(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】押出プレス、管プレスまたはパンチプレスとして構成された金属プレス機に設けられた潤滑剤塗布器ならびに押出プレス、管プレスまたはパンチプレスのマンドレルを潤滑する方法
(51)【国際特許分類】
F16N 17/00 20060101AFI20240611BHJP
B21J 3/00 20060101ALI20240611BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20240611BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20240611BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F16N17/00
B21J3/00
B30B15/00 F
B21J5/06 A
B05C1/02 101
(21)【出願番号】P 2022519713
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2020077122
(87)【国際公開番号】W WO2021063895
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】102019214981.2
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ デル クアルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン ガラ ロサダ
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-103734(JP,A)
【文献】特開2016-215344(JP,A)
【文献】特開昭54-065766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 1/00-99/00
B21J 3/00、5/06
B30B 15/00
B05C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出プレス、管プレスまたはパンチプレスとして構成された金属プレス機(1)に設けられた潤滑剤塗布器(4)であって、自由端において回転可能かつ/または旋回可能に配置された少なくとも1つの潤滑ヘッド(7)を備えた、前記金属プレス機(1)のプレス軸線(5)内に旋回可能な少なくとも1つのアームを含み、前記潤滑ヘッド(7)により、前記金属プレス機(1)の工具に潤滑剤が塗布可能であり、前記アームが、多軸の屈曲アーム(3)として形成されている、潤滑剤塗布器において、
前記屈曲アーム(3)が、少なくとも4つの自由度を有しており、前記潤滑ヘッド(7)が、潤滑すべきマンドレル(5)のためのマンドレル貫通案内部(8)を有しており、該マンドレル貫通案内部(8)が、潤滑剤パッドとして形成されたライニングを備えており、
前記マンドレル(5)をプレス軸線において軸方向で往復運動させ、かつ前記潤滑ヘッド(7)の回転方向を
交互に変えることによって、前記マンドレル(5)に螺旋状の潤滑剤跡を形成することができるように構成されていることを特徴とする、潤滑剤塗布器。
【請求項2】
前記屈曲アーム(3)が自動運動装置として構成されており、該自動運動装置の運動シーケンス、運動経路および/または調整角がプログラミング可能である、請求項1記載の潤滑剤塗布器。
【請求項3】
前記アームが、5つまたは6つの自由度を有している、請求項1または2記載の潤滑剤塗布器。
【請求項4】
前記アーム内に少なくとも1つの潤滑剤管路が設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の潤滑剤塗布器。
【請求項5】
前記潤滑剤管路が、潤滑剤リザーバから前記潤滑ヘッド(7)にまでガイドされている、請求項4記載の潤滑剤塗布器。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の潤滑剤塗布器(4)を備えた、金属プレス機(1)。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項記載の潤滑剤塗布器を使用しながら、押出プレス、管プレスまたはパンチプレスに設けられたマンドレルを潤滑する方法。
【請求項8】
第1の方法ステップにおいて、プレス軸線内への潤滑ヘッドの旋回を許容する第1の位置へと前記マンドレルを走行させ、第2の方法ステップにおいて、前記マンドレルを潤滑ヘッドの貫通案内部内に
挿入させ、別の方法ステップにおいて、前記マンドレルをプレス軸線において軸方向で往復運動させ、該運動を、前記プレス軸線を中心とした前記潤滑ヘッドの回転に重畳させる、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の特徴を有する、押出プレス、管プレスまたはパンチプレスとして構成された金属プレス機に設けられた潤滑剤塗布器に関する。
独国特許出願公開第19517109号明細書からは、変形加工機械の金型スプレー装置と、金型スプレー装置を制御する方法とが知られている。別の先行技術は、仏国特許出願公開第2155946号明細書、西独国特許出願公開第3230095号明細書および米国特許第3633651号明細書に記載されている。
【背景技術】
【0002】
押出プレス、管プレスまたはパンチプレスとして構成された金属プレス機のための潤滑剤塗布器は、たとえば、欧州特許第0051159号明細書からも知られている。欧州特許第0051159号明細書は、直接的または間接的に作業する金属押出プレスおよび/または管プレスに設けられた工具を潤滑するための装置を開示しており、装置は、プレス軸線内に走入可能または旋回可能なアームを特徴としている。このアームの自由端は、ろうそくの形の熱で溶ける固形潤滑剤を収容するための回転可能かつ/または移動可能な手段を支持しており、潤滑剤ろうそくの端面は、プレス機の工具に対して当付け可能または走行可能である。間接的な管プレスの閉鎖部材およびマンドレルの自動的な潤滑のために、アームの自由端に、ニューマチック式に調節可能な懸架装置が設けられている。懸架装置は、プレス機の閉鎖部材に面した端面に、支持プレートを有しており、この支持プレート自体には、プレス軸線を中心として回転する環状の潤滑剤ろうそく支持体が配置されている。回転は、このために設けられた伝動装置モータによって実行される。このアセンブリは、機械的に比較的に手間がかかる。
【0003】
潤滑剤ろうそく支持体を、プレス軸線を中心として回転することができるように構成することの必要性は、このようなプレス機において通常、マンドレルを回転すると同時にプレス軸線の方向で軸方向に移動させることができないという状況に基づいている。しかし、このことは、マンドレル上への潤滑剤の均一かつできるだけ大面積での分布にとって望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底にある課題は、上述のような種類の潤滑剤塗布器を機械的に簡略化することである。さらに、本発明の根底にある課題は、金属プレス機に設けられた工具を潤滑する方法、特に押出プレス、管プレスまたはパンチプレスに設けられたマンドレルを潤滑する方法を改良して、工具上への潤滑剤のできるだけ均一かつ大面積での分布を達成できるようにすることである。特に、本発明に係る方法により、金属プレス機のマンドレル上における潤滑剤のほぼ螺旋状の分布が達成されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する潤滑剤塗布器と、請求項7記載の特徴を有する方法とによって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項から明らかとなる。
【0006】
本発明の1つの観点によれば、金属プレス機に設けられた潤滑剤塗布器であって、該潤滑剤塗布器が、自由端において回転可能かつ/または旋回可能に配置された少なくとも1つの潤滑ヘッドを備えた、金属プレス機のプレス軸線内に旋回可能な少なくとも1つのアームを有し、潤滑ヘッドにより、金属プレス機の工具に潤滑剤が塗布可能である、潤滑剤塗布器が提供される。本発明に係る潤滑剤塗布器は、特に、アームが多軸の屈曲アームとして形成されていることにより優れている。
【0007】
特に、本発明によれば、屈曲アームが自動運動装置として構成されており、この自動運動装置の運動シーケンス、運動経路および/または調整角(Anstellwinkel)がプログラミング可能であることが規定されている。アームは、本発明によれば、ロボットアームとして構成されている。アームの運動シーケンス、運動経路および/または調整角は、たとえば、潤滑剤塗布器のプログラマブルロジックコントローラに記憶またはプログラミングされていてよい。
【0008】
このような潤滑剤塗布器は、工具の潤滑時に従来は大部分が手動で実施されていた作業を完全に自動化して実施することを可能にする。使用される潤滑媒体に依存せず、同一の基本構成を維持することができる。潤滑ヘッドの構成変更を自動的に実施することができる。本発明による屈曲アームにより、考え得る全ての運動または自由度が実現可能であるので、大きな直径を有する工具表面を潤滑ヘッドの自由に規定される運動パターンによって潤滑することができる。
【0009】
潤滑剤塗布器は金属プレス機に直接取り付けられていてよいが、潤滑剤塗布器は、「潤滑剤ロボット」として金属プレス機の横に設置することもできる。後者の配置は、金属プレス機のサイズおよび配置に依存しない位置決めが可能であるという利点を有している。本発明に係る潤滑剤塗布器の別の利点は、当該潤滑剤塗布器の使用により、金属プレス機の高温領域における危険な作業が回避されることにある。
【0010】
さらに、本発明に係る潤滑剤塗布器のアームは、センサガイドされていてよく、これにより、潤滑剤塗布器の制御装置によって、場合によっては生じ得る工具の不正位置またはその他の障害がセンサ機器によって検知され、信号が送られる。
【0011】
本発明によれば、屈曲アームは、少なくとも4つ、好適には5つ、特に好適には6つの自由度を有している。特に、アームが6自由度を有している場合、傾倒運動を含む任意の運動を全ての方向で実施することができる。
【0012】
本発明に係る潤滑剤塗布器の特に好適なバリエーションでは、アームに少なくとも1つの媒体ガイドが統合されていることが規定される。媒体ガイドとして、たとえば潤滑剤管路が設けられていてよく、この潤滑剤管路は、潤滑剤リザーバから潤滑ヘッドにまでガイドされている。
【0013】
特にプレスマンドレルを備える金属プレス機の潤滑のために形成されている潤滑剤塗布器では、潤滑ヘッドが、潤滑すべきマンドレルのためのマンドレル貫通案内部を有しており、マンドレル貫通案内部が、潤滑剤パッドとして形成されたライニングを備えている。
【0014】
本発明はさらに、上記のいずれか1つの特徴を有する潤滑剤塗布器を備えた、金属プレス機としての押出プレス、管プレスまたはパンチプレスを含んでいる。
【0015】
本発明の根底にある課題は、さらに、上述のいずれか1つの特徴を有する潤滑剤塗布器を使用しながら、押出プレス、管プレスまたはパンチプレスに設けられたマンドレルを潤滑する方法によって解決される。
【0016】
この方法は、特に、第1の方法ステップにおいて、プレス軸線内への潤滑ヘッドの旋回を許容する第1の位置へと金属プレス機のマンドレルを走行させ、第2の方法ステップにおいて、マンドレルを潤滑ヘッドの貫通案内部内に走入させるかまたは通し、別の方法ステップにおいて、マンドレルをプレス軸線において軸方向で往復運動させ、この運動を、プレス軸線を中心とした潤滑ヘッドの回転に重畳させることを特徴としている。特に好適には、潤滑ヘッドの回転方向を交互に変え、これにより、マンドレルに螺旋状の潤滑剤跡を形成する。
【0017】
本発明を以下に添付の図面に図示された1つの実施例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】押出プレスまたは管プレスとして構成されている金属プレス機1の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面は、本発明による潤滑剤塗布器4の、プレス軸線2内に旋回する屈曲アーム3が見えるように、押出プレスまたは管プレスとして構成されている金属プレス機1の横断面図を示している。参照符号5により、プレス軸線2内に延びる金属プレス機1のプレスマンドレルが示されている。
【0020】
本発明に係る潤滑剤塗布器4は、金属プレス機1のブラケット6に固定的に組み付けられた屈曲アーム3を含んでおり、この屈曲アーム3の自由端に潤滑ヘッド7が回転可能に取り付けられている。潤滑ヘッド7は、示された図においてプレスマンドレル5を取り囲んでいるマンドレル貫通案内部8を有している。マンドレル貫通案内部8は、潤滑パッドとして形成されたライニング9を備えており、このライニング9には、潤滑剤管路(図示せず)を介して潤滑剤リザーバから潤滑剤が供給される。潤滑剤管路は、好適には屈曲アーム3内に統合されている。屈曲アーム3は、公知の形式で、それぞれ2つの自由度を有する3つのジョイント10A、10B、10Cを含んでいるので、全体的に屈曲アーム3によって6自由度が実現可能である。第1のジョイント10Aは、ブラケット6において回転可能に駆動されるように取り付けられている。この第1のジョイント10Aには、第1のアームセグメント11Aが旋回可能に駆動されるように取り付けられている。第1のアームセグメント11Aの旋回軸線は、第1のジョイント10Aの回転軸線に対して所定の角度で延びている。第2のジョイント10Bは、第1のアームセグメント11Aの、ブラケット6から離れた端部において回転可能に駆動されるように取り付けられている。第2のジョイント10Bには、第2のアームセグメント11Bが回転可能に駆動されるように取り付けられており、第3のアームセグメント11Cには、潤滑ヘッド7が回転可能に駆動されるように取り付けられている。潤滑ヘッド7の回転軸線と第3のジョイント10Cの回転軸線とは、屈曲アーム3の、図面に図示された位置では、プレス軸線2に対して平行に延びている。
【0021】
図面は、プレスマンドレル5がマンドレル貫通案内部8によって取り囲まれている潤滑ヘッド7の位置を示している。このプレスマンドレル5および屈曲アーム3のこの位置では、プレスマンドレル5がプレス軸線2において往復運動し、この場合にこの往復運動は、プレス軸線2を中心とした潤滑ヘッド7の往復回転に重畳される。スタンプパッドのように潤滑剤が含浸された、潤滑ヘッド7のライニング9は、マンドレル5の周面に対して当て付けられ、周面上で螺旋状の潤滑剤跡を生じさせる。
【符号の説明】
【0022】
1 金属プレス機
2 プレス軸線
3 屈曲アーム
4 潤滑剤塗布器
5 プレスマンドレル
6 ブラケット
7 潤滑ヘッド
8 マンドレル貫通案内部
9 ライニング
10A 第1のジョイント
10B 第2のジョイント
10C 第3のジョイント
11A 第1のアームセグメント
11B 第2のアームセグメント
11C 第3のアームセグメント