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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】磁気ヘッド清掃機構及び磁気テープ装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/41 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G11B5/41 H
G11B5/41 J
G11B5/41 N
G11B5/41 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023042765
(22)【出願日】2023-03-17
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】浦濱 英広
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135905(JP,A)
【文献】特開2019-075182(JP,A)
【文献】特開2014-207048(JP,A)
【文献】特開2012-079381(JP,A)
【文献】特開2015-011749(JP,A)
【文献】特開2013-073638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と接続された伝達用ギアと、
前記伝達用ギアと噛み合うように接続されたカムギアと、
前記カムギア及び前記伝達用ギアの動力伝達を、磁気テープ巻取り状態に達した場合に切断する切断機構と、
前記伝達用ギアに噛み合うように接続された歯欠ギアと、
前記歯欠ギアに噛み合うように接続された清掃ギアと、
前記伝達用ギアから前記清掃ギアまで動力を減速して伝達する減速機構と、
前記清掃ギアに接続され、磁気ヘッドを清掃する清掃部材を有する清掃アームと、
前記歯欠ギア及び前記清掃ギアの動力伝達を、テープ巻取り状態に達するまでは切断し、テープ巻取り状態に達した場合に伝達を開始させる間欠伝達機構と
を有する、磁気ヘッド清掃機構。
【請求項2】
前記切断機構は、前記伝達用ギアの片面側に備えられた、一部範囲に円筒面を設けた伝達用大歯車を含み、
前記伝達用ギア及び前記カムギアの歯数及び噛み合い位置は、磁気テープ巻取り状態において、前記カムギアの終端歯と前記伝達用ギアの円筒面の開始歯とが係合するよう設定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッド清掃機構。
【請求項3】
前記伝達用ギアの円筒面及び前記カムギアの終端歯の歯先部は、摺動面として適切な表面粗さを備える
ことを特徴とする、請求項2に記載の磁気ヘッド清掃機構。
【請求項4】
前記間欠伝達機構は、前記歯欠ギアの片面側に備えられた、一部範囲に円筒面を設けた歯欠小歯車を含み、
前記清掃ギアは、部分的に歯を備えており、
前記歯欠ギアの歯の生成範囲及び噛み合い位置は、前記切断機構によって前記カムギアが停止した後に、歯欠小歯車の歯が前記清掃ギアの開始歯と噛み合いを開始するよう設定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッド清掃機構。
【請求項5】
前記歯欠ギアの円筒面及び前記清掃ギアの開始歯の歯先部は、摺動面として適切な表面粗さを備える
ことを特徴とする、請求項4に記載の磁気ヘッド清掃機構。
【請求項6】
前記清掃アームの先端に備えられた清掃部材が、磁気ヘッド清掃位置に到達したことを検知するためのセンサフラグを更に備え、
前記駆動源は、前記センサフラグによって磁気ヘッド清掃位置に到達したことが検知されると、動力伝達を停止する
ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッド清掃機構。
【請求項7】
前記カムギアの終端にローラを備え、
前記伝達用ギア及び前記カムギアの歯数及び噛み合い位置は、磁気テープ巻取り状態において、前記ローラと前記伝達用ギアの円筒面の開始歯とが係合するよう設定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッド清掃機構。
【請求項8】
前記ローラの前段の歯は、前記カムギアの他の歯よりも歯たけが低い
ことを特徴とする、請求項7に記載の磁気ヘッド清掃機構。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の磁気ヘッド清掃機構を備える、磁気テープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ巻取り状態で磁気ヘッドの清掃を行う磁気ヘッド清掃機構及び磁気テープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された清掃可能化装置は、カムギアに備えられた突起部すなわちカムギア押圧部を介して清掃アームを駆動する。尚、カムギアは、磁気テープ装置内の巻取りリールに牽引するギアである。特許文献1に記載の清掃可能化装置は、テープ巻取り状態から更にカムギアを駆動させることにより清掃アームを駆動する。テープ巻取り状態は、磁気テープ装置内の巻取りリールに磁気テープが巻き取られた状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-135905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の清掃可能化装置は、駆動源と接続されているカムギアの基準円直径が、接続先のラッチギアの基準円直径よりも大きいため、増速機構となっている。更に、特許文献1に記載の清掃可能化装置は、前述したようにテープ巻取り状態で清掃アームを駆動するため、清掃アームは、装置内に一定の張力で張られた磁気テープを押しのけて磁気ヘッドまで到達する必要があり、その際に磁気テープから反力を受ける。
【0005】
そのため、特許文献1に記載の清掃可能化装置は、清掃アームが受けた反力が、カムギアの増速機構を介して増幅された状態でカムギアに伝達されるため、カムギアを駆動する駆動源に負荷が掛かる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、駆動源への負荷を低減することが可能な磁気ヘッド清掃機構等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における磁気ヘッド清掃機構は、駆動源と接続された伝達用ギアと、伝達用ギアと噛み合うように接続されたカムギアと、カムギア及び伝達用ギアの動力伝達を、磁気テープ巻取り状態に達した場合に切断する切断機構と、伝達用ギアに噛み合うように接続された歯欠ギアと、歯欠ギアに噛み合うように接続された清掃ギアと、伝達用ギアから清掃ギアまで動力を減速して伝達する減速機構と、清掃ギアに接続され、磁気ヘッドを清掃する清掃部材を有する清掃アームと、歯欠ギア及び前記清掃ギアの動力伝達を、テープ巻取り状態に達するまでは切断し、テープ巻取り状態に達した場合に伝達を開始させる間欠伝達機構とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動源への負荷を低減することが可能な磁気ヘッド清掃機構等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10の平面図である。
図2】本実施形態におけるカムギア101の詳細斜視図である。
図3】本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10を透過表示した図である。
図4】磁気テープ牽引アーム114及び磁気テープ把持部材115が磁気テープ巻取りリール124まで到達した状態を示す図である。
図5】本実施形態における清掃部材731の備え付け部の詳細斜視図である。
図6】本実施形態における伝達用ギア201の詳細斜視図である。
図7】磁気テープ牽引開始直前の状態を示す図である。
図8図7の状態から伝達用ギア201が約1周半程度反時計回りに回転し、磁気テープ巻取り状態に到達した状態を示す図である。
図9図8の状態から伝達用ギア201が更に約45度程度時計回りに回転した状態を示す図である。
図10図9の状態から伝達用ギア201が更に1周弱程度時計回りに回転し、清掃部材731が磁気ヘッド清掃位置まで到達した状態を示す。
図11】カムギア歯先摺動面103をローラ813に置き換えたカムギア801の詳細斜視図である。
図12】ローラ保持アーム811及びローラ813の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(構成)
図1は、本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10の平面図である。磁気ヘッド清掃機構10は、磁気テープ装置1の構成の一部である。図1に示すように、磁気ヘッド清掃機構10は、カムギア101と、伝達用ギア201と、カートリッジリール121とを備える。
【0012】
カムギア101は、伝達用ギア201と接続されている。カムギア101及び伝達用ギア201は、適切な中心距離を保ちながら噛み合うように、ベース部材(図示せず)上に軸支されている。カムギア101は、伝達用ギア201の回転に伴い、伝達用ギア201の回転方向とは逆方向に回転する。
【0013】
伝達用ギア201は、駆動源からの動力伝達段数がカムギア101よりも前段に位置するギアである。図1に示すように、伝達用ギア201の基準円直径は、カムギア101の基準円直径よりも小さい。伝達用ギア201は、駆動源(図示せず)に接続されており、駆動源によって回転する。
【0014】
カートリッジリール121は、磁気テープ122を巻取り格納するためのものである。図1では、カートリッジリール121の外径部のみを図示する。カートリッジリール121に格納された磁気テープ122の端部には、リーダーピン123が備えられる。
【0015】
カムギア101は、第1ねじりコイルばね112と、第2ねじりコイルばね113と、磁気テープ牽引アーム114とを備える。
【0016】
図2は、本実施形態におけるカムギア101の詳細斜視図である。第1ねじりコイルばね112は、カムギア101の片面側に設けられた第1凸部104に、時計回りで巻き付けられる。第2ねじりコイルばね113はカムギア101の片面側に設けられた第2凸部105に、反時計回りで巻き付けられる。第1ねじりコイルばね112の腕の一端は、カムギア101の第1空間部106を貫通するように突出し、第2ねじりコイルばね113の腕の一端は、第2空間部107を貫通するように突出する。第1空間部106と第2空間部107は、カムギア101の半径方向に設けられている。カムギア101の片面側のフランジ状円周外面には、複数の歯が連続して形成されている。カムギア101のフランジ状円周外面は、歯が全く形成されていない領域も含む。
【0017】
磁気テープ牽引アーム114は、カムギア101の他面側と接するように重ねられ固定されている。磁気テープ牽引アーム114は、L字型アーム部と直線状アーム部とを有し、L字型アーム部の一端と直線状アーム部の一端とが回転軸に軸支されている。L字型アーム部の他端には円筒部116が備えられる。直線状アーム部の他端には、磁気テープ把持部材115が備えられる。
【0018】
円筒部116は、カムギア101の外周の一部に形成された円弧状突出部に沿って設けられた第3空間部108内を、第1ねじりコイルばね112及び第2ねじりコイルばね113に付勢されながら、円弧方向に回転自由に移動できるよう保持される。
【0019】
磁気テープ把持部材115は、磁気テープ122をカートリッジリール121から引き出すための構成である。磁気テープ把持部材115は、磁気テープ装置内にマウントされた磁気テープカートリッジ(図示せず)の内部に入り込み、カートリッジリール121に巻き取られて格納された磁気テープ122の端部に備えられているリーダーピン123を把持する。リーダーピン123が磁気テープ把持部材115に把持された状態で、カムギア101が反時計回りに回転すると、磁気テープ把持部材115及びリーダーピン123は、第1ねじりコイルばね112を介して反時計回りの方向に移動する。これにより、磁気テープ122は、カートリッジリールから引き出される。カートリッジリール121は、カムギア101とは別の駆動源(図示せず)に接続され回転を制御されている。このため、磁気テープ122は、常に一定の張力を与えられながら繰り出される。
【0020】
図3は、本実施形態におけるカムギア101及び伝達用ギア201を透過表示した図である。図3に示すように、磁気テープ装置内には、ガイドローラ151-1、151-2、151-3、151-4及び磁気ヘッド161が備えられる。図3および以降の図面において、磁気ヘッド161についてはその設置位置のみが示されている。また、以降の説明において、ガイドローラ151-1乃至151-4を特に区別する必要がないときは、ガイドローラ群151と記す。ガイドローラ群151は、カムギア101の他面側に配置されている。
【0021】
図3の状態で、伝達用ギア201が時計回りに回転すると、カムギア101は反時計回りに回転する。カムギア101が反時計回りに回転すると、磁気テープ牽引アーム114及び磁気テープ把持部材115は、ガイドローラ群151(ガイドローラ151-1、151-2、151-3、151-4)及び磁気ヘッド161の近傍を通って、磁気テープ巻取りリール124まで到達する。図4は、磁気テープ牽引アーム114及び磁気テープ把持部材115が磁気テープ巻取りリール124まで到達した状態を示す図である。前述したように、磁気テープ122には一定の張力が与えられている。そのため、磁気テープ122は、磁気テープ牽引アーム114及び磁気テープ把持部材115の移動に伴い、ガイドローラ群151及び磁気ヘッド161の表面に接するようにして磁気テープ装置内部を案内される。
【0022】
磁気テープ把持部材115及びリーダーピン123が磁気テープ巻取りリール124まで到達すると、磁気テープ巻取りリール124の間口に磁気テープ把持部材115及びリーダーピン123が格納される。これにより、磁気テープ把持部材115、リーダーピン123及び磁気テープ巻取りリール124は一体となって回転を行う。磁気テープ巻取りリール124の間口に磁気テープ把持部材115及びリーダーピン123が格納された状態で、磁気テープ巻取りリール124が駆動源(図示せず)により回転すると、磁気テープ122は巻き取られてテープ巻取り状態となる。
【0023】
図3に示すように、伝達用ギア201は、共通の回転軸に軸支されている2段ギアで構成される。伝達用ギア201の片面側には、伝達用大歯車211が備えられる。伝達用ギア201の片面側は、カムギア101の片面側と同じ向きの面側である。伝達用大歯車211は、カムギア101と適切な中心距離を保って噛み合うように接続される。伝達用ギア201の他面側には、伝達用大歯車211から離れた位置に伝達用小歯車221が備えられる。伝達用小歯車221は、歯欠ギア501の片面側に備えられる歯欠大歯車502と適切な中心距離を保って噛み合うように接続される。尚、伝達用小歯車221の基準円直径は、歯欠大歯車502の基準円直径よりも小さい。
【0024】
歯欠ギア501は、共通の回転軸に軸支されている2段ギアで構成される。歯欠ギア501は、片面側に歯欠小歯車503を備える。歯欠ギア501の片面側は、カムギア101の片面側と同じ向きの面側であるが、歯欠ギア501は、カムギア101の他面側に配置されている。そのため、図1に示す平面図では、歯欠ギア501の一部しか見えない。歯欠小歯車503は、清掃ギア601と適切な中心距離を保って噛み合うように接続される。尚、歯欠小歯車503の基準円直径は、清掃ギア601の基準円直径よりも小さい。歯欠小歯車503は、一部歯を欠いている。歯欠小歯車503の歯のない部分には、歯欠ギア円筒面504が備えられる。歯欠ギア501の他面側には、歯欠大歯車502が備えられる。前述したように、歯欠大歯車502は、伝達用小歯車221と適切な中心距離を保って噛み合うように接続される。
【0025】
清掃ギア601は、清掃大アーム701と連結されるギアである。前述したように、清掃ギア601は、歯欠小歯車503と適切な中心距離を保って噛み合うように接続される。清掃ギア601は、部分的に歯を備えている。清掃ギア601の清掃ギア開始歯602は、歯欠ギア円筒面504によって、時計回り方向への回転が制限される。歯欠ギア円筒面504の径は、歯欠小歯車503が反時計回りに回転した際に清掃ギア開始歯602と適切に噛み合い開始できるような位置に清掃ギア開始歯602が保持されるよう設定されている。
【0026】
清掃大アーム701は、清掃ギア601と同軸上を回転駆動するよう軸支されている。清掃大アーム701は、結合部711を介して、清掃小アーム721と互いに回転可能に接続される。清掃小アーム721には、ガイドピン722が備えられている。清掃小アーム721は、ガイドピン722によって、ガイド部材(図示せず)に設けられたガイド溝と結合している。清掃小アーム721の先端には、ホルダ741が備えられる。
【0027】
図5に、清掃部材731の備え付け部の詳細斜視図を示す。清掃部材731は、ホルダ741を介して清掃小アーム721に備えられている。ホルダ741の、清掃部材731を保持する面の他面側は、平滑面742が備えられる。清掃部材731は磁気ヘッド161に接し、磁気ヘッドを清掃する。平滑面742は、磁気テープに接し、磁気テープを押しのける。ホルダ741は、平滑面742によって、磁気テープ122を破損せずに摺動可能となる。
【0028】
清掃部材731及びホルダ741の待機位置は、図4に示すように、磁気テープ122を挟んで、例えばガイドローラ151-1とガイドローラ151-2との間の位置に設定される。尚、待機位置は、磁気ヘッド清掃位置に達するまでの位置であればよく、上記の位置に限定されない。磁気ヘッド清掃位置は、磁気ヘッド161と清掃部材731とが対向する位置に設定される。清掃小アーム721、清掃部材731、ホルダ741及び清掃部材731は、ガイド溝を通過し、磁気テープ内の適切な経路を通り、待機位置と磁気ヘッド清掃位置との間を移動する。適切な経路とは、ガイドローラ群151に清掃部材731が接触せず、かつ、平滑面742が磁気テープ122に接触するような経路である。清掃部材731及びホルダ741は、磁気テープ巻取り状態において清掃大アーム701が時計回りに回転すると、結合部711及び清掃小アーム721を介して移動される。その際に、清掃部材731及びホルダ741は、平滑面742で磁気テープ122を押しのけながら移動する。
【0029】
清掃ギア601と清掃大アーム701とは、ロック防止ばね611を介して連結されている。清掃ギア601は、清掃大アーム701に備えられた突き当て部702に対して反時計方向に突き当てられるように付勢されている。そのため、清掃ギア601は、通常時においては清掃大アームと一体となって回転するが、清掃ギア601が時計回りに回転してガイドピン722がガイド溝終端に達し、清掃小アーム721が停止すると、ロック防止ばね611が弾性変形し、清掃ギア601のみ回転を続ける構成となっている。
【0030】
図2に説明を戻す。図2は、カムギア101の詳細斜視図である。図2に示すように、カムギア101には、磁気テープの牽引に必要な範囲で部分的に歯が設けられている。カムギア終端歯102は、図2に示すように、他の歯よりも軸方向の下方に設けられる。下方とは、カムギア101の片面側を上方とした場合の反対面側、すなわち他面側である。また、カムギア終端歯102の歯先の角部には、歯先の角部を円滑に接続するよう、カムギア歯先摺動面103が備えられている。カムギア歯先摺動面103は、摺動面として適切な表面粗さを備えている。
【0031】
図6は、伝達用ギア201の片面側に備えられた伝達用大歯車211の詳細斜視図である。図6に示すように、伝達用大歯車211の軸方向の下部の一部範囲には、伝達用ギア円筒面212が設けられる。伝達用ギア円筒面212の開始位置は、伝達用ギア円筒面開始歯213と滑らかに接続されている。また、伝達用ギア円筒面212は、摺動面として適切な表面粗さを備えている。
【0032】
カムギア101と伝達用ギア201とは、磁気テープ巻取り状態においてカムギア終端歯102と伝達用ギア円筒面開始歯213とが係合するように、歯数及び噛み合い位置が設定される。したがって、磁気テープ巻取り状態において伝達用ギア201が時計回りに回転を続けると、カムギア101の第1ねじりコイルばね112を弾性変形させながら更に回転を続け、カムギア終端歯102の歯先の角部に設けられたカムギア歯先摺動面103で伝達用ギア円筒面212に接するように乗りあがる。そして、第1ねじりコイルばね112の反発力により、カムギア歯先摺動面103は伝達用ギア円筒面212を押圧しながら摺動する。つまり、カムギア101は、磁気テープ122を牽引している間は伝達用ギア201の回転に伴って回転するが、磁気テープ巻取り状態よりも更に伝達用ギア201が回転を進めた範囲においては、カムギア101と伝達用ギア201との動力伝達を停止するように備えられている。換言すれば、カムギア終端歯102、カムギア歯先摺動面103及び伝達用ギア円筒面212は、カムギア101及び伝達用ギア201の動力伝達を、テープ巻取り状態に達した場合に切断する切断機構として機能する。つまり、切断機構は、伝達用ギアの片面側に備えられた、一部範囲に円筒面を設けた伝達用大歯車を含む。
【0033】
前述したように、磁気テープ巻取り状態で伝達用ギア201が時計回りに回転を続けると、カムギア101は停止する。一方で、歯欠ギア501は、伝達用小歯車221からの動力伝達により、反時計回りに回転を続ける。歯欠ギア501は、カムギア101の停止後に歯欠小歯車503の歯が清掃ギア601の歯と噛み合いを開始するように、その歯の生成範囲及び伝達用ギア201との噛み合い位置が設定される。したがって、清掃ギア601は、磁気テープ巻取り状態となりカムギア101が停止するまでは停止しているが、カムギア101停止後も更に伝達用ギア201が回転を続けると、歯欠ギア501を介して時計回りに回転を開始するよう備えられている。換言すれば、清掃ギア601は、間欠運動を行うように備えられている。具体的には、歯欠小歯車503及び歯欠ギア円筒面504は、伝達用ギア201及び清掃ギア601の動力伝達を、テープ巻取り状態に達するまでは切断し、テープ巻取り状態に達した場合に伝達を開始させる間欠伝達機構として機能する。つまり、間欠伝達機構は、歯欠ギアの片面側に備えられた、一部範囲に円筒面を設けた歯欠小歯車を含む。
【0034】
尚、伝達用ギア201、歯欠ギア501及び清掃ギア601のそれぞれの歯数は、伝達用ギア201から清掃ギア601まで減速して動力伝達されることも考慮し設定されている。また、カムギア101と異なり、清掃ギア601にはバネによる歯欠ギア501への積極的な押圧現象は生じないが、部品の位置によっては摺動現象が生じる可能性もあるため、歯欠ギア円筒面504と清掃ギア開始歯602の歯先部は摺動面として適切な表面粗さを備えている。
【0035】
図6に示すように、伝達用ギア円筒面212の終端部には伝達用ギア突起214が設けられている。伝達用ギア突起214は、伝達用ギア201により清掃ギア601が駆動され、清掃部材731が磁気ヘッド161に到達した後、更に伝達用ギア201が時計回りに回転を続けた際に、カムギア終端歯102と係合する位置に設けられている。伝達用ギア突起214とカムギア終端歯102とが係合すると、カムギア終端歯102は伝達用ギア突起214により押され、カムギア101は反時計回りに回転する。本実施例では、カムギア101に設けられたセンサフラグ171が、センサ(フォトインタラプタ)(図示せず)により検出され、清掃部材731が磁気ヘッド清掃位置に到達したことを検知すると、駆動源の回転を停止するような構成となっている。またセンサフラグ171は、磁気テープ巻取り状態の位置にも設けられており、磁気テープ巻取り状態且つ清掃ギア601駆動前の状態を検知できるよう備えられている。これにより、磁気テープ巻取り状態と清掃アーム駆動完了状態をそれぞれ検知し、ユーザ要求に応じてそれぞれの状態を遷移させるよう駆動源を制御することが可能となる。
【0036】
(動作)
次に、本実施形態に係る磁気ヘッド清掃機構10の動作について説明する。本実施形態に係る磁気ヘッド清掃機構10の動作は、大別すると以下の4つのステップからなる。以下、それぞれのステップについて説明する。
1.磁気テープ牽引のステップ
2.磁気テープ巻取りのステップ
3.磁気ヘッド清掃のステップ
4.磁気ヘッド清掃完了後のステップ
【0037】
(1.磁気テープ牽引のステップ)
図7は、磁気テープ牽引開始直前の状態を示す図である。尚、図7では、動作説明に必要な部材のみ太い実線で示している。
【0038】
まず、駆動源(図示せず)により伝達用ギア201が時計回りに回転する。これにより、伝達用ギア201と噛み合うように接続されたカムギア101は、反時計回りに回転する。カムギア101に備えられた磁気テープ牽引アーム114及び磁気テープ把持部材115(図7に図示せず)は、カムギア101の回転に伴い、回転する。磁気テープ牽引アーム114及び磁気テープ把持部材115は、ガイドローラ群151及び磁気ヘッド161(図7に図示せず)の近傍を通って、磁気テープ巻取りリール124(図7に図示せず)まで到達する。磁気テープ122は、この一連の動作によって、磁気テープ巻取りリール124へと牽引される。
【0039】
伝達用ギア201が時計回りに回転すると、伝達用ギア201に備えられた伝達用小歯車221も時計回りに回転する。これにより、伝達用小歯車221と噛み合うように接続された歯欠大歯車502は、反時計回りに回転する。歯欠大歯車502の回転に伴い、歯欠ギア501の他面側に備えられた歯欠小歯車503も反時計回りに回転する。
【0040】
歯欠小歯車503と接続された清掃ギア601は、清掃ギア開始歯602は歯欠ギア円筒面504によって回転を制限されているため、停止した状態を維持する。
【0041】
(2.磁気テープ巻取りのステップ)
図8は、図7の状態から伝達用ギア201が約1周半程度反時計回りに回転し、磁気テープ巻取り状態に到達した状態を示す図である。カムギア101のカムギア終端歯102は、伝達用ギアの伝達用ギア円筒面開始歯213と噛み合っている。
【0042】
伝達用ギア201の回転に伴い、歯欠ギア501も約半周程度反時計回りに回転する。清掃ギア601については、歯欠ギア円筒面504によって回転を制限されている状態が継続しているため、停止した状態を維持する。
【0043】
(3.磁気ヘッド清掃のステップ)
図9は、図8の状態から伝達用ギア201が更に約45度程度時計回りに回転した状態を示す図である。この際、カムギア終端歯102は、伝達用ギア円筒面212に乗り上げる。これにより、伝達用ギア201からカムギア101への動力伝達は遮断され、カムギア101は停止した状態を維持する。
【0044】
図9の状態において、歯欠小歯車503は、清掃ギア開始歯602と噛み合いを開始する位置に達している。この状態から伝達用ギア201が時計回りに回転することで、清掃ギア601が駆動する。
【0045】
図10は、図9の状態から伝達用ギア201が更に1周弱程度時計回りに回転し、清掃部材731が磁気ヘッド清掃位置まで到達した状態を示す。図10の状態において、清掃ギア601は、ロック防止バネ611が弾性変形する位置まで歯欠ギア501によって回転されている。これにより、清掃部材731は、磁気ヘッド清掃位置まで到達する。
【0046】
磁気テープ122は、平滑面742に接して押しのけられる。磁気テープ122は、磁気ヘッド清掃位置まで到達すると、図10に示すような状態で保持される。
【0047】
カムギア終端歯102は、伝達用ギア突起214により押され、更に回転した結果、センサにより磁気ヘッド清掃位置到達を検知される。これにより、伝達用ギアに接続された駆動源は停止する。
【0048】
(4.磁気ヘッド清掃完了後のステップ)
磁気ヘッド清掃が完了すると、伝達用ギア201は、図10の状態から反時計回りに逆回転する。これにより、磁気ヘッド清掃機構10は、図8の磁気テープ巻取り状態まで戻る。センサは、磁気テープ巻取り状態に戻ったことを検知する。
【0049】
(効果)
次に、本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10の効果について説明する。
【0050】
本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10は、駆動源と接続された伝達用ギア201とカムギア101との動力伝達を切断した状態で、清掃アーム710を駆動する。また、本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10は、歯欠ギア501及び清掃ギア601の動力伝達を、テープ巻取り状態に達するまでは切断し、テープ巻取り状態に達した場合に伝達を開始させる間欠伝達機構を有する。これにより、清掃アーム710は、カムギア101が止まっている間に自由に回転することができる。すなわち、清掃アーム710の駆動範囲が、装置スペース上、
カムギア101に許される駆動範囲内に制限されない。したがって、本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10は、特許文献1に開示された清掃可能化装置と異なり、増速機構を設ける必要がなくなる。更に、本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10は、減速して清掃アーム710を駆動する。この理由は、磁気ヘッド清掃機構10が、伝達用ギア201から清掃ギア601まで動力を減速して伝達する減速機構を備えるからである。清掃アーム710が連結された清掃ギア601は、伝達用ギア201と減速機構を介して接続されている。そのため、清掃アーム710が受ける反力は減速機構を介して縮小されて駆動源に伝達される。この構成により、本実施形態における磁気ヘッド清掃機構10は、駆動源に掛かる負荷を低減することができる。これにより、駆動源の長寿命化が可能になる。なお、本実施形態における減速機構は、伝達用小歯車221の基準円直径が接続先の歯欠大歯車502の基準円直径よりも小さく、更に歯欠小歯車503の基準円直径が接続先の清掃ギア601の基準円直径よりも小さいという歯車伝達機構の採用により実現される。減速機構は、これに限定されず、伝達用ギアからの動力を減速して清掃ギアに伝える動力伝達機構であればよい。
【0051】
(変形例)
上述した実施例では、カムギア歯先摺動面103を設けたが、カムギア歯先摺動面103を、ローラに置き換えても良い。以下、ローラに置き換えた場合の変形例について説明する。
【0052】
図11は、カムギア歯先摺動面103をローラ813に置き換えたカムギア801の詳細斜視図である。ローラ813は、カムギアの終端に備えられる。ローラ813は、ローラ保持アーム811に備えられたシャフト812に軸支され、自由に回転可能である。
【0053】
図12は、ローラ保持アーム811及びローラ813の斜視図である。ローラ保持アーム811には、シャフト812とは別にネジ穴が設けられた固定用シャフト814が備えられる。ローラ保持アーム811は、ローラ813の外周面が、カムギア終端歯102の面及び歯先部に接する位置になるよう位置決めされる。ローラ保持アーム811は、固定用シャフト814を介してカムギア801にネジ固定されている。これにより、ローラ813は、カムギア終端歯102のように伝達用ギア円筒面開始歯213と噛み合い、伝達用ギア円筒面212に接するように乗り上げて伝達用ギア円筒面212上を転動することができる。尚、ローラ前段の歯802は、通常の歯よりも歯先のたけを低く設定してもよい。これにより、カムギア歯先摺動面103をローラ813に置き換えたことにより生じうる歯の噛み合いのずれを吸収することができる。
【0054】
このように、カムギア歯先摺動面103をローラ813に置き換えると、以下のような効果が得られる。ローラ813に置き換えることにより、伝達用ギア円筒面212との摺動(摩擦)により生じる摺動負荷の低減や、部材摩耗の軽減が可能となる。これにより、磁気ヘッド清掃機構10全体の更なる長寿命化が可能になる。
【0055】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 磁気テープ装置
10 磁気ヘッド清掃機構
101 カムギア
102 カムギア終端歯
103 カムギア歯先摺動面
104 第1凸部
105 第2凸部
106 第1空間部
107 第2空間部
108 第3空間部
112 第1ねじりコイルばね
113 第2ねじりコイルばね
114 磁気テープ牽引アーム
115 磁気テープ把持部材
116 円筒部
121 カートリッジリール
122 磁気テープ
123 リーダーピン
124 リール
151 ガイドローラ群
161 磁気ヘッド
171 センサフラグ
201 伝達用ギア
211 伝達用大歯車
212 伝達用ギア円筒面
213 伝達用ギア円筒面開始歯
214 伝達用ギア突起
221 伝達用小歯車
501 歯欠ギア
502 歯欠大歯車
503 歯欠小歯車
504 歯欠ギア円筒面
601 清掃ギア
602 清掃ギア開始歯
611 ロック防止バネ
701 清掃大アーム
702 当て部
710 清掃アーム
711 結合部
721 清掃小アーム
722 ガイドピン
731 清掃部材
741 ホルダ
742 平滑面
801 カムギア
802 歯
811 ローラ保持アーム
812 シャフト
813 ローラ
814 固定用シャフト
【要約】      (修正有)
【課題】駆動源への負荷を低減することが可能な磁気ヘッド清掃機構及び磁気テープ装置を提供する。
【解決手段】磁気ヘッド清掃機構は、駆動源と接続された伝達用ギア201と、伝達用ギアと噛み合うように接続されたカムギア101と、カムギア及び伝達用ギアの動力伝達を、磁気テープ巻取り状態に達した場合に切断する切断機構と、伝達用ギアに噛み合うように接続された歯欠ギア501と、歯欠ギアに噛み合うように接続された清掃ギア601と、伝達用ギアから清掃ギアまで動力を減速して伝達する減速機構と、清掃ギアに接続され、磁気ヘッドを清掃する清掃部材を有する清掃アームと、歯欠ギア及び清掃ギアの動力伝達を、テープ巻取り状態に達するまでは切断し、テープ巻取り状態に達した場合に伝達を開始させる間欠伝達機構として機能する歯欠小歯車503及び歯欠ギア円筒面504と、を有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12