(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ノイズ低減具及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240611BHJP
H01F 1/117 20060101ALI20240611BHJP
H01F 1/375 20060101ALI20240611BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240611BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
H05K9/00 K
H01F1/117
H01F1/375
H02G3/04
B60R16/02 623Z
(21)【出願番号】P 2022064954
(22)【出願日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 香織
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-223859(JP,A)
【文献】特開2006-313856(JP,A)
【文献】特開2007-317685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01F 1/117
H01F 1/375
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、
前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、
を備え、
前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、
前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定する
ものであり、一方の前記重畳部に一体化した第1固定部と、前記第1固定部と間で他方の前記重畳部を挟み込む第2固定部と、を有し、
前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、
前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、
前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませ、
前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴としたノイズ低減具。
【請求項2】
電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、
前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、
を備え、
前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、
前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定するものであり、一方の前記重畳部と他方の前記重畳部を挟み込む第1固定部と第2固定部を有し、
前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、
前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、
前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませ、
前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴としたノイズ低減具。
【請求項3】
電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束と、
前記電線又は前記電線束から出た放射ノイズの外部への放出を低減させるノイズ低減具と、
を備え、
前記ノイズ低減具は、
前記電線又は前記電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、
前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、
を備え、
前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、
前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定する
ものであり、一方の前記重畳部に一体化した第1固定部と、前記第1固定部と間で他方の前記重畳部を挟み込む第2固定部と、を有し、
前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、
前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、
前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませ、
前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項4】
電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束と、
前記電線又は前記電線束から出た放射ノイズの外部への放出を低減させるノイズ低減具と、
を備え、
前記ノイズ低減具は、
前記電線又は前記電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、
前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、
を備え、
前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、
前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定するものであり、一方の前記重畳部と他方の前記重畳部を挟み込む第1固定部と第2固定部を有し、
前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、
前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、
前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませ、
前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴としたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ低減具及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズ低減具は、磁性材料から成る部材であり、ノイズ電流の流れる電線に取り付けて、その電線から出た放射ノイズの外部への放出を低減させる磁性体を構成部品として備える。例えば、ノイズ低減具は、半円筒形状に成形された2つの磁性体(所謂フェライトコア)を備え、この2つの磁性体を組み合わせて円筒状に形成し、その円筒の内方の空間に電線を挿通させた形で使用される。しかしながら、このような磁性体を利用するノイズ低減具は、径の大きく異なる電線間での共用化が難しく、また、径の大きく異なる電線間での構成部品の共用化すらも難しい。このため、この技術分野では、少なくとも構成部品を径の異なる電線間で共用可能なノイズ低減具が望まれている。例えば、下記の特許文献1には、2種類の磁性体を交互に並べ、隣り合う一方の円筒状の磁性体同士を弾性部材とピンで連結させたチェーン構造のノイズ低減具が開示されている。また、下記の特許文献2には、複数の台形柱状の磁性体をフィルムに接着し、これを電線に巻き付けるノイズ低減具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-374090号公報
【文献】特開平7-297588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のノイズ低減具は、その構成部品の多さ故、構造が複雑であり、生産性等の観点から原価の低減が難しい。また、上記特許文献2のノイズ低減具は、磁性体とフィルムを接着剤で接着させるので、耐熱性や経年変化等の観点から耐久性の確保が難しい。
【0005】
そこで、本発明は、耐久性を確保しつつ原価を低く抑え得るノイズ低減具及びワイヤハーネスを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るノイズ低減具は、電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、を備え、前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定するものであり、一方の前記重畳部に一体化した第1固定部と、前記第1固定部と間で他方の前記重畳部を挟み込む第2固定部と、を有し、前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませ、前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴とする。また、本発明に係るノイズ低減具は、電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、を備え、前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定するものであり、一方の前記重畳部と他方の前記重畳部を挟み込む第1固定部と第2固定部を有し、前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませ、前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るワイヤハーネスは、電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束と、前記電線又は前記電線束から出た放射ノイズの外部への放出を低減させるノイズ低減具と、を備え、前記ノイズ低減具は、前記電線又は前記電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、を備え、前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定するものであり、一方の前記重畳部に一体化した第1固定部と、前記第1固定部と間で他方の前記重畳部を挟み込む第2固定部と、を有し、前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませ、前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴とする。また、本発明に係るワイヤハーネスは、電線又は複数本の電線を一纏めに束ねた電線束と、前記電線又は前記電線束から出た放射ノイズの外部への放出を低減させるノイズ低減具と、を備え、前記ノイズ低減具は、前記電線又は前記電線束に対して当該電線又は当該電線束の軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体と、前記電線又は前記電線束に巻き付けた巻回形状の前記磁性体における積層部分の重畳部同士を固定して、前記磁性体の前記巻回形状を保ちつつ前記磁性体を前記電線又は前記電線束に固定する固定部材と、を備え、前記磁性体は、前記電線の電線径又は前記電線束の電線束径に応じて巻き径を変えることが可能であり、前記固定部材は、前記磁性体の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた前記重畳部同士を固定するものであり、一方の前記重畳部と他方の前記重畳部を挟み込む第1固定部と第2固定部を有し、前記第1固定部は、交互に複数並べられた第1突起部と第1溝部を有し、前記第2固定部は、交互に複数並べられた第2突起部と第2溝部を有し、前記第1突起部と前記第2溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませ、前記第2突起部と前記第1溝部は、その1つずつが対になり、その間で一方の前記重畳部と他方の前記重畳部に噛み込ませることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るノイズ低減具は、その主要構成が磁性体と固定部材だけで、かつ、磁性体を電線又は電線束に巻き付けて固定部材で固定するだけの簡素な構造を採っている。このため、このノイズ低減具は、生産性に優れたものとなり、原価の低減を図ることができる。また、このノイズ低減具は、様々な電線径や長さの電線と様々な電線束径や長さの電線束に適応できるので、多様な電線や電線束の間での共用化が可能になる。このため、このノイズ低減具は、この点でも原価の低減を図ることができる。また、このノイズ低減具は、複数本の電線を電線束として束ねる機能も兼ねているので、例えば、複数本の電線を束ねるための結束バンドや粘着テープを不要にできたり、その結束バンドや粘着テープの数量や使用量を減らしたりすることができる。このため、このノイズ低減具は、この点でも原価の低減を図ることができる。更に、このノイズ低減具は、接着剤を用いていないので、耐熱性が高く且つ経年変化にも強く、高い耐久性を確保することができる。このように、本発明に係るノイズ低減具は、高い耐久性を確保しつつ原価を低く抑えることができる。そして、本発明に係るワイヤハーネスは、このノイズ低減具を具備するものであり、このノイズ低減具によって得られるものと同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態のノイズ低減具が組み付けられたワイヤハーネスを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のノイズ低減具が組み付けられたワイヤハーネスを軸線方向に見た模式図である。
【
図3】
図3は、組付け前のノイズ低減具を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、固定部材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、固定部材による重畳部同士の固定状態についてその一例と共に模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、固定部材による重畳部同士の固定状態について他の一例と共に模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るノイズ低減具及びワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
[実施形態]
本発明に係るノイズ低減具及びワイヤハーネスの実施形態の1つを
図1から
図6に基づいて説明する。
【0012】
図1及び
図2に示す符号1は、本実施形態のノイズ低減具を示す。このノイズ低減具1は、ノイズ電流の流れる電線Weに取り付けて、この電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させる。または、このノイズ低減具1は、ノイズ電流の流れる電線Weが含まれる複数本の電線を一纏めに束ねた電線束Webに取り付けて、この電線束Web(複数本の電線の内のノイズ電流の流れる電線We)から出た放射ノイズの外部への放出を低減させる。
図1及び
図2に示す符号WHは、そのノイズ低減具1が電線We又は電線束Webに組み付けられたワイヤハーネスを示す。ノイズ低減具1は、電線We又は電線束Webの長さに応じて1つ又は複数設ける。
【0013】
このワイヤハーネスWHは、例えば、BEV(Battery Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の電気自動車(図示略)に車載される。具体的な一例として、このワイヤハーネスWHは、電気自動車の駆動用二次電池と補機用二次電池との間にて、この間に介在するDC/DCコンバータと補機用二次電池との間を物理的且つ電気的に接続させる。このワイヤハーネスWHは、補機用二次電池を充電する際に、駆動用二次電池から補機用二次電池への給電を担っている。
【0014】
また、このワイヤハーネスWHは、例えば、電気自動車の駆動用二次電池と補機用二次電池への充電を行うための充電システム(図示略)に用いられる。
【0015】
この充電システムは、業務用や家庭用に拘わらず、普通充電用又は急速充電用として構成されたものである。この充電システムは、外部電源と、この外部電源から電力供給される充電器本体と、この充電器本体から車両側に給電するためのコネクタ付き充電ケーブルと、を備える。コネクタ付き充電ケーブルは、その給電に際して作業者に使用されるものであり、少なくとも電力線(電線We)が設けられている充電ケーブルと、この充電ケーブルの一方の端末に取り付けられた充電コネクタと、を備える。ここで、充電システムについては、その給電に際して車両と充電器本体との間で通信しながら充電制御を行うものもある。この場合の充電ケーブルには、その通信を担う通信信号線も設けられている。
【0016】
例えば、この充電システムを急速充電用として構成する場合には、外部電源に三相交流電源が用いられ、その交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータが充電器本体の筐体内に収容されている。この場合のコネクタ付き充電ケーブルは、その変換後の電力を車両側に供給する。
【0017】
コネクタ付き充電ケーブルは、充電器本体に対して予め組み付けられたものであり、この充電器本体と共に充電器を構成するものであってもよい。このコネクタ付き充電ケーブルについては、充電する際に充電器本体側から車両側に引き回し、充電コネクタを電気自動車のコネクタ(車両側コネクタ)に対して物理的且つ電気的に接続させる。
【0018】
一方、コネクタ付き充電ケーブルは、車両の荷室に収容されるなどする単独の部品であり、充電ケーブルの他方の端末に電源側コネクタが取り付けられたものであってもよい。この場合には、充電器本体が充電器を構成する。このコネクタ付き充電ケーブルについては、充電する際に、電源側コネクタを充電器本体のコネクタに対して物理的且つ電気的に接続させると共に、充電コネクタを車両側コネクタに対して物理的且つ電気的に接続させる。
【0019】
この充電システムには、充電器本体の筐体内に、AC/DCコンバータ側と充電ケーブル側とを電気接続させる内部充電ケーブルが設けられている。この内部充電ケーブルは、少なくとも内部電力線(電線We)を備え、この内部電力線によってAC/DCコンバータ側と充電ケーブル側とを電気接続させる。よって、この充電システムにおいては、この内部充電ケーブルにノイズ低減具1を取り付けたものが本実施形態のワイヤハーネスWHとなる。尚、充電に際して先の通信を行う場合、内部充電ケーブルには、内部通信信号線も設けられている。また、この充電システムにおいては、コネクタ付き充電ケーブルの充電ケーブルにノイズ低減具1を取り付けたものが本実施形態のワイヤハーネスWHとなる。
【0020】
以下、本実施形態のノイズ低減具1及びワイヤハーネスWHについて具体的に説明する。
【0021】
ノイズ低減具1は、電線We又は電線束Webに対して当該電線We又は当該電線束Webの軸周りに1周よりも多く巻き付け可能な帯状の磁性体10と、電線We又は電線束Webに巻き付けた巻回形状の磁性体10における積層部分11の重畳部11a,11b同士を固定して、その磁性体10の巻回形状を保ちつつ磁性体10を電線We又は電線束Webに固定する固定部材20と、を備える(
図1から
図6)。
【0022】
磁性体10は、強磁性材料で柔軟性を持たせて成形される。その強磁性材料としては、フェライト等が用いられる。
【0023】
この磁性体10は、巻き付け対象の電線Weの電線径又は電線束Webの電線束径に応じた長さで、かつ、その電線We又は電線束Webに1周よりも多く巻き付けた上で、その積層部分11の重畳部11a,11b同士を固定部材20で固定することのできる長さの帯状に成形される。例えば、この磁性体10は、巻き付け対象となる最大電線径の電線We又は最大電線束径の電線束Webに対して1周よりも多く巻き付け可能で、かつ、その積層部分11の重畳部11a,11b同士を固定部材20で固定することのできる長さの帯状に成形される。つまり、この磁性体10は、その最大電線径以下の電線径の電線We又はその最大電線束径以下の電線束径の電線束Webであれば、その電線Weの電線径又は電線束Webの電線束径に応じて巻き径を変えることができる。
【0024】
固定部材20は、磁性体10の巻き径に拘わらず、その巻き径に応じた重畳部11a,11b同士を固定することのできるものとして形成する。具体的に、ここで例示する固定部材20は、積層部分11における少なくとも一方の重畳部11a(11b)に噛み込ませて重畳部11a,11b同士を固定する突起部を有している。
【0025】
固定部材20は、第1固定部21と第2固定部22を有している(
図3から
図6)。この第1固定部21と第2固定部22は、互いに別体のものであってもよく、リビングヒンジ等を介して一体化されたものであってもよい。ここでは、別体の第1固定部21と第2固定部22を示している。
【0026】
この固定部材20においては、第1固定部21と第2固定部22の内の少なくとも一方に突起部を複数設ける。例えば、この固定部材20においては、第1固定部21と第2固定部22の内の一方に突起部を複数設け、その内の他方に少なくとも一方の重畳部11a(11b)を突起部との間で挟み込む挟持部を設ける。その挟持部とは、第1固定部21と第2固定部22の内の他方における平滑面等の壁面であってもよく、突起部と対になる突起部毎の溝部であってもよい。
【0027】
ここで示す第1固定部21は、交互に複数並べられた第1突起部20aと第1溝部20bを有している(
図4)。一方、ここで示す第2固定部22は、交互に複数並べられた第2突起部20cと第2溝部20dを有している(
図4)。この固定部材20においては、1つの第1突起部20aと1つの第2溝部20dとが対になり、かつ、1つの第2突起部20cと1つの第1溝部20bとが対になる。そして、その第1突起部20aと第2溝部20dは、その組み合わせ毎に、第2溝部20dの中に第1突起部20aを入り込ませることのできる形状に形成されている。また、第2突起部20cと第1溝部20bは、その組み合わせ毎に、第1溝部20bの中に第2突起部20cを入り込ませることのできる形状に形成されている。
【0028】
この固定部材20においては、第1固定部21を磁性体10の長手方向の一端部に対して一体化させている(
図3)。この場合、磁性体10においては、その一端部が一方の重畳部11aになり、巻き付け後の磁性体10の長手方向の他端部側に他方の重畳部11bが存在する。例えば、第1固定部21は、その形状を形作ることができるのであれば、磁性体10と同じ強磁性材料で当該磁性体10と一体のものとして形成すればよい。また、例えば、第1固定部21は、磁性体10との間でインサート成形や2色成形等の一体成形技術の適用が可能であれば、その一体成形技術を用いて合成樹脂等の絶縁性材料で形成すればよい。
【0029】
このノイズ低減具1においては、磁性体10を電線We又は電線束Webに巻き付けて、この磁性体10の重畳部11a(一端部)における第1固定部21に磁性体10の他端部側を重ね合わせる。ここでは、磁性体10の他端部側にて、第1固定部21に重ね合わされている部分が重畳部11bとなる。この固定部材20においては、その重畳部11bを重畳部11aの第1固定部21と第2固定部22とで挟み込み、第1突起部20aと第2溝部20dの組み合わせ毎に、第1突起部20aを第2溝部20dとの間で重畳部11bに噛み込ませ、かつ、第2突起部20cと第1溝部20bの組み合わせ毎に、第2突起部20cを第1溝部20bとの間で重畳部11bに噛み込ませることによって、その重畳部11a,11b同士を固定する(
図5)。
【0030】
この固定部材20においては、その重畳部11bに対する噛み込み状態を保つべく、第1固定部21と第2固定部22との間に、その相互間を固定するロック機構を少なくとも2つ設けている(図示略)。このロック機構は、第1固定部21に設けた例えば爪状の第1係合部と、第2固定部22に設け、爪状の第1係合部が引っ掛かって、第1固定部21と第2固定部22を重畳部11bに対する噛み込み状態のまま固定する第2係合部と、を備える。尚、第1固定部21と第2固定部22が先のリビングヒンジ等で一体化されている場合には、そのロック機構を少なくとも1つ設ければよい。
【0031】
また、固定部材20は、磁性体10とは別の部品として成形されたものであってもよい(
図6)。この場合、固定部材20は、第1固定部21と第2固定部22で積層部分11の重畳部11a,11bを挟み込んで固定する。この固定部材20においては、第1突起部20aと第2溝部20dの組み合わせ毎に、第1突起部20aを第2溝部20dとの間で重畳部11a,11bに噛み込ませ、かつ、第2突起部20cと第1溝部20bの組み合わせ毎に、第2突起部20cを第1溝部20bとの間で重畳部11a,11bに噛み込ませることによって、その重畳部11a,11b同士を固定する。この固定部材20においても、第1固定部21と第2固定部22との間には、その重畳部11a,11bに対する噛み込み状態を保つべく、その相互間を固定するロック機構を設ける。
【0032】
以上示したように、本実施形態のノイズ低減具1は、その主要構成が磁性体10と固定部材20だけで、かつ、磁性体10を電線We又は電線束Webに巻き付けて固定部材20で固定するだけの簡素な構造を採っている。このため、このノイズ低減具1は、生産性に優れたものとなり、原価の低減を図ることができる。また、このノイズ低減具1は、様々な電線径や長さの電線Weと様々な電線束径や長さの電線束Webに適応できるので、多様な電線Weや電線束Webの間での共用化が可能になる。このため、このノイズ低減具1は、この点でも原価の低減を図ることができる。また、このノイズ低減具1は、複数本の電線Weを電線束Webとして束ねる機能も兼ねているので、例えば、複数本の電線Weを束ねるための結束バンドや粘着テープを不要にできたり、その結束バンドや粘着テープの数量や使用量を減らしたりすることができる。このため、このノイズ低減具1は、この点でも原価の低減を図ることができる。更に、このノイズ低減具1は、接着剤を用いていないので、耐熱性が高く且つ経年変化にも強く、高い耐久性を確保することができる。このように、本実施形態のノイズ低減具1は、高い耐久性を確保しつつ原価を低く抑えることができる。従って、このノイズ低減具1は、先の電気自動車や充電システム(普通充電用であるのか急速充電用であるのかに拘わらず)に適用することによって、この電気自動車や充電システムにおいても高い耐久性の確保と原価低減を可能にするので、電気自動車や充電システムの普及に寄与するものとなる。そして、本実施形態のワイヤハーネスWHは、このノイズ低減具1を具備するものであり、このノイズ低減具1によって得られるものと同様の効果を奏することができる。
【0033】
更に、充電システムは、普通充電用として構成されたものよりも急速充電用として構成されたものの方でノイズの発生する可能性が高くなる。従って、本実施形態のノイズ低減具1及びワイヤハーネスWHは、特に急速充電用の充電システムや当該充電システムを用いた急速充電が可能な電気自動車において有用なものとなる。
【符号の説明】
【0034】
1 ノイズ低減具
10 磁性体
11 積層部分
11a,11b 重畳部
20 固定部材
20a 第1突起部
20c 第2突起部
We 電線
Web 電線束
WH ワイヤハーネス