(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】雪下ろし装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/16 20060101AFI20240611BHJP
E04D 13/00 20060101ALI20240611BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20240611BHJP
E04D 13/10 20060101ALI20240611BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240611BHJP
H02S 20/10 20140101ALI20240611BHJP
【FI】
E04H9/16 E
E04D13/00 A
E04D13/00 J
E04D13/18
E04D13/10 Z
H02S20/23 B
H02S20/10 S
(21)【出願番号】P 2023017957
(22)【出願日】2023-01-23
【審査請求日】2023-05-22
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520083312
【氏名又は名称】牧野 文則
(72)【発明者】
【氏名】牧野 文則
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224570(JP,A)
【文献】特開2018-066133(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178609(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/16
E04D 13/00、13/10、13/18
H02S 20/00-20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜を有する家屋の屋根に設置される動作板であって、平滑な表面を有する第1及び第2の動作板からなる動作板ユニットと、該動作板ユニットの前記第1の動作板を移動させる方向とは反対の方向に前記第2の動作板を動作させる第1の駆動手段と、前記屋根に積もる雪が落下しないように雪止めする雪止め手段と、雪下しの際は前記雪止め手段を動作させ雪が落下するよう駆動する第2の駆動手段からなる雪下し装置であって、前記第1及び第2の動作板は太陽光発電パネルであることを特徴とする雪下し装置。
【請求項2】
前記動作板に取り付けられた雪止め手段格納場所蓋と
、該雪止め手段格納場所蓋に取り付けられた雪引っ掛け突起とをさらに備え、
前記雪引っ掛け突起は、前記雪下しの際
前記動作板が下降運動するときに前記動作板の上に乗った積雪を引っ掛けて下方向に引きずり落とすことを特徴とする請求項1記載の雪下ろし装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豪雪地帯における屋根の雪下ろし作業を、安全かつ効率的に行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豪雪地帯における屋根の雪下ろし作業は、現在大半が人力で行われている。そのため作業中の事故で毎年何人かの死亡者が発生している。また屋根からの落雪による事故も発生している。尊い人命の損失が積雪地帯では当たり前のように宿命とされている。また高齢化により作業できる人員も減少し今後雪下ろし作業がさらに負担になる。雪下ろしを容易にするための考案は過去にも多数あるが以下の理由で現実的でない。
▲1▼ 家屋の新築時でないと設置できない。
▲2▼ 大規模で費用負担が大きい。
▲3▼ ランニングコストが多大になる。
【先行技術文献】
【文献】特開第2020-165301号公報
【文献】特許第5724052号公報
【文献】特開第2007-303187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
人力で行われている雪下ろし作業を安全かつ効率的に行う。非作動時においては落雪事故防止も考慮する必要がある。
【0004】
導入時、それによる建屋および屋根の外観悪化を最小限にする必要がある。
【0005】
すでに建築済みの建屋においても設置が容易でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、傾斜を有する家屋の屋根に設置される動作板であって、平滑な表面を有する第1及び第2の動作板からなる動作板ユニットと、該動作板ユニットの前記第1の動作板を移動させる方向とは反対の方向に前記第2の動作板を動作させる第1の駆動手段と、前記屋根に積もる雪が落下しないように雪止めする雪止め手段と、雪下しの際は前記雪止め手段を動作させ雪が落下するよう駆動する第2の駆動手段からなる雪下し装置であって、前記第1及び第2の動作板は太陽光発電パネルであることを特徴とする。
【0007】
また請求項2に記載の発明は、前記動作板に取り付けられた雪止め手段格納場所蓋と、該雪止め手段格納場所蓋に取り付けられた雪引っ掛け突起とをさらに備え、前記雪引っ掛け突起は、前記雪下しの際前記動作板が下降運動するときに前記動作板の上に乗った積雪を引っ掛けて下方向に引きずり落とすことを特徴とする請求項1記載の雪下し装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明による効果は、傾斜を有する家屋の屋根に設置される動作板であって、平滑な表面を有する第1及び第2の動作板からなる動作板ユニットと、該動作板ユニットの前 記第1の動作板を移動させる方向とは反対の方向に前記第2の動作板を動作させる第1の駆動手段と、前記屋根に積もる雪が落下しないように雪止めする雪止め手段と、雪下しの際は前記雪止め手段を動作させ雪が落下するよう駆動する第2の駆動手段からなる雪下し装置であって、前記第1及び第2の動作板は太陽光発電パネルである雪下し装置としたので、 作業時に人が屋根の上に登る必要はなく、作動時には周囲の状況を確認してから雪下しが できるので安全である。また、非作動時においては雪止め手段が立ち上がった状態になり落雪事故防止ができる。
【0009】
さらに家屋の新築時でなくても設置可能であり、後付けできるので費用負担が少ない。また雪下しの時のみ動作させるのでランニングコストが少ない等の効果がある。
【0010】
また、建屋の外観悪化については、表面を構成するのは一般的な太陽光発電パネルである ため太陽光発電を導入している家屋と同様の外観となるため違和感がない。
【0011】
また、施工においては太陽光発電パネルを設置するフレームに本装置の稼働装置を追加する工事方法をとることにより、既存の太陽光発電パネル設置済建物でも設置可能である。 また非積雪期間では太陽光発電による売電収入も期待できる。 また請求項2に記載の発明は、請求項 1の発明の効果に加え、前記動作板に取り付けられた雪止め手段格納場所蓋と、該雪止め手段格納場所蓋に取り付けられた雪引っ掛け突起とをさらに備えているので、前記雪引っ掛け突起は、前記雪下しの際前記動作板が下降運動するときに前記動作板の上に乗った積雪を引っ掛けて下方向に引きずり落とすことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】動作時基本ユニットの片側(動作板A)が前進(下降)しもう片方(動作板B)が後退(上昇)している状態を示した説明図である。
【
図3】
図2と逆の動作の状態を示した説明図である。
【
図4】建屋に基本ユニットを複数設置した施工後の状態の説明図である。装置は静止状態であり、雪止め手段が立ち上がっている。屋根の尾根部分は動作板カバーを設置している。
【
図5】装置を作動させたときの屋根全体の状態を示す説明図である。雪止め手段は格納され、隣り合う動作板が交互に前後に移動する。
【
図6】動作板(太陽光発電パネル)を作動させる装置の説明図である。チェーン駆動の例を示している。
【
図7】動作板(太陽光発電パネル)を作動させる装置の説明する斜視図である。チェーン駆動の例を示している。
【
図8】雪止め手段を作動させる装置の説明図である。
【
図9】装置が静止し雪止め手段が立ち上がっている状態の雪止め手段格納場所蓋についての説明図である。
【
図10】装置が作動し雪止め手段が格納されている状態の雪止め手段格納場所蓋についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[
図1]平滑な板(動作板AB)を2枚一組(基本ユニット)とする。それを屋根の傾斜に沿うように設置する。図では基本ユニットを2組上下に組み合わせ、その間に雪止め手段を組み込んでいる。図は静止状態を表しており、落雪防止のための雪止め手段が立ち上がっている。動作板の寸法は、実際の施工では異なることになる可能性もあるが、例としてこの図および全体を通して一般的な住宅に用いられる1間(約180cm)を基準に考えており、縦=180cm・横=45cmを想定している。1基本ユニットでは縦=180cm・横=90cmとなる。
【0014】
[
図2][
図3]動作板A(請求項1における第1動作板)と動作板B(請求項1における第2動作板)を交互に連動して前後に動作させる。動作板が稼働するときは、雪止め手段は格納する。図では基本ユニットを2組上下に組み合わせている。複数の動作板を組み合わせたときは、相互に動作を連係し、屋根全体の動作板の動きを制御する。
【0015】
この装置は雪がスキー板のように平滑な表面を持つものと接している場合滑りやすく、積雪状態ではさらに自重で滑落しやすくなる性質を有していることを利用している。
【0016】
基本動作として、動作板Aが後退(上昇)作動するときは、動作板Bは連動して前進(下降)する。動作板Aが前進(下降)作動するときは、動作板Bは連動して後退(上昇)する。
【0017】
動作板が後退(上昇)作動するときは、積雪状態の雪はその場にとどまろうとするため上方向に移動せず、動作板のみが後退(上昇)する。前進(下降)作動するときは動作板の上に乗ったまま行程距離の分移動し軒方向に移動する。
【0018】
動作板の作動行程距離は30cm程度で良い。装置が作動した場合は、積雪の自重で起動後すぐに滑り落ちることが実験でも確認済みであるが、雪の状態が乾燥雪等自重で滑り落ちにくいような積雪状態の場合においても、ある程度固まった状態なので、動作板が後退(上昇)時は尾根方向には移動せずその場にとどまり、前進(下降)するときのみ動作板に設けられた雪止め手段格納場所蓋(
図9(B))の雪引っ掛け突起もあり作動行程距離分移動する。
【0019】
あくまでも例であるが、3mの距離を移動するのは10往復させれば良い。時間的には2秒/往復とすると作動時間は20秒となる。動作板の寸法は設置状態で異なるため作動時間は異なる。実際に動作させるときは周囲の安全を確認してから起動し、雪下ろしが完了したことを確認してから装置を停止することになる。動作時間は短く消費電力もごくわずかである。
【0020】
この仕組みの有効性を確認するため基本ユニットの簡単な実験装置を作成し、実証実験を実施した。
実施日=2022年3月12日 場所=愛知県茶臼山高原スキー場 天候=晴れ
雪の状態=湿潤
結果は傾斜角10度においても雪が滑り落ち、本発明の効果を確認した。
【0021】
[
図4]基本ユニットを複数組み合わせ屋根全体、もしくは雪下ろしが必要な部分を覆う。平滑な板で作成するため、ある程度積雪があると自重で滑り落ちる可能性がある。その際に軒下に人がいる場合重大な事故になる。それを防ぐため雪止め手段を備え、静止時は立ち上がった状態にしておき、装置が作動するときは雪が滑る落ちる抵抗にならないように格納する。
【0022】
屋根の尾根部分はカバーで覆う。これは動作板が隣り合う板同士で連動して交互に前進(下降)後退(上昇)運動するので、尾根部分は移動スペースになる。そこに積雪があると動作の妨げになるためカバーが必要になる。動作板は作動時このカバーの下に入るこむ形になる。尾根カバーの積雪は、この装置が作動する範囲から外れ積雪が残る可能性があるが、雪下ろしの目的として、全体の積雪量に対しては影響のない量と考える。
【0023】
[
図5]屋根全体で装置が作動している状態を表している。雪止め手段は格納され、隣り合う動作板が交互に前後に移動する。
【0024】
[
図6]動作板(太陽光発電パネル)を作動させる装置の説明図である。チェーン駆動の例を示している。駆動装置は各動作板に実装する。
平滑な板は樹脂製・金属製等も考えられるが、本発明では太陽光発電パネル(表面はガラス製)を使用する方法をとっている。これは表面がガラス製のため雪が滑りやすいことに加え、住宅に使用することを考えると外観も重視する必要があり、太陽光発電パネルであれば既存の住宅の屋根に設置しても違和感が少ない。
【0025】
設置においては太陽光発電パネルの取り付け工事と同様に屋根に設置用フレームを取り付け固定する。その上に太陽光発電パネルを乗せる駆動レール(第7図)や駆動装置である駆動用のモーターを取り付ける。その駆動装置に接合部品を介して太陽光発電パネルを取り付ける。また、板を前進(下降)後退(上昇)駆動する方法は、チェーン方式・ワイヤー方式・ロッド方式・ギヤ方式・油圧方式等が考えられるが、製品化した際には最も簡便で故障が少ない方法を採用する。
【0026】
動作板(太陽光発電パネル)の間に雪止め手段を設置する。雪止め手段は設置用フレームに取り付け、雪止め手段駆動モーターで上下させる。[
図6]では装置は停止状態で雪止め手段は立ち上がっている。なお雪止め手段が格納される際は、雪の滑落の抵抗にならないように雪止め手段格納場所を蓋する構造となっているが、図が煩雑になるため[
図9]以降で説明し、ここでは省略している。
【0027】
[
図7]は動作板(太陽光発電パネル)を作動させる装置の説明する斜視図である。チェーン駆動の例を示している。動作板A・Bそれぞれにチェーン駆動で交互作動させる。動作板Aが後退(上昇)作動するときは、動作板Bは前進(下降)する。動作板Aが前進(下降)作動するときは、動作板Bは後退(上昇)する。
駆動レールは設置フレームの上に固定する構造となっている。
【0028】
動作板の駆動装置である駆動用モーターでチェーンを駆動し、そのチェーンに接合部品を介して取り付けられた太陽光発電パネルを動作させる。装置が乗る駆動レールは上部をローラー等でスライドする構造とし、下部は設置用フレーム(第6図)に固定する。
なお、本装置の例では設置用フレームに雪止め手段を取り付ける方法をとっている。雪止め手段は動作板と動作板の間の隙間から飛び出すかたちになる。
【0029】
[
図8]は雪止め手段の駆動方法を説明している。静止状態では雪止め手段は動作板(太陽光発電パネル)の間に立ち上がる構造とし、装置の動作時には格納される。雪止め手段には板状の歯車(ラック)が取り付けられており、駆動用モーターに取り付けられた円筒歯車(ピニオン)で駆動する。雪止め手段および駆動装置は設置用フレームに取り付けられ、動作板とともに前後に動作することはなく、上下運動のみ行う。
【0030】
[
図8](A)は雪止め手段が立ち上がった状態を示す。太陽光発電パネルより上に雪止め手段があり、雪の滑落を防止している。
【0031】
[
図8](B)は動作板(太陽光発電パネル)が作動している状態で、円筒歯車(ピニオン)が駆動用モーターで回転し、雪止め手段を動作板(太陽光発電パネル)下に格納している。格納時は雪止め手段格納場所には蓋をし、雪止め手段格納場所の溝が雪の滑落の抵抗とならないようにする。[
図9]で説明するためここでは省略している。
【0032】
[
図9]は雪止め手段が立ち上がった状態の時の雪止め手段格納場所蓋について説明している。雪止め手段格納場所蓋は動作板(太陽光発電パネル)に取り付けられる。[
図9](A)では雪止め手段が立ち上がり蓋が押し上げられた状態を表している。[
図9](B)はそこの部分を拡大したものである。雪止め手段格納場所蓋は動作板(太陽光発電パネル)が停止状態になり、雪止め手段が格納場所からモーター駆動で上昇する際に押し上げられる。
【0033】
[
図10]は雪止め手段が格納され雪止め手段格納場所蓋が閉じた状態について説明している。[
図10](A)では動作板(太陽光発電パネル)が動作する前段階として、雪止め手段が格納された状態を示している。
【0034】
[
図10](B)はその部分を拡大したもので、雪止め手段格納場所蓋が閉じ、上方向の動作板(太陽光発電パネル)にある蓋受けAと下方向の動作板(太陽光発電パネル)にある蓋受けBにより雪止め手段格納場所蓋は固定されている。雪止め手段格納場所蓋には可動式の雪引っ掛け突起がもうけてあり、動作板(太陽光発電パネル)が前進(下降)作動するときは動作板の上に乗った積雪を引っ掛けて下方向に引きずり落とす役割を持つ。
【0035】
[
図10](C)では積雪が下方向に滑落する場合を示している。雪引っ掛け突起は雪止め手段格納場所蓋にバネにより支持されており、積雪が滑落し蓋の上を通過する際は、雪の重みで蓋の内側に収まり、滑落の抵抗にならない。
なお、動作板及び雪止め手段の動作を電動式としたが、これに限らず電気を使用しない機械式としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
積雪地帯において社会が必要としている装置であり、設置対象となる建屋数が多数になるため産業としても成り立つものである。
【符号の説明】
【0037】
1.基本ユニット
2.動作板A
3.動作板B
4.雪止め手段
5.雪止め手段格納場所
6.太陽光発電パネル(動作板)
7.駆動用チェーン
8.駆動用モーター
9.接合部品
10.駆動レール
11.尾根カバー
12.雪止め手段駆動モーター
13.設置用フレーム
14.雪止め手段格納場所蓋
15.蓋受けA
16.蓋受けB
17.蓋心棒
18.雪引っ掛け突起
19.積雪
【要約】
【課題】人力で行われている雪下ろし作業を安全かつ効果的に行う。
【解決手段】
傾斜を有する家屋の屋根に設置される動作板であって、平滑な表面を有する第1及び第2の動作板からなる動作板ユニットと、該動作板ユニットの前記第1の 動作板を移動させる方向とは反対の方向に前記第2の動作板を動作させる第1の駆動手段 と、前記屋根に積もる雪が落下しないように雪止めする雪止め手段と、雪下しの際は前記雪止め手段を動作させ雪が落下するよう駆動する第2の駆動手段からなる雪下し装置であって、前記第1及び第2の動作板は太陽光発電パネルであることを特徴とする。
【選択図】
図5