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特許7502482コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法
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  • 特許-コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法 図1
  • 特許-コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20240611BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240611BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240611BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20240611BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20240611BHJP
   B01J 35/53 20240101ALI20240611BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240611BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C01G25/00
B01D53/86 100
B01D53/94 100
B01J23/10 A ZAB
B01J23/34 A
B01J35/53
B01J37/03 Z
B01J37/08
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022581503
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2021114928
(87)【国際公開番号】W WO2022057593
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】202010982980.5
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521180371
【氏名又は名称】河北雄安稀土功能材料創新中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】Rare Earth Functional Materials (Xiong’an) Innovation Center Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.97-1, Jianli Road, Gouxi Village, Chengguan Town, Rongcheng County, Baoding City, Hebei 071700, P.R.China
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 永奇
(72)【発明者】
【氏名】趙 政
(72)【発明者】
【氏名】黄 小衛
(72)【発明者】
【氏名】侯 永可
(72)【発明者】
【氏名】崔 梅生
(72)【発明者】
【氏名】▲ざい▼ 志哲
(72)【発明者】
【氏名】馮 宗玉
(72)【発明者】
【氏名】楊 娟玉
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲やん▼
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134618(JP,A)
【文献】特開2005-314134(JP,A)
【文献】特表2011-520745(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103182302(CN,A)
【文献】特表2022-502330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
B01D 53/73
B01D 53/86 - 53/90
B01D 53/94 - 53/96
B01J 21/00 - 38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物であって、
前記複合酸化物は、酸化イットリウム、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムを含み、前記複合酸化物のシェル層における酸化イットリウムの含有量は記複合酸化物における酸化イットリウムの含有量よりも高く、前記複合酸化物のコは、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物であり、前記複合酸化物のコにおける酸化イットリウムの含有量が、前記複合酸化物における酸化イットリウムの含有量よりも低く、前記複合酸化物のシェル層における酸化イットリウムの含有量は、前記複合酸化物における酸化イットリウムの含有量の1.1~5.0倍であり、記複合酸化物のコにおける酸化ジルコニウムの含有量は、前記複合酸化物における酸化ジルコニウムの含有量よりも高く、前記複合酸化物のシェル層における酸化ジルコニウムの含有量は、前記複合酸化物における酸化ジルコニウムの含有量の5%~40%であり、前記含有量は、モル換算での含有割合(モル%)として計算されることを特徴とする、コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項2】
前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含むことを特徴とする請求項1に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物:
モル換算での含有割合が10%~60%の酸化セリウム、
モル換算での含有割合が20%~70%の酸化ジルコニウム、
モル換算での含有割合が1%~20%の酸化イットリウム、
及びモル換算での含有割合が0%~20%の他の酸化物。
【請求項3】
前記他の酸化物は、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物及びジルコニウム以外の非希土類元素の酸化物のうちの1種以上の酸化物の組み合わせであり、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算での含有割合が0%~18%であり、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物のモル換算での含有割合は0%~100%であることを特徴とする、請求項2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項4】
前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算での含有割合が2%~15%であり、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物のモル換算での含有割合は50%~100%であることを特徴とする、請求項3に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項5】
前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、ハフニウム、アルミニウム、バリウム、マンガン及び銅のうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項4に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項6】
前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、アルミニウム及びマンガンのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項4に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項7】
前記シェル層における酸化イットリウムの含有量は、モル換算での含有割合が前記シェル層全体の元素含有量の1.5%~65%を占め、少なくとも前記複合酸化物における酸化イットリウム全体の含有量よりも高いことを特徴とする、請求項3に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項8】
前記シェル層におけるセリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物及びジルコニウム以外の非希土類元素の酸化物は、モル換算での含有割合が前記シェル層全体の元素含有量の0%~15%を占めることを特徴とする、請求項3に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項9】
前記複合酸化物は、
大気中1000℃で4時間熱処理した後の比表面積が60m/gより大きく、
大気中1100℃で4時間熱処理した後の比表面積が50m/gより大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項10】
前記複合酸化物は、大気中1000℃で4時間焼成した後、静的酸素貯蔵量が≧600μmol O/gであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項11】
前記複合酸化物は、大気中1100℃で4時間焼成した後、静的酸素貯蔵量が≧500μmol O/gであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項12】
調製方法であって、
前記調製方法は段階的沈殿法であり、
(a)第1工程の沈殿:アルカリ性物質とモル換算での含有割合が全セリウムの80~100%のセリウム塩、モル換算での含有割合が全ジルコニウムの60~99%のジルコニウム塩及び任意にセリウム塩及びイットリウム塩以外の少なくとも1種の希土類塩又はジルコニウム塩以外の非希土類塩を含む水溶液とを混合して沈殿させ、少なくともセリウム及びジルコニウムを含む沈殿物スラリーAを得るステップ、
(b)第2工程の沈殿:前記スラリーAにイットリウム塩、残部のジルコニウム塩又はセリウム塩の溶液及びアルカリ性物質を加えて沈殿させ、少なくともジルコニウム、セリウム及びイットリウムを含む沈殿物スラリーBを得るステップ、
(c)前記スラリーBを改質剤に加えて表面改質処理を行い、濾過後にセリウム-ジルコニウム系複合沈殿物Cを得、600℃~950℃で焼成した後、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得るステップを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法。
【請求項13】
前記沈殿物スラリーA又はBをエージング処理することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記希土類塩の水溶液は、希土類硝酸塩溶液、塩化塩溶液、硫酸塩溶液、酢酸塩溶液のうちの1種以上の組み合わせであり、ジルコニウム塩の水溶液は、酸化ジルコニウム硝酸溶液、酸化ジルコニウム硫酸溶液、オキシ塩化ジルコニウム溶液、酢酸ジルコニウム塩のうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、尿素、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記希土類塩水溶液中の配位子イオンとジルコニウムイオンのモル比は0.2~3.0であり、前記配位子イオンは硫酸アニオンであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記配位子イオンとジルコニウムイオンのモル比は0.5~2.5であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記改質剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート系界面活性剤のうちの1種以上を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
触媒システムであって、
前記触媒システムは、請求項1~11のいずれか1項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、び酸化アルミニウム、遷移金属、貴金属、担体のうち1種以上を含むことを特徴とする触媒システム。
【請求項20】
請求項19に記載の触媒システムを備えることを特徴とする、触媒装置。
【請求項21】
自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における、請求項19に記載の触媒システムを有することを特徴とする触媒
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒及びその調製の関連分野に関し、特に、自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理及び触媒燃焼等の分野で使用することができるコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染が注目されており、中国及び世界で自動車の保有台数が年々増加することに伴い、自動車の排ガス汚染が都市の大気汚染の主な要因となっており、環境問題は日増しに深刻化している。セリウム-ジルコニウム酸素貯蔵材料は、自動車排ガスの浄化に欠かせない重要な助触媒材料である。特に国家VI4排出段階では、セリウム-ジルコニウムの酸素貯蔵材料は、高温環境下で十分な比表面積と十分に高い酸素貯蔵・排出能力を有する必要がある。
【0003】
これらの問題を解決するために、特許文献CN103191711Aは、1100℃で3時間焼成した後、20m/gより大きな比表面積を有する耐熱性に優れたセリウム-ジルコニウム複合酸化物を得るために、ジルコニウム塩、セリウム塩及び他の希土類金属塩を共沈させる方法を提案している。しかし、この方法によるセリウム-ジルコニウム酸化物の耐熱性の向上にはまだ限界がある。
【0004】
また、段階的沈殿により焼結防止能力の向上に有利であることが判明し、例えば、特許文献CN101091914Bには、まず、ジルコニウム塩と他のセリウム以外の希土類金属塩を沈殿させ、さらにセリウム塩を沈殿させる方法が提案されている。この方法によって、セリウム-ジルコニウム複合酸化物の高温(1000/3h)での比表面積耐熱性を向上させたが、セリウムは外層で焼結しやすいため、1100℃で3時間熱処理した後の高温での比表面積耐熱性は依然として好ましくない(20~22m/g)。特許文献CN103962120Aは、まず、イットリウム塩の一部とイットリウム以外の他の希土類金属塩及びジルコニウム塩とをアルカリ性物質と接触させ、さらに残部のイットリウム塩又はイットリウムと希土類金属の少なくとも1種の化合物の残部の一部をアルカリ性物質と接触させ、この方法によりセリウム-ジルコニウム複合酸化物の高温(1000/4h)での比表面積耐熱性を向上させることを提案している。しかし、安定したコアシェル構造を形成していないため、かつ表面に希土類金属塩しか存在しないため、外層の焼結抵抗性が低く1100℃で4h熱処理した後の高温での比表面積耐熱性は依然として好ましくない(15~30m/g)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術の上記事情に基づいて、触媒の耐久性を向上させるために、1100℃の高温環境下で十分な熱安定性を維持できるセリウム-ジルコニウム複合酸化物の開発が急務とされている。本発明の目的は、酸化イットリウムに富む外層を有するシェル層を構築することができ、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物が高い耐熱性を示し、特に高温環境で使用しても大きな比表面積を維持することができるコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、酸化イットリウム、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムを含むコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を提供し、ここで、前記複合酸化物のシェル層における酸化イットリウム含有量は、前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量よりも高く、前記複合酸化物のコア層はセリウム-ジルコニウム系複合酸化物である。
【0007】
また、前記複合酸化物のシェル層における酸化イットリウム含有量は、モル換算で前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量の1.1~5.0倍であり、前記コア層における酸化イットリウムの含有量は、前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量よりも低い。前記複合酸化物のシェル層における酸化ジルコニウムの含有量は、全体における酸化ジルコニウムの含有量の5%~40%であり、前記コア層における酸化ジルコニウムの含有量は、前記複合酸化物全体における酸化ジルコニウムの含有量よりも高い。
【0008】
また、前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含む:
モル換算で10%~60%の酸化セリウム、
モル換算で20%~70%の酸化ジルコニウム、
モル換算で1%~20%の酸化イットリウム、
及びモル換算で0%~20%の他の酸化物。
【0009】
また、前記他の酸化物は、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物及びジルコニウム以外の非希土類元素の酸化物のうちの1種以上の酸化物の組み合わせであり、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算で0%~18%であり、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物の含有量は0%~100%である。
【0010】
また、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算で2%~15%であり、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物の含有量は50%~100%である。
【0011】
また、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、ハフニウム、アルミニウム、バリウム、マンガン及び銅のうちの1種以上の組み合わせである。
【0012】
また、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、アルミニウム及びマンガンのうちの1種以上の組み合わせである。
【0013】
また、前記シェル層における酸化イットリウムの含有量は、モル換算で前記シェル層全体の元素含有量の1.5%~65%であり、少なくとも前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量よりも高い。
【0014】
また、前記シェル層におけるセリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物及びジルコニウム以外の非希土類元素の酸化物は、モル換算で前記シェル層全体の元素含有量の0%~15%を占める。
【0015】
また、前記複合酸化物は、
1000℃で4時間熱処理した後の比表面積が60m/gより大きく、
1100℃で4時間熱処理した後の比表面積が50m/gより大きい。
【0016】
また、前記複合酸化物は、1000℃で4時間焼成した後、静的酸素貯蔵量が≧600μmol O/gである。
【0017】
また、前記複合酸化物は、1100℃で4時間焼成した後、静的酸素貯蔵量が≧500μmol O/gである。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、段階的沈殿法であり、以下のステップを含むコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法を提供する。
ステップ(a):第1工程の沈殿は、アルカリ性物質とモルで80~100%のセリウム塩、60~99%のジルコニウム塩及び任意にセリウム塩及びイットリウム塩以外の少なくとも1種の希土類塩又はジルコニウム塩以外の非希土類塩を含む水溶液を混合し、撹拌反応を行い、ろ過、洗浄後、少なくともセリウム及びジルコニウムを含む沈殿物スラリーAを得る。
ステップ(b):第2工程の沈殿は、前記スラリーAにイットリウム塩、ジルコニウム塩又はセリウム塩溶液の残部及びアルカリ性物質を共沈させ、濾過及び洗浄後、水を加えてスラリーを調製し、少なくともジルコニウム、セリウム及びイットリウムを含む沈殿物スラリーBを得る。
ステップ(c):前記スラリーBを改質剤に加えて表面改質処理を行い、濾過後にセリウム-ジルコニウム系複合沈殿物Cを得、600℃~950℃で焼成した後、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得る。
【0019】
また、前記沈殿物スラリーA又はBをエージング処理する。
【0020】
また、前記希土類塩の水溶液は、希土類硝酸塩溶液、塩化塩溶液、硫酸塩溶液、酢酸塩溶液のうちの1種以上の組み合わせである。ジルコニウム塩の水溶液は、酸化ジルコニウム硝酸溶液、酸化ジルコニウム硫酸溶液、オキシ塩化ジルコニウム溶液、酢酸ジルコニウム塩のうちの1種以上の組み合わせである。
【0021】
また、前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、尿素、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種以上の組み合わせである。
【0022】
また、前記希土類塩水溶液中の配位子イオンとジルコニウムイオンのモル比は0.2~3.0であり、前記配位子イオンは硫酸アニオンである。
【0023】
また、前記配位子イオンとジルコニウムイオンのモル比は0.5~2.5である。
【0024】
また、前記改質剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート系界面活性剤のうちの1種以上を含む。
【0025】
また、本発明の第3の態様によれば、上記本発明の第1の態様で提供される前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物、または上記本発明の第2の態様で提供される前記調製方法により調製されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、及び酸化アルミニウム、遷移金属、貴金属、担体のうちの1種以上を含む触媒システムが提供される。
【0026】
本発明の第4の態様によれば、上記本発明の第3の態様で提供される触媒システムを用いて排ガスの浄化を行う触媒装置が提供される。
【0027】
本発明の第5の態様によれば、自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における、上記本発明の第1の態様で提供されるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、上記本発明の第3の態様で提供される触媒システム、又は上記本発明の第4の態様で提供される触媒装置の適用が提供される。
【発明の効果】
【0028】
要約すると、本発明は、コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を用いた触媒システム、前記触媒システムを用いて排ガスの浄化を行う触媒装置、及び自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における前記触媒システム又は触媒装置の適用を提供する。本発明は、段階的沈殿法により前記コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の酸素貯蔵材料を調製し、一方では、セリウム-ジルコニウムの表面にイットリウムとジルコニウムの一部を堆積し、イットリウムイオン(Y3+)を粒界表面上に偏析させるためにイットリウムを後に沈殿させ、それによって、格子表面エネルギーを低下させ、粒界表面にピン止め効果を奏し、粒界表面の移動を困難にして、粒子成長を制御し、固溶体の高温焼結現象を抑制し、したがって、固溶体の熱安定性を改善し、ジルコニウムの一部を後に沈殿させるのは、熱安定性を強化するためである。他方、イットリウムイオン(Y3+、0.90A)は、より小さいイオン半径と電荷量を有するため、酸素空孔の形成を低下させて酸素貯蔵性能を向上させ、異なるガソリン車のTWC触媒の酸素貯蔵材料の酸素貯蔵量に対する使用要求を満たすのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係るコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法を示すフローチャートである
図2】本発明に係るコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の酸素貯蔵材料のxrd回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確かつ明らかにするために、以下に具体的な実施形態を組み合わせて、添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。これらの説明は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。また、以下の説明では、本発明の概念が不要に混同されないように、公知の構造及び技術の説明は省略する。
【0031】
本発明では、以下に示す方法を用いて、各種の物性を測定する。
(1)比表面積
比表面積は、BET法により、比表面積及び細孔径分析器(Quadrasorb SI-KR/4MP)を用いて測定する。まず、サンプルを280℃の温度で1時間連続して真空脱気前処理し、サンプル管を高純度の液体窒素(-196℃)に浸漬して吸着試験を行い、室温(25℃)条件下で脱着試験を行う。静的BET法を用いて測定を行い、P/P0が0.05~0.3の範囲内の点を選択してBET理論により比表面積を計算する。
【0032】
(2)静的酸素貯蔵量(OSC)
酸素パルス法に基づいて、化学吸着計(ChemBET Pulsar TPR/TPD)を用いて酸素貯蔵量を測定する。より具体的には、まずHeでパージして150℃に昇温し、引き続き800℃に昇温した後、10%のH/Arで1時間還元し、He気流の中で反応器の温度を500℃に下げ、残りのHをパージしてきれいにした後、500℃でパルスして高純度のOに入れ、消費されたOピーク面積を統計処理することによって総酸素貯蔵量を計算する。
【0033】
(3)全体成分含有量の試験
全体成分の含有量は、ICP試験(誘導結合プラズマ発光分光計)を用いて、試料原子(又はイオン)が励起された後、その外層電子が励起状態から基底状態に戻るときに、放射遷移によって放出された特徴放射エネルギーに基づいて、各元素に対応する波長で測定する。
【0034】
(4)表面元素含有量の試験
表面元素の含有量はXPS試験を採用し、励起源はX線であり、X線を用いてサンプル表面に作用して光電子を生成する。光電子のエネルギー分布を分析することによって、光電子エネルギースペクトルを得る。光電子スペクトルピークの形状、位置及び強度により材料表面の元素含有量を分析する。
【0035】
本発明の第1の態様は、酸化イットリウム、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムを含むコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を提供する。ここで、前記複合酸化物のシェル層における酸化イットリウムの含有量は、前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量よりも高く、前記複合酸化物のコア層は、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物である。前記複合酸化物のシェル層における酸化イットリウムの含有量は、モル換算で前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量の1.1~5.0倍であり、前記コア層における酸化イットリウムの含有量は、前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量よりも低い。前記複合酸化物のシェル層における酸化ジルコニウム含有量は、全体における酸化ジルコニウムの含有量の5%~40%であり、前記コア層における酸化ジルコニウムの含有量は、前記複合酸化物全体における酸化ジルコニウムの含有量よりも高い。一般的に、酸化物粒子の半径は2~30nmであり、いくつかの実施例によれば、前記酸化物のシェル層の厚さは1~3nmであってもよい。前記構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を構築することにより、前記酸化物は高い耐熱性を示し、特に高温環境で使用しても大きな比表面積を維持することができる。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、前記複合酸化物は酸化物として表される以下のものを含む:モル換算で10%~60%の酸化セリウム、モル換算で20%~70%の酸化ジルコニウム、モル換算で1%~20%の酸化イットリウム、及びモル換算で0%~20%の他の酸化物。また、前記複合酸化物は、以下のような酸化物式:(CeO(ZrO(Y(MOで表すことができ、ここで、0.1≦x≦0.6、0.2≦y≦0.7、0.01≦z≦0.2、Mはセリウム及びイットリウム以外の希土類元素とジルコニウム以外の非希土類金属元素のうちの1種以上の組み合わせであり、0≦n≦0.2、mはM元素の選択に基づいて決定されてもよい。
【0037】
前記他の酸化物は、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物及びジルコニウム以外の非希土類金属元素の酸化物のうちの1種以上の酸化物の組み合わせであり、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量は、モル換算で0%~18%であり、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物の含有量は0%~100%である。いくつかの実施例によれば、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算で2%~15%であり、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物の含有量は50%~100%である。
【0038】
前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、ハフニウム、アルミニウム、バリウム、マンガン及び銅のうちの1種以上の組み合わせである。いくつかの実施例によれば、前記他の酸化物において、セリウム及びイットリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、アルミニウム及びマンガンのうちの1種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
前記シェル層における酸化イットリウムの含有量は、モル換算で前記シェル層全体の1.5%~65%を占め、少なくとも前記複合酸化物全体における酸化イットリウムの含有量よりも高く、前記シェル層におけるセリウム及びイットリウム以外の希土類元素の酸化物及びジルコニウム以外の非希土類元素の酸化物の含有量は、前記シェル層全体の0%~15%を占める。
【0040】
前記複合酸化物は、1000℃で4時間熱処理した後の比表面積が60m/gより大きく、1100℃で4時間熱処理した後の比表面積が50m/gより大きい。前記複合酸化物は、1000℃で4時間焼成した後、酸素貯蔵量が≧600μmol O/gである。前記複合酸化物は、1100℃で4時間焼成した後、酸素貯蔵量が≧500μmol O/gである。従って、本発明の前記実施例で提供される複合酸化物は、比較的良好な比表面積特性と静的酸素貯蔵量を有することが分かる。
【0041】
本発明の第2の態様によれば、段階的沈殿法であるコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法が提供される。前記方法を示すフロー図は図1に示しており、図1において、混合塩溶液Pは、最終生成物を構成するために必要な化学量論の80~100%のセリウム塩、60~99%のジルコニウム塩及び任意にセリウム塩及びイットリウム塩以外の少なくとも1種の希土類塩又はジルコニウム塩以外の非希土類金属塩の水溶液を表し、混合塩溶液Qは、イットリウム塩、残り割合のジルコニウム塩及びセリウム塩の水溶液を表す。前記調製方法は、以下のようなステップを含む。
【0042】
最終生成物を構成するために必要な化学量論の80~100%のセリウム塩、60~99%のジルコニウム塩及び任意にセリウム塩及びイットリウム塩以外の少なくとも1種の希土類塩又はジルコニウム塩以外の非希土類金属塩の水溶液であって、ここで、前記水溶液濃度は0.1~5mol/L、好ましくは0.2~2.0mol/Lである。
【0043】
構成されたジルコニウム塩、セリウム塩及び任意にセリウム塩及びイットリウム塩以外の少なくとも1種の希土類塩又はジルコニウム塩以外の非希土類金属塩の水溶液の混合水溶液を、アルカリ性物質と接触させて沈殿させ、濾過、洗浄及びパルプ化後に処理を行う。後処理は、エージング又は結晶化のうちの1ステップ又は2ステップを含み、少なくともセリウム及びジルコニウムを含む沈殿物スラリーAを得、前記スラリーAの濃度は40~60%、好ましくは45~55%である。
【0044】
前記スラリーAにイットリウム塩、残り割合のジルコニウム塩及びセリウム塩及び水酸化アンモニウムを加えて第2工程の沈殿反応を行い、濾過、洗浄及び分散後に後処理を行う。後処理は、エージング又は結晶化のうちの1ステップ又は2ステップを含み、少なくともジルコニウム、セリウム及びイットリウムを含む沈殿物スラリーBを得、前記スラリーBの濃度は40~70%、好ましくは45~60%である。
【0045】
前記スラリーBを加熱し、そこに改質剤を加えて、濾過した後セリウム-ジルコニウム系複合沈殿物Cを得、任意の乾燥後、焼成、粉砕した後に前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得る。
【0046】
本発明の前記実施例において、段階的沈殿法により前記複合酸化物を調製することにより、外層が酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムであるシェル層構造を構築することができ、一方、イットリウムイオン(Y3+)を粒界表面に偏析させ、格子表面エネルギーを低下させ、粒界表面にピン止め効果を奏し、粒界表面の移動を困難にし、粒子の成長を制御し、固溶体の高温焼結現象を抑制することによって、固溶体の熱安定性を向上させる。ジルコニウムの一部を後に沈殿させるのは、熱安定性を促進するためである。他方、イットリウムイオン(Y3+、0.90A)は、より小さいイオン半径と電荷量を有し、さらに格子酸素の拡散に有利となり酸素貯蔵の性能を向上させる。
【0047】
また、前記希土類塩の水溶液は、希土類硝酸塩、塩化塩、硫酸塩、酢酸塩のうちの1種以上の組み合わせである。ジルコニウム塩の水溶液は、酸化ジルコニウム硝酸溶液、オキシ塩化ジルコニウム溶液、酢酸ジルコニウム塩のうちの1種以上の組み合わせである。前記希土類塩の水溶液は、ジルコニウム元素1モル当たり0.2~3モルの配位子イオン、好ましくは硫酸アニオン(SO 2-)を含むことができる。ジルコニウムイオンに対する前記配位子イオンのモル数は0.5~2.5の範囲であり、希土類塩の水溶液に硫酸又は硫酸塩を加えることにより前記硫酸アニオン(SO 2-)を提供することができる。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、尿素、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種以上の組み合わせであってよい。ここで、沈殿反応における前記アルカリ性物質の量は、全てのカチオンの最適な沈殿を提供するために化学量論的に過剰に使用することができる。一般的に、十分な量は、溶液のpHが8以上であり、好ましい量はpHが8~12の間であるような量である。沈殿反応は、通常、5℃~70℃の間の温度で行われ、この温度は、好ましくは15℃~60℃の範囲である。使用される撹拌速度は50~500rpmの間であり、時間は通常1時間~3時間の間である。前記改質剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート系界面活性剤のうちの1種以上を含む。
【0049】
また、前記焼成条件は、得られたセリウム-ジルコニウム系複合沈殿物Cを600℃~950℃で1時間以上、好ましくは650℃~900℃で3時間以上焼成する。加熱エージング処理する場合、通常、30℃~80℃、好ましくは25℃~90℃の範囲の温度で行われる。他の加熱後処理する場合、通常、60℃~180℃、好ましくは40℃~200℃の範囲の温度で行われる。使用される撹拌速度は50~500rpmであり、時間は通常1時間~5時間である。なお、セリウム塩にCe(III)が含まれる場合、過酸化水素水溶液などの酸化剤をエージング処理ステップに加えてもよい。
【0050】
本発明の第3の態様によれば、上記第1の実施例で提供される前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物、または上記第2の実施例で提供される前記調製方法により調製されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、及び酸化アルミニウム、遷移金属、貴金属、担体のうちの1種以上を含む触媒システムが提供される。
【0051】
本発明の第4の態様によれば、上記第3の態様により提供される触媒システムを用いて排ガスの浄化を行う触媒装置が提供される。
【0052】
本発明の第5の態様によれば、自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における、上記第1の態様により提供されるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、上記第3の態様により提供される触媒システム、または上記第4の態様により提供される触媒装置の適用が提供される。
【0053】
以下、本発明を具体的な実施例によりさらに説明する。
【0054】
<比較例1>
本比較例は、酸化物のモル分率で、対応する割合が40%、50%、5%、5%であるセリウム、ジルコニウム、イットリウム及びランタンに基づく複合酸化物の調製に関する。
【0055】
簡単な調製プロセスでは、塩化セリウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化イットリウム及び塩化ランタンを含む混合液を予め構成する。混合液を化学量論比の水酸化ナトリウムに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。得られた濾過ケーキをスラリー化して、ポリエチレングリコールを加えて加熱し、撹拌した後、濾過した。
【0056】
具体的な調製プロセスでは、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を101.24mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを126.55mL、濃度が1.5mol/LのYClを25.31mL、濃度が1.5mol/LのLaClを25.31mL及び濃度が2.1mol/LのHSOを83.39mL含む混合液を予め構成し、混合液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液536.31mLに加え沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、洗浄後の沈殿物スラリーを55℃に加熱して2時間処理した。濾過洗浄後、ポリエチレングリコールを添加し、オートクレーブに入れ、120℃で2時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、850℃のマッフル炉で4時間焼成した後、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0057】
<比較例2>
本比較例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム、ランタン及びアルミニウムの複合酸化物を、酸化物のモル分率に基づいて40%、40%、5%、7.5%及び7.5%の対応する比率で調製することに関する。
【0058】
簡単な調製プロセスでは、塩化セリウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化イットリウム、塩化ランタン、塩化アルミニウムを含む混合液を予め準備する。この混合液を水酸化ナトリウムに化学量論比で添加して沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。得られた濾過ケーキをスラリー化した後、これに臭化セチルトリメチルアンモニウム( CTAB )を加えて加熱し、撹拌した後、濾過した。
【0059】
具体的には、1.5mol/Lの濃度のCeCl3溶液99.05mL、1.5mol/Lの濃度のZrOCl2 99.06mL、1.5mol/Lの濃度のYCl3 24.76mL、1.5mol/Lの濃度のLaCl3 37.15mL、1.5mol/Lの濃度のA1C13 37.15mL及び2.1mol/L H2 SO4の濃度の211.50mLの混合液を予め用意しておき、2.69mol/Lの濃度のNaOH溶液550.38mLに混合液を加えて沈殿させた。濾過洗浄後、CTABを加えてオートクレーブに入れ、150℃で2時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、マッフル炉にて950℃で3時間焼成し、取り出し、粉砕し、1000℃、1100℃で4時間焼成した。
【0060】
<実施例1>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウムが、酸化物のモル分率で10%、70%、20%である複合酸化物の調製に関する。
【0061】
簡単な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種は、90%割合のオキシ塩化ジルコニウムと90%割合の塩化セリウムとを含む混合液S1であり、第2種は、塩化イットリウムと残り割合がオキシ塩化ジルコニウムと塩化セリウムの原液S2である。第1種の混合液を化学量論比の水酸化ナトリウムに加え第1工程の沈殿を行った。その後、そこに第2種の原液である塩化イットリウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化セリウム及び水酸化ナトリウムを加えて第2工程の沈殿を行い、沈殿物を濾過・洗浄し、得られた濾過ケーキをスラリー化してオレイン酸を加えて加熱し、撹拌した後、濾過した。
【0062】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を24.22mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを169.55mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液104.56mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを107.64mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を2.69mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液18.83mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液640.79mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNaOHを加えた。沈殿後、55℃に加熱し、2時間保持した。濾過洗浄後、オレイン酸を加えてオートクレーブに入れ、120℃で2時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、850℃のマッフル炉で4時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0063】
<実施例2>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びランタンが、酸化物のモル分率で20%、59%、3%及び18%である複合酸化物の調製に関する。
【0064】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を37.09mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを129.93mL、濃度が1.5mol/LのLaClを83.45mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液を197.13mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを13.90mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を9.27mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液を6.83mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液526.95mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために化学量論のNaOHを加えた。濾過洗浄後、ヘキサン酸を添加しオートクレーブに入れ、150℃で2時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、マッフル炉にて800℃で3時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0065】
<実施例3>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びランタンが、酸化物のモル分率で40%、50%、5%及び5%である複合酸化物の調製に関する。
【0066】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を91.11mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを120.22mL、濃度が1.5mol/LのLaClを25.31mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液を90.39mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを25.31mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を10.12mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液を6.32mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液536.31mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNaOHを加えた。沈殿後、55℃に加熱して2時間保持した。濾過洗浄後、ポリエチレングリコールを添加し、オートクレーブに入れ、120℃で6時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、850℃のマッフル炉で4時間焼成した後、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。本実施例3において、段階的沈殿により調製されたC0.400.500.50.5のフレッシュ及びエージング(1000℃×4h及び1100℃×4h)サンプルのXRDパターンを図2に示す。図から、この複合酸化物はフレッシュな状態でもエージング後の状態でも、四方相が安定した結晶構造を有しており、高温でも相分離が起こらず、均一な相構造を維持していることが分かる。
【0067】
<実施例4>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びランタンが、酸化物のモル分率で50%、30%、10%及び10%である複合酸化物の調製に関する。
【0068】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を101.01mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを63.97mL、濃度が1.5mol/LのLaClを44.89mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液120.25mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのY(NOを44.89mL、濃度が1.5mol/LのCe(NO溶液を11.22mL及び濃度が1.5mol/LのZrO(NO溶液3.36mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液488.18mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。このスラリーを60℃に加熱して3時間保持した。濾過洗浄後、ポリエチレングリコールを添加しオートクレーブに入れ、98℃で1.5時間処理した。第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNHOHを加えた。この懸濁液を濾過し、乾燥後、800℃のマッフル炉で6時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0069】
<実施例5>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びランタンが、酸化物のモル分率で60%、20%、18%及び2%である複合酸化物の調製に関する。
【0070】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を137.08mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを45.94mL、濃度が1.5mol/LのLaClを9.28mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液83.14mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのY(NOを82.24mL及び濃度が1.5mol/LのZrO(NO溶液を0.46mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液484.12mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、このスラリーを70℃に加熱して3時間保持した。ろ過洗浄後、オレイン酸を添加しオートクレーブに入れ、150℃で6時間処理した。第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに導入し、イットリウムイオンとジルコニウムイオンとを表面に堆積させるために、化学量論のNHOHを加えた。この懸濁液を濾過し、乾燥後、900℃のマッフル炉で3時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0071】
<実施例6>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びプラセオジムが、酸化物のモル分率で40%、40%、1%及び19%である複合酸化物の調製に関する。
【0072】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液を40.70mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを48.33mL、濃度が1.5mol/LのPrClを145.00mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液16.34mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのY(NOを2.54mL、濃度が1.5mol/LのCe(NH(NO溶液を10.17mL及び濃度が1.5mol/LのZrO(NO溶液2.54mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液445.43mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。カプロン酸を加えてオートクレーブに入れ110℃で5時間処理し,第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNHOHを加えた。この懸濁液を濾過し、乾燥後、850℃のマッフル炉で3時間焼成した後、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0073】
<実施例7>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びプラセオジムが、酸化物のモル分率で40%、40%、15%及び5%である複合酸化物の調製に関する。
【0074】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液41.60mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを46.23mL、濃度が1.5mol/LのPrClを131.76mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液83.02mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを34.67mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液4.62mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液2.31mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液458.83mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNaOHを加えた。沈殿後、55℃に加熱し2時間保持した。濾過洗浄後、オレイン酸を添加し98℃に加熱して1時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、850℃のマッフル炉で4時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0075】
<実施例8>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びプラセオジムが、酸化物のモル分率で40%、40%、18%及び2%である複合酸化物の調製に関する。
【0076】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液89.28mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを53.56mL、濃度が1.5mol/LのPrClを26.78mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液158.77mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYCl溶液80.35mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液35.71mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液527.71mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに15分以内に導入し、イットリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるため、化学量論のNaOHを加えた。沈殿後、80℃に加熱して4時間保持した。濾過洗浄後、ポリエチレングリコールを添加してオートクレーブに入れ、120℃に加熱して6時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、800℃のマッフル炉で5時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0077】
<実施例9>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びネオジムが、酸化物のモル分率で40%、40%、10%及び10%である複合酸化物の調製に関する。
【0078】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液82.58mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを91.76mL、濃度が1.5mol/LのNdClを45.88mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液165.54mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを45.88mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液9.17mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液4.58mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液496.32mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに15分以内に導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNaOHを加えた。濾過洗浄後、ヘキサン酸を添加してオートクレーブに入れ、150℃に加熱して6時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、700℃のマッフル炉で6時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0079】
<実施例10>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム及びアルミニウムが、酸化物のモル分率で30%、40%、10%及び20%である複合酸化物の調製に関する。
【0080】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液75.05mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを105.63mL、濃度が1.5mol/LのAlClを111.19mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液109.42mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを55.59mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液8.33mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液5.55mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液652.56mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに15分以内に導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNaOHを加えた。沈殿後、60℃に加熱して3時間保持した。濾過洗浄後、ラウリン酸を添加してオートクレーブに入れ、180℃に加熱して6時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、750℃のマッフル炉で5時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0081】
<実施例11>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム、ランタン及びアルミニウムが、酸化物のモル分率で40%、40%、5%及び、7.5%及び7.5%である複合酸化物の調製に関する。
【0082】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液89.15mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを94.11mL、濃度が1.5mol/LのLaClを37.15mL、濃度が1.5mol/LのAlClを37.15mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液70.76mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを24.76mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液9.90mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液4.95mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液535.83mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに15分以内に導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNaOHを加えた。濾過洗浄後、CTABを添加してオートクレーブに入れ、150℃で2時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、950℃のマッフル炉で3時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0083】
<実施例12>
本実施例は、セリウム、ジルコニウム、イットリウム、ランタン及びマンガンが、酸化物のモル分率で40%、40%、4%及び、15.5%及び0.5%である複合酸化物の調製に関する。
【0084】
具体的な調製プロセスでは、2種類の塩溶液を予め構成し、第1種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液71.72mL、濃度が1.5mol/LのZrOClを80.69mL、濃度が1.5mol/LのLaClを69.48mL、濃度が1.5mol/LのMnClを2.24mL及び濃度が2.1mol/LのHSO溶液64.04mLで構成し、第2種の塩溶液は、濃度が1.5mol/LのYClを17.93mL、濃度が1.5mol/LのCeCl溶液17.93mL及び濃度が1.5mol/LのZrOCl溶液8.96mLで構成した。まず、第1種の塩溶液を濃度が2.69mol/LのNaOH溶液499.60mLに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄した。その後、第2種の混合塩溶液を洗浄した沈殿物スラリーに15分以内に導入し、イットリウムイオン、セリウムイオン及びジルコニウムイオンを表面に堆積させるために、化学量論のNaOHを加えた。沈殿後、60℃に加熱して1時間保持した。濾過洗浄後、ポリエチレングリコールを添加してオートクレーブに入れ、120℃に加熱して6時間処理した。この懸濁液を濾過し、乾燥後、860℃のマッフル炉で4時間焼成し、取出して粉砕し、この複合酸化物を1000℃及び1100℃で4時間焼成して生成物を得た。
【0085】
以上の比較例及び実施例における各組成物の酸化物含有量(モル%)は、表1に示すとおりで、各組成物の比表面積及び酸素貯蔵性能のデータは、表2に示すとおりである。各組成物におけるY、ZrO、CeO及びMO(セリウムとイットリウム以外の希土類元素の酸化物、及びジルコニウム以外の非希土類元素の酸化物)のシェル層表面及び全体の元素に対する割合データは、表3に示すとおりである。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
本発明に係る比較例及び実施例には、高セリウム、高ジルコニウム及び中セリウム中ジルコニウム等の異なる組成のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物が含まれており、三元、四元及び五元の異なる配合のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物も含まれており、基本的に請求項における元素組成範囲と種類をカバーする。比較例と実施例を比較することにより、セリウム-ジルコニウムの表面にイットリウム、1000℃×4hと1100℃×4hエージングサンプルの比表面積及び酸素貯蔵量は効果的に向上することが分かる。主に以下の2つの方面から体現している。
【0090】
高セリウム、高ジルコニウム及び中セリウム中ジルコニウム等の異なる組成のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の比較例と実施例を比較すると、本特許で提案されている段階的沈殿方法により調製されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物は、熱安定性と酸素貯蔵性能の方面でより優れていることが分かる。例えば、比較例1では、共沈殿を用いて調製したCe0.40Zr0.500.05La0.05複合酸化物を1100℃で4時間焼成した後、比表面積は31.6m/gであり、酸素貯蔵量は373μmol O/gであった。実施例3では、段階的沈殿(10%のCe、5%のZr及び全てのY段階的後沈殿)を用いて調製したCe0.40Zr0.500.05La0.05複合酸化物を1100℃で4時間焼成した後、比表面積は57.6m/gに上昇し、酸素貯蔵量は591μmol O/gに向上した。例えば、比較例2では、共沈殿を用いて調製したCe0.40Zr0.0.05La0.0A10.075複合酸化物を1100℃で4時間焼成した後、比表面積は35.3m/gで、酸素貯蔵量は351μmol O/gであった。実施例11では、段階的沈殿(10%のCe、5%のZr及び全てのY段階的後沈殿)を用いて調製したCe0.40Zr0.0.05La0.0A10.075複合酸化物を1100℃で4時間焼成した後、比表面積は53.3m/gに向上し、酸素貯蔵量は510μmol O/gに向上した。したがって、以上の結果から、段階的沈殿法を用いて製造されたセリウムジルコニウム系複合酸化物エージング試料の比表面積及び酸素貯蔵量は、従来の共沈により製造されたセリウムジルコニウム系複合酸化物よりも優れていることが分かった。
【0091】
要約すると、本発明は、コアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を用いた触媒システム、前記触媒システムを用いて排ガスの浄化を行う触媒装置、及び自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における前記触媒システム又は触媒装置の適用を提供する。本発明は、段階的沈殿法によりこのコアシェル構造のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の酸素貯蔵材料を調製し、一方では、ジルコニウムの表面にイットリウムと一部のジルコニウム及びセリウムを沈殿させ、イットリウムを後に沈殿させるのは、イットリウムイオン(Y3+)を粒界表面に偏析させ、それにより、格子表面エネルギーを低下させ、粒界表面にピン止め効果を奏し、粒界表面の移動を困難にし、粒子成長を制御し、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物の高温焼結現象を抑制するためである。従って、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物の熱安定性を改善し、ジルコニウムの一部を後に沈殿させるのは、熱安定性を強化するためであり。他方、イットリウムイオン(Y3+、0.90A)は、イオン半径と電荷量がより小さく、酸素貯蔵材料の酸素貯蔵量に対する異なる触媒の使用要求を満たすため、酸素空孔の形成を低下させることにより有利である。
【0092】
本発明の上記具体的な実施形態は、本発明の原理を例示的に説明又は解釈するためにのみ使用され、本発明の制限を構成するものではないことを理解されたい。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われる修正、等価置換、改良等は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。さらに、本発明に添付された請求項は、添付された特許請求の範囲及び境界、又はその範囲及び境界の均等な形態内に含まれるすべての変更及び修正例を包含することを目的とする。
図1
図2