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特許7502547溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および溶鉱炉の操業方法
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  • 特許-溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および溶鉱炉の操業方法 図1
  • 特許-溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および溶鉱炉の操業方法 図2
  • 特許-溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および溶鉱炉の操業方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および溶鉱炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20240611BHJP
   F27D 25/00 20100101ALI20240611BHJP
【FI】
C21B5/00 323
F27D25/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023194903
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000200301
【氏名又は名称】JFEミネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筒井 慶喜
(72)【発明者】
【氏名】郷原 大成
(72)【発明者】
【氏名】塩田 敏生
(72)【発明者】
【氏名】築地 秀明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 紀文
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特公昭42-026377(JP,B1)
【文献】特開昭54-033808(JP,A)
【文献】特開昭54-051903(JP,A)
【文献】特開昭55-115903(JP,A)
【文献】特開昭58-002584(JP,A)
【文献】特開平01-301811(JP,A)
【文献】特開平05-117729(JP,A)
【文献】特開平06-322423(JP,A)
【文献】特開2010-048528(JP,A)
【文献】特開2012-219352(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-089434(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00,7/06,7/10
F27D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鉱炉への装入物の上面を付着物の下部まで下げ、前記付着物を露出させ、露出させた前記付着物に散水を行い、前記付着物を除去する、溶鉱炉の炉壁付着物除去方法。
【請求項2】
前記散水では、散水-散水間にインターバルを設け、間欠的に散水する、請求項1に記載の溶鉱炉の炉壁付着物除去方法。
【請求項3】
前記散水では、所定の炉熱水準を保持するよう1回あたりの散水時間、インターバル時間、散水流量および総散水量を調整し、前記付着物を除去する、請求項2に記載の溶鉱炉の炉壁付着物除去方法。
【請求項4】
前記散水は複数回に分けて行い、1回の散水時間を30~120sの範囲とし、散水のインターバル時間を60~240sの範囲とし、炉容積1mに対する散水流量を8~23kg/hの範囲とし、炉容積1mに対する総散水量を13~39kgの範囲とすることで、前記付着物を除去する、請求項3に記載の溶鉱炉の炉壁付着物除去方法。
【請求項5】
操業中又は休風中に、溶鉱炉への装入物を付着物の下部まで減量させ、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の溶鉱炉の炉壁付着物除去方法により、炉壁の付着物を除去する付着物除去工程を含む、溶鉱炉の操業方法。
【請求項6】
さらに、溶鉱炉の炉壁への付着物を検知する工程を有し、
前記溶鉱炉内の炉壁に前記付着物の付着を検知したら、前記付着物除去工程を実行する、請求項5に記載の溶鉱炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鉱炉内の炉壁に付着する付着物を除去する方法および溶鉱炉の操業方法に関する。本明細書において、質量を表す単位の「t」は1000kgを表す。
【背景技術】
【0002】
溶鉱炉内の炉壁に付着する付着物の生成メカニズムは以下のように考えられる。すなわち、まず、鉱石に内包されるZn(亜鉛)やNa(ナトリウム)などのアルカリ類が、温度の高い溶鉱炉の下部で蒸発し、シャフトや炉口近傍の炉壁などの比較的低温の部分に凝縮する。この凝縮物が結合材となって装入された鉱石やコークスを固め、強固な付着物となる。
【0003】
この付着物が炉壁で成長すると炉内形状がいびつとなり、炉内のガス流れが不安定となる。そのため、炉内物の荷下がり不調や炉内の通気性悪化を招く。そして、溶鉱炉の生産性が低下する。一方で、付着物が崩落すると、付着物の再溶解に伴う熱量不足から、炉温低下を生じる。そのため、コークス比の悪化、ひいては、生産性の低下につながる。
【0004】
このような事情から、溶鉱炉の操業にあたっては、亜鉛やアルカリなどの炉内循環量を抑制するために、原料装入物での亜鉛やアルカリ類の含有量を厳しく制限すること、または、炉壁の付着物を除去することが行われてきた。
【0005】
従来の付着物除去方法は、休風時や操業時に原料装入物を減尺し、付着物を放冷することでサーマルショックを与え、剥離・除去していた。また、特許文献1には、装入物を入れたまま、あるいは、減尺してダイナマイト等の爆薬で爆破除去することが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、付着物を検知し、装入物を減尺して休風し、気体を冷媒として吹き付けて冷却し、付着物の物理的性状、たとえば、熱膨張を急激に変化させて亀裂を生じさせ、付着物を脱落除去させることが開示されている。また、特許文献3には、付着物の発生を把握し、減尺休風操業を行い、操業への復帰時に装入原料を付着物に衝突させて付着物除去を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭42-026377号公報
【文献】特開昭54-033808号公報
【文献】特開昭55-115903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題があった。
まず、従来法の原料装入物での亜鉛やアルカリ類の含有量を厳しく制限することは、原料の選択幅を狭くし、製品の高騰を招くことから、経済的に採用しがたい。また、単に付着物を放冷するだけでは、剥離する量が少なく、効果が小さい問題があった。とくに、操業中の減尺は、時間も短く、付着物の除去効果が小さい。
【0009】
また、特許文献1に記載の方法は、付着物の除去という観点では有効であるものの、爆破により周辺設備、たとえば、鉄皮やレンガなどの炉体を損傷するおそれが大きい。
【0010】
また、特許文献2や3に記載の技術は、休風を前提としており、操業中に適用することを想定していない。休風は数か月に1度の作業であり、頻度が限定的で、付着物が肥大してしまうおそれがあった。また、特許文献2に記載の気体冷却では熱容量が小さく、冷却の効果を発揮するのに長時間を要する問題があった。さらに、空気を用いた冷却では、休風時に炉内の燃焼性ガスを非燃焼性ガスに置換しなければ、爆発のおそれがあり、操業中には適用できない。
【0011】
また、特許文献3に記載の装入物を付着物に衝突させる方法は、付着物の除去後、装入物がレンガに衝突して損傷するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、従来技術が抱えている上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、休風時や操業時に効果的に炉壁の付着物を除去することが可能な溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および操業方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、付着物を露出させたうえで適切な条件で散水して冷却することにより付着物を効率的に除去できることを見出した。
【0014】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる溶鉱炉の炉壁付着物除去方法は、溶鉱炉への装入物の上面を付着物の下部まで下げ、前記付着物を露出させ、露出させた前記付着物に散水を行い、前記付着物を除去することを特徴とする。
【0015】
なお、本発明にかかる溶鉱炉の炉壁付着物除去方法は、
a.前記散水では、散水-散水間にインターバルを設け、間欠的に散水すること、
b.前記散水では、所定の炉熱水準を保持するよう1回あたりの散水時間、インターバル時間、散水流量および総散水量を調整し、前記付着物を除去すること、
c.前記散水は複数回に分けて行い、1回の散水時間を30~120sの範囲とし、散水のインターバル時間を60~240sの範囲とし、炉容積1mに対する散水流量を8~23kg/hの範囲とし、炉容積1mに対する総散水量を13~39kgの範囲とすることで、前記付着物を除去すること、
がより好ましい解決手段になる。
【0016】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる溶鉱炉の操業方法は、操業中又は休風中に、溶鉱炉への装入物を付着物の下部まで減量させ、上記いずれかの溶鉱炉の炉壁付着物除去方法により、炉壁の付着物を除去する付着物除去工程を含むことを特徴とする。
【0017】
なお、本発明にかかる溶鉱炉の操業方法は、さらに、溶鉱炉の炉壁への付着物を検知する工程を有し、溶鉱炉内の炉壁に前記付着物の付着を検知したら、前記付着物除去工程を実行することがより好ましい解決手段になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、休風中だけでなく操業中においても付着物を除去できるので、課題に挙げた不具合が解消出来た。また、減尺することでシャフト部の付着物も除去できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】溶鉱炉の上部垂直断面を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態にかかる散水条件の一例を示す図であって、(a)は図1のX-X視模式断面図であり、(b)は散水パターンを表す図である。
図3】上記実施形態にかかる散水条件の他の例を示す図であって、(a)は図1のX-X視模式断面図であり、(b)は散水パターンを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を具体的に説明する。図1は本発明にかかる溶鉱炉の炉壁付着物除去方法を適用して好適な溶鉱炉の上部垂直断面を表す概略断面図である。
本実施形態にかかる溶鉱炉1は、鉄鉱石やマンガン鉱石を主原料として、銑鉄やフェロマンガンを製造する設備である。とくに、マンガン鉱石を原料としてフェロマンガンを製造する溶鉱炉1に適用して好適である。マンガン鉱石を原料とする溶鉱炉1の炉壁付着物6はNa(ナトリウム)分やK(カリウム)分が多く、Zn(亜鉛)分が少ない特徴がある。したがって、マンガン鉱石を原料とする溶鉱炉の付着物はNaOやKOの水和膨張が大きい。
【0021】
本実施形態にかかる溶鉱炉の炉壁付着物除去方法では、付着物6の発生の検知を特に限定するものではないが、炉口3近傍の炉壁2に付着した付着物6の発生を以下のいずれかの方法で検知することが好ましい。
(1)溶鉱炉1の炉内装入物Sの減尺7を行い、つまり、減尺前の装入物レベルSL0から減尺後の装入物レベルSLまで下げることにより、炉壁2の内面を目視や撮影画像で観察して、たとえば、水冷のシャフトステーブ5への付着物6の高さや厚みを直接把握すること。
(2)炉体外部に設置した温度計の周方向の温度差や温度の時間変化から炉壁2への付着物6の発生を検知すること。
(3)炉体を冷却する冷却水の温度変化から付着物6の発生を検知すること。
【0022】
本実施形態では、たとえば、操業中に散水ノズル4から散水4Aによって溶鉱炉1の温度が低下するのを補償するために、事前に操業温度を通常より高めに設定したうえで、炉内装入物Sの上面(装入物レベルSL)を炉壁2への付着物6の下部まで下げて、付着物6を露出させる。そして、露出させた付着物6に対し、所定の条件で散水する。そして、冷却による熱膨張差によって付着物6に発生する亀裂と、亀裂から浸入した水とアルカリ分との反応による水和膨張を主因とする亀裂の進展とによって、付着物6の脱落・除去8を行う。なお、減尺休風中に散水することも可能である。同様の付着物除去効果が得られる。
【0023】
本実施形態における散水方法は、所定時間tsの散水4Aと、散水-散水間に散水を行わないインターバル時間tiを設け、間欠的に散水することが好ましい。インターバル時間tiを置くことで、散水での冷却による収縮と復熱による膨張とで付着物6に亀裂が入りやすくなる。また、散水条件を調整し、溶鉱炉1の炉熱水準を所定の範囲とすることが好ましい。ここで、溶鉱炉1の炉熱水準は、溶鉱炉1の操業温度および製造物の成分変動を用いて評価する。溶鉱炉1の操業温度を所定の範囲に納め、製造物、たとえば、フェロマンガンの成分であるSiなどの濃度変動を所定の範囲に納めることができる。
【0024】
1回あたりの散水時間tiは30~120sの範囲とすることが好ましい。下限未満では、付着物6の除去効果が小さすぎるおそれがある。上限超えでは炉熱を低下させすぎ、水性ガス反応により水素ガスが発生するおそれがある。インターバル時間tiは60~240sの範囲とすることが好ましい。下限未満では、炉熱の回復が不十分となるおそれがある。上限超えでは、付着物6の完全除去が長時間となるおそれがある。インターバル時間tiは散水時間tsの2倍程度とすることが好ましい。炉熱の回復および付着物6へのサーマルショックが期待できる。炉容積1mに対する散水流量は8~23kg/hの範囲とすることが好ましい。下限未満では、付着物の除去効果が小さすぎるおそれがある。上限超えでは、炉熱が低下しすぎ、水性ガス反応により水素ガスが発生するおそれがある。炉容積1mに対する総散水量を13~39kgの範囲とすることが好ましい。下限未満では、付着物6の除去残りが懸念される。上限超えでは、炉熱が低下しすぎるおそれがある。炉熱の低下は、還元材比を上昇させ、Si濃度が上昇するなど操業の安定性を阻害する。
【0025】
本実施形態にかかる散水ノズル4は散水4Aの向きを付着物6に向けて調整可能な1個を配置し、または、複数を炉口3の周方向に配置することができる。炉口3の周方向に配置した複数の散水ノズル4は、予め散水する順番を決めて一本ずつ、もしくは複数本ずつ順に散水することで、付着物除去を均一にかつ効率的に行うことができる。
図1は、炉壁2の付着物6に向けて散水ノズル4を配置した様子を示した。図2(a)は図1のX-X断面で見た炉口3に等間隔に配置した8本の散水ノズル4を示す概略図である。斜体数字で散水順4Bを示す。図2(b)は予め決めておいた場所の付着物を狙って散水ノズル4を時計回りに順にインターバル時間tiを設けながら連続的に散水する様子を示したパターン図である。こうすることで偏りなく散水でき、均一かつ効率的に付着物除去を行うことができる。図2(b)中のtsは散水時間を表し、taは総散水時間を表す。パターン図の黒塗りの期間に散水している。
【0026】
また、炉壁2の一部に付着物6がある場合は、それを狙った散水ノズル4を選択し、散水4Aに供することができる。図3(a)は、散水ノズルCとGは対向する位置に付着物6はないのでこれらは用いずに、散水ノズルA,B、D,E、F、Hを選択した様子を示す。図3(b)は対向する位置の付着物6に対し、予め決めておいた場所の付着物6を狙って散水ノズル4を用いて散水時間tsの2倍のインターバル時間tiを設け、散水した例である。こうすることで炉壁2に偏在する付着物6を均一かつ効率的に除去を行うことができる。
【0027】
本実施形態にかかる溶鉱炉の操業方法では、操業中又は休風中に、溶鉱炉への装入物を付着物の下部まで減量させ、上記炉壁付着物除去方法により、炉壁に付着した付着物を除去する付着物除去工程を含む。除去された付着物は、原料など装入物とともに溶鉱炉を下降する。付着物中の原料成分はそのまま炉下部で溶解される。付着物中のアルカリ分など揮発成分はガス化して上昇する。ガス化した成分の一部は原料等に捕捉されて、炉内循環する。その他は、ダストなどとして系外に排出される。
【0028】
本実施形態にかかる溶鉱炉の操業方法では、溶鉱炉の炉壁への付着物を検知する工程を有し、溶鉱炉内の炉壁に付着物の付着を検知したら、上記付着物除去工程を実行することが好ましい。付着物の検知には、上記した(1)~(3)の3つの方法が例示される。
【実施例
【0029】
<実施例1>
内容積450mの溶鉱炉を用い、炉壁への付着物を除去するための専用散水ノズルを炉体円周上に8本設置した。散水ノズルは、付着物へ散水できるようノズル向きを調整し、散水ノズルの管径は下記散水流量を満たす管径を選定した。散水ノズルは、炉内風速によって向きが変わらないよう単管ノズルを選定し、以下の確認を行った。
【0030】
溶鉱炉内の炉壁の付着物の付着検知は、炉体に設置した炉体温度計、または炉体に設置した冷却水の水温の変化で検知することとした。また、付着物が除去出来たかの判断も炉体温度計による測定温度の変化、または冷却水の水温の変化で確認した。付着物が除去できなかったら温度変化はなく、付着物が除去できたら測定温度が上昇する。本実施例では、炉体に設置した冷却水の水温の変化で検知した。
【0031】
炉体冷却水温の変化から、炉体付着物が5.8tの質量と推定された。この状態で休風中に溶鉱炉内の装入物の上面を付着物の下部まで下げ、付着物を露出させた。各ノズル1本ずつ、60sずつ散水を行い、散水流量を8t/hで行った。このとき、各ノズル当たりのインターバル時間は420sであった。2時間の散水により、推定付着量が0.6tまで低減できた。つまり、約9割の付着物除去効果を確認した。
【0032】
<比較例1>
実施例1と同様の設備を用い、付着物が付着した状態で、休風時に減尺を行い、付着物を約24時間散水せずに放冷した。サーマルショックにより4割程度の付着物除去効果を得た。
【0033】
<比較例2>
実施例1と同様の設備を用い、付着物が付着した状態で、操業時に減尺を行い、付着物を約5時間散水せずに放冷した。サーマルショックにより3割程度の付着物除去効果を得た。
【0034】
<実施例2>
実施例1と同様の設備を用い、炉体冷却水温から炉内付着物が9.7tと推定された。その状態で操業中に減尺を行い、5時間の間欠的な散水を付着物に向けて行った。散水条件は、60sの散水ののち120sのインターバル時間を置いた。散水流量10t/hとした。総散水量は約17tであった。その結果、推定付着量1.0tまで低減できた。実施例1と同様に9割の付着物除去効果を確認した。
【0035】
<実施例3>
実施例1と同様の設備を用い、炉体冷却水温から炉内付着物が6.8tと推定された。その状態で操業中に減尺を行い、1時間の間欠的な散水を付着物に向けて行った。散水条件は、50sの散水ののち120sのインターバル時間を置いた。散水流量8t/hとした。総散水量は約3tであった。その結果、推定付着量4.1tまで低減できた。約4割の付着物除去効果を確認した。
【0036】
<実施例4>
実施例1と同様の設備を用い、炉体冷却水温から炉内付着物が7.9tと推定された。その状態で操業中に減尺を行い、3時間の間欠的な散水を付着物に向けて行った。散水条件は、45sの散水ののち120sのインターバル時間を置いた。散水流量6t/hとした。総散水量は約5tであった。その結果、推定付着量4.0tまで低減できた。約5割の付着物除去効果を確認した。
【0037】
<実施例5>
炉内に散水する場合、炉内原料や溶融物が温度低下し、炉熱低下となるおそれがある。吸熱反応である水性ガス反応を起こさないことが必要と考えた。そこで、溶鉱炉の排ガス分析を連続的に行い、水性ガス反応に伴う水素ガスの発生のない散水条件を求めた。実施例1と同じ設備を使い、8本のうち1本の散水で好ましい条件の確認を行った。表1に結果を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
散水時間と散水流量を徐々に増加していき、水素ガスが発生した条件で、散水流量を低下させ、水素ガスの発生有無を試験した。散水時間120s以下および散水流量10t/h以下であれば水素ガスの発生なく散水できることがわかった。炉熱低下となる散水流量は炉容積によって変化するため、炉容積1mに対する散水流量は23kg/h以下が好ましいとわかった。
【0040】
<実施例6>
次に、付着物の除去を効率的に行うための散水条件、つまり、散水時間および散水流量を把握する試験を行った。実施例1と同様の設備を用い、除去用散水ノズル8本のうち6本を使用して、各ノズル計1hずつ散水し表2の6つの条件で除去効果を確認した。処理No.1を1h行い、次に、処理No.2を1h行い、・・・、最後に処理No.6を1h行うという順で試験した。付着物が除去できたかどうかの判断は炉体に設置した熱電対により計測した炉体温度の変化を確認した。つまり、付着物が除去できなかったら温度変化「無し」、付着物が除去できたら温度「上昇」と判定した。なお、インターバル時間は、散水時間の2倍に固定した。
【0041】
【表2】
【0042】
処理No.1~6ではいずれも水性ガス反応による水素ガスの発生はなかった。表2の結果から、付着物を除去するためには、散水時間を30s以上および散水流量を4t/h以上確保する必要があることがわかった。このため、炉容積1mに対する散水流量は8kg/h以上が好ましいとわかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および操業方法は、溶鉱炉に適用して、とくに、マンガン鉱石を原料とする溶鉱炉に適用して効果が大きく、生産性が向上するので産業上有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 溶鉱炉
2 炉壁
3 炉口
4 散水ノズル
4A 散水
4B 散水順
5 (水冷)シャフトステーブ
6 (炉壁)付着物
7 減尺
8 (付着物の)脱落・除去
S (炉内)装入物
SL (減尺後の)装入物レベル
SL0 (減尺前の)装入物レベル
ts 散水時間
ti インターバル時間
ta 総散水時間
【要約】
【課題】溶鉱炉の炉壁付着物除去方法および操業方法を提案する。
【解決手段】溶鉱炉への装入物の上面を付着物の下部まで下げ、付着物を露出させ、露出させた付着物に散水して、付着物を除去する、溶鉱炉の炉壁付着物除去方法である。その方法は、散水では、散水-散水間にインターバルを設け間欠的に散水すること、所定の炉熱水準を保持するよう1回あたりの散水時間、インターバル時間、散水流量および総散水量を調整し、付着物の除去を行うことが好ましい。操業中又は休風中に、溶鉱炉への装入物を付着物の下部まで減量させ、上記溶鉱炉の炉壁付着物除去方法により、炉壁の付着物を除去する付着物除去工程を含む、溶鉱炉の操業方法である。
【選択図】図1
図1
図2
図3