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特許7502435哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0531 20210101AFI20240611BHJP
【FI】
A61B5/0531
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022528659
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2020080298
(87)【国際公開番号】W WO2021099083
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】20191365
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】507173229
【氏名又は名称】メッド ストーム イノヴェーション エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ストーム,ハンネ
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-524464(JP,A)
【文献】特表2019-512311(JP,A)
【文献】国際公開第2007/097634(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0018707(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107320073(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05ー5/0538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法であって、
- 時間区間を通して哺乳類の皮膚の領域で測定された皮膚コンダクタンス信号を提供するステップと、
- 前記時間区間を通じた前記皮膚コンダクタンス信号のピークを検出するステップと、
- 前記時間区間を通じたピーク率を特定するステップと、
- 前記特定したピーク率を予め定めた基準値と比較するステップと、
- 前記特定したピーク率が前記予め定めた基準値より低い場合、哺乳類が無痛状態であることを示す出力信号を提供するステップと、
を備え、
前記予め定めた基準値が、0.00~0.03ピーク/秒の範囲内にある、方法
【請求項2】
求項1に記載の方法であって、
前記時間区間は、5秒~60秒の範囲内である、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、
前記時間区間を通じた平均ピーク率が特定の時間期間にわたって維持されていることが検出された場合に、前記出力信号が哺乳類の無痛状態を示すものとして提供され、
前記時間期間は、2分~10分の範囲内である、方法。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれか1つに記載の方法であって、
前記時間区間を通して前記皮膚コンダクタンス信号のピークを検出する前記ステップは、前記皮膚コンダクタンス信号の導関数が前記区間のなかの小さな期間で符号を変化させる場合には有効なピークがあると確定するステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法であって、
前記導関数は、連続する2つのサンプル値の差として計算される、方法。
【請求項6】
請求項4または請求項に記載の方法であって
ピークを有効とみなすための追加の基準が設定され、当該基準は、信号振幅が範囲[0.005uS、0.03uS]から選択される絶対限界値を超えることを保証することを含む、方法。
【請求項7】
請求項~請求項のいずれか1つに記載の方法であって
ピークが有効であるとみなされる場合について追加の基準が設けられ、当該基準は、時間の関数としての前記皮膚コンダクタンス信号の増加が20uS/s未満にとどまることを保証することを含む、方法。
【請求項8】
請求項~請求項のいずれか1つに記載の方法であって、
ピークが有効であるとみなされる場合について追加の基準が設けられ、当該基準は、局所ピークから次の局所最小値への前記コンダクタンス信号の変化の絶対値が、範囲[0.005uS、0.03uS]から選択される予め定めた値を超えることを保証することを含む、方法。
【請求項9】
請求項~請求項のいずれか1つに記載の方法であって、
ピークが有効であるとみなされる場合について追加の基準が設けられ、当該基準は、前記区間の開始点または終了点が有効なピークとみなされないことを保証することを含む、方法。
【請求項10】
哺乳類に痛みが無いことを確かめるための装置であって、
- 哺乳類の皮膚の領域で測定された皮膚コンダクタンス信号を提供するための測定装置と、
- 請求項1~請求項のいずれか1つに記載の方法を実行するように構築された制御部と、
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび他の哺乳類の神経系をモニタリングするための方法および装置、特に無意識の、言葉を発しない患者、例えば手術中における麻酔中の患者または人工呼吸が施された患者における痛みを検出するための方法および装置が、この技術分野に存在する。これらの方法および装置のいくつかは、測定された患者の痛みの状態により、患者が薬物を必要とするかどうかを決定するために使用される。
【0003】
意識があり健康だと推定されるものから入院中のものまでの全てのヒト又は他の哺乳類において、哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法および装置が必要とされている。
【0004】
WO-00/72751は、皮膚コンダクタンスの自発的変化を利用して個人における自律神経系をモニタリングする装置および方法、特に痛みを検出する方法に関するものである。この装置は、皮膚のコンダクタンスを測定するための測定装置と、コンダクタンス信号の二次特性を導出するための記憶手段および処理手段とから構成される。患者の痛みは、皮膚コンダクタンス信号における変動の振幅と周波数とに基づいて導出されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO00/72751号
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法及び装置を提供することである。
【0007】
本発明によれば、上記目的は、添付の独立請求項に規定される方法および装置によって達成される。
【0008】
本発明の更なる利点及び特徴は、従属請求項に示される。
【0009】
以下、図面を参照しながら実施例により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】哺乳類に痛みが無いことを確かめる装置の原理を表す概略ブロック図。
図2】使用中の、哺乳類に痛みが無いことを確かめる装置を表す斜視図。
図3】哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、特に意識があり健康だと推定されるものから入院中のものまでの全てのヒト又は他の哺乳類において、ヒトまたは他の哺乳類に痛みが無いことを確かめる装置の原理を示す概略ブロック図である。
【0012】
ヒトなどの哺乳類の身体部分1における皮膚の領域2に、皮膚コンダクタンスを測定するためのセンサ手段3が配置されている。ヒトの場合、身体部分1は、好ましくは手または足である。身体部分1上の皮膚の領域2は、好ましくは手の掌側(手のひらの中)または足の足底側(足の裏の側)である。なお、ヒトではない哺乳類、特に前足を有する哺乳類の場合、身体部分の領域は、前足の掌側であってもよい。センサ手段3は複数の接触電極を備えていて、そのうちの少なくとも1つの電極(測定電極)が皮膚領域2上に配置される。好ましい実施形態では、センサ手段3は3つの電極、即ち、1つの信号電極、1つの測定電極、および1つの参照電圧電極からなる。これにより、測定電極の下の角質層(皮膚の表層)上に電圧をコンスタントに印加することが保証される。測定電極および信号電極は、好ましくは、皮膚領域2上に配置される。参照電圧電極も皮膚領域2上に配置してよいが、好ましくは当該測定配置構成に適した近くの位置に配置される。
【0013】
好ましい実施形態では、皮膚のコンダクタンスを測定するために、交流電流が用いられる。交流電流は、皮膚のコンダクタンスがほぼ線形な領域に対応する1000Hzまでの範囲の周波数を有すると有利である。測定信号が、例えば主電源の周波数からの干渉を考え得る最小の範囲でしか影響を受けないことを保証するような周波数を選択すべきである。好ましい実施形態では、周波数は88Hzである。信号発生器は、指定された周波数で動作し、信号電極に信号電流を流す。
【0014】
交流の場合、コンダクタンスは複素アドミタンスの実数部と一致するので、抵抗値の逆数とは必ずしも一致しない。コンダクタンスを測定する際に直流に代わって交流を用いることの利点は、この手段により、測定に対する皮膚の電気分極性の不都合な影響を避けられることである。
【0015】
測定電極を介した結果電流は、測定コンバータ4に伝送される。測定コンバータ4は、電流電圧コンバータを備える。電流電圧コンバータは、好ましい実施形態ではトランス抵抗増幅器であるが、最も単純な形態では測定電極からの電流を電圧に変換する抵抗であってもよい。
【0016】
測定コンバータは、更に分離回路を備える。この分離回路は、好ましくは同期整流器の形態をとり、複素アドミタンスを実数部(コンダクタンス)と虚数部(サセプタンス)に分離する。しかし、分離回路は、コンダクタンスを抽出する手段のみを備えるもので十分である。同期整流器は、測定された電圧と信号発生器からの電圧とを掛け合わせる。2つの信号は同相である。乗算後、結果はcos(2u)式に従い、DC成分と、周波数2uの1成分とになる。好ましい実施形態では、これは176Hzとなる。好ましい実施形態では、この同期整流器は、必要な精度でアナログ回路として構築される。
【0017】
また、測定コンバータ4は、増幅器およびフィルタ回路を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、測定コンバータは、その入力と出力との両方にローパスフィルタを備える。入力ローパスフィルタの目的は、例えば他の医療機器から来る高周波ノイズを減衰させることと、また高周波成分が後続の時間離散化用回路に受信されないようにアンチエイリアシングフィルタとして機能することである。出力ローパスフィルタは,同期整流器での逓倍動作により生じる2u成分を減衰させ,DC付近の信号のみが後処理に使用されるようにする。
【0018】
更に、構成要素と設計の細部を選択することにより、高感度および低ノイズレベルを得る観点で測定コンバータが設計される。
【0019】
測定コンバータ4は、一例として制御部5の外部にあるように図示したが、測定コンバータが制御部5に含まれていてもよいことは理解されるべきである。
【0020】
制御部5は、測定コンバータからの信号を時間的に離散化するための時間離散化部51を含んでいる。時間離散化を行うサンプリングレートは、有利には20~~200サンプリング/秒のオーダーであってもよい。制御部は、測定データをデジタル形式に変換するアナログ-デジタルコンバータ52を更に含んでいる。時間離散化及びアナログ-デジタル変換のための回路の選択は、当業者による好ましい技術的な決定事項を示唆するものである。好ましい実施形態では、時間離散化は、オーバーサンプリング、フィルタリング及び離散化を組み合わせた集積回路で行われる。
【0021】
制御部は、有利には、測定コンバータ4からの入力に加えて、追加のアナログ入力および場合によってはデジタル入力(図示せず)を含んで構成されてもよい。この場合、制御部5は、アナログ入力数を増やすために、複数のアナログ-デジタルコンバータ52を備えるか、または当業者によく知られている様々な多重化技術を採用することが可能である。これらの追加のアナログ入力は、例えば、追加の電気皮膚測定、又は、有利には電気皮膚測定と同時又は並行して行われ得る他の生理学的測定、例えば、体温、脈拍、ECG、呼吸測定、血液中の酸素飽和度測定、又はEEG(bispectral index)のために用意されてもよい。
【0022】
また、制御部5は、デジタル化された測定データを処理するための処理部53と、不揮発性メモリ54およびランダムアクセスメモリ55として例示されるデータおよびプログラムを格納する格納場所を少なくとも1つ有する記憶手段とを備える。制御部5は、第1の出力信号71と任意に第2の出力信号72とを提供するインターフェース回路61を更に備える。任意選択により、制御部5は、表示部8に更に接続される、更なるインターフェース回路81を更に備える。制御部5はまた、任意選択により、パーソナルコンピュータ、タブレット、携帯端末、またはスマートフォンなどの外部ユニット10とデジタル通信するための無線通信アダプタまたは通信ポート56を含んでいてもよい。このような通信は、制御部のメモリ54,55に格納されたままになっているプログラムを読み出しロードまたは変更したり、制御部のメモリ54,55に格納されたままになっている他のデータを追加または変更したりするためによく適している。このような通信は、装置内のメモリ54,55からのデータの読み出しにも適しており、従って更にその後の分析または保存のために外部ユニット10へデータを転送することが可能である。
【0023】
好ましい実施形態では、不揮発性メモリ54は、少なくともプログラムコードと永続的なデータを格納するプログラマブルROM回路の形態の読み出し専用記憶装置で構成されるものであり、ランダムアクセスメモリ55は、RAM回路の形態の読み書き可能な記憶装置からなり、測定データおよび他の暫定的なデータを記憶するためのものである。
【0024】
制御部5はまた、処理部53を制御するためのクロック信号を生成する発振器(図示せず)を備える。処理部53はまた、電気皮膚測定の解析で用いる現在時刻を供給するための計時手段(図示せず)を含む。このような計時手段は当業者によく知られており、当業者が本発明と共に用いるのに好適なことを見出すであろうマイクロコントローラやプロセッサシステムにしばしば含まれている。
【0025】
制御部5は、入力回路、出力回路、メモリ、その他の周辺回路に接続されたマイクロプロセッサをベースとするユニットとして構築されてもよいし、或いは、接続した回路の幾つか又は全部が集積されたマイクロコントローラとして構築されてもよい。時間離散化部51及び/またはアナログ-デジタルコンバータ52もまた、そうしたユニット中に集積されてもよい。制御部5の形態として適したものを選ぶことは、当業者であれば好適に行える。
【0026】
他の解決策は、制御部5をデジタル信号処理装置(DSP)として構築することである。
【0027】
制御部5は、好ましくは不揮発性メモリ54に格納され、処理部53により実行される実行可能なプログラムコードの手段によって、時間的に離散しかつ量子化された皮膚コンダクタンスの測定値を測定コンバータから読み込むように構成される。また、制御部5は、測定値がリードライトメモリ55に格納できるように構成される。更に、制御部5は、プログラムコードの手段によって、測定値をリアルタイムに解析するように、即ち測定動作と同時に或いは並行して解析するように構成される。この文脈において、同時或いは並行とは、測定する上で必然的な時間定数を考慮した、実際上の目的と同時或いは並行することを意味すると解するべきである。つまり、入力、記憶及び解析が別々の時間帯に行なわれうるが、この場合、それらの複数の時間区間およびそれらの間にある時間が非常に短時間なので、個々の動作が同時に発生するように見えることを意味する。
【0028】
制御部5は、時間的に離散しかつ量子化した測定信号の変動ピークを検出するように更に構成される。この処理は、不揮発性メモリ54に格納され処理部53により実行されるプログラムコード部分を手段とするものである。
【0029】
制御部5は、時間区間を通じた、時間的に離散しかつ量子化した測定信号における変動ピーク率を特定するように更に構成される。その手段には不揮発性メモリ54に格納され処理部53により実行されるプログラムコード部分が用いられる。
【0030】
制御部5は、特定したピーク率と予め定めた基準値とを比較するように更に構成される。その手段には不揮発性メモリ54に格納され処理部53により実行されるプログラムコード部分が用いられる。
【0031】
制御部5は更に、特定したピーク率が所定の基準値より低い場合には、ヒトまたは他の哺乳類に痛みがない状態を示すものとして、インターフェース回路61の第1の出力信号71を提供するように構成される。その手段には不揮発性メモリ54に格納され処理部53により実行されるプログラムコード部分が用いられる。
【0032】
制御部5は、特に以下の図3を参照して、本明細書に開示される方法の様々なステップ及びステップの組み合わせを実行するように更に構成されてもよい。その手段には不揮発性メモリ54に格納され処理部53により実行されるプログラムコード部分が用いられる。
【0033】
処理部53、メモリ54,55、アナログ-デジタルコンバータ52、通信ポート56、インターフェース回路81及びインターフェース回路61は、いずれもバス部59に接続されている。マイクロプロセッサを用いた計測器の設計のためのこのようなバスアーキテクチャの詳細な構成は、当業者にとって周知のものと解される。
【0034】
インターフェース回路61はデジタルポート回路であって、この回路は、処理部53が実行するプログラムコードによってインターフェース回路61がアドレス指定されると、バス部59を介して処理部53から少なくとも第1のデジタル出力信号71を導出する。
【0035】
第1のデジタル出力信号71は、皮膚コンダクタンス測定の分析によってヒトまたは他の哺乳類の無痛状態が確認されたことを表す。
【0036】
第2の出力信号72として模式的に示される追加の出力信号も、インターフェース回路61によって提供され得る。
【0037】
好ましい実施形態では、表示手段8は、コンダクタンス信号を図形的に可視化表示する画面と、測定した信号の変動の周波数と振幅とを表示するデジタルディスプレイとを備える。ディスプレイ部は、LCD画面とLCD表示部のような消費電力の低いものが望ましい。表示手段は分離してもよいし、同一のユニットに一体化してもよい。
【0038】
本装置は、更に、装置の各部に動作電力を供給する電源供給部9を備える。この電源は、バッテリを含んでもよく、好ましくは充電式電池を含んでもよく、あるいは代替的に主電源などの外部電源への接続を含んでもよい。
【0039】
図2は、使用中における、哺乳類に痛みが無いことを確かめる装置の形態を示す斜視図である。
【0040】
電極、すなわち典型的には図1の開示を参照して上述した3つの電極は、ヒトの手21の掌側に配置される。このため、図2上では電極が見えていない。前足を持つ哺乳類の場合、電極は前足の手掌側に配置される。電極は、ケーブル22によって、哺乳類に痛みが無いことを確かめる装置23に相互接続される。装置23は、図2を参照して上述したように、測定コンバータ4および制御部5を具体化する電子機器を包み込むハウジングを備える。装置のハウジングは、好ましくは弾性材料で作られた適切なリストストラップ24によって、ヒトまたは他の哺乳類の手首に縛り付けられる。装置23はシンプルな操作インターフェースを含む。操作インターフェースは操作要素25を含み、操作要素25は装置のオンとオフを切り替えるためのタッチボタンであってもよい。また、装置23は表示器を含んでおり、この表示器は光学的または可聴的な表示器あるいはその両方であってもよく、哺乳類に痛みがない状態を示す第1の出力信号71に対応する光学的または可聴的な表示を提供する。装置のさらなる操作は、外部端末によって提供されてもよい。外部端末はスマートフォンなどであり、これが外部ユニット10に対応し、図1を参照して上述したように装置23内の制御部5と通信することを可能にする。
【0041】
図3は、ヒトまたは他の哺乳類に痛みが無いことを確かめる方法を図示したフローチャートである。
【0042】
この方法は、符号31から開始する。
【0043】
測定ステップ32では、時間区間を通じてヒトまたは哺乳類の皮膚のある領域で測定された皮膚コンダクタンス信号が提供される。この目的のために、皮膚コンダクタンス信号またはEDR(電気皮膚反応)信号は、既に上記の図1および2を参照して説明したように、ヒトまたは他の哺乳類の身体部分1、好ましくは手または前足の掌側に配置された接触電極などのセンサ手段3によって測定される。
【0044】
好ましくはマイクロシーメンス(uS)単位での皮膚コンダクタンスは、例えば上記の図1を参照して説明した装置の使用により、時間量子化されデジタル形式に変換される。皮膚コンダクタンスデータを含む、ある持続時間、典型的には5秒~60秒の間、より好ましくは15秒~45秒の間、なおより好ましくは25秒~35秒の間の時系列が、ステップ32中に取得される。例えば15秒の場合、20~200サンプリング/秒のサンプリングレートによって、時系列は300~3000サンプルを含むことができる。
【0045】
続くピーク率決定ステップ33では、前述の時間区間を通じて皮膚コンダクタンス信号のピークを検出し、時間区間を通じたピーク率を特定する。
【0046】
ステップ33のピーク検出サブステップでは、取得された皮膚コンダクタンス信号の時系列における有効なピークの存在を検出するために、テストが実行されうる。一つ以上のピークが検出された場合、その後、ピーク率が特定される。ピークが検出されない場合、ピーク率はゼロであるとみなされる。
【0047】
信号の導関数が時間区間の中の小さな期間で符号を変えた場合、有効なピークが存在すると判断してもよい。信号の導関数は、連続する2つのサンプル値の差として計算されてもよい。また、符号が変化したことを容認する前に2つ以上の連続した符号変化を見ることを必要とする単純なデジタルフィルタを使用することが可能である。
【0048】
有効なピークを確定するテストステップでは、ピークがどのようなときに有効であると見なされるべきかの追加基準を設定することが必要なこともある。最も簡易な形では、そのような基準は、有効な変動と見なすために信号振幅が絶対的なリミットを超えなければならないという事実に基づいてもよい。推奨されるそのようなコンダクタンス基準値は、0.005μS~0.03μSの間、好ましくは0.015μSである。
【0049】
これに代えて又はこれに加えて、信号が実際にある程度の時間持続したピークを形成したという事実に基準を置くことが有利であり得る。その基準はまた、もし最大値が有効であるとみなされる場合、時間の関数としての皮膚コンダクタンス信号値の増加が、ある限界値未満、典型的には20μS/s未満に維持されなければならないという事実に基づくものでもよい。
【0050】
有効なピークを確定するための他の利用可能な条件は、コンダクタンス信号の局所ピークから次の局所谷間への変化分の絶対値が予め定めた値を超えることである。この予め定めた値は0.01μSと0.02μSとの間の値などであり、好ましくは0.015μSである。
【0051】
また、区間の境界すなわち区間の始点や終点に現れる最大値は、有効なピークとはみなされないことが好ましい。
【0052】
これにより、例えば電極が皮膚から外れてしまうなどのエラー状況で発生し得る人為的なもの又はその他のノイズや外乱の原因によってピークの誤検出がされてしまうことを防止する目的が達成される。
【0053】
比較ステップ34では、特定したピーク率と予め定めた基準値とを比較する。
【0054】
予め定めた基準値は、0.00~0.12ピーク/秒の範囲内である。有利には、予め定めた基準値は、0.00~0.06ピーク/秒の範囲内であってもよい。さらに有利には、予め定めた基準値は、0.00~0.03ピーク/秒の範囲内であってもよい。
【0055】
加えて、時間区間を通じた平均ピーク率が特定の時間期間にわたって維持されていることを検出した場合に、出力信号が哺乳類の無痛状態を示すものとして提供されると有利である。その時間期間は、2分~10分の範囲、または3分~6分の範囲、または4分~5分の範囲にある。
【0056】
特定したピーク率が予め定められた基準値より低い場合、確定ステップ35が実行される。確立ステップ35では、哺乳類の無痛状態であることを示す第1の出力信号71が供給される。
【0057】
さもなければ、比較ステップ34において特定したピーク率が予め定められた基準値と等しいか又はそれより大きい場合、測定ステップ32が再度繰返されて処理が続行する。
【0058】
ステップ35で無痛信号が確定した後、終了ステップ36で処理が終了してもよいし、あるいは代わりに測定ステップ32で処理が続行されてもよい。
【0059】
この処理は、操作装置(図示せず)や通信ポート56からのコマンド入力により、いつでも割り込み又は終了させることができる。
【0060】
開示された方法および装置により、ヒトまたは他の哺乳類、特に意識のあるヒトまたは哺乳類ならびに入院中のヒトまたは哺乳類に痛みが無いことを確実に確かめることができる。ヒトの場合、ヒトは必ずしも患者である必要はない。一態様において、本方法及び本装置は、非医療的方法及び非医療的装置であってもよい。一態様において、本方法及び装置は、推定上実質的に健康なヒト、又は自宅で特に治療される軽症のヒトにおいて、痛みがないと推定されることの確認を提供するために特に有用であり得る。一態様において、本方法及び装置は、特に、ヒト又は哺乳類に医療品を投与する目的では使用しないようにしてもよい。
図1
図2
図3