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特許75025642-[(チオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(フェニル)-2-メチルプロパンアミド誘導体及びその医薬としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】2-[(チオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(フェニル)-2-メチルプロパンアミド誘導体及びその医薬としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 333/38 20060101AFI20240611BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C07D333/38 CSP
A61K31/381
A61P25/22
A61P25/24
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023526966
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2021080572
(87)【国際公開番号】W WO2022096542
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】20206286.5
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー シュテファン ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】アラーズ ケリー
(72)【発明者】
【氏名】クリンダー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー-ヴィエラ ウルスラ
(72)【発明者】
【氏名】プリープケ ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】パウチュ アレクサンダー
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135659(WO,A1)
【文献】国際公開第98/022432(WO,A1)
【文献】特表2007-537179(JP,A)
【文献】特表2007-537181(JP,A)
【文献】特表2007-537180(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101843618(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/196533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Aの化合物
【化1】
(式中、
1はクロロ、ブロモを表し、
2は水素、フルオロを表し、
3はクロロ、ブロモを表す)。
【請求項2】
下記からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【表1】
【請求項3】
下記の構造を有する請求項1又は2に記載の化合物。
【表2】
【請求項4】
下記の構造を有する請求項1又は2に記載の化合物。
【表3】
【請求項5】
下記の構造を有する請求項1又は2に記載の化合物。
【表4】
【請求項6】
下記の構造を有する請求項1又は2に記載の化合物。
【表5】
【請求項7】
下記の構造を有する請求項1又は2に記載の化合物。
【表6】

【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の化合物の塩。
【請求項9】
求項1~8の何れか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物
【請求項10】
双極性障害I型、うつ病、軽躁病、躁病及び混合型;双極性障害II型;うつ病性障害;付随する不安性の苦痛、混合性の特徴、メランコリアの特徴、非定型の特徴、気分に一致する精神病性の特徴、気分に一致しない精神病性の特徴、カタトニアを伴うか又は伴わない大うつ病性障害の治療及び/又は予防における使用のための、請求項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記うつ病性障害が、単一のうつ病エピソード又は再発性大うつ病性障害、軽度のうつ病性障害、産後に発症するうつ病性障害、精神病症状を伴ううつ病性障害からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項12】
別の抗うつ薬による治療に加えて投与されることを特徴とする、請求項9~11の何れか1項に記載の医薬組成物
【請求項13】
行動療法に加えて投与されることを特徴とする、請求項9~12の何れか1項に記載の医薬組成物
【請求項14】
請求項1~8の何れか1項に記載の化合物を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤及び/又は担体と混合して含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式Aの新規2-[(チオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(フェニル)-2-メチルプロパンアミド、
【化1】
【0002】
その調製方法、それを含む医薬組成物、及び治療、特にインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)酵素の阻害が有益である状態の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。一般式Aによる本発明の化合物は、IDO1阻害剤である。
【背景技術】
【0003】
過去20年間にわたる広範な研究により、IDO1酵素活性が、大うつ病性障害、統合失調症、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、慢性疼痛、及び肥満を含む多数の神経学的及び精神医学的障害の症状を引き起こす役割を果たす可能性が示されている。
IDO1の阻害は、これまで主に腫瘍学の適応症に適用されてきた。これらの研究に利用される化合物は、主に非脳浸透性化合物であり、神経学的又は精神医学的治療への使用からは除外されている。これらの状態において、IDO1は脳の免疫細胞、主にミクログリア及び浸潤性マクロファージで発現が増加している。キヌレニン経路のトリプトファン代謝物(キノリン酸、キヌレン酸など)に生じる変化は、脳機能に影響を与える。この理由により、これら疾患を治療するための標的とされるIDO1酵素は脳にある。
【0004】
本明細書に開示する化合物は、中枢神経系疾患に使用するために開発されたものであり、したがって良好な透過性、低/ゼロ排出性、低クリアランス性、及び1日1回の治療に適した薬物動態特性を示す。中枢神経系疾患には、精神神経障害及び神経行動障害、神経変性疾患、頭部外傷又は脳血管イベント後のIDO1活性の増加による有害な結果が含まれる場合がある。当該化合物は、そのような神経学的適応症における補助療法としての使用に適しており、薬物間相互作用の可能性が最小限に抑えられた代謝プロファイルを示す。
IDO1活性は、炎症状態でのアップレギュレーションにより、多くの身体障害の症状を引き起こす役割を果たすことも知られている。IDO1阻害は、結核及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)、並びに髄膜炎などの細菌及びウイルスの感染後に有益な効果をもたらす可能性がある。これらの化合物は、中枢神経系の作用に最適化されており、HIVの認知的及び感情的影響、又は髄膜炎の長期的な神経学的影響など、これらの障害における中枢及び末梢の両方の症状の治療に適している。網膜の炎症は、糖尿病性網膜症及び地図状萎縮などの網膜疾患で観察され、結果としてIDO1が増加し、組織の変性につながると考えられている。肥満などの代謝障害は、炎症及びIDO1の増加と関連しており、阻害が有益であることを示唆している。
【0005】
国際公開第2006/034822号は、抗血栓剤として有用なヒト第Xa因子の阻害剤である式(I)の化合物を開示している。
【化2】
【発明の概要】
【0006】
本発明の化合物は、それらが
i)5エチニル-チオフェン部分の代わりに5-クロロ-チオフェン又は5-ブロモ-チオフェン部分を含むこと、及び
ii)複素環部分Aで置換されたフェニル環の代わりに、1個又は2個のハロゲンで置換されたフェニル環を含むことにおいて、
国際公開第2006/034822号の式(I)とは構造的に異なる。
【0007】
式(I)は、具体例として、5-エチニル-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソモルホリン-4-イル)フェニルカルバモイル]エチル}チオフェン-2-カルボキサミド(国際公開第2006/034822号、第91頁第7~8行、5-エチニル-チオフェン-2-カルボン酸-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソ-モルホリン-4-イル)-フェニルカルバモイル]-エチル}-アミド)を包含し、これは、式(I)内の追加のトリフルオロメチル部分を示す。
実施例の5-エチニル-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソモルホリン-4-イル)フェニルカルバモイル]エチル}チオフェン-2-カルボキサミド(国際公開第2006/034822号、第91頁第7~8行、5-エチニル-チオフェン-2-カルボン酸-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソ-モルホリン-4-イル)-フェニルカルバモイル]-エチル}-アミド)
【0008】
【化3】
【0009】
国際公開第2006/034822号実施例の5-エチニル-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソモルホリン-4-イル)フェニルカルバモイル]エチル}チオフェン-2-カルボキサミド(第91頁第7~8行)、5-エチニル-チオフェン-2-カルボン酸-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソ-モルホリン-4-イル)-フェニルカルバモイル]-エチル}-アミド)はヒト第Xa因子酵素を阻害し、高い排出率を示す。
ヒト第Xa因子酵素の阻害は、長期出血などの望ましくない重篤な副作用と関連している。現在利用可能な第Xa因子阻害薬(リバロキサバン及びアピキサバンなど)は、心房細動における深部静脈血栓症、肺塞栓、及び血栓を予防するための抗血栓薬として使用されている。効果を迅速に反転させるために、解毒剤(アンデキサネットアルファ)が開発されている。第Xa因子阻害剤の追加の用途には、神経変性などの中枢神経系の適応症が含まれる可能性がある。
本発明の化合物は、それらが
i)5-エチニル-チオフェン部分の代わりに、5-クロロ-チオフェン又は5-ブロモ-チオフェン部分を含むこと、及び
ii)複素環部分Aで置換されたフェニル環の代わりに、1個又は2個のハロゲンで置換されたフェニル環を含むことにおいて、
国際公開第2006/034822号の式(I)とは構造的に異なる。
【0010】
この構造上の相違は、予想外にも、IDO1阻害においてヒト第Xa因子酵素を凌駕する選択性増大をもたらし、またMDCK-MDR1細胞アッセイにおける排出比の低下をもたらすのに対して、国際公開第2006/034822号の5-エチニル-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソモルホリン-4-イル)フェニルカルバモイル]エチル}チオフェン-2-カルボキサミド(第91頁第7~8行、5-エチニル-チオフェン-2-カルボン酸-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソ-モルホリン-4-イル)-フェニルカルバモイル]-エチル}-アミド)は、ヒト第Xa因子酵素を阻害し、高い排出比を示す(表3a)。
したがって、目的とする技術的課題は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤を提供することである。
【0011】
本発明に従って、本明細書に開示する化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1であることが見出された。
それらのIDO1の強力な阻害、ヒト第Xa因子酵素に対する増大した選択性、及びインビトロ排出の低さにより、本発明の化合物は、脳を標的とする有効な薬物に必要とされる好ましい脳浸透性を示し、また有効性と長期出血などの望ましくない重篤な副作用との間に許容可能な窓を有すると思われる。
結論として、本発明の化合物は、ヒトでの使用についてより実行可能なはずである。
【0012】
国際公開第2007/003536号は、抗血栓剤として有用なヒト第Xa因子阻害剤である式(I)の化合物を開示している。
【化4】
式(I)は、一般式A内の高度に異なる単環式芳香族部分とは対照的に、式(I)内の複素二環式部分Dを示す特定の実施例4、6、及び159を包含する。
【0013】
実施例4(第66頁)
【化5】
実施例6(第68頁)
【化6】
実施例159(第137頁)
【化7】
【0014】
ヒト第Xa因子酵素の阻害は、長期出血などの望ましくない重篤な副作用と関連している。現在利用可能な第Xa因子阻害薬(リバロキサバン及びアピキサバンなど)は、心房細動における深部静脈血栓症、肺塞栓、及び血栓を予防するための抗血栓薬として使用されている。効果を迅速に反転させるために、解毒剤(アンデキサネットアルファ)が開発されている。第Xa因子阻害剤の追加の用途には、神経変性などの中枢神経系の適応症が含まれる可能性がある。
本発明の化合物は、複素二環式部分Dの代わりに1個又は2個のハロゲンで置換されたフェニル環を含む点で、国際公開第2007/003536号の式(I)とは構造的に異なる。
【0015】
この構造上の相違により、予想外にも、ヒト肝細胞の代謝安定性が向上し、MDCK-MDR1細胞アッセイではインビトロでの排出がなくなり、実施例3及び4ではインビボでの排出がなくなるのに対して、国際公開第2007/003536号の実施例4、6及び159では、ヒト肝細胞における低い代謝安定性及び/又は高いインビトロ排出比を示し(表3b)、加えて高いインビボ排出(表7)を示す。
したがって、目的とする技術的課題は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤を提供することである。
本発明に従って、本明細書に開示する化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤であることが見出された。
【0016】
それらのIDO1の強力な阻害、ヒト第Xa因子酵素に対する増大した選択性、及びインビトロ排出の低さにより、本発明の化合物は、脳を標的とする有効な薬物に必要とされる好ましい脳浸透性を示し、また有効性と長期出血などの望ましくない重篤な副作用との間に許容可能な窓を有すると思われる。
結論として、本発明の化合物は、ヒトでの使用についてより実行可能なはずである。
【0017】
国際公開第98/22432号は、抗アンドロゲン作用を有する式(I)の化合物が、前立腺癌、前立腺肥大症、除精、多毛症、禿頭症、ざ瘡、及び脂漏症の予防剤又は治療剤として有用であることを開示している。
【化8】
【0018】
式(I)は、基Z内にチオフェン部分構造を示す実施例53及び86を包含している(表1)。
【表1】


【0019】
国際公開第98/22432号の実施例53及び86は、抗アンドロゲン活性を有し、ヒト肝細胞において非常に低い代謝安定性を示す。
ヒトアンドロゲン受容体の阻害は、性欲減退、勃起不全、疲労、骨粗鬆症及び誘発される骨格合併症、ほてり、身体組成の変化、動脈硬化、糖尿病の新たな発症、認知機能の低下、並びに心血管疾患の罹患率及び死亡率の増加などの潜在的に深刻な副作用と関連している(doi: 10.1016/j.eururo.2008.10.008)。
【0020】
本発明の化合物は、国際公開第98/22432号の式(I)により一般的に包含される。本発明の化合物は、それらが
i)4シアノ-3-トリフルオロメチル-フェニル基の代わりに1個又は2個のハロゲンで置換されたフェニル環を含むこと、及び
ii)非置換チオフェン又は2-メチル-チオフェン部分の代わりに、2-クロロ-チオフェン又は2-ブロモ-チオフェン部分を含むこと
において、国際公開第98/22432号の実施例53及び86(最も近い類似体を表す)とは構造的に異なる。
【0021】
この構造上の相違は、予想外にも、強力なIDO1阻害及びヒトアンドロゲン受容体に対する選択性増大をもたらすのに対して、国際公開第98/22432号の実施例53及び86は弱いIDO1阻害を示し、ヒトアンドロゲン受容体に対する選択性はまったく示さないか、又は不十分である。加えて、本発明の化合物は、ヒト肝細胞において代謝的に安定であることが見出されている(表3c)。
したがって、目的とする技術的課題は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤を提供することである。
本発明に従って、本明細書に開示する化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤であることが見出された。
【0022】
それらのIDO1の強力な阻害、ヒトアンドロゲン受容体に対する増大した選択性、及びヒト肝細胞における代謝安定性により、本発明の化合物は、CNS起源の疾患及び状態の治療のためにインビボで有効であり、また性欲減退、勃起不全、疲労、骨粗鬆症及び誘発される骨格合併症、ほてり、体組成の変化、動脈硬化、糖尿病の新たな発症、認知機能低下、並びに心血管疾患の罹患率及び死亡率の増加などの望ましくない効果と有効性との間に許容可能な窓を有すると思われる。
したがって、本発明の化合物は、ヒトでの使用についてより実行可能なはずである。
【0023】
国際公開第2005/111029号は、抗血栓剤として有用なヒト第Xa因子阻害剤である式(I)の化合物を開示している。
【化9】
【0024】
式(I)は、複素環式アミド部分Aを示す特定の実施例8及び28を包含する(表2)。
【表2】
【0025】
国際公開第2005/111029号の実施例8及び28は、ヒト第Xa因子酵素を阻害し、高い排出を示す。
ヒト第Xa因子酵素の阻害は、長期出血などの望ましくない重篤な副作用と関連している。現在利用可能な第Xa因子阻害薬(リバロキサバン及びアピキサバンなど)は、心房細動における深部静脈血栓症、肺塞栓、及び血栓を予防するための抗血栓薬として使用されている。効果を迅速に反転させるために、解毒剤(アンデキサネットアルファ)が開発されている。第Xa因子阻害剤の追加の用途には、神経変性などの中枢神経系の適応症が含まれる可能性がある。
【0026】
本発明の化合物は、複素環式アミド部分Aで置換されたフェニル環の代わりに、1個又は2個のハロゲンで置換されたフェニル環を含む点で、国際公開第2005/111029号の式(I)とは構造的に異なる。
この構造上の相違により、予想外にも、ヒト第Xa因子酵素に対する増大した選択性及びMDCK-MDR1細胞アッセイにおける低い排出比をもたらすのに対して、国際公開第2005/111029号の実施例8及び28はヒト第Xa因子酵素を阻害し、高い排出比を示す(表4)。
したがって、目的とする技術的課題は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤を提供することである。
本発明に従って、本明細書に開示する化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤であることが見出された。
【0027】
それらのIDO1の強力な阻害、ヒト第Xa因子酵素に対する増大した選択性、及びインビトロ排出の低さにより、本発明の化合物は、脳を標的とする有効な薬物に必要とされる好ましい脳浸透性を示し、また有効性と長期出血などの望ましくない重篤な副作用との間に許容可能な窓を有すると思われる。
結果として、本発明の化合物は、ヒトでの使用についてより実行可能なはずである。
【0028】
国際公開第2005/111013号は、抗血栓剤として有用なヒト第Xa因子の阻害剤である式(I)の化合物を開示している。
【化10】
式(I)は、式(I)内の複素環部分Aを示す特定の実施例22を包含する。
【化11】
実施例22(154頁)
【0029】
国際公開第2005/111013号の実施例22は、ヒト第Xa因子酵素を阻害し、ヒト肝細胞において中程度の代謝安定性を示す。
ヒト第Xa因子酵素の阻害は、長期出血などの望ましくない重篤な副作用と関連している。現在利用可能な第Xa因子阻害薬(リバロキサバン及びアピキサバンなど)は、心房細動における深部静脈血栓症、肺塞栓、及び血栓を予防するための抗血栓薬として使用されている。効果を迅速に反転させるために、解毒剤(アンデキサネットアルファ)が開発されている。第Xa因子阻害剤の追加の用途には、神経変性などの中枢神経系の適応症が含まれる可能性がある。
【0030】
本発明の化合物は、飽和複素環部分Aで置換されたフェニル環の代わりに、1個又は2個のハロゲンで置換されたフェニル環を含む点で、国際公開第2005/111013号の式(I)とは構造的に異なる。
この構造上の相違は、予想外にも、強力なIDO1阻害、並びにヒト第Xa因子酵素に対する増大した選択性、及びヒト肝細胞における代謝安定性の増大をもたらすのに対して、国際公開第2005/111013号の実施例22は、ヒト第Xa因子酵素を阻害し、ヒト肝細胞における中程度の代謝安定性を示す(表5)。
したがって、目的とする技術的課題は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤を提供することである。
本発明に従って、本明細書に開示する化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤であることが見出された。
【0031】
それらのIDO1の強力な阻害、ヒト第Xa因子酵素に対する増大した選択性、及びヒト肝細胞における代謝安定性の増大により、本発明の化合物は、CNS起源の疾患及び状態の治療のためにインビボで有効であり、また有効性と長期出血などの望ましくない重篤な副作用との間に許容可能な窓を有すると思われる。
結論として、本発明の化合物は、ヒトでの使用についてより実行可能なはずである。
【0032】
国際公開第2005/111014号は、抗血栓剤として有用なヒト第Xa因子阻害剤である式(I)の化合物を開示している。
【化12】
式(I)は、式(I)内にアミド部分を示す特定の実施例4を包含する。
【化13】
実施例4(137頁)
【0033】
国際公開第2005/111014号の実施例4は、ヒト第Xa因子酵素を阻害し、高い排出を示す。
ヒト第Xa因子酵素の阻害は、長期出血などの望ましくない重篤な副作用と関連している。現在利用可能な第Xa因子阻害薬(リバロキサバン及びアピキサバンなど)は、心房細動における深部静脈血栓症、肺塞栓、及び血栓を予防するための抗血栓薬として使用されている。効果を迅速に反転させるために、解毒剤(アンデキサネットアルファ)が開発されている。第Xa因子阻害剤の追加の用途には、神経変性などの中枢神経系の適応症が含まれる可能性がある。
【0034】
本発明の化合物は、アミド部分でパラ置換されたフェニル環の代わりに、1個又は2個のハロゲンで置換されたフェニル環を含む点で、国際公開第2005/111014号の式(I)とは構造的に異なる。
この構造上の相違は、予想外にも、IDO1阻害においてヒト第Xa因子酵素を凌駕する選択性増大をもたらし、またMDCK-MDR1細胞アッセイにおける低い排出比をもたらすのに対して、国際公開第2005/111014号の実施例4はヒト第Xa因子酵素を阻害し、高い排出を示す(表6)。
【0035】
したがって、目的とする技術的課題は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤を提供することである。
本発明に従って、本明細書に開示する化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1であることが見出された。
それらのIDO1の強力な阻害、ヒト第Xa因子酵素に対する増大した選択性、及びインビトロ排出の低さにより、本発明の化合物は、脳を標的とする有効な薬物に必要とされる好ましい脳浸透性を示し、また有効性と長期出血などの望ましくない重篤な副作用との間に許容可能な窓を有すると思われる。
結論として、本発明の化合物は、ヒトでの使用についてより実行可能なはずである。
上記で述べた第Xa因子酵素阻害剤は何れも、本発明の化合物、又は本明細書に記載のIDO1の阻害剤としてのその有利な特性を教示又は示唆していない。
さらに、本発明の化合物は、ヒト肝細胞において代謝的に安定している(代謝安定性については表3b、3c及び5を参照のこと)。したがって、本発明の化合物は、好ましいインビボクリアランス、したがってヒトにおいて所望の作用持続時間を有すると思われる。
【0036】
ヒト肝細胞における安定性とは、好ましい薬物動態特性を備えた薬物の選択及び/又は設計の文脈において、生体内変化に対する化合物の感受性を指す。多くの薬物の代謝の一次側は肝臓である。ヒト肝細胞は、シトクロムP450(CYP)と第II相代謝のための追加の酵素(ホスファターゼ及びスルファターゼなど)を含んでいるため、インビトロでの薬物代謝を研究するためのモデルシステムを表している。肝細胞における安定性の増強は、バイオアベイラビリティの向上及び十分な半減期などの幾つかの利点と関連しており、患者への投与回数を減らし、頻度を減らすことができる。したがって、肝細胞における安定性の増強は、薬物として使用される化合物にとっての好ましい特徴である。
さらに、本発明の化合物は、良好な膜透過性及び低ないし中程度のインビトロ排出を示す(MDCKアッセイMDR1(P-gp)については表4及び6を参照のこと)。したがって、本発明の化合物は、有効なCNS薬剤に必要とされる好ましい脳浸透性を示すと思われる。
【0037】
MDCKアッセイは、化合物が血液脳関門を通過する可能性に関する情報を提供する。透過性フィルター支持体上で成長した分極化した集密なMDCK-MDR1細胞単層の透過性測定が、インビトロ吸収モデルとして使用される。MDCK-MDR1細胞単層を横切る当該化合物の見かけの透過計数(PE)が、頂点から基底へ(AB)及び基底から頂点へ(BA)の輸送方向で測定される(pH7.4,37℃)。AB透過性(PEAB)は血液から脳への薬物吸収を表し、またBA透過性(PEBA)は、受動的透過性、並びに排出及び取り込み輸送体(主に過剰発現したヒトMDR1によりMDCK-MDR1細胞で発現する)により媒介される能動輸送メカニズムの両方を介した、脳から血液への薬物排出を表す。両輸送方向における同一又は類似の透過性は受動的透過を示し、ベクトル透過性は追加の能動的輸送メカニズムを示す。PEABよりも高いPEBA(PEBA/PEAB>3)は、MDR1により媒介される能動的排出の関与を示し、十分な脳への曝露を達成する目標を損なう可能性がある。したがって、このアッセイは、インビボ試験に適用可能な化合物をさらに選択するための貴重なサポートを提供する。血液脳関門での排出によって制限されない高い透過性は、主にCNSで作用する薬物に使用される予定の化合物にとって好ましい特徴である。結論として、血液脳関門において高い透過性を確保するには、MDR1輸送体での排出を最小限に抑える(排出<3)ことが非常に好ましい。
【0038】
本発明の化合物は、ラット又はマウスでの経口適用後における血漿及び脳への曝露に示されるように、インビボでの好ましい薬物動態特性を示す。脳に侵入する投与された薬物の量を推定するために、脳対血漿の比率が代理パラメータとして使用される。排出輸送体(P-gpなど)は血液脳関門に位置するため、基質として作用する化合物は脳から能動的に輸送される。これらの排出輸送体は筋肉組織には発現しないため、筋肉組織と脳組織の間の化合物の相対分布比は、ラット又はマウスのインビボ排出の指標として使用できる。インビボでの排出が検出されない場合(ラット/マウスにおいて)、及びインビトロでの排出(MDCK-MDR1(P-gp))が存在しない場合、患者の脳への曝露が予想される[表7のインビトロ排出データ(MDCK-MDR1アッセイ)及びインビボ排出データ(経口適用後のラット/マウスにおける組織分布)の比較を参照のこと]。
【0039】
本発明は、式Aの新規な2-[(チオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(フェニル)-2-メチルプロパンアミド、又はその塩、特に薬学的に許容されるその塩を提供する。
【化14】
【0040】
(式中、
1はクロロ、ブロモを表し、
2は水素、フルオロを表し、
3はクロロ、ブロモを表す)
本発明は、式Aの新規な2-[(チオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(フェニル)-2-メチルプロパンアミドを提供し、これは予想外にも強力なIDO1阻害剤である。
本発明の別の態様は、強力かつ選択的なIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
本発明の別の態様は、ヒトアンドロゲン受容体に対して適切な選択性を有する強力なIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
【0041】
本発明の別の態様は、ヒト第Xa因子酵素に対して適切な選択性を有する強力なIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
本発明の別の態様は、適切な膜透過性及び低いインビトロ排出を有する強力かつ選択的なIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
本発明の別の態様は、ヒト肝細胞において高い代謝安定性を有する強力かつ選択的なIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
【0042】
本発明の別の態様は、適切な膜透過性、低いインビトロ排出、及びヒト肝細胞における高い代謝安定性を有する強力かつ選択的なIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
本発明の別の態様は、強力で、選択的で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
本発明の別の態様は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤としての、式Aによる化合物に言及する。
本発明の別の態様は、任意に1つ以上の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に、式Aによる少なくとも1つの化合物を含有する医薬組成物に言及する。
本発明のさらなる態様は、IDO1阻害に関連する障害の予防及び/又は治療に使用するための、式Aによる化合物に言及する。
本発明の別の態様は、本発明の化合物の製造方法に言及する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
調製
以下のスキームは、例として、一般式Aによる化合物及び対応する中間体化合物を製造する方法を一般的に説明するものである。略語による置換基は、スキームの文脈内で他に定義されていない限り、上記で定義された通りであってよい。
スキームI:方法A
【0044】
【化15】
【0045】
PGAがアルキル又はアリールエステルを形成する適切な保護基である市販の化合物(I)(PGAは、メチル、エチル、n-ブチル、フェニル、p-ニトロフェニルからなる群から選択される)から出発して、化合物(III)は、活性化された化合物(II)(Gは塩素、臭素、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム又はO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム)などのハロゲン又はウロニウム部分を表す)を、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン又はトルエンなどの溶媒中において、-50℃~120℃の範囲の温度で、トリエチルアミン、N-エチル-ジイソプロピルアミン、又はN-メチルモルホリンなどの有機塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。
【0046】
化合物(III)の加水分解は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基を用い、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、又は水などの溶媒又は溶媒混合物中において、-20℃~100℃の範囲の温度で行われる。化合物(VI)を得るためには、化合物(V)と反応させる前に、トリエチルアミン、N-エチル-ジイソプロピルアミン又はN-メチルモルホリンなどの有機塩基の存在下に、-50℃から120℃の範囲の温度で、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート又はO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェートなどの試薬を用いて化合物(IV)を活性化させることが必要である。
スキーム2:方法B
【0047】
【化16】
【0048】
化合物(VIII)を得るためには、化合物(V)を添加する前に、トリエチルアミン、N-エチル-ジイソプロピルアミン、N-メチルモルホリンなどの有機塩基の存在下に、-50℃~120℃の範囲の温度で、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン又はトルエンなどの溶媒中で、テトラフルオロボロン酸O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム又はO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェートのような試薬を用いて、PGBがカルバメートを形成する適切な保護基である市販の化合物(VII)の活性化(PGBは、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又は9-フルオレニルメトキシカルボニルからなる群から選択される)が必要とされる。ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン又は水などの溶媒中において、0℃~100℃の範囲の温度で、塩化水素、臭化水素、酢酸又はトリフルオロ酢酸などの酸、又はトリエチルアミン、N-エチル-ジイソプロピルアミン又はN-メチルモルホリンなどの有機塩基による保護基の除去により、化合物(IX)が形成される。
【0049】
テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン又はトルエンなどの溶媒中において、-50℃~120℃の範囲の温度で、トリエチルアミン、N-エチル-ジイソプロピルアミン又はN-メチルモルホリンなどの有機塩基の存在下で、化合物(IX)と活性化された化合物(II)(Gは塩素、臭素、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム又はO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム)などのハロゲン又はウロニウム部分を表す)と反応させることが、化合物(VI)を得るには必要である。
【0050】
スキーム1及び2において、すべての置換基R1、R2及びR3は一般式Aについて定義された意味を有し、略語PGA及びPGBは保護基の意味を有し、略語Gは活性化基の意味を有し、それを直接参照する本発明のすべての実施形態、具体的には請求項で定義された意味を有する。
【0051】
一般的定義
本明細書で具体的に定義されていない用語には、開示及び文脈に照らして当業者が付与する意味が与えられるべきである。
本発明の化合物が化学名及び式の形で示されている場合、矛盾がある場合には式が優先するものとする。
アスタリスクは、部分式において使用され、コア分子に接続されている結合、又は定義されているように結合した置換基に接続されて結合を示す。
本明細書で使用される「置換された」との用語は、指定された原子の実行可能な原子価数を超えず、置換によって安定な化合物がもたらされるという条件で、指定された原子上の任意の1個又は複数の水素が、示された群から選択されたもので置き換えられることを意味する。
【0052】
立体化学
特に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、所与の化学式又は化学名は、回転異性体及び互変異性体、並びに異なる割合の混合物、又はそのような異性体が存在する上記形態の何れかの混合物、並びに塩(その薬学的に許容される塩を含む)を包含するものとする。
【0053】

「薬学的に許容される」との語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、若しくは他の問題を伴わずに使用するのに適した、又は合併症、及び合理的な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書で使用される。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」とは、親化合物が酸若しくは塩基と塩又は複合体を形成する、開示された化合物の誘導体を指す。
塩基性部分を含む親化合物と共に薬学的に許容される塩を形成する酸の例には、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸又は酒石酸などの無機物又は有機酸が含まれる。
酸性部分を含む親化合物と共に薬学的に許容される塩を形成する陽イオン及び塩基の例には、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、NH4 +、L-アルギニン、2,2’-イミノビスエタノール、L-リジン、N-メチル-D-グルカミン又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが含まれる。
【0054】
本発明の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離の酸又は塩基形態を、水中又はジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、若しくはアセトニトリル、又はそれらの混合物などの有機希釈剤中において、十分な量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製することができる。例えば、本発明の化合物を精製又は単離するのに有用な、上記以外の酸の塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩)もまた、本発明の一部を構成する。
【0055】
生物学的アッセイ及びデータ
略語一覧
BSA ウシ血清アルブミン
cDNA 相補型DNA
CSF 脳脊髄液
DMSO ジメチルスルホキシド
HEPES 2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)
-エタンスルホン酸
IFN インターフェロン
3EDTA 1,2-ジアミノエタン-N,N,N’,N’-四酢酸
三カリウム塩
LPS リポ多糖
MDCK マディン・ダービー(Madin-Darby)犬の腎臓
MDR1 多剤耐性タンパク質1
P-gp p-糖タンパク質
%QH 肝臓血流の%
rpm 回転/分
rt 室温
U 単位
WBA 全血アッセイ
【0056】
アッセイA~Fで提供されるデータは、個々のアッセイ結果(IC50値、%QH及び排出比)の算術平均であり、標準偏差があり、Nは対応するアッセイで利用可能なデータ点の数である。
化合物の生物学的活性は、次の方法で決定される。
【0057】
アッセイA:IDO1効力のインビトロ試験
インビトロ薬理活性の測定
このアッセイでは、LPS及びIFN-ガンマで刺激されたヒト全血における阻害剤用量応答におけるキヌレニン(L-トリプトファンの酵素異化産物)の減少を評価する。キヌレニンが、LC-MS/MSを介してD4-キヌレニン(内部標準)に対して定量化される。このアッセイは、ヒトモデルにおいて、化合物の特定のIC50及びIC90値を決定するために使用される。
【0058】
材料及び試薬:
・抗凝固剤Li-ヘパリンを含む採血シリンジ(SARSTEDT Monovette、LH9mL、オレンジ色コード)で採取した健康なドナーからのヒト全血、
・96ウェルプレート(THERMO FISHER Abgene Storage Plate 96ウェル0.8mL、カタログ番号AB0765)
・エアポア(AirPore)テープ(QIAGEN社)
・グルタマックス(GlutaMAX)サプリメントを含むRPMI1640(GIBCO、カタログ番号61870010)
・RPMIに溶解した大腸菌(E.coli)由来のリポ多糖類、滅菌濾過済み(SIGMA ALDRICH、カタログ番号L3129-25MG、E.coli 0127:B8、ロット番号016M4187V)
・DPBS中0.1%組換えヒト血清アルブミン(SIGMA ALDRICH、カタログ番号A6608-100MG、ロット番号SLBQ1282V)に溶解した組換えヒトインターフェロンガンマ(TEBU-BIOを経由したPEPROTECH、カタログ番号167300-02-B、ロット番号121527)
・アセトニトリル、HPLC用クロマソルブ(CHROMASOLV)(SIGMA ALDRICH、カタログ番号34851-2.5L)
・L-キヌレニンD4(BUCHEM BV)、DMSO中の5mM
・DMSO
・酢酸、分析用の100%水フリー(MERCK、カタログ番号34885-2.5L)
・メタノール、HPLC用クロマソルブ(CHROMASOLV)(SIGMA-ALDRICH、カタログ番号1.00063.2500)
【0059】
手順:
IFN-ガンマ及びLPSをRPMI培地で希釈して、8倍濃縮の目的のアッセイ濃度にした。
IFN-ガンマ 25ng/mL×8 200ng/mL
LPS 500ng/mL×8 4μg/mL
LPSは少なくとも10分間超音波処理し、使用直前に掻き混ぜた。
ピペッティングにより、IFN-ガンマを穏やかに上下に混合した。
両方の希釈液を1:1の比率で混合することにより刺激剤混合物が調製され、これは各刺激剤の4倍の所望の最終濃度を生じた。
半対数連続希釈の化合物希釈液を、100%DMSO中の4mM~4μMの範囲で調製した。これらの希釈液を、RPMI培地でさらに1:100に希釈した。
【0060】
刺激剤並びに阻害剤の滴定曲線を用いて、アッセイプレート(3つの技術的複製、4つの生物学的複製)を調製した。すべての試薬は、1ウェル当たり60μLの容量及び4倍濃縮でプレーティングされる。陽性対照(刺激なし、阻害剤治療なし、基礎活性)、及び陰性対照(阻害剤治療なしの刺激、最大信号)が各プレート(6つの技術的複製)に含まれていた。全血サンプルを添加する前に、すべてのウェルに、RPMI培地を最終容量120μLまで補充した。
【0061】
Liヘパリンで処理した4人のドナーからの全血を、採血直後(<2時間)に受理した。各サンプルをRPMI培地で1:2に希釈した。
120μLのこの希釈血液サンプルを指定されたプレートウェルに添加し、各ウェルでは、最終容量240μL、1倍の試薬濃度、10μM~0.01μMの間の化合物濃度範囲、及び0.25%DMSOが生じた。
プレートをエアポアテープ(air pore tape)で密閉し、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
インキュベーション時間の後、アッセイプレートを短時間振とうし、次いで遠心分離(15分、2000×g、室温)して血漿を得た。
各アッセイサンプルから吸引された100μLの血漿を移した新しい96ウェルプレートの各ウェルに、200μLのアセトニトリルをピペットで移した。当該プレートをシェーカー上に5分間、1000rpmで置き、その後20~60分間-80℃に置いてさらに沈殿させた。
【0062】
内部標準溶液を調製した。DMSO中の5mMのD4-キヌレニンを、MilliQ水で1:3333に希釈して1.5μM溶液にした。100μLの内部標準溶液を各ウェルに添加し、各ウェルのD4-キヌレニン最終濃度を0.375μMにした。
プレートを遠心分離して、沈殿物を沈殿させた:20分、2000×g、室温。
【0063】
LC/MS分析の準備として、上澄みを新しい96ウェルプレートに移した。
LCパラメータ
カートリッジ(種類・ベッド量): C18(12μL)
流量ポンプ1/2/3[mL/minで]: 1.5/1.25/1.25
LC溶媒ポンプ1/2/3: 再蒸留H2O中の0.5%酢酸/メタノール中の0.5%酢酸/メタノール中の0.5%酢酸
洗浄溶媒(洗浄1/2): H2O/MeOH
LabView構成ファイル: ido.cfg
吸引時間: 250ms
洗浄時間: 3000ms
溶出時間: 3000ms
平衡時間: 500ms
シップ高さ(Sip Height): 2mm
MSパラメータ
質量分析計: TSQ Vantage
イオン源: HESI II
スプレー電圧: 2500V
キャピラリー温度: 325℃
シースガス圧: 30psi
気化器温度: 500℃
補助ガス圧: 45psi
スキャン幅: 0.1amu
解像度: SRM(0.7/0.7)
分析対象物/内部標準のMRMトランジション(ダルトン)
L-キヌレニン209.11(マザー構造)-94.10
D4-キヌレニン213.05(マザー構造)-150.14
結果は、L-キヌレニン/D4-キヌレニンの比として与えられた。
用量応答曲線を計算し、100%(陰性対照)と0%(陽性対照、非刺激基礎活性)の間の対照阻害パーセントとしてフィッティングさせた。
【0064】
アッセイB:アンドロゲン受容体効力のインビトロ試験:
インビトロ薬理活性の測定
ヒトアンドロゲン受容体(AR)アッセイは、インディゴバイオサイエンシズ社(Indigo Biosciences)の製品番号IB03001を使用して実行された。このキットで提供される細胞株は、AR刺激で誘導されるレポーター遺伝子を有している。このレポーター遺伝子は、北米のホタル(Photinus pyralis)由来の62kDタンパク質である甲虫ルシフェラーゼをコードするcDNAである。当該ルシフェラーゼは、D-ルシフェリンのモノ酸化を触媒し、オキシルシフェリン、アデノシン一リン酸、ピロリン酸、CO2、及び光子放出を生成する。反応の発光強度は、ルミノメーターを使用して定量化される。
【0065】
当該アッセイを実行するには、予熱した細胞回復培地を各チューブに加えて細胞を解凍し、37℃のウォーターバスに入れる。200μL中の30000個の生存細胞を播種し(コラーゲンコーティングプレート)、37℃、湿度85%以上、5%CO2で24時間インキュベートする。培地は、化合物スクリーニング培地に置き換える。次に、細胞を125pM(EC80)6a-Flテストステロンで攻撃し、化合物を10μM~10nMまでの半対数希釈で適用する。次に、アッセイプレートを37℃、湿度85%以上、CO2 5%で22~24時間インキュベートする。培地をルシフェラーゼ検出試薬と置き換え、発光定量化の前に5分間平衡化させる。
データ分析は、100%(陰性対照:6a-Flテストステロン)と0%(陽性対照:6a-FLテストステロンなし)の間の対照のパーセンテージを計算することから成っていた。正規化された値のフィッティングは、4パラメータのシグモイド結合曲線(Log[conc])対シグナルで行われた。
【0066】
アッセイC:ヒト第Xa因子効力のインビトロ試験
インビトロ薬理活性の測定
p-ニトロ-アニリノ基(pNA)で標識された特定の発色基質を使用して、活性なヒト第Xa因子を測定する。ペプチド基質とpNA基の間の結合が切断された後に色が変化し、これは405nmで検出できる。切断された基質の量は、活性Xaの量に正比例する。
0.8mg(100U)のヒト第Xa因子(Enzyme Research Laboratories社、HFXa1011)を0.444mLのH2O(Millipore社)に溶解させた。これは、19.28μM又は225U/mlの原液に相当する。アッセイ緩衝液(100mMのトリス、150mMのNaCL、HCLでpH7.8に調整、0.1%BSA及び0.05%Tween20を含む)でさらに希釈した。
発色基質S2765(Chromogenix社、S2765)25mg(1バイアル)を3.5mlのH2O(Millipore社)に溶解し、10mMのストック溶液を作製した。
化合物をDMSO中に溶解及び希釈させた(ここでのアッセイにおける最終希釈は1:10であり、1%DMSOの最終濃度を生じる)。
又は
H2O中に溶解した化合物をH2Oで希釈した。
-最終前希釈ステップは、11%DMSOを含むアッセイ緩衝液中で1:10であり、結果として10%DMSOになった。
-アッセイの最終希釈は1:10であり、最終濃度は1%DMSOになる。
【0067】
化合物は、10μMから0.003nM以下の最終濃度で試験された。
5μLのヒト第Xa因子(最終濃度0.86nM)、2μLの化合物希釈液又はアッセイ緩衝液(10%DMSOを含む)、及び8μLのアッセイ緩衝液を384ウェルプレートにピペットで移し(3連で)、サーモミックス(Thermomix)内において24℃で10分間インキュベートした。
5μLの発色基質(最終濃度0.5mM)を添加した後に酵素-基質反応が開始され、1~2分以内にスペクトラマックス(spectramax)による動態測定が開始された。
【0068】
測定パラメータ:(Spectramax、モノクロメータ)
吸光度:1.LM 405nM
キネティック:2分ごとに16分(9回)
陰性対照(NC):5μlのヒト第Xa因子+10μlのアッセイ緩衝液+5μlの基質
陽性対照(PC):5μlのヒト第Xa因子+2μlのナファモスタット(市販、最終濃度:1μM)+8μlのアッセイ緩衝液+5μLの基質
ブランク(オプション):15μlのアッセイ緩衝液+5μlの基質
【0069】
IC50、KI、及び最高濃度での%効果(比率)の計算
計算のために、120秒から720秒までのVmax値の平均をとった。
x/yプロットが作成された。x=log(M,化合物)、y=vmax(drfu/min)
データは、曲線適合モデルを使用して分析した:log(阻害剤)vs.応答…可変勾配(4つのパラメータ)
この適合の結果は、上、下、Log(IC50、M)、ヒルスロープ、及びIC50(M)であった。
【0070】
アッセイD:ヒト肝細胞における代謝安定性の評価
試験化合物の代謝分解を、肝細胞懸濁液中でアッセイする。凍結保存からの回復後、ヒト肝細胞を、5%又は50%のヒト血清を含むか、又は血清の非存在下で、3.5μgグルカゴン/500mL、2.5mgインスリン/500mL及び3.75mgヒドロコルチソン/500mLを添加したダルベッコ改変イーグル培地でインキュベートする。
細胞培養インキュベーター(37℃、10%CO2)で30分間プレインキュベーションした後、5μlの試験化合物溶液(80μM;培地で1:25に希釈することにより2mMのDMSOストック溶液から誘導)を、395μlの肝細胞懸濁液に添加して、100万細胞/mLの最終細胞密度、1μMの最終試験化合物濃度、及び0.05%の最終DMSO濃度を得る。
細胞を6時間インキュベートし(インキュベーター、オービタルシェーカー)、0、0.5、1、2、4及び6時間後にサンプル(25μl)をインキュベーターから取り出す。サンプルをアセトニトリルに移し、遠心分離(5分)によってペレット化する。上清を新しい96ディープウェルプレートに移し、窒素下で蒸発させ、HPLC-MS/MSによる親化合物の減少の分析の前に再懸濁させる。
【0071】
CLintは次のように計算される。
CL_INTRINSIC=k/CD×1000/60
ここで、
k:親の減少に対する回帰直線の傾き[h-1]、
CD:重要な細胞の細胞密度[10e6細胞/mL]、
計算されたインビトロ肝固有クリアランスは、固有のインビボ肝クリアランスまでスケールアップされ、肝臓モデル(十分に撹拌されたモデル)を使用して肝臓のインビボ血中クリアランス(CL)を予測するために使用される。
CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/min/kg]=(CL_INTRINSIC[μL/min/10e6細胞]×肝細胞数[10e6細胞/g肝臓]×肝臓因子[g/kg体重])/1000
CL[ml/min/kg]=CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/min/kg]×肝血流[ml/min/kg]/(CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/min/kg]+肝血流[ml/min/kg])
結果は、肝血流のパーセンテージとして表される。
QH[%]=CL[ml/min/kg]/肝血流[ml/min/kg]
【0072】
肝細胞性、ヒト:120×10e6細胞/g肝臓
肝臓因子、ヒト:25.7g/kg体重
血流、ヒト:20.7ml/(min×kg)
【0073】
アッセイE:MDCKアッセイMDR-1(P-gp)
化合物がMDCK-MDR1単層(ヒトMDR1遺伝子をトランスフェクトしたMDCKII細胞)を横切る見かけの透過係数(Papp)を、頂点から基底(AB)及び基底から頂点(BA)の方向で測定する。
MDCK-MDR1細胞(6×105細胞/cm2)をフィルターインサート(Corning、Transwell社、ポリカーボネート、孔径0.4μm)に播種し、9~10日間培養する。DMSOストック溶液(1~20mM)に溶解した化合物を、0.25%BSAを添加したHTP-4緩衝液(128.13mMのNaCl、5.36mMのKCl、1mMのMgSO4、1.8mMのCaCl2、4.17mMのNaHCO3、1.19mMのNa2HPO4、0.41mMのNaH2PO4、15mMのHEPES、20mMのグルコース、pH7.4)で希釈して輸送溶液を調製すると、最終試験濃度は1μM又は10μMになり、最終DMSO含有量は0.5%になる。輸送溶液は、それぞれA-B又はB-Aの透過性を測定するために、頂点又は側底ドナー側に適用される。レシーバ側には、0.25%のBSAを添加したHTP-4緩衝液が含まれている。ドナーからは実験の開始時と終了時にサンプルを収集し、レシーバ側からは2時間までのさまざまな時間間隔で、HPLC-MS/MSによる濃度測定のためにサンプルを収集する。サンプリングされたレシーバ容積は、新しいレシーバ溶液に置き換える。
アッセイEについて報告されたすべてのデータは、10μMの最終試験濃度で測定された。
【0074】
アッセイF:化合物の経口適用後のラット/マウスにおける組織分布の測定
雄のHan・Wistarラット又はC57BL/6NRjマウスに対して、0.5%Natrosol/0.015%Tween80に懸濁させた調査対象化合物10μmol/kgを経口投与した。K3EDTA含有バイアルに、ラットの短時間イソフルラン麻酔で舌下静脈から、又は投与後0.83、0.25、0.5、1、2、3、4、8及び24時間の時点で、意識のあるマウスの伏在静脈から採血した。その後、5000rpmで5分間遠心分離して血漿を調製し、-20℃で保存した。
【0075】
組織及びCSFは、麻酔をかけた動物からサンプリングした。大槽からCSFを採取した。放血後、大腿筋サンプルを採取した。頭蓋骨と硬膜が取り除かれ、完全な脳が採取された。筋肉と脳のサンプルをプレウェイトホモジナイゼーション装置(プリセリーズ(Precellys)(登録商標))に移す前に、組織を生理食塩水で濯ぎ、水分を吸い取って乾かした。
【0076】
均質化のために、4部(v/w)の均質化緩衝液(37.5%アセトニトリル、37.5%メタノール、25%水)を添加した。Precellys(登録商標)エボリューションホモジナイザーで組織をホモジナイズした。ホモジネート5μLをアセトニトリルとメタノールの1対1(v/v)混合物70μLに添加し、-18℃で少なくとも10分間凍結させた。
最終的なサンプル調製のために、サンプルを4000rpmで1分間遠心分離し、得られた上清のアリコート(30μL)を170μLのギ酸と混合してから、LC-MSに注入した。検量線は、それぞれラット及びマウスの血漿でそれに応じて作成された。ベーリンガーインゲルハイムにおけるすべての動物のケア及び実験手順は、ドイツ及びヨーロッパの動物福祉法(EU指令2010/63/EU)に準拠して実施され、ドイツの地方自治体であるテュービンゲン県よって承認された(参照番号35/9185.81-8/14-009-G)。
【0077】
本発明の化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤(ヒト第Xa因子に対して選択的で、かつインビトロでの排出がない)であることが見出された。これに対して、国際公開第2006/034822号実施例の5-エチニル-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソモルホリン-4-イル)フェニルカルバモイル]エチル}チオフェン-2-カルボキサミド(第91頁第7~8行、5-エチニル-チオフェン-2-カルボン酸-N-{1-トリフルオロメチル-1-[3-メチル-4-(3-オキソ-モルホリン-4-イル)-フェニルカルバモイル]-エチル}アミド)は強力なヒト第Xa因子阻害剤であり、高い排出比を示す。これは十分な脳への曝露を達成するという目標を損なう可能性がある(表3aを参照のこと)。
本発明の化合物について、ヒト第Xa因子酵素に対する高い選択性(すなわち、アッセイAにおける低いIC50値を示す強力なIDO1阻害、及びアッセイCにおける高いIC50値を示すヒト第Xa因子酵素の低い阻害)及び低い排出比(アッセイEにおける排出<3)が望ましい。すなわち、本発明の化合物は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤である。
【0078】
【表3】
【0079】
本発明の化合物は、驚くべきことに、強力で、代謝的に安定し、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤(インビトロ排出なし)であることが見出されたのに対して、国際公開第2007/003536号の実施例4、6及び159は、低い代謝安定性又は高いインビトロ排出比の何れかを示し、これは、十分な脳への曝露を達成するという目標を損なう可能性がある(表3bを参照のこと)。国際公開第2007/003536号の特定の実施例4、6及び159は、ラットにおけるこれら化合物の経口適用後の実質的なインビボ排出(アッセイF、データについては表7を参照のこと)を示す。
【0080】
本発明の化合物については、ヒト肝細胞における高い安定性(アッセイDにおける低い%QH値)及び/又は低い排出比(アッセイE及びFにおける排出<3)が望まれる。すなわち、本発明の化合物は強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤である。
【表4】
【0081】
本発明の化合物は、驚くべきことに、強力なIDO1阻害剤であり、ヒトアンドロゲン受容体よりも選択的であることが見出されたが、国際公開第98/22432号の実施例53及び86は、ヒトアンドロゲン受容体を阻害し、より弱いIDO1阻害を示し、したがって、ヒトアンドロゲン受容体に対する選択性を何ら示さず、又は当該選択性が低い(表3cを参照のこと)。さらに、本発明の化合物は、ヒト肝細胞アッセイにおいて増強された代謝安定性(低い%QH値)を示すのに対し、国際公開第98/22432号の実施例53及び86は、ヒト肝細胞において非常に低い代謝安定性を示している(表3cを参照のこと)。したがって、本発明の化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤であることが見出された。
本発明の化合物については、ヒトアンドロゲン受容体に対する高い選択性(すなわち、アッセイAにおける低いIC50値を示す強力なIDO1阻害、及びアッセイBにおける高いIC50値を示すヒトアンドロゲン受容体の低い阻害)、並びにヒト肝細胞における高い安定性(アッセイDにおける低い%QH値)が望ましい。すなわち、本発明の化合物は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤である。
【0082】
【表5】
【0083】
本発明の化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤(ヒト第Xa因子に対して選択的であり、インビトロ排出はない)であることが見出されたのに対して、国際公開第2005/111029号の実施例8及び28では、強力なヒト第Xa因子阻害剤が高い排出比を示しており、これは十分な脳への曝露を達成するという目標を損なう可能性がある(表4を参照のこと)。
本発明の化合物については、ヒト第Xa因子酵素に対する高い選択性(すなわち、アッセイAにおいて低いIC50値を示す強力なIDO1阻害、及びアッセイCにおいて高いIC50値を示すヒト第Xa因子酵素の低い阻害)、並びに低い排出比(アッセイEにおける排出<3)が望ましい。すなわち、本発明の化合物は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤である。
【0084】
【表6】
【0085】
本発明の化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤(ヒト第Xa因子よりも選択的であり、ヒト肝細胞において代謝的に安定している)であることが見出されたのに対して、国際公開第2005/111013号の実施例22はヒト第Xa因子酵素を阻害し、ヒト肝細胞において中程度の代謝安定性を示す(表5を参照のこと)。
本発明の化合物については、ヒト第Xa因子酵素に対する高い選択性(すなわち、アッセイAにおいて低いIC50値を示す強力なIDO1阻害、及びアッセイCにおいて高いIC50値を示すヒト第Xa因子酵素の低い阻害)、及びヒト肝細胞における高い安定性(アッセイDにおける低い%QH値)が望ましい。すなわち、本発明の化合物は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤である。
【0086】
【表7】
【0087】
本発明の化合物は、驚くべきことに、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤(ヒト第Xa因子に対して選択的であり、インビトロでの排出がない)であることが見出されたのに対して、国際公開第2005/111014号の実施例4は、高い排出比を示す強力なヒト第Xa因子阻害剤であり、これは十分な脳への曝露を達成するという目標を損なう可能性がある(表6を参照のこと)。
本発明の化合物については、ヒト第Xa因子酵素に対する高い選択性(すなわち、アッセイAにおける低いIC50値を示す強力なIDO1阻害、及びアッセイCにおいて高いIC50値を示すヒト第Xa因子酵素の低い阻害)、並びに低い排出比(アッセイEにおいて排出<3)が望ましい。すなわち、本発明の化合物は、強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤である。
【0088】
【表8】
【0089】
驚くべきことに、本発明の化合物は、ラット又はマウスへの経口適用後の血漿及び脳への曝露によって示されるように、インビボで好ましい薬物動態特性を示すことが見出された。驚くべきことに、実施例3及び4は、強力かつ選択的なIDO1阻害剤(ヒトアンドロゲン受容体及びヒト第Xa因子に対して選択的)であり、代謝的に安定であり、インビトロでもインビボでも排出を示さないことが見出された(表3a~7)。したがって、24時間にわたって脳内のIDO1を実質的に阻害するために必要とされる、患者の脳への曝露を予測することができる。
対照的に、国際公開第2007/003536号の特定の実施例4、6及び159は、ラットにおけるこれらの化合物の経口適用後に、同じアッセイ(アッセイF、データについては表7を参照のこと)において実質的なインビボ排出を示す。
【0090】
【表9】
【0091】
本発明は、予想外に強力で、選択的で、代謝的に安定で、かつ脳に浸透するIDO1阻害剤である式Aによる化合物を提供する。すなわち、当該化合物は、ヒトIDO1酵素に対して高い効力を示し、ヒトアンドロゲン受容体及びヒト第Xa因子酵素に対して高い選択性を示し、ヒト肝細胞において高い代謝安定性を示し、インビトロでも(MDCK-MDR1アッセイ)、またインビボでも(ラット/マウスにおける筋肉/脳の組織分布によって示される)排出を示さない。
【0092】
患者における完全な有効性、すなわちIDO1酵素活性の>90%阻害は、ヒト全血アッセイで測定されたIDO1阻害のインビトロIC50値に対応するトラフ血漿濃度に関連する(DOI:10.1002/jcph.855, DOI:10.1158/1078-0432.CCR-16-2272)。中枢神経系(CNS)が関与する臨床適応症では、IDO1阻害が治療上の利点となる疾患や状態の治療に有用であるために、トラフ血漿濃度に等しい脳内濃度を脳内で24時間維持する必要がある。しかし、有効な化合物血漿曝露は、望ましくない副作用がないようにする必要がある。患者間のばらつきを考慮するために、より高い血漿化合物への曝露は副作用がないようにする必要がある。有効な化合物血漿曝露と、最初の副作用が発生する血漿曝露との比率は、安全域として定義される。
【0093】
安全域は、以下によって大幅に低減される。
(i)効力が低いこと。有効性を達成するには高い血漿レベルが必要とされ、これは望ましくない副作用のリスクを高くする可能性があるからである。
(ii)ヒトアンドロゲン受容体又はヒト第Xa因子などの標的に対する選択性が低いこと。副作用は、オフターゲット親和性によって引き起こされる可能性があるからである。
(iii)代謝安定性が低いこと。24時間にわたって実質的な阻害を提供するCNSレベルを確保するために、高い初期化合物血漿曝露が必要となるからである。
(iv)血液脳関門(BBB)での排出比が高いこと。CNSよりも血漿中の化合物濃度が高い化合物は、初期の血漿曝露が高いことに関与し、輸送タンパク質を介した薬物間相互作用に関連しているため、化合物の使用が制限されるからである(FDA - Clinical Drug Interaction Studies - Cytochrome P450 Enzyme- and Transporter-Mediated Drug Interactions, Guidance for industry, January 2020)。
【0094】
したがって、
(i)強力なIDO1阻害剤であり、
(ii)ヒトアンドロゲン受容体及びヒト第Xa因子に対して選択的であり、
(iii)代謝安定性が高く、かつ
(iv)排出が少ない/存在しない、
化合物は、インビボで有効であり、IDO1阻害が治療上の利点であるCNS起源の疾患及び状態の治療のための薬物として使用される許容可能な安全域を有すると思われる。
【0095】
本発明は、CNSを標的とする化合物を提供する。合理的なヒト用量(1日1回<250mg)及び許容可能な安全域で、CNSにおけるIDO1酵素の実質的な阻害を達成するために、本発明の化合物は強力であり(IC50(IDO1)<300nM、ヒト全血アッセイ)、選択的であり(好ましくは選択性>10、より好ましくは選択性>30、最も好ましくはヒトアンドロゲン受容体及び/又はヒト第Xa因子に対する選択性>30)、代謝的に安定であり(ヒト肝細胞の<20%QH)、またインビトロ及びインビボの両方で排出が少なく(排出<3)、又は排出がないことが求められる。
驚くべきことに、本発明の化合物は、強力であり(ヒト全血アッセイにおいてIC50(IDO1)<300nM)、選択的であり(好ましくは選択性>10、より好ましくは選択性>30、最も好ましくはヒトアンドロゲン受容体及び/又はヒト第Xa因子に対する選択性>30)、代謝的に安定であり(ヒト肝細胞において<20%QH)、またインビトロ及びインビボの両方で排出が少なく(排出<3)又は排出がないことが見出された。
【0096】
P-gp基質特性がないか、又は弱い化合物を選択する理由:
遊離薬物仮説によれば、非結合(遊離)薬物分子のみが、標的に結合することにより薬理効果を発揮する。CNS作用部位への送達を必要とする治療適応症の薬物の場合、遊離脳濃度がインビボCNS活性に最も関連する薬物濃度である(doi: 10.1124/jpet.107.119560)。
CNSへの薬物の分布は、血液脳関門(BBB)での排除のために制限されることが多い。BBBは、タイトジャンクションによって接続された単層の内皮細胞で構成されており、傍細胞透過性が低く、開窓がなく、複数の膜排出輸送体が発現していないことを特徴としており、よって循環する生体異物からCNSを非常に効果的に保護する。
したがって、CNS標的薬の望ましい薬理学的応答は、その受動拡散に依存する。つまり、化合物の物理化学的特性、及びBBBでの神経保護を克服するための能動的な取り込みと排出の輸送体間の相対的なバランスに関連している。
多くの輸送体がBBBにおいて同定されており、その中で、P-gp(P-糖タンパク質)は薬物が脳に入るのを防ぐゲートキーパー機能と、既に脳内皮細胞の細胞質に入った化合物を排出する押出メカニズムにより、最も重要な排出輸送体と考えられている(doi: 10.1007/s11095-007-9502-2, doi: 10.1124/jpet.107.130294, /doi.org/10.1517/17460441.3.6.677)。
【0097】
P-gpは、その幅広い基質特異性と固有の輸送活性により、脳への薬物の取り込みを制限する上で非常に重要な役割を果たしているので、CNS標的に対して有意なP-gp排出輸送活性を持たない化合物を設計することが重要である。P-gp基質の特徴は、CNS薬の治療域の縮小を意味する。排出輸送を補償して遊離脳濃度を予想レベルまで駆動するために、より高い遊離血漿濃度が必要とされるので、減少した治療域が生じる。ただし、血漿濃度が高くなると末梢毒性のリスクが高まる。これは、CNS薬がP-gpに対する基質親和性を持つべきでないとの戦略をサポートする(doi: 10.1124/dmd.104.001230, 10.1124/jpet.107.130294)。
さらに、例えばμアヘン受容体アゴニスト及び強力なP-gp基質であるロペラミドについて観察されるように、BBBとの干渉による薬物間相互作用(DDI)が考えられる。ロペラミドは、腸の末梢μ受容体の活性化によって腸の運動性を低下させる。その高いP-gp排出により、脳への浸透は、臨床用量やさらに高用量において制限され、その適用は呼吸抑制などの中枢性アヘン作用とは関連していない。しかし、キニジン、すなわち強力なP-gp阻害剤の同時投与は、ロペラミド単独の投与後には発生しない有意な呼吸抑制をもたらした(doi: 10.1067/mcp.2000.109156)。BBBにおいてP-gpが関与するDDIのさらなる例には、ベラパミルとシクロスポリンA(doi: 10.1016/j.clpt.2005.01.022)、ベラパミルとタリキダル(doi: 10.1038/jcbfm.2015.19)、ベラパミルとタモキシフェン(doi: 10.1124/jpet.111.180398)、又はエトポシドとシクロスポリンA(doi: 10.1002/pbc.20382)の相互作用が含まれ、BBBでのP-gp相互作用によって引き起こされるDDIがヒトにおいても可能であることを実証している(doi:10.1124/dmd.112.049577)。
【0098】
BBBの生理学的複雑さを考慮して、インビトロ前臨床スクリーニングにおいて、P-gpでトラスフェクトしたメイディン・ダービー(Madin-Darby)イヌ腎臓(MDCK)細胞株は、P-gp排出を予測するための貴重な代用物であり、従来技術におけるインビトロシステムを表すことが示されている(doi: 10.1016/j.ejps.2017.04.016, doi: 10.1124/dmd.116.074245)。化合物のP-gp輸送特徴は、双方向透過性測定アプローチで試験され、排出比で表される。MDCK-P-gp透過性試験で観察されたインビトロ排出は、ラットのBBBでのインビボ薬物排出とよく相関することが実証されている(doi: 10.3390/pharmaceutics11110595)。
CNS薬の約95%はP-gp排出比<3であり(doi: 10.1124/jpet.102.039255、10.1080/00498250701570285)、CNS薬の大部分がP-gpを媒介した排出を示さない又は弱いこと、及び成功裡のCNS送達のために、化合物は良好なP-gp基質であってはならないことが確認された。
【0099】
医薬組成物
本発明の化合物を投与するための適切な製剤は当業者に明らかであり、例えば、錠剤、丸薬、カプセル、坐剤、ロゼンジ、トローチ、溶液、シロップ、エリキシル、サシェー、注射剤、吸入剤、粉末が含まれる。薬学的に活性な化合物の含有量は、組成物全体の0.1~95質量%、好ましくは5.0~90質量%の範囲で変動し得る。
適切な錠剤は、例えば、本発明の化合物を既知の賦形剤、例えば不活性希釈剤、担体、崩壊剤、補助剤、界面活性剤、結合剤及び/又は潤滑剤と混合し、得られた混合物を圧縮して錠剤を形成することにより得ることができる。
【0100】
治療における使用/使用の方法
IDO1阻害のヒト治療への適用は、総説にまとめられている(doi: 10.1007/s11011-018-0290-7、doi: 10.7150/jca.31727., doi: 10.1177/1178646917691938、doi: 10.1016/j.pnpbp.2017.04.035、doi: 10.2741/4363、doi: 10.3390/molecules 23010191、及び doi: 10.1007/s00018-017-2504-2)。
本発明は、IDO1阻害が治療有用性を有する精神障害、疾患及び状態の治療に有用な化合物に関し、その適応症には(1)気分障害及び気分感情障害、(2)統合失調症スペクトラム障害、(3)不安障害を含む、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害、(4)心理的発達障害、(5)生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群、(6)物質関連障害及び中毒性障害、(7)不快及び快の感情価の症状を関連した疾患、(8)神経変性障害、(9)神経免疫障害、(10)神経血管障害、(11)頭部外傷、(12)代謝障害、(13)ウイルス感染症、(14)細菌感染症、(15)網膜疾患、(16)腫瘍学の適応症が含まれる。
【0101】
その薬理効果を考慮すると、本発明の化合物は、以下からなるリストから選択される障害、疾患又は状態の治療における使用に適している:
(1)双極性障害I型、うつ病、軽躁病、躁病及び混合型;双極性障害II型;単一のうつ病エピソード又は再発性大うつ病性障害、軽度のうつ病性障害、産後発症するうつ病性障害、精神病症状を伴ううつ病性障害などのうつ病性障害;付随する不安性の苦痛、混合性の特徴、メランコリアの特徴、非定型の特徴、気分に一致する精神病性の特徴、気分に一致しない精神病性の特徴、及びカタトニアを伴う又は伴わない大うつ病性障害を含む、気分障害及び気分感情障害の治療。
(2)統合失調症及び関連する陰性及び認知症状を伴う統合失調感情障害を含む、統合失調症スペクトル障害及び他の精神病性障害に属する気分障害の治療。
(3)不安障害、全般性不安障害、広場恐怖症を伴う又は伴わないパニック障害、特定の恐怖症、社会恐怖症、慢性不安障害;強迫性障害;外傷後ストレス障害などの重度ストレスへの反応及び適応障害:離人・現実感喪失症候群などの他の神経障害を含む、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に属する障害の治療。
(4)アスペルガー症候群及びレット症候群、自閉症障害、小児自閉症及び精神遅滞及び常同運動に関連する過活動性障害を含む広汎性発達障害、運動機能の特異的発達障害、学習能力の特異的発達障害、注意欠陥/多動性障害を含む、心理的発達障害の治療。
(5)産後及び分娩後うつ病を含む、産褥に関連した精神及び行動の障害;神経性無食欲症、神経性過食症、及びその他の衝動制御障害を含む摂食障害を含む、生理学的障害及び身体的要因に関連した行動症候群の治療。
(6)アルコール、大麻、幻覚剤、覚せい剤、催眠薬、タバコによって誘導される物質使用障害である、物質関連障害及び中毒性障害の治療。
(7)快感消失、持続的な脅威と損失、自殺念慮を含む、不快及び快の感情価の症状に関連した疾患の治療。
(8)ハンチントン病又は筋萎縮性側索硬化症などの神経細胞及び/又はグリア細胞の変性が関与する疾患の治療。
(9)肥満を含む代謝の障害の治療。これには、進行中の慢性炎症を伴う代謝障害の治療、及びマイクロバイオームの活動が原因であり得る代謝障害の治療が含まれる。
(10)ウイルス感染症の治療。これには、T細胞機能の正常化及び免疫寛容の減少を主な目的とする治療、又は感染による神経学的影響の治療が含まれる。
(11)細菌感染症の治療。これには、T細胞機能の正常化及び免疫寛容の減少を主な目的とする治療、又は感染の神経学的影響の治療、又は結核の治療が含まれる。
(12)網膜疾患の治療。これには、糖尿病性網膜症や加齢黄斑変性症に伴う地理的萎縮など、IDO1の高発現による網膜変性の予防のための治療が含まれる。
【0102】
本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、「治療する」、「治療」の用語は疾患、状態、又は障害と闘う目的での、ヒト対象又はヒト患者の管理及びケアを含むものとし、また症状若しくは合併症の発症を予防し、症状若しくは合併症を緩和し、又は疾患、状態若しくは障害を排除するために本発明の化合物を投与することを含む。
本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、「予防」の用語には、(a)1つ若しくは複数の症状の頻度の減少、(b)1つ若しくは複数の症状の重症度の軽減、(c)さらなる症状の発現の遅延若しくは回避、及び/又は(d)障害若しくは状態の発症の遅延若しくは回避が含まれるものとする。
別の態様によれば、本発明は、上記状態の治療及び/又は予防に使用するための、式Aの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
別の態様によれば、本発明は、行動療法、TMS(経頭蓋磁気刺激)、ECT(電気けいれん療法)及びその他の療法に加えて、式Aの化合物が使用されることを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。
【0103】
併用療法
本発明による化合物は、その治療が本発明の焦点である適応症の何れかの治療に関連して、当技術分野で使用されることが知られた他の治療選択肢と組み合わせることができる。
別の態様によれば、本発明は、式Aの化合物が、デュロキセチン、エスシタロプラム、ブプロピオン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、セルトラリン、パロキセチン、フルオキセチン、ボルチオキセチン、ミルタザピン、シタルオプラム、ビラゾドン、トラゾドン、アミトリプチリン、クロミプラミン、アゴメラチン、レボミルナシプラン、リチウム、ドキセピン、ノルトリプチリンからなるリストから選択される1つ又は複数の抗うつ薬による治療に加えて投与されることを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。「抗うつ剤」の用語は、うつ病又はうつ病の症状に関連する疾患を治療するために使用できる任意の医薬品又は薬物を意味するものとする。
【0104】
別の態様によれば、本発明は、式Aの化合物が、アリピプラゾール、パルミチン酸パリペリドン、ルラシドン、ケチイアピン、リスペリドン、オランザピン、パリペリドン、ブレクスピプラゾール、クロザピン、アセナピン、クロルプロマジン、ハロペリドール、カリプラジン、ジプラシドン、アミスルプリド、イロペリドン、フルフェナジン、ブロナンセリン、アリピプラゾールラウロキシルからなるリストから選択される1つ又は複数の抗精神病薬による治療に加えて投与されることを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。「抗精神病薬」との用語は、精神病又は抑うつ症状に関連する疾患を治療するために使用できる任意の医薬品又は薬物を意味するものとする。
【0105】
別の態様によれば、本発明は、式Aの化合物が、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、アンフェタミン、デキサンフェタミン、デクスメチルフェニデート、アルモダフィニル、モダフィニルからなるリストから選択される1つ又は複数の精神刺激薬による治療に加えて投与されることを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。「精神刺激薬」との用語は、気分障害又は衝動制御障害などの疾患を治療するために使用できる任意の医薬品又は薬物を意味するものとする。
別の態様によれば、本発明は、オキシラセタム、ピラセタム、又は天然物セントジョンズワートからなるリストから選択される向知性薬による治療に加えて、式Aの化合物を投与することを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。
【0106】
別の態様によれば、本発明は、式Aの化合物と1つ又は複数の抗うつ薬、抗精神病薬、精神刺激薬、向知性薬又は天然物との組み合わせが、行動療法、TMS(経頭蓋磁気刺激)、ECT(電気けいれん療法)及び他の療法に加えて使用されることを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる1つ又は複数の抗うつ薬、抗精神病薬、精神刺激薬、向知性薬又は天然物による治療に加えて投与される式Aの化合物を提供する。
別の態様によれば、本発明は、テトラベナジン、デュテトラベナジン、及びバクロフェンなどの任意の舞踏病抑制薬による治療に加えて、式Aの化合物を投与することを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。
別の態様によれば、本発明は、式Aの化合物が、リルゾール、ラサギリン、及びエダバロンなどの、神経変性を遅らせるために使用される治療に加えて投与されることを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。
別の態様によれば、本発明は、任意の抗ウイルス薬又は抗菌薬による治療に加えて式Aの化合物を投与することを特徴とする、前述の態様の何れか1つによる式Aの化合物を提供する。
【0107】
実験の部
略語
aq. 水性
eq. 当量
EtOAc 酢酸エチル
h 時間
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェート
HCl 塩酸
Min 分
NaOH 水酸化ナトリウム
MeOH メタノール
rt 室温
Rt 保持時間
TBTU O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
THF テトラヒドロフラン
【0108】
スペクトルデータにおける略語
1H-NMR プロトン核磁気共鳴
δ 化学シフト
d ダブレット
dd ダブレットのダブレット
DMSO-d6 ヘキサ重水素ジメチルスルホキシド
H プロトン
Hz ヘルツ(=1/秒)
J カップリング定数
m 多重線
ppm 100万分の1
s シングレット
【0109】
一般的な分析
すべての反応は、商用等級の試薬及び溶媒を使用して実行された。NMRスペクトルは、トップスピン3.2p16(Top-Spin 3.2 pl6)ソフトウェアを使用して、ブルカー・アドバンス装置(Bruker AVANCE IIIHD 400 MHz)を用いて記録された。
化学シフトは、δ単位で、内部参照トリメチルシランから低磁場側に100万分の1(ppm)で与えられる。
別段の指示がない限り、すべての1H-NMRスペクトルはDMSO-d6中で測定された。
選択されたデータは、化学シフト、多重度、カップリング定数(J)、及び積分で報告される。
低分解能質量スペクトルは、アジレント(Agilent)6130四重極質量分析計(エレクトロスプレー陽イオン化)に接続されたアジレント1100シリーズLCからなる液体クロマトグラフィー質量分析計(LCMS)を使用して得られた。
【0110】
方法:
HPLC-MS法に使用される溶媒混合物について、溶媒%は、対応する溶媒の体積パーセントとして与えられる。
HPLC-MS法:
【表10】

【表11】
【0111】
中間体の調製:
中間体1a:2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸
【化17】
【0112】
2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸メチル
室温の窒素雰囲気下で、THF40mL中の5-ブロモチオフェン-2-カルボン酸1.35g(6.51mmol)に、ジイソプロピルエチルアミン3.40mL(19.5mmol、3.0eq.)及びTBTU2.30g(7.16mmol、1.1eq.)を加えた。10分後、の2-アミノイソ酪酸メチル塩酸塩1.00g(6.51mmol、1.0eq.)を加え、室温で3.5時間撹拌を続けた。溶媒を蒸発させ、残留物に水及びEtOAcを加え、有機層を分離し、5%水性NaHCO3溶液で洗浄し、水で2回洗浄し、Na2SO4で乾燥させる。濾過及び溶媒の蒸発後、生成物が得られ、さらに精製することなく次の工程に使用した。
収量:1.94g(97%)
MS: 306/308 (M+H)+ (Br)
1H-NMR (400 mHz): δ = 1.44 (s, 6H), 7.29 (d, 1H, J = 4.06 Hz), 7.70 (d, 1H, J = 4.06 Hz), 8.66 (s, 1H)
【0113】
2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸
THF50mL及び水60mL中の2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸メチル1.80g(5.88mmol)に、の1Mの水性LiOH溶液11.8mLを加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、約30mLに濃縮し、水で希釈し、2Mの水性HClでpH3~4に酸性化した。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、50℃で乾燥させて、所望の生成物を得た。
収量:1.61g(94%)
MS: 292/294 (M+H)+ (Br)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.43 (s, 6H), 7.28 (d, 1H, J = 3.93 Hz), 7.69 (d, 1H, J = 3.93 Hz), 8.50 (s, 1H), 12.25 (s, 1H)
【0114】
中間体1b:2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸
【化18】
【0115】
2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸メチル
N,N-ジメチルホルムアミド15mL中の2-アミノイソ酪酸メチル塩酸塩4.00g(26.0mmol)及び5-クロロチオフェン-2-カルボン酸4.23g(26.0mmol)の混合物に、氷冷下で、ジイソプロピルエチルアミン13.6mL(78.1mmol、3.0eq.)を加え、次いで少量ずつHATU10.0g(26.3mmol、1.0eq.)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、水(100mL)を加え、沈殿物を濾過し、水で洗浄し、デシケーターで乾燥させた。
収量:5.64g(83%)
MS: 262/264 (M+H)+ (Cl)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.44 (s, 6H), 3.58 (s, 3H), 7.19 (d, 1H, J = 4.18 Hz), 7.75 (d, 1H, J = 4.06 Hz), 8.67 (s, 1H)
【0116】
2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸
THF30mL及びMeOH10mL中の2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸メチル5.63g(21.5mmol)の混合物に、4M水性NaOH溶液(24.0mmol、1.1eq.)6.00mLを加えた。撹拌を室温で一晩続けた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を水に溶解し、4Mの水性HCl(6.0mL)で酸性化した。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、デシケーター中で乾燥させた。
収量:5.24g(98%)
MS: 248/250 (M+H)+ (Cl)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.44 (s, 6H), 7.18 (d, 1H, J = 4.06 Hz), 7.74 (d, 1H, J = 4.18 Hz), 8.51 (s, 1H), 12.25 (s, 1H)
【実施例
【0117】
実施例1:2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(4-クロロ-3-フルオロフェニル)-2-メチルプロパンアミド
【化19】
【0118】
室温で、THF3mL中の2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸100mg(0.34mmol)、4-クロロ-3-フルオロアニリン50mg(0.34mmol)、及び4-メチルモルホリン132μL(1.20mmol、3.5eq.)の混合物を調製した。次いで、プロピルホスホン酸無水物232μL(0.39mmol、1.2当量、酢酸エチル中50%)を添加し、反応混合物を60℃で一晩加熱する。粗反応混合物をHPLCで精製し、画分を含む生成物を合わせ、凍結乾燥した。
収量:49mg(34%)
HPLC-MS;方法:Z011_S03;室温[分]:1.06
MS: 419/421/423 (M+H)+ (Br/Cl)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.50 (s, 6H), 7.31 (d, 1H, J = 4.06Hz), 7.41-7.49 (m, 2H), 7.75-7.79 (m, 2H), , 8.50 (s, 1H), 9.74 (s, 1H)
【0119】
実施例2:2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパンアミド
【化20】
【0120】
室温において、THF3mL中の2-[(5-ブロモチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸100mg(0.34mmol)、4-ブロモアニリン59mg(0.34mmol)、及び4-メチルモルホリン132μL(1.20mmol、3.5eq.)の混合物を調製した。次いで、プロピルホスホン酸無水物232μL(0.39mmol、1.2eq.、酢酸エチル中50%)を加え、反応混合物を60℃で一晩加熱した。粗反応混合物をHPLCで精製し、画分を含む生成物を合わせ、凍結乾燥した。
収量:81mg(53%)
HPLC-MS;方法:Z011_S03;室温[分]:1.05
MS: 445/447/449 (M+H)+ (2 Br)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.50 (s, 6H), 7.31 (d, 1H, J = 4.06Hz), 7.43-7.46 (m, 2H), 7.54-7.57 (m, 2H), 7.77 (d, 1H, J = 4.06Hz), 8.45 (s, 1H), 9.55 (s, 1H)
【0121】
実施例3:2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(4-クロロ-3-フルオロフェニル)-2-メチルプロパンアミド
【化21】
【0122】
室温において、THF3mL中の2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸100mg(0.40mmol)、4-クロロ-3-フルオロアニリン59mg(0.40mmol)、及び4-メチルモルホリン155μL(1.41mmol、3.5eq.)の混合物を調製した。次いで、プロピルホスホン酸無水物274μL(0.46mmol、1.2eq.、酢酸エチル中50%)を加え、反応混合物を60℃で一晩加熱する。粗反応混合物をHPLCで精製し、画分を含む生成物を合わせ、凍結乾燥した。
収量:62mg(41%)
HPLC-MS;方法:Z011_S03;室温[分]:1.05
MS: 375/377/379 (M+H)+ (2 Cl)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.50 (s, 6H), 7.21 (d, 1H, J = 4.06Hz), 7.40-7.49 (m, 2H), 7.77 (dd, 1H, J = 2.15/12.29 Hz), 7.83 (d, 1H, J = 4.06Hz), 8.51 (s, 1H), 9.74 (s, 1H)
【0123】
実施例4:2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパンアミド
【化22】
【0124】
室温において、THF3mL中の2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸100mg(0.40mmol)、4-ブロモアニリン69mg(0.40mmol)、及び4-メチルモルホリン155μL(1.41mmol、3.5eq.)の混合物を調製した。次いで、のプロピルホスホン酸無水物274μL(0.46mmol、1.2eq.、酢酸エチル中50%)を加え、反応混合物を60℃で一晩加熱する。粗反応混合物をHPLCで精製し、画分を含む生成物を合わせ、凍結乾燥した。
収量:70mg(43%)
HPLC-MS;方法:Z011_S03;室温[分]:1.04
MS: 401/403/405 (M+H)+ (Br/Cl)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.50 (s, 6H), 7.21 (d, 1H, J = 4.06Hz), 7.42-7.47 (m, 2H), 7.54-7.58 (m, 2H), 7.82 (d, 1H, J = 4.06Hz), 8.46 (s, 1H), 9.55 (s, 1H)
【0125】
実施例5:2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロパンアミド
【化23】
【0126】
室温において、THF3mL中の2-[(5-クロロチオフェン-2-イル)ホルムアミド]-2-メチルプロパン酸100mg(0.40mmol)、4-クロロアニリン52mg(0.40mmol)、及び4-メチルモルホリン155μL(1.41mmol、3.5eq.)の混合物を調製した。次いで、プロピルホスホン酸無水物274μL(0.46mmol、1.2eq.、酢酸エチル中50%)を加え、反応混合物を60℃で一晩加熱した。粗反応混合物をHPLCで精製し、画分を含む生成物を合わせ、凍結乾燥した。
収量:93mg(64%)
HPLC-MS;方法:Z011_S03;室温[分]:1.03
MS: 357/359/361 (M+H)+ (2 Cl)
1H-NMR (400 mHz): δ= 1.50 (s, 6H), 7.21 (d, 1H, J = 4.06Hz), 7.30-7.34 (m, 2H), 7.59-7.63 (m, 2H), 7.82 (d, 1H, J = 4.06Hz), 8.46 (s, 1H), 9.55 (s, 1H)
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕式Aの化合物
(式中、
1 はクロロ、ブロモを表し、
2 は水素、フルオロを表し、
3 はクロロ、ブロモを表す)。
〔2〕下記からなる群から選択される化合物である、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕下記の構造を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。

〔4〕下記の構造を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。

〔5〕下記の構造を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。

〔6〕下記の構造を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。

〔7〕下記の構造を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。


〔8〕前記〔1〕~〔7〕の何れか1項に記載の化合物の塩。
〔9〕医薬としての使用のための前記〔1〕~〔8〕の何れか1項に記載の化合物。
〔10〕双極性障害I型、うつ病、軽躁病、躁病及び混合型;双極性障害II型;うつ病性障害;付随する不安性の苦痛、混合性の特徴、メランコリアの特徴、非定型の特徴、気分に一致する精神病性の特徴、気分に一致しない精神病性の特徴、カタトニアを伴うか又は伴わない大うつ病性障害の治療及び/又は予防における使用のための、前記〔1〕~〔8〕の何れか1項に記載の化合物。
〔11〕前記うつ病性障害が、単一のうつ病エピソード又は再発性大うつ病性障害、軽度のうつ病性障害、産後に発症するうつ病性障害、精神病症状を伴ううつ病性障害からなる群から選択される、前記〔10〕に記載の使用のための化合物。
〔12〕別の抗うつ薬による治療に加えて投与されることを特徴とする、前記〔9〕~〔11〕の何れか1項に記載の使用のための化合物。
〔13〕行動療法に加えて投与されることを特徴とする、前記〔9〕~〔12〕の何れか1項に記載の使用のための化合物。
〔14〕前記〔1〕~〔8〕の何れか1項に記載の化合物を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤及び/又は担体と混合して含有する医薬組成物。