(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240611BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E04B2/56 604F
E04B2/56 643A
E04H9/02 321B
(21)【出願番号】P 2022195890
(22)【出願日】2022-12-07
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】301062226
【氏名又は名称】株式会社日本設計
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】間室 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 賢太
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199759(JP,A)
【文献】実公昭27-007730(JP,Y1)
【文献】特開2003-176585(JP,A)
【文献】特開2003-301542(JP,A)
【文献】特開2020-114962(JP,A)
【文献】特開2021-063345(JP,A)
【文献】特開2009-185586(JP,A)
【文献】特開2017-048512(JP,A)
【文献】特開2002-220893(JP,A)
【文献】特開2000-192574(JP,A)
【文献】特開2011-144621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/02
E04B 2/56
E04H 9/02
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に積層される複数の木材層からなる木材層部と、
前記上下方向に伸び所定水平方向の前記木材層部の一端部に接合される第1の鉄骨と前記上下方向に伸び前記所定水平方向の前記木材層部の他端部に接合される第2の鉄骨とからなる鉄骨部と、
前記第1及び第2の鉄骨の上端部にそれぞれ接合される第1の構造体と前記第1及び第2の鉄骨の下端部にそれぞれ接合される第2の構造体とからなる構造体部とを有し、
各々の前記木材層は少なくとも1つの木材からなり、
前記木材層部は、前記所定水平方向に並ぶ複数の前記木材からなる少なくとも1つの複数木材層を有し、
各々の隣り合う前記木材層は、横断面環状又はC字状をなし接合面から各々の前記木材層の環状溝に嵌入する少なくとも1つの金物を介して接合され
、
前記木材層部は、複数の単一木材層を有し、
各々の前記単一木材層は、1つの木材からなり、一端部において前記第1の鉄骨に接合され、他端部において前記第2の鉄骨に接合され、
前記木材層部の上端部は、前記単一木材層で構成され、前記第1の鉄骨と前記第2の鉄骨の間で前記第1の構造体に接合され、
前記木材層部の下端部は、前記単一木材層で構成され、前記第1の鉄骨と前記第2の鉄骨の間で前記第2の構造体に接合され、
前記木材層部の前記上端部を構成する前記単一木材層は、前記第1の鉄骨と前記第2の鉄骨の間において前記所定水平方向に伸びる少なくとも1つの第1の所定水平方向溝を上端面に有し、対応する前記第1の所定水平方向溝に挿入される少なくとも1つの第1の鋼板を有する上側ブラケット部を介して前記第1の構造体に接合され、
前記木材層部の前記上端部を構成する前記単一木材層は、前記第1の鋼板を貫通する少なくとも1つの第1の締結具を介して前記第1の鋼板に接合され、
前記木材層部の前記下端部を構成する前記単一木材層は、前記第1の鉄骨と前記第2の鉄骨の間において前記所定水平方向に伸びる少なくとも1つの第2の所定水平方向溝を下端面に有し、対応する前記第2の所定水平方向溝に挿入される少なくとも1つの第2の鋼板を有する下側ブラケット部を介して前記第2の構造体に接合され、
前記木材層部の前記下端部を構成する前記単一木材層は、前記第2の鋼板を貫通する少なくとも1つの第2の締結具を介して前記第2の鋼板に接合され、
前記第1の鉄骨は、前記所定水平方向の前記木材層部の一端面に対向する第1の対向板部と、前記所定水平方向の前記木材層部の前記一端面上を前記上下方向に伸びる第1の上下方向溝に挿入される第1の挿入板部とからなる第1のT形鋼で構成され、
前記所定水平方向の各々の前記単一木材層の前記一端部は、前記第1の挿入板部を貫通する少なくとも1つの第3の締結具を介して前記第1の挿入板部に接合され、
前記第2の鉄骨は、前記所定水平方向の前記木材層部の他端面に対向する第2の対向板部と、前記所定水平方向の前記木材層部の前記他端面上を前記上下方向に伸びる第2の上下方向溝に挿入される第2の挿入板部とからなる第2のT形鋼で構成され、
前記所定水平方向の各々の前記単一木材層の前記他端部は、前記第2の挿入板部を貫通する少なくとも1つの第4の締結具を介して前記第2の挿入板部に接合される、壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上下方向に積層される複数の木材層からなる木材層部と、上下方向に伸び所定水平方向の木材層部の一端部に接合される第1の鉄骨と上下方向に伸び所定水平方向の木材層部の他端部に接合される第2の鉄骨とからなる鉄骨部と、第1及び第2の鉄骨の上端部にそれぞれ接合される第1の構造体と第1及び第2の鉄骨の下端部にそれぞれ接合される第2の構造体とからなる構造体部とを有し、各々の木材層は少なくとも1つの木材からなり、木材層部は、所定水平方向に並ぶ複数の木材からなる少なくとも1つの複数木材層を有する壁構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成によれば、木材の使用により環境に優しく、複数木材層における複数の木材の配置により壁面の外観に可変性をもたせた壁構造を実現できる。しかし、耐震性に改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、環境に優しく、壁面の外観に可変性をもたせ、耐震性に優れる壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
上下方向に積層される複数の木材層からなる木材層部と、
前記上下方向に伸び所定水平方向の前記木材層部の一端部に接合される第1の鉄骨と前記上下方向に伸び前記所定水平方向の前記木材層部の他端部に接合される第2の鉄骨とからなる鉄骨部と、
前記第1及び第2の鉄骨の上端部にそれぞれ接合される第1の構造体と前記第1及び第2の鉄骨の下端部にそれぞれ接合される第2の構造体とからなる構造体部とを有し、
各々の前記木材層は少なくとも1つの木材からなり、
前記木材層部は、前記所定水平方向に並ぶ複数の前記木材からなる少なくとも1つの複数木材層を有し、
各々の隣り合う前記木材層は、横断面環状又はC字状をなし接合面から各々の前記木材層に嵌入する少なくとも1つの金物を介して接合される、壁構造。
【0008】
[2]
前記木材層部は、複数の単一木材層を有し、
各々の前記単一木材層は、1つの木材からなり、一端部において前記第1の鉄骨に接合され、他端部において前記第2の鉄骨に接合される、[1]に記載の壁構造。
【0009】
[3]
前記木材層部の上端部は、前記単一木材層で構成され、前記第1の鉄骨と前記第2の鉄骨の間で前記第1の構造体に接合され、
前記木材層部の下端部は、前記単一木材層で構成され、前記第1の鉄骨と前記第2の鉄骨の間で前記第2の構造体に接合される、[2]に記載の壁構造。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境に優しく、壁面の外観に可変性をもたせ、耐震性に優れる壁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の壁構造を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す壁構造の一部を示す分解斜視図である。
【
図5】
図1に示す壁構造における地震時の力の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0013】
図1~
図5に示すように、本発明の一実施形態において壁構造1は、上下方向に積層される複数の木材層2aからなる木材層部2と、上下方向に伸び所定水平方向の木材層部2の一端部に接合される第1の鉄骨3aと上下方向に伸び所定水平方向の木材層部2の他端部に接合される第2の鉄骨3bとからなる鉄骨部3と、第1及び第2の鉄骨3bの上端部にそれぞれ接合される第1の構造体4aと第1及び第2の鉄骨3bの下端部にそれぞれ接合される第2の構造体4bとからなる構造体部4とを有する。各々の木材層2aは少なくとも1つの木材5からなる。木材層部2は、所定水平方向に並ぶ複数の木材5からなる少なくとも1つの複数木材層6を有する。各々の隣り合う木材層2aは、横断面環状又はC字状をなし接合面7から各々の木材層2aに嵌入する少なくとも1つの金物8を介して接合される。木材層2aの数は9つであるが、2つ以上であればよい。複数木材層6の数は4つであるが、1つ以上であればよい。各々の複数木材層6を構成する木材5の数は4つであるが、2つ以上であればよい。或る複数木材層6を構成する木材5の数と別の複数木材層6を構成する木材5の数とが異なる構成としてもよい。各々の隣り合う木材層2aを接合する金物8の数は6つであるが、接合対象となる複数木材層6を構成する木材5の数、大きさ(所定水平方向、上下方向、壁厚み方向の幅)などに応じて適宜増減でき、1つ以上であればよい。木材層部2を構成する各々の木材5はブロック形状であるが、これに限らない。
【0014】
このような構成によれば、
図5に示すように、地震時に所定水平方向力を木材層2a間で横断面環状又はC字状の金物8を介して効率的に上下方向に伝達することができ、所定水平方向力により木材層部2の両端部に生じる上下方向力を鉄骨部3で支持することで木材層部2の一体性を保つことができ、鉄骨部3に生じる軸力を構造体部4で支持することで壁構造1の破壊を抑制することができる。したがって、木材5の使用により環境に優しく、複数木材層6における複数の木材5の配置により壁面の外観に可変性をもたせ、耐震性に優れる壁構造1を実現できる。
【0015】
木材層部2は、複数の単一木材層9を有し、各々の単一木材層9は、1つの木材5からなり、一端部において第1の鉄骨3aに接合され、他端部において第2の鉄骨3bに接合される。単一木材層9の数は5つであるが、2つ以上であればよい。単一木材層9の数、上下方向の幅、複数木材層6の数、上下方向の幅、単一木材層9と複数木材層6の上下方向の配列(並び順)、複数木材層6中の複数の木材5の所定水平方向の配置(木材5間の間隔によって形成する開口18の位置、大きさなどの設定)などは、外観上の要求などに応じて適宜設定できる。このような構成によれば、耐震性を向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0016】
木材層部2の上端部は、単一木材層9で構成され、第1の鉄骨3aと第2の鉄骨3bの間で第1の構造体4aに接合される。このような構成によれば、耐震性を更に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0017】
木材層部2の下端部は、単一木材層9で構成され、第1の鉄骨3aと第2の鉄骨3bの間で第2の構造体4bに接合される。このような構成によれば、耐震性を更に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0018】
各々の金物8は、接合面7から各々の木材層2aの環状溝に嵌入する。金物8は例えば鋼鉄製である。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0019】
第1の構造体4aと第2の構造体4bはそれぞれ、所定水平方向に伸びる梁として構成される。このような構成によれば、耐震性を効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0020】
第1の構造体4aと第2の構造体4bはそれぞれ鉄骨で構成される。このような構成によれば、耐震性を効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0021】
木材層部2は、複数の複数木材層6を有する。このような構成によれば、壁面の外観の可変性を向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0022】
各々の隣り合う木材層2aは、複数の金物8を介して接合される。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0023】
第1の鉄骨3aは、所定水平方向の木材層部2の一端面に対向する対向板部10と、所定水平方向の木材層部2の一端面上を上下方向に伸びる上下方向溝11に挿入される挿入板部12とからなるT形鋼で構成される。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0024】
所定水平方向の各々の単一木材層9の一端部は、挿入板部12を貫通する少なくとも1つの締結具13(例えば、図示するようなドリフトピン13aとその両端にそれぞれ螺合するナット13b)を介して挿入板部12に接合される。締結具13の数は2つであるが、1つ以上であればよい。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0025】
第2の鉄骨3bは、所定水平方向の木材層部2の他端面に対向する対向板部10と、所定水平方向の木材層部2の他端面上を上下方向に伸びる上下方向溝11に挿入される挿入板部12とからなるT形鋼で構成される。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0026】
所定水平方向の各々の単一木材層9の他端部は、挿入板部12を貫通する少なくとも1つの締結具13を介して挿入板部12に接合される。締結具13の数は2つであるが、1つ以上であればよい。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0027】
木材層部2の上端部を構成する単一木材層9は、第1の鉄骨3aと第2の鉄骨3bの間において所定水平方向に伸びる少なくとも1つの所定水平方向溝14を上端面に有し、対応する所定方向溝に挿入される少なくとも1つの鋼板15を有する上側ブラケット部16を介して第1の構造体4aに接合される。所定水平方向溝14とこれに対応する鋼板15の組の数は2つであるが、1つ以上であればよい。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0028】
木材層部2の上端部を構成する単一木材層9は、鋼板15を貫通する少なくとも1つの締結具13を介して鋼板15に接合される。締結具13の数は7つであるが、1つ以上であればよい。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0029】
木材層部2の下端部を構成する単一木材層9は、第1の鉄骨3aと第2の鉄骨3bの間において所定水平方向に伸びる少なくとも1つの所定水平方向溝14を下端面に有し、対応する所定方向溝に挿入される少なくとも1つの鋼板15を有する下側ブラケット部17を介して第2の構造体4bに接合される。所定水平方向溝14とこれに対応する鋼板15の組の数は2つであるが、1つ以上であればよい。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0030】
木材層部2の下端部を構成する単一木材層9は、鋼板15を貫通する少なくとも1つの締結具13を介して鋼板15に接合される。締結具13の数は7つであるが、1つ以上であればよい。このような構成によれば、耐震性を更に効率的に向上できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0031】
壁構造1は、木材層部2、鉄骨部3、上側ブラケット部16及び下側ブラケット部17を組み付けて形成される組み立て体を構造体部4に組み付けて形成される。このような構成によれば、壁構造1を効率的に形成できる。しかし壁構造1はこのような構成に限らない。
【0032】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0033】
したがって、前述した実施形態の壁構造1は、上下方向に積層される複数の木材層2aからなる木材層部2と、上下方向に伸び所定水平方向の木材層部2の一端部に接合される第1の鉄骨3aと上下方向に伸び所定水平方向の木材層部2の他端部に接合される第2の鉄骨3bとからなる鉄骨部3と、第1及び第2の鉄骨3bの上端部にそれぞれ接合される第1の構造体4aと第1及び第2の鉄骨3bの下端部にそれぞれ接合される第2の構造体4bとからなる構造体部4とを有し、各々の木材層2aは少なくとも1つの木材5からなり、木材層部2は、所定水平方向に並ぶ複数の木材5からなる少なくとも1つの複数木材層6を有し、各々の隣り合う木材層2aは、横断面環状又はC字状をなし接合面7から各々の木材層2aに嵌入する少なくとも1つの金物8を介して接合される、壁構造1である限り変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 壁構造
2 木材層部
2a 木材層
3 鉄骨部
3a 第1の鉄骨
3b 第2の鉄骨
4 構造体部
4a 第1の構造体
4b 第2の構造体
5 木材
6 複数木材層
7 接合面
8 金物
9 単一木材層
10 対向板部
11 上下方向溝
12 挿入板部
13 締結具
13a ドリフトピン
13b ナット
14 所定水平方向溝
15 鋼板
16 上側ブラケット部
17 下側ブラケット部
18 開口
【要約】
【課題】環境に優しく、壁面の外観に可変性をもたせ、耐震性に優れる壁構造を提供する。
【解決手段】上下方向に積層される複数の木材層2aからなる木材層部2と、上下方向に伸び所定水平方向の木材層部2の一端部に接合される第1の鉄骨3aと上下方向に伸び所定水平方向の木材層部2の他端部に接合される第2の鉄骨3bとからなる鉄骨部3と、第1及び第2の鉄骨3bの上端部にそれぞれ接合される第1の構造体4aと第1及び第2の鉄骨3bの下端部にそれぞれ接合される第2の構造体4bとからなる構造体部4とを有し、各々の木材層2aは少なくとも1つの木材5からなり、木材層部2は、所定水平方向に並ぶ複数の木材5からなる少なくとも1つの複数木材層6を有し、各々の隣り合う木材層2aは、横断面環状又はC字状をなし接合面7から各々の木材層2aに嵌入する少なくとも1つの金物8を介して接合される、壁構造1。
【選択図】
図1