(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】コードストッパー
(51)【国際特許分類】
A44B 99/00 20100101AFI20240611BHJP
【FI】
A44B99/00 611N
(21)【出願番号】P 2023541154
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2021029528
(87)【国際公開番号】W WO2023017566
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】南部 円香
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋兵
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198414(JP,A)
【文献】特開2019-47949(JP,A)
【文献】特開2001-340111(JP,A)
【文献】特開2018-89199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0088107(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2607747(EP,A2)
【文献】米国特許第6185798(US,B1)
【文献】特開平7-39406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0011910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B99/00
A44B11/00-11/28
A45C13/00-13/42
A45F3/00-3/52
A43B1/00-23/30
A43C7/00-7/08
A43C11/00-11/24
F16G11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐体(46)が挿通される嵌合部(16)が内側に設けられたソケット(12)と、前記ソケット(12)に挿入された前記紐体(46)を前記ソケット(12)の内壁面(34a)に押し付けて保持するプラグ(14)とから成り、
前記ソケット(12)は、互いに所定間隔を開けて対面する一対の表面部(32)と、一対の前記表面部(32)の各側縁に位置し互いに対向する一対の側面部(34)とで囲まれて前記嵌合部(16)が設けられた筒体であり、前記筒体の対向する一対の開口部の一方は、前記プラグ(14)が挿入され取り付けられるとともに前記紐体(46)が挿通される挿入口(36)であり、他方の開口部は挿入口(36)とともに前記紐体(46)が挿通される挿通口(38)であり、
前記表面部(32)には、一方の端部が前記挿入口(36)に連通し他方の端部は前記挿通口(38)側に位置した摺動溝部(42)が設けられ、前記表面部(32)の内面に、一方の端部は前記挿通口(38)側に位置し、前記摺動溝部(42)に向かって延びて他方の端部が前記摺動溝部(42)の端部近傍に達したガイド凹部(44)が設けられ、前記摺動溝部(42)の端部と前記ガイド凹部(44)の端部の間の部分がストッパ(45)となり、
前記プラグ(14)には、前記嵌合部(16)内での前記紐体(46)の挿通方向に突出する保持部(18)と、前記保持部(18)の基端部(18c)に位置し前記保持部(18)の突出方向と交差し一対の前記表面部(32)側に各々突出する一対の案内部(26)と、前記案内部(26)の先端に連続し前記保持部(18)の突出方向と平行な面を有する板体である一対の操作部(28)が設けられ、
前記ソケット(12)と前記プラグ(14)を組み付けた状態で、前記操作部(28)は前記表面部(32)の外郭線の内側に位置し、
前記プラグ(14)は、前記保持部(18)の前記基端部(18c)とは反対側の先端部(18a)に、前記ガイド凹部(44)に嵌合して摺動する保持凸部(22)が設けられ、前記保持凸部(22)が前記ガイド凹部(44)に沿って前記ストッパ(45)と前記挿通口(38)の間を摺動可能であるとともに、前記案内部(26)が前記摺動溝部(42)に嵌合して移動可能に設けられ、
前記プラグ(14)を前記挿通口(38)に向かって移動させると、前記ソケット(12)の内壁面(34a)と前記プラグ(14)との間に前記紐体(46)が挟持されて固定され、
前記プラグ(14)を挿通口(38)から離れる方に移動させると、前記ソケット(12)の前記内壁面(34a)と前記プラグ(14)との間が広くなり前記紐体(46)が摺動可能となることを特徴とするコードストッパー。
【請求項2】
前記ソケット(12)に前記紐体(46)が挿通され前記プラグ(14)を組み付けた状態では、前記プラグ(14)が摺動可能な方向のいずれの位置でも、前記操作部(28)の前記表面部(32)への投影形状は、前記表面部(32)の外郭線の内側に位置する請求項1記載のコードストッパー。
【請求項3】
前記ソケット(12)の前記表面部(32)の、前記摺動溝部(42)の端部の前記ストッパ(45)と前記挿通口(38)との間の部分は、操作時に指を置く指置き部(32a)となり、
前記指置き部(32a)は、前記挿通口(38)に沿う前記表面部(32)の側縁部から突出するソケット指掛部(39)を備える請求項1又は2記載のコードストッパー。
【請求項4】
前記指置き部(32a)の内面の前記ガイド凹部(44)は、前記表面部(32)の厚み方向の投影形状が、前記プラグ(14)の前記保持部(18)と少なくとも一部が重なり合っている請求項3記載のコードストッパー。
【請求項5】
前記指置き部(32a)は、前記紐体(46)の挿通方向における前記ソケット(12)の長さに対して0.3~0.5の比率で設けられる請求項3記載のコードストッパー。
【請求項6】
前記ソケット(12)に前記紐体(46)が挿通され前記プラグ(14)を組み付けた状態では、前記プラグ(14)が摺動可能ないずれの位置に移動しても、前記ソケット(12)の前記指置き部(32a)は、前記紐体(46)の挿通方向における前記ソケット(12)の長さに対して、0.2~0.4の比率で、前記操作部(28)から露出する請求項5記載のコードストッパー。
【請求項7】
前記プラグ(14)の前記操作部(28)には、前記保持部(18)の突出方向とは反対側の端部に、操作指掛部(30)が形成されている請求項1又は2記載のコードストッパー。
【請求項8】
前記ソケット(10)の、前記挿通口(38)を形成する一方の表面部(32)には、テープ取付部(54)が設けられている請求項1乃至7のいずれか記載のコードストッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紐体が挿通され紐体の任意の位置に固定可能なコードストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紐体の任意の位置に取り付けられ、紐体の延出長を調整して、所定の長さに保持するコードストッパーがある。このような紐止め具には色々な形状の物があり、例えば特許文献1のコードロックは、中空のホルダ本体と、このホルダ本体に対して移動可能に設けられるとともにホルダ本体内に挿通された紐を保持する締結部材が設けられている。締結部材には、中央に歯部が設けられ、歯部の両側には鋸歯状に傾斜した複数の歯形が形成されている。鋸歯の傾斜方向は、ホルダ本体内に挿通された紐が弛むように移動する方向とは反対の方向である。つまり歯部は締結部材の締結状態時に紐が締め付け方向にのみ移動可能な形状を呈している。歯部の傾斜方向上方には、ホルダ本体の案内通路に差し込まれる案内部が設けられている。案内部の上方には、締結部材の移動の際の指を掛け易くするための指掛かりが突出形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術の場合、紐を締める時は、指掛かりを操作して、紐を移動する方向に締結部材を移動させ、紐を係止するロック状態から、紐が移動可能な解除状態に切り替える必要がある。従って、締結部材を移動させて解除状態に切り替える動作と、ホルダ本体を紐に対して移動させる2つの動作がかかり、操作が複雑である。さらに、ホルダ本体と締結部材とエンドカバーの3部材から成り、部品点数が多く、各々に上方へ突出する指掛かりが形成され、形状も複雑である。締結部材には構造上、一方向に長い歯部が設けられ、ホルダ本体は歯部を収容する十分な長さが必要であり、またホルダ本体の端部にはエンドカバーが取り付けられているため、外観が大きくなるという問題もある。
【0005】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、小形でシンプルな形状であり、簡単な操作で使用しやすいコードストッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、紐体が挿通される嵌合部が内側に設けられたソケットと、前記ソケットに挿入された前記紐体を前記ソケットの内壁面に押し付けて保持するプラグとから成り、前記ソケットは、互いに所定間隔を開けて対面する一対の表面部と、一対の前記表面部の各側縁に位置し互いに対向する一対の側面部とで囲まれて前記嵌合部が設けられた筒体であり、前記筒体の対向する一対の開口部の一方は、前記プラグが挿入され取り付けられるとともに前記紐体が挿通される挿入口であり、他方の開口部は挿入口とともに前記紐体が挿通される挿通口であり、前記表面部には、一方の端部が前記挿入口に連通し他方の端部は前記挿通口側に位置した摺動溝部が設けられ、前記表面部の内面に、一方の端部は前記挿通口側に位置し、前記摺動溝部に向かって延びて他方の端部が前記摺動溝部の端部近傍に達したガイド凹部が設けられ、前記摺動溝部の端部と前記ガイド凹部の端部の間の部分がストッパとなり、前記プラグには、前記嵌合部内での前記紐体の挿通方向に突出する保持部と、前記保持部の基端部に位置し前記保持部の突出方向と交差し一対の前記表面部側に各々突出する一対の案内部と、前記案内部の先端に連続し前記保持部の突出方向と平行な面を有する板体である一対の操作部が設けられ、前記ソケットと前記プラグを組み付けた状態で、前記操作部は前記表面部の外郭線の内側に位置し、前記プラグは、前記保持部の前記基端部とは反対側の先端部に、前記ガイド凹部に嵌合して摺動する保持凸部が設けられ、前記保持凸部が前記ガイド凹部に沿って前記ストッパと前記挿通口の間を摺動可能であるとともに、前記案内部が前記摺動溝部に嵌合して移動可能に設けられたコードストッパーである。前記コードストッパーは、前記プラグを前記挿通口に向かって移動させると、前記ソケットの内壁面と前記プラグとの間に前記紐体が挟持されて固定され、前記プラグを挿通口から離れる方に移動させると、前記ソケットの前記内壁面と前記プラグとの間が広くなり前記紐体が摺動可能となる。
【0007】
前記ソケットに前記紐体が挿通され前記プラグを組み付けた状態では、前記プラグが摺動可能な範囲のいずれの位置でも、前記操作部の前記表面部への投影形状は、前記表面部の外郭線の内側に位置する。
【0008】
前記ソケットの前記表面部の、前記摺動溝部の端部の前記ストッパと前記挿通口との間の部分は、操作時に指を置く指置き部となる。前記指置き部は、前記挿通口に沿う前記表面部の側縁部から突出するソケット指掛部を備える。
【0009】
前記指置き部の内面の前記ガイド凹部は、前記表面部の厚み方向の投影形状が、前記プラグの前記保持部と少なくとも一部が重なり合っている。
【0010】
前記指置き部は、前記紐体の挿通方向における前記ソケットの長さに対して0.3~0.5の比率で設けられている。前記ソケットに前記紐体が挿通され前記プラグを組み付けた状態では、前記プラグが摺動可能ないずれの位置に移動しても、前記ソケットの前記指置き部は、前記紐体の挿通方向における前記ソケットの長さに対して、0.2~0.4の比率で、前記操作部から露出する。
【0011】
前記ソケットには、前記表面部の、前記挿通口に沿う側縁部に、表面から突出するソケット指掛部が形成されている。さらに、前記プラグの前記操作部には、前記保持部の突出方向とは反対側の端部に、操作指掛部が形成されていても良い。
【0012】
前記ソケットの、前記挿通口を形成する一方の表面部には、テープ取付部が設けられているものでも良い。
【発明の効果】
【0013】
この発明のコードストッパーは、小形でシンプルな形状であり、簡単な操作で使用しやすい。かばん等の開口部を開閉する操作では、ソケットとプラグを一緒に片手で保持して行うことができ、開く時と閉じる時で持ち替えたり、ソケットとプラグを別々に保持したりする必要が無く、直感的な操作が可能であり、操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の第一実施形態のコードストッパーのプラグ側から見た分解斜視図である。
【
図2】この発明の第一実施形態のコードストッパーのソケット側から見た分解斜視図である。
【
図3】この発明の第一実施形態のコードストッパーの斜視図である。
【
図4】この発明の第一実施形態のコードストッパーの平面図(a)、左側面図(b)正面図(c)、底面図(d)である。
【
図7】この発明の第一実施形態のコードストッパーのプラグがソケットの挿通口から挿入方向に進入した状態を示す正面図である。
【
図8】この発明の第一実施形態のコードストッパーのソケットの平面図(a)、左側面図(b)正面図(c)、底面図(d)である。
【
図9】この発明の第一実施形態のコードストッパーのプラグの平面図(a)、左側面図(b)正面図(c)、底面図(d)である。
【
図10】この発明の第二実施形態のコードストッパーの斜視図である。
【
図11】この発明の第二実施形態のコードストッパーの平面図(a)、左側面図(b)正面図(c)、底面図(d)である。
【
図14】この発明の第二実施形態のコードストッパーのソケットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面を基にして説明する。
図1~
図9この発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態のコードストッパー10は、後述する紐体46が一方向に挿通される嵌合部16が内側に設けられたソケット12と、嵌合部16に挿入して係止され紐体46をソケット12に押し付けて保持するプラグ14とから成る。以後の説明において、プラグ14の保持部18が突出する前後方向を、互いに直交するXYZ軸のX軸方向とし、紐体46の挿通方向と一致する。X軸方向に直交する左右方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向に直交する表裏方向または厚み方向をZ軸方向とする。
【0016】
まず、プラグ14について説明する。プラグ14は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で一体成形されている。プラグ14は、
図9に示すように、ソケット12に挿入される保持部18が設けられている。
【0017】
保持部18は、保持部18の突出方向、つまりX軸方向に対して直交する断面形状は矩形であり、断面は、Y軸方向に長く、表裏方向であるZ軸方向に短い長方形である。保持部18は、X軸方向と平行な面の輪郭が楔状に形成され、X軸方向と直交する断面形状は、突出方向の先端部18aに近づくにつれて小さくなっている。保持部18の、Y軸方向と直交する一対の側面18bには、先端部18aに近い約半分に、挟持突起20が各々設けられている。挟持突起20は、Z軸方向に沿う複数の突条であり、Y軸方向の左右方向に突出し、突出した端部のXZ平面方向に沿う断面形状が矩形状である。
【0018】
保持部18の先端部18aには、保持凸部22が設けられている。保持凸部22は保持部18の先端部18aと一対の上面18dに連続して形成され、保持部18はZ軸方向と直交する断面形状が楔状の台形状であり、一部が上面18dからZ軸方向に突出して、保持凸部22を形成している。保持凸部22の、上面18dからZ軸方向に突出する突出量は、後述する案内部26の突出量よりも小さい。
【0019】
先端部18aとは反対側の基端部18cは、保持部18の一対の上面18dと、挟持突起20の各端面と、各々面一の側面を有する板状に連続して形成されている。基端部18cは、挟持突起20の長さよりも短く、Y軸方向と直交する一対の側面部分には、軽量化のため所定深さの穴24が形成されている。
【0020】
保持部18の基端部18cの、Z軸方向と直交する一対の面には、Z軸方向に各々突出する案内部26が立設されている。案内部26は、保持部18の基端部18cの中心に設けられ、基端部18cの中心を通過しX軸方向に長細く形成されている。保持部18の基端部18cと案内部26の、保持部18の突出方向とは反対側の端部は、互いに一致している。
【0021】
一対の案内部26の、Z軸方向の各先端には、操作部28が各々設けられている。操作部28は、XY平面に対して平行な面を有する板体であり、保持部18の基端部18cよりもY軸方向の幅が長く、X軸方向には、基端部18cより長い矩形である。各操作部28のZ軸方向の厚みは、保持部18よりも薄い。操作部28の、保持部18の突出方向とは反対側の端部は、保持部18の基端部18cと案内部26の端部と一致し、この端部にはZ軸方向に表面から各々突出した突起である操作指掛部30が形成されている。操作指掛部30は、操作部28の端部に沿って形成されている。なお、操作指掛部30は、ソケット12とプラグ14を組み付けた時に、ソケット12の後述する挿通口38とは反対側に位置する。これにより、保持部18のZ軸方向の両側に、同形状の案内部26と操作部28が設けられ、一対の操作部28は、保持部18の挟持突起20とZ軸方向に重なっている。つまり、プラグ14はX軸方向に、保持部18と操作部28の各々の長さの和よりも短く形成されている。そして、プラグ14は、X軸方向の中心軸を中心として対称形である。
【0022】
次にソケット12について説明する。ソケット12は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で一体成形により形成されている。ソケット12は、
図8に示すように、プラグ14が挿入される中空の嵌合部16を有している。嵌合部16は、Z軸方向に対して直交して互いに所定間隔を開けて対面する一対の同形状の表面部32と、一対の表面部32の側縁に位置し、互いに対向する一対の同形状の側面部34で囲まれて設けられ、筒体に形成されている。嵌合部16は、
図5に示すように、プラグ14がゆとりを有して嵌合される空間であり、プラグ14と嵌合部16の間に、後述する紐体46が挟持される隙間を有している。なお、紐体46の嵌合部16での挿通方向は、ソケット12のプラグ14が突出するX軸方向となる。
【0023】
ソケット12の筒体の一方の開口部は、プラグ14が挿入されるとともに紐体46が挿通される挿入口36であり、反対側の開口部はプラグ14が押し付けられて紐体46を保持し、保持した紐体46が挿通される挿通口38である。表面部32のZ軸方向の厚みは、ほぼ一定であり、側面部22のY軸方向の厚みは、挿入口36側から挿通口38側に近づくにつれて徐々に厚くなるように形成されている。これにより、側面部34の内壁面どうしの間隔は、挿入口36から挿通口38にかけて、徐々に狭くなる。挿入口36のY軸方向の幅は、挿通口38のY軸方向の幅より大きく形成され、挿入口36と挿通口38のZ軸方向の幅は、互いにほぼ同じである。側面部34の内壁面には、複数の凹凸部40が設けられている。凹凸部40は、Z軸方向に設けられた突条であり、X軸方向に等間隔に並んで設けられている。突条の頂部は三角形状であり、挿入口36に向かって突出している。
【0024】
各表面部32には、矩形の摺動溝部42が各々設けられている。摺動溝部42はX軸方向に長い矩形であり、一方の端部は挿入口36に連通し、他方の端部は表面部32のX軸方向の長さの中間よりも少し挿通口38に近い位置に達している。各表面部32の、摺動溝部42の端部と挿通口38との間の部分は、操作時に指を置く指置き部32aとなる。
【0025】
指置き部32aは、ソケット12のX軸方向の長さに対して、0.3~0.5のX軸方向の長さの比率で設けられる。各表面部32の内壁面には、指置き部32aの裏側に、表面部32の厚みを矩形に切除した形状のガイド凹部44が設けられている。ガイド凹部44はX軸方向に長い矩形であり、X軸方向の一方の端部は挿通口38に連通し、他方の端部は摺動溝部42の端部から少し離れた位置に達している。摺動溝部42とガイド凹部44は、表面部32のY軸方向の幅の中間を通過する。摺動溝部42の端部とガイド凹部44の端部は、互いに僅かに離れて設けられ、摺動溝部42の端部とガイド凹部44の端部の間の部分は、嵌合部16内で移動するプラグ14のストッパ45となる。
【0026】
表面部32の指置き部32aの挿通口38に沿う側縁部には、Z軸方向に突出するソケット指掛部39が形成されている。ソケット12も、X軸方向の中心軸を中心として対称形である。
【0027】
次に、この実施形態のコードストッパー10の係止動作について、以下に説明する。まず、このコードストッパー10は、図示しないかばん等の開口部の近傍に取り付けて使用する。開口部には、周縁部に沿って1本の紐体46が挿通され、紐通し用の穴等から1本の紐体46の両端部分46aを引き出す長さを変えて、開口部を開閉するものである。
【0028】
コードストッパー10をかばん等の取り付け対象に取り付ける方法は、
図3、
図5に示すように、まず、プラグ14を組み付ける前に、図示しないかばん等の紐通し用の穴等から引き出された紐体46の両端部分46aを、ソケット12に、挿通口38から嵌合部16に入れて挿入口36から外側に引き出す。挿入口36のY軸方向の両端に一対の紐体46の両端部分46aをそれぞれ寄せて、挿入口36の中央で一対の紐体46の間に、プラグ14を、その保持部18の先端部18aを先にして差し込む。
【0029】
プラグ14の保持部18がソケット12の嵌合部16の内側に差し込まれ、プラグ14の案内部26が摺動溝部42に沿って挿入され、操作部28はソケット12の表面部32の外側を移動する。そして、保持凸部22が摺動溝部42の端部であるストッパ45に当接し、それ以上差し込まれなくなる。しかし、さらに強く押し込むことで、表面部32を弾性変形させて、一対のストッパ45の間のZ軸方向の空間を広げて、保持凸部22を通過させ、ガイド凹部44に保持凸部22が差し込まれる。一対のガイド凹部44の間の、Z軸方向の空間は保持凸部22を収容可能な広さであり、ガイド凹部44に差し込まれると表面部32の弾性変形は復元する。保持凸部22は、引き抜き方向にはストッパ45に係止され、プラグ14は、ソケット12からの引き抜きが不可となる。
【0030】
これでソケット12とプラグ14の組み付けが完了し、コードストッパー10のかばん等の開口部への取り付けが完了する。ソケット12に紐体46が挿通されプラグ14を組み付けた状態で、表面部32の内側のガイド凹部44は、表面部32の厚み方向であるZ軸方向の投影形状が、プラグ14の保持部18と少なくとも一部が重なり合っている。開口部に沿う紐体46の環状部分は、コードストッパー10の挿通口38から延出し、紐体46の両端部分46aは挿入口36から延出する。プラグ14の操作部28は、ソケット12の表面部32の外側に、表面部32に対して平行に位置し、操作部28の表面部32への投影形状は、表面部32の外郭線の内側に位置する。そして、ソケット12の表面部32の指置き部32aは、挿通口38に近い部分が、プラグ14の操作部28から露出する。
【0031】
プラグ14の保持凸部22は、ソケット12のガイド凹部44に嵌合され、ガイド凹部44の長手方向、つまり挿通口38に向かってX軸方向に、ストッパ45と挿通口38の間を摺動可能である。ソケット12の指置き部32aは、プラグ14が摺動可能ないずれの位置に移動しても、ソケット12のX軸方向の長さに対して、0.2~0.4のX軸方向の長さの比率で露出する。
【0032】
プラグ14を、ソケット12の挿通口38に向かって移動させると、プラグ14の挟持突起20がソケット12の凹凸部40に近くなり、紐体46は挟持突起20と凹凸部40に挟持されて保持固定される。
図3~
図6に示すように、プラグ14を挿通口38から離れる方に移動させると、挟持突起20と凹凸部40との間が広くなり、紐体46は摺動可能となる。プラグ14は、挿通口38から離れる方に移動させても、プラグ14の保持凸部22がソケット12のストッパ45に係止され、抜け落ちることが無く、操作部28がソケット12の挿入口36側の端部からはみ出ることも無い。
【0033】
次に、コードストッパー10の使用方法について説明する。紐体46が取り付けられたかばん等の開口部を絞って閉鎖する時は、ソケット12の一対の表面部32の指置き部32aを保持し、他方の手で挿入口36から延出する紐体46の両端部分46aを外側に向かって引く。紐体46に引かれてプラグ14は、ソケット12の挿通口38から離れ、紐体46は摺動可能となり、挿入口36から外側へ引き出され、挿通口38側の紐体46が短くなり、開口部を絞る。開口部が所望の状態に絞られると、その状態で紐体46の引き出しを停止する。この状態で、開口部を広げようとする張力が紐体46に作用しても、プラグ14の挟持突起20により、紐体46とともにプラブ14が挿通口38側に引き込まれ、プラグ14の挟持突起20とソケット12の凹凸部40により挿通口、紐体46は挟持され固定されて、紐体46が開口部側に引き出されて開口部が広がることはない。
【0034】
開口部を広げて開ける時は、同様にソケット12の一対の表面部32のプラグ14の操作部28を片手で保持し、かばん等から離れる方へ引く。すると、ソケット12の表面部32に対してプラグ14の操作部28がソケット12の挿通口38から離れる方へ移動し、プラグ14の挟持突起20とソケット12の凹凸部40の間隔が広がるので、紐体46は摺動可能となり、紐体46が挿通口38から引き出されて長くなり、開口部が大きくなり、かばん等から物品を出し入れすることができる。
【0035】
この実施形態のコードストッパー10によれば、小形でシンプルな形状であり、簡単な操作で使用しやすい。かばん等の開口部を開閉する操作は、ソケット12の指置き部32aを、プラグ14の操作部28と共に片手で保持して行うことができ、開く時と閉じる時で持ち替えたり、ソケット12とプラグ14を別々に保持したりする必要が無く、直感的な操作が可能であり、操作が容易である。ソケット12とプラグ14は、X軸方向の中心軸を中心として対称形であり、表裏又は左右を意識する必要がなく、操作時に保持する向きを確認する必要がない。ソケット12にはソケット指掛部39が設けられ、プラグ14には操作指掛部30が設けられ、開閉操作の際に指が滑ることが無い。
【0036】
プラグ14の操作部28は、ソケット12の表面部32の外郭線の内側に位置し、コンパクトであり、突出することで破損することが無い。また、プラグ14の操作部28がソケット12の挿入口36側に突出していると、かばん等の開口部を閉める際にプラグ14をソケット12に不用意に押し込んでしまい、紐体46が不用意に係止するおそれがあるが、コードストッパー10は、プラグ14の操作部28がソケット12から突出していないため、紐体46が不用意に係止されることがなく、操作性が良い。また、プラグ14には操作指掛部30が設けられ、ソケット12の挿入口36側からプラグ14を押し込んで紐体46を係止することもでき、既存の金属ばねを使用したコードストッパーと同じ操作をしても紐体46を違和感なく係止することができる。ソケット12の、指置き部32aではなく側面部34を保持しても、かばん等の開口部を閉める操作が可能である。
【0037】
プラグ14の保持部18は、一対の操作部28の間に基端部18cが位置し、十分な保持部18の突出量がありながら、操作部28から突出する長さを短くして、プラグ14をコンパクトな形状に小形化することができる。プラグ14の小形化に伴い、ソケット12も小形化することができ、小形のコードストッパー10を実現することができる。弾性体を使用することが無く、構造が簡単で、弾性体を収納するスペースが不要である。部品数はソケット12とプラグ14の2部材であり、シンプルである。ソケット12の摺動溝部42は、プラグ14の操作部28で覆われるため砂やゴミなどの異物が入らない。
【0038】
次にこの発明の第二実施形態について
図10~
図14を基にして説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のコードストッパー50は、紐体46が一方向に挿通される嵌合部16が内側に設けられたソケット52と、嵌合部16に挿入して係止され紐体46をソケット52に押し付けて保持するプラグ14とから成る。プラグ14は上記実施形態と同一の形状であり、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で一体成形されている。
【0039】
次に、ソケット52について説明する。ソケット52は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で一体成形により形成されている。ソケット52は、プラグ14が挿入される中空の嵌合部16を有している。嵌合部16は、互いに所定間隔を開けて対面する一対の表面部32と、一対の表面部32のY軸方向の側縁部に位置し、互いに対向する一対の側面部34で囲まれて設けられ、筒体に形成されている。嵌合部16は、
図12に示すように、プラグ14がゆとりを有して嵌合される空間であり、プラグ14と嵌合部16の間に、紐体46が挟持される隙間を有している。
【0040】
ソケット52の筒体の一方の開口部は、プラグ14が挿入されるとともに紐体46が挿通される挿入口36であり、反対側の開口部はプラグ14が押し付けられて紐体46を保持し、保持した紐体46が挿通される挿通口38である。表面部32のZ軸方向の厚みは、ほぼ一定であり、側面部22のY軸方向の厚みは、挿入口36側から挿通口38側に近づくにつれて徐々に厚くなるように形成されている。側面部34の内壁面34aどうしの間隔は、挿入口36から挿通口38にかけて、徐々に狭くなる。挿入口36のY軸方向の幅は、挿通口38のY軸方向の幅より大きく形成されている。なお、側面部34の内壁面34aには、第一実施形態のコードストッパー10のソケット12のような凹凸部40は設けられていない。
【0041】
挿入口36を形成する一方の表面部32には、テープ取付部54が設けられている。テープ取付部54は、表面部32から、Z軸方向に突出するコの字形であり、コの字形の両端の直線部54aは、側面部34と面一に、表面部32に対して直角にZ軸方向へ立ち上がり、中央の直線部54bは表面部32に対して平行に位置している。コの字形の内側空間54cは、表面部32が延出しておらず挿通口38と連続している。従って、挿通口38は、内側空間54cともに、Z軸方向の幅が拡大されて設けられている。
【0042】
各表面部32の内壁面には、表面部32の厚みを矩形に切除した形状のガイド凹部44が設けられ、テープ取付部54が設けられた表面部32は、ガイド凹部44は挿通口38に連続する内側空間54cに連通する。また、ソケット52は、
図14に示すように、表面部32がテープ取付部54に延びていないので、内側空間54cが形成される部分の表面部32用の金型部分が不要であり、シンプルな形状の金型58で一体成形することができる。
【0043】
コードストッパー50をかばん等の取り付け対象に取り付ける方法は、まず、プラグ14を組み付ける前に、ソケット52のテープ取付部54の直線部54bにテープ部材56を巻き付け、テープ部材56の端部を、かばん等の開口部の紐通し用の穴等の近傍に固定する。以降はコードストッパー10と同様に、紐通し用の穴等から引き出された紐体46の両端部分46aを、ソケット52に、挿通口38から嵌合部16に入れて挿入口36から外側に引き出す。
【0044】
次に、挿入口36の中央で一対の紐体46の間に、プラグ14をその保持部18の先端部18aを先にして差し込む。プラグ14はソケット52の摺動溝部42にガイドされて差し込まれ、保持凸部22がストッパ45を通過してガイド凹部44に差し込まれ、プラグ14は、ソケット52からの引き抜きが不可となる。これでソケット52とプラグ14の組み付けが完了し、コードストッパー50の、かばん等の開口部への取り付けが完了する。
【0045】
コードストッパー50の使用方法は、上記の実施形態と同様である。開口部を開ける時、ソケット12の一対の表面部32と共にプラグ14の操作部28を片手で保持するだけで、かばん等の重みで、紐体46がソケット52の挿通口38から引き出され、紐体46は摺動して長くなり、開口部を大きくすることができる。
【0046】
この実施形態のコードストッパー50の効果は、上記実施形態と同様であり、開口部を開ける時、ソケット12の一対の表面部32と共にプラグ14の操作部28を片手で保持するだけで、かばん等の重みで、紐体46がソケット52の挿通口38から引き出され、紐体46は摺動して長くなり、開口部を大きくすることができ、簡単である。テープ取付部54の内側空間54cと挿通口38を、表面部32を除去して連続した形状に形成しているので、テープ部材56の挿入口が広く、テープ部材56が通しやすい。しかも、テープ取付部54を一体成形する金型58の形状をシンプルにすることができる。また、紐体46も挿通しやすい。
【0047】
なお、この発明のコードストッパーは、上記実施形態に限定されるものではなく、各部材の形状は自由に変更することができ、材料は適宜選択することができる。コードストッパーを取り付ける物品は、かばんや衣服、防寒具等、何でもよい。
【符号の説明】
【0048】
10,50 コードストッパー
12,52 ソケット
14 プラグ
16 嵌合部
18 保持部
18a 先端部
18c 基端部
22 保持凸部
26 案内部
28 操作部
30 操作指掛部
32 表面部
32a 指置き部
34 側面部
34a 内壁面
36 挿入口
38 挿通口
39 ソケット指掛部
42 摺動溝部
44 ガイド凹部
45 ストッパ
46 紐体
54 テープ取付部