(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】抽出装置、抽出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240611BHJP
G06Q 50/16 20240101ALI20240611BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q50/16
(21)【出願番号】P 2023048561
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸司
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-106966(JP,A)
【文献】特開2005-242478(JP,A)
【文献】特開2020-91593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが直線または折れ線を示す図形データである複数の路線を記憶するとともに、複数の画地と、各画地に隣接する路線とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定する特定部と、
前記複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを前記交差点で分割するとともに前記交差点以外の接続点で結合してネットワークラインとして抽出する図形抽出部と、
前記複数の路線と前記抽出されたネットワークラインとの対応関係を設定する対応関係設定部と、
前記複数の画地のうちから、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する画地抽出部と、
を有することを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
前記複数の路線のそれぞれについて、当該路線の端点を含む所定範囲に他の路線の一部が含まれる場合に、当該路線と当該他の路線とが接続する前記接続点を設定する接続点設定部をさらに有し、
前記特定部は、前記設定された接続点のうちから前記交差点を特定する、
請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
前記図形抽出部は、前記抽出された複数のネットワークラインを膨張させるとともに、膨張させた状態で空間的に重なるネットワークラインを単一のネットワークラインに結合する、
請求項2に記載の抽出装置。
【請求項4】
前記交差点および当該交差点で接続する各路線の少なくとも一部を含む交差ポリゴンを生成する生成部をさらに有し、
前記図形抽出部は、前記複数の路線が示す直線または折れ線の、前記交差ポリゴンに含まれない部分のみを抽出することにより当該直線または折れ線を分割する、
請求項1に記載の抽出装置。
【請求項5】
抽出装置によって実行される抽出方法であって、
それぞれが直線または折れ線を示す図形データである複数の路線を記憶するとともに、複数の画地と、各画地に隣接する路線とを関連付けて記憶し、
前記複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定し、
前記複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを前記交差点で分割するとともに前記交差点以外の接続点で結合してネットワークラインとして抽出し、
前記複数の路線と前記抽出されたネットワークラインとの対応関係を設定し、
前記複数の画地のうちから、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する、
ことを含むことを特徴とする抽出方法。
【請求項6】
それぞれが直線または折れ線を示す図形データである複数の路線を記憶するとともに、複数の画地と、各画地に隣接する路線とを関連付けて記憶する記憶部を有するコンピュータのプログラムであって、
前記複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定し、
前記複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを前記交差点で分割するとともに前記交差点以外の接続点で結合してネットワークラインとして抽出し、
前記複数の路線と前記抽出されたネットワークラインとの対応関係を設定し、
前記複数の画地のうちから、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出装置、抽出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
土地の固定資産税の算出基準となる土地評価額は、土地が面する道路に設定された路線の路線価等に基づいて定められる。煩雑な土地評価額の算出作業を支援するため、コンピュータを用いて路線価を管理することがなされている。例えば、特許文献1には、路線価の流れを視覚的にかつ簡易に確認することを可能とする装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、固定資産評価基準によれば、土地評価額の算出方法は土地の評価単位である画地に隣接する路線の数によっても変化するため、市町村等の自治体において固定資産税の課税を担当する課税部署は、画地が面している路線の数を適切に把握する必要がある。しかしながら、固定資産評価基準によれば、連続している複数の路線の系統性により、複数の路線が別々の路線として認定される場合や、実際に画地に隣接する複数の路線の一部が画地に隣接している路線として評価されない場合がある。この場合、課税担当者等は、画地に隣接する複数の路線の接続状態を確認して画地に隣接する路線の数を判断するという煩雑な作業を行う必要がある。そこで、上記の作業を円滑に行うため、課税担当者等の判断を要する画地を抽出することが求められている。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、複数の画地のうちから所定の接続状態の路線に隣接する画地を抽出することを可能とする抽出装置、抽出方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る抽出装置は、それぞれが直線または折れ線を示す図形データである複数の路線を記憶するとともに、複数の画地と、各画地に隣接する路線とを関連付けて記憶する記憶部と、複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定する特定部と、複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを交差点で分割するとともに交差点以外の接続点で結合してネットワークラインとして抽出する図形抽出部と、複数の路線と抽出されたネットワークラインとの対応関係を設定する対応関係設定部と、複数の画地のうちから、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する画地抽出部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、抽出装置は、複数の路線のそれぞれについて、路線の端点を含む所定範囲に他の路線の一部が含まれる場合に、路線と他の路線とが接続する接続点を設定する接続点設定部をさらに有し、特定部は、設定された接続点のうちから交差点を特定することが好ましい。
【0008】
また、図形抽出部は、抽出された複数のネットワークラインを膨張させるとともに、膨張させた状態で空間的に重なるネットワークラインを単一のネットワークラインに結合することが好ましい。
【0009】
また、抽出装置は、交差点および交差点で接続する各路線の少なくとも一部を含む交差ポリゴンを生成する生成部をさらに有し、図形抽出部は、複数の路線が示す直線または折れ線の、交差ポリゴンに含まれない部分のみを抽出することにより直線または折れ線を分割することが好ましい。
【0010】
本発明の実施形態に係る抽出方法は、抽出装置によって実行される抽出方法であって、それぞれが直線または折れ線を示す図形データである複数の路線を記憶するとともに、複数の画地と、各画地に隣接する路線とを関連付けて記憶し、複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定し、複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを交差点で分割するとともに交差点以外の接続点で結合して複数のネットワークラインとして抽出し、複数の路線と抽出されたネットワークラインとの対応関係を設定し、複数の画地のうちから、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する、ことを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の実施形態に係るプログラムは、それぞれが直線または折れ線を示す図形データである複数の路線を記憶するとともに、複数の画地と、各画地に隣接する路線とを関連付けて記憶する記憶部を有するコンピュータのプログラムであって、複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定し、複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを交差点で分割するとともに交差点以外の接続点で結合して複数のネットワークラインとして抽出し、複数の路線と抽出されたネットワークラインとの対応関係を設定し、複数の画地のうちから、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する、ことをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る抽出装置、抽出方法およびプログラムは、複数の画地のうちから所定の接続状態の路線に隣接する画地を抽出することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(A)および(B)は、路線と画地の例について説明するための模式図である。
【
図3】(A)および(B)は、路線と画地の例について説明するための模式図である。
【
図4】(A)および(B)は、路線と画地の例について説明するための模式図である。
【
図5】路線テーブルT1のデータ構造の例を示す図である。
【
図6】画地テーブルT2のデータ構造の例を示す図である。
【
図8】接続点の設定および交差点の特定について説明するための模式図である。
【
図9】交差ポリゴンの生成について説明するための模式図である。
【
図10】直線または折れ線の分割について説明するための模式図である。
【
図11】ネットワークラインの膨張および結合について説明するための模式図である。
【
図12】対応関係の設定について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
図1は、実施形態に係る抽出装置1の機能ブロック図である。抽出装置1は、あらかじめ記憶された複数の路線のうちから所定の接続状態の路線を抽出する。抽出装置1は、PC(Personal Computer)、サーバ、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機等の情報処理装置である。抽出装置1は、記憶部11、通信部12、表示部13、操作部14および処理部15を有する。
【0016】
記憶部11は、プログラムおよびデータを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部11は、プログラムとして、処理部15による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等を記憶する。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部11にインストールされる。
【0017】
通信部12は、抽出装置1を他の装置と通信可能にする構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信部12が備える通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部12は、データを他の装置から受信して処理部15に供給するとともに、処理部15から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0018】
表示部13は、画像を表示するための構成であり、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部13は、処理部15から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0019】
操作部14は、抽出装置1に対する操作を受け付けるための構成であり、例えばキーボード、キーパッド、マウス等を備える。操作部14は、表示部13と一体化されたタッチパネルでもよい。操作部14は、受け付けた操作に応じた操作信号を生成して処理部15に供給する。
【0020】
処理部15は、抽出装置1の動作を統括的に制御する構成であり、一つまたは複数のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。処理部15は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部15は、記憶部11に記憶されているプログラムに基づいて抽出装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0021】
処理部15は、取得部151、接続点設定部152、特定部153、生成部154、図形抽出部155、対応関係設定部156、画地抽出部157および出力部158を有する。これらの各部は、処理部15がプログラムを実行することによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、専用の処理回路として抽出装置1に実装されてもよい。
【0022】
図2(A)は、画地と路線の例について説明するための模式図である。路線は、路線価が設定されている道路の一区間であり、直線または折れ線を示す図形データとして記憶される。画地は、路線価に基づいて土地評価額を算定するときの算定の単位となる土地である。後述するように、画地および路線の情報は記憶部11にあらかじめ記憶されている。
図2(A)には、画地L1およびL2と、直線を示す図形データである路線R1-R6が図示されている。
図2(A)に示す例では、矩形状の画地L1は、その四辺のうちの三辺が路線R1、R2およびR3にそれぞれ接し、他の一辺が画地L2に接している。したがって、画地L1は、土地評価額の算定において、三つの路線R1、R2およびR3に隣接する画地であると評価される。
【0023】
画地に隣接する路線は、正面路線、側方路線および二方路線を含む。正面路線は、原則として、画地に隣接する路線のうち路線価が最も高い路線である。側方路線は、画地の角地に当たる交差点を介して正面路線に接続するとともに、画地の側方に隣接する路線である。画地の左右に側方路線が位置する場合には、それぞれを側方1路線および側方2路線と称する。二方路線は、画地に隣接する路線のうち、正面路線および側方路線以外の路線であって、正面路線とは画地に隣接する交差点で交差しておらず、正面路線に対して画地を挟んで反対側に位置する路線である。複数の路線が二方路線に該当する場合には、そのうちの代表的な一つの路線が二方路線とされる。
図2(A)において、路線R1が正面路線である場合、路線R2は側方路線であり、路線R3は二方路線である。
【0024】
以下では、二つ以上の路線が接続している道路上の点を接続点と称することがある。例えば、路線R1、R2、R4およびR5は、接続点C1において端点同士で接続しており、十字路に対応している。路線R2、R3およびR6は、接続点C2において端点同士で接続しており、T字型の道路に対応している。接続点は、後述する抽出処理において、路線の情報に基づいて設定される。
【0025】
図2(B)は、画地と路線の他の例について説明するための模式図である。
図2(B)に示す例では、画地L3は、三つの路線R7、R8およびR9に隣接していると評価される。
図2(B)に示す例で、路線R8およびR9は、接続点C3において中間点と端点とで接続しており、T字型の道路に対応している。T字型の道路は、
図2(A)の接続点C2のように三つの路線が端点同士で接続している状態、または
図2(B)の接続点C3のように二つの路線が中間点と端点とで接続している状態によって示される。
【0026】
図3(A)は、画地と路線の他の例について説明するための模式図である。
図3(A)に示す例では、画地L4は、三つの路線R10、R11およびR12に隣接している。路線R11およびR12は、接続点C4において端点同士で接続しており、L字型の道路に対応している。固定資産評価基準によれば、路線R11およびR12によって構成されるようなL字型の道路に対応する二つの路線が存在する場合、二つの路線のうち側方路線に該当する路線のみが画地に対応付けられて評価される。したがって、画地L4には、正面路線として路線R10が、側方路線として路線R11のみが対応付けられ、画地L4は二つの路線に隣接する画地であると評価される。
【0027】
図3(B)は、画地と路線の他の例について説明するための模式図である。
図3(B)の路線R14は折れ線を示す図形データである。
図3(B)に示す例では、画地L5には、正面路線として路線R13が、側方路線として路線R14が対応付けられ、二方路線は対応付けられない。したがって、画地L5は、二つの路線に隣接する画地であると評価される。
【0028】
図4(A)は、画地と路線の他の例について説明するための模式図である。
図4(A)に示す例では、矩形状の画地L6は、その四辺で路線R15、R16、R17およびR18にそれぞれ接している。したがって、画地L6には、正面路線として路線R13が、側方1路線として路線R16が、側方2路線として路線R17が、二方路線として路線R18がそれぞれ対応付けられ、画地L6は四つの路線に隣接する画地であると評価される。
【0029】
図4(B)は、画地と路線の他の例について説明するための模式図である。
図4(B)に示す例では、矩形状の画地L7は、その四辺で路線R19、R20、R21およびR22とそれぞれ接している。路線R20およびR21は、接続点C5において端点同士で接続している。路線R21およびR22は、接続点C6において端点同士で接続している。固定資産評価基準によれば、路線R20、R21およびR22によって構成されるようなU字型の道路に対応する路線が存在する場合、そのうちの一つの路線のみが側方路線または二方路線として対応付けられることとされている。したがって、画地L7には、正面路線として路線R19が、例えば側方1路線として路線R20がそれぞれ対応付けられ、画地L7は二つの路線に隣接する画地であると評価される。
【0030】
上述したように、画地に隣接する正面路線以外の路線がL字型またはU字型の道路に対応する路線である場合には、正面路線に対して画地を挟んで反対側に位置する路線は、原則として、二方路線としては扱われない。このような場合には、課税担当者等が画地を個別に評価する必要がある。
【0031】
以下では、複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点と称することがある。
図2-
図4に示す例では、
図2(A)の接続点C1およびC2は、三つ以上の路線が接続しているため交差点である。
図2(B)の接続点C3は、二つの路線が端点と中間点とで接続しているため、交差点である。
図3(A)の接続点C4は、二つの路線が端点同士で接続しているため、交差点ではない。
図4(B)の接続点C5およびC6も、二つの路線が端点同士で接続しているため、交差点ではない。L字型またはU字型の路線を構成する複数の路線の接続点は交差点ではないため、複数の路線の接続点が交差点であるか否かを判定することにより、それらの路線がL字型またはU字型の道路を構成するか否かが判定可能である。
【0032】
図5は、記憶部11にあらかじめ記憶される路線テーブルT1のデータ構造の例を示す図である。路線テーブルT1は、課税部署等によってあらかじめ設定され、路線番号、路線価、頂点位置等を相互に関連付けて記憶する。
【0033】
路線番号は、複数の路線のそれぞれを識別する情報である。路線価は、路線に隣接する土地の評価額を算出する基準となる価額であり、路線に隣接する土地の1平方メートルあたりの価額である。頂点位置は、直線または折れ線を示す図形データである路線の端点および中間点の位置座標である。頂点位置を結んだ直線または折れ線が路線の形状を示す。位置座標は、例えば緯度経度または平面直角座標の値である。
【0034】
図6は、記憶部11にあらかじめ記憶される画地テーブルT2のデータ構造の例を示す図である。画地テーブルT2は、各自治体の課税部署等によってあらかじめ設定され、画地番号および隣接路線番号を相互に関連付けて記憶する。
【0035】
画地番号は、複数の画地のそれぞれを識別する情報である。画地番号は、画地を構成する土地の筆の地番でもよい。隣接路線番号は、画地に隣接する路線の路線番号であり、正面路線、側方1路線、側方2路線、二方路線の路線番号を含む。
【0036】
図7は、抽出装置1によって実行される抽出処理の流れの例を示すフローチャートである。抽出処理は、操作部14に対するユーザの操作に応じて実行される。抽出処理は、記憶部11に記憶されたプログラムに基づいて、処理部15が抽出装置1の他の構成と協働することにより実現される。
【0037】
最初に、取得部151は、複数の路線を取得する(ステップS101)。例えば、取得部151は、路線を抽出する対象となる地理的範囲を入力する操作部14に対する操作を受け付ける。取得部151は、入力された地理的範囲に含まれる路線の情報を路線テーブルT1から取得する。入力された地理的範囲に含まれる路線は、例えば、その路線を構成する頂点のうちの少なくとも一つが、入力された地理的範囲に含まれる路線である。
【0038】
次に、接続点設定部152は、複数の路線のうちの二つ以上の路線が接続する接続点を設定する(ステップS102)。例えば、接続点設定部152は、取得された複数の路線のそれぞれについて、路線の端点を含む所定範囲に他の路線の一部が含まれるか否かを判定する。路線の端点を含む所定範囲は、例えば路線の端点を中心とする円である。他の路線の一部は、他の路線の端点、中間点およびこれらの点を結ぶ線分を含む。路線の端点から所定範囲内に他の路線の一部が存在する場合、接続点設定部152は、路線と他の路線とを接続する接続点を設定する。このとき、接続点設定部152は、路線の端点と所定範囲内の他の路線の一部との位置関係に基づいて接続点の位置座標を設定する。例えば、所定範囲に他の路線の端点が含まれる場合、接続点の位置座標は、路線の端点と他の路線の端点との中間位置に設定される。
【0039】
次に、特定部153は、複数の路線の接続点のうちから交差点を特定する(ステップS103)。特定部153は、二つの路線のみが端点同士で接続する接続点以外の接続点を交差点として特定する。すなわち、特定部153は、三つ以上の路線が接続する接続点、および二つの路線が端点と中間点とで接続する接続点を交差点として特定する。例えば、ステップS102において設定された接続点のうちから、路線の端点から所定範囲内に他の一つの路線の一つの端点のみが存在すると判定されたことによって設定された接続点を除いた接続点が交差点として特定される。特定部153は、特定された接続点が交差点であることを示す交差点フラグ情報を特定された接続点に関連付けて記憶する。
【0040】
図8は、接続点の設定および交差点の特定について説明するための模式図である。
図8に示す例では、複数の路線として、路線R1-R7が取得されている。接続点設定部152は、路線R1-R7の端点の位置座標を参照して、路線R1の端点E1を含む所定範囲に路線R2-R4の端点E2-E4が含まれると判定し、路線R1-R4を接続する接続点C1を設定する。同様にして、接続点設定部152は、路線R2およびR5を端点同士で接続する接続点C2、路線R1およびR6を端点と中間点とで接続する接続点C3、路線R5-R7を端点同士で接続する接続点C4をそれぞれ設定する。
【0041】
接続点C1は四つの路線R1-R4が接続する接続点であるため、特定部153は接続点C1を交差点として特定する。接続点C2は二つの路線のみが端点同士で接続している接続点であるため、特定部153は接続点C2を交差点として特定しない。接続点C3は二つの路線が端点と中間点とで接続している接続点であるため、特定部153は接続点C3を交差点として特定する。接続点C4は三つの路線が接続している接続点であるため、特定部153は接続点C4を交差点として特定する。
【0042】
図7に戻り、次に、生成部154は、特定された交差点および交差点で接続する路線の少なくとも一部を含む交差ポリゴンを生成する(ステップS104)。以下の説明では、交差ポリゴンは交差点を中心とする円形状を有するものとするが、このような例に限られず、交差ポリゴンは交差点および交差点で接続する路線の少なくとも一部を含む任意の凸形状を有してよい。
【0043】
図9は、交差ポリゴンの生成について説明するための模式図である。
図8を用いて説明したように、接続点C1、C3およびC4は交差点として特定されており、接続点C2は交差点として特定されていない。したがって、生成部154は、接続点C1、C3およびC4について交差ポリゴンを生成する。交差ポリゴンは、交差点および交差点で接続する各路線の少なくとも一部を含むように生成され、例えば交差点で接続する端点または中間点を含むように生成される。
図9に示す例では、生成部154は、接続点C1で接続する路線R1-R4の端点を含むように交差ポリゴンD1を生成する。また、生成部154は、接続点C3で接続する路線R1の端点と路線R6の中間点とを含む交差ポリゴンD3を生成する。また、生成部154は、接続点C4で接続する路線R5-R7の端点を含む交差ポリゴンD4を生成する。
【0044】
図7に戻り、次に、図形抽出部155は、複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを交差点で分割するとともに、分割によって生じた部分を交差点以外の接続点で結合してネットワークラインとして抽出する(ステップS105)。例えば、図形抽出部155は、複数の路線が示す直線または折れ線の、交差ポリゴンに含まれない部分のみを抽出することにより、直線または折れ線を交差点で分割する。
【0045】
図10は、直線または折れ線の分割について説明するための模式図である。
図10に示す例では、
図8-
図9の路線R1-R7が示す直線のうち交差ポリゴンD1、D3およびD4に含まれない部分のみが抽出されることにより、各路線が示す直線が分割されている。また、分割によって生じた部分として、ネットワークラインP1-P8が抽出されている。路線R1の端点は交差ポリゴンD1およびD3に含まれているため、路線R1からは路線R1よりも短いネットワークラインP1が抽出されている。また、路線R6の中間点は交差ポリゴンD3に含まれているため、路線R6からは二つのネットワークラインP6およびP8が抽出されている。
【0046】
また、図形抽出部155は、抽出された複数のネットワークラインを膨張させるとともに、膨張させた状態で空間的に重なるネットワークラインを単一のネットワークラインに結合する。すなわち、図形抽出部155は、直線または折れ線を示す図形データであったネットワークラインを膨張させることで、面的領域を有するポリゴンに変換する。また、図形抽出部155は、膨張させた状態でポリゴンが空間的に重なる複数のネットワークラインを結合し、単一のネットワークラインに変換する。ネットワークラインを膨張させるとは、例えば、膨張前の直線または折れ線で構成されているネットワークラインにバッファ領域を設定することで、ネットワークラインからの距離が所定値以下である点を内部に含むようなポリゴンを生成することをいう。以下では、所定値をポリゴンの幅と称することがある。
【0047】
ポリゴンの幅は、交差ポリゴンの大きさに基づいて設定される。例えば、交差ポリゴンが円形状を有する場合には、ポリゴンの幅は円の半径よりも小さい値に設定される。これにより、膨張されたネットワークラインのポリゴンの幅が交差ポリゴンの幅よりも小さくなるため、交差ポリゴンが生成されていない接続点のみでネットワークラインが結合される。
【0048】
図11は、ネットワークラインの膨張および結合について説明するための模式図である。
図11では、膨張前のネットワークラインが実線で、膨張後のネットワークラインのポリゴンが破線でそれぞれ示されている。
図11に示す例では、ネットワークラインP2を膨張させたポリゴンQ2とネットワークラインP5を膨張させたポリゴンQ5が空間的に重なっているため、図形抽出部155はポリゴンQ2およびQ5を結合させて一つのポリゴンQAを生成する。また、図形抽出部155は、結合されたポリゴンQ2およびQ5に対応するネットワークラインP2およびP5を一つのネットワークラインPAに結合する。ネットワークラインP1、P3-P4およびP6-P8を膨張させたポリゴンQ1、Q3-4およびQ6-Q8は他のポリゴンとは空間的に重ならないため、ポリゴンQ1、Q3-4およびQ6-Q8は他のポリゴンと結合されない。また、ネットワークラインP1、P3-P4およびP6-P8は、他のネットワークラインと結合されない。
【0049】
複数の路線が端点で接続している場合、一般にはそれらの端点の位置座標は同一であるが、路線のデータに誤差が含まれている場合には、
図10および
図11に示したように、それらの端点の位置座標が相互に異なる場合がある。ネットワークラインを膨張させることによって、路線の頂点の位置座標に誤差が含まれる場合でも接続点においてポリゴンが空間的に重なるため、相互に接続する路線のネットワークラインを一つのポリゴンに結合することができる。一方、膨張されたポリゴンの幅が交差ポリゴンの幅よりも小さいことにより、交差ポリゴンが生成された交差点で分割された路線に対応するネットワークラインは結合されない。すなわち、ステップS105において、二つの路線が端点同士で接続されている場合にはその二つの路線に対応するネットワークラインが一つのネットワークラインに結合され、複数の路線がそれ以外の態様で接続されている場合にはそれらの路線に対応するネットワークラインは結合されない。したがって、路線の端点の位置座標に誤差があったとしても、交差点ではない接続点で接続する複数の路線は同一のネットワークラインに結合されて抽出され、交差点で接続する複数の路線はそのまま交差点で分割されて異なるネットワークラインとして抽出される。また、途中に交差点がある路線は、交差点で複数のネットワークラインに分割される。このようにすることで、L字型またはU字型の道路に対応する、交差点でない接続点で接続する複数の路線が一つのネットワークラインに結合して抽出される。
【0050】
図7に戻り、次に、対応関係設定部156は、複数の路線と結合されたネットワークラインとの対応関係を設定する(ステップS106)。対応関係設定部156は、複数のネットワークラインのそれぞれに識別情報を設定し、識別情報と複数の路線とを関連付けることにより複数の路線とネットワークラインとの対応関係を設定する。
【0051】
図12は、対応関係の設定について説明するための模式図である。
図12においては、説明の便宜上、複数のポリゴンのうちポリゴンQ1およびQAのみが図示されている。また、見やすさのため、路線とネットワークラインとがずれて図示されている。対応関係設定部156は、ポリゴンQ1およびQAに識別情報を設定する。対応関係設定部156は、各ポリゴンの識別情報を、各ポリゴンの生成元であるネットワークラインの抽出元となる路線に関連付ける。
図12に示す例では、対応関係設定部156は、ポリゴンQ1の識別情報を、ポリゴンQ1の生成元であるネットワークラインP1の抽出元である路線R1に関連付ける。また、対応関係設定部156は、ポリゴンQAの識別情報を、ポリゴンQAに結合されたポリゴンQ2およびQ5の生成元であるネットワークラインP2およびP5の抽出元である路線R2およびR5にそれぞれ関連付ける。ポリゴンとネットワークラインとは一対一に対応するため、ポリゴンの識別情報と路線とが関連付けられることにより、複数の路線とネットワークラインとの対応関係が設定される。
【0052】
ポリゴンの識別情報は、例えば、ポリゴンに対応する路線の路線番号である。この場合、複数のポリゴンが結合されたポリゴンの識別情報は、結合された複数のポリゴンの生成元である複数のネットワークラインの抽出元である複数の路線のうちのいずれかの識別情報でもよく、任意の数値または文字列でよい。このような例に限られず、全てのポリゴンの識別情報が任意の数値または文字列に設定されてもよい。
【0053】
なお、対応関係設定部156は、ポリゴンと路線との空間的な位置関係に基づいて複数の路線とネットワークラインとの対応関係を設定してもよい。例えば、対応関係設定部156は、路線の端点および中間点の位置座標とポリゴンを構成する各頂点の位置座標に基づいて、路線が示す直線または折れ線とポリゴンとの包含関係を算出する。対応関係設定部156は、路線が示す直線または折れ線がポリゴンに包含される場合に、路線とポリゴンとの識別情報を関連付ける。この場合も、ポリゴンとネットワークラインとは一対一に対応するため、ポリゴンの識別情報と路線とが関連付けられることにより、複数の路線とネットワークラインとの対応関係が設定される。
【0054】
図7に戻り、画地抽出部157は、複数の画地のうちから、同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する(ステップS107)。画地抽出部157は、画地テーブルT2を参照して単一の画地に隣接する、側方1路線、側方2路線および二方路線を抽出する。画地抽出部157は、ステップS106で設定された対応関係に基づいて、画地に隣接する側方1路線、側方2路線および二方路線に、互いに同一のネットワークラインに対応するものが含まれているか否かを判定する。例えば、画地抽出部157は、抽出された側方1路線、側方2路線および二方路線のそれぞれに関連付けられたポリゴンの識別情報を取得する。画地抽出部157は、取得した識別情報のうちのいずれかが重複している場合に、画地に隣接する路線に、互いに同一のネットワークラインに対応するものが含まれていると判定する。画地抽出部157は、互いに同一のネットワークラインに対応するものが含まれている場合に、その画地を同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地として抽出する。
【0055】
図12に示した例では、画地抽出部157は、画地L1に隣接する側方1路線として路線R2を、二方路線として路線R5をそれぞれ抽出する。路線R2およびR5はいずれもポリゴンQ2との間に対応関係が設定されているため、画地抽出部157は、画地L1を同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地として抽出する。
【0056】
次に、出力部158は、抽出された画地を出力する(ステップS108)。出力部158は、通信部12を介して抽出された画地の情報を他の装置に送信することにより出力する。出力部158は、抽出された画地の情報を表示部13に表示することにより出力してもよい。出力部158は、不図示の印刷部を制御して抽出された画地の印刷媒体に印刷することにより出力してもよい。画地の情報は、例えば、画地に関する情報を一覧可能な表として出力されてもよく、隣接する路線の情報を地図上で識別可能に表示した地図情報として出力されてもよい。全ての画地についての検証が終了することにより、抽出処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、抽出装置1は、複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定し、複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを交差点で分割するとともに、分割によって生じた部分を交差点以外の接続点で結合してネットワークラインとして抽出し、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する。このようにすることで、抽出装置1は、複数の路線が接続している画地のうちから所定の接続状態の路線が接続している画地を抽出することを可能とする。
【0058】
すなわち、画地の隣接路線として側方路線および二方路線が記憶されている場合でも、路線の接続状況によっては、課税処理においてそれらの路線のすべてが画地に隣接しているとは評価されない場合がある。したがって、L字型またはU字型の路線と隣接する画地については、画地に隣接する路線を課税担当者等が個別に判断する必要がある。しかしながら、多数の画地のうちからL字型またはU字型の路線に隣接する画地のみを抽出することは容易でない。抽出装置1は、L字型またはU字型の道路に対応する、端点同士で接続する二つの路線に隣接する画地を抽出することにより、課税担当者による個別の判断を要する画地を適切に抽出することを可能とする。
【0059】
抽出装置1には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0060】
上述した説明では、抽出処理のステップS105において図形抽出部155がネットワークラインを膨張させるものとした。このような例に限られず、路線テーブルT1において路線の頂点位置に誤差が含まれず、相互に接続する端点および中間点が同一の位置座標を有している場合には、図形抽出部155はネットワークラインを膨張させなくてもよい。この場合、図形抽出部155は、膨張されていない状態で空間的に重なる複数のネットワークラインを一つのネットワークラインに結合する。このようにしても、抽出装置1は所定の接続状態を有する路線に隣接する画地を抽出することができる。
【0061】
上述した説明では、抽出処理のステップS102において接続点が設定されるものとしたが、接続点の情報があらかじめ記憶部11に記憶されていてもよい。この場合、ステップS102およびS104は省略される。
【0062】
上述した説明では、抽出処理のステップS104において生成部154が交差ポリゴンを生成し、ステップS105において図形抽出部155が複数の路線が示す直線または折れ線の交差ポリゴンに含まれない部分のみを抽出するものとしたが、このような例に限られない。ステップS105において、図形抽出部155は直線または折れ線の交差点で接続する端点を、直線または折れ線の長さが短くなるように直線または折れ線に沿って移動させることにより、直線または折れ線を交差点で分割してもよい。この場合、ステップS104は省略される。
【0063】
上述した抽出装置1の機能は、相互に通信する複数の装置によって実現されてもよい。
【0064】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 抽出装置
151 取得部
152 接続点設定部
153 特定部
154 生成部
155 図形抽出部
156 対応関係設定部
157 画地抽出部
158 出力部
【要約】
【課題】複数の路線のうちから所定の接続状態の路線に隣接する画地を抽出することを可能とする抽出装置等を提供する。
【解決手段】抽出装置は、直線または折れ線を示す図形データである複数の路線を記憶するとともに、複数の画地と、各画地に隣接する路線とを関連付けて記憶する記憶部と、複数の路線の接続点のうちから二つの路線のみが端点同士で接続する接続点を除いた点を交差点として特定する特定部と、複数の路線が示す直線または折れ線のそれぞれを交差点で分割するとともに前記交差点以外の接続点で結合してネットワークラインとして抽出する図形抽出部と、複数の路線と抽出されたネットワークラインとの対応関係を設定する対応関係設定部と、複数の画地のうちから、互いに同一のネットワークラインに対応する複数の路線に隣接する画地を抽出する画地抽出部と、を有する。
【選択図】
図7