば、それらの特性に基づくフローサイトメーターにおいて、例えば、細胞を選別をするためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜集団の単離または異種集団からの単細胞の単離でさえ、現代生物学及び生物医学において様々な応用を有する。細胞亜集団を分離するためのいくつかの従来技術には、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、レーザー捕捉顕微解剖、及びDEPアレイ選別が挙げられる。これらの技術は、細胞選別用途において慣用的に用いられているが、多くの欠点が存在する。例えば、細胞生物学の全領域にわたって広く使用されているFACSは、細胞内分解能がなく、したがって、細胞パラメーターの平均にのみ基づいて選別決定を行う。さらに、イメージングセルに基づく従来の選別方法は、選別決定を行う際の潜時が高いことに起因して、一般的にハイスループットセル分離の適応では使用することができない。
【0003】
したがって、例えばフローサイトメトリーシステムにおいて、細胞を選別するための改良された方法及びシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様では、粒子の特性を決定する方法が開示されており、この方法は、粒子が、高周波変調された光学ビームを用いてフローサイトメトリーシステムを通って流れるにつれて粒子を照射し、粒子から少なくとも1つの放射性応答を誘発することと、この粒子から放射する放射性応答を検出して、この放射性応答に関連する時間波形データを生成することと、この波形データを処理して、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることとを有する。いくつかの実施形態では、処理ステップは、波形データに基づいて粒子の画像を生成することなく実行される。いくつかの実施形態では、放射性応答は、蛍光放射線または散乱放射線のいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、処理ステップは、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることに関連する潜時が約100マイクロ秒以下、例えば、約20マイクロ秒以下であるように十分に高速である。
【0005】
いくつかの実施形態では、高周波変調光学ビームは、少なくとも高周波によって互いに分離された少なくとも2つの光周波数を含む。このような実施形態では、処理ステップは、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を決定するために、この放射性応答で検出された少なくとも1つの高周波に関連する少なくとも1つのうなり周波数を分析することを含んでいてもよい。
【0006】
この方法は、粒子の様々な異なる特性の推定値を決定するために使用してもよい。一例として、粒子の特性は、粒子の寸法サイズ、2つの異なる寸法に沿った粒子のサイズの比、粒子と関連する2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、放射性応答の尖度、粒子から発される蛍光放射線の空間分布の尺度、粒子の位置または方向の尺度、粒子の離心率、基準粒子に対する粒子の類似性の尺度、粒子の1つ以上の空間フーリエ成分の組み合わせ、粒子が照射放射線の焦点内に存在する程度の尺度のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0007】
関連する態様では、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を使用して、その粒子に関する選別決定に到達し得る。
【0008】
関連する態様では、粒子の1つ以上の特性を決定する方法が開示されており、この方法は、粒子が、高周波によって互いにシフトされた少なくとも2つの光周波数を有する放射線を有するフローサイトメトリーシステムを流れにつれて、この粒子から蛍光放射線を誘発して粒子を照射することと、粒子からの蛍光放射線を検出して、時間蛍光データを生成することと、この時間蛍光データを処理して、この粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることとを有する。いくつかの実施形態では、処理ステップは、時間蛍光データに基づいて蛍光画像を生成することなく実行される。いくつかの実施形態では、処理ステップは、時間蛍光データを変調する1つ以上のうなり周波数を分析して、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることを含み得る。いくつかの実施形態では、処理ステップは、粒子の少なくとも1つの特性の上記推定値を得ることに関連する潜時が約100マイクロ秒未満、例えば約20マイクロ秒未満となるように、十分に高速である。
【0009】
いくつかの実施形態では、決定された特性は、粒子の内部構成要素と関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、決定された特性は、粒子の寸法サイズ、2つの異なる寸法に沿った粒子のサイズの比、粒子に関連する2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、蛍光放射線の尖度、蛍光放射線の空間的分布の尺度、粒子の位置または方向の尺度、粒子の離心率の尺度、基準粒子に対する粒子の類似性の尺度、粒子の1つ以上の空間フーリエ成分の組み合わせ、粒子が照射放射線の焦点内に存在する程度の尺度のいずれであってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、粒子を照射するステップは、ビームレットが、粒子内の少なくとも2つの空間的位置を照射するように、2つの光周波数のうちの1つを各々が有する少なくとも2つのビームレットを含む光学的放射線ビームに粒子を暴露することを含む。いくつかの実施形態では、2つの照射された空間的位置は部分的に重なっている。
【0011】
いくつかの実施形態では、この粒子は、少なくとも2つの蛍光マーカーで染色してもよく、ここで各マーカーを、光周波数のうちの1つを有する放射による照射に応答して蛍光放射線を発するように構成する。そのような実施形態では、この方法は、マーカーの1つにそれぞれ対応する時間蛍光波形を生成するために、これらのマーカーから発する蛍光シグナルを収集し、デジタル化することをさらに含み得る。蛍光波形を処理して、蛍光シグナルの共局在化の尺度を得てもよい。一例として、蛍光波形の処理は、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを少なくとも1つの波形に適用して、少なくとも1つのフィルタされた波形を生成し、続いて、波形の点ごとの乗算を行って、少なくとも1つの乗算波形を生成することと、その乗算波形を積分して、積分値を得ることと、その積分値を所定の閾値と比較して、共局在化の尺度を得ることとを含み得る。いくつかの実施形態では、共局在化の尺度の決定は、波形の少なくとも1つにハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用して少なくとも1つのフィルタされた波形を生成した後に、波形の点ごとの乗算を行い、得られた乗算波形を生成することと、その乗算波形を積分して、積分値を得ることと、その積分値からバックグラウンド値を減算することと、その結果値を強度でスケーリングして最終値を生成することと、その最終値を所定の閾値と比較して共局在化の測定値を得ることとを含み得る。
【0012】
この方法のいくつかの実施形態において、処理するステップは、フローサイトメトリーシステムにおける粒子流の方向に実質的に垂直な方向に沿った粒子の横方向サイズの推定値を得ることを含む。
【0013】
この方法のいくつかの実施形態では、蛍光波形を用いて、波形を2乗すること、2乗波形にバンドパスフィルタを適用すること、フィルタリングされた波形を積分すること、その積分値を所定の閾値と比較することによって粒子の横方向サイズの推定値を得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、フローサイトメーターにおける粒子流の方向に平行な方向の粒子サイズの推定値は、照射ステップに応答して粒子から発する蛍光放射線のパルスの持続時間に基づいて得てもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、粒子流の方向と垂直な方向及び平行な方向における粒子のサイズの推定値を使用して、粒子のアスペクト比の推定値を得てもよい。
【0016】
この方法は、様々な異なる粒子に適用してもよい。一例として、この粒子は、細胞、小生物(例えば、線虫のc.elegan)、ビーズ、微小粒子、ナノ粒子、ウイルス粒子、細菌、エキソソーム、または医薬品のいずれであってもよい。いくつかの実施形態において、粒子は、哺乳動物細胞、例えば、罹患細胞であってもよい。
【0017】
関連する態様では、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を使用して、以下により詳細に説明するように、その粒子に関する選別決定に到達してもよい。
【0018】
関連する態様では、粒子の特性を決定する方法が開示されており、この方法は、高周波変調された光学ビームで粒子を照射して粒子から蛍光及び散乱放射線のいずれかを誘発すること、粒子から発する蛍光または散乱放射線を検出して、時間蛍光または散乱波形データを生成すること、ならびに、この蛍光及び散乱データのいずれかを処理して、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることを有する。いくつかの実施形態では、処理ステップは、時間蛍光または散乱波形データに基づいて粒子の画像を生成することなく形成してもよい。いくつかのこのような実施形態では、処理ステップは、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることに関連する潜時が約100マイクロ秒未満、例えば約20マイクロ秒未満となるように、十分に速い。
【0019】
この方法のいくつかの実施形態では、粒子の特性は、粒子の寸法サイズ、2つの異なる寸法に沿った粒子のサイズの比、粒子と関連した2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、粒子に関連する2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、蛍光放射線の尖度、蛍光放射線の空間分布の尺度、粒子の位置または方向の尺度、粒子の離心率の尺度、基準粒子に対する粒子の類似性の尺度、粒子の1つ以上の空間フーリエ成分の組み合わせ、粒子が照射放射線の焦点内に存在する程度の尺度のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、粒子から発せられた蛍光放射線及び散乱放射線の両方を検出して、蛍光及び散乱波形データを生成してもよい。この蛍光波形データを使用して、上記粒子流の方向に実質的に垂直な方向で粒子の横方向のサイズの推定値を得てもよく、上記散乱波形データを使用して上記フローサイトメトリーシステム内の粒子流の方向に平行な方向における上記粒子のサイズの推定値を得てもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を用いて、粒子がフローサイトメーターを通って流れるにつれその粒子に対する選別決定に到達し得る。
【0022】
関連の態様では、コンピュータ支援フローサイトメトリーを実施するための方法が開示され、この方法は、フローサイトメーターに複数の粒子を含む試料を導入すること、及び、1つ以上のフローサイトメーター測定値から、複数の粒子の少なくとも1つの粒子特性の推定値を得ることを有しており、ここで、この推定値を得るステップは、高周波、例えば、約50MHz~約250MHzの範囲の高周波によって互いにシフトされた少なくとも2つの光周波数を有する放射線で、粒子をその粒子がフローサイトメーターを通過するにつれて照射して、粒子からの放射性応答を誘発すること、及び、粒子からの放射性応答を検出してこの応答に関連する時間波形データを生成することを含んでいる。この方法はさらに、この時間波形データを処理して、この時間波形データを変調する1つ以上のうなり周波数を分析することによって、上述した特性のような、少なくとも1つの粒子特性の値を得ることと、コンピュータプロセッサを介して、粒子特性の値を所定の範囲内に有する1つ以上の上記粒子を示すゲートを特定することとを含み得る。例として、この放射性応答は、蛍光、及び散乱放射線または透過放射線のいずれであってもよい。
【0023】
一態様では、フローサイトメトリーシステムにおいて細胞を選別する方法が開示され、この方法は、高周波によって互いにシフトされた少なくとも2つの光周波数を有する放射線で細胞を照射して細胞から蛍光放射線を誘発することと、蛍光放射線を検出して、時間蛍光データを生成することと、この時間蛍光データを処理してこの細胞に関する選別決定に達することとを有する。いくつかの実施形態では、選別決定は、蛍光データに基づいて細胞の画像(すなわち、ピクセルごとの画像)を生成することなく行い得る。言い換えれば、蛍光データは、ピクセルごとの蛍光強度マップを生成することを可能にする画像データを含んでもよいが、この方法は、そのようなマップを生成することなく、選別決定に到達する。場合によっては、約100マイクロ秒未満の潜時で選別の決定を行ってもよい。いくつかの実施形態では、細胞を選別するこの方法は、細胞より下の解像度を有してもよく、例えば、選別決定は、細胞の構成要素の特性に基づいてもよい。3つ以上の周波数シフト光周波数が使用されるいくつかの実施形態では、単一の高周波シフトが、光周波数を分離するために使用されるが、他のこのような実施形態では、複数の異なるシフトが使用される。
【0024】
処理ステップは、蛍光データを変調する1つ以上のうなり周波数を分析して選別決定に達するステップを含み得る。うなり周波数は、高周波シフトされた光周波数の周波数間の差に相当し得る。例えば、光学ビームが照射された細胞で干渉し、高周波によって分離された2つの光周波数を有する2つのビームレットを含む場合、うなり周波数は、光周波数間の差に相当する。うなり周波数は、典型的には、約1MHz~約250MHzの周波数範囲にある。
【0025】
いくつかの実施形態では、処理ステップは、蛍光データを操作して細胞の特性の推定値を得ること、及びその推定値に基づいて選別決定を行うことを含み得る。細胞の様々な異なる特性を使用してもよい。例えば、細胞の特性は、細胞成分の特徴及び/または細胞もしくはその成分が励起放射線に応答する様式に関連し得る。一例として、細胞特性は、核のサイズなど、細胞の内部細胞小器官と関連する場合がある。使用され得る細胞特性のいくつかの例としては、限定するものではないが、細胞のサイズ、異なる寸法に沿った細胞のサイズの比、細胞に関連する2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、細胞の核に対する細胞の細胞質のサイズの比、細胞から放射される蛍光放射線の尖度、蛍光放射線の空間分布の尺度、細胞の位置及び/または向きの尺度、細胞の離心率の尺度、基準細胞に対する細胞の類似性の尺度、細胞の1つ以上の空間フーリエ成分の組み合わせ、細胞が照射放射線の焦点内に存在する程度の尺度が挙げられる。本教示は、列挙された特性に限定されず、細胞の任意の適切な特性に関連して利用され得ることを理解すべきである。
【0026】
いくつかの実施形態では、処理ステップは、選別判定に到達することに関連する潜時が約100マイクロ秒未満、例えば約10マイクロ秒~約100マイクロ秒の範囲、または約20マイクロ秒~約80マイクロ秒、または約30マイクロ秒~約50マイクロ秒の範囲であるように、十分に速い。
【0027】
いくつかの実施形態では、光学ビームは、細胞内の複数の空間位置のそれぞれが照射される光周波数が、高周波シフトされた光周波数のうちの異なる周波数に対応するように構成される。一例として、いくつかの実施形態では、光学ビームは、それぞれが別のビームに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、細胞を、少なくとも2つの蛍光マーカーで染色してもよく、この光学的放射線は、それらのマーカーから蛍光放射線を誘発するように構成される。蛍光放射線は、マーカーの1つにそれぞれ対応する時間蛍光波形(すなわち、時間の関数としての蛍光強度を示す波形)を生成するために収集され、デジタル化され得る。処理ステップは、蛍光マーカーに対応する蛍光シグナルの共局在の尺度を得るために波形上で操作すること、及び、共局在化推定に基づいて選別決定を行うことを含む。具体的には、この方法は、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成するために、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを、少なくとも1つの波形に適用することと、その後に、波形を点ごとに乗算を行って、結果の乗算波形を生成することと、この乗算波形を積分して積分値を得ることと、この積分値を所定の閾値と比較して共局在化の尺度を得ることとを有し得る。いくつかの実施形態では、共局在の尺度の決定は、波形の少なくとも1つにハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成し、その後に波形を点ごとに乗算して、得られた乗算波形を生成することと、乗算波形を積分して、積分値を得ることと、この積分値からバックグラウンド値を減算して、得られた値を強度でスケーリングして最終値を生成することと、この最終値を所定の閾値と比較して共局在化の尺度を得ることを含み得る。共局在化の尺度は、細胞に関する選別決定に到達するために使用してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、処理ステップは、蛍光データを操作して細胞のサイズの推定値を得ること、及び、推定された細胞サイズに基づいて選別決定を行うことを含む。一例として、蛍光データを分析して、フローサイトメトリーシステムにおける細胞の流れの方向(すなわち、細胞の流れの方向と実質的に平行な方向に沿った方向)の細胞サイズの推定値、または細胞の横方向のサイズ(例えば、細胞の流れの方向と直交する方向)を得てもよい。いくつかのこのような実施形態では、細胞の流れ方向の細胞サイズは、細胞によって放射された蛍光放射線のパルスの持続時間に基づいて推定され得る。さらに、検出された蛍光データを2乗すること、2乗された蛍光データにバンドパスフィルタを適用すること、フィルタリングされたデータを積分すること、このフィルタリングされたデータと所定の閾値とを比較することによって、細胞の横方向サイズの推定値を得てもよい。場合によっては、処理ステップは、蛍光データを操作して、2つの異なる次元に沿った細胞サイズの比を得ることと、その比を利用して選別決定を行うこととを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、一方は細胞の膜に結合し、もう一方は細胞の核に結合する、2つの蛍光マーカーで、細胞を標識する。細胞に適用される光学的放射線は、両方のマーカーからの蛍光を誘発するように構成される。両方のマーカーによって放射された蛍光シグナルは、2つの異なるチャネルで検出され、分析されて核の比に対する細胞質のサイズの比の推定値が得られる。その細胞に関する選別決定は、その比率に基づいて行われる。
【0031】
いくつかの実施形態では、この方法は、蛍光データのフーリエ変換を得ること、及び、細胞から蛍光放射線を誘発するために使用される光学的放射線を変調するために使用される高周波とは異なる変換において周波数を決定することを含む。これらの異なる周波数でのフーリエ変換値の合計を得て、予め定められた閾値と比較して選別決定を行ってもよい。一例として、異なる周波数は、光学的放射線を変調するために使用される周波数間の1つ以上の周波数であってもよい。
【0032】
関連する態様では、フローサイトメトリーシステムにおいて細胞を選別する方法が開示されており、この方法は、1つ以上の高周波によって互いにシフトされた2つ以上の光周波数を有する放射線で細胞を照射して細胞から蛍光放射線を誘発すること、この蛍光放射線を検出して時間蛍光データを生成すること、及び、約100マイクロ秒以下の潜時を有する細胞に関する選別決定に達するように時間蛍光データを処理することを有する。例として、選別の決定は、約10マイクロ秒~約100マイクロ秒の範囲、または約20マイクロ秒~約80マイクロ秒の範囲、または約30マイクロ秒~約50マイクロ秒の範囲の潜時で行ってもよい。
【0033】
この方法において、処理ステップは、蛍光データを操作して細胞の少なくとも1つの特性の推定値を得て、その推定値に基づいて選別決定を行うことを含んでいてもよい。さらに、この処理ステップは、光学的放射線の光周波数の干渉に関連する1つ以上のうなり周波数で蛍光データの変調を分析して、選別決定に達するようにすることを含み得る。
【0034】
別の態様では、フローサイトメトリーシステムで細胞を選別する方法が開示されており、この方法は、各々が少なくとも1つのフルオロフォアと会合している複数の細胞を、1秒あたり約1000個を超える速度で一度に光学的問い合わせ領域に導入して、各々の細胞を、高周波変調された光学的放射線で照射して、フルオロフォア(複数可)から蛍光放射線を誘発することを有する。各細胞について、細胞から放射された蛍光放射線を検出して時間-周波数波形を生成し、その波形を処理して細胞に関する選別決定に達する。この方法は、その選別決定に基づいて、細胞を複数の容器のうちの1つに導くことをさらに有し得る。
【0035】
別の態様では、粒子(例えば、細胞などの生物学的粒子)を選別する方法が開示され、この方法は、粒子から蛍光及び散乱放射線のいずれかを誘発するために、粒子を高周波変調された光学ビームで照射することと、粒子から発する蛍光または散乱(または透過)放射を検出して蛍光または散乱(または透過)波形データを生成することと、蛍光及び散乱(または透過)データのいずれかを処理して、データに基づいて粒子の画像(すなわち、ピクセルごとの蛍光または散乱(または透過)強度マップ)を計算することなく、粒子に関する選別決定を行うこととを有する。光学ビームは、例えば、レーザービームであってもよい。さらに、光学ビームは、いくつかの実施形態では、約300THz~約1000THzの範囲の光周波数を有してもよい。一例として、いくつかの実施形態では、光学ビームの高周波変調は、約50MHz~約250MHzの範囲の高周波、例えば約100MHz~約200MHzの範囲の周波数でビームを変調することによって達成してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、高周波変調光学ビームは、それぞれが別のビームに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含んでもよい。この方法において、処理ステップは、蛍光または散乱放射線のいずれかで検出された1つ以上のうなり周波数を分析して選別決定に達することを含み得る。うなり周波数は、粒子(例えば、細胞)を照射する光学的放射線の光周波数に対応し得る。
【0036】
関連する態様では、粒子の特性を決定するためのシステムが開示されており、このシステムは、粒子を高周波変調された光学的放射線で照射するための照射システムと、照射に応答して粒子から発する蛍光及び散乱放射線のいずれかを検出して、蛍光または散乱データを生成する検出システムと、蛍光及び散乱データを受信し、このデータを処理してこの粒子の少なくとも1つの特性の推定値を計算するために検出システムと通信する分析モジュールとを備える。いくつかの実施形態では、分析モジュールは、蛍光または散乱データに基づいて粒子の画像を形成することなく、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を算出し得る。一例として、粒子の少なくとも1つの特性は、粒子の寸法サイズ、2つの異なる寸法に沿った粒子のサイズの比、この粒子と関連する2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、この粒子から放射される蛍光放射線の尖度、蛍光放射線の空間分布の尺度、粒子の位置または方向の尺度、粒子の離心率の尺度、基準粒子に対する粒子の類似性の尺度、粒子の1つ以上の空間フーリエ成分の組み合わせ、粒子が照射放射線の焦点内に存在する程度の尺度のうちのいずれを含んでもよい。
【0037】
このシステムを用いて、様々な異なる粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得てもよい。一例として、粒子は、細胞、微小胞、細胞断片、リポソーム、ビーズ、及び微生物のいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、この粒子は細胞であり、決定された特性は、細胞の細胞質と核とのサイズの比である。
【0038】
このシステムのいくつかの実施形態では、照射システムは、少なくとも1つの高周波によって互いに分離された光周波数を有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含む光学ビームを含んでもよい。このようないくつかの実施形態では、照射システムは、レーザービームを生成するための光源と、レーザービームを受け取る単一の音響光学偏向器(AOD)と、AODに対して複数のRFを印加して受け取られたレーザービームを複数の角度分離ビームレットに回折させるための高周波(RF)コム発生器とを備える。
【0039】
別の態様では、粒子(例えば生物学的粒子)を選別するためのシステムが開示されており、これは、粒子に高周波変調放射線を照射するための照射システムと、照射に応答して粒子から発する蛍光及び散乱(または透過)放射線のいずれかを検出して、蛍光または散乱データ(または透過データ)を生成するための検出システムと、蛍光及び/または散乱(または透過)データを受信して、このデータを処理して蛍光及び/または散乱(または透過)データに基づいて粒子の画像を形成することなく粒子に関する選別決定に到達するために検出システムと通信する分析モジュールと、必要に応じて粒子をそれらの流路から迂回させて、選別決定に基づく容器を分離し得るアクチュエータとを備える。いくつかの実施形態では、高周波変調された放射線は、それぞれが別のビームに対して高周波シフトを有する、複数の角度的にまたは空間的に分離されたビームレットから構成される光学ビームの形態であってもよい。
【0040】
以下で簡単に説明する関連する図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって本発明の様々な態様がさらに理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の一実施形態によるシステムを概略的に示す。
【
図2】ビームの伝播方向に垂直な平面内のガウスビームの概略的な例示的なプロファイル、及び、トップハットビーム整形器を通り、ビーム整形器の出力ビームを集束させる、Aに示されたガウスビームを通過させることによって得られる概略的なトップハットビームプロファイルである。
【
図3】例示的なトップハットビーム整形器の構成要素を概略的に示す。
【
図4】複数のRFコムビームの断面ビームプロファイルを概略的に示す。
【
図5】
図4に示すRFコムビーム及びトップハットビームプロファイルを有するLOビームの重ね合わせを概略的に示す。
【
図6】分析中の試料を照射する、
図5に示された複合されたビームを概略的に示す。
【
図7】仮想フルオロフォアの例示的なエネルギーレベルを概略的に示す。
【
図8】
図7の仮想フルオロフォアに対応する吸収曲線を概略的に示す。
【
図9A】本教示のある実施形態による検出システムを概略的に示し、このシステムは、蛍光放射線の伝送のための光ファイバーを備える。
【
図9B】蛍光放射線が自由空間を伝播して複数の光検出器に到達する、本教示の実施形態による別の検出システムを概略的に示す。
【
図9C】本教示のいくつかの実施形態で使用するための明視野画像生成アーム及び暗視野画像生成アームを概略的に示す。
【
図9D】明視野画像を生成するための検出アームと、試料から散乱された励起放射線及び試料によって放射される蛍光放射線の検出の能力を組み込む検出アームとを備える、本教示のいくつかの実施形態で使用する検出システムを概略的に示す。
【
図10】本発明によるシステムの一実施形態における光検出器によって生成された蛍光シグナルが、増幅器によって増幅され得、この増幅されたシグナルが分析モジュールによって分析されて分析中の試料の蛍光画像を構築し得ることを概略的に示す。
【
図11A】複数のRFコムビーム及びトップハット形のプロファイルされたLOビームから構成される複合ビームで試料を照射することによって得られる蛍光シグナルの分析のための、本発明の実施形態による方法の様々なステップを示す。
【
図11B】複数のRFコムビーム及びトップハット形のプロファイルされたLOビームから構成される複合ビームで試料を照射することによって得られる蛍光シグナルの分析のための、本発明の実施形態による方法の様々なステップを示す。
【
図12】本発明のある実施形態による分析モジュールの例示的なハードウェア実行の選択された構成要素を概略的に示す。
【
図13A】複数のRFコムビーム及びトップハット形のLOビームから構成される複合ビームで試料を照射することによって得られる蛍光シグナルの分析のための、本発明の実施形態による別の方法における様々なステップを示す。
【
図13B】複数のRFコムビーム及びトップハット形のLOビームから構成される複合ビームで試料を照射することによって得られる蛍光シグナルの分析のための、本発明の実施形態による別の方法における様々なステップを示す。
【
図14A】複数のRFコムビーム及びトップハット形のLOビームから構成される複合ビームで試料を照射することによって得られる蛍光シグナルの分析のための、本発明の実施形態によるさらに別の方法における様々なステップを示す。
【
図14B】複数のRFコムビーム及びトップハット形のLOビームから構成される複合ビームで試料を照射することによって得られる蛍光シグナルの分析のための、本発明の実施形態によるさらに別の方法における様々なステップを示す。
【
図15A】単一励起周波数でのトップハット形ビームによる試料の照射を概略的に示す。
【
図15B】蛍光寿命測定及び蛍光寿命画像化を可能にする、本教示の実施形態によるシステムの概略図である。
【
図16A】フローサイトメトリーシステムを通って流れる粒子の少なくとも1つの特性の推定値を決定するための様々なステップを示すフローチャートである。
【
図16B】フローサイトメトリーシステムを通って流れる粒子の少なくとも1つの特性の推定値を決定するための実施形態によるシステムを概略的に示す。
【
図16AA】1つ以上の粒子特性の値に基づいてフローサイトメトリーシステムにおいて粒子をゲーティングする実施形態による方法の様々なステップを示すフローチャートである。
【
図16C】2つ以上の異なる周波数チャネルにおいて粒子、例えば、細胞から放射された蛍光放射線の共局在化に基づいて選別決定を行うための実施形態における様々なステップを示すフローチャートである。
【
図17】
図16のフローチャートに示された方法で使用される2つのチャネル及びそれらの生成物に対応する仮想の蛍光時間-周波数波形を概略的に示す。
【
図18】A、B、C、Dと標識された4つの細胞の蛍光画像を示しており(A)、これには緑色色素及び赤色色素で細胞をマーキングして得られた緑色及び赤色蛍光画像、ならびに明視野、暗視野画像を含み、Aに示された細胞の測定された緑色蛍光時間領域シグナル(B)及びAに示された細胞の測定された赤色蛍光時間領域シグナル(C)を示し、各細胞について、B及びCに示される正規化された赤色及び緑色の蛍光波形を乗算すること、ならびに得られた波形をローパスフィルタに通過させることによって得られる共局在化時間領域波形(D)を示す。
【
図19】細胞A、B、C及びDのそれぞれについての積分されたフィルタリングされたシグナルの値を示す(この図の破線は、選別閾値を表す)。
【
図20】本発明の一実施形態による細胞サイズに基づく細胞選別の様々なステップを示すフローチャートである。
【
図21】複数の高周波変調ビームレットを含む仮説ビームによって照射される仮想細胞を概略的に示し、Aに示された照射された細胞から得られた仮想蛍光波形、及び蛍光波形を2乗して得られる波形を概略的に示す。
【
図22】細胞のアスペクト比に基づいて細胞を選別する方法の様々なステップを示すフローチャートである。
【
図23A】細胞の核と細胞の細胞質とのサイズ比率を推定する方法の様々なステップを示すフローチャートである。
【
図23B】細胞の核と細胞の細胞質とのサイズの推定された比に基づいて細胞を選別する方法の様々なステップを示すフローチャートである。
【
図24A】細胞から放射される蛍光放射線の細胞粒度を推定する方法における様々なステップを示すフローチャートである。
【
図24B】細胞から放射される蛍光放射線の細胞粒度を推定することに基づいて細胞を選別する方法の様々なステップを示すフローチャートである。
【
図25】細胞から蛍光放射線を誘発するための、
図24A、Bのフローチャートに記載された方法で使用される光学ビームを変調するために使用される変調周波数を概略的に示す。
【
図26】細胞を選別するための本教示を組み込む選別システムを概略的に示す。
【
図27】
図26のシステムで使用される分析/制御モジュールの例示的な実行を概略的に示す。
【
図28】特性または粒子を決定し、その特性を使用してある実施形態による選別決定を行うための例示的な方法における様々なステップを示すフローチャートである。
【
図29】複数の細胞についての垂直及び水平の2次中心モーメントの散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本教示は、一般に、フローサイトメーターにおける細胞などの粒子の1つ以上の特性を決定し、いくつかの実施形態において粒子を分類するためにそれらの特性を使用するための方法及びシステムに関する。以下に説明する実施形態では、これらの方法は、それらの実行のためにコンピュータプロセッサを使用する。本教示を記載するために以下で使用される様々な用語は、他に記載されていない限り、当該分野において通常の意味を有する。例えば、「フルオロフォア」という用語は、本明細書では、当該技術分野における慣習的な意味と一致して用いられ、励起放射線による照射に応答して放射線を放射し得る蛍光性化合物を指す。
【0043】
「サイトメトリー」及び「フローサイトメトリー」という用語はまた、当該技術分野におけるそれらの慣習的な意味と一致して使用される。特に、「サイトメトリー」という用語は、細胞を同定及び/または選別するかまたはそうでなくとも分析する技術を指し得る。「フローサイトメトリー」という用語は、流体フロー中に存在する細胞を、蛍光マーカーで標識し、放射励起を介して蛍光マーカーを検出するなどして、同定及び/または選別するか、またはそうでなくとも分析し得るサイトメトリー技術を指してもよい。本明細書で使用される「約」及び「実質的に」という用語は、数値を含む特性に関して10%または5%の最大変動を示す。
【0044】
細胞などの粒子の特性を決定し、その粒子を選別するための本発明の教示は、様々な異なる方法で実施され得る。選別決定を行うために使用される蛍光及び/または散乱データは、様々なシステムを使用することによって得てもよい。いくつかの実施形態では、粒子は、複数の高周波シフトビームレットを有する光学ビームによって照射され、粒子からの蛍光が収集され、選別決定を行うために本教示に従って分析される。本教示が組み込まれ得る粒子から蛍光データを誘発するためのこのようなシステムのいくつかの例を以下に記載し、続いて、本教示による粒子を選別するための方法及びシステムの詳細な説明を記載する。
【0045】
一例として、
図1は、粒子を選別するための本教示を組み込み得るサイトメトリーを行うためのシステム10を概略的に示す。システム10は、3つの作動モードで作動し得る。以下でより詳細に説明するように、1つの作動モードでは、その各々が、例えばレーザービームの中心周波数をシフトすることによって得ることができる、複数の励起周波数で同時に研究中の試料を照射し得る。より具体的には、基準レーザービーム(本明細書では局部発振器ビームとも呼ばれる)を複数の高周波シフトレーザービームと混合することによって生成されるレーザービームによって、複数の試料位置を同時に照射してもよく、その結果、各々の試料位置は、基準ビーム及び高周波シフトビームのうちの1つによって照射されて、もし存在するならば、その位置で目的のフルオロフォアを励起する。いくつかの実施形態では、基準ビーム自体が、レーザービームの高周波シフトを介して生成され得る。したがって、試料の各空間位置は、基準ビームの周波数と高周波シフトされたビームの周波数との間の差に対応する異なるうなり周波数で「タグ付け」され得る。言い換えれば、フルオロフォアによって発せられた蛍光放射線は、うなり周波数を空間的にエンコードする。蛍光発光を検出してもよく、その周波数成分を分析して試料の蛍光画像を構築してもよい。
【0046】
別の作動モードでは、複数の励起周波数のレーザービームによってある時間間隔にわたって試料を連続的に照射してもよい。いくつかのこのような実施形態では、励起周波数は、レーザービームを受け取る、音響光学偏向器(AOD)に時変駆動シグナルを印加することによって得てもよい。多くの実施形態では、レーザービームは、数百テラヘルツ(THz)の範囲、例えば、約300THz~約1000THzの範囲の周波数を有する。AODに印加される駆動シグナルは、典型的には、高周波範囲、例えば、約10MHz~約250MHzの範囲内にある。AODを通るレーザービームの通過は、それぞれ異なる回折次数に対応する、複数の回折ビームを生成する。0次回折ビームは、入力レーザービームの周波数に対して周波数シフトを示さないが、高次回折ビームは、駆動シグナルまたはその複数の周波数に対応する入力レーザービームの周波数に対して周波数シフトを示す。いくつかの実施形態では、駆動シグナルによってシフトされた入力レーザービームの周波数に対応する周波数を有する一次回折ビームは、分析中の試料中に存在する場合には、目的のフルオロフォアを励起するための励起ビームとして使用される。駆動シグナルが時間とともに変化するにつれ、1次回折ビームの周波数及び角度シフトもまた変化し、それにより異なる位置で異なる励起周波数で試料の照射を可能にする。照射された各位置からの蛍光発光(もしあれば)を収集し、分析して試料の蛍光画像を構築してもよい。
【0047】
さらに別の作動モードでは、システム10を作動させて、単一の励起周波数(例えば、高周波によってレーザービームの中央周波数をシフトすることによって、生成され得る)によって、試料の複数の位置を同時に照射してもよい。例えば、試料の水平範囲は、単一の励起周波数によるレーザービームで照射してもよい。検出された蛍光放射線を使用して、試料、例えば細胞/粒子の蛍光含有量を分析してもよい。
【0048】
このように、システム10の利点の1つは、以下で述べられる中でもとりわけ、様々な機器を使用することも、異なる作動モードの間で切り替える際にシステムに対してなんら機械的改変を行うことも必要なく、異なるモードで蛍光放射線データを得る際に、有意な可塑性を提供することである。
【0049】
特定の実施形態では、システムは、1つ以上の光源を備える。ある場合には、光源は、狭帯域光源、例としては、限定するものではないが、狭波長LED、レーザー、または1つ以上の光学バンドパスフィルタ、回折格子、モノクロメーターまたはそれらの任意の組合せに結合された広帯域光源が挙げられ、複合されて、照射光の狭帯域を生成する。場合によっては、光源は、単一波長レーザー、例えば、単一波長ダイオードレーザー(例えば、488nmレーザー)である。いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、単一の光源(例えば、レーザー)を含む。他の実施形態では、本発明のシステムは、2つ以上の異なる光源、例えば、3つ以上の異なる光源、例えば、4つ以上の異なる光源を含み、これには、5つ以上の異なる光源を備える。例えば、システムは、第1の波長を出力する第1の光源(例えば、レーザー)と、第2の波長を出力する第2の光源とを備えてもよい。他の実施形態では、システムは、第1の波長を出力する第1の光源と、第2の波長を出力する第2の光源と、第3の波長を出力する第3の光源とを備える。
【0050】
各光源は、300nm~1000nm、例えば350nm~950nm、例えば400nm~900nm、及び例としては450nm~850nmにおよぶ波長を有し得る。特定の実施形態では、光源は、1つ以上のフルオロフォアの吸収極大に対応する波長を有する(後述する)。例えば、光源は、280~310nm、305~325nm、320~350nm、340~375nm、370~425nm、400~450nm、440~500nm、475~550nm、525~625nm、625~675nm、及び650~750nmのうちの1つ以上の範囲である波長を有する光を出力し得る。特定の実施形態では、各光源は、348nm、355nm、405nm、407nm、445nm、488nm、640nm及び652nmから選択される波長を有する光を出力する。
【0051】
システム10は、レーザービーム14を生成するレーザー放射源12を備える。一例として、レーザービームは、約300nm~約1000nmの範囲の真空波長に相当する、約1000THz~約300THzの範囲の周波数を有してもよい。レーザービーム(例えば、ガウスレーザービームが使用される場合のビームウエスト)のビーム径は、例えば、約0.1mm~約10mmの範囲であってもよい。一般性を失うことなく、この実施形態では、レーザー12は、約1mmのビーム直径を有する488nmの波長の放射線を放射する。
【0052】
レーザービームの周波数は、システムが意図される特定のアプリケーション(複数可)に基づいて選択され得る。具体的には、以下により詳細に説明するように、レーザー周波数は、例えば、放射線の吸収を介して、目的のフルオロフォアの電子遷移を励起して、フルオロフォアに低い周波数で蛍光放射線を放射させるために適している場合がある。種々のレーザー源を用いてもよい。このようなレーザー源のいくつかの例としては、限定されるものではないが、Sapphire 488-SF(Santa Clara,CA U.S.A.のCoherent,Inc.が市販)、Genesis MX-488-1000-STM(Coherent, Inc.)、OBIS 405-LX(Coherent,Inc.)、Stadus 405-250(Sacramento,CA U.SA.のVortran Laser Technology,Inc.が市販)、及びLQC-660-110(Newport Corporation of Irvine, CA U.S.A.)が挙げられる。一般性を失うことなく、本実施形態では、レーザービームは、その伝搬方向に垂直な平面内でガウス強度プロファイルを有すると仮定される。
【0053】
ミラー16は、レーザー放射ビーム14を受け取り、反射を介して音響光学偏向器(AOD)18に向ける。この実施形態では、AOD18は、ビーム14の伝播方向に対して垂直な軸に対しAODの回転を可能にする、調整可能なポストホルダーマウント(A)上に取り付けられる。コントローラ21の制御下で作動するダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)20は、1つ以上の駆動シグナルをAOD18に印加し得る。一例として、いくつかの実施形態では、これらの駆動シグナルは、約50MHz~約250MHzの周波数範囲に及んでもよい。例えば、AODに印加される駆動シグナルは、約55MHz~約255MHz、例えば、約60MHz~約200MHz、例えば、約65MHz~約175MHz、例えば、約70MHz~約150MHz、及び例としては約75MHz~約125MHzという範囲にわたる場合がある。いくつかの実施形態では、駆動シグナルは、約0.1MHz~約4MHzの範囲の周波数によって互いに分離されてもよい。例えば、駆動シグナルは、約0.2MHz~約3.9MHz、例えば、約0.3MHz~約3.8MHz、例えば、約0.4MHz~約3.7MHz、例えば、約0.5MHz~約3.6MHz、及び例としては、約1MHz~約3.5MHzという周波数によってお互いから隔てられる場合がある。この実施形態では、電子電力増幅器201は、DDS20によって生成された高周波シグナルをAOD18への印加のために増幅する。
【0054】
試料が複数の励起周波数で同時に照射される作動モードでは、RFコム発生器20は、複数のRF駆動シグナルを同時にAOD18に印加する。一例として、同時に印加されるRF駆動シグナルの数は、約20~約200の範囲にあってもよい。レーザービームと駆動シグナルとの相互作用は、レーザー12によって生じるレーザービームの周波数に対する駆動シグナルの1つに相当する周波数シフトを各々が有する角度的に分離された複数のレーザービームの生成を生じる。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、AODにおいて、圧電トランスデューサは、水晶振動子などの水晶圧電素子中に高周波のフォノンを発生し得、このような高周波フォノンによるレーザービームの光学光子の散乱は、周波数シフトされたレーザービームの生成を生じる可能性がある。これらの周波数シフトされたビーム22の1つは、本明細書では「局部発振器」(LO)ビームと呼ばれ、残りの周波数シフトされたビーム24は、本明細書では「RFコムビーム」と呼ばれる。周波数シフトされたビームの角度分離は、例えば、約1ミリラジアン~約100ミリラジアンの範囲であり得る。例えば、周波数シフトビームの角度分離は、2ミリラジアン~約95ミリラジアン、例えば3ミリラジアン~約90ミリラジアン、例えば、4ミリラジアン~約85ミリラジアン、例えば5ミリラジアン~約80ミリラジアン、及び例としては、10ミリラジアン~約75ミリラジアンの範囲であり得る。
【0055】
LOビーム及びRFコムビームは、この実施例では約50mmの焦点距離を有する正レンズであるレンズ26を通過する。レンズ26を通過した後、LOレーザービームは、LOビームを異なる方向(この実施形態ではLOビームの元の伝搬方向と実質的に直交する方向)に方向転換する、ミラー28によって遮断される。ミラー28は、RFコムビームに対して、これらのビームがミラー28を回避し、レンズ30(この実施形態では200mmの焦点距離を有する)に伝播するように配置される。このようにして、LOビーム及びRFコムビームは、異なる伝播方向に向けられる。上述したようにピックオフミラー28を使用することにより、単一のAODを利用して、LOビームとRFコムビームとの両方を生成すること、以下に説明する方法でそれらを組み合わせて試料を照射するための励起ビームを生成することが可能になる。複数のAOD(例えば、LOビームを生成するためのものとRFコムビームを生成するものとの2つのAOD)を用いるのではなく、単一のAODを使用することにより、システムの設計が単純化され、さらに、以下により詳細に述べるように、複数の別個の作動モードでシステムを効果的に使用することが可能になる。
【0056】
いくつかの実施形態では、LOビームのビームプロファイルは、RFコムビームと再結合する前に変更される。例えば、LOビームのビームプロファイルは、空間次元、ビーム形状、強度、ビームの空間分布、またはそれらの任意の組み合わせにおいて調整(増大または減少)され得る。特定の実施形態では、LOビームのビームプロファイルの空間寸法が変更される。例えば、ビームプロファイルは、流動ストリームの長手方向軸に直交する軸に沿ったような、1つ以上の次元でビームプロファイルを引き延ばすように調整され得る。これらの実施形態による一例では、ビームプロファイルの(例えば、1つ以上の次元における)空間的な寸法は、1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば、25%以上、例えば、50%以上、例えば、75%以上、例えば、90%以上まで、例えば、1.5倍以上、例えば、2倍以上、例えば、3倍以上、例としては、5倍以上まで大きくされてもよい。これらの実施形態による別の例では、ビームプロファイルの(例えば、1つ以上の次元における)空間的寸法は、1%以上、例えば、2%以上、例えば、3%以上、例えば、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば、50%以上、例えば、75%以上、例えば、90%以上まで、例えば、1.5倍以上、例えば、2倍以上、例えば、3倍以上、例としては、5倍以上まで小さくされてもよい。
【0057】
他の実施形態では、LOビームのビーム形状が変更される。例えば、ビーム形状は、ビームプロファイルを1つ以上の次元で引き延ばすように変更してもよい。場合によっては、LOビームのビーム形状は、LOビームの伝播方向に垂直な平面内で伸張される。特定の実施形態では、LOビームプロファイルの形状は、円形ビームプロファイルから、流動ストリームの長手方向軸に直交する軸において細長い楕円形ビームプロファイルに変更される。他の実施形態では、LOビームプロファイルの形状は、円形ビームプロファイルから、流動ストリームの長手方向軸に直交する軸に長い寸法を有する矩形ビームプロファイルに変化される。さらに他の実施形態では、LOビームの強度が変更される。例えば、LOビームの強度は、例えば、1%以上、例えば、2%以上、例えば、3%以上、例えば、5%以上、例えば10%以上、例えば、25%以上、例えば、50%以上、例えば、75%以上、例えば、90%以上まで、例えば、1.5倍以上、例えば、2倍以上、例えば、3倍以上、例としては5倍以上まで増大されてもよい。特定の実施形態では、LOビームの強度は、RFコムビームの強度に一致するように変更される。例えば、LOビームは、10%以下、例えば9%以下、例えば8%以下、例えば7%以下、例えば、6%以下、例えば5%以下、例えば4%以下、例えば3%以下、例えば2%以下、例えば1%以下、例えば、0.001%以下までRFコムビームの強度から異なる強度、及び例としては、LOビームの強度が0.001%以下までRFコムビームの強度と異なる強度を有してもよい。場合によっては、LOビーム及びRFコムビームの強度は同一である。
【0058】
さらに他の実施形態では、ビームプロファイルの空間分布も変更してもよい。例えば、LOビームは、LOビームの強度がもはや1つ以上の次元においてガウス型ではなくなるように変更されてもよい。例えば、LOビームは、流動ストリームの長手方向軸に平行である第1の軸に沿ったガウス分布、及び、流動ストリームの長手方向軸に直交する第2の軸に沿った非ガウス分布を有するように変更されてもよい。
【0059】
LOビームのビームプロファイルを修正するために、任意のビーム整形プロトコルを使用してもよく、これには、限定されるものではないが、屈折及び回折ビーム整形プロトコルが挙げられる。いくつかの実施形態では、LOビームはトップハットビーム整形器によって修正される。
【0060】
この実施形態では、LOビームは別の正レンズ32(この実施形態では約200mmの焦点距離を有する)に伝搬する。レンズ26及びレンズ32の組み合わせは、LOビームを拡大してコリメートし、トップハットビーム整形器34の後部開口を適切に満たす。より具体的には、LOビーム22は、レンズ32を通過し、ミラー33及び35によって、トップハットビーム整形器34に反射される。
【0061】
トップハットビーム整形器34は、トップハット強度プロファイルの形成を可能にするために、ガウスLOビームの位相面を整形する。より具体的には、トップハットビーム整形器を出るLOレーザービーム22’は、ビームスプリッタ44によって反射され、レンズ46(この実施形態では100mmの焦点距離を有する)によって中間像面48上に集束される。中間像面48上のレーザービームは、ビームの伝播方向に垂直な平面内で水平方向に沿ってトップハット強度プロファイルを有する。AOD18と同様に、この実施形態では、ビームスプリッタ44は、調整可能なポストホルダーマウント(B)に取り付けられている。この実施形態では、トップハットビーム整形器は、放射線の偏光がビームのトップハット方向に沿って(この実施形態では水平方向に沿って)実質的に均一であるトップハットビームプロファイルを生成する。
【0062】
説明のために、
図2Aは、トップハットビーム整形器に入るときのLOレーザービームのガウス強度プロファイルを概略的に示す。
図2Bに模式的に示すように、中間像面48上では、LOレーザービームは、水平方向(この図では紙面に垂直な方向)に伸び、かつこのプロファイルを通って伸びる各水平線、例えば、水平線Aに沿って実質的に一定であるが、ガウス分布に従って垂直に変化する。
【0063】
様々なトップハットビーム整形器を使用してもよい。例えば、非球面または回折光学素子を有する屈折光学素子は、レンズによって集束された後に、レンズの焦点面にトップハットプロファイルパターンを生成する、適切な空間位相面を有するビームを生成するために使用され得る。このようなトップハットビーム整形器には複数の形状因子が存在し、本教示の様々な実施形態において、試料に適切なLOビーム形状を生成するために、このアプローチの様々な実行が利用可能である。例えば、「Refractive optical system that converts a laser beam to a collimated flat-top beam」と題する米国特許第6,295,168号と、「Rectangular flat-top beam shaper」と題する米国特許第7,400,457号(両方とも参照により全体として本明細書に組み込まれる)は、本教示のいくつかの実施形態によるシステムにおいてフラットトップビーム整形器として使用され得るビーム成形システムを開示している。説明のために、
図3は、米国特許第7,400,457号(異なる参照番号を付す)の
図1の再現であり、2つの直交して配置された円柱状レンズ302及び304を備える、四角または矩形ビームを提供するためのビーム成形システム300を模式的に示す。第1の円柱状レンズ302は、X軸に沿って入射ビームAを整形するためのものであり、第2の円柱状レンズ304は、Y軸に沿って入射ビームAを整形するためのものである。2つの交差した円柱状レンズは、X軸に沿ってフラットトップのプロファイルを有する、結果として生じる矩形レーザービームBを提供するように適合される。円柱状レンズ302の入力面302aは、表面の中心が小さく、レンズの両方のX先端に向かって滑らかに増大する可変の曲率半径を有する凸状の円柱面である。第2の円柱状レンズ304は、第1の円柱状レンズと同様であるが、ビームをY軸に沿って整形するように、レンズ302に対して直交して配置される。レンズ302及び304の入力面302a/304a及び出力面302b/304bのプロファイルは、入射ビームAのX及びYプロファイルと、得られた矩形ビームBの所望の強度プロファイルとの関数として独立して選択され得る(例えば、この特許の第5欄及び第6欄を参照のこと)。
【0064】
使用可能な市販のトップハットビーム整形器の例としては、例えば、Osela,Inc.of Lachine,Canadaによって市販されているDTH-1D-0.46deg-4mmが挙げられる。
【0065】
以下により詳細に述べられるように、水平方向に沿ってLOビームを伸張するためのビーム整形器の使用によって、多くの利点が得られる。例えば、LOビームとRFコムビームとの組み合わせが、試料位置の全体にわたってLOビーム及びRFコムビームの強度を一致させ、これにより、高い変調深度を有する蛍光シグナルの強度振幅変調を生成するために、実質的に同様の照射強度で複数の試料位置を照射することが確実になり得る。このような強度のマッチングが存在しない場合、画像化システムは、小さな視野を有する場合があり、AODを駆動する周波数(ピクセル)の全てを利用することはできない場合がある。蛍光シグナルの変調深度は、試料の蛍光画像を再構成するシステムの能力において重要な役割を果たすので、全ピクセルにおける励起うなり周波数の一様に高い変調深度は、システムの作動にとって特に有利である。さらに、RFコムビームを生成するためにAODに印加される電気シグナルの振幅は、それらの強度が、RFコムビームとLOビームが重なり合うすべての空間的位置を横切るLOビームのビーム強度に等しくなるように、RFコムビームを等化するために(例えば、コントローラ21を用いて)ダイレクトデジタルシンセサイザの出力を制御することによって調整してもよい。この特徴によって、蛍光放射線の強度振幅変調が高い変調深度を保証するという利点が得られる。
【0066】
再び
図1を参照すれば、RFコムビーム24は、レンズ26及び30の組み合わせを介して、中間像面38上に画像化される。さらに具体的には、RFコムビーム24は、レンズ26を通過し、ミラー28を回避してレンズ30(ミラー40及び42を介して中間像面38にRFコムビームを導く)に到達する。
【0067】
図4は、中間像面38における例示的な数のRFコムビームの分布を概略的に示している(一般性を失うことなく、RFコムビームの数は、説明のために6になるように選択される(RF1、...、RF6と標識)が、他の数字も使用してもよい)。
図4に示すように、中間像面38において、RFコムビーム24は、水平方向に沿って互いに空間的に分離されている。他の実施形態では、RFコムビーム24のうちの2つ以上が部分的に重なる場合がある。したがって、レンズ26及び30の組み合わせは、角度的に分離されたRFコムビームを、水平方向に広がる一セットの空間的に分離されたビームに変換する。
【0068】
再び
図1を参照して、上述したように、ビームスプリッタ44は、トップハットビーム整形器34から出るレーザービーム22’を受け取り、そのビームをレンズ46に反射し、次にビームを中間像面48に集束させる。ここでは、LOビームがトップハットビームプロファイルを示す。ビームスプリッタはまた、中間像面38からRFコムビーム24を受け取り、そこを通過するRFコムビームの通過を可能にする。レンズ46は、RFコムビーム24を中間像面48上に集束させて、トップハットビームプロファイルを有するLOビームと結合して、複合ビーム49を生成する。
【0069】
説明のために、
図5は、その伝搬軸に垂直な平面内の複合ビーム49の1つの例示的なプロファイルを概略的に示す。複合されたビームの強度プロファイルは、トップハットLOビーム(正方形によって概略的に示される)の強度プロファイルと、RFコムビーム24(それぞれが円のうちの1つによって概略的に示される)の強度プロファイルとの重ね合わせとして生成される。以下でより詳細に説明するように、LOビームとRFコムビームのこの重ね合わせは、水平の区域に沿って、その水平区域に沿った1つの空間位置にそれぞれ対応する複数のうなり周波数を提供する。試料の水平範囲を照射する際に、試料の位置から放射された蛍光放射線は、振幅変調を介して、その位置を照射する放射線に関連するうなり周波数をエンコードする。
【0070】
再び
図1を参照し、この実施形態では調整可能なポストホルダーマウントCに取り付けられた、正レンズ50(この実施形態では200mmレンズ)及び対物レンズ52は、フローセル54を通じて流れる試料に対して中間像面48で画像を中継するためのテレスコープを形成する。この実施形態では、ミラー56は、複合ビーム49をレンズ50に反射し、ダイクロイックミラー58が、レンズ50を通過した後に複合された光学ビームを対物レンズ52に向かって反射する。
【0071】
図6に模式的に示すように、複合ビーム49は、フローセル54を通って流れる試料62の複数の空間的位置60を同時に照射する。したがって、各々の位置60は、RFコムビームの1つとトップハット形状のLOレーザービームの一部との重複によって照射される。これらの空間的位置では、放射線は、存在する場合には試料中の目的のフルオロフォアを励起する。より具体的には、この実施形態では、LOビーム及びRFコムビームは、複数の試料位置60において、例えば、励起された電子状態へのその電子遷移を引き起こすことによってフルオロフォアを同時に励起する。
【0072】
いくつかの実施形態では、試料は、複数の細胞が同調される流動流体を含んでもよい。場合によっては、細胞を1つ以上の蛍光マーカー(フルオロフォア)で標識してもよい。蛍光マーカーのいくつかの例としては、限定するものではないが、蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP、RFP)、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、アロフィコシアニン(APC))で標識された抗体、核酸染色剤(例えば、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、SYT016、ヨウ化プロピジウム(PI))、細胞膜染色剤(例えば、FMI-43)、及び細胞機能色素(例えばFluo-4、Indo-1)が挙げられる。他の場合には、細胞内に存在する内因性フルオロフォアを用いて、細胞から蛍光放射線を誘発してもよい。以下でより詳細に説明するように、このような外因性または内因性のフルオロフォアは、照射放射線に応答して電子励起を受け、蛍光放射線を(典型的には励起周波数より低い周波数で)放射し、これが収集されて分析される。
【0073】
説明のために、いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、
図7は、基底電子状態Aに対応する仮想エネルギー準位、ならびにフルオロフォアの2つの電子励起電子状態B及びCを示す。フルオロフォアは、放射エネルギーの吸収を介してその基底電子状態(A)から励起電子状態(B)に励起され得る。次いで、フルオロフォアは、例えば、フルオロフォアの振動モードによって媒介される無放射遷移を介して、より低い励起状態Bに緩和し得る。フルオロフォアは、光学遷移を介して下部電子状態Cから基底状態にさらに緩和し得、それにより励起周波数より低い周波数で蛍光放射線を放射する。この仮説的な例は、説明の目的でのみ提供され、蛍光放射線が放射され得る唯一の機構を示すものではないことが理解されるべきである。
【0074】
多くの場合、フルオロフォアは、基底状態から励起された電子状態に励起される周波数範囲にわたって電磁放射線を吸収し得る。説明のために、
図8は、
図7と関連して説明される仮想フルオロフォアの吸収曲線を示す。本教示による実施形態の一実施では、LO周波数は、目的のフルオロフォアのピーク吸収に対応する周波数と一致するように選択してもよい。高周波シフトされたビームは、それらのそれぞれのうなり周波数によってピーク吸収から分離された周波数を有し得る。典型的には、これらの周波数分離は、励起周波数の劣化を回避するためにフルオロフォアの吸収帯域幅と比較して小さい。一例として及び単なる例示として、破線A及びBは、LOビーム及びRFコムビームの1つの周波数を模式的に示す(説明を簡単にするために図は縮尺どおりには描かれていない)。LOレーザービームと描かれたRFコムビームの1つとの両方による試料の空間的位置の同時照射は、LO及びRFコムビーム間の周波数の差に対応するうなり周波数で振幅変調を示す蛍光放射線をもたらす。
【0075】
再び説明のために、いかなる特定の理論にも限定されないが、LOビームとRFコムビームの1つとの同時照射を介してフルオロフォアに印加される電場は、以下のように数学的に定義され得る。
Ecom=ERFej(ω0+ωRF)+ELOej(ω0+ωLO) 式(1)
ここで、
Ecomは、複合されたビームの電場を示し、
ERFは、RFコムビームの1つに関連する電場の振幅を示し、
ELOは、LOビームに関連する電場の振幅を示し、
φ0は、レーザー12によって生成されたレーザービームの周波数を示し、
φRFは、RFコムビームに関連する周波数シフトを示し、そして
φLOは、LOビームに関連する周波数シフトを示す。
【0076】
LO及びRFコムビームの電場の重ね合わせに応答して放射される蛍光放射線の強度は、(ωRF-ωLO)に相当するうなり周波数で変調を示す。したがって、LOビームとRFコムビームの1つとの重ね合わせによって照射された試料の各空間位置から発せられる蛍光放射線は、LOビームに関連する高周波シフトと、その空間的位置を照射するRFコムビームに関連する高周波シフトとの間の差に対応するうなり周波数で変調を示す。
【0077】
蛍光発光のプロセスは、有限の時間(一般的な有機フルオロフォアに対しては通常1~10ナノ秒)を必要とするので、励起うなり周波数が高すぎる場合、放射された蛍光は高い変調深度を示さない。したがって、多くの実施形態では、励起うなり周波数は、1/τfよりかなり小さくなるように選択され、ここで、τfは、フルオロフォアの特徴的な蛍光寿命である。いくつかの例では、励起うなり周波数は、1%以上、例えば、2%以上、例えば、3%以上、例えば、5%以上、例えば、10%、例えば、25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上まで、例えば1.5倍以上、例えば、2倍以上、例えば、3倍以上まで、例としては、これには5倍以上まで1/τfより小さくてもよい。例えば、励起うなり周波数は、0.01MHz以上、例えば、0.05MHz以上、例えば0.1MHz以上、例えば0.5MHz以上、例えば1MHz以上、例えば、5MHz以上、例えば、10MHz以上、例えば、25MHz以上、例えば、50MHz以上、例えば、100MHz以上、例えば、250MHz以上、例えば、500MHz以上まで、及び例としては、750MHz以上まで1/τfより小さくなってもよい。いくつかの実施形態では、光検出器は、照射された試料からの光(例えば、蛍光などの発光)を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、光検出器は、1つ以上の検出器、例えば、2つ以上の検出器、例えば、3つ以上の検出器、例えば、4つ以上の検出器、例えば、5つ以上の検出器、例えば、6つ以上の検出器、例えば、7つ以上の検出器、及び例としては、8つ以上の検出器を含んでもよい。任意の光検出プロトコルが用いられてもよく、これらに限定されるものではないが、アクティブピクセルセンサ(APS)、象限フォトダイオード、イメージセンサ、電荷結合素子(CCD)、増感型電荷結合素子(ICCD)、発光ダイオード、光子計数器、ボロメータ、焦電検出器、フォトレジスター、光電池、フォトダイオード、光電子増倍管、フォトトランジスタ、量子ドット光伝導体またはフォトダイオード、及びそれらの組み合わせ、とりわけ、光検出器が挙げられる。いくつかの実施形態では、目的の光検出器は、350nm~1200nmの範囲の光、例えば450nm~1150nm、例えば500nm~1100nm、例えば550nm~1050nm、例えば、500nm~1000nm、及び例としては400nm~800nmの範囲の光を検出するように構成される。特定の実施形態では、光検出器は、395nm、421nm、445nm、448nm、452nm、478nm、480nm、485nm、491nm、496nm、500nm、510nm、515nm、519nm、520nm、563nm、570nm、578nm、602nm、612nm、650nm、661nm、667nm、668nm、678nm、695nm、702nm、711nm、719nm、737nm、785nm、786nm、または805nmなど、発光の最大発光で光を検出するように構成される。
【0078】
いくつかの実施形態では、試料によって放射された蛍光放射線は、様々な異なる方法で、例えば励起ビームの伝播方向に垂直な光路に沿って収集してもよい。他の実施形態では、蛍光放射線はエピ方向で検出される。
【0079】
再び
図1を参照すれば、この実施形態では、照射された試料中に存在する1つ以上の蛍光団によって発せられた蛍光放射線は、対物レンズ52を通過し、ダイクロイックミラー58を透過して光検出器64に到達する。さらに具体的には、この実施形態では、レンズ65は、ダイクロイックミラー58を透過した蛍光放射線をスリット開口部66上に集束させる。スリットを透過する蛍光放射線は、蛍光発光フィルタ68を通過して光検出器64に達する。光検出器64の前に配置された、スリット開口部66(または以下で述べられる他の実施形態では光学フィルタ)は、試料の特定の面から放射された蛍光放射線の通過を実質的に可能にし、一方で、面外蛍光発光は阻止する。さらに、蛍光発光フィルタ68、例えば、通過帯域フィルタは、蛍光放射線の光検出器64への通過を可能にし、一方で他の周波数での放射線の通過を実質的に阻止する。
【0080】
光検出器64は、うなり周波数の全範囲からシグナルを検出して送信するために十分なRF帯域幅を有する。適切な光検出器のいくつかの例としては、とりわけ、限定するものではないが、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード、及びハイブリッド光検出器が挙げられる。一例として、いくつかの実施形態では、Hamamatsu(浜松)Corporationが市販している光電子増倍管(例えば、R3896、R10699、H11462)を使用してもよい。光検出器は、受信した蛍光放射線の検出に応答してシグナル、例えばこの実施形態ではアナログシグナルを生成する。
【0081】
別の例として、
図9Aを参照して、LOビームと空間的に分離されたRFコムビームとの同時照射に応答して試料から放射された蛍光放射線は、対物レンズ52及びダイクロイックミラー58を通過し、レンズ100を介してマルチモード光ファイバー102(近位端部102aから遠位端部102bに伸びる)に結合される。より具体的には、光ファイバー102の近位端102aは、レンズ100の焦点面の近傍に配置され、蛍光放射線を受け取る。光ファイバーの遠位端102bに結合されたアウトカップリングレンズ104は、光ファイバーを出る放射線をコリメートする。
【0082】
多くの場合、試料を照射する励起放射線は、励起周波数が試料中の複数のフルオロフォアの吸収スペクトル内に入るように、十分広い放射線吸収スペクトルを有し得る複数のフルオロフォア(例えば、有機フルオロフォア)を励起する。したがって、各フルオロフォアは、異なる周波数で蛍光放射線を発する。一般性を失うことなく、かつ説明の目的で、この実施形態では、検出システムは、4つの光電子増倍管106、108、110、112を含み、そのそれぞれが、照射された試料中の励起放射線によって励起される、4つのフルオロフォアのうちの1つによって放射される蛍光放射線に対応するコリメートされた放射線の一部を受け取る。より具体的には、ダイクロイックミラー114は、第1の周波数でフルオロフォアの1つによって放射された蛍光放射線を光電子増倍管106に反射し、一方で、他の周波数での蛍光放射線は通過させる。別のダイクロイックミラー116は、異なる第2の周波数で異なるフルオロフォアによって放射された蛍光放射線を光電子増倍管108に反射し、一方で、第3の周波数でさらに別のフルオロフォアによって放射された蛍光を含む残りの放射線を、第3のダイクロイックミラー118に到達することを可能にし、このダイクロイックミラー118が、その蛍光放射線を光電子増倍管110に反射する。ダイクロイックミラー118は、第4の放射線周波数で第4のフルオロフォアによって放射された蛍光放射線を含む残りの放射線を通過させて光電子増倍管112に到達させる。
【0083】
4つの蛍光周波数のうちの1つを各々が中心とする複数のバンドパスフィルタ120、122、124、126が、光電子増倍管106、108、110、112の前にそれぞれ配置されている。各光電子増倍管によって検出されたシグナルは、後述するように分析されて、それぞれの蛍光周波数で蛍光画像を生成する。いくつかの実施形態では、複数の光検出器を用いるのではなく、単一の光電子増倍管、例えば、単一の光電子増倍管を使用して、蛍光放射線、例えば単一のフルオロフォアからの放射に対応する蛍光周波数を検出してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、試料がフローセルを流れるにつれて、試料の異なる水平行が照射され、各水平行に関連する蛍光放射線が光電子増倍管106、108、110及び112などの1つ以上の光検出器によって検出される。
【0085】
図9Bは、
図9Aに関連して上述したものと同様の検出システムを、この検出システムが、光ファイバーを用いるのではなく、ダイクロイックミラー58を通過した複数のフルオロフォアからの蛍光発光を含む蛍光放射線が、自由空間を伝播して光電子増倍管106、108、112に到達することを除いて、概略的に示す。さらに具体的には、レンズ100は、レンズ100と104との間に配置された開口部126上に蛍光放射線を集束し、ここでこの開口部は、焦点を外れた放射線を拒絶し得る。レンズ104は、開口部を通過する放射線をコリメートし、ここでこのコリメートされた放射線は、
図9Aに関連して上述した方法で光電子増倍管の中に分配される。
【0086】
いくつかの実施形態では、システム10は、励起放射線を用いて試料の(試料の不在下でのフローセルの)暗視野画像及び明視野画像を提供するように構成してもよい。一例として、
図9Cは、試料の暗視野画像及び明視野画像をそれぞれ検出するための2つの検出アーム200及び202を含むシステム10の実施形態を概略的に示す。
【0087】
より具体的には、検出アーム200は、フローセルを通って流れる試料によって散乱される励起放射線の一部を受け取るように、励起放射線の伝搬に対して垂直に配置される。検出アーム200は、試料によって散乱された励起放射線の少なくとも一部を、レンズ204によって光電子増倍管208に入射された立体角に集合的に向ける2つのレンズ204及び206を備える。より具体的には、レンズ204は、受け取った散乱放射線をコリメートし、レンズ206は、このコリメートされた散乱放射線を、光電子増倍管208上に収束させる。この実施形態では、適切なバンドパスフィルタ210が、光電子増倍管208の前に配置され、所望の周波数を有する放射線が光電子増倍管208に通過することを可能にし、一方で望ましくない周波数の放射線は遮断する。光電子増倍管208の出力は、当該技術分野で公知の方法で、例えば暗視野画像を生成するために以下に説明するような分析モジュールによって、処理され得る。
【0088】
検出アーム202は、ここでは2つのレンズ212及び214を備え、このレンズ212は、フローセルを出る励起放射線を順方向(実質的にフローセル54に入る励起放射線の伝搬方向に沿って)コリメートし、レンズ214は、このコリメートされた放射線を、光検出器216上に集束させる。光検出器の前に配置された適切なフィルタ218、例えば、バンドパスフィルタは、他の放射線周波数を実質的に遮断しながら、光検出器216への励起周波数の伝送を可能にする。光検出器216の出力は、フローセルの明視野画像を生成するために当該技術分野で公知の方法で処理してもよい。
【0089】
したがって、検出アーム200は、セルを通って流れる流体によって散乱された励起放射線を検出し、検出アーム202は、フローセルを透過する励起放射線を検出する。流体がフローセルを通って流れていないとき、光電子増倍管208によって検出されるシグナルは低く、光検出器216によって検出されるシグナルは、フローセルを通過する励起放射線の散乱がほとんどなく、したがって、大部分の励起放射線が、ある場合には全ての励起放射線がフローセルを透過する。対照的に、フローセルを通る流体試料の流れは、光電子増倍管208によって生成されたシグナルを、試料による励起放射線の一部の散乱に起因して増大させ、光検出器216によって生成されたシグナルは、フローセルを透過する励起放射線のレベルが低下するにつれて低下する。
【0090】
さらなる例として、及び
図9Dを参照して、本教示によるシステムの一実施形態では、励起放射線の伝搬方向と実質的に直交する方向にフローセル54に対して配置された検出アーム220aは、試料中の複数のフルオロフォアによって放射される蛍光放射線、ならびに試料によって散乱される励起放射の両方を検出するための光検出器を備える。より具体的には、検出アーム220は、蛍光放射線、ならびに集束されていない放射線を拒絶する開口部226上に散乱励起放射線を導くレンズ222及び224を備える。レンズ228は、開口部を通過する放射線をコリメートする。ダイクロイックミラー230は、暗視野画像を検出するために、励起光周波数の放射線の一部を光電子増倍管232に反射させ、一方で、蛍光放射線は通過させる。光電子増倍管232の前に配置された適切なフィルタ232a、例えばバンドパスフィルタは、励起周波数の放射線を光電子増倍管232に通過させ、不要な放射周波数を阻止する。別のダイクロイックミラー234は、第1の周波数のフルオロフォアによって放射された蛍光放射線を、光電子増倍管236に反射し、一方で、他のフルオロフォアによって放射される蛍光放射線の他の周波数での通過を可能にする。別のダイクロイックミラー238は、第2の周波数の別のフルオロフォアによって発せられた蛍光放射線を光電子増倍管240上に反射し、一方で、光電子増倍管242によって検出される第3の周波数でさらに別のフルオロフォアから放射される蛍光放射線の通過を可能にする。前述の実施形態と同様に、複数のフィルタ236a、240a、及び242aが、光電子増倍管236、240、及び242の前にそれぞれ配置され、所望の周波数の放射を透過させ、一方で望ましくない放射周波数は実質的に阻止する。
【0091】
引き続き
図9Dを参照すると、本教示によるシステムのこの実施形態は、例えば、
図9Cに関連して述べられた方法で明視野画像を生成するための別の検出アーム220bをさらに備える。より具体的には、検出アーム202は、励起放射線の明視野画像を生成するために光を光検出器216に集束する2つのレンズ212及び214を備える。フィルタ218、例えばバンドパスフィルタが、光検出器216の前に配置されて、励起放射を検出器に通過させ、一方で不要な放射周波数を排除する。
【0092】
再び
図1及び
図10を参照すれば、この実施形態では、トランスインピーダンス増幅器70を、光検出器64の出力(または
図9A~9Dに関連して説明した光検出器のそれぞれ)に結合して光検出器によって生成されたシグナルを増幅してもよい。データ分析ユニット72(本明細書ではまた、分析モジュールまたは分析器とも呼ばれる)は、増幅されたシグナルを受け取り、そのシグナルを分析して試料の蛍光画像を生成する。データ分析ユニット72は、ハードウェア、ファームウェア、及び/またはソフトウェアで実施され得る。例えば、検出された蛍光データを分析するための方法は、プロセッサの制御下でアクセスされる分析モジュールのread-only-memory(読出し専用メモリ)(ROM)ユニットに記録され、受信された蛍光シグナルを分析し得る。
【0093】
以下でより詳細に説明されるように、分析方法は、時変光検出器の出力の周波数成分を決定し、それらの周波数成分に基づいて試料の蛍光画像を構築する。光検出器の出力の周波数成分を決定するために様々な方法を用いてもよい。そのような適切な方法のいくつかの例としては、限定するものではないが、フーリエ変換、ロックイン検出、フィルタリング、I/Q復調、ホモダイン検出、及びヘテロダイン検出が挙げられる。
【0094】
一例として、
図11A及び11Bは、試料の蛍光画像を生成するために分析モジュール72によって実行され得る例示的な分析ステップを示す。ステップ(1)において、アナログ増幅シグナルをデジタル化してデジタル化された蛍光データを生成する。ステップ(2)において、デジタル化されたデータの適切な部分(長さ)を分析のために選択する。例えば、試料の照射された行(ここではフレームとも呼ばれる)に対応する蛍光データを、分析のために選択してもよい。あるいは、データフレームの一部を分析のために選択してもよい。
【0095】
ステップ(3)では、選択されたデータのフーリエ変換が行われる。一例として、いくつかの実施形態では、データの周波数成分を決定するために、データの高速フーリエ変換(FFT)が実行される。いくつかのそのような実施形態では、FFTのビンは、データ取得のために選択された周波数に相当し得る。例えば、256MHzのサンプリングレートの場合、256個の試料は、互いに1MHz、例えばDC~128MHzまで互いに分離されている周波数ビンを生成し得る。FFT分析は、放射された蛍光発光が振幅変調を示すうなり周波数に相当する周波数を提供する。
【0096】
引き続き
図11A及び
図11Bを参照すれば、この実施形態では、ステップ(4)において、FFTデータに存在する各周波数成分の振幅の尺度は、その周波数成分の実数成分と虚数成分との2乗和の平方根を得ることによって計算する。各周波数成分は、試料の特定の位置から蛍光放射線を誘発するために使用されるうなり周波数の1つに相当するので、周波数成分の振幅の尺度によって、試料の水平行に沿ったその周波数成分に関連する位置のピクセル値を得てもよい。このようにして、試料の水平行の画像のピクセル値を決定してもよい。試料がフローセルを垂直方向に流れるにつれて、試料の各水平行について得られた蛍光データに対して上記のステップを繰り返してもよい。ピクセル値を用いて蛍光画像を構築してもよい(ステップ5)。
【0097】
上述したように、分析モジュール72は、本技術分野において公知の技術を用いて、そして本教示に従って、ハードウェア、ファームウェア及び/またはソフトウェアで実施し得る。一例として、
図12は、増幅器70から増幅された蛍光シグナルを受信し、そのシグナルをデジタル化してデジタル化された蛍光データを生成するためのアナログ/デジタル変換器74を備える、分析器72の例示的な実施を概略的に示す。分析モジュールはさらに、計算及び論理演算の実行を含む、分析モジュールの作動を制御するための中央処理装置(CPU)76を備える。分析モジュールはまた、ROM(読出し専用メモリ)78、RAM(ランダムアクセスメモリ)80及び永久メモリ82を備える。通信バス84は、CPU76と他の構成要素との間の通信を含む、分析モジュールの様々な構成要素間の通信を容易にする。メモリモジュールは、蛍光データ及び分析結果を分析するための命令を記憶するために使用してもよい。一例として、いくつかの実施形態では、データ分析のための命令、例えば、
図11A及び
図11Bに関連して上述したステップを実行するための命令がROM78に記録され得る。CPUは、ROM78に記憶された命令を使用して、RAM80に記憶されたデジタル化された蛍光データを操作して、試料の蛍光画像(例えば、1次元または2次元画像)を生成し得る。CPUは、永久メモリ82、例えばデータベース中に蛍光画像を記録し得る。
図12に模式的に示すように、分析モジュールは、受信したデータ(例えば、蛍光データ)からピクセル強度及び他の量の計算を実行するためのグラフィックス処理ユニット(GPU)76’を必要に応じて備えてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、光検出器によって生成された出力シグナルの周波数復調は、ロックイン検出技術を使用して達成され得る。一例として、
図13A及び
図13Bを参照すると、このような実施形態の1つでは、増幅された蛍光シグナルがデジタル化され(ステップ1)、このデジタル化された蛍光シグナルのいくつかのコピーが生成され(ステップ2)、ここでデジタル化されたコピーの数(N)は、RFコムビームと関連した蛍光の数に相当する。シグナルの各デジタル化されたコピーは、RFコムビームとLOビームの1つの周波数との間の相違に等しいうなり周波数に相当する周波数を有する正弦波及び余弦波と乗算されて、複数の中間シグナルが生成される(ステップ2)。各々の中間シグナルは、RFコム周波数の間に間隔がある周波数の半分に等しい帯域幅を有するローパスフィルタを通過される(ステップ3)。
【0099】
RFコム周波数の1つに相当する各うなり周波数について(換言すれば、照射された試料の空間的位置に相当する各周波数について)、その周波数に相当する2つのフィルタリングされた中間シグナルの2乗和の平方根は、LOビーム及びその周波数を有するRFコムビームによって照射された試料位置に対応する画像ピクセルの振幅の尺度として得られる(ステップ4)。いくつかの実施形態では、同じうなり周波数に相当する(すなわち、同じ試料位置に相当する)複数の蛍光データのシグナルを、上述した方式で処理してもよく、ピクセル値を平均して平均ピクセル値を得てもよい。
【0100】
上記のステップは、試料がフローセルを垂直方向に流れていくにつれ、試料の各水平行について得られた蛍光データについて繰返してもよい。ピクセル値を使用し蛍光画像を構築してもよい(ステップ5)。
【0101】
上記のロックイン検出方法は、ソフトウェア、ファームウェア及び/またはハードウェアで実施してもよい。例としては、一実施形態において、上記のロックイン検出方法は、特に6種を超える周波数が使用される場合、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して実行してもよい。いくつかの実施形態では、Zurich Instruments of Zurich,Switzerlandが市販するHF2L-MF多周波数幅器のような多周波数ロックイン増幅器を使用してもよい。
【0102】
さらなる例として、いくつかの実施形態では、検出された蛍光シグナルの周波数復調は、バンドパスフィルタに基づく画像復調技術を使用することによって達成され得る。
図14A及び
図14Bを参照すれば、このような周波数復調方法の一実施形態では、光検出器64及び増幅器70によって提供される蛍光シグナルをデジタル化して(ステップ1)、このデジタル化したシグナルの数個のコピーを生成し(ステップ2)、このデジタル化されたコピーの数(N)は、RFコムビームに関連する周波数の数に相当する。デジタル化された蛍光シグナルの各コピーは、そのシグナルをRFコムビームの1つに関連するうなり周波数(すなわち、試料の特定の位置に関連するうなり周波数)を中心とするバンドパスフィルタに通すことによってフィルタリングされる(ステップ3)。より具体的には、各バンドパスフィルタは、N個のうなり周波数のうちの1つの中心に位置し、隣り合ううなり周波数間の周波数間隔の半分に等しい帯域幅を有する。
【0103】
各うなり周波数における包絡線検出器を用いて、各水平線について、その周波数に相当する各ピクセルの振幅を推定する(ステップ4)。場合によっては、そのピクセルに関連する試料位置に相当する複数の蛍光シグナルを処理することによって得られたピクセルに相当する複数のピクセル値が平均化され、平均ピクセル値が得られる。上述したステップは、試料がフローセルを垂直方向に流れるにつれて試料の各水平行について得られる蛍光データについて繰り返してもよい。ピクセル値は、試料の1次元または2次元の蛍光画像を構築するために使用してもよい(ステップ5)。
【0104】
分析モジュールは、明視野及び暗視野の画像データを受信及び処理するように構成してもよい。例えば、
図9C及び
図10を参照すると、分析モジュール72は、光検出器208及び218から暗視野画像データ及び明視野画像データを受け取って、暗視野画像及び明視野画像を生成するようにさらに構成してもよい。例えば、
図12を参照すると、暗視野及び明視野画像を生成するための命令は、例えば、当該技術分野で公知の方法で、永久メモリ82に記憶してもよい。プロセッサ76は、これらの命令を使用して、受け取った暗視野画像及び明視野画像のデータを処理して、画像を生成し得る。分析モジュールはまた、例えば、蛍光画像と、明視野画像及び暗視野画像の一方または両方とを重ね合わせることによって複合画像を生成するように構成してもよい。
【0105】
上述したシステム10のような、本教示によるシステムによって生成された蛍光画像、ならびに明視野及び暗視野画像は、様々な異なる方法で使用してもよい。例えば、蛍光画像を統合して、従来のフローサイトメーターによって生成されたデータに匹敵する値を生成してもよい。この蛍光画像はまた、その画像を生じる蛍光プローブの位置を決定するために分析されてもよい(例えば、プローブが核であるか、細胞質であるか、細胞小器官に局在するか、または細胞膜の外側であるかを決定し得る)。さらに、いくつかの用途では、そのすべてが同じ細胞から得られた異なる蛍光バンドを検出することによって得られる複数の蛍光画像を使用して、細胞内の複数の蛍光プローブの共局在の程度を決定してもよい。さらに、とりわけ、細胞形態、細胞シグナル伝達、内在化、細胞-細胞相互作用、細胞死、細胞周期、及びスポット計数(例えば、FISH)の分析が、多色蛍光、明視野及び暗視野画像を使用して、可能である。
【0106】
上述したように、システム10は、少なくとも3つの異なるモードで作動されてもよい。上述した1つのモードでは、LOビーム及び複数のRFコムビームが、試料の一部(例えば、水平範囲に沿って配置された位置)を同時に照射し、この照射された場所から放射された蛍光放射線を検出して分析し、試料の蛍光画像を構築する。別の作動モードでは、複数のRF駆動シグナルを同時にAODに印加するのではなく、駆動シグナルを含む周波数傾斜を、AODに印加して、レーザービームの周波数を、開始周波数(f1 )から終了周波数(f2 )まで時間とともに変化させる。周波数傾斜の各駆動周波数に対して、レーザービームの周波数は、その駆動周波数だけシフトされ、その試料は周波数シフトされたレーザービームによって照射され、試料から蛍光放射線を誘発する。言い換えれば、このモードでは、このシステムは、中心レーザー周波数からシフトされる複数の周波数を有する時間間隔にわたって試料を連続的に照射することによって、この試料からの蛍光放射線を得るように作動される。AODによって生成された周波数シフトには、同一の光路を使用してビームが試料を横切って高速で走査されるような角度偏向が伴う。
【0107】
より具体的には、この作動モードでは、RF周波数シンセサイザ10を使用して、AOD18に印加される駆動シグナルを、開始周波数(f1 )から終了周波数(f2 )まで傾斜させる。一例として、駆動シグナルが傾斜される周波数範囲は、約50MHz~約250MHzであってもよい。いくつかの実施形態では、駆動シグナルは、約100MHz~約150MHzまで上昇する。この実施形態では、例えば、高速を達成するために、駆動周波数を時間の経過とともに連続的に変更する。他の実施形態では、駆動周波数は、開始周波数(f1 )から終了周波数(f2 )まで離散的なステップで変更されてもよい。
【0108】
駆動周波数は、周波数シフトされたビームがミラー28をかわして、レンズ26、レンズ30、ミラー40/42、ビームスプリッタ44、レンズ46、ミラー56、レンズ50、ミラー58及び対物レンズ52によって規定される光路に沿って伝播して、試料ホルダーを通って流れる試料の一部を照射するように選択する。ランプ速度は、試料がビームを横切って流れる際に放射される蛍光放射線に基づいて生成される蛍光画像の垂直方向のぼけを改善し、好ましくは防止するように十分に速いことが好ましい。これは、例えば、傾斜速度を試料の流速と一致させることによって達成され得る。試料のレーザースポットサイズは、適切な速度を推定するために使用されてもよい。一例として、1マイクロメートルのレーザースポットサイズの場合、画像のぼけを避けるために、1秒あたり0.1メートルの試料流速に対して1ラインについての走査時間は10マイクロ秒以下でなければならない。
【0109】
励起放射線による照射に応答して試料から放射された蛍光放射線は、上述した方法で収集され検出される。具体的には、
図10を参照して、蛍光放射線は光検出器64によって検出される。検出された蛍光は、増幅器70によって増幅され、増幅されたシグナルは分析モジュール72によって分析されて、試料の蛍光画像を再構成する。画像の再構成は、開始周波数(f
1 )から終了周波数(f
2 )までの走査期間内の特定の時間に水平ピクセル位置を割り当てることによって行われる。上記の作動モードのようにピクセル値を得るために周波数成分の振幅を分析するのとは対照的に、この作動モードで使用される復調のアプローチは、検出された蛍光シグナルの時間領域値のみを用いて画像のピクセルに値を割り当てる。試料の2次元蛍光画像を得るために、試料が垂直方向に流れるときに、このプロセスを繰り返してもよい。
【0110】
試料によって放射された蛍光放射線は、もしあれば、光検出器64によって収集される。
図10を参照すれば、検出された蛍光放射線は、増幅器70によって増幅される。分析モジュール72は、増幅されたシグナルを受信する。この作動モードでは、分析モジュールは、蛍光シグナルを分析して、試料、例えば細胞/粒子の蛍光含量を決定する。この作動モードでは、試料を励起するビームは1つしかないので、試料を励起することに応答したうなり周波数は生成されない。したがって、蛍光シグナルの周波数領域に画像情報は存在しない。むしろ、検出された蛍光シグナルは、時間領域においてエンコードされた画像情報を有する。この作動モードでは、検出された蛍光シグナルの時間値を水平ピクセル座標として、及び蛍光シグナルのデジタル化された電圧値をピクセル値(輝度)として使用して、デジタル的に画像を再構成してもよい。AODに印加される駆動周波数の各走査は、画像の1水平線(行)を生成する。画像再構成は、試料が照射領域(点)を通過する際に連続走査によって達成される。
【0111】
さらに別の作動モードでは、システム10を作動させて、例えば、レーザービームの中心周波数を高周波によってシフトすることによって生成され得る、単一の励起周波数によって試料の複数の位置を同時に照射してもよい。より具体的には、再び
図1を参照して、このような作動モードでは、単一の駆動高周波をAOD18に印加して、AOD18に入射するレーザービームに対してシフトされた周波数を有するレーザービームを生成してもよい。さらに、周波数シフトされたレーザービームは、高周波レーザービームが、レンズ32ならびにミラー33及び35を介して、トップハットビーム整形器34に向かってミラー28によって遮蔽されて反射されるように、AODに入射するレーザービームに対する角度シフトを示す。トップハットビーム整形器を出るビームは、ビームスプリッタ44によって反射され、レンズ46によって中間像面48上に集束される。この面では、
図15Aに示すように、レーザービーム1000は、水平方向に沿って延伸プロファイルを示す。
【0112】
水平方向に伸張されたレーザービームは、ミラー56によって正レンズ50に反射される。正レンズ50を通過した後、レーザービームは、ミラー58によって対物レンズ52に反射される。上述したように、正レンズ50及び対物レンズ52は、トップハット形のレーザービームを、中間像面48から、フローセル54を通って流れる試料上に中継するテレスコープを形成する。
【0113】
水平に伸張されたレーザービームは、試料の水平範囲を照射して、試料中に存在する場合には目的のフルオロフォアをその水平方向に沿って励起する。したがって、この作動モードでは、試料の複数の水平位置が異なる励起周波数で照射される第1の作動モードとは異なり、試料の複数の水平位置が同じ励起周波数で照射される。この作動モードでは、ユーザが流れる細胞または粒子の画像を得ることが可能にならない。しかし、この作動モードでは、画像が必要でない場合には、より高いシグナル対ノイズ比のデータを得るために有用であり得る、他の2つの作動モードよりも高い光パワーを典型的には試料に印加してもよい。この作動モードは、システムに機械的な変更を加える必要なしに、音響光学偏向器を駆動する電気シグナルを単に変更することによってアクセス可能である。
【0114】
したがって、システム10は、試料から蛍光放射線を誘発するために、3つの異なる作動モードで作動させてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、蛍光寿命測定は、例えば、高周波シフトされた及び局部発振器ビームのそれぞれのビートの位相を、それぞれの高周波成分の位相と、検出された蛍光シグナル中で比較することによって、試料上の各空間位置で実行してもよい。一例として、
図15Bは、このような蛍光寿命測定(
図1に示される特定の構成要素は、簡略化のためにこの図には示されていない)を可能にする、上述したシステム10の修正版であるシステム10’を示す。具体的には、ビームスプリッタ44に入射するRFコムビームの一部は、ビームスプリッタによって、収束レンズ400上に反射される(この実施形態では例示として、レンズ400は、200mmの焦点距離を有するが、他の焦点距離も利用されてもよい)。レンズ400は、RFコムビームのその部分を、励起ビームを検出するフォトダイオード402に集束させる。フォトダイオード402の出力は、分析モジュール72によって受け取ってもよい(
図10を参照のこと)。分析モジュールは、例えば、上述した復調技術の1つを使用して、励起ビームの周波数逆多重化を提供し、励起ビーム内の各高周波成分の位相を決定し得る。これは、検出された蛍光シグナル中の各高周波成分に対して、その高周波成分の位相を比較し得る基準位相を提供し得る。例えば、励起シグナルのFFTの実数成分及び虚数成分、またはロックイン型復調のI成分及びQ成分を用いてもよい。あるいは、試料/フローセルの明視野画像を検出する検出器の出力を使用して、蛍光うなり周波数の位相を比較し得る基準位相を得てもよい。
【0116】
より具体的には、分析モジュール72は、例えば上述したように、検出された蛍光シグナルの周波数逆多重化を提供し得る。当業者には理解されるように、蛍光シグナルの各うなり周波数について、空間的に分解された蛍光寿命測定値及び蛍光寿命画像を得るために、高周波成分の位相を励起ビームのそれぞれの基準位相と比較してもよい。
【0117】
特定の実施形態において、本発明のシステムは、流動ストリーム中の試料によって放射された光を検出するための上述した光学的構成を使用するフローサイトメトリーシステムを備える。特定の実施形態では、本発明のシステムは、その開示が、全体として参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第3,960,449号;同第4,347,935号;同第4,667,830号;同第4,704,891号;同第4,770,992号;同第5,030,002号;同第5,040,890号;同第5,047,321号;同第5,245,318号;同第5,317,162号;同第5,464,581号;同第5,483,469号;同第5,602,039号;同第5,620,842号;同第5,627,040号;同第5,643,796号;同第5,700,692号;同第6,372,506号;同第6,809,804号;同第6,813,017号;同第6,821,740号;同第7,129,505号;同第7,201,875号;同第7,544,326号;同第8,140,300号;同第8,233,146号;同第8,753,573号;同第8,975,595号;同第9,092,034号;同第9,095,494号;及び同第9,097,640号に記載されたフローサイトメーターの1つ以上の構成要素を備えるフローサイトメトリーシステムである。
【0118】
上述したように、いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、フローサイトメーターの流動ストリームのような流動ストリームとして流れる試料中の粒子(例えば、細胞)を画像化するように構成される。流動ストリーム中の粒子の流速は、0.00001m/s以上、例えば0.00005m/s以上、例えば0.0001m/s以上、例えば、0.0005m/s以上、例えば0.001m/s以上、例えば、0.005m/s以上、例えば0.01m/s以上、例えば、0.05m/s以上、例えば、0.1m/s以上、例えば0.5m/s以上、例えば、1m/s以上、例えば2m/s以上、例えば3m/s以上、例えば4m/s以上、例えば5m/s以上、例えば6m/s以上、例えば7m/s以上、例えば8m/s以上、例えば9m/s以上、例えば10m/s以上、例えば15m/s以上、及び例としては25m/s以上であってもよい。例えば、流動ストリームのサイズ(例えば、流動ノズル開口部)に依存して、流動ストリームは、0.001μL/分以上、例えば0.005μL/分以上、例えば、0.01μL/分以上、例えば、0.05μL/分以上、例えば、0.1μL/分以上、例えば0.5μL/分以上、例えば1μL/分以上、例えば5μL/分以上、例えば10μL/分以上、例えば25μL/分以上、例えば50μL/分以上、例えば100μL/分以上、例えば250μL/分、及び例としては、500μL/分以上という本発明のシステムにおける流速を有してもよい。
【0119】
いくつかの態様では、粒子、例えば細胞の1つ以上の特性の推定値を提供するための方法及びシステムが開示される。一例として、
図16Aは、粒子の1つ以上の特性を決定するための本教示の実施形態による1つの例示的な方法における様々なステップを示すフローチャートを提示する。粒子がフローサイトメトリーシステムを通って流れ、粒子からの少なくとも1つの放射性応答を誘発する(ステップ1)につれて、粒子は、高周波変調光学ビームで照射される。一例として、高周波変調光学ビームは、高周波によって互いからシフトされた光周波数を有する少なくとも2つのビームレットを含んでもよい。いくつかの実施形態では、高周波シフトは、約10MHz~約250MHzの範囲内であってもよい。例えば、高周波シフトは、約55MHz~約225MHzの範囲、例えば約60MHz~約200MHz、例えば約65MHz~約175MHz、例えば70MHz~約150MHz、及び例としては、約75MHz~約125MHzの範囲であってもよい。一例として、いくつかの実施形態では、高周波変調された光学ビームは、音響光学偏向器(AOD)にレーザービームを導入し、1つ以上の高周波で1つ以上の駆動シグナルをAODに印加して、例えば、上述した方式で、上記の高周波によって互いに対してシフトされた光周波数を有する複数の角度的に分離されたビームレットを生成することによって生成してもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、高周波変調光学ビームによる粒子の照射に応答して粒子から誘発される放射性応答は、蛍光及び/または散乱放射線のいずれであってもよい。
【0121】
引き続き
図16Aのフローチャートを参照すれば、粒子から放射される放射性応答が検出され得(ステップ2)、この放射性応答に関連する時間波形データが生成され得る(ステップ3)。上述したような様々な放射線検出モダリティ及び検出器を用いて、誘発された放射線応答を検出してもよい。いくつかの実施形態では、生成された波形は、蛍光であっても、及び/または散乱波形データであってもよい。波形データは、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得るために処理してもよい。多くの実施形態では、波形データに基づいて粒子の画像を生成することなく、波形データのこのような処理を実行して、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得てもよい。いくつかの実施形態では、処理ステップは、時間波形データを変調する1つ以上のうなり周波数を分析して、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることを含む。いくつかの実施形態では、処理ステップは、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得ることに関連する潜時が約100マイクロ秒未満となるように十分に速く実行される。
【0122】
いくつかの実施形態では、上記の方法を使用して、とりわけ粒子の寸法サイズ、2つの異なる寸法に沿った粒子のサイズの比、粒子に関連する2つ以上のマーカーによって放射される蛍光放射線の共局在化、または放射性応答の尖度(例えば、粒子によって放射された蛍光放射線の尖度の程度)のうちのいずれかの推定値を得てもよい。
【0123】
上記の方法を使用して、様々な異なる粒子の1つ以上の特性の推定値を得てもよい。一例として、粒子は、細胞、小生物(例えば、線虫のc.elegan)、ビーズ、微粒子、ナノ粒子、ウイルス粒子、細菌、エキソソーム、または医薬品のいずれであってもよい。
【0124】
図16Bは、細胞などの粒子の少なくとも1つの特性を推定するための、ある実施形態によるシステム3000を概略的に示す。例示的なシステム3000は、フローサイトメトリーシステムのセルを通って流れる1つ以上の粒子を高周波変調された光学レーザービームで照射するための照射システム3002を備える。検出器3004は、その照射に応答して粒子、例えば、蛍光及び/または散乱放射線の放射性応答を検出し、放射性応答を示す1つ以上のシグナルを生成し得る。分析器3006は、検出器からシグナル(複数可)を受け取り、時間波形データを生成し、その波形データに対して作用して、粒子の1つ以上の特性の推定値を導出し得る。
【0125】
分析器3006は、細胞などの粒子の1つ以上の特性の推定値を得るために、波形データを分析するためのさまざまな異なる方法を使用し得る。一例として、いくつかの実施形態では、粒子は、少なくとも2つの蛍光マーカーで染色してもよく、ここで各マーカーは、高周波変調された光学的放射線による照射に応答して蛍光放射線を放射するように構成される。蛍光放射線を検出し、デジタル化して、マーカーの1つに各々が相当する蛍光波形を生成してもよい。分析器を、蛍光波形に対して作用して、マーカーから発する蛍光放射線の共局在化の尺度を得てもよい。具体的には、分析器は、波形の少なくとも1つにハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成して、その後、波形の点ごとの乗算を行って、結果の乗算波形を生成して、この乗算波形を積分して積分値を得て、その積分値を所定の閾値と比較して、共局在化の尺度を得てもよい。別の例として、いくつかの実施形態では、フローサイトメトリーシステムにおける粒子流の方向に垂直または平行な方向に沿った粒子のサイズの推定値を得てもよい。例えば、いくつかのそのような実施形態では、粒子流の方向に垂直な方向の粒子サイズの推定値は、高周波変調された光学ビームによる照射に応答して粒子によって放射される蛍光放射線に相当する蛍光波形を2乗すること、バンドパスフィルタを2乗された波形に加えること、フィルタリングされた波形を積分すること、及び積分値を所定の閾値と比較することによって得てもよい。さらに、いくつかの実施形態では、分析器は、散乱データを使用して、粒子の流れの方向に平行した方向での粒子のサイズの推定値を得てもよい。
【0126】
以下で説明するように、フローサイトメトリーシステムを通って流れる粒子の1つ以上の推定された特性を用いて、その粒子に関する選別決定、すなわち、その粒子を選別するか否かに到達し得る。波形データを操作して粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得るために使用され得る処理方法のいくつかの例は、フローサイトメーターを通って流れる細胞の特性の推定値を使用して、それらの細胞に関する選別決定に到達するという状況で以下に述べられる。このような処理方法は、細胞以外の粒子の特性の推定値を得るために使用してもよく、さらに、推定された特性は、選別目的のために使用され得ないことが理解されるべきである。
【0127】
関連態様では、粒子の1つ以上の特性に基づいてフローサイトメーターを流れる細胞などの粒子の集団の自動ゲーティング(例えば、コンピュータ支援ゲーティング)のための方法が開示される。一例として、そのような方法は、所定の範囲内にある粒子のサイズに基づいて、フローサイトメーターを流れる複数の粒子のサブセットをゲーティングし得る。例えば、
図16AAのフローチャートを参照すれば、このような方法は、複数の粒子を含む試料をフローサイトメーターに導入すること(ステップ1)と、1つ以上のフローサイトメーター測定値から複数の粒子の少なくとも1つの粒子特性の推定値を得ること(ステップ2)とを含み得る。少なくとも1つの粒子特性を得るステップは、高周波によって互いにシフトされた少なくとも2つの光周波数を有する放射線を用いてフローサイトメーターを通って流れる際に粒子を照射して、その粒子から放射性応答を誘発することと、この粒子からの放射性応答を検出して、この応答に関連する時間波形データを生成することと、上記時間波形データを処理して、上記時間波形データを変調する1つ以上のうなり周波数を分析することによって上記少なくとも1つの粒子特性の値を得ることとを含み得る。この方法は、コンピュータプロセッサを介して、所定の範囲内にある粒子特性の値を有する1つ以上の粒子を示すゲートを特定することをさらに含み得る。一例として、所定の範囲内の寸法サイズ(例えば、横サイズ)を有する粒子をゲーティングしてもよい。
【0128】
図16Bに示すシステムのようなシステムを用いて、上記のゲーティング方法を実施してもよい。例えば、分析器3006は、複数の粒子の少なくとも1つの特性の推定値を、例えば、高周波変調光学ビームによる照射に応答してそれらの粒子によって放射される蛍光放射線における1つ以上のうなり周波数の分析に基づいて決定するように、及び粒子の特性の推定が、その粒子に関するゲーティング決定に到達するために、所定の範囲内にあるか否かを決定するように(例えば、決定された特性が予め定義された範囲内にある場合には、粒子は、ゲーティングされる)プログラムされ得る。いくつかの実施形態では、本教示に基づいて修正された「Neighborhood Thresholding in Mixed Model Density Gating(混合モデル密度ゲーティングにおける近傍閾値)」と題する米国特許第8,990,047号の教示を使用して、フローサイトメーターを通って流れる粒子をゲーティングしてもよい。米国特許第8,990,047号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
いくつかの態様では、高周波変調された光学的放射線、例えば、1つ以上の高周波によって互いに分離された2つ以上の光周波数を含む光学的放射線ビームを介して、これらの細胞の問い合わせに基づいて細胞を選別する方法及びシステムが開示される。いくつかの実施形態では、光学ビームは、複数の角度的にまたは空間的に分離されたビームレット(その各々は、互いに対する高周波シフトを有する)を含んでもよい。場合によっては、このようなビームの使用は、異なる高周波シフトされた光周波数で粒子(例えば、細胞)内の異なる位置を照射することを可能にする。以下でより詳細に説明するように、このような方法は、検出されたシグナル(複数可)に基づいて蛍光画像を計算する必要なしに、光学ビームによる照射に応答して細胞によって生成された時変シグナルを用いることによって選別決定を提供し得る。本教示による方法の様々な実施形態は、(例えば、フローサイトメトリーシステムにおける)細胞の選別の文脈において以下に述べられるが、本明細書に記載の方法はまた、他種の粒子、例えば、小生物(例えば、線虫、c.elegan)、ビーズ、微粒子、ナノ粒子、ウイルス粒子、細菌、エキソソーム、または医薬品を選別するためにも用いられてもよい。いくつかの実施形態では、本教示を使用して選別され得る粒子は、約50ナノメートル~約1ミリメートルの範囲、例えば、約100ナノメートル~約1マイクロメートルの範囲のサイズ(例えば、最大サイズ)を有し得る。
【0130】
さらに、多くの実施形態では、本明細書で論じる選別方法を使用して、例えば、細胞または他の粒子を、高い粒子処理量で作動する選別装置を用いて選別し得るように、低い潜時で選別決定を提供し得る(例えば、1秒あたり1000回を超える選別操作を実行してもよい)。一例として、本明細書に記載の方法を使用して、約100マイクロ秒以下、例えば、約10マイクロ秒~約100マイクロ秒の範囲、または約20マイクロ秒~約80マイクロ秒の範囲、または約30マイクロ秒~約70マイクロ秒の範囲、または50マイクロ秒の潜時で選別決定を行ってもよい。本明細書では、「潜時」という用語は、粒子(例えば、細胞)を問い合わせ(interrogating)放射線で照射して、その粒子の特性及び/またはその粒子に関する選別決定に達するまでの時間経過を示すために使用される。
【0131】
一例として、
図16Cのフローチャートは、粒子から発せられる二つ以上のフルオロフォア(例えば、外因性及び/または内因性フルオロフォア)に対応する蛍光シグナルの共局在化の程度に基づいて、粒子(例えば、細胞)を選別するための実施形態による方法を示す。一般性を失うことなく、粒子とは以下の説明では細胞とみなされる。ステップ(1)では、1つ以上の高周波によって互いに分離される2つ以上の光周波数を含む光学的放射線ビームによる照射を介して、細胞が光学的に問い合わされる。ある場合には、光学ビームは、それぞれが別のビームに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含んでもよい。そのようなビームの使用によって、1つ以上の高周波によって互いからシフトされる、異なる光周波数で細胞内の異なる位置を照射することが可能になる。光周波数は、細胞と会合すると予想される2つ以上のフルオロフォアを励起するように選択され得る。例えば、フルオロフォアは、例えば、染色剤によって細胞がタグ付けされている蛍光色素分子であってもよい。一例として、いくつかの実施形態では、放射ビームの光周波数は、約300THz~約1000THzの範囲内であり、光周波数間の高周波分離は、例えば、約50MHz約250MHzまでであってもよい。
【0132】
次いで、励起された細胞から発する蛍光放射線を2つ(またはそれ以上)の別々の蛍光チャネルに集めてもよく、その各々はフルオロフォアの1つによって放射される蛍光放射線に相当する(ステップ2)。これは、例えば、
図9Aに関連して上述された検出器構成を用いることによって達成され得る。各チャネルの収集された蛍光放射線は、デジタル化され(ステップ3)、シグナル値(蛍光強度)の時系列として表されてもよい。この実施形態及び他の実施形態では、蛍光放射線に存在するうなり周波数をエンコードし得るシグナル値のそのような時系列は、時間-周波数波形と呼ばれる。2つ以上の蛍光チャネルに相当するデジタル化された時間-周波数波形は、時間的に同期され(ステップ4)、正規化される(ステップ5)。この正規化は、例えば、各波形をその最大値で除算し、その波形に倍率を掛けることによって達成され得る。
【0133】
ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを、少なくとも1つの波形に適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成してもよい(ステップ6)。いくつかの実施形態では、約1MHz未満の周波数の通過を可能にし、かつより高い周波数を実質的に遮断するローパスフィルタが適用される。適切なローパスフィルタのいくつかの例としては、限定するものではないが、時間領域有限インパルス応答(FIR)フィルタまたはフーリエ領域フィルタが挙げられる。
【0134】
次いで、波形を点ごとに乗算して乗算波形を得てもよく、この乗算波形を積分して積分値を得てもよい(ステップ7)。例として、
図17は、1つの蛍光チャネルで検出されたフィルタリングされた正規化された時系列デジタル化蛍光シグナルを表すアレイ1700と、このアレイ1700と時間的に同期している別の蛍光チャネルで検出されたフィルタリングされた正規化時系列デジタル化蛍光シグナル(簡略化のために、この例示的な実施例では、蛍光チャネルの数は2つに選択され、アレイ要素の数は10に選択され、蛍光チャネルの数は2より大きくてもよく、アレイ要素の数は10を超えることが理解されるべきである)に相当するアレイ1701とを示す。このデータは、本明細書では、時間-周波数波形と呼ばれる。得られたアレイ1702は、アレイ1700及び1701内のデータを点ごとに乗算することによって得られる。
【0135】
各チャネルからの時間蛍光シグナルは、光学的放射線ビームの高周波分離光周波数の干渉に相当するうなり周波数を含む。このように、それぞれのデジタル化されたデータの乗算は、それらの周波数の和及び差を示すであろう。2つ以上の蛍光チャネルのシグナルが、励起された細胞内の実質的に類似の空間的位置に由来する場合、それらのシグナルを乗算することによって得られる結果としての時間領域データは、励起された細胞から発する異なる蛍光チャネルにおけるシグナルの共局在化の程度に基づいてDCまたはDCに近い周波数成分を含むであろう。
【0136】
ステップ(8)では、積分結果を、所定の閾値と比較して、問い合わされた細胞が、選別のための基準を満たす細胞として認定される蛍光シグナルの十分な共局在を示すか否かを決定する。例えば、積分された結果が所定の閾値に等しいかまたはそれを超える場合、その細胞は選別のために選択される。そうでなければ、その細胞は選別に関して選択されない。
【0137】
上記の共局在化方法のさらなる説明として、
図18Aは、A及びB細胞が抗CD45-FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色されたヒト白血球であり、細胞C及びDがCalcein AMで染色されたHeLa細胞である、A、B、C、及びDと表示された4つの細胞の蛍光画像を示す。これらの画像セットは、上記の染色剤で染色された細胞からの蛍光を検出することによって得られた2色の蛍光画像、ならびに明視野及び暗視野画像を含む。
図18Bは、測定された緑色(FITC)蛍光時間領域シグナルを示し、
図18Cは、20MHz~60MHzの範囲の周波数で光学的放射線のビートによるこれらの細胞の照射に応答して、細胞A、B、C及びDから得られた測定された赤(ヨウ化プロピジウム)蛍光時間領域シグナルを示す。
図18Dは、各細胞について、正規化された赤色及び緑色蛍光波形を乗算し、得られた波形をローパスフィルタ(フーリエドメインローパスフィルタ)に通してフィルタリングされたシグナルを生成することにより、共局在化時間領域波形を得る。
【0138】
図19は、細胞A、B、C、及びDのそれぞれについての積分されたフィルタリングされたシグナルの値を示す。この図の破線は、選別閾値を表す。細胞A及びBの積分シグナルは、選別閾値より下であるが、細胞C及びDの積分シグナルは、選別閾値を上回っている。このようにして、細胞C及びDについては正の選別判定が採用され(すなわち、細胞C及びDが選別用に選択される)、細胞A及びBには負の選別判定が採用される。
【0139】
蛍光共局在化に基づく上記の選別方法は、例えば転座分析のための様々な用途に使用され得る。
【0140】
別の態様では、細胞サイズの推定値に基づいてフローサイトメトリーシステムで細胞を選別する方法が提供され、ここで、細胞サイズの推定値は、細胞によって発せられた蛍光放射線の分析によって得られる。例えば、この方法は、細胞から発する蛍光パルスの持続時間を利用して、流れの方向に沿った細胞の寸法を推定し、かつ蛍光シグナルの2乗を、ローパスフィルタを通過させて細胞の横方向寸法(例えば、細胞の流れの方向に直交する細胞の寸法)の推定値に基づいて選別決定を実行することによって得られるローパスフィルタリングされたシグナルに含まれるパワーを分析する。
【0141】
より具体的には、
図19を参照すれば、一実施形態では、1つ以上の高周波によって互いに分離される2つ以上の光周波数を含む光学的放射線ビームによる照射によって、細胞が光学的に問い合わされる(ステップ1)。前の実施形態と同様に、光学ビームは、例えば、それぞれが別のビームに対して高周波シフトを有する、複数の角度的にまたは空間的に分離されたビームレットを含んでもよい。光周波数は、細胞に関連する1つ以上の外因性及び/または内因性フルオロフォアを励起するように選択してもよい。細胞は光学的放射線ビームを通過し、ビームによる励起に応答して蛍光を放射する。一般性を失うことなく、この実施形態では、細胞は照射ビームを通って垂直方向に流れると仮定され、放射された蛍光は、細胞の流れ方向に実質的に直交する横方向(水平方向)で検出される。
【0142】
次いで、細胞から発せられた蛍光シグナルが検出され、デジタル化されて時間-周波数波形が生成される(ステップ2)。次に、検出された蛍光放射線を分析して、以下に説明されるように、細胞サイズを推定してもよい。いくつかの実施形態では、細胞から放射される光散乱パルスの持続時間を使用して、流れの方向に沿って細胞サイズを推定してもよい。
【0143】
細胞から発する蛍光パルスの持続時間は、問い合わす光学的放射線ビーム内の細胞の滞留時間に関係し、これが次に、流れ方向に平行な方向のビームの寸法に関連し、流れの方向の細胞サイズ及び細胞の流速に関する。細胞を照射するビームが直径(H)を有し、細胞の流速がVであり、細胞が流れの方向にサイズD(例えば、直径)を有するならば、サイズDは、以下の関係式で近似され得る。
D=V×T-2×H 式(2)
ここで、Tは、検出された光パルス幅である。したがって、ステップ(3)では、フローの方向の細胞サイズは、例えば上記の関係を使用して、細胞から発せられる蛍光または光散乱パルスの持続時間に基づいて推定される。
【0144】
引き続き
図20のフローチャートを参照すれば、細胞の横方向のサイズを推定するために、デジタル化された蛍光データを2乗し(ステップ4)、バンドパスフィルタを2乗蛍光データに適用する(ステップ5)。次いで、フィルタリングされたデータを積分した、積分されたパルス電力の尺度を得る(ステップ6)。積分されたパルス電力は、細胞の横方向のサイズの尺度を提供し得る。より具体的には、バンドパスフィルタの帯域内に入る差周波数(2乗演算の結果として生じる)に存在する電力に基づいて、積分パルス電力は、細胞の横方向サイズの尺度を提供し得る。
【0145】
ステップ(7)では、フロー方向の細胞サイズの推定値及び/またはフィルタリングされたデータに関連する積分されたパルス電力を用いて、細胞に関する選別決定を行ってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、流れの方向の推定された細胞サイズを第1の閾値と比較してもよく、積分されたパルス電力を第2の閾値と比較して選別判定を行ってもよい。一例として、場合によっては、フロー方向の推定細胞サイズと積算されたパルス電力の両方がそれぞれの閾値を超える場合、正の選別判定が行われる(すなわち、細胞が選択される)。あるいは、選別の決定は、流れ方向の細胞サイズまたは積分されたパルス電力の推定値にのみ依存し得る。以下でさらに説明するように、場合によっては、推定された垂直及び水平の細胞サイズの比を用いて、選別決定を行ってもよい。
【0146】
細胞の横方向サイズの推定値に基づいて選別決定を行うことのさらなる例示として、
図21Aは、1MHzだけ互いに分離された15MHz~25MHzに及ぶ高周波変調を有する複数の高周波変調ビームレットを含む仮説ビームによって照射される仮説細胞を概略的に示す。破線は、照射の方向に直交する平面内の照射された細胞の断面図を概略的に示す。細胞から収集され、デジタル化された蛍光放射線は、
図21Bに概略的に示されるように、デジタル化された蛍光値の時系列アレイ2100の形態であってもよい(このアレイは、ここでは説明目的のためにのみ示しており、実際の蛍光波形に存在し得るアレイ要素の数を制限するものではない)。波形2100を2乗して、波形2101を得る。次いで、バンドパスフィルタを、2乗された蛍光波形2101に適用し、ここでは、フィルタは、2つの周波数f
1 及びf
2 (ここで、f
2 >f
1 )の間に選択された変調周波数が通過することを可能にするが、一方では、f
1 よりも低く、f
2 よりも大きい変調周波数を実質的に遮断する。例として、バンドパスフィルタは、FIRバンドパスフィルタであってもよいが、当該技術分野で知られている他の適切なフィルタをまた使用してもよい。フィルタリングされたデータは、f
1 とf
2 との間の変調周波数で、検出された蛍光パルスに存在するパワーを示す。次に、フィルタリングされたデータを積分して、f
1 とf
2 との間の周波数における全パルス電力の尺度を得る。次いで、この積分された結果を、閾値と比較して選別決定を行ってもよい。例えば、細胞の横方向のサイズは、積分結果が所定の閾値よりも小さいという事実に基づいて、ある値よりも小さいと推定され得る。
【0147】
この例では、細胞サイズは、約18MHz~約21MHzの範囲の高周波変調を有する光学的放射線による細胞の照射をもたらす。したがって、蛍光データの2乗における最大変調周波数と最小変調周波数との間の差は、約6MHzである。約10MHz~約15MHzの範囲の蛍光データの2乗における差異の周波数をもたらす、より大きいサイズの細胞の検出が望ましい場合、10MHz未満及び15MHzを超える周波数に対して識別するバンドパスフィルタは、蛍光データの2乗に適用される。この例では、このようなバンドパスフィルタを蛍光データの2乗に適用すると、所望の横方向サイズを有する細胞の存在を示すために十分に大きなシグナルが得られない。なぜなら、蛍光データの2乗における差異変調周波数は、10MHz未満であるからである。
【0148】
細胞サイズに基づく上記の選別方法は、様々な異なる用途、例えば循環腫瘍細胞(CTC)のサイズによる単離を有し得る。
【0149】
別の態様では、細胞のアスペクト比に基づいて細胞を選別する方法が開示される。例えば、
図22ローチャートを参照すると、光学的問い合わせ領域を通過する細胞が放射線で励起され、細胞によって放射された蛍光放射線が収集され、デジタル化され(ステップ1)、デジタル化された時間-周波数波形が生成される。次いで、デジタル化された蛍光データは、垂直方向(流れの方向に沿った)細胞サイズを評価するため(ステップ2)及び水平方向(流れの方向に直交する方向に沿った)細胞サイズを評価するため(ステップ3)に、上述した方式で分析される。より具体的には、細胞の垂直サイズは、細胞によって放射された蛍光または光散乱(または光透過)パルスの時間幅を使用して推定されてもよく(ステップ2)、細胞の水平サイズは、例えば、蛍光データの2乗にバンドパスフィルタを適用することに基づいて、上述した方法(ステップ3)を用いて推定されてもよい。ステップ(4)では、細胞の垂直及び水平サイズの推定値の比が決定され、その細胞に関して選別決定を行うために所定の閾値と比較される。例えば、場合によっては、比率が閾値を超える場合、その細胞に関して正の選別決定を行ってもよい。
【0150】
細胞のアスペクト比に基づく上記の選別方法は、例えば、細胞周期分析、DNA分析などに用いてもよい。
【0151】
別の態様では、細胞質のサイズに対する細胞の核のサイズの比を決定する方法が開示される。いくつかの実施形態では、このような比率を使用して選別決定を行ってもよい。
図23Aのフローチャートを参照して、1つのこのような実施形態では、細胞を、2つの蛍光マーカーで標識(例えば、染色)し、その1つは細胞の膜(細胞質の境界)上に存在し、もう1つは細胞膜を透過して細胞質に入り、及び細胞の核を染色する(例えば、細胞の内部機構を介して)(ステップ1)。細胞膜に結合する蛍光マーカーのいくつかの例としては、抗CD45-FITCまたは抗EpCAM-PEのような、膜タンパク質に結合するフルオロフォアでタグ付けされた任意の抗体が挙げられる。蛍光マーカーを細胞膜に結合させるために用いられ得る他の一般的な表面タンパク質としては、例えば、CD3、CD4、CD8などが挙げられる。適切な核蛍光染色剤のいくつかの例としては、限定するものではないが、ヨウ化プロピジウム、SYT016、7-AAD、及びDAPIが挙げられる。
【0152】
次に、細胞に放射線を照射して両方のタイプの蛍光マーカーを励起し(ステップ2)、放射された蛍光を、細胞膜から及びその核からの蛍光発光に対応する2つのチャネルで検出及びデジタル化する(ステップ3)。細胞膜に相当する蛍光データは、例えば、上述したように用いて、細胞質のサイズの推定値を得、核に相当する蛍光データを用いて核サイズの推定値を得る(ステップ4)。例えば、各チャネルにおける蛍光または光散乱パルスの幅は、1つの次元に沿って(すなわち、流れの方向に沿って)細胞のサイズを推定するために、例えば上述されるように使用してもよい。さらに、細胞質または核の横方向のサイズは、上記の方法で各チャネルの蛍光データの2乗にバンドパスフィルタを適用することによって推定され得る。このバンドパスフィルタリングされたデータを積分した結果により、ある値を提供して、所定の閾値と比較し、閾値より大きいか小さい細胞を選別する。さらに、2次元の細胞のサイズ推定値は、例えば、垂直及び水平サイズ推定値の平方和の平方根を求めて、全細胞サイズの推定値に基づいて選別決定に達することによって組み合わせてもよい。
【0153】
ステップ(5)では、細胞質及び核のサイズ推定値の比、例えば、垂直方向もしくは水平方向のサイズの比、または組み合わせたサイズの比が得られる。
【0154】
図23Bのフローチャートを参照すれば、いくつかの実施形態では、例えば、上述した手法で決定し、
図23Bのフローチャートのステップ(1)~(5)で表され得る、細胞質のサイズに対する細胞の核のサイズの比を使用して、選別決定を行ってもよい。例えば、その比を所定の閾値と比較して選別決定を行ってもよい(ステップ6)。一例として、比率が閾値を超える場合、肯定的な選別決定が行われる(すなわち、細胞が選択される)。
【0155】
一例として、核-細胞質サイズ比に基づく上記の選別方法は、循環する腫瘍細胞の分類に使用してもよい。
【0156】
別の態様では、いくつかの実施形態では、細胞を選別するために使用され得る、細胞から放射された蛍光放射線の細胞尖度を推定する方法が開示される。言い換えれば、細胞からの放射された蛍光放射線が、中心を放射するという拡散細胞内分布から発するものとして特徴づけられ得るか、または細胞内に拡散的に分布していない放射中心から発するものとして特徴付けられ得るかに基づいて選別決定を行ってもよい。
【0157】
より具体的には、
図24Aに示すフローチャートを参照して、一実施形態では、1つ以上の外因性蛍光マーカー及び/または内因性蛍光マーカーを有する細胞を、1つ以上の高周波によって互いに分離された2つ以上の光周波数を有する光学的放射線で照射して、マーカー(複数可)から蛍光放射線を誘発する(ステップ1)。前述の実施形態と同様に、場合によっては、光学ビームは、それぞれが別のビームに対して高周波シフトを有する、複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含み得る。一例として、
図25を参照すれば、図示される例示的な実施形態では、光学的放射線ビームは、10MHz(f
1 )から15MHz(f
5 )に及び得る0.5MHzで分解された変調周波数f
1 、f
2 、f
3 、f
4 、f
5 を含んでもよい。以下でより詳細に説明するように、放射された蛍光放射線の尖度は、放射された蛍光放射線が光学ビームを変調するために使用される変調周波数以外(例えば、この実施形態では、f
1 、f
2 、f
3 、f
4 、f
5 以外)の変調周波数を示す程度によって推定され得る。光学ビームを変調するために使用される周波数間の周波数であり得る他の周波数は、本明細書では、「オフピクセル周波数」と呼ばれる。言い換えれば、オフピクセル周波数への蛍光パワーの「漏れ」は、放射された蛍光の尖度の指標であり、漏出が多いほど放射された蛍光の尖度が大きくなる。
【0158】
再び
図24Aのフローチャートを参照すれば、蛍光放射線を収集し、デジタル化して時間-周波数波形を生成してもよい(ステップ2)。ステップ(3)では、波形全体のフーリエ変換、例えば高速フーリエ変換(FFT)が得られる。続いて、生成されたFFTを、例えば、時間領域の波形をその最大値で除算し、次いで、波形を所望の定数で再スケーリングすることによって、細胞間比較用の固定値に正規化する(ステップ4)。FFTの「オフピクセル」ビン(すなわち、照射の光学的放射線に存在する変調周波数間の周波数に相当するビン)の合計が決定される(ステップ5)。その合計は、オフピクセル周波数への蛍光出力の「漏れ」の程度を示し、したがって放射された蛍光放射線の尖度の尺度を示す。
【0159】
図24Bを参照すると、いくつかの実施形態では、上述した方式で決定され、かつ
図24Bのフローチャートのステップ(1)~(5)に示された、放射された蛍光放射線の尖度の尺度を、細胞を選別するために用いてもよい。特に、ステップ(6)において、FFTの「オフピクセル」ビンの合計は、オフピクセル周波数に対する蛍光出力の「漏れ」の程度を示し、予め定められた閾値と比較して、選別の決定をしてもよい。例えば、蛍光尖度が比較的高い細胞を分類することが望まれるとき、その合計が閾値よりも大きい場合は、細胞を選別する(選択する)。あるいは、拡散蛍光を示す細胞を選別することが望ましいとき、合計が閾値よりも小さい場合は、細胞を選別する。
【0160】
放射された蛍光放射線の分析に基づく細胞のそのような選別は、スポット計数、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、細胞内輸送及び局在化、ならびに液滴に基づく単細胞分析などの様々な用途で使用され得る。
【0161】
粒子(例えば、フローサイトメトリーシステムを流れる細胞)についての選別決定を行うための上記の方法は、様々な方法で実施され得る。一例として、
図26は、選別決定を行うために本教示を用い得る、細胞を選別するための例示的なシステム2600を概略的に示している。システム2600は、複数の細胞が懸濁された懸濁液を貯留する容器2601を備えてもよい。細胞懸濁容器2601は、入口2602を介して、例えばステンレス鋼などの剛性の金属で形成され得る、試料導管2603に流体的に連結される。試料導管2603は、その遠位端にノズル2605を含む、小さな直径を有する下部円柱部2604cに、テーパ部2604bを介して、延在する上部円柱部2604aを備える容器2604内に配置される。容器2604は、シース流体源2606に流体的に連結される。音響振動子2608(例えば、圧電駆動器)がノズルに連結され、発生器2610によって励起されたときにノズルを振動させるように構成される。例えば、振動周波数は約60kHzであってもよいが、他の振動周波数も使用してもよい。
【0162】
使用時には、容器2601に貯蔵された懸濁流体は、入口2602から導管2603に導入される。導管2603を出る細胞を含む流体の細い流れは、シース液によって引っ張られ、ノズル2605に運ばれる。ノズルの振動運動は、ノズルを通る流れを複数の液滴D(それぞれの液滴Dは、単細胞粒子を含む)に分割するための当該技術分野で公知の方法で構成されてもよい。細胞の少なくともいくつかは、励起放射線による照射に応答して蛍光放射線を放射し得る、1つ以上の内因性及び/または外因性フルオロフォアと会合している。広範囲のフルオロフォアを使用してもよい。場合によっては、フルオロフォアは、細胞上の標的(例えば、受容体)を認識する抗体に結合してもよい。ある場合には、フルオロフォアは、細胞膜または別の細胞構造、例えば細胞の核に対する親和性を有する化学物質に結合し得る。さらに、場合によっては、細胞を異なるフルオロフォアの組み合わせで標識してもよい。
【0163】
引き続き
図26を参照すると、各細胞が問い合わせ領域2612を通過するにつれ、細胞は、照射システム2616によって生成されたレーザービーム2614によって照射され、細胞に関連する1つ以上のフルオロフォアから蛍光放射線を誘発する。上述したように、レーザービームは、1つ以上の高周波によって互いに対してシフトされる複数の光周波数を含んでもよい。一例として、光学ビームは、互いに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットの形態であってもよい。細胞から放射された蛍光放射線は、1つ以上の光検出器を備え得る検出システム2618によって検出してもよい。検出された蛍光を、上述した方法で分析モジュール2620によって分析して、その細胞に関する選別決定を行ってもよい。
【0164】
一例として、検出システムの照射は、例えば、
図1~12と関連して、上述したものであってもよい。しかし、粒子を選別するための本教示の実施は、特定の照射及び検出システムの使用に限定されないことを理解すべきである。むしろ、それらのシステムによって選別決定を行うための上記の方法で使用するために必要なデータ(例えば、蛍光データ及び/または散乱データ)が得られる限り、様々な異なるシステムを使用してもよい。
【0165】
再び
図26を参照して、システム2600は、さらに、充電回路2623によって電圧を加えられ、今度は分析モジュール2620の制御下である、充電カラー2622を備える。充電カラーは、正または負の電荷を、細胞の液滴に対して、その液滴が充電カラーを通過するにつれて付与し得る。あるいは、充電カラーは、細胞液滴に電荷を与えることなく細胞液滴を通過させ得る。
【0166】
より具体的には、分析モジュール2620は、上記の教示を使用して、細胞に関する選別決定を行ってもよい。その決定に基づいて、分析モジュールは、細胞液滴を帯電させる必要があるか否かを決定し得、もし必要であれば、どの電荷極性を細胞に付与すべきかを決定し得る。次いで、分析モジュールは、カラー2622を介して、必要な電荷を細胞液滴に付与するように、充電回路2623を制御し得る。次いで、細胞は、カラー2622の下流に配置される一対の偏向板2624の間のギャップを通過する。電源2625は、電圧を板2624の少なくとも1つに印加して、プレート間に電場を確立する。この電場は、細胞コレクタ2626のチューブ2626b及び2626cによってそれぞれ収集し得るように、異なる方向に沿って、負及び正の細胞液滴の経路を偏向してもよい。カラー2622によって電気的に帯電されていない細胞は、偏向されず、細胞コレクタのチューブ2626aによって捕捉される。
【0167】
分析/制御モジュール2620のような本明細書で説明される分析/制御モジュールは、当該技術分野で公知の技術を用いて、そして本発明の教示に従って、ハードウェア、ファームウェア、及び/またはソフトウェアにおいて様々な異なる方法で実施してもよい。一例として、
図27は、検出システム2618から蛍光シグナル(複数可)を受け取り、そのシグナル(複数可)をデジタル化して、デジタル化された蛍光データを生成するためのアナログ/デジタル変換器2702を備える、分析/制御モジュール2620の例示的な実行2700を概略的に示す。分析/制御モジュール2700は、さらに、本教示に従って蛍光データを処理して、問い合わせ中の細胞に関する選別決定に達するための本教示による蛍光データを処理するためのプロセッサ2704を備えてもよい。分析/制御モジュール2700はまた、ROM(読み取り専用メモリ)2706、RAM(ランダムアクセスメモリ)2708及び永久メモリ2710を備えてもよい。通信バス2712は、分析モジュールの様々な構成要素間の通信を容易にする。メモリモジュールは、蛍光シグナル(複数可)及び分析結果を分析するための命令を記憶するために使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、蛍光データを分析して本教示に従って選別決定に達するための命令をROM2706に記憶してもよい。プロセッサ2704は、これらの命令を使用して、RAM2708に記憶されたデジタル化された蛍光データを操作して、選別決定の判定を行ってもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサは、本教示に従って命令を実行して、蛍光データ上で作動して選別決定に達するように構成されたASIC(特定用途向け集積回路)として実施してもよい。この実施形態では、分析/制御モジュール2700は、問い合わせ中の細胞に適切な電荷を付与するように、選別決定に基づいて充電回路に適切なシグナルを送るための通信/制御モジュール2714をさらに備えてもよい。
【0168】
上述したように、本教示による方法は、細胞のピクセルごとの蛍光画像を形成する必要なく、粒子(例えば、細胞)の選別決定に達するように時間蛍光データに作用する。これにより、例えば、約100マイクロ秒未満のような低い潜時を有する細胞を選別することが可能となり、今度は、細胞を高い割合で選別することが可能になる。例えば、本教示による選別方法によって、細胞を、1秒あたり1000細胞を超える速度、例えば1秒あたり約1000~約100,000細胞の範囲で選別することが可能になる。
【0169】
上述したように、特定の照射または検出技術に限定されるものではないが、いくつかの実施形態では、本教示による細胞選別方法は、周波数領域多重化を使用して、例えば、2つの周波数オフセットされたベースのビームを叩くことによって生成された固有の高周波で各々「タグ付けされた」ピクセルの行を励起する流動フローサイトメトリーシステムで効率的に用いられ得る。周波数領域多重化を使用して、画像の単一行の数百のピクセルからの蛍光(または散乱)放射線を、例えば、各蛍光色または散乱方向の単一光電子増倍管(PMT)を用いて検出して読み出してもよい。画像の行内の各ピクセルの励起は、固有のうなり周波数で変調されるので、ピクセルレートは、システムの全RF帯域幅に比例し、100MHzを超えるピクセルレートでショットノイズ制限された感度を提供し得る。上述したように、本教示による選別方法は、時間周波数フォーマットでエンコードされた画像データを使用して、画像を実際に計算することなく選別決定を行い得る。
【0170】
さらに、上記システムは、応答照射において粒子から発する散乱放射線に基づいて粒子(例えば、細胞)を選別するために使用してもよい。散乱された放射線は、例えば上述した方法で検出され、分析されて、選別決定に達し得る。
【0171】
さらなる例として、米国特許、「Particle Separator」と題する米国特許第3,380,584号、「Flow Cytometer and Flow Cytometry」と題する米国特許第9,034,259号及び「System and process for Sorting biological Particles」と題する米国特許第7,417,734号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、本明細書に開示される選別方法及びシステムを実施するために、本教示に従って改変し得る選別システムに関する情報を提供する。
【0172】
さらなる解明として、付属書Aは、本教示の様々な態様に関する追加情報を提供する。
【0173】
当業者であれば、本教示の範囲から逸脱することなく様々な変更を行ってもよいことを理解するであろう。特に、上述された実施形態の様々な特徴、構造、または特性は、適切な方法で組み合わせてもよい。例えば、一実施形態に関連して説明した検出システムを別の実施形態で使用してもよい。
【0174】
付属書A
上述したように、いくつかの実施形態では、高周波振幅変調を伴う2つ以上のビームレットは、空間的に異なる位置で試料を照射する。試料と各ビームレットとの間の相互作用は、各々がビームレットの対応する高周波で振幅変調される散乱、透過、及び蛍光発光シグナルのうち少なくとも1つを生成し得る。収集されたシグナルは、各変調されたビームレットからの寄与の合計として表してもよい。
S(t)=ΣiPi(t)・(1+Amcos(ωit+φi)) 式(3)
式中、S(t)は、収集されたシグナルを表し、Pi(t)は、i番目のビームレットに関連する時間依存の散乱、透過、または蛍光発光シグナルを表し、Amはビームレットの変調深度を表し、wi及びφiは、それぞれ、ビームレットの高周波変調の角周波数及び相を表す。粒子の画像提示は、各ビームレットを画像の異なる列に割り当て、時間の各モーメントを画像の異なる行に割り当てることによって導出し得る。この画像提示は、フーリエ変換を介して収集されたシグナルに接続される。
Im(x,y)=R・W・F・S(t) 式(4)
ここで、Fは短時間フーリエ変換を実現する行列であり、Wはフーリエ成分を画像ピクセルにマッピングする行列であり、かつRは、フィルタリング、バックグラウンド減算、及びビネット補正などの任意の所望の線形画像領域後処理を実行する行列である。粒子の任意の線形特徴は、画像上の行列乗算によって表され得る。したがって、任意の所望の線形特徴を計算する行列Mに関して、特徴は、直接、すなわち、画像を最初に計算する必要なしに、以下を介して収集されたシグナルから、算出され得る。
M・Im(x,y)=M・R・W・F・S(t)=Q・S(t) 式(5)
Q=M・R・W・F 式(6)
式中、Qは、現在の粒子表現から所望の線形特徴への変換を表す行列である。したがって、任意の線形特徴は、行列Qを最初に計算することによって、例えば、前処理ステップにおいてオフラインで、次に式(5)に示すように、例えば、オンラインで、ドット積を実行することによって計算して、所望の特徴を抽出し得る。多くの実施形態では、すべての特徴について、この特徴へのバックグラウンドシグナルの寄与も差し引くことが望ましい。このプロセスは次のように要約してもよい。
計算する:Q=M・R・W・F
計算する:Qbkg=M・R・Wbkg・F
データを収集しながら、
ある粒子が検出される場合、
計算する:D=Q・S(t)
その他:
計算する:Dbkg(i)=Qbkg・S(t)
計算する:Dbkg=平均(Dbkg(i))
収率:D-Dbkg
【0175】
上述したように、いくつかの実施形態では、粒子の1つ以上の計算された特徴を用いて、その粒子に関する選別決定を行ってもよい。別のさらなる例として、
図28は、このような選別方法の各種ステップを示すフローチャートを示す。最初のステップ(1)では、上記のQ及びQ
bkg行列は、所望の粒子の特徴(特性)に基づいて計算してもよい。続いて、例えば、高周波変調された光学的放射線で照射されたフローサイトメーターのフローセルからの散乱、透過または放射された光シグナルを収集し、デジタル化してもよい(ステップ2)。シグナルは、閾値交差と比較して、そのシグナルが粒子由来であるか否か、すなわち粒子が存在するか否かを決定してもよい(ステップ3)。粒子が存在すると判定された場合、各デジタル化された試料シグナルにQを乗算し(ステップ4)、その結果を単一の値に積分する(ステップ5)。粒子の所望の特徴(特性)の推定値を得るために、積分値からバックグラウンドシグナルを差し引く(ステップ6)。選別決定は、特徴の推定値を閾値と比較することによって行ってもよい(ステップ7)。引き続き
図28のフローチャートを参照して、粒子が存在しない場合に得られた1つ以上のデジタル化されたシグナルにQ
_bkgを乗算してもよく(ステップ8)、いくつかのバックグラウンド測定値を平均してステップ(6)で使用されるバックグラウンド推定値を得てもよい。
【0176】
いくつかの実施形態では、受信されたシグナルの様々なモーメントを使用して、散乱、透過、または放射された放射線の空間分布に関する情報を得てもよい。画像モーメントは、いくつかの任意のパワーに対してとった、任意の原点からの距離に応じたピクセルの加重和を表すクラス線形画像特徴である。
【0177】
【0178】
各画像モーメントは、散乱光、透過光または放射光の空間分布に関する異なる情報をエンコードする。高次モーメントは、原点からの距離に応じてピクセルを重み付けし、各モーメントはシグナルの分布について異なる情報を提供する。様々な実施形態において、これらの特徴の全ては、適切なQを事前計算することによって測定シグナルS(t)から直接的に計算してもよい。
【0179】
空間フーリエ成分は、以下のように定義されるMと同じ方法で計算され得る。
M(u,v)=exp(-j2π(ux+vy)) 式(8)
【0180】
所望の成分を実験の前に選択してもよく、別々のQをそれぞれについて事前に計算してもよい。例えば、粒子が照射放射線の焦点にあるか否かを判定するために、フーリエ成分を使用してもよい。
【0181】
いくつかの画像特徴は、特徴抽出の前にデータ上の非線形変換を含む。そのような特徴のサブセットに関しては、それらを線形特徴の非線形の組み合わせとして表すことが可能である。そのような特徴を計算するには、前のセクションのように複数の特徴を最初に並列で計算し、その結果を非線形の方法で組み合わせることを含み得る。画像モーメントの非線形の組み合わせによって表現し得る多くの有用な画像特徴が存在する。例えば、ピクセルの質量中心は、1次モーメントと0次モーメントの比によって計算され得る。
【0182】
【0183】
いくつかの他の粒子特性をこのように表してもよい。非網羅的なリストは、以下の表1にある。
【0184】
【0185】
いくつかの実施形態では、中央の2次モーメントを用いてダブレットを識別してもよい。散乱光シグナルまたは透過光シグナルにおける二次モーメントが高い粒子は、より大きなシグナル分布を示す。一例として、
図29は、複数の血球の水平及び垂直の中心モーメントに対応する散布図を示す。
【0186】
共局在化及び類似性
いくつかの実施形態では、粒子と基準との間の類似性は、共局在化と同じ方法で計算され得る。共局在化の場合、2つの波形は、同じ粒子を検査する異なる検出器に相当する。類似の場合、2つの波形は、2つの異なる粒子を検査する同じ検出器に相当する。粒子と基準との間の類似性を検出するための例示的なアルゴリズムを以下に要約する。
【0187】
Rが、基準粒子に相当する波形を表すなら、Filtは、変調された周波数のみを通過させるハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタであり、Nは、基準粒子の画像提示におけるピクセルの数である。したがって、アルゴリズムには以下が含まれる。
【0188】
【0189】
R’=Filt(R)を計算し、
【0190】
R2=||R’||2を計算し、
【0191】
研究中の粒子に相当する各入力波形Sについて、
【0192】
【0193】
S’=Filt(S)を計算し、
D=S’・R’を計算し、
S2=||S’||2を計算する。
【0194】
【0195】
(関連出願)
本出願は、2016年3月17日に出願され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Cell Sorting Using A High Throughput Fluorescence Flow Cytometer(ハイスループット蛍光フローサイトメーターを用いる細胞選別)」と題する仮出願番号62/309,806の優先権を主張する。
【0196】
(政府の権利)
本発明は、国立科学財団、助成金番号NSF 1447381によって資金提供されている。政府は、本発明に一定の権利を有する。