(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】パターニングされたエミッタを有する多接合太陽電池及び該太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/078 20120101AFI20240611BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20240611BHJP
H01L 31/0735 20120101ALI20240611BHJP
H10K 30/57 20230101ALI20240611BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240611BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L31/06 600
H01L31/06 300
H01L31/06 430
H10K30/57
H10K30/40
H10K85/50
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022160400
(22)【出願日】2022-10-04
(62)【分割の表示】P 2017234758の分割
【原出願日】2017-12-07
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フェッツァー, クリストファー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヘバート, ピーター
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-171374(JP,A)
【文献】特開平05-021821(JP,A)
【文献】特開平03-285368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0053259(US,A1)
【文献】特開2012-151471(JP,A)
【文献】特表2014-527725(JP,A)
【文献】特表2012-524397(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多接合太陽電池(100)であって、
IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含んでいるベース基板(102);
前記ベース基板の第1の表面に形成されたパターニングされたエミッタ(104)であって、前記パターニングされたエミッタ(104)が、
前記ベース基板(102)の第1の主面の表面の一部のみの上に選択的に形成され、かつ、前記IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域(106)を備え、前記ベース基板(102)が、第1のソーラーサブセルを形成する前記パターニングされたエミッタ(104)を含んでいる、パターニングされたエミッタ;
前記第1のソーラーサブセルの上に1又は複数の追加のソーラーサブセルを備えている上部構造体(120);及び
前記第1の表面上にエピタキシャル成長された核形成層(140)であっ
て、前記核形成層(140)が0.1mΩ・cmから10,000mΩ・cmの範囲の抵抗率となるように所定の濃度のドーパントでドープされた核形成層(140)
を備え、
前記ベース基板(102)が単結晶ゲルマニウムを含み、前記1又は複数の追加のソーラーサブセルがそれぞれ、III-Vヘテロエピタキシャル層に形成されたpn接合を含む、
多接合太陽電池。
【請求項2】
前記第1のキャリアタイプの前記ドーパントがp型ドーパントであり、前記第2のキャリアタイプの前記ドーパントがn型ドーパントである、請求項1に記載の多接合太陽電池。
【請求項3】
前記第1のキャリアタイプの前記ドーパントがn型ドーパントであり、前記第2のキャリアタイプの前記ドーパントがp型ドーパントである、請求項1または2に記載の多接合太陽電池。
【請求項4】
前記パターニングされたエミッタ(104)の前記ウェル領域(106)がアレイで配置されている、請求項1から3いずれか一項に記載の多接合太陽電池。
【請求項5】
前記多接合太陽電池(100)を回路(130)に接続するように配置された複数の接点(128)、(126)をさらに備えている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の多接合太陽電池。
【請求項6】
多接合太陽電池(100)を製造する方法であって、
IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含むベース基板(102)を提供することであって、前記ベース基板が第1の主面と前記第1の主面の反対側の第2の主面とを有する、提供すること;
前記ベース基板
(102)の前記第1の主面
の表面の一部のみの上に、パターニングされたエミッタ(104)を
選択的に形成することであって、前記パターニングされたエミッタ
(104)が、前記IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域(106)を備え、前記ベース基板
(102)が第1のソーラーサブセルを形成する前記パターニングされたエミッタを含んでいる、形成すること;及び
前記第1のソーラーサブセルの上に1又は複数の追加のソーラーサブセルを備えている上部構造体(120)を形成すること
を含み、前記ベース基板(102)が単結晶ゲルマニウムを含み、前記1又は複数の追加のソーラーサブセルのそれぞれが、III/Vヘテロエピタキシャル層に形成されたpn接合を含み、
前記方法はさらに
、核形成層(140)を前記第1の主面上にエピタキシャル成長させることと
、前記核形成層(140)が0.1mΩ・cmから10,000mΩ・cmの範囲の抵抗率となるように所定の濃度のドーパントで
前記核形成層(140)をドーピングすることと、を含む、方法。
【請求項7】
前記パターニングされたエミッタ(104)と前記1又は複数の追加のソーラーサブセル(122)、(124)との間のIII/Vヘテロエピタキシャル層に形成されたトンネル接合部(136)、(138)をさらに備えている、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記パターニングされたエミッタ(104)と前記1又は複数の追加のソーラーサブセル(122)、(124)との間の電流拡散層をさらに含んでいる、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
詳細な説明
本開示の技術分野
本開示は、パターニングされたエミッタを使用する多接合太陽電池及び該太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池効率改善は、太陽電池製造業者の継続的な目標である。単一の太陽電池に複数の太陽電池接合部を設けることは、効率を高めるための既知の方法である。そのような多接合太陽電池は、ゲルマニウム基板に形成された下部サブセルを含み得る。下部サブセル上に1又は複数の追加接合部が形成される。
図1は、拡散エミッタ領域18を伴うp型ゲルマニウム基板12を有する、そのような従来の多接合太陽電池10の一例を示す。GaInAs中間サブセル14及びGaInP上部サブセル16は、基板12上のモノリシック半導体スタックの一部として形成される。中間サブセル14及び上部サブセル16は、エミッタ領域18によって提供される第1の接合の他に、第2及び第3の接合部(図示せず)を含む。n型核形成層20、n型GaInAsバッファ層22、トンネル接合部24、26、及びキャップ層28も、基板12上に形成される上部構造体中に配置される。最下サブセル内のn型エミッタ18は、核形成層及び/又はバッファ層のIII/V成長中に基板12への拡散により形成され、基板表面全体にわたって均一な厚さのパターニングされていないn型層を形成する。エミッタを形成するために使用されるブランケット拡散プロセスは下部サブセルを作製するための便利な方法を提供する一方で、このようなエミッタ構造は、光生成キャリアの損失に非理想的な経路を提供し、太陽電池の効率を低下させる。
【0003】
当該技術分野において、改善された効率を有する多接合太陽電池に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、多接合太陽電池に関する。多接合太陽電池は、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含んでいるベース基板を備える。パターニングされたエミッタが、ベース基板の第1の表面に形成される。パターニングされたエミッタは、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備える。パターニングされたエミッタを含んでいるベース基板は、第1のソーラーサブセルを形成する。多接合太陽電池は、第1のソーラーサブセルの上に1又は複数の追加のソーラーサブセルを備える上部構造体をさらに備えている。
【0005】
本開示は、多接合太陽電池を製造する方法に関する。本方法は、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含むベース基板を提供することを含み、このベース基板は、第1の主面と第1の主面の反対側の第2の主面とを有する。パターニングされたエミッタは、ベース基板の第1の主面に形成される。パターニングされたエミッタは、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備える。パターニングされたエミッタを含んでいるベース基板は、第1のソーラーサブセルを形成する。本方法は、第1のソーラーサブセルの上に1又は複数の追加のソーラーサブセルを備えている上部構造体をさらに備える。
【0006】
本開示はまた、太陽電池基板を製造する方法にも関する。本方法は、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含むベース基板を提供することを含み、このベース基板は、第1の主面と第1の主面の反対側の第2の主面とを有する。パターニングされたエミッタは、ベース基板の第1の主面に形成され、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備えている。パターニングされたエミッタを含んでいるベース基板は、ソーラーサブセルを形成する。本方法は、エピタキシャル層を受容するようにベース基板の第1の主面を準備することを含む。
【0007】
本開示はまた、太陽電池基板にも関する。太陽電池基板は、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含んでいるベース基板を備える。ベース基板は、第1の主面と第1の主面の反対側の第2の主面とを有し、第1の主面はエピタキシャル可能(epitaxially ready)状態である。パターニングされたエミッタは、ベース基板の第1の主面に形成される。パターニングされたエミッタは、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備える。ベース基板は、第1のソーラーサブセルを形成するパターニングされたエミッタを備える。
【0008】
先述の一般的な記載及び後述の詳細な説明は、例示及び説明に過ぎず、クレームされている本教示を制限するものでないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に組み込まれ、かつ、この明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の態様を例示しており、説明部分と共に、本教示の原理を説明する役割を果たしている。
【
図2】本開示の例示的な多接合太陽電池の概略断面を示す。
【
図3】複数のウェル領域を含む本開示のパターニングされたエミッタの概略上面図を示す。
【
図4】本開示の例示的な装置におけるパターニングされたエミッタウェル領域間の横方向の電流捕集及び拡散電流を示す。
【
図5】本開示の多接合太陽電池において使用することができる例示的な有機サブセルの概略断面図を示す。
【
図6】本開示の多接合太陽電池において使用することができる例示的な有機サブセルの概略断面図を示す。
【
図7】多接合太陽電池作製のためのベース基板を準備する方法の一例をフロー図に示す。
【
図8】本開示の一例による、III/V多接合太陽電池下で理想的と考えられる少ないエミッタ接点を有するゲルマニウムサブセルの推定電圧のグラフである。
【
図9】複数のパターニングされたエミッタを備える本開示の多接合太陽電池を示す。
【0010】
図面の幾つかの細部は、厳密な構造的な精度、細部、及び縮尺を維持するよりむしろ、理解を促すために簡略化されて図示されていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本教示について詳しく言及していくが、本教示の実施例は、添付図面に示されている。図面において、同一の要素を示すために、類似の参照番号が全体を通して使用されている。以下の説明では、説明の一部を成す添付図面を参照するが、図面には本教示を実施する特定の実施例が図解されている。したがって、以下の説明は単なる例示にすぎない。
【0012】
図2は、本開示の例示的な多接合太陽電池100を示す。多接合太陽電池100は、IV族半導体と第1のキャリアタイプのバクグラウンドドーパントとを含むベース基板を備える。パターニングされたエミッタ104が、ベース基板102の第1の表面に形成される。「パターニングされたエミッタ」という用語は、拡散したドープ領域をベース基板102の全表面に形成するのとは対照的に、エミッタのドープウェル領域106をベース基板102の第1の主面の表面の一部のみに選択的に形成することを意味する。以下により詳細に説明するように、ベース基板102の第1の主面上のエミッタ領域が覆う全表面積を実質的に減少させる任意のパターンを用いることができる。任意選択の不動態化層132が、ベース基板102の第1の表面に形成される。上部構造体120は、パターニングされたエミッタ104が形成されるベース基板102の表面上にサブセル122、124の1又は複数を備える。複数の接点126、128は、多接合太陽電池を回路130に接続するように配置される。例として、このような回路は、太陽光発電装置に電力を供給するため、及び/又はバッテリを充電するためのものであってもよい。任意の所望の回路設計を採用することができ、本開示の太陽電池に関連して使用することができる適切な回路の例は、当該技術分野において周知である。
【0013】
ベース基板102は、任意の適切なIV族半導体材料を含むことができる。IV族半導体の例は、ゲルマニウム及びシリコンから選択される材料を含む。ベース基板102は、以下で詳細に説明するように、多接合太陽電池の第1のサブセル(本明細書では「第1のソーラーサブセル」と称することもある)を提供するためにドープされている。
【0014】
図2は、ベース基板102のバックグラウンドドープ領域110に隣接して形成されたパターニングされたエミッタ104の単一のドープウェル領域106の部分断面図を示す。バックグラウンドドープ領域110は、第1のキャリアタイプのバックグラウンドドーパントでドープされている。パターニングされたエミッタ104は、
図3の概略上面図に示すように、複数のこのようなドープウェル領域106を備えることができる。各ドープウェル領域106は、第1のキャリアタイプを有するバックグラウンドドーパントとは異なる第2のキャリアタイプのドーパントでドープされている。第1のキャリアタイプのバックグラウンドドーパント及び第2のキャリアタイプのドーパントは、パターニングされたエミッタ104が、バックグラウンドドープ領域110を伴う第1のpn接合部(本明細書では太陽電池接合部ともいう)108を形成するように選択される。例えば、第1のキャリアタイプのバックグラウンドドーパントは、p型ドーパントであってもよく、その場合パターニングされたエミッタ104において使用される第2のキャリアタイプのドーパントは、n型ドーパントである。あるいは、前記第1のキャリアタイプのバックグラウンドドーパントがn型ドーパントであってもよく、その場合第2のキャリアタイプのドーパントは、p型ドーパントである。少数キャリア捕集は、
図4のベース基板102内の矢印で示したように、pn接合部を介して起こる。
【0015】
再び
図3を参照すると、パターニングされたエミッタ104のドープウェル領域106は、ドットのアレイ状に配置されているものとして示されている。本開示のウェル領域は、太陽電池の動作中に所望のキャリアの補集を可能にする任意の適切なアレイ状に又はランダムパターン状に配置することができる。さらに、ドープウェル領域106は、
図3の俯瞰図から分かるように、円形の上面を有するものとして示されているが、正方形、長方形、市松模様、線、交差した線(例えば格子を形成するための)等、任意の適切な上面形状を採ることができる。ドープウェル領域106は、逆ドープされているバックグラウンドドープ領域110及び/又は不動態化層132によって分離されているものとして示されているが、連続していてもよい。したがって、ベース基板102の第1の主面上のエミッタ領域が覆う全表面積を実質的に減少させる任意のパターンを用いることができる。例えば、エミッタ領域は、第1の主面の全表面積の約1%から約50%、例えば約5%から約40%、又は約10%から約30%を覆うことができ、第1の主面は、エミッタが形成されるベース基板の主平面(major planar face)である。
【0016】
隣接するドープウェル領域106間の距離は、発生したキャリアがエミッタに達することができるように、ベース基板102内の少数キャリアの拡散距離よりも短くなるように選択することができる。
図3を参照すると、隣接する2つのウェル領域間の最短距離であるピッチは、例えば約0.1ミクロンから約1mm、又は約1ミクロンから約100ミクロンの範囲であり得る。
図3に示すような円形のドーピングウェル領域の場合、直径Dは、ベース基板の所望の全表面積を覆うパターニングされたエミッタと、上述の隣接するウェル領域間の所望の距離を有するように配置されているドープウェル領域106の双方をもたらすような任意の適切な長さを有することができる。
【0017】
ドープウェル領域106は、不動態化層132よりも厚く、不動態化層132を優に通過してベース基板102のバックグラウンドドープ領域内に延び、それによりドープウェル領域106が、
図2のようにエミッタとして機能することが可能になる。その上、ドープウェル領域106内のドーパントの濃度もまた、不動態化層132内のドーパントの濃度よりも高い。ここで、ウェル領域内のドーパントの濃度は不動態化層中のドーパントの濃度のよりも高いため、不動態化層中の濃度は、どの濃度が相対的に「高い」とみなされるかを決定するために必要な任意の基準濃度を提供する。
【0018】
図2及び
図3に示すようなパターニングされたエミッタを用いると、連続層エミッタと比較してエミッタの体積を減少させることができ、ひいては太陽電池の動作中に発生するキャリアのShockley-Read-Hall再結合損失を低減することができる。すべてが等しければ、キャリアの再結合損失の減少が、太陽電池の効率向上をもたらす。したがって、エミッタの寸法は、エミッタ面積及び体積を縮小し、それによって再結合損失を低減するように選択することができる。
【0019】
再び
図2を参照すると、不動態化層132は、パターニングされたエミッタ104のドープウェル領域106の間に位置し、かつ、ベース基板102のバックグラウンドドーパントと同じキャリアタイプのドーパントを含む、ベース基板102内の拡散領域にある。任意の適切なn型又はp型ドーパントなど、所望のキャリアタイプを提供する任意の適切なドーパントを使用することができる。任意選択的に、ベース基板102上に形成される層がIII-V材料である場合、ドーパントは、III-V材料自体のIII族又はV族元素の1つとすることができる。例えば、III-V基板上にGaInAsをエピタキシャル成長させる場合、不動態化層132を形成するのに使用される所望のキャリアタイプに応じて、Ga、In又はAsのいずれかをベース基板102に拡散させてもよい。
【0020】
不動態化層132中のドーパント濃度は、バックグラウンドドープ領域110との接合部で表面電界(「FSF」)を生成するように、ベース基板102内のバックグラウンドドーパントの濃度よりも高くすることができる(例えば、バックグラウンドドーパントがp型であればp+/p接合、又はバックグラウンドドーパントがn型であればn+/n接合)。不動態化層132は、任意選択である。不動態化層132は、使用すれば、ベース基板表面に表面電界を生成することで、界面再結合によって生じる少数キャリア損失を防止又は低減することができる。
【0021】
pn接合部108は、多接合太陽電池100の第1のサブセルのセル接合を形成する。少なくとも1つの追加のソーラーサブセルが、上部構造体120の一部としてベース基板102の上に形成される。例えば、上部構造体120は、中間サブセル122及び上部サブセル124を含めることができる。任意の所望の数のサブセル、例えば1から10個のサブセル、又は2から6個のサブセルを上部構造体120中に形成することができる。任意の適切な設計、材料及び技術を用いて、上部構造体120の追加のサブセル構造体を形成することができる。例として、サブセル122、124の1又は複数はそれぞれ、半導体材料内に形成される少なくとも1つのpn接合部を備えることができる。適切な半導体材料は、例えば単結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのIV族半導体、又はIII/V若しくはI/IVヘテロエピタキシャル層などの化合物半導体材料を含み得る。任意の適切なIII/Vヘテロエピタキシャル材料(例えばGaAs、GaInAsなど)又は他の材料を使用してもよい。任意の適切なII/IVヘテロエピタキシャル材料(例えばCdTe、CuInGaSe2)又は他のII/IV材料を使用してもよい。このような層を堆積させるための技術は、当該技術分野において周知であり、任意の適切な技術を用いることができる。例えば、これらの層は、本明細書に記載のいずれのIV族ベース基板(例えばSi又はGe)上にもエピタキシャル成長させることができる。当該技術分野において周知のように、適切なドーパントをこれらの層に添加し、所望の導電率又は他のサブセル接合特性をもたらすことができる。
【0022】
トンネル接合層136、138、核形成層140、バッファ層144、及びキャップ層148を含む、1又は複数の追加の任意選択の層を多接合太陽電池100の一部として使用することもできる。例えば、トンネル接合部136、138は、
図2に示すように、ベース基板102内のパターニングされたエミッタとモノリシックエピタキシャル成長構造体中の1又は複数のサブセルとの間のIII/Vヘテロエピタキシャル層に形成することができる。このようなトンネル接合部は周知であり、電子が多接合太陽電池のサブセル間をトンネルできるように構成された比較的高濃度にドープされたpn接合部を含む。トンネル接合部136、138を形成するための適切な方法は、当該技術分野において周知である。
【0023】
トンネル接合層136及び138、核形成層140並びにバッファ層144は、所望の電気的性質を提供する異なる層内において、種々のドーパント及び/又はドーパント濃度とともに任意の適切な半導体材料を含むことができ、それはサブセル122、124に使用するものと同じであっても異なっていてもよい。適切な半導体材料は、例えば単結晶シリコン又はゲルマニウムなどのIV族半導体、又はIII/V若しくはI/IVヘテロエピタキシャル層などの化合物半導体材料を含み得る。例えばGaAs、GaInAsなどの任意の適切なIII/Vヘテロエピタキシャル材料、又は他のIII/V材料を使用してもよい。任意の適切なII/IVヘテロエピタキシャル材料(例えばCdTe、CuInGaSe2)又は他のII/IV材料を使用してもよい。このような層を堆積させるための技術は、当該技術分野において周知であり、任意の適切な技術を用いることができる。例えば、これらの層は、本明細書に記載のいずれのIV族ベース基板(例えばSi又はGe)上にもエピタキシャル成長させることができる。当該技術分野において周知のように、適切なドーパントをこれらの層に添加し、所望の電気的性質をもたらすことができる。
【0024】
核形成層140は、バッファ層144などの後続のエピタキシャル層を成長させるのに適した表面を提供するために、ベース基板102上にエピタキシャル成長させることができる。核形成層は、パターニングされたエミッタ104と同じ多数キャリアタイプを有することができる。任意の適切な核形成層を使用することができるが、核形成層の一例は、リン化ガリウムインジウムである。他の適切な核形成層は、当該技術分野で周知である。
【0025】
核形成層は、その上のバルクヘテロエピタキシャル層の成長を可能にする任意の所望の厚さを有することができる。適切な核形成層の厚さの例は、約10オングストロームから約500オングストローム、例えば約50オングストロームから約200オングストローム、又は約70オングストロームから約100オングストロームの範囲であり得る。
【0026】
図2に示したように、バッファ層144は、核形成層140と中間サブセル122との間に配置され得る。バッファ層144は、核形成層140の上でエピタキシャル成長させることができ、かつ、パターニングされたエミッタ104と同じ多数キャリアタイプを有することができる。バッファ層144は、本明細書中で教示されている任意のIV族半導体又は化合物半導体材料を含むことができる。一例として、核形成層140及びバッファ層144の双方は、GaAs、GaInAsなどのIII/V族材料、又は所望の導電率を提供するために本明細書に記載のようにドープされた他のIII/V族材料を含む。バッファ層144をエピタキシャル成長させるための技術は、当該技術分野で周知である。任意の適切なエピタキシャル成長技術を用いることができる。
【0027】
核形成層140及びバッファ層144の成長条件は、これらの層の成長の間中、Ga、In又はAsなどの所望のドーパントのベース基板102への拡散を制御するように選択することができる。特に、III/V材料の成長を利用してバッファ層144を形成する場合、核形成層は、III族又はV族元素のうちの1つの元素を通して拡散させると同時に、もう一方の元素に対して選択的バリアを形成するように選択することができる。したがって、核形成層140は、p型ドーパントとして機能し得るIII族元素を核形成層140を通してベース基板102に拡散させて不動態化層132を形成すると同時に、V族元素の拡散はブロックすることができる。あるいは、核形成層140は、n型ドーパントとして機能し得るV族元素を核形成層140を通してベース基板102に拡散させて不動態化層132を形成すると同時に、III族元素に対するバリアを形成することができる。核形成層及びバッファ層成長条件は、ベース基板へのドーパント拡散の量が、ドープウェル領域106にカウンタドープしてドープウェル領域106の多数キャリアタイプを変化させる程多くならないように選択される(たとえばドープウェル領域106がn型の場合、p型III族ドーパント拡散は、n型エミッタがp型領域に戻らないように十分少なく、逆もまた同様である)。III族及び/又はV族元素の拡散の所望の制御をするのに適した核形成材料を選択することは、当業者の範囲内である。
【0028】
本開示のパターニングされたエミッタ構造を有する太陽電池の限界は、
図4で矢印で示したように、パターニングされたエミッタウェル領域間の横方向の電流捕集の減少及び拡散電流の増加の可能性である。この潜在的な問題を改善するために、核形成層140及び/又はバッファ層144を十分に高いドーパント濃度でドープし、所望のレベルの横方向の導電率を提供することができる。横方向からの導電率の所望のレベルは、パターニングされたエミッタ間の間隔、エミッタの特定のデザイン、及び太陽電池の用途(例えば宇宙太陽電池vs集光型太陽電池)などの複数の要因に応じて決まる。パターニングされたエミッタ上の層における導電率の増加(又は抵抗率の低下)は、エミッタから上部構造体120へ流れる横方向の電流に対する抵抗の低下につながり、これはひいては太陽電池の直列抵抗損失を減少させ、効率を高めることができる。一例として、核形成層140及び/又はバッファ層144は、パターニングされたエミッタが電池の全体の直列抵抗損失に大きく寄与しない程度に横方向の導電率が十分に高くなるように、十分な濃度のドーパントでドープされ得る。核形成層及び/又はバッファ層の抵抗率は、例えば、約0.5mΩ・cmから約500mΩ・cmのように、約0.1mΩ・cmから約10,000mΩ・cmの範囲であり得る。
【0029】
一番上のサブセル上に、キャップ層148を形成することができる。このキャップ層148は、金属と半導体との間の遷移の機能を果たす。キャップ層148は、低抵抗であり、金属と半導体との間のオーミック接触(非整流性)を提供することができる。これにより、寄生抵抗による損失、又は太陽電池のダイオードと逆方向の意図しないダイオードの挙動(これは装置の効率を低下させることがある)が低減される。キャップ層148はまた、金属層が介在していることにより接点(外付けケーブル)を半導体に機械的に取り付けるための場所を提供し得る。太陽電池における使用のためのこのようなキャップ層は、一般に当該技術分野において周知である。
【0030】
図2を参照し、任意の適切な技術を用いて、後部電気接点126及び前部電気接点128を堆積させることができる。さらに、正及び負の他の構成を採用することもできる。例えば、
図2の前部及び後部接点の代わりに、正及び負の接点の双方とも、潜在的に装置の正面に形成することができ、又は装置内の1又は複数の層に電気接点を抵抗するためにコンタクトビアをエッチングすることなどによって装置の背面に形成することができる。このような太陽電池接点を形成するための適切な技術を決定することは、当業者の範囲内である。
【0031】
後部電気接点126に加えて、又はその代わりに、反射層をベース基板102に近接して形成することができる。反射層127は例えば、ベース基板102と裏面電極126との間に堆積させることができる。場合によっては、後部接点126は、反射層の一部を含むことができる。適切な反射層及び太陽電池用のこのような構造体を作製するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Si装置では、シリコンと装置の後部接点との間に薄いAl2O3層を堆積させることが知られている。これは、太陽電池から放射されている光に対する背面の反射鏡として働く。
【0032】
上部構造体120のバッファ層、トンネル接合部、サブセル、及び任意選択で核形成層は、モノリシック構造体であってもよく、これは、層がすべて一組の電気接点を共有するサブセルの単一のスタックの一部として形成されることを意味する。あるいは、多接合太陽電池スタックの各サブセルは、当該技術分野で一般的に周知のように、タンデム構造を形成するために、それ自体の接点の組を有することが可能である。一例では、タンデム太陽電池構造は、上部構造体120の一部としてのトンネル接合部を用いない。
【0033】
上部構造体120は、1又は複数の有機サブセルを含んでもよい。例えば、1又は複数のサブセルはそれぞれ、ペロブスカイト材料を含む。有機サブセル一例が
図5に示されているが、そこでは、導電層150がベース基板102と有機サブセルとの間に配置されている。パターニングされたエミッタ104と不動態化層132とを含むベース基板102は、
図2を参照して上述したとおりである。一例では、ベース基板102として使用されるIV族半導体材料は、nドープ又はpドープシリコンなどの単結晶シリコンであるが、単結晶ゲルマニウム基板も用いることができる。導電層150は、ドープされているか又は本質的に導電性の材料を含む、任意の適切な導電性材料を含み得る。導電層150の材料は、ベース基板102の多数キャリアタイプと反対の多数キャリアタイプを有し得る(例えば、ベース基板102においてバックグラウンドドーパントがn型の場合、導電層150は、p型材料を含み、その逆も同様である)。導電層150に適した導電性材料を選択することは、当業者の範囲内である。
【0034】
有機正孔輸送媒体(「HTM」)152は、導電層150の上に配置される。有機正孔輸送媒体の一例は、Spiro-OmeTADであり、その他任意の適切な有機HTMを用いることができる。半導電性ペロブスカイト層154は、正孔輸送媒体152の上に配置される。その他任意の適切なA半導電性ペロブスカイト材料、例えば、ヨウ化鉛メチルアミン(「MAPbI3」)などのハロゲン化有機金属ペロブスカイト材料を用いることができる。エミッタとして機能する第2の導電層156は、半導電性ペロブスカイト層154の上に配置される。一般に、導電層146は、n型又はp型材料のいずれかを含む、任意の適切な導電性材料を含み得る。例えば、第2の導電層156は、酸化インジウムスズ(「ITO」)、酸化アルミニウムスズ(「ATO」)、アルミニウムを添加したITO)又はそれらの組み合わせなどのn型導電性金属酸化物材料を含み得る。第2の導電層156は、ベース基板102のバックグラウンドドーパントと同じ多数キャリアタイプを有する(例えばバックグラウンドドーパントがn型の場合はn型、又はバックグラウンドドーパントがp型の場合はp型)。第2の導電層156は、ITO又はATOなどの導電性金属酸化物を含む場合のように、任意選択的に可視光に対して透明であってもよい。前部接点128は、第2の導電層156の上に配置することができる。
【0035】
図6の多接合太陽電池100と
図5の太陽電池は、
図6の太陽電池がベース基板102と上部構造体120の1又は複数のサブセルとの間に配置されている第2の不動態化層160を含むことを除けば、同様である。一般的に、第2の不動態化層160は、非エピタキシャル上部接合の場合に使用され得る。例えば、第2の不動態化層160は、第1の不動態化層132及びパターニングされたエミッタ104の上に直接配置することができる。あるいは、不動態化層132の代わりに第2の不動態化層160を用いることができる。第2の不動態化層160は、不動態化層132の機能と同様に、ベース基板102のバックグラウンドドープ領域内のキャリアの再結合を低減又は防止するのに役立ち得る。第2の不動態化層160は、多接合太陽電池100に適合している任意の適切な電気絶縁材料を含むことができる。例えば、第2の不動態化層160は、酸化アルミニウム(Al
20
3)、サファイア、微結晶シリコン又はアモルファスシリコン等の酸化物から選択される絶縁材料を含むことができる。導電ビア162は、第2の不動態化層160を貫通して延び、パターニングされたエミッタ104の複数のドープウェル領域106のそれぞれを1又は複数のサブセルと電気的に接続する。
【0036】
パターニングされたエミッタ104はベース基板102の下部サブセル内に形成されていると本明細書に記載したが、この考え方は一般的であり、スタック内の任意のサブセルに適用することができる。例えば、パターニングされたエミッタ104は、
図9に示したように、サブセル122及び124のエピタキシャル成長層中に形成することができる。エミッタを形成するために、エミッタが位置決めされて、その後エミッタがパターニングされ得るような、スタック内の所望の位置でエピタキシャル法を止めることができる。エミッタが形成された後、エピタキシャル成長を続けて、多段エピタキシャル成長法で上部サブセルを形成する。この方法は、エミッタが形成されるたびに繰り返される。
【0037】
本開示の
図2から
図6及び
図9は、本開示の多接合太陽電池の基板、ドープ領域、及び層を含む様々な装置要素を示す。任意の基板、ドープ領域及び/又は層を含む装置要素の各々は、図中で隣接して示されている他の任意の装置要素と直接接触していてよい。あるいは、互いに隣接して描かれている任意の2以上の装置要素は、直接接触していなくてもよいが、それらの間に介在する、図示されていない装置要素を有してもよい。装置要素間の関係を記述するために本明細書で使用される「上に(on)」及び「上に(over)」という用語は、介在する装置要素を含むように広く定義され、したがって直接の物理的接触又は任意の特定の空間的関係を必要としない(例えば基板の「上」に配置されている層は、基板の上、下又は側面に配置することができ、1又は複数の介在層が層と基板との間に存在してもよい)。「直接的に」又は「直接接触している」という語句は、直接の物理的接触があることを意味すると定義される。
【0038】
図7のフロー図で説明されているように、本開示は、多接合太陽電池製造のためのベース基板102を準備する方法にも関する。本方法は、IV族半導体と第1のキャリアタイプのバックグラウンドドーパントとを含む初期単結晶基板を提供することを含む。この基板は、第1の主面と第1の主面の反対側の第2の主面とを含む。このようなIV族半導体基板は、よく知られており、例えばウェハ形態で容易に入手可能である。基材の洗浄、自然酸化物の除去などを含む任意の所望の方法による処理のために、該基板の表面が任意選択的に準備されてもよい。
【0039】
その後、基板の第1の表面でパターニングされたエミッタ104が形成される。任意の適切な技術を用い、パターニングされたエミッタ104のドープウェル領域106を形成することができる。例えば、ドープウェル領域106を形成するために、ドーパント材料をマスキング及び堆積させることによって、ドーパント材料の印刷によって、又はイオン注入技術によって、ドーパントをベース基板102に導入することができる。ベース基板へのドーパントの導入中か導入後のいずれかに、1又は複数のアニーリング処理を行って、ドーパントの所望の拡散を提供することができる。ドーピング技術の一例として、ベース基板102は、例えば保護酸化物、窒化物又はフォトレジストなどのマスク層でパターニングすることができる。その後、上にマスク層が形成されていない基板の領域にドーパントを堆積及び拡散させることなどによって、ベース基板102のIV族半導体材料に第2のキャリアタイプのドーパントを導入することで、複数のドープウェル領域106が形成される。別の例では、ドーパントペースト(例えばリンをドープしたペースト)をベース基板上に所望のウェル領域パターンでスクリーン印刷した後、アニールしてペーストから基板にドーパントを拡散させる。ドープウェル領域を形成するために、ドーパント及び/又はレーザ誘起拡散技術を含む他の適切な技術、例えばナノ粒子含有インクのインクジェット印刷を用いることができる。このような技術は一般に、当該技術分野において周知である。
【0040】
その後場合によって、追加の太陽電池構造体の形成のために、基材の第1の主面を準備する。例えば、ベース基板上に堆積された単結晶III-V半導体スタック内に追加のサブセルが形成される場合、ベース基板は、化学的機械研磨などの任意の適切な技術を用いてエピタキシャル可能状態まで研磨され得る。あるいは、パターニングされたエミッタ104の形成前に研磨を行ってもよい。その後、研磨した基板を化学的に処理して基板を洗浄し、パターニングされたエミッタを含む表面から天然酸化物を除去することができる。その後、準備したベース基板は、任意選択的に不活性雰囲気中に保存して、その上の天然酸化物の成長を抑えることにより、エピタキシャル可能状態で維持することができる。
【0041】
多接合太陽電池の製造を完了するためにベース基板の処理を続けて、ベース基板上に1又は複数の追加の太陽電池装置構造体を形成してもよい。あるいは、ベース基板を第三者の太陽電池製造業者に提供して、多接合太陽電池の製造を完了せることもできる。
【0042】
不動態化層132の形成は、上部構造体120の堆積前、堆積中又は堆積後に行うことができる。不動態化層132は、ベース基板102のIV族半導体材料中のドープ領域にある。このようなドープ領域を形成するための任意の適切な方法を使用してよい。一例として、p型又はn型ドーパントを核形成層140及び/又はバッファ層144からベース基板102内へ拡散させて、不動態化層132を形成することができる。上述のとおり、ドーパントは、ベース基板102のバックグラウンドドーパンとして使用されているものと同じドーパントタイプ(例えばp型又はn型)である。
【0043】
図8は、III/V多接合太陽電池下で理想的と考えられる少ないエミッタ接点を有するゲルマニウムサブセルの推定電圧のグラフである。この推定は、
図3に示したのと同じエミッタパターンに基づいており、
図3でエミッタは、0.7ミクロンの深さで、50ミクロンの直径(D)を有する円形ドットである。ピッチ(隣接するドットの中心間の距離)は、直径の約2倍から直径の約10倍まで変化する。
図8からわかるように、ピッチが増えると(エミッタの体積の減少を示す)、サブセル電圧(Voc)が増加する。エミッタ体積が減少すると、エミッタ内全体でShockley-Read-Hall再結合が減少し、それによってサブセルの電圧が上昇すると考えられる。電圧の増加は、拡散領域間の界面再結合速度(「So」)が低いことを前提とする(例えばSoは0cm/秒にほぼ等しい)。このアプローチの実用的効果は、太陽光を電力に変換する効率を高めることであり、それによって太陽電池がより経済的になる。
【0044】
さらに、本開示は、以下の条項による実施例を含む。
条項1.多接合太陽電池であって、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含んでいるベース基板;ベース基板の第1の表面に形成されたパターニングされたエミッタであって、パターニングされたエミッタが、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備え、ベース基板が、第1のソーラーサブセルを形成するパターニングされたエミッタを含んでいる、パターニングされたエミッタ;及び第1のソーラーサブセルの上に1又は複数の追加のソーラーサブセルを備えている上部構造体を備える、多接合太陽電池。
条項2.ベース基板の第1の表面に不動態化層をさらに含んでおり、不動態化層がパターニングされたエミッタのウェル領域の間に配置され、かつ、第1のキャリアタイプのドーパントを含んでいる、条項1に記載の多接合太陽電池。
条項3.IV族半導体がゲルマニウム及びシリコンから選択される材料を含む、条項1又は2に記載の多接合太陽電池。
条項4.第1のキャリアタイプのドーパントがp型ドーパントであり、第2のキャリアタイプのドーパントがn型ドーパントである、条項1から3のいずれか一項に記載の多接合太陽電池。
条項5.第1のキャリアタイプのドーパントがn型ドーパントであり、第2のキャリアタイプのドーパントがp型ドーパントである、条項1から4のいずれか一項に記載の多接合太陽電池。
条項6.パターニングされたエミッタのウェル領域がアレイ状に配置されている、条項1から5いずれか一項に記載の多接合太陽電池。
条項7.ベース基板が単結晶ゲルマニウムと、III/Vヘテロエピタキシャル層に形成されたpn接合部をそれぞれが備えている1又は複数の追加のソーラーサブセルとを含む、条項1から6のいずれか一項に記載の多接合太陽電池。
条項8.パターニングされたエミッタと1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間のIII/Vヘテロエピタキシャル層に形成されたトンネル接合部をさら備えている、条項7に記載の多接合太陽電池。
【0045】
条項9.パターニングされたエミッタと1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間の電流拡散層をさらに含んでいる、条項7又は8に記載の多接合太陽電池。
条項10.1又は複数の追加のソーラーサブセルがそれぞれ、半導電性ペロブスカイト材料で形成されたpn接合部を備える、条項1から9のいずれか一項に記載の多接合太陽電池。
条項11.パターニングされたエミッタと1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間に導電層をさらに含んでいる、条項10に記載の多接合太陽電池。
条項12.ベース基板と1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間に不動態化層をさらに含んでおり、不動態化層が絶縁材料を含んでおり、導電ビアが不動態化層を貫通して延びて、パターニングされたエミッタの複数のウェル領域のそれぞれを1又は複数の追加のソーラーサブセルと電気的に接続している、条項10又は11に記載の多接合太陽電池。
条項13.多接合太陽電池を回路に接続するように配置された複数の接点をさらに備えている、条項1から12のいずれか一項に記載の多接合太陽電池。
条項14.多接合太陽電池の製造方法であって、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含むベース基板を提供することであって、ベース基板が第1の主面と第1の主面の反対側の第2の主面とを有する、提供すること;ベース基板の第1の主面のパターニングされたエミッタを形成することであって、パターニングされたエミッタが、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備え、ベース基板が、第1のソーラーサブセルを形成するパターニングされたエミッタを含んでいる、形成すること;及び第1のソーラーサブセルの上に1又は複数の追加のソーラーサブセルを含む上部構造体を形成することを含む、方法。
条項15.1又は複数の追加のソーラーサブセルがそれぞれ、III/Vヘテロエピタキシャル層に形成されたpn接合部を含んでいる、条項14に記載の方法。
条項16.パターニングされたエミッタと1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間のIII/Vヘテロエピタキシャル層に形成されたトンネル接合部をさらに備えている、条項15に記載の方法。
条項17.パターニングされたエミッタと1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間の電流拡散層をさらに含んでいる、条項15に記載の方法。
条項18.1又は複数の追加のソーラーサブセルがそれぞれ、半導電性ペロブスカイト材料で形成されたpn接合部を備える、条項14から17のいずれか一項に記載の方法。
条項19.パターニングされたエミッタと1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間に導電層をさらに含んでいる、条項18に記載の方法。
条項20.ベース基板と1又は複数の追加のソーラーサブセルとの間に不動態化層をさらに含んでおり、不動態化層が絶縁材料を含んでおり、導電ビアが不動態化層を貫通して延びて、パターニングされたエミッタの複数のウェル領域のそれぞれを1又は複数の追加のソーラーサブセルと電気的に接続している、条項18又は19に記載の方法。
条項21.太陽電池基板の製造方法であって、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含むベース基板を提供することであって、ベース基板が第1の主面と第1の主面の反対側の第2の主面とを有する、提供すること;ベース基板の第1の主面のパターニングされたエミッタを形成することであって、パターニングされたエミッタが、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備え、ベース基板が、第1のソーラーサブセルを形成するパターニングされたエミッタを含んでいる、形成すること;及びエピタキシャル層を受容するようにベース基板の第1の主面を準備することを含む、方法。
条項22.エピタキシャル層を受容するようにベース基板の第1の主面を準備することが、ベース基板を研磨すること;研磨後にベース基板を化学的に処理すること;及び化学的に処理されたベース基板を不活性雰囲気中に保存して、その上の天然酸化物の成長を抑えることを含む、条項21に記載の方法。
条項23.ベース基板が単結晶ゲルマニウムを含む、条項21又は22に記載の方法。
【0046】
条項24.太陽電池を製造するために、太陽電池製造業者にベース基板を提供することをさらに含んでいる、条項21から23のいずれか一項に記載の方法。
条項25.太陽電池基板であって、IV族半導体と第1のキャリアタイプのドーパントとを含むベース基板であって、ベース基板が第1の主面と第1の主面の反対側の第2の主面とを有し、第1の主面がエピタキシャル可能状態であるベース基板と;ベース基板の第1の主面に形成されたパターニングされたエミッタであって、パターニングされたエミッタが、IV族半導体中に第2のキャリアタイプのドーパントでドープされた複数のウェル領域を備え、ベース基板が、第1のソーラーサブセルを形成するパターニングされたエミッタを含んでいる、パターニングされたエミッタとを備える、太陽電池基板。
条項26.ベース基板が単結晶ゲルマニウムである、条項25に記載の太陽電池基板。
【0047】
本開示の広い範囲を説明している数値の範囲及びパラメータは概算であるが、特定の実施例で説明されている数値は、可能な限り正確に記載されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含んでいる。さらに、本明細書で開示されるすべての範囲は、本明細書内に包含されるあらゆるすべての部分範囲を含むと理解されるべきである。
【0048】
本教示は、1又は複数の実施形態を用いて説明されてきたが、添付の請求項の主旨及び範囲から逸脱することなく、示されている例に対して変更及び/又は修正を行うことができる。また、幾つかの実施形態のうちの1つのみに関して本教示の特定の特徴が開示されてきたかもしれないが、こうした特徴は、任意の所与の又は特定の機能に関して所望されかつ有利である場合、他の実施形態の1又は複数の他の特徴と組み合わされてもよい。またさらに、詳細な説明及び特許請求の範囲のいずれにおいても、用語「含んでいる(including)」「含む(includes)」「有している(having)」「有する(has)」「伴う(with)」又はそれらの変形が使用される限りにおいて、そのような用語は、「備えている(comprising)」という用語と同様に包括的であることを意図している。さらに、本明細書における考察及び特許請求の範囲において、「約」という用語は、変更が本明細書に記載の意図された目的に対してプロセス又は構造の不適合を生じさせない限り、列挙された値がいくらか変更されてもよいことを示している。最後に、「例示的な」は、記述が、理想的であることを示唆するというよりむしろ、例として使用されていることを示している。
【0049】
上に開示した変形例並びに、他の特徴及び機能又はそれらの代替例が他の多くの異なるシステム又はアプリケーションに組み込まれてもよいことは理解されよう。現在予見できない又は予期しない様々な代替例、修正例、変形例又はそれらの改良が、後に当業者によりなされるかもしれないが、それらもまた以下の特許請求の範囲によって包含される。