(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像復号装置、画像復号方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/126 20140101AFI20240611BHJP
H04N 19/157 20140101ALI20240611BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20240611BHJP
H04N 19/186 20140101ALI20240611BHJP
H04N 19/70 20140101ALI20240611BHJP
【FI】
H04N19/126
H04N19/157
H04N19/176
H04N19/186
H04N19/70
(21)【出願番号】P 2023076470
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019237290の分割
【原出願日】2019-12-26
【審査請求日】2023-05-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「多様な用途、環境下での高精細映像の活用に資する次世代映像伝送・通信技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭
(72)【発明者】
【氏名】内藤 整
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053680(JP,A)
【文献】特表2022-548825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化データを復号するように構成されている画像復号装置であって、
CTU単位ごとに、色差QPオフセットを初期化するように構成されている符号化単位レベル色差QP初期化部と、
前記符号化データの復号結果の色差QP分割粒度が所定値以下である場合には、前記色差QPオフセットを初期化するように構成されている色差QPオフセット初期化部と、
前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットをセットして導出するように構成されている色差QPオフセット導出部と、
前記色差QPオフセット導出部によって導出された前記色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出するように構成されている色差QP導出部とを具備することを特徴とする画像復号装置。
【請求項2】
CTU単位ごとに、色差QPオフセットを初期化する工程と、
符号化データの復号結果の色差QP分割粒度が所定値以下である場合には、前記色差QPオフセットを初期化する工程と、
前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットをセットして導出する工程と、
導出された前記色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出する工程とを有することを特徴とする画像復号方法。
【請求項3】
コンピュータを、符号化データを復号するように構成されている画像復号装置として機能させるプログラムであって、
前記画像復号装置は、
CTU単位ごとに、色差QPオフセットを初期化するように構成されている符号化単位レベル色差QP初期化部と、
前記符号化データの復号結果の色差QP分割粒度が所定値以下である場合には、前記色差QPオフセットを初期化するように構成されている色差QPオフセット初期化部と、
前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットをセットして導出するように構成されている色差QPオフセット導出部と、
前記色差QPオフセット導出部によって導出された前記色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出するように構成されている色差QP導出部とを具備することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像復号装置、画像復号方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イントラ予測又はインター予測、予測残差信号の変換・量子化、エントロピー符号化を用いた画像符号化方式が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
以下、次世代動画像符号化方式であるVVC(Versatile Video Coding) Draft 7における符号化ユニットの分割方式及びイントラ予測のうちの色差イントラ予測方式について述べる(非特許文献2参照)。
【0004】
図8に示すように、両方式における符号化ユニットは、四分木、二分木及び三分木を用いて再帰的に分割されるように構成されている。ここで、輝度成分と色差成分との間で、同一の分割パターンを選択してもよいし(シングルツリー)、異なる分割パターンを選択してもよい(デュアルツリー)。
【0005】
非特許文献2には、色差ブロックのQP(量子化パラメータ)値の制御方法が開示されている。かかる色差ブロックのQP値は、対応する輝度ブロックのQP値を対応表により変換し、ピクチャやスライスや符号化ブロックに代表される上位の粒度で指定されたオフセットを加算することによって導出される。また、導出された色差ブロックのQP値は、デブロッキングフィルタの決定に利用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】ITU-T H.265 High Efficiency Video Coding
【文献】Versatile Video Coding(Draft 7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、次世代動画像符号化方式であるVVC Draft 7では、色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタ処理には、色差ブロックのQP値が使われており、予測残差信号が存在しない場合に、かかるQP値が存在しないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタの決定において、係数が符号化されていないブロックにおけるデブロッキングフィルタ性能を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、隣接する色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタ決定において一貫性が保持されるため、係数が符号化されていないブロック及び復号順序で直前のブロックにおけるデブロッキングフィルタ性能を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、並列処理単位の異なる色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタ決定において並列性が保持されるため、デブロッキングフィルタの並列処理機能性を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の特徴は、符号化データを復号する画像復号装置であって、前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットを初期化するように構成されている色差QPオフセット初期化部と、前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットをセットして導出するように構成されている色差QPオフセット導出部と、前記色差QPオフセット導出部によって導出された前記色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出するように構成されている色差QP導出部とを具備することを要旨とする。
【0012】
本発明の第2の特徴は、画像復号方法であって、符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットを初期化する工程と、前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットをセットして導出する工程と、導出された前記色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出する工程とを有することを要旨とする。
【0013】
本発明の第3の特徴は、コンピュータを、符号化データを復号するように構成されている画像復号装置として機能させるプログラムであって、前記画像復号装置は、前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットを初期化するように構成されている色差QPオフセット初期化部と、前記符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットをセットして導出するように構成されている色差QPオフセット導出部と、前記色差QPオフセット導出部によって導出された前記色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出するように構成されている色差QP導出部とを具備することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタの決定において、係数が符号化されていないブロックにおけるデブロッキングフィルタ性能を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、隣接する色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタ決定において一貫性が保持されるため、係数が符号化されていないブロック及び復号順序で直前のブロックにおけるデブロッキングフィルタ性能を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、並列処理単位の異なる色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタ決定において並列性が保持されるため、デブロッキングフィルタの並列処理機能性を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る画像処理システム1の構成の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る画像符号化装置100の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る画像符号化装置100のエントロピー符号化部104及び画像復号装置200のエントロピー復号部201の一部の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る画像符号化装置100のエントロピー符号化部104の色差QPオフセット初期化部104Aにおける処理について表すシンタックスの一例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る画像復号装置200のエントロピー復号部201の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る画像符号化装置100のエントロピー符号化部104及び画像復号装置200のエントロピー復号部201の一部の機能ブロックの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら、説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像処理システム1の機能ブロックの一例を示す図である。画像処理システム1は、動画像を符号化して符号化データを生成する画像符号化装置100と、画像符号化装置100により生成された符号化データを復号する画像復号装置200とを備える。画像符号化装置100と画像復号装置200との間では、上述の符号化データが、例えば、伝送路を介して送受信される。
【0020】
<画像符号化装置100>
図2は、画像符号化装置100の機能ブロックの一例を示す図である。
図2に示すように、画像符号化装置100は、インター予測部101と、イントラ予測部102と、変換・量子化部103と、エントロピー符号化部104と、逆変換・逆量子化部105と、減算部106と、加算部107と、インループフィルタ部108と、フレームバッファ109と、ブロック分割部110と、ブロック統合部111とを備える。
【0021】
ブロック分割部110は、入力画像の画面全体を同一正方形に分割し、更に四分木等により再帰的に分割した画像(分割画像)を出力するように構成されている。
【0022】
インター予測部101は、ブロック分割部110によって入力された分割画像及びフレームバッファ109から入力されるフィルタ後局所復号画像を用いて、インター予測を行ってインター予測画像を生成して出力するように構成されている。
【0023】
イントラ予測部102は、ブロック分割部110によって入力された分割画像及び後述のフィルタ前局所復号画像を用いて、イントラ予測を行ってイントラ予測画像を生成して出力するように構成されている。
【0024】
変換・量子化部103は、減算部106から入力される残差信号に対して直交変換処理を行い、かかる直交変換処理により得られる変換係数に対して量子化処理を行い、かかる量子化処理により得られる量子化されたレベル値を出力するように構成されている。
【0025】
エントロピー符号化部104は、変換・量子化部103から入力される量子化されたレベル値、変換ユニットサイズ及び変換サイズをエントロピー符号化して符号化データとして出力するように構成されている。
【0026】
逆変換・逆量子化部105は、変換・量子化部103から入力される量子化されたレベル値に対して逆量子化処理を行い、かかる逆量子化処理により得られた変換係数に対して逆直交変換処理を行い、かかる逆直交変換処理により得られる逆直交変換された残差信号を出力するように構成されている。
【0027】
減算部106は、ブロック分割部110によって入力された分割画像とイントラ予測画像或いはインター予測画像との差分である残差信号を出力するように構成されている。
【0028】
加算部107は、逆変換・逆量子化部105から入力される逆直交変換された残差信号とイントラ予測画像或いはインター予測画像とを加算して得られる分割画像を出力するように構成されている。
【0029】
ブロック統合部111は、加算部107から入力される分割画像を統合することで得られたフィルタ前局所復号画像を出力するように構成されている。
【0030】
インループフィルタ部108は、ブロック統合部111から入力されるフィルタ前局所復号画像に対して、デブロッキングフィルタ処理等のインループフィルタ処理を適用してフィルタ後局所復号画像を生成して出力するように構成されている。ここで、フィルタ前局所復号画像は、逆直交変換された残差信号とイントラ予測画像或いはインター予測画像とを加算して得られる信号である。
【0031】
フレームバッファ109は、フィルタ後局所復号画像を蓄積し、適宜、フィルタ後局所復号画像としてインター予測部101に供給する。
【0032】
以下、
図3を参照して、本実施形態に係る画像符号化装置100のエントロピー符号化部104について説明する。
図3は、本実施形態に係る画像符号化装置100のエントロピー符号化部104の一部の機能ブロックの一例を示す図である。
【0033】
図3に示すように、本実施形態に係る画像符号化装置100のエントロピー符号化部104は、色差QPオフセット初期化部104Aと、色差QPオフセット導出部104Bと、色差QP導出部104Cとを備える。
色差QPオフセット初期化部104Aは、オフセット値の有効フラグ及び色差QP分割粒度を入力とするように構成されている。
【0034】
ここで、色差QPオフセット初期化部104Aは、入力されたオフセット値の有効フラグ及び色差QP分割粒度に基づいて、色差QPオフセットを初期化するように構成されている。
【0035】
具体的には、色差QPオフセット初期化部104Aは、オフセット値の有効フラグが有効であり且つ色差QP分割粒度が所定値以下である場合には、色差QPオフセットをリセット(「0」に設定)して出力するように構成されている。
【0036】
一方、色差QPオフセット初期化部104Aは、オフセット値の有効フラグが有効でない場合或いは色差QP分割粒度が所定値以下でない場合には、現状の色差QPオフセットを維持して出力するように構成されている。
【0037】
図4に、色差QPオフセット初期化部104Aにおける処理について表すシンタックスを示す。
【0038】
ここで、「cu_chroma_qp_offset_enabled_flag」は、上述のオフセット値の有効フラグを示し、「qgOnC」は、色差ブロックの量子化の制御単位の有効フラグを示し、「cbSubdiv」は、上述の色差QP分割粒度を示し、「CuChromaQpOffsetSubdiv」は、上述の所定値を示す。
【0039】
また、「IsCuChromaQpOffsetCoded」は、符号化ユニットについて色差QPオフセット値の符号化有無フラグを示し、「CuChromaQpOffsetIdx」は、上述の色差QPオフセットを示す。
【0040】
なお、CuChromaQpOffsetIdxの代わりに、CuQpOffsetCb、CuQpOffsetCr、CuQpOffsetCbCr等の色差符号化方式に対応するシンタックスを用いてもよい。
【0041】
色差QPオフセット導出部104Bは、図示しない制御部によって導出された色差QPオフセットフラグ及び色差QPオフセットインデックス、及び、色差QPオフセット初期化部104Aによって初期化された色差QPオフセットを入力とするように構成されている。
【0042】
ここで、色差QPオフセット導出部104Bは、入力された色差QPオフセットフラグ、色差QPオフセットインデックス及び色差QPオフセットに基づいて、色差QPオフセットをセットして導出するように構成されている。
【0043】
具体的には、色差QPオフセット導出部104Bは、色差QPオフセットフラグが無効であれば、導出後の色差QPオフセットとして、ゼロ値を出力するように構成されている。
【0044】
一方、色差QPオフセット導出部104Bは、色差QPオフセットフラグが有効であれば、導出後の色差QPオフセットとして、色差QPオフセットインデックスを色差QPオフセットリストの適用により変換した値を出力するように構成されている。
【0045】
以下の(式1)は、色差QPオフセットフラグが有効である場合の色差QPオフセット導出部104Bにおける処理の一例について示す。
【0046】
CuQpOffsetCx=cx_qp_offset_list[CuChromaQpOffsetIdx] … (式1)
なお、式中のCxは、Cb、Cr及びCbCrとして個別に定義されてもよい。
【0047】
ここで、「cx_qp_offset_list[]」は、色差QPオフセットリストを示す。
【0048】
色差QP導出部104Cは、輝度QP及び色差QPオフセットを入力とするように構成されている。
【0049】
また、色差QP導出部104Cは、入力された輝度QP及び色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出して出力するように構成されている。
【0050】
具体的には、色差QP導出部104Cは、輝度QPを変換表の適用により変換した値に色差QPオフセット加算して、色差QPを導出するように構成されている。
【0051】
例えば、以下の(式2)~(式4)は、色差QP導出部104Cにおける処理の一例について示す。
【0052】
qPChroma=Clip3(-QpBdOffset,63,Qpy) … (式2)
qPCx=ChromaQpTable[i][qPChroma] … (式3)
Qp’cx=Clip3(-QpBdOffset,63,QpCx+pps_cx_qp_offset+slice_cx_qp_offset+CuQpOffsetCx)+QpBdOffset … (式4)
なお、式中のCxは、Cb、Cr及びCbCrとして個別に定義されてもよい。
【0053】
ここで、「QpBdOffset」は、量子化パラメータレンジのオフセットを示し、「Qpy」は、量子化パラメータレンジのオフセットを適用前の輝度QPを示し、「ChromaQpTable」は、色差符号化方式に応じた輝度QPから色差量子化パラメータへの変換表を示し、「i」は、色差符号化方式の種別を示し、「pps_cx_qp_offset」は、ピクチャごとの輝度QPから色差量子化パラメータへのオフセットを示し、「slice_cx_qp_offset」は、スライスごとのpps_cx_qp_offsetへの加算値を示す。
【0054】
<画像復号装置200>
図4は、本実施形態に係る画像復号装置200のブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係る画像復号装置200は、エントロピー復号部201と、逆変換・逆量子化部202と、インター予測部203と、イントラ予測部204と、加算部205と、インループフィルタ部206と、フレームバッファ207と、ブロック統合部208とを備える。
【0055】
エントロピー復号部201は、符号化データをエントロピー復号し、量子化されたレベル値や、画像符号化装置100で生成された動き補償方式等を出力するように構成されている。
【0056】
逆変換・逆量子化部202は、エントロピー復号部201から入力される量子化されたレベル値に対して逆量子化処理を行い、かかる逆量子化処理により得られた結果に対して逆直交変換処理を行って残差信号として出力するように構成されている。
【0057】
インター予測部203は、フレームバッファ207から入力されるフィルタ後局所復号画像を用いて、インター予測を行ってインター予測画像を生成して出力するように構成されている。
【0058】
イントラ予測部204は、加算部205から入力されるフィルタ前局所復号画像を用いて、イントラ予測を行ってイントラ予測画像を生成して出力するように構成されている。
【0059】
加算部205は、逆変換・逆量子化部202から入力される残差信号と予測画像(インター予測部203から入力されるインター予測画像或いはイントラ予測部204から入力されるイントラ予測画像)とを加算して得られる分割画像を出力するように構成されている。
【0060】
ここで、予測画像とは、インター予測部203から入力されるインター予測画像及びイントラ予測部204から入力されるイントラ予測画像のうち、エントロピー復号により得られた予測方法により算出された予測画像のことである。
【0061】
ブロック統合部208は、加算部205から入力される分割画像を統合することで得られたフィルタ前局所復号画像を出力するように構成されている。
【0062】
インループフィルタ部206は、ブロック統合部208から入力されるフィルタ前局所復号画像に対してデユニットフィルタ処理等のインループフィルタ処理を適用してフィルタ後局所復号画像を生成して出力するように構成されている。
【0063】
フレームバッファ207は、インループフィルタ206から入力されるフィルタ後局所復号画像を蓄積し、適宜、フィルタ後局所復号画像としてインター予測部203に供給するとともに、復号済み画像として出力するように構成されている。
【0064】
以下、
図3を参照して、本実施形態に係る画像復号装置200のエントロピー復号部201について説明する。
【0065】
具体的には、エントロピー復号部201は、
図3に示す画像符号化装置100のエントロピー符号化部104と同様に、色差QPオフセット初期化部104Aと、色差QPオフセット導出部104Bと、色差QP導出部104Cとを備える。
【0066】
ここで、色差QPオフセット初期化部104Aは、符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットを初期化するように構成されている。
【0067】
以下、
図5を参照して、本実施形態に係るエントロピー復号部201の動作の一例について説明する。
【0068】
図6に示すように、ステップS101において、エントロピー復号部201は、画像符号化装置100から送信された符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットを初期化する。
【0069】
具体的には、エントロピー復号部201は、入力されたオフセット値の有効フラグ及び色差QP分割粒度に基づいて、色差QPオフセットを初期化するように構成されている。
【0070】
ステップS102において、エントロピー復号部201は、符号化データの復号結果に基づいて、色差QPオフセットをセットして導出する。
【0071】
具体的には、エントロピー復号部201は、符号化データの復号結果である色差QPオフセットフラグ及び色差QPオフセットインデックス、及び、初期化した色差QPオフセットに基づいて、色差QPオフセットをセットして導出する
ステップS103において、エントロピー復号部201は、導出した色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出する。
【0072】
具体的には、エントロピー復号部201は、図示しない輝度QP及び導出した色差QPオフセットに基づいて、色差QPを導出して出力する
本実施形態に係る画像処理システム1によれば、色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタの決定において、係数が符号化されていないブロックにおけるデブロッキングフィルタ性能を改善することができる。
【0073】
具体的には、デブロッキングフィルタの決定には、QP値が必要であるが、VVC Draft 7では、係数のないブロックのQPオフセットが定義されていない場合があってQP値が不定となり、デブロッキングフィルタの決定ができない場合がある。或いは、VVC Draft 7において、係数のないブロックのQPオフセットが定義されていない場合に、適当な値とみなしてQP値を導出すると、デブロッキングフィルタの決定が不正確になり、性能が低下するという結果になる。
【0074】
したがって、本実施形態に係る画像処理システム1により、総じてデブロッキングの決定が改善され、結果として性能を改善することができる。
【0075】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る画像処理システム1について、上述の第1実施形態に係る画像処理システム1との相違点に着目して説明する。
【0076】
本実施形態において、色差QPオフセット初期化部104Aは、上述のオフセット値の有効フラグが有効であり且つ色差QP分割粒度が所定値以下である場合、色差QPオフセットの初期化において、復号順序で直前の色差ブロックで設定された色差QPオフセットにセットするように構成されている。
【0077】
本実施形態に係る画像処理システム2によれば、色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタの決定において、係数が符号化されていないブロック及び復号順序で直前のブロックにおけるデブロッキングフィルタ性能を改善することができる。
【0078】
(第3実施形態)
以下、
図7を参照して、本発明の第3実施形態に係る画像処理システム1について、上述の第1実施形態に係る画像処理システム1との相違点に着目して説明する。
【0079】
図7に示すように、本実施形態において、画像符号化装置100のエントロピー符号化部104及び画像復号装置200のエントロピー復号部201は、
図3に示す構成に加えて、CTUレベル色差QP初期化部104Dを備えている。
【0080】
CTUレベル色差QP初期化部104D及び色差QPオフセット初期化部104Aは、色差QPオフセットの初期化を行う粒度が異なる。
【0081】
CTUレベル色差QP初期化部104Dは、CTU(すなわち、再帰的分割されない符号化単位)ごとに、色差QPオフセットの初期化を行うように構成されている。
【0082】
具体的には、CTUレベル色差QP初期化部104Dは、CTUごとの初期化において、CTUごとに、入力によらず色差QPオフセットをリセットして出力するように構成されている。
【0083】
ここで、CTUレベルは、再帰的な分割の始点となるユニットであってもよい。
【0084】
なお、CTUレベル色差QP初期化部104Dは、CTUごとではなく、CTUラインごと、Titleごと、Sliceごと或いはピクチャごとに、色差QPオフセットを初期化するように構成されていてもよい。
【0085】
CTUレベル色差QP初期化部104Dは、CTUラインごとに、色差QPオフセットを初期化する場合、エントロピー符号化同期有効化フラグ(entropy_coding_sync_flag)と関連付けてもよい。
【0086】
本実施形態に係る画像処理システム3によれば、並列処理単位の異なる色差ブロックにおけるデブロッキングフィルタ決定において、デブロッキングフィルタの並列処理機能性を改善することができる
上述の画像符号化装置100及び画像復号装置200は、コンピュータに各機能(各工程)を実行させるプログラムであって実現されていてもよい。
【0087】
なお、上述の各実施形態では、本発明を画像符号化装置100及び画像復号装置200への適用を例にして説明したが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、画像符号化装置100及び画像復号装置200の各機能を備えた画像符号化システム及び画像復号システムにも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1…画像処理システム
100…画像符号化装置
101、203…インター予測部
102、204…イントラ予測部
103…変換・量子化部
104…エントロピー符号化部
104A…色差QPオフセット初期化部
104B…色差QPオフセット導出部
104C…色差QP導出部
104D…CTUレベル色差QP初期化部
105、202…逆変換・逆量子化部
106…減算部
107、205…加算部
108、206…インループフィルタ部
109、207…フレームバッファ
110…ブロック分割部
111、208…ブロック統合部
200…画像復号装置
201…エントロピー復号部