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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】出来形情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023510243
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2021046885
(87)【国際公開番号】W WO2022209052
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2021061494
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】早川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】泉 枝穂
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-200185(JP,A)
【文献】特開2017-071916(JP,A)
【文献】特開2014-205955(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179963(WO,A1)
【文献】特開2016-102312(JP,A)
【文献】特開平11-036373(JP,A)
【文献】特開2016-130409(JP,A)
【文献】特開2016-099744(JP,A)
【文献】特開2005-134015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0201706(US,A1)
【文献】特開2006-144388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の作業装置による施工後の現況地形を表す地形データを生成する演算装置を備えた出来形情報処理システムにおいて、
前記作業機械の操作量を検出する操作量検出装置と、
前記作業機械の位置および前記作業装置の姿勢を検出する位置姿勢検出装置と、
前記作業装置の駆動状態を検出する駆動状態検出装置と、
前記作業装置が地面を施工しているときの施工に関わる情報である施工情報を取得する施工情報取得装置と、
前記演算装置から出力される情報を表示可能な表示装置とを備え、
前記施工情報は、作業内容情報、施工日時情報および施工目標面情報の少なくとも1つからなり、
前記演算装置は、
前記操作量検出装置、前記位置姿勢検出装置、および前記駆動状態検出装置からの検出値を基に、前記作業装置が地面を施工しているか否かを判定し、
前記作業装置が地面を施工していると判定した場合、前記作業装置が地面を施工しているときの前記作業装置の動作軌跡を算出すると共に、前記施工情報取得装置から前記施工情報を取得し、
前記作業装置の動作軌跡に前記施工情報を紐づけたデータを施工履歴データとして記録し、
前記施工履歴データのうち前記作業装置の動作軌跡情報以外の情報または前記作業装置の動作軌跡の高さに関する情報に基づき、前記施工履歴データに記録された前記作業装置の動作軌跡から、前記現況地形と想定される動作軌跡を抽出し、
前記施工情報毎に事前に設定された前記施工情報の程度とその程度に応じた色情報の変化の条件に従い、前記施工履歴データから抽出した前記施工情報の前記色情報を決定し、
前記施工履歴データに含まれる前記作業装置の動作軌跡のうち前記現況地形と想定される動作軌跡と前記現況地形と想定される動作軌跡に紐づけられた前記色情報からなる前記施工情報とを用いて、前記色情報からなる前記施工情報付きの前記地形データを前記表示装置に出力し、
前記施工情報取得装置は、前記演算装置の内部クロックで構成され、
前記演算装置は、前記施工情報として、前記作業装置が地面を施工しているときの前記施工日時情報を取得し、
前記色情報は、前記施工日時情報に応じた異なる色彩の組み合わせとして設定される
ことを特徴とする出来形情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の施工履歴データから出来形情報を生成するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元CADソフト等で作成した目標面データに対し、車体及びブーム、アーム、バケットといった構成要素の位置と姿勢及び車体の周囲の施工目標面情報を提示するマシンガイダンス機能や、車体のバケットが目標施工面に沿って動くよう制御するマシンコントロール機能、といった機能を提供する情報化施工対応作業機械が知られている。
【0003】
近年では、これらの機能を提供するために演算された作業機の3次元座標情報を、施工日時情報とともに施工履歴データとして記録し、活用する動きが広まっている。その代表的な例として、施工履歴データに記録されたバケットの軌跡情報から地形データを生成し、出来高部分払いや浚渫工における出来高管理に活用する、といった事例がある。
【0004】
このような、施工履歴データを基に地形データを生成する手法として、特許文献1に記載の出来形情報処理装置では、アームクラウド動作をパイロット圧やアームシリンダ圧により検出し、モニタポイントの3次元位置に応じて出来形情報を更新する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-200185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の手法は、特別な測量機器や測量作業を行わずとも出来形の地形データを得ることができるが、ここで得られる地形データについては三次元位置情報以外の情報については示唆がない。特許文献1の実施例にも記載されているように、この地形データを進捗管理等に活用するためには、油圧ショベルなどの作業機械や地図などと組み合わせることで、作業エリアや作業内容等を推測しながら紐づける必要がある。このように従来手法で得られる地形データは、単体では作業エリアや作業内容と地形データ上の3次元位置情報との紐づけが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業機械による施工中に取得できる施工履歴データを基に、作業内容や作業エリアとの関連が分かりやすい地形データを生成することが可能な出来形情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械の作業装置による施工後の現況地形を表す地形データを生成する演算装置を備えた出来形情報処理システムにおいて、前記作業機械の操作量を検出する操作量検出装置と、前記作業機械の位置および前記作業装置の姿勢を検出する位置姿勢検出装置と、前記作業装置の駆動状態を検出する駆動状態検出装置と、前記作業装置が地面を施工しているときの施工に関わる情報である施工情報を取得する施工情報取得装置と、前記演算装置から出力される情報を表示可能な表示装置とを備え、前記施工情報は、作業内容情報、施工日時情報および施工目標面情報の少なくとも1つからなり、前記演算装置は、前記操作量検出装置、前記位置姿勢検出装置、および前記駆動状態検出装置からの検出値を基に、前記作業装置が地面を施工しているか否かを判定し、前記作業装置が地面を施工していると判定した場合、前記作業装置が地面を施工しているときの前記作業装置の動作軌跡を算出すると共に、前記施工情報取得装置から前記施工情報を取得し、前記作業装置の動作軌跡に前記施工情報を紐づけたデータを施工履歴データとして記録し、前記施工履歴データのうち前記作業装置の動作軌跡情報以外の情報または前記作業装置の動作軌跡の高さに関する情報に基づき、前記施工履歴データに記録された前記作業装置の動作軌跡から、前記現況地形と想定される動作軌跡を抽出し、前記施工情報毎に事前に設定された前記施工情報の程度とその程度に応じた色情報の変化の条件に従い、前記施工履歴データから抽出した前記施工情報の前記色情報を決定し、前記施工履歴データに含まれる前記作業装置の動作軌跡のうち前記現況地形と想定される動作軌跡と前記現況地形と想定される動作軌跡に紐づけられた前記色情報からなる前記施工情報とを用いて、前記色情報からなる前記施工情報付きの前記地形データを前記表示装置に出力し、前記施工情報取得装置は、前記演算装置の内部クロックで構成され、前記演算装置は、前記施工情報として、前記作業装置が地面を施工しているときの前記施工日時情報を取得し、前記色情報は、前記施工日時情報に応じた異なる色彩の組み合わせとして設定されるものとする。
【0009】
以上のように構成した本発明によれば、現況地形の各部分の施工情報を把握することが可能となるため、現況地形と作業エリアや作業内容との関連付けが容易になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る出来形情報処理システムによれば、作業機械による施工中に取得できる施工履歴データを基に、作業内容や作業エリアとの関連付けが容易な地形データを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施例に係る出来形情報処理システムの構成図である。
図2】本発明の第1の実施例における油圧ショベルの構成図である。
図3】本発明の第1の実施例における油圧ショベルの車体座標系を表す図である。
図4】本発明の第1の実施例における演算装置の機能ブロック図である。
図5】フロント作業装置に作用する力を示す図である。
図6】フロント作業装置の各部の長さと角度を示す図である。
図7】ブームシリンダ周辺部の各部の長さと角度を示す図である。
図8】バケット軌跡情報のイメージを示す図である。
図9】カメラ座標系の定義を示す図である。
図10】撮像装置が撮影した画像の例を示す図である
図11】地形座標抽出部の処理を示す図である。
図12】実施形態1にかかる色情報付き地形データの表示の例を示す図
図13】本発明の第1の実施例における施工履歴演算部の演算処理を示すフローチャートである。
図14】本発明の第1の実施例における施工履歴演算部の演算処理を示すフローチャートである。
図15】本発明の第1の実施例における地形データ演算部の演算処理を示すフローチャートである。
図16】本発明の第2の実施例における油圧ショベルの構成図である。
図17】本発明の第2の実施例における演算装置の機能ブロック図である。
図18】作業内容情報に基づく色情報を付加した地形データの表示例を示す図である。
図19】施工日時情報に基づく色情報を付加した地形データの表示例を示す図である。
図20】施工目標面情報に基づく色情報を付加した地形データの表示例を示す図である。
図21】本発明の第2の実施例における施工履歴演算部の演算処理を示すフローチャートである。
図22】本発明の第2の実施例における地形データ演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下では、作業機械の先端のアタッチメントとしてバケットを備える油圧ショベルを例示するが、バケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルや、ブルドーザーなどの作業機械に本発明を適用しても構わない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例に係る出来形情報処理システムの構成図である。図1において、本実施例に係る出来形情報処理システムは、油圧ショベル1との間でデータの送受信が可能な演算装置101で構成される。演算装置101は、例えばCPU、RAM、ROM等の演算処理装置及び各種センサやアクチュエータなどとの間で情報をやり取りする入出力インタフェースを備える単体または複数のコンピュータで構成される。なお、演算装置101の一部またはすべては油圧ショベル1上に搭載される車載コントローラで構成してもよいし、油圧ショベル1上の各種装置とネットワークで接続されるサーバ等で構成してもよい。
【0014】
図2は、油圧ショベル1の構成図である。図2に示すように、油圧ショベル1は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム2、アーム3及びバケット4)を連結して構成された多関節型のフロント作業装置1Aと、上部旋回体1BA及び下部走行体1BBからなる車体1Bとで構成され、フロント作業装置1Aのブーム2の基端は上部旋回体1BAの前部に支持されている。
【0015】
ブーム2、アーム3、バケット4、上部旋回体1BA及び下部走行体1BBはそれぞれブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回油圧モータ8及び左右の走行モータ9a,9bによりそれぞれ駆動される被駆動部材を構成し、それらの動作は上部旋回体1BA上の運転室内の走行右レバー10a、走行左レバー10b、操作右レバー11a、および操作左レバー11bを操作することにより指示される。走行右レバー10a、走行左レバー10b、操作右レバー11a、および操作左レバー11bの各操作量は操作量検出装置20により検出される。ここでいう操作量とは、各レバーの操作に応じて変化する物理量(パイロット圧、電圧、レバー傾斜角度など)である。操作量検出装置20は、圧力センサ、電圧センサ、角度センサなどで構成される。ブームシリンダ5には、ブームシリンダ5の駆動状態を検出する駆動状態検出装置19(図4参照)が取り付けられている。駆動状態検出装置19は、例えばブームシリンダ5のロッド側及びボトム側の作動油圧Pr,Pbを測定する圧力センサで構成される。
【0016】
上部旋回体1BAには第1GNSSアンテナ17aと第2GNSSアンテナ17bが配置されている。第1GNSSアンテナ17a及び第2GNSSアンテナ17bはRTK-GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems)用のアンテナであり、GNSS受信機17(図4参照)はそれぞれのアンテナ位置情報を出力する。本実施形態では現場座標系の座標値を出力するGNSS受信機17を用いて説明するが、GNSS受信機17は地理座標系、平面直角座標系、地心直交座標系または現場座標系の少なくとも1つ以上の座標系の座標値を出力可能なものであればよい。なお地理座標系における座標値は緯度、経度及び楕円体高からなり、平面直角座標系、地心直交座標系及び現場座標系の座標値はE,N,H座標等からなる3次元直交座標系である。地理座標系座標値はガウス・クリューゲルの等角投影法などを用いて平面直角座標系などの3次元直交座標系に変換可能である。また、平面直角座標系、地心直交座標系及び現場座標系はアフィン変換またはヘルマート変換などを用いることで相互に変換可能である。
【0017】
ブーム2、アーム3、バケット4の回動角度α,β,γ(図3参照)を測定可能なように、ブームピンにブーム角度センサ12、アームピンにアーム角度センサ13、バケットリンク15にバケット角度センサ14が取り付けられ、上部旋回体1BAには基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体1BA(車体1B)のピッチ角θp(図2参照)を検出する車体前後傾斜角センサ16a、及びロール角θr(図示せず)を検出する車体左右傾斜角センサ16bが取り付けられている。なお、これらの角度センサはIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、ポテンショメータ、ロータリエンコーダなどのセンサを用いてもよいし、各シリンダの長さをストロークセンサにより測定し回動角度を演算してもよい。また、バケット角度センサ14はバケットリンク15でなくバケット4に取り付けられていてもよい。ブーム角度センサ12、アーム角度センサ13、バケット角度センサ14、車体前後傾斜角センサ16a,車体左右傾斜角センサ16b、およびGNSS受信機17は、油圧ショベル1の位置および姿勢を検出する位置姿勢検出装置を構成している。
【0018】
上部旋回体1BAには目標面データ入力装置21が取り付けられており、WiFiやBluetooth等の無線通信やUSBフラッシュメモリやSDカード等の記録媒体を介して、目標面データを演算装置101へ入力する。また、上部旋回体1BAには各種情報を表示する表示装置23が取り付けられている。
【0019】
図3は、油圧ショベル1の車体座標系を表す図である。図3中に記されているX軸及びZ軸は、ブームピンを原点とし、車体上方方向をZ軸、前方方向をX軸、左方向をY軸とする車体座標系を表したものである。ここで、第1GNSSアンテナ17aの車体座標系における座標値が設計寸法やトータルステーション等の測定器による測定により既知であるとき、車体のピッチ角θp、ロール角θr、及び第1GNSSアンテナ17aと第2GNSSアンテナ17bとの位置関係から検出される方位角θy(図示せず)、第1GNSSアンテナ17aの車体座標系座標値、第1GNSSアンテナ17aのRTK-GNSS測位による現場座標系座標値を用いることで、車体座標系と現場座標系とは相互に変換可能である。フロント作業装置1A上の任意のモニタポイントの車体座標系位置情報は、ブーム2、アーム3、バケット4の回動角度α,β,γと、フロント作業装置1Aの寸法値から演算可能であることから、フロント作業装置1A上の任意のモニタポイントの現場座標系位置情報を求めることが可能である。
【0020】
図2中に記載の撮像装置22は、バケット4の周囲を撮影する装置であり、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備えたカメラである。本実施形態において撮像装置22は上部旋回体1BAに設置されているが、バケット4の周囲を撮影できる位置に取り付けられていればよい。また、撮像装置22は複数個所に設置されていてもよい。撮像装置22の車体座標系における取り付け位置や撮影方向、内部パラメータは既知または検出可能であり、撮像装置22のカメラ座標系座標値と車体座標系座標値の座標変換パラメータは既知または検出可能であるため、これらは相互に変換可能である。また、車体座標系と現場座標系は相互に変換可能であることから、カメラ座標系と現場座標系についても相互に変換可能である。本実施例における撮像装置22は、作業装置1Aが地面を施工しているときの施工に関わる情報である施工情報を取得する施工情報取得装置を構成しており、前記施工情報として施工面の色情報を取得する。
【0021】
図4は、本実施例における演算装置101の機能ブロック図である。演算装置101は、位置姿勢検出部401と、施工履歴演算部402と、地形データ演算部403とを備える。
【0022】
位置姿勢検出部401は、作業装置姿勢検出部4011と、車体位置検出部4012と、車体角度検出部4013とを備える。
【0023】
作業装置姿勢検出部4011は、ブーム角度センサ12、アーム角度センサ13、バケット角度センサ14のセンサ値を入力とし、ブーム2、アーム3、バケット4の回動角度α,β,γ(図3参照)を出力する。
【0024】
車体位置検出部4012は、第1GNSSアンテナ17aが出力するアンテナ位置情報を入力とし、現場座標系以外の座標系で位置情報が入力された場合現場座標系に座標変換をし、現場座標系のアンテナ位置情報を出力する。
【0025】
車体角度検出部4013は、GNSS受信機17の出力するアンテナ位置情報及び車体前後傾斜角センサ16a、車体左右傾斜角センサ16bのセンサ値を入力とし、方位角θy、ロール角θr、ピッチ角θp(図3参照)を出力する。
【0026】
施工履歴演算部402は、動作判定部4021と、軌跡演算部4022と、表面色演算部4023と、施工履歴生成部4024とを備える。
【0027】
動作判定部4021は、位置姿勢検出部401が出力する位置姿勢情報、駆動状態検出装置19が出力するブームシリンダ5の圧力情報、操作量検出装置20が出力するフロント作業装置1Aの操作量情報、目標面データ入力装置が出力する施工目標面情報を入力とし、動作判定結果とバケットモニタポイントの車体座標系X・Z座標を出力とする。
【0028】
動作判定部4021は、まず、操作量検出装置20が出力する操作量情報から、フロント作業装置1Aが操作されているか否かを確認する。フロント作業装置1Aの各部のうちいずれか1つ以上の操作がなされている場合、ブームピン周りのモーメントのつり合いから、バケット4が接地状態であるか否かを判定する。ここで接地状態と判定された時、操作量情報と施工目標面情報を用いて動作判定を行う。
【0029】
バケット4が接地状態にあるか否かを判定する方法について、図5図7を用いて説明する。
【0030】
図5は、フロント作業装置1Aに作用する力を示す図である。フロント作業装置1Aには、ブームピンによる支持力の他に、ブーム2、アーム3、バケット4の質量に応じた荷重、地面からの反力及びブームシリンダ5による力が働いている。地面からの反力FによるモーメントをM、ブームシリンダ5の力FcylによるモーメントをMcyl、ブーム2、アーム3、バケット4の荷重によるモーメントをそれぞれMbm,Mam,Mbkとすると、これらのモーメントは式1のように釣り合う。ここで、地面からの反力Fによるモーメントは式2のように表せることから、式1、式2より地面からの反力Fは式3により求めることができる。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
【数3】
【0034】
ここで、地面からの反力が作用すると推定できる場所の車体座標系X座標をXbkmpとした。地面からの反力が作用すると推定できる場所は、「バケットと目標面の最も近い点」などのように位置姿勢情報や施工目標面情報に応じて決定してもよいし、バケット爪先などの特定の部位に固定してもよい。本実施形態においては、位置姿勢情報を用いてバケット4の外周と目標面の車体座標系座標値を求め、バケット4の外周のうち最も目標面に近い点(バケットモニタポイント)のX座標をXbkmpとする。Xbkmpは、ブーム長さLbm、アーム長さLam、バケットピンからバケットモニタポイントまでの距離Lbkmp、バケットモニタポイントとバケットピンを結ぶ直線とバケットピンとバケット爪先を結ぶ直線のなす角γmpを用いて、式4により表現できる。
【0035】
【数4】
【0036】
図6にフロント作業装置1Aの各部の長さと角度を示す。式3における各モーメントのうち、荷重によるモーメントであるMbm,Mam,Mbkは式5~式7により求めることができる。
【0037】
【数5】
【0038】
【数6】
【0039】
【数7】
【0040】
式5~式7中のmbm,mam,mbkはブーム2、アーム3、バケット4の質量であり、gは重力加速度の車体座標系Z軸方向成分であり、α・・,β・・,γ・・はブーム2、アーム3、バケット4の角加速度である。なお、これらの角加速度が十分小さいとき、これらの角加速度を用いなくてもよい。また、式5~式7で使用されている、ブーム2、アーム3、バケット4の重心の車体座標系X座標Xbmg,Xamg,Xbkgは、それぞれ式8~式10により導出できる。
【0041】
【数8】
【0042】
【数9】
【0043】
【数10】
【0044】
ただし、式8~式10中のLbmg,Lamg,Lbkgは各部のピンから重心位置までの距離であり、α,β,γは各部の重心位置と各部の根本のピンを結ぶ直線と、各部の先端と根本を結ぶ直線のなす角度である(図6参照)。
【0045】
図7にブームシリンダ周辺部の各部の長さと角度を示す。式3における各モーメントのうち、ブームシリンダ5によるモーメントMcylは式11により導出できる。
【0046】
【数11】
【0047】
ここで、力Fcylは、ブームシリンダ5のロッド側及びボトム側の作動油圧P,Pと、それぞれの受圧面積S,Sを用いて式12のように表せる。
【0048】
【数12】
【0049】
また、式11におけるLrodはブームピンとブームシリンダロッドピン間の距離であり、φはブームピンとブームシリンダロッドピンを結ぶ直線と、ブームシリンダロッドピンとブームシリンダボトムピンを結ぶ直線のなす角度である。角度φは、余弦定理を用いてブームシリンダ5の長さStcylを式13により求めることで、式14を用いて導出できる。
【0050】
【数13】
【0051】
【数14】
【0052】
本実施例においてはモーメントのつり合いにより地面の反力を導出したが、力のつり合いを用いて地面の反力を求めてもよい。その場合、ブームピンにおける支持力を、荷重センサやひずみセンサを用いて検出し、演算に用いてもよい。
【0053】
以上のようにして求めた地面の反力が閾値以上であるとき、バケット4が接地状態であると判定する。ここで使用する閾値は、地面の固さや作業内容等を勘案して適切な値を設定する。例えばやわらかい地面の掘削作業を行う場合、掘削作業中の地面からの反力は小さくなるため閾値を小さな値に、固い地面を掘削する場合は大きな値とする。また、ここで設定する閾値は固定の値でなくてもよい。例えば、バケット4を地面に押し付ける力の最大値は、バケットの位置に応じて変動するため、閾値を車体座標系X座標の関数などで設定してもよい。その際、閾値の関数f(Xkmp)が式15のように、ある定数ConstにXbkmpの逆数をかけたものに設定した場合、式16に示すように地面からの反力によるモーメントMと定数Constを比較することによって接地状態を判定することができることから、閾値の設定条件によっては、地面からの反力を求めず、地面からの反力によるモーメントと閾値の比較で接地状態を判定してもよい。
【0054】
【数15】
【0055】
【数16】
【0056】
なお、ここで設定する閾値は、地面からの反力及び地面からの反力によるモーメントの両方を組み合わせて設定してもよい。
【0057】
上記の処理により接地状態と判定された場合、動作判定を行う。動作判定は、例えば「アーム引き操作量が閾値以上」かつ「目標面間距離が最小となるバケットモニタポイントがバケット爪先」に存在するとき掘削動作、「ブーム下げ操作量が閾値以上」かつ「アーム・バケット操作量が閾値未満」のとき土羽打ち動作、それ以外を締固め動作とする。ここで言う閾値設定は、オペレータの操作の癖によっては、適切な設定値設定が異なることが考えられる。そのため、例えば掘削、土羽打ち、締固めと言った動作を実際に一定回数行い、その際の操作量などを基に設定することが望ましい。また、これらの条件以外での動作判定や、これら以外の動作を定義して判定してもよい。
【0058】
軌跡演算部4022は、動作判定部4021が出力する動作判定結果とバケットモニタポイントの車体座標系X・Z座標値を入力とし、バケット軌跡情報を出力とする。出力されたバケット軌跡情報は、演算装置101のRAMに保持される。
【0059】
まず、軌跡演算部4022は動作判定部4021が出力する動作判定結果を基に、バケット軌跡として演算すべき軌跡を決定する。ここで、バケットモニタポイントを通り車体座標系Y軸と平行な線分をバケットモニタ線分とおく。なおバケットモニタ線分の両端は、バケット左右端面上に存在する。バケット軌跡として演算すべき軌跡は、掘削動作や締固め動作の場合、ある瞬間t0におけるバケットモニタ線分と、ある瞬間t0の直前t1(位置姿勢検出部401が最後に姿勢を検出したタイミング)におけるバケットモニタ線分とで囲まれる面をバケット軌跡とし、土羽打ち動作の場合、バケット底面をバケット軌跡とする。
【0060】
次に、決定したバケット軌跡から、バケット軌跡情報を演算する。ここでバケット軌跡情報は、図8に示すように、バケット軌跡上に存在する複数の点の座標情報により表現してもよい。本実施例においては、現場座標系におけるE,N座標がグリッド幅(GridWidth)の整数倍となる点を通る鉛直な直線と、バケット軌跡の交点の座標をバケット軌跡情報として求めるものとする。
【0061】
【数17】
【0062】
ここでグリッド幅(GridWidth)は、地形データの用途に対し十分な分解能で設定された値である。例えば1平方メートルあたり1点以上の密度の点群からなる地形データが必要であれば、ここで設定すべきグリッド幅は1m以下の値となる。なお、バケット軌跡情報は、本実施形態で示した情報以外でもよく、バケット軌跡を構成する面を特定することのできる情報であってもよい。すなわち、バケット軌跡を構成する面の端点の座標値や、バケット軌跡を構成する面の方程式であってもよい。
【0063】
表面色演算部4023は、操作量検出装置20の出力する操作量情報、軌跡演算部4022の出力しRAM上に保持されているバケット軌跡情報と、位置姿勢検出部401の出力する位置姿勢情報と撮像装置22の出力する画像情報を入力とし、バケット軌跡情報に対応する点の表面色情報を出力する。
【0064】
表面色演算部4023は、操作量検出装置20の出力する操作量情報により、油圧ショベル1の操作が行われた時、撮像装置22が撮影する画像情報を取得する。取得した画像情報において、位置姿勢検出部401の出力する位置姿勢情報を用いてフロント作業装置1Aなどの障害物の写った部分をマスクする。このとき、画像情報のマスクされていない部分に、RAM上に保持されたバケット軌跡情報に含まれる点が写っている場合、バケット軌跡情報に含まれる点を表す画素の色情報をバケット軌跡情報に含まれる点の座標と紐づけ、施工履歴生成部4024に出力する。なお、施工履歴生成部4024に出力済みの点に関するバケット軌跡情報は、RAM上から削除する。
【0065】
以下、表面色演算部4023における画像の処理について図9を用いて説明する。撮像装置22の光学中心を原点Ocとし、撮像装置22の前方をZc、右方をXc、上方をYcとするカメラ座標系を定義する。撮像装置22により撮影される画像の中心点Opの座標を(u0,v0)とするとき、撮像装置22の撮影する画像の(u,v)の画素に記録される物体上の点Tpは、カメラ座標系において式18のように表せる。
【0066】
【数18】
【0067】
ここで使用している係数kは、撮像装置22の内部パラメータを基に導出可能な定数であり、画像中の画素位置(単位はピクセル)を3次元空間中の位置(単位はmなど)に変換するパラメータである。この関係式から、カメラ座標系における座標値(xc,yc,a)の点Tpの、撮像装置22の撮影する画像中における画素位置Tp’の座標(u,v)は、式19の関係から求められる。
【0068】
【数19】
【0069】
油圧ショベル1上の任意の点は、位置姿勢検出部401の出力する位置姿勢情報を用いることで、車体座標系からカメラ座標系へ変換可能である。また、軌跡演算部4022の出力するバケット軌跡情報は、現場座標系の座標値であるが、これも同様に位置姿勢検出部401の出力する位置姿勢情報を用いることで、現場座標系からカメラ座標系へ変換可能である。このことから、フロント作業装置1A上の点や、バケット軌跡情報に含まれる点は、式19の関係を用い、撮像装置22の撮影する画像中のどの画素に写っているかを求めることができる。
【0070】
撮像装置22が撮影した画像において、フロント作業装置1Aやバケット軌跡が写っている場合の例を図10に示す。フロント作業装置1Aは、図10のハッチングで塗りつぶされた部分であり、その他の点はバケット軌跡の点である。ここで、白い点線で示している点は、フロント作業装置1Aの写る画素と同じ画素に写るバケット軌跡の点であり、バケット軌跡の点とフロント作業装置1Aの前後関係が画像のみでは区別できない場合があり得る。よって本実施例では、撮像装置22の撮影する画像のうち、フロント作業装置1Aの写っている領域をマスクする。マスクされた領域外にバケット軌跡を構成する点が写っている場合、バケット軌跡を構成する点の写っている画素の色を、バケット軌跡を構成する点の色情報として出力するものとする。なお、ここで設定するマスクは、周辺の構造物や地形情報など、フロント作業装置1A以外の部位を含んでもよい。また、ここで記録する色情報は、赤・青・緑やシアン・マゼンダ・イエロー・ブラックなどの原色の強度や、色相・彩度・明度(または輝度)などのうち少なくとも1つ以上の指標を用いて表現される値を記録してもよい。事前にカラーテーブルを設定し、カラーテーブル中の特定の色を識別できるIDを色情報として記録してもよい。
【0071】
軌跡演算部4022がバケット軌跡情報を出力し、RAM上で保持し始めてから一定時間以上の間、表面色演算部4023においてバケット軌跡を構成する点の色情報が得られない場合、事前に設定した無効値を色情報として紐づけ、施工履歴生成部4024に出力するものとする。なお、無効値以外に、例えば黒色など、特定の色を出力してもよいし、例えば画像中に写るバケット軌跡を構成する点から一定の条件でオフセットした画素の色を出力してもよいし、周囲のバケット軌跡を構成する点の色情報を基に補完することで決定した色を出力してもよい。
【0072】
施工履歴生成部4024は、軌跡演算部4022が出力するバケット軌跡情報と、表面色演算部4023が出力する色情報を入力とし、施工履歴データを出力する。施工履歴データには、バケット軌跡情報と、バケット軌跡情報を構成する点に対応する色情報、施工日時情報が含まれる。また、動作判定部4021の出力する動作判定結果や、作業機と目標面間の距離などの情報が含まれていてもよい。
【0073】
地形データ演算部403は、記録部4031と、地形座標抽出部4032と、色情報付加部4033と出力部4034とを備える。
【0074】
記録部4031は、施工履歴演算部402の出力する施工履歴データを記録する。記録部4031に記録される施工履歴データは、特定の油圧ショベル1が出力する施工履歴データでもよいし、複数の油圧ショベル1が出力する施工履歴データでもよい。
【0075】
地形座標抽出部4032は、記録部4031に記録された施工履歴データのバケット軌跡情報のうち、現況地形に近いと想定される点の位置情報を抽出し、地形点群情報として出力する。
【0076】
図11は、地形座標抽出部4032の処理を示す図である。地形座標抽出部4032は、まず、記録部4031に記録された施工履歴データのバケット軌跡情報を構成する点について、水平方向において同一位置(現場座標系のE,N軸方向の座標値が等しい位置)に存在する点の数を集計する。ここで、水平方向において同一位置に存在する点が1点のみのものについては、その点の座標値を地形点群情報に追加する。水平方向において同一の位置に存在する点が複数ある場合、それらの点のうち最も現況地形に近いと想定される点を抽出し、タイムスタンプや固有のIDなど施工履歴データに含まれるバケット軌跡情報以外の情報と紐づけられるような情報とともに地形点群情報に追加する。ここで、現況地形に近いと想定される点の抽出は、施工日時情報など、施工履歴データに記録されたバケット軌跡情報以外の情報や、バケット軌跡情報を構成する点の高さ座標値などの情報を用いてフィルタリングを行うことで抽出してもよい。本実施例においては、現況地形はバケット軌跡に沿って変化するため、バケット軌跡を構成する点のうち最も新しいものを地形点群情報に追加するものとする。ここで、切土のみを行う現場であれば、現況地形の標高は常に低くなるため、複数ある点のうち最も標高が低い点の座標を地形点群情報に追加する、といったフィルタリング処理を行ってもよい。また、ここで挙げた以外のフィルタリング処理、例えば動作判定結果を用いてフィルタリング処理を行う、といった方法を用いてもよい。
【0077】
色情報付加部4033は、地形座標抽出部4032が出力する地形点群情報と、記録部4031に記録された施工履歴データとを入力とし、色情報付き地形点群情報を出力する。
【0078】
色情報付加部4033は、地形点群情報として抽出されたバケット軌跡に対応する色情報を、記録部4031に記録された施工履歴データから抽出し、抽出されたバケット軌跡と色情報を組み合わせた色情報付き地形点群情報として出力する。ここで、地形点群情報として抽出されたバケット軌跡に対応する色情報が無効値であった場合、事前に設定した色(例えば黒)の色情報を色情報付き地形点群情報として出力する。なお、事前に設定した色以外に、例えば水平方向に同一位置にある別の高さ座標値のバケット軌跡と対応する色情報や、無効値の含まれる点の周辺に存在する別の点の色情報を用いて補完した色情報を出力としてもよい。
【0079】
出力部4034は、色情報付加部4033が出力する色情報付き地形点群情報を、地形表示装置404や進捗管理装置405で利用可能なフォーマットに整形し、色情報付き地形データを出力する。
【0080】
地形表示装置404は、地形データ演算部403により出力された色情報付き地形データを入力し、現況地形の形状や色を描画し(図12参照)、ユーザーに提示する。現況地形の表面色は、例えば土質や土の状況(濡れている、または乾いているなど)、土の密度(締め固められている状態、または緩んでいる状態)などによって異なるため、色情報とともに現況地形の形状を描画・提示することで、作業エリアや作業内容との関連付けが容易にできる。
【0081】
また、進捗管理装置405は、地形データ演算部403により出力された色情報付き地形データを入力し、出来高、出来形などの進捗管理情報を演算し、ユーザーに提示する。一般的に進捗管理情報を演算する際は、特定の作業エリアや特定の作業内容の領域ごとの出来高・出来形が興味の対象であることが多い。本実施例における進捗管理装置405は、色情報付き地形データの色情報を用いて地形データのフィルタリング及びトリミングを行うことで、特定の作業エリアや特定の作業内容の領域ごとの出来高・出来形を演算することが可能である。例えば、色土質の異なる領域では地面の表面色が異なることから、色情報を基に表面色の異なる領域ごとに地形データを分割し、それぞれの領域ごとの出来高を算出することで、土質に応じた作業の進捗を管理することが可能である。
【0082】
なお、地形表示装置404及び進捗管理装置405による情報提示や情報処理の一部は、油圧ショベル1上に設置された表示装置23、油圧ショベル1の外に存在するスマートフォン、タブレットまたはパーソナルコンピュータなどのデバイスで行ってもよい。
【0083】
図13図14を用いて施工履歴演算部402の演算処理について説明する。なお、図13及び図14の処理は、並列的に実行される処理である。
【0084】
図13において、まず、施工履歴演算部402の動作判定部4021は、操作量検出装置20から操作量情報を取得する(ステップS101)。フロント作業装置1Aの各部のうちいずれか1つ以上の操作がなされている場合はステップS102へ進み、フロント作業装置1Aの各部のうちすべての操作入力がない場合はステップS101へ戻る。
【0085】
ステップS102において、施工履歴演算部402の動作判定部4021は、位置姿勢情報とブームシリンダ5の圧力情報を用いて地面からの反力を演算する。地面からの反力が閾値以上の場合はステップS103へ進み、閾値未満の場合はステップS101へ戻る。
【0086】
ステップS103において、施工履歴演算部402の動作判定部4021は、位置姿勢情報、施工目標面情報、および操作量情報を用いて動作判定を行い、ステップS104へ進む。
【0087】
ステップS104において、軌跡演算部4022は、動作判定部4021が出力する動作判定結果とバケットモニタポイントの車体座標系X・Z座標値を用いてバケット軌跡情報を演算し、RAM上に記録してステップS101へ戻る。
【0088】
図14において、まず、施工履歴演算部402の表面色演算部4023は、操作量検出装置20から操作量情報を取得する(ステップS201)。フロント作業装置1Aの各部や走行・旋回などの操作のうちいずれか1つ以上の操作がなされている場合はステップS202へ進み、すべての操作入力がない場合はステップS201へ戻る。
【0089】
ステップS202において、施工履歴演算部402の表面色演算部4023は、撮像装置22が撮影する画像情報を取得する。ここで、位置姿勢検出部401の出力する位置姿勢情報を用いて、取得した画像情報のうち、フロント作業装置1Aなどの障害物が写っている領域と、バケット軌跡情報に含まれる点の写っている画素を演算する。この時、フロント作業装置1Aなどの障害物が写っていない領域に、バケット軌跡情報に含まれる点が写っている場合はステップS203へ進み、写っていない場合はステップS201へ戻る。
【0090】
ステップS203において、施工履歴演算部402の表面色演算部4023は、バケット軌跡情報に含まれる点の写っている画素の色情報と、バケット軌跡情報に含まれる点の座標とを紐づけて施工履歴生成部4024に出力し、ステップS204へ進む。
【0091】
ステップS204において、施工履歴演算部402の施工履歴生成部4024は、軌跡演算部4022が出力するバケット軌跡情報と、表面色演算部4023が出力する色情報、施工日時情報などを含む施工履歴データを生成する。施工日時情報は、演算装置101の内部クロックから取得することができる。
【0092】
次に、図15を用いて地形データ演算部403の演算処理について説明する。
【0093】
まず、地形データ演算部403の記録部4031は、施工履歴演算部402の施工履歴生成部4024が生成した施工履歴データを記録する(ステップS301)。次に、地形座標抽出部4032は、記録部4031に記録された施工履歴データのバケット軌跡情報のうち、現況地形に近いと想定される点の位置情報を抽出し、地形点群情報として出力する(ステップS302)。色情報付加部4033は、地形点群情報として抽出されたバケット軌跡に対応する色情報を、記録部4031に記録された施工履歴データから抽出し、抽出されたバケット軌跡と色情報を組み合わせた色情報付き地形点群情報として出力する(ステップS303)。出力部4034は、色情報付加部4033が出力する色情報付き地形点群情報を、地形表示装置404や進捗管理装置405で利用可能なフォーマットに整形し、色情報付き地形データを出力する(ステップS304)。
【0094】
以上の構成により、施工中のバケット軌跡情報や地面の色情報を施工履歴データに記録し、施工履歴データに各種処理を施すことで色情報付きの現況地形データを出力する。出力された色情報付き地形データは、地形表示装置404で表示する際、色情報により、例えば土質や土の状況(濡れている、または乾いているなど)、土の密度(締め固められている状態、または緩んでいる状態)などを表現することができ、作業エリアや作業内容との関連付けが容易にできる。また、進捗管理装置405においては、色情報を基に特定の作業エリアや特定の作業内容の領域ごとの出来高・出来形を演算することが可能である。
【0095】
(まとめ)
本実施例では、作業機械1の作業装置1Aによる施工後の現況地形を表す地形データを生成する演算装置101を備えた出来形情報処理システムにおいて、作業機械1の操作量を検出する操作量検出装置20と、作業機械1の位置および作業装置1Aの姿勢を検出する位置姿勢検出装置12,13,14,16a,16b,17と、作業装置1Aの駆動状態を検出する駆動状態検出装置19と、作業装置1Aが地面を施工しているときの施工に関わる情報である施工情報を取得する施工情報取得装置22とを備え、演算装置101は、操作量検出装置20、位置姿勢検出装置12,13,14,16a,16b,17、および駆動状態検出装置19からの検出値を基に、作業装置1Aが地面を施工しているか否かを判定し、作業装置1Aが地面を施工していると判定した場合、作業装置1Aが地面を施工しているときの作業装置1Aの動作軌跡を算出すると共に、施工情報取得装置22から前記施工情報を取得し、作業装置1Aの動作軌跡に前記施工情報を紐づけたデータを施工履歴データとして記録し、前記施工履歴データに含まれる作業装置1Aの動作軌跡のうち現況地形と想定される動作軌跡と前記現況地形と想定される動作軌跡に紐づけられた前記施工情報とを用いて、前記施工情報付きの前記地形データを出力する。
【0096】
以上のように構成した本実施例によれば、現況地形の各部分の施工情報を把握することが可能となるため、現況地形と作業エリアや作業内容との関連付けが容易になる。
【0097】
また、本実施例に係る出来形情報処理システムは、演算装置101から出力される情報を表示可能な表示装置404を備え、表示装置404は、前記地形データに付加された前記施工情報に応じて、前記地形データの表示態様を変更する。これにより、現況地形の各部分の施工情報を視覚的に把握することが可能となる。
【0098】
また、本実施例における前記施工情報は、色情報である。これにより、現況地形の各部分の施工情報を色で把握することが可能となる。
【0099】
また、本実施例における施工情報取得装置22は、作業機械1に取り付けられた撮像装置22で構成され、演算装置101は、前記施工情報として、作業装置1Aが地面を施工しているときに撮像装置22で撮影した施工面の色情報を取得する。これにより、現況地形の各部分の土質や土の状況(濡れている、または乾いているなど)を把握することが可能となる。
【実施例2】
【0100】
本発明の第2の実施例に係る出来形情報処理システムについて、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0101】
本実施例に係る出来形情報処理システムの構成は、第1の実施例(図1参照)と同様である。
【0102】
図16は、本実施例における油圧ショベル1の構成図である。図16において、第1の実施例(図2参照)との相違点は、油圧ショベル1が撮像装置22(図2参照)を備えていない点である。
【0103】
図17は、本実施例における演算装置101の機能ブロック図である。図17において、第1の実施例(図4参照)との相違点は、演算装置101が表面色演算部4023(図4参照)を備えていない点である。
【0104】
本実施例における動作判定部4021は、第1の実施例と同様に処理を行うとともに、バケットモニタポイント近傍の施工目標面情報も出力するものとする。ただし、ここでいう施工目標面情報は、目標面の法線ベクトルである。なお、施工目標面情報は法線ベクトル以外の情報でもよく、例えば目標面を構成する面を特定できる情報(事前に目標面を構成するすべての面に割り当てたIDなど)や、水平面と法線ベクトルのなす角(傾斜角)などの情報でもよい。
【0105】
本実施例における施工履歴生成部4024は、動作判定部4021の出力する動作判定結果及び施工目標面情報と、軌跡演算部4022が出力するバケット軌跡情報とを入力とし、これらの入力情報に施工日時情報を付加した施工履歴データを出力する。
【0106】
地形データ演算部403は、記録部4031と、地形座標抽出部4032と、色情報付加部4033と出力部4034とを備える。
【0107】
色情報付加部4033は、地形点群情報として抽出されたバケット軌跡に対応する動作判定結果(作業内容情報)、施工日時情報及び施工目標面情報を、記録部4031に記録された施工履歴データから抽出する。事前に設定した条件に従い、抽出されたこれらの情報を用いて色情報を決定し、バケット軌跡と色情報を組み合わせた色情報付き地形点群情報として出力する。
【0108】
以下に、具体的な例を示す。
【0109】
まず、動作判定結果を施工情報として色情報を決定する場合、動作判定クラスは有限個の種類のみ存在するため、動作判定結果が「掘削動作」なら赤、「締固め動作」なら青、「土羽打ち動作」なら緑、といったように、動作判定クラスと色との組み合わせを事前に設定することで動作判定結果に応じて色情報を決定することが可能である。なお、動作判定クラスがここで示した3つ以外の場合も同様に、クラス数に応じた色の組み合わせを用意すればよい。この場合の施工情報取得装置は、操作量検出装置20と駆動状態検出装置19とで構成される。
【0110】
次に、施工日時情報を施工情報として色情報を決定する場合、施工日時情報は施工の期間に応じて任意の範囲の値を取り得る。よって、進捗管理等の用途に応じた期間に従い、色情報を決定する必要がある。すなわち、地形点群情報として抽出されたバケット軌跡に対応する施工日時情報がn日の範囲に及び、かつ地形データ演算部403が出力する地形データを用いてm日ごとの進捗を確認したい場合、事前に(n/m)通り程度のカラーパレットを用意し、カラーパレットの中から施工日時情報に応じて色情報を決定すればよい。例えば、地形データを、施工期間が21日間の現場で、7日(1週間)ごとの進捗確認に利用したい場合、3色のカラーパレットを事前に設定すればよい。すなわち、1~7日目は赤、8~14日目は青、15~21日目は緑、といったように入り情報を決定すればよい。なお、ここでいうカラーパレットは、事前に手動で任意の色を設定してもよいし、明度や彩度、色相などが連続的に変化するグラデーションを基に自動的に設定してもよい。この場合の施工情報取得装置は、演算装置101の内部クロックで構成される。
【0111】
最後に、施工目標面情報(施工目標面の法線ベクトル)を施工情報として色情報を決定する場合、法線ベクトルは3成分を持つ情報であることから、法線ベクトルを単位ベクトル(法線ベクトルと同じ向きでノルムが1のベクトル)にしたときの各成分(-1.0~1.0)を、RGBの成分(0~255)として色情報を決定すればよい。例えば、法線ベクトルが(0.5,0.5,0.7071)のとき、(R,G,B)=(191,191,218)と決定できる。この場合の施工情報取得装置は、施工目標面情報を演算装置101へ入力する目標面データ入力装置21で構成される。
【0112】
また、施工目標面情報(施工目標面の法線ベクトル)を施工情報として色情報を決定する場合、法線ベクトルを用いて演算できる指標を基に色情報を決定してもよい。すなわち、法線ベクトルと重力方向ベクトルの内積を用いて目標面の傾斜角(水平面と目標面のなす角)を求め、傾斜角に応じた色を色情報としてもよい。ここで、傾斜角は-90~90度の間で連続的な値を取るが、n度毎の傾斜角で色分けしたい場合、事前に(180/n)通りのカラーパレットを用意し、傾斜角に応じた色を色情報として決定してもよいし、ユーザーが任意の範囲の傾斜角に応じた色を設定してもよい。
【0113】
出力部4034は、色情報付加部4033が出力する色情報付き地形点群情報を、地形表示装置404や進捗管理装置405で利用可能なフォーマットに整形し、色情報付き地形データを出力する。
【0114】
地形表示装置404は、地形データ演算部403により出力された色情報付き地形データを入力し、地形の形状や色を描画し、ユーザーに提示する。ここで、色情報付加部4033において、動作判定結果(作業内容情報)を基に色情報を付加した場合、図18に示すように、作業内容と地形データの関連付けが一目でわかる。また、施工日時情報を基に色情報を付加した場合、作業日毎の作業内容や作業エリアを把握していれば、図19に示すように、地形データと作業内容・作業エリアを関連付けることができる。また、施工目標面情報(法線ベクトル)を基に、例えば目標面の傾斜角(施工目標面情報)を基に色情報を付加した場合、図20に示すように、水平面と傾斜面を見分けることができる。すなわち、法面と天端面を仕上げる作業をしていたことがわかるため、地形データと作業内容を関連付けることが可能である。
【0115】
本実施例における進捗管理装置405は、地形表示装置404で示したように、動作判定結果(作業内容情報)や施工日時情報、施工目標面情報を基に決定した色情報により、地形データと作業内容、作業エリアとを関連付けることが可能であることから、これらの色情報を用いて地形データのフィルタリング及びトリミングを行うことで、特定の作業エリアや特定の作業内容の領域ごとの出来高・出来形を演算することが可能である。
【0116】
図21を用いて施工履歴演算部402の演算処理について説明する。図21において、第1の実施例(図13参照)との相違点は、ステップS104に続いてステップS105を実行する点である。
【0117】
ステップS105において、施工履歴演算部402の施工履歴生成部4024は、動作判定部4021の出力する動作判定結果(作業内容情報)及び施工目標面情報、軌跡演算部4022が出力するバケット軌跡情報、並びに施工日時情報などを含む施工履歴データを生成し、ステップS101へ戻る。
【0118】
次に、図22を用いて地形データ演算部403の演算処理について説明する。図22において、第1の実施例(図15参照)との相違点は、ステップS303の処理にある。
【0119】
ステップS303において、色情報付加部4033は、地形点群情報として抽出されたバケット軌跡に対応する色情報を、動作判定結果(作業内容情報)、施工日時情報、または施工目標面情報を基に生成し、バケット軌跡と色情報を組み合わせた色情報付き地形点群情報(色情報付き地形データ)として出力する。
【0120】
(まとめ)
本実施例における演算装置101は、作業装置1Aが地面を施工しているときの施工に関わる情報である施工情報として、操作量検出装置20および駆動状態検出装置19からの検出値を基に、作業装置1Aが地面を施工しているときの作業内容情報を取得する。
【0121】
または、本実施例における施工情報取得装置は、演算装置101の内部クロックで構成され、演算装置101は、前記施工情報として、作業装置1Aが地面を施工しているときの施工日時情報を取得する。
【0122】
または、本実施例における施工情報取得装置は、施工目標面情報を演算装置101へ入力する目標面データ入力装置21で構成され、演算装置101は、前記施工情報として、作業装置1Aが地面を施工しているときの施工目標面情報を取得する。
【0123】
以上の構成により本実施例では、施工履歴データに記録されたバケット軌跡情報と、動作判定結果(作業内容情報)、施工日時情報、または施工目標面情報を基に生成した色情報から、色情報付きの現況地形データを出力する。出力された色情報付き地形データは、地形表示装置404で表示する際、動作判定結果、施工日時情報、または施工目標面情報に対応した色情報により、作業エリアや作業内容との関連付けが容易にできる。また、進捗管理装置405においては、動作判定結果や施工日時情報、施工目標面情報に対応した色情報を用いることで、特定の作業エリアや特定の作業内容の領域ごとの出来高・出来形を演算することが可能である。
【0124】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0125】
1…油圧ショベル(作業機械)、1A…フロント作業装置、1B…車体、1BA…上部旋回体、1BB…下部走行体、2…ブーム、3…アーム、4…バケット、5…ブームシリンダ、6…アームシリンダ、7…バケットシリンダ、8…旋回油圧モータ、9a…走行モータ、9b…走行モータ、10a…走行右レバー、10b…走行左レバー、11a…操作右レバー、11b…操作左レバー、12…ブーム角度センサ(位置姿勢検出装置)、13…アーム角度センサ(位置姿勢検出装置)、14…バケット角度センサ(位置姿勢検出装置)、15…バケットリンク、16a…車体前後傾斜角センサ(位置姿勢検出装置)、16b…車体左右傾斜角センサ(位置姿勢検出装置)、17…GNSS受信機(位置姿勢検出装置)、17a…第1GNSSアンテナ、17b…第2GNSSアンテナ、18…比例制御弁、19…駆動状態検出装置(施工情報取得装置)、20…操作量検出装置(施工情報取得装置)、21…目標面データ入力装置(施工情報取得装置)、22…撮像装置(施工情報取得装置)、23…表示装置、101…演算装置、401…位置姿勢検出部、402…施工履歴演算部、403…地形データ演算部、404…地形表示装置、405…進捗管理装置、4011…作業装置姿勢検出部、4012…車体位置検出部、4013…車体角度検出部、4021…動作判定部、4022…軌跡演算部、4023…表面色演算部、4024…施工履歴生成部、4031…記録部、4032…地形座標抽出部、4033…色情報付加部、4034…出力部。
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