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特許7502566線量予測及びロバスト線量模倣による自動治療計画生成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】線量予測及びロバスト線量模倣による自動治療計画生成
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023531503
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2021082106
(87)【国際公開番号】W WO2022117353
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】20210949.2
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フレドリクソン,アルビン
(72)【発明者】
【氏名】ホルムストローム,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】グルセリウス,ハンナ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-517880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータプログラムに含まれる命令によりコンピュータが実行する、患者の照射を指定する治療計画を生成する方法(100)であって、
空間線量を患者データから推測するためのモデルを使用することを含む線量推測段階(112)と、
推測した前記空間線量と一致する実行可能な治療計画を生成するためのロバスト最適化プロセスを実行することを含む線量模倣段階(116)とを含み、
前記ロバスト最適化プロセス、患者データの品質に関する患者データ不確実性を考慮した前記治療計画における複数のシナリオに対して、許容可能であるような前記治療計画を生成する、
方法。
【請求項2】
前記シナリオが1つ以上の不確実性パラメータについて異なる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記不確実性パラメータが、照射体積の画像密度、放射線密度、質量密度、粒子阻止能及び/又は放射線の範囲不確実性を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不確実性パラメータが、患者の位置、患者の姿勢、患者の向き及び/又は患者のセットアップ誤差を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記不確実性パラメータが患者の解剖学的構造の変化を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記不確実性パラメータが前記照射の生物学的効果を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれの範囲を有する2つ以上の不確実性パラメータが存在し、前記シナリオが前記範囲の離散化されたバージョンのデカルト積に対応する、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不確実性パラメータが範囲誤差及びセットアップ誤差を含み、前記シナリオがL制約付き共同サンプリングによって得られる、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2つ以上の不確実性パラメータが存在し、前記シナリオが、想定した確率分布に従う前記不確実性パラメータのモンテカルロサンプリングによって得られる、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記不確実性パラメータの特定(110)を更に含む、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのシナリオが、推測された前記空間線量の摂動を示す、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのシナリオが、前記患者のサブ体積の放射線透過性の摂動を示す、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ロバスト最適化プロセスが、
i)照射体積の少なくとも一部を含む体積において治療計画線量が推測された前記空間線量を上回る度合いと
ii)照射体積の少なくとも一部を含む体積において前記治療計画線量が推測された前記空間線量を下回る度合いと
のうちの少なくとも1つを考慮する目的関数を利用する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ロバスト最適化プロセスが、
)治療計画線量の体積/線量が、照射体積の少なくとも一部を含む体積について、推測された前記空間線量の体積/線量を上回る度合いと
ii)前記治療計画線量の前記体積/線量が、照射体積の少なくとも一部を含む体積について、推測された前記空間線量の前記体積/線量を下回る度合いと
のうちの少なくとも1つを考慮する目的関数を利用する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ロバスト最適化プロセスが、治療計画線量と、照射体積の少なくとも一部を含む体積において推測された前記空間線量との差から独立した目的関数を利用する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
照射体積の少なくとも一部を含む体積の一部に関する相対的ペナルティ重みを定義することを含む重み付け段階(114)を更に含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記重み付け段階(114)が、相対的ペナルティ重みをボクセル分解能で割り当てることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者の照射を指定する治療計画を生成するように構成された治療計画システム(200)であって、
患者データを受信するように構成されたインターフェイス(210)と、
空間線量を患者データから推測するように構成されたモデル(220)と、
推測された前記空間線量と一致する実行可能な治療計画を生成するためのロバスト最適化プロセスを実行することを含む線量模倣段階(116)を実行するように構成された処理回路(230)と、
を備え、
前記ロバスト最適化プロセス、患者データの品質に関する患者データ不確実性を考慮した前記治療計画における複数のシナリオに対して許容可能であるような前記治療計画を生成する、
治療計画生成システム。
【請求項19】
コンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに請求項1から17のいずれかに記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載のコンピュータプログラムを保持するデータキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、自動放射線治療計画生成の分野に関する。本開示は、具体的には推測段階の後に線量模倣段階が続く治療計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 過去の治療計画に基づいた機械学習が、新規患者のための空間線量分布を計画画像から直接推測する(又は予測する)ために自動放射線治療計画生成において使用される。このために線量予測モデル(アトラス)が過去の各患者について訓練され、訓練データベースに記憶され、新規患者を最適なアトラスに一致させる。線量予測モデルは、標的及びリスク臓器の線量処方及び線量拘束値に従って、所望のボクセルあたりの線量を指定する空間線量分布を出力する。次いで、通常は最適化エンジンを使用するボクセルベースの線量模倣が、様々な線量-体積目標のバランスをとりながら、予測した線量分布を実行可能な治療計画線量分布に変換する。
【0003】
[0003] これらの一般的特徴を有する治療計画生成方法が、C.McIntoshらによる「Fully automated treatment planning for head and neck radiotherapy using a voxel-based dose prediction and dose mimicking method」,Phys.Med.Biol.,62(2017),pp.5926-5944[DOI:10.1088/1361-6560/aa71f8]に記載されている。
【0004】
[0004] 線量予測モデルは、治療計画生成プロセスにおけるかなりの人手による労力に取って代わる。これは、線量-体積目標が典型的には様々な線量拘束値と線量処方の間の多くのトレードオフに基づいて設定されるのが通常であるためである。線量予測モデルの訓練は、過去の事例からベストプラクティスを取り込み、貴重なノウハウを得ることを目的とする。
【0005】
[0005] 発明者らは、このアプローチによる自動治療計画生成が手作業による計画生成と比べて入力データ低品質に敏感なことがあることに気付いた。同様に、利用可能な治療計画生成技術は、入力データに影響を及ぼし得る誤差の具体的な期待を吸収及び利用する能力に限りがある。一例を挙げると、患者の位置が撮像と治療セッションとで大幅に変化する場合、実行される治療は最適品質でなくなる。この問題に対処することで、自動治療計画生成はより魅力的でより幅広く適用可能なものになる。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本開示の1つの目的は、データ品質の変動、具体的には患者データ不確実性に対するロバスト性を向上させた治療計画を生成する自動化された方法を提案することである。別の目的は、複数の不確実性シナリオを考慮及び参酌する方法を提案することである。更に別の目的は、これらの特徴の1つ以上を有する治療計画生成システムを利用可能にすることである。
【0007】
[0007] これらの目的及び他の目的は、独立請求項に定義されている発明によって達成される。従属請求項は本発明の有利な実施形態に関連する。
【0008】
[0008] 第1の態様では、患者の照射を指定する治療計画を生成する方法が、線量推測段階と、これに続く線量模倣段階とを含む。線量推測(又は線量予測)段階では、空間線量(又はボクセルあたりの線量)を患者データから推測するためのモデルが使用される。線量模倣段階では、推測した空間線量と一致する実行可能な治療計画を生成するためのロバスト最適化プロセスが実行される。ロバスト最適化は患者データ不確実性に関する複数のシナリオを考慮する。
【0009】
[0009] 線量模倣段階において患者データ不確実性シナリオを考慮する効果は、結果として生じる治療計画が所与の不確実性の範囲内のいかなる患者データ誤差に対してもロバストになることである。換言すれば、かかる誤差にもかかわらず、患者に送達される線量は推測した空間線量と一貫性を保ち、標的を過小照射するリスクを冒すこともリスク臓器を危険にさらすこともなくなる。ロバスト最適化アプローチのさらなる利点は、単純なマージンベースの誤差処理の場合にはよくあるような、患者を不都合に必要以上に高い全線量に暴露することなくかかる効果を達成することである。
【0010】
[0010] 本明細書で使用されるとき、「モデル」は、患者データから適切な空間線量への関数を確立する回帰モデルを含むことがある。具体的には、人工ニューラルネットワーク、決定木、ランダムフォレストなどの機械学習モデルが含まれることがある。かかる機械学習モデルを訓練することは、入力(患者データ)を適用すること、及びモデルの出力(空間線量)と所望の出力との一致を改善するためにモデルの重み又は他のパラメータを調整することを含むことがある。所望の出力は、過去の治療から得られる可能性がある、手動で決定された空間線量である場合がある。機械学習モデルが訓練可能なモデルと称されることがある。
【0011】
[0011] この開示の意味における「空間線量」は、様々な線量を様々な患者体積に独立に割り当て得る放射線量分布を指す。患者体積のサイズ及び構成は、実行すべき治療計画生成の詳細に適合するように選ばれることがある。実際に、線量が定義されるべき患者体積は、患者の解剖学的特徴又は病理学的特徴に従うことがある。代替的に、患者体積は2次元又は3次元グリッド(もしくはメッシュ)のピクセル又はボクセルである場合がある。かかるグリッドの分解能は、計算の複雑性に対する計量精度によって決定されることがあり、例示的な分解能は、1センチメートル、数ミリメートル、又は1ミリメートルのオーダーである。ボクセルは立方体である(等しい面を有する)か又は非立方体である場合がある。
【0012】
[0012] 更に、本明細書で使用される「患者データ」は、患者の解剖学的構造及び患者の体内又はその周辺に存在する異物の治療に関連する側面について説明することがある。かかる異物は、使用される放射線と相互作用する(例えば、放射線を減衰させる、偏向させる、反射させるあるいは吸収する)限りにおいて、治療計画生成の過程で考慮されることがある。3次元又は4次元コンピュータ断層撮影(CT)を含む様々な撮像技術が、患者データの重要な源である場合がある。
【0013】
[0013] 一般的に、請求項に使用される全ての用語は、本明細書で特に明記しない限り、当技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「要素、装置、コンポーネント、手段、ステップなど」への全ての言及は、特に明記しない限り、要素、装置、コンポーネント、手段、ステップなどの少なくとも一例を指すものとしてオープンに解釈されるべきである。本明細書に開示された任意の方法のステップは、特に明記しない限り、開示された正確な順序で行われる必要はない。
【0014】
[0014] 一部の実施形態によれば、患者データ不確実性は、各不確実性タイプの強さ又は大きさを表す1つ以上の不確実性パラメータによってモデル化されることがある。患者データ不確実性は、患者の体の密度不確実性、使用される放射線の範囲不確実性などの局所的な不確実性、患者のセットアップ又は患者の解剖学的構造を含む幾何学的不確実性、及び放射線の生物学的効果に関連する不確実性を含むことがある。
【0015】
[0015] 他の実施形態では、患者データ不確実性は、モデルを使用して推測した空間線量の摂動としてモデル化されることがある。患者データ不確実性は、患者体積の放射線透過性の摂動を更に含むことがある。各摂動は、ロバスト最適化プロセスにより考慮されるシナリオに対応することがある。本明細書で使用されるとき、「摂動」は、患者ジオメトリに影響を及ぼす小さい並進、回転又はサイズ変化などの比較的小さい大きさのグローバル誤差、あるいは患者組織のスカラー特性の一般的再スケーリングであると理解される。局所的誤差と比較して、摂動は概してより高度な空間相関によって特徴付けられるものであり、この洞察はその調整を支援することもある。
【0016】
[0016] 更に別の実施形態では、方法は更に、オペレータが様々な体積における推測空間線量を満たすことの相対的重要性を指定し得る重み付け段階を更に含む。オペレータは更に、治療計画線量が空間線量を上回ることもしくは下回ることが許容されるかどうか、又は治療計画線量が可能な限り厳密に空間線量に一致するものであるかどうかを指定することがある。オペレータは更に、特定体積内の線量を任意のものとすることを指定する選択肢が与えられることがある。
【0017】
[0017] 第2の態様では、本発明は、患者の照射を指定する治療計画を生成するように構成された治療計画生成システムを提供する。このために、治療計画生成システムは、患者データを受信するように構成されたインターフェイスと、患者データから空間線量を推測するように構成されたモデルと、推測した空間線量と一致する実行可能な治療計画を生成するためにロバスト最適化プロセスを実行するように構成された処理回路とを備えることがあり、ロバスト最適化が患者データ不確実性に関する複数のシナリオを考慮する。
【0018】
[0018] 本発明は更に、コンピュータ、すなわち具体的には治療計画生成システムに上記の方法を実行させるための命令を含むコンピュータプログラムに関する。コンピュータプログラムは、データキャリアに記憶又は配布されることがある。本明細書で使用されるとき、「データキャリア」は、変調された電磁波もしくは光波などの一時的データキャリア、又は非一時的データキャリアである場合がある。非一時的データキャリアは、磁気、光学又はソリッドステートタイプの永続的及び非永続的ストレージなどの揮発性並びに不揮発性メモリを含む。更に「データキャリア」の範囲内において、かかるメモリは固定的に取り付けられるか又はポータブルである場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
[0019] これより添付の図面を参照して、例としていくつかの態様及び実施形態を説明する。
【0020】
図1】本明細書に記載の実施形態に係る方法のフローチャートである。
図2】本明細書に記載の実施形態に係る治療計画生成システムを示す。
図3】様々なタイプの患者データ不確実性を示す断面図である。
図4】放射線照射システム及び治療中の患者の顕著な部分を示す。
図5】例示的なボクセルグリッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0020] これより本発明の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本開示の態様をより十分に説明する。ただしこれらの態様は、多くの様々な形態で実施されることがあり、限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が十分かつ完全となり、本発明の全ての態様の範囲が当業者に十分に伝わるように例として提供される。説明全体を通じて同様の番号は同様の要素を指す。
【0022】
[0021] 図1は、患者の照射を指定する治療計画を生成する方法100のフローチャートである。かかる治療計画は放射線照射システムによって実行されることがある。少なくとも1つの放射線源410を含む、例示的な放射線照射システムの主要部分が図4に示されている。治療中、患者300はカウチ390又は別の支持台上に横たわり、ストラップ又は同等の手段で固定されることがある。放射線源410とカウチ390との回転及び/又は平行移動による相対運動が可能である。例えば、ガントリが放射線源410を運んでいる場合、ガントリは1つ又は2つの軸に対して回転可能である場合があり、カウチ390は垂直軸を中心として回転可能かつ少なくとも1つの次元に平行移動可能である場合がある。ガントリの使用によって、図面の平面の外側も含む、多数のビーム角(すなわち入射方向)L1、L2、L3が利用可能になる。ビーム角L1、L2、L3は、イオン療法において対応する複数のスポットを照射するのに使用されることがある。治療計画は、利用可能なスポットの全部又は一部についてフルエンス及び/又は粒子エネルギー値を指定することがある。治療計画が何千個ものスポット、時には何十万個ものスポットを使用することは珍しくない。光子療法の治療計画が、マルチリーフコリメータの一連の設定をビーム角L1、L2、L3のそれぞれに割り当てることがある。更に別の例を挙げると、強度変調回転放射線療法(VMAT)では、放射線量はガントリの回転中に連続的に照射される一方、マルチリーフコリメータは治療計画に従って調整される。
【0023】
[0022] 治療計画が実行されると患者の特定体積に吸収されることになる物理的放射線量は、特定の治療計画から明示的でない場合があり、むしろ比較的複雑な計算が物理的線量を決定又は推定するのに必要とされる場合がある。既述のフルエンス表現に加えて、治療計画が、治療計画者が使用する予定の特定のタイプの放射線照射システムに与えられる機械実行可能命令のセットとして表されることがある。放射線照射システムは、システムが照射し得る実現可能な(又は実行可能な)線量分布の限定されたセットになる構造的機能的制限を有することが予想される。同様に、第1のタイプの放射線照射により実現可能な線量分布が、必ずしも第2の異なるタイプによって実現可能であるわけではない。
【0024】
[0023] 患者データは上記で定義した。方法100の説明に進む前に、図3を参照して考察される患者データ不確実性の重要なクラスを検討することが役立つであろう。
【0025】
[0024] 図3Aは、公称すなわち基本的なケースを示している。それは治療又はイメージングカウチであり得る基板390上の正しいセットアップにおける患者300の横断面である。患者300の体内には、様々な密度と関連付けられ、治療体積及びリスク臓器について照射される所望の線量と更に関連付けられる体積(又はより一般的に関心領域)310、311、312が見られる。体積310、311、312はばらばらに示されているが、治療体積とリスク臓器との重なりも珍しくない。所望の線量が患者データから推測された空間線量から得られ得ることが思い出される。線量と関連付けられない体積の輪郭も描く理由として考えられる理由は、放射線透過性が周囲組織と著しく異なるため、治療計画生成において考慮する必要があるためである。分割治療において複数の間隔を開けた時間の1つであり得る治療時の実際の状況は、公称ケースと異なることが多い。例えば患者300は、臓器運動を受けたり、体重が増減したり、基板390上で誤った姿勢をとったりしたことがあるか、又は患者体積310、311、312の密度は誤って測定されたことがある。
【0026】
[0025] 一例として、図3Bは、臓器の1つ312に影響を及ぼす密度誤差を含むシナリオを示している。臓器312の真の密度は、図3Aに係る公称密度と定量的に異なる。この文脈では、密度は、体積312の画像密度、放射線密度、質量密度、粒子阻止能のうちの1つ以上を指すことがある。更に、放射線の範囲不確実性は患者300の密度誤差全体によって表されることがある。
【0027】
[0026] このフレームワークはまた、相対的生物学的効果比(RBE)係数により捉えられ得る、照射の生物学的効果に関連する不確実性を表すのに利用されることがある。本文献で説明されるRBE係数が、線エネルギー付与(LET)モデル、局所効果モデル(LEM)又は微量線量動態モデル(MKM)の1つ以上の現象論に基づくパラメータ化に従う場合がある。計画目標が、指定されたRBEモデルに従う光子等価線量の単位で表されることがある。RBEの誤差が、臓器の透過性が影響を受けない状態にしながら、この計画目標を満たすためにその臓器に送達される必要がある物理的照射を変化させることがある。
【0028】
[0027] 密度及び範囲の不確実性は、公称密度又は範囲を百分率で表したものである少なくとも1つの不確実性パラメータとして数値的に定量化されることがある。その後の治療計画生成において、密度又は範囲の不確実性は、不確実性における誤差が近づいても全ての最終治療計画が治療的に許容可能であるものとすることを要求することによって処理されることがある。
【0029】
[0028] 図3Cは、患者300が図3Aの公称位置から角度φだけ回転した姿勢(見やすくするために誇張して描かれている)で基板390上に横たわっているセットアップ誤差をより正確に示している。ここで、体積310、311、312の密度及び相対位置は正しいままであるが、等しい角度φだけ仮想回転して初めて公称ジオメトリと一致する。この事実は患者300が全体として距離Δx(図示せず)だけその公称位置から離れて平行移動した場合も同様である。一般的に言えば、セットアップ誤差は患者の位置、患者の姿勢及び患者の向きを含むことがある。対応する不確実性パラメータは、従来の計画生成において関心領域にどのようにマージンが指定されるかと同様に、ロバスト最適化において考慮する最大誤差を表すことがある。不確実性パラメータは、センチメートル単位の右、左、上、下、前及び後位置の不確実性などの寸法長さを有することがある。精度を十分にするために、セットアップ誤差を異なるビームごとに異なるように定量化することが必要な場合がある。
【0030】
[0029] 図3Dは、前後径の公称値から2%減少に見られる患者300の解剖学的構造の変化の第1の例である。それは全ての臓器を含む、したがって体積310、311、312も含む全体的なスケール変化に関連することがある。代替的に径減少は、通常は各体積310、311、312の寸法が保存される場合に、最近の体重減少に対応する皮下脂肪の減少に対応することがある。図3Eの解剖学的構造変化の第2の例によれば、体積の1つ311は、患者の外部ジオメトリが実質的に変化しないのに対して3%だけ縮小している。かかる局所的サイズ変化は、例えば撮像時の呼吸又は気体や液体による臓器の一時的な膨張の結果として観察されることがある。解剖学的構造変化から生じる不確実性は、それぞれが治療計画生成において考慮されるべきシナリオに対応し得る患者300の追加の画像を含むことによって捕捉されることがある。
【0031】
[0030] 最後に図3Fは、撮像時に空であった領域313が、照射される治療用放射線を遮蔽、吸収、反射し得る及び/又は偏向させ得る異物によって占められていることを示している。異物は覆いや支持機械部材(固定ストラップ)などである場合がある。異物が右側から衝突する放射ビームに与え得る効果を考慮することは、治療の成功に不可欠である場合がある。
【0032】
[0031] 不確実性パラメータの別の例については、https://www.raysearchlabs.com/media/publications/から検索可能な出願人の白い紙「Robust optimization in Raystation」を参照のこと。
【0033】
[0032] 基本的な実施形態によれば、図1のフローチャートに係る方法100は、線量推測段階112(又は線量予測段階)及び線量模倣段階116を含む。
【0034】
[0033] 線量推測段階112において、患者データFから空間線量
【0035】
【数1】
【0036】
を生成するためのモデルMが使用される。ここでx=(x,y,z)は空間座標ベクトルである。モデルMは、回帰モデル、ニューラルネットワークモデル又は上記「モデル」の定義の範囲内の任意の他のモデルである場合がある。モデルの訓練は、この方法100の実行の必須のステップではないが、事前に完了していることがあり、方法100は、異なるパーティにより又はそのパーティと協力して訓練されたモデルを利用することさえある。推測段階112の考えられる実施例の詳細例については、最初に述べたMcIntoshらによる論文のセクション2.2、及びhttps://www.raysearchlabs.com/media/publications/から検索可能な出願人の白い紙「Machine learning. Automated treatment planning」を参照のこと。
【0037】
[0034] 線量模倣段階116において、実行可能な治療計画のセットから1つの治療計画を見つけるのにロバスト最適化プロセスが利用される。最適化プロセスは、連続した反復によって推測空間線量と徐々に良好な一致が得られる反復構造を有することがある。最適化プロセスは、(使用される数値精度、例えばマシンイプシロンの倍数範囲内で)推測空間線量
【0038】
【数2】
【0039】
に最も良く似ている線量dπ(x)を提供する治療計画πが見つかるまで追求されることがある。代替的に最適化プロセスは、十分な一致度に達した場合に早期に中断される。最適化プロセスが、推測空間線量
【0040】
【数3】
【0041】
に最も良く似ている線量dπ(x)を提供する計画πに(数値精度の範囲内で)収束できる場合でも、2つの線量が、ロバスト最適化、すなわちdπ(x)が考慮されたシナリオのいずれかに許容可能でなければならないという事実の結果としてかなり異なることが予想されることに留意されたい。
【0042】
[0035] 線量模倣段階116は、推測空間線量
【0043】
【数4】
【0044】
との一致を、その計画目標の1つとして追及する。かかる一致が相等性又はほぼ相等性を必ずしも指すわけでも、全ての空間点で起こるわけでもないことに留意されたい。むしろ異なる実施形態が、オペレータが最適化プロセスを、一部の体積Ω、Ωにおける推測空間線量と治療計画線量との間の不等式
【0045】
【数5】
【0046】
(それぞれ下界、上界)及び/又は別の体積Ωにおける推測空間線量と治療計画線量との間の等式
【0047】
【数6】
【0048】
を満たす傾向があるように構成できることがある、及び/又は更に別の体積において治療計画線量を無視することになる。例えば、治療計画線量が目標体積内の推測空間線量を上回ることは許容可能かつ有利であると見なされることがある。同様に、治療計画線量がリスク臓器内の推測空間線量未満であることが許容可能又は有利であると見なされることがある。患者の体外の物体及び空間に照射された放射線は、一般的には重要ではなく、最適化を抑制しないはずである。推測空間線量との一致は更に、線量-体積ヒストグラム、線量/体積(dose-at-volume)、体積/線量(volume-at-dose)などの集団的測定の観点から定式化されることがある。例えば最適化は、推測空間線量のヒストグラムを、治療計画線量の同様に定義されたヒストグラムにできる限り類似させることを目的とするように構成されうる。
【0049】
[0036] 更に別の実施形態では、最適化プロセスは、治療計画線量のいくつかの体積における推測空間線量との一致を、他の体積における推測線量との一致よりも優先するように構成されることがある。オペレータは、これに関する優先度を様々な重み付け係数β、β、β、...を様々な体積Ω、Ω、Ω、...に割り当てることによって伝達することがある。例えば、第1の体積に割り当てられた重み付け係数βが、第2の体積に割り当てられた重み付け係数βとは独立に割り当てられうる。この設定可能性の実際の使用は、これらの臓器の生物学的感受性と逆の関係にある様々なリスク臓器に対応する体積に重み付け係数を割り当てることである。重み付け係数は、最適化プロセスの目的関数におけるペナルティ重みとして理解されることがある。一実施形態では、重み付け係数は、ボクセル分解能で例えばβ=β(X,Y,Z)のように指定されうる。ここでX、Y、Zは離散化された空間座標である。この分解能は、治療計画線量と同じ詳細度を有する。
【0050】
[0037] 2次元のみを示す断面図(患者の体の横断面図)である図5には、例示的なボクセルグリッド510が示されている。ボクセルグリッド510が等しいか又は異なる分解能で図面の平面に(患者の長手方向に)延びていることが理解される。各ボクセルは、その離散化された座標の、原点(0,0,0)に対する3個の組によってアドレス指定可能である。
【0051】
[0038] ステップ116におけるロバスト最適化プロセスは、目的関数、制約、又はその両方が、指定した有限又は無限範囲にわたって変化可能な未定義パラメータを含むロバスト最適化問題を解析的に又は数値的に解決することを含むことがある。これらの特徴を有する最適化問題が「動く標的」に例えられ得るにもかかわらず、かかる問題の重要なクラスに対処する解析的方法及び数値的方法の両方が、多数の理論的結果と共に開発されてきている。
【0052】
[0039] ロバスト最適化問題は確率的に又は決定論的に定式化されることがある。マクシミン問題及びミニマックス問題は、患者データ誤差が不確実性パラメータu、v、w、...によって定量化される場合の治療計画生成に役立つことを証明している2つの決定論的定式化である。パラメータは、対応する範囲I、I、I、...内で定義され、長さ、質量、濃度又は様々な無次元量を表すことがある。範囲は患者集団及びプロトコルの測定に基づいている場合がある。かかる測定の目的は、各不確実性パラメータの確率分布を推定することである場合があり、それによって暫定的な範囲セットにわたって最適化することから生じる信頼度が、それ自体がよく知られた方法で多次元積分として計算されてもよい。
【0053】
[0040] 方法100の実行において使用される不確実性パラメータのセットは、オペレータによって前のステップ110で設定されることがある。オペレータには更に、所望の信頼度を提供する事前設定されたデフォルト範囲を受け入れる選択肢が与えられることがある。デフォルト範囲は特定のがんの種類又は身体領域に特有である場合がある。例えば前立腺がん治療において、推奨されるセットアップ不確実性は0.4cmであり、密度不確実性は3%である。デフォルト範囲はモデルを訓練する際に用いられた不確実性範囲に等しい場合があり、それから空間線量がステップ112において推測される。代替的に、オペレータは各範囲を手動で指定する。
【0054】
[0041] 目的関数に関する1次元の不確実性を含む単純な例では、考えられるミニマックス定式化は次のとおりである。
(a)≦0,j∈J
(a)=0,k∈Kという制約のもとで
【0055】
【数7】
【0056】
ここでAは、各要素a∈Aが治療計画π(a)を決定するという意味で実行可能な計画パラメータの集合である。制約の添字集合J、Kのそれぞれはポピュレートされているか又は空である場合がある。不確実性範囲は最適化変数aの関数、つまりI=I(a)である場合がある。
【0057】
[0042] 代替的又は付加的に、不確実性は問題の制約に影響を及ぼすことがある。制約を目的関数の項に変換するための様々な手法が存在し、かかる項は、制約に違反するaの値にペナルティを与えるバリア関数又は指示関数である場合がある。また、目的関数の成分を1つ以上の制約に変換する、線形化手法や前処理手法を含む方法もある。
【0058】
[0043] 別の例として、目的関数は不確実性uに依存する確率関数として扱われ、期待値が最適化される。
【0059】
【数8】
【0060】
[0044] 更にまた、治療計画は、線量分布のいわゆるボクセルごとの最悪のケースを最適化することによって得られることがある。各ボクセルxについて、最適化プロセスは、(Iにわたる)最大線量を推測空間線量
【0061】
【数9】
【0062】
に近づけると同時に、(Iにわたる)最小線量を推測空間線量
【0063】
【数10】
【0064】
に近づけるように設計されている。これは、各偏差にペナルティを課す目的関数を定義することによって達成され、重み付け係数が2つの副目的のそれぞれの重要性を調整するのに使用されうる。
【0065】
[0045] ロバスト最適化問題の定式化に関する更なる詳細については、A.Fredrikssonによる「Robust optimization in radiation therapy」 Advances and Trends in Optimization with Engineering Applications, T. Terlaky, M. F. Anjos and S. Ahmed(eds.)、MOS-SIAM Book Series on Optimization、SIAM、Philadelphia、2017[ISBN:978-1-611974-67-6]を参照のこと。
【0066】
[0046] 複数の不確実性パラメータu、v、w、...がシナリオsに結合される可能性があり、これは(制約を無視する)最適化問題を次の形にする。
【0067】
【数11】
【0068】
ここでも一般にS=S(a)である。シナリオ集合Sの定義を説明するために、各不確実性範囲Iを長さNのベクトルUとして離散化することがあり、全ての1≦n≦NについてU(n)∈I及びI=[U(1),U(N)]が満たされる。Uの要素は、I内に線形間隔、対数間隔、ランダム間隔又は別の適切な間隔を有することがある。不確実性パラメータu、v、wのシナリオ空間は、濃度NuNvNwの集合
【0069】
【数12】
【0070】
として得られ、ここで×は離散集合のデカルト積を意味する。
【0071】
[0047] 別の選択肢は、サンプリング、具体的には共同サンプリングによってシナリオSを生成することである。例えば、各空間次元におけるセットアップ誤差u、v、w及び範囲不確実性q(パーセント)は、超球u+v+w+q=α 4D(ここでα4Dは所望の信頼度をもたらすために選ばれる)の内側の点としてランダムにサンプリングされることがある。この実施形態は、L制約付き共同サンプリングの一例である。他の実施形態では、サンプリングは任意のp≧0についてL球の内側で制約されることがある。範囲誤差と比較したセットアップ誤差の相対的重要性は、リスケーリングした範囲誤差変数qをq’=q/γ(γ>0)に置換することによって調整されることがある。
【0072】
[0048] シナリオSは更にモンテカルロサンプリングによって生成されてもよい。このために不確実性パラメータの確率分布が想定される。この文脈では、想定される確率分布は、患者集団からのデータに基づく推定である場合がある。
【0073】
[0049] 概念上、シナリオs∈Sの効果は、推測空間線量
【0074】
【数13】
【0075】
への変換としてモデル化されることがある。ここで
【0076】
【数14】
【0077】
は、公称ケース(図3A参照)における患者データFに適切であるモデルMから推測した線量を意味し、
【0078】
【数15】
【0079】
はシナリオsに従う患者データFに適切な治療計画の線量を意味する。最適化は全ての定義されたs∈Sにわたって行われるため、最適化プロセスは、真の患者データに関係なく適切な解決策につながることになる。
【0080】
[0050] 変換された線量
【0081】
【数16】
【0082】
は、(公称)推測空間線量
【0083】
【数17】
【0084】
を処理することによって得られることがある。かかる変換の効果は、局所的である(例えば局所的密度誤差の場合)か又は大域的(例えば回転による患者セットアップ誤差の場合)である場合がある。代替的に、推測は各シナリオsについて1回繰り返されることがある。公称患者データFからの推測が
【0085】
【数18】
【0086】
のように表記される場合、シナリオ変換された空間線量は次のようになる。
【0087】
【数19】
【0088】
モデルMはシナリオに依存しないが、シナリオ変換された患者データFが与えられることを強調する。
【0089】
[0051] 体積Ωにおける治療計画線量dπと推測空間線量
【0090】
【数20】
【0091】
の不等性にペナルティを課す目的関数fが、例えば次の形を有することがある。
【0092】
【数21】
【0093】
又はより一般的に、
【0094】
【数22】
【0095】
(指数p≧0)。ロバストな定式化において、シナリオsにわたる変動性の効果は、次式によって捕捉されることがある。
【0096】
【数23】
【0097】
同様に、推測空間線量が体積Ωにおける上界として機能する場合、次の目的関数が使用される。
【0098】
【数24】
【0099】
ここで(・)は正部分を表す。関数fは、
【0100】
【数25】
【0101】
の場合にかかる点xに対してペナルティを課さない。更に下界が次の形の目的関数によって捕捉されることがある
【0102】
【数26】
【0103】
ここで(・)は負部分を表す。正部分及び負部分は、任意選択的にp(≧0)乗されることがある。上記積分
【0104】
【数27】
【0105】
のそれぞれはΩ内にあるボクセルにわたる和として実行されることがある。
【0106】
[0052] 目的関数は更に、累積もしくは差分線量-体積ヒストグラムや体積/線量などの集団的線量測定の観点から定式化されることがある。体積Ω内で定義される空間線量d(x)の体積/線量tは、線量がt以上である場合のΩの部分の測度として理解されることがある。正規化によって次式のように表されることがある。
【0107】
【数28】
【0108】
ここで|・|はメジャーを意味する。VaDが概して、VaD(0;d,Ω)=1及びt→∞のときにVaD(t;d,Ω)→0を満たす、tの左連続非負関数であることが理解される。次の目的関数は、VaD(t;dπ(a),Ω)で示される治療線量の体積/線量と、シナリオs∈Sの下での推測空間線量の体積/線量
【0109】
【数29】
【0110】
との(正又は負の)いかなる偏差にもペナルティを課す。
【0111】
【数30】
【0112】
特定の線量範囲[t,t]⊂[0,∞]の偏差のみが問題と見なされる場合、積分限界は適宜置換されることがある。正の偏差のみにペナルティが課される場合、すなわち治療計画線量の体積/線量が推測空間線量の体積/線量を上回る場合、次の目的関数が利用されることがある。
【0113】
【数31】
【0114】
最後に、負の偏差のみにペナルティが課される場合、すなわち治療計画線量の体積/線量が推測空間線量の体積/線量を下回る場合、次式が適用されることがある。
【0115】
【数32】
【0116】
積分は必要に応じてより小さい線量間隔[t,t]に限定されうる。上記の体積Ωは、照射体積全体、又はリスク臓器や治療体積などのサブ体積である場合がある。
【0117】
[0053] 代替的又は付加的に、シナリオsの効果は、患者のサブ体積の放射線透過性に摂動を与えることである場合がある。この摂動は、ある意味で患者データの変化であるが、主に減衰、吸収などの結果として各治療計画π(a)の線量の計算に影響を及ぼすことがある。かかる線量計算の変化の物理的原因にかかわらず、シナリオsへの依存が治療計画線量関数、すなわちdπ(a)(x;s)に含まれることがある。この項を目的関数fに代入することで次式が得られる。
【0118】
【数33】
【0119】
最適化問題の解決策が放射線透過性に関してロバストであることのみが求められる(すなわち、Sにおける2つのシナリオが放射線透過性に関してのみ異なる)場合、次の目的関数が利用されることがある。
【0120】
【数34】
【0121】
この表記が示すように、
【0122】
【数35】
【0123】
はsから独立している。別の例示的な目的関数f、f、f、...は同様に修正されることがある。
【0124】
[0054] 重要な特殊なケースでは、治療計画線量は最適化変数a∈Aの線形関数、つまり、dπ(a)(x)=Daであり、ここでdは照射体積内のボクセルの数と同数の行を含むベクトルである。線形性は、例えば最適化変数aがビームフルエンスの面積要素への離散化を表す場合に成り立ち、行列Dの各列が、フルエンスがビームフルエンス面積要素の1つにおいて1に設定されるときに生じるボクセル線量沈着のベクトルである。強度変調陽子線療法(IMPT)では、かかる線形表現が実行可能な機械設定に対応する。光子ベースの強度変調放射線療法(IMRT)では、ビームフルエンスはマルチリーフコリメータ形状の重ね合わせによって間接的に制御可能であるため、線形表現はビームフルエンスを実行可能な機械設定に変換することによって得られる。陽子スポットが、治療計画線量と最適化変数との間の線形関係が成り立つ場合のさらなる例である。線量がこれらの方法のいずれかで最適化変数a∈Aに対して線形に変化する場合に、誤差の効果は、Dをシナリオに依存する行列D(s)に置き換えること、すなわちdπ(a)(x;s)=D(s)aによってもたらされることがある。
行列D(s)は、sの線形又は非線形関数である場合がある。
【0125】
[0055] 線量模倣段階116の前の、方法100の重み付け段階114において、オペレータが、様々な体積Ω、Ω、Ω、...に関連する重み付け係数(又はペナルティ重み)β、β、β、...を設定できる場合がある。この選択肢は、様々な体積内の推測空間線量、ひいては最適化プロセスにより尊重される優先度を満たすことの相対的重要性を調整するのに利用されることがある。目的関数表現では、重み付け係数は、各体積Ωでサポートされているサブ関数fΩiの線形結合における係数に対応する。
【0126】
【数36】
【0127】
さらなる代替案として、2つの重み付け係数β、βがボクセル分解能で、つまりβ±=β±(X)で指定されることがあり、ここでX=(X,Y,Z)は、照射体積の全てのボクセルに指標付けする集合Γ上で定義された離散化された空間座標のベクトルである。重み付け係数は、次の一般形の目的関数に含められることがある。
【0128】
【数37】
【0129】
このとき、オペレータは、推測空間線量が上界であるボクセル内でβが非ゼロとなり、推測空間線量が下界であるボクセル内でβが非ゼロとなり、相等性又は近似相等性が望まれるボクセル内でβ及びβの両方が非ゼロとなるように重み付け係数を設定することがある。治療計画線量が重要でなく、最適化を制約すべきでないボクセルでは、β及びβの両方はゼロに設定されることがある。
【0130】
[0056] 前のセクションにおいて、ロバスト最適化問題の一般形が、様々な体積内で満たされるべき様々な条件(例えば、相等性、上界/下界、任意)の相対的重要性を設定するための、及び解決策がロバストでなければならない様々なシナリオを生成するための方法と共に説明及び例示された。線量模倣段階116の完了には、求める治療計画π(a)を決定する、ミニマックス問題の数値解法
【0131】
【数38】
【0132】
又はロバスト最適化問題の別の定式化を得るための最適化ソルバを利用することが含まれることがある。効率的な最適化ソルバは、線形、非線形又は確率的計画法を適用することがある。反復法では、非ロバストなケースについて近似解から最適化ソルバを起動すること、つまりs∈Sの変動性を一時的に無視することが役に立つ場合がある。線形計画法による分布のロバスト性、二次錐計画法による確率的ロバスト性、非線形計画法による最悪ケースのロバスト性、線形及び非線形計画法によるボクセルごとの最悪ケースのロバスト性を含む、いくつかの最適化手法を詳細に再検討するA.Fredriksson(2017)による上記の著作物を参照のこと。
【0133】
[0057] 方法100は、図2に示したタイプの治療計画生成システム200によって実行されることがある。治療計画生成システム200は、インターフェイス210、232、240と、メモリ220、231と、処理回路230とを備えることがある。インターフェイスの第1のもの210は患者データFを受信するように構成されることがあり、患者データFから空間線量
【0134】
【数39】
【0135】
がメモリ220に記憶されている訓練されたモデルMを使用して推測される。空間線量
【0136】
【数40】
【0137】
は処理回路230に転送され、処理回路230は、メモリ231に記憶されているシナリオの集合S(又は異なる形式で指定された患者データ不確実性の集合)に対してロバストであるように構成された最適化プロセスを実行する。インターフェイスの第2のもの232は、オペレータがシナリオ集合Sを編集することを可能にする。最適化プロセスから生じる治療計画πがインターフェイスの第3のもの240を介して出力される。治療計画生成システム200がアプリケーション固有の処理回路もしくはプログラム可能な処理回路、又は両方の組み合わせによって実行され得ることが理解される。図2に示した論理構造は、システム200の物理的構造を必ずしも反映しないことがある。
【0138】
[0058] 本開示の態様を主に数個の実施形態を参照しながら上に説明してきた。ただし、当業者によって容易に理解されるように、上に開示されているもの以外の他の実施形態が、添付の特許請求の範囲によって定められているように本発明の範囲内で同等に可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5