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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ステント装置及びステント送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/86 20130101AFI20240611BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20240611BHJP
【FI】
A61F2/86
A61F2/966
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023550224
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022007780
(87)【国際公開番号】W WO2022181743
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】63/153,453
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博文
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-299901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0143384(US,A1)
【文献】国際公開第2019/175341(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0000533(US,A1)
【文献】特開平11-197252(JP,A)
【文献】特表2015-513931(JP,A)
【文献】特開2018-161163(JP,A)
【文献】特開2020-121158(JP,A)
【文献】特表2020-536711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/86
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状ステント本体を形成する1本以上のステントワイヤであって、前記円筒状ステント本体が内部空隙空間を囲む、1本以上のステントワイヤと、
前記円筒状ステント本体を覆うステントカバーと、
を備え、
前記円筒状ステント本体の前記1本以上のステントワイヤが、複数のオープンセルを形成し、各オープンセルが、ステントワイヤによって画定され、且つセル空隙空間を囲む周縁を含み、
前記ステントカバーが、1つ以上の低多孔性領域と、1つ以上の高多孔性領域とを含み、
前記ステントカバーの前記低多孔性領域が、前記オープンセルの位置に対応し、前記高多孔性領域が、前記1本以上のステントワイヤの位置に対応する、ステント装置。
【請求項2】
前記オープンセルが前記低多孔性領域によって覆われない領域が、前記高多孔性領域によって覆われる、請求項1に記載のステント装置。
【請求項3】
前記各オープンセルの前記低多孔性領域によって覆われる面積の比が、少なくとも1組のオープンセルについて異なる、請求項2に記載のステント装置。
【請求項4】
前記オープンセルが、前記円筒中央に位置する前記低多孔性領域によって覆われる面積の比が、前記低多孔性領域によって覆われ、且つ前記ステントカバーの円筒端部に位置する前記オープンセルの面積に比べて高い、請求項3に記載のステント装置。
【請求項5】
前記オープンセルが前記低多孔性領域によって覆われる面積の比が、前記ステントカバーの半円筒の半分と比較して、前記半円筒の他半分においてより高い、請求項4に記載のステント装置。
【請求項6】
前記ステントカバーが、前記円筒状ステント本体の両方の円筒端部から離れて配置される、請求項4に記載のステント装置。
【請求項7】
前記低多孔性領域によって覆われた前記オープンセルが、前記円筒状ステント本体の少なくとも1つの円筒端部において0である、請求項1に記載のステント装置。
【請求項8】
前記円筒状ステント本体が、屈曲部分を介して互いに連結するステントワイヤから構成される、請求項1に記載のステント装置。
【請求項9】
前記ステントカバーが、前記円筒状ステント本体を外側から覆う外側カバーと、前記円筒状ステント本体を内側から覆う内側カバーとから構成される、請求項1に記載のステント装置。
【請求項10】
前記外側カバーが、前記内側カバーと比較してより高い多孔率を有する、請求項9に記載のステント装置。
【請求項11】
ステント装置と、
層の間で前記ステント装置を運ぶ二重層シースと、
前記シースから前記ステント装置を取り外すためのハンドルと、
を備え、
前記ステント装置が、円筒状ステント本体を形成する1本以上のステントワイヤを有し、
前記円筒状ステント本体が内部空隙空間を囲み、
ステントカバーが、前記円筒状ステント本体を覆い、
前記円筒状ステント本体の前記1本以上のステントワイヤが、複数のオープンセルを形成し、各オープンセルが、ステントワイヤによって画定され、且つセル空隙空間を囲む周縁を含み、
前記ステントカバーが、1つ以上の低多孔性領域と、1つ以上の高多孔性領域とを含み、
前記ステントカバーの前記低多孔性領域が、前記オープンセルの位置に対応し、前記高多孔性領域が、前記1本以上のステントワイヤの位置に対応する、ステント送達システム。
【請求項12】
前記オープンセルが前記低多孔性領域によって覆われない領域が、前記高多孔性領域によって覆われる、請求項11に記載のステント送達システム。
【請求項13】
前記各オープンセルの前記低多孔性領域によって覆われる面積の比が、少なくとも1組のオープンセルについて異なる、請求項12に記載のステント送達システム。
【請求項14】
前記低多孔性領域によって覆われている前記オープンセルの面積の比が、前記ステントカバーの円筒端部に位置する前記オープンセルと比較して、前記円筒中央に位置する前記オープンセルにおいてより高い、請求項13に記載のステント送達システム。
【請求項15】
前記オープンセルが前記低多孔性領域によって覆われる面積の比が、前記ステントカバーの半円筒の半分と比較して、前記半円筒の他半分においてより高い、請求項14に記載のステント送達システム。
【請求項16】
前記ステントカバーが、前記円筒状ステント本体の両方の円筒端部から離れて配置される、請求項14に記載のステント送達システム。
【請求項17】
前記低多孔性領域によって覆われた前記オープンセルが、前記円筒状ステント本体の前記円筒端部の少なくとも1つにおいて0である、請求項11に記載のステント送達システム。
【請求項18】
前記円筒状ステント本体が、屈曲部分を介して互いに連結するステントワイヤから構成される、請求項11に記載のステント送達システム。
【請求項19】
前記ステントカバーが、前記円筒状ステント本体を外側から覆う外側カバーと、前記円筒状ステント本体を内側から覆う内側カバーとから構成される、請求項11に記載のステント送達システム。
【請求項20】
前記外側カバーが、前記内側カバーと比較してより高い多孔率を有する、請求項19に記載のステント送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント装置及びステント送達システムに関し、特に、患者の体内に配置された後長期間にわたってステント装置の有効性を維持することに寄与する、多孔性領域及び非多孔性領域を有するステントカバーを有するステント装置に関する。カバーの多孔性領域及び非多孔性領域の計算された配置は、ステント及びステントが配置される患者に好ましい効果の変動を提供する。
【0002】
本出願は、2021年2月25日に出願された米国仮出願第63/153,453号に基づき、その優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
以下の説明では、特定の構造及び/又は方法を参照する。しかしながら、以下の参照は、これらの構造及び/又は方法が先行技術を構成することの承認として解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造及び/又は方法が本発明に対する先行技術として認められないことを実証する権利を明確に留保する。
【0004】
一般に、ステント装置は、病変部位を押し、胆管、食道、腸等の狭窄臓器を広げるように、患者の内臓に埋め込まれる。ステント装置は、カバーが付いていても付いていなくてもよい。一方で、カバーが付いていないステント装置では、管腔細胞がワイヤのメッシュを通ってステント管腔に入るので(「内殖」)、移植後に再狭窄が起こり得る。再狭窄はステント装置を固定し、カバーが付いていないステント装置が移動すること、すなわち患者の体内で位置を変えることを防止するのに役立ち得るが、再狭窄は、ステント本体の内側管腔側への管腔組織の過形成等の望ましくない医学的状態の復帰又は新たな望ましくない医学的状態をもたらし得る。一方、再狭窄に対する対策として、カバー付きステント装置を用いてもよい。しかし、カバー付きステント装置のカバーは再狭窄を防止するが、カバーは内殖も防止し、その結果、カバー付きステント装置は固定されず、移動する。
【0005】
図13は、関連技術で開示されたステント装置(米国特許出願公開第2002/0143384号)の図である。図13は、複数の弾性ワイヤ部材16が接続されて構成された円筒状ステント本体15を示す斜視図であり、ワイヤ16は螺旋状に曲がり、各ワイヤ部材間の隙間によって切欠部が構成されている。
【0006】
図14は、ステントカバー100を含むステント1を開示する同じ関連技術の図であり、ステント本体2の一部がステントカバー100から突出している。ステントカバー100は、多孔性膜端部3と、非多孔性膜中央部5と、多孔性膜端部3と非多孔性膜中央部5とが重なる接合部4とから構成される。
【0007】
図15Aは、図14の線20-20に沿った断面図であり、非多孔性膜中央部5で覆われたステント1のステント本体2の内側面及び外側面を開示している。図15Bは、図14の線30-30に沿った断面図であり、多孔性膜中央部3で覆われたステント1のステント本体2の内側面及び外側面を開示している。多孔性膜端部3は、ステント1の内皮化を促進するための良好な固定材として作用するように意図されている。一方、非多孔性膜中央部5は、透水性が低いため、体管からステント本体の内側管腔側への細胞浸潤を防止することができ、ステント本体の内側管腔側への管腔組織の成長及び過形成、ひいてはステント本体の内側管腔側の閉塞を防止することができる。
【0008】
従来のカバー付きステント装置は、ステント本体の端部に多孔性膜ステントカバーを有するが、そのような従来のカバー付きステント装置は、ステント本体の端部のみが再狭窄のために利用可能であり、ステントの変位等の影響を防止するのに十分ではない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2002/0143384号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、クリップ部と処置具本体との従来の接続構造は、1つ以上の点で不十分である。例えば、従来の接続構造では、クリップ部を回転させる際に、クリップ部を加圧チューブの軸回りに確実に回転移動させるための強度が不足していた。また、例えば、従来の接続構造では、操作ワイヤによってクリップ部が引っ張られたときに、クリップ部が加圧チューブの軸方向に直線移動することを保証するのに十分な強度が不足していた。その結果、結紮の完了に成功する前にクリップ部が処置具本体のフック部から不意に外れる可能性がある。
【0011】
したがって、実際の使用を考慮して、アブレーション処置に使用される処置装置を効率的な構造で設計する必要があり、これにより、関連技術の処置装置の制限及び欠点に起因する1つ以上の問題が実質的に回避されるであろう。本開示の目的は、効率的な構造及び関連する医療処置の実用的な投与を有する改良された治療装置を提供することである。目的の少なくとも1つ又はいくつかは、本明細書中に開示される治療装置によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示されるステント装置の実施形態は、円筒状ステント本体を形成する1本以上のステントワイヤを含み、円筒状ステント本体は内部空隙空間を囲み、ステント本体の内側管腔側を画定し、ステントカバーが円筒状ステント本体を覆う。円筒状ステント本体の1本以上のステントワイヤは、複数のオープンセルを形成し、各オープンセルは、ステントワイヤによって画定され、且つセル空隙空間を囲む周縁を含む。ステントカバーは、1つ以上の低多孔性領域と1つ以上の高多孔性領域とを含み、ステントカバーの低多孔性領域は、オープンセルの位置に対応し、高多孔性領域は、1本以上のステントワイヤの位置に対応する。
【0013】
開示されるステント装置の実施形態において、オープンセルが低多孔性領域によって覆われない場合がある領域は、高多孔性領域によって覆われる。
【0014】
開示されるステント装置の実施形態において、各オープンセルの低多孔性領域によって覆われる面積の比は、少なくとも1組のオープンセルについて異なり得る。
【0015】
開示されるステント装置の実施形態において、円筒状ステント本体の中央に位置するオープンセルが低多孔性領域によって覆われる面積の比は、低多孔性領域によって覆われ、且つステントカバーの円筒端部に位置するオープンセルの面積と比較して、円筒中央に位置するオープンセルにおいてより高くてもよい。
【0016】
開示されるステント装置の実施形態において、オープンセルが低多孔性領域によって覆われる面積の比は、ステントカバーの半円筒の半分と比較して、半円筒の他半分においてより高くてもよい。
【0017】
開示されるステント装置の実施形態において、ステントカバーは、円筒状ステント本体の両方の円筒端部から離れて配置される場合がある。
【0018】
開示されるステント装置の実施形態において、オープンセルが低多孔性領域によって覆われている領域は、円筒状ステント本体の円筒端部の少なくとも1つにおいて0である。
【0019】
開示されるステント装置の実施形態において、円筒状ステント本体は、屈曲部分を介して互いに連結するステントワイヤから構成され得る。
【0020】
開示されるステント装置の実施形態において、ステントカバーは、円筒状ステント本体を外側から覆う外側カバーと、円筒状ステント本体を内側から覆う内側カバーとから構成されてもよい。
【0021】
開示されるステント装置の実施形態において、外側カバーは、内側カバーと比較してより高い多孔率を有し得る。
【発明の効果】
【0022】
したがって、本開示は、従来の内視鏡処置装置及びクリップ部に見られる制限及び欠点に起因する1つ以上の問題を実質的に排除する、内視鏡処置装置及びクリップ部に関する。
【0023】
一般に、開示される構造及びシステムは、上記及び関連技術に関連して論じられたステント移動及び内殖等の問題を効率的に抑制するステント及びステントカバーを提供する。このような問題に対処するために、ステントワイヤを覆うより高い多孔率を有するステントカバーと、ステントのステントオープンセル部分を覆うより低い多孔率を有する(多孔性がなくてもよい)ステントカバーとを備える構造が開示される。ステントワイヤ付近のより高い多孔率を有するステントカバーは、管腔組織がステントカバー内に侵入し、ステントワイヤと会合することを可能にし、ステント移動の防止に役立つ内皮化をもたらす。ステントセルを覆うより低い多孔率を有するステントカバーは、内殖を防止し、その結果、ステント装置の内側管腔の目詰まりを防止する。ステントカバーの多孔率は、ステント装置に沿った長手方向位置の関数としての多孔度の連続的及び非連続的な勾配、又はステント装置に沿った長手方向位置に配置された異なる多孔度のパターンを含む、管腔の状態及び他の患者のニーズによって引き起こされるニーズに合わせて調整するために様々な方法で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ステント装置を含むステント送達システムの実施形態を示す図である。
図2A】折り畳んだ状態のステント本体の模式図である。
図2B】拡張状態のステント本体の模式図である。
図3】ステント本体の例示的な実施形態におけるステントワイヤの拡大図である。
図4】ステント本体の例示的な実施形態におけるステントワイヤの拡大図である。
図5A】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率の領域を有するステントカバーの実施形態を含むステント装置の模式図である。
図5B】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率の領域を有するステントカバーの実施形態を含むステント装置の模式図である。
図5C】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率の領域を有するステントカバーの実施形態を含むステント装置の模式図である。
図6A】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率の領域を有するステントカバーの実施形態を含むステント装置の模式図である。
図6B】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率の領域を有するステントカバーの実施形態を含むステント装置の模式図である。
図7A】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率を有する部分を有するステントカバーの他の実施形態を含むステント装置の模式図である。
図7B】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率を有する部分を有するステントカバーの他の実施形態を含むステント装置の模式図である。
図7C】ステント本体の異なる位置に異なる多孔率を有する部分を有するステントカバーの他の実施形態を含むステント装置の模式図である。
図8A】ステントワイヤ及びステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図8B】ステントワイヤ及びステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図8C】ステントワイヤ及びステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図8D】ステントワイヤ及びステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図9A】ステントワイヤ及び複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図9B】ステントワイヤ及び複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図9C】ステントワイヤ及び複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図9D】ステントワイヤ及び複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図10A】ステントワイヤ及びステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図10B】ステントワイヤ及びステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図11A】ステントワイヤ及び複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図11B】ステントワイヤ及び複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図12A】ステントワイヤ及び異なる多孔率を有する複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図12B】ステントワイヤ及び異なる多孔率を有する複数のステントカバーの構造の実施形態を示す模式図である。
図13】関連技術のステント装置を示す図である。
図14】関連技術のステント装置を示す図である。
図15A図14に示す関連技術のステント装置の断面図である。
図15B図14に示す関連技術のステント装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される「患者」という用語は、ありとあらゆる生物を含み、「対象」という用語を含む。患者は、ヒト又は動物であり得る。
【0026】
追加の特徴及び利点は、以下の説明に記載され、その説明から部分的に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得され得る。開示されるステント装置の目的及び他の利点は、本明細書及びその特許請求の範囲、並びに添付の図面において特に指摘される構造によって実現及び達成されるであろう。
【0027】
他のシステム、方法、特徴及び利点は、以下の図及び詳細な説明を検討すると当業者に明らかであるか、又は明らかになるであろう。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴及び利点は、この説明内に含まれ、本開示の範囲内にあり、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。この項のいかなる内容も、それらの特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。さらなる態様及び利点は、開示された入力装置の実施形態に関連して以下に説明される。開示された入力装置の前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例及び説明であり、特許請求される開示されたステント装置のさらなる説明を提供することを意図していることが理解されるべきである。
【0028】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、同様の符号が同様の要素を示す添付の図面と関連して読むことができる。
【0029】
全ての図面を通して、各構成要素の寸法は、明瞭にするために適宜調整されている。見やすさのために、いくつかの例では、図中の名称付きの特徴の一部のみに参照番号が付されている。
【0030】
したがって、実際の使用を考慮して効率的な構造を有するステント装置を設計することが必要とされており、これにより、関連技術のステント装置の制限及び欠点に起因する1つ以上の問題が実質的に回避されるであろう。本開示の目的は、効率的な構造及び関連する医療処置の実用的な投与を有する改良されたステント装置を提供することである。さらに、ステント装置が処置部分において狭窄した器官を広げるというその目的を果たすことを可能にしながら、再狭窄及び移動のリスクをバランスさせる改善されたカバー付きステント装置が必要とされている。目的の少なくとも1つ又はいくつかは、本明細書中に開示されるステント装置によって達成される。
【0031】
例えば、開示されるステント装置は、ステント装置のための固定部位としての役割を果たす内皮化を促進するためにステント本体の全体にわたって多孔性膜部分を有するステントカバーを含む。一態様において、本開示のカバー付きステント装置のステントカバーは、内皮化に対する異なる親和性の第1の領域及び第2の領域を組み込んだ膜である。例えば、膜の第1の領域は非多孔性であり(又は多孔性が低く)、管腔組織の成長及び過形成を最小限に抑え且つ/又は防止し、管腔組織がステント本体の内側管腔側に突出し、例えばステント装置の目詰まりを引き起こすことを防止するために、ステント装置を領域において覆い、一方で、膜の第2の領域は、固定のために十分な再狭窄を促進するために、且つ、移動を防止するために多孔性である。いくつかの態様では、多孔性膜の第2の領域は、ステント本体のワイヤ構造の場所に対応し、非多孔性膜の第1の領域は、ワイヤ構造間の空隙空間、例えばステント本体の周面のオープンセル部分の場所に対応し、各オープンセルは、ステント本体のワイヤ構造のワイヤによって画定される周囲を有する。このように、内皮化は、ワイヤ構造が存在しない場所で内皮化が最小化及び/又は防止される一方で固定が確立され得るワイヤ構造の場所に向けられ、内皮化は、ステント本体の内側管腔側への組織侵入をもたらすが、さもなければステント装置の固定には最小限しか寄与しないか、又は寄与しない。
【0032】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面に関連して読むことができ、図面において、同様の符号は同様の要素を示し、図1は、ステント装置送達システム101の図である。ステント送達システム101は、先端部分102と、ステント装置104と、シース106と、二ポートハブ108と、サイドポート110と、回転可能なハンドルロック112と、内側ハンドル114とを含む。シース106は、内側シースと外側シースとの二層構造を有する。シース106は、先端部分102において二層の間に保持された縮径されたステント装置104を有する。先端部分102は、内側シース及び内側ハンドル114に接続されている。外側シースは、二ポートハブ108及び回転可能なハンドルロック112に接続される。ステント送達システム101が先端部分102及びステント装置104を所望の位置に配置した後、内側ハンドル110を固定し、回転可能なハンドルロック112を送達システム101の近位側に向かって引っ張ることによって、先端部分102における外側シースが近位側に向かってスライドし、ステント装置104を縮径から設計直径まで自己拡張させる。外側シースがステント装置104の全長をスライドし終えた後、送達システム101及びステント装置104は分離され、ステント装置104は患者の体内に埋め込まれたままになる。
【0033】
ステント送達システム101のみを使用してステント装置104を患者の体内に埋め込み狭窄部を開く処置(例えば、血管ステント、及び循環ステント等)及び内視鏡の使用と組み合わされる処置が存在する。胆管ステントを埋め込む場合、内視鏡を口から挿入し、十二指腸に進める。次いで、ステント送達システム101は、内視鏡の鉗子チャネルを通り、十二指腸乳頭を通って胆管内に挿入される。最後に、ステント装置104が、内視鏡からの視覚的給送からのサポートとともに胆管狭窄に配置される。
【0034】
図2Aは、収縮状態のステント装置104の図である。ステント装置104は、ステント装置104の送達が患者の血管及び他の狭い空間を通じて行われるように、収縮状態でステント送達システム101に挿入される。図2Bに開示されるように、ステント装置104が処置部分に到達し、ステント送達システム101から押し出された後、ステント装置104は、処置部分に対して処置を行うために設計されるサイズに拡張する。
【0035】
図3は、ステント装置104を形成するステントワイヤのパターンを示す。ステントワイヤは、円筒状ステント本体1041(以下、「ステント本体」という)を形成する。ステント本体1041は、内部空隙空間を含む。ステント本体は、ステント本体1041の内側管腔側を画定する。図3に開示されるように、ステント装置104のステントワイヤは、互いに交互に交差し、ステントセル302(オープンセル)等のステントワイヤによって囲まれたセルを形成する。ステントワイヤの交互の状態は、ステントワイヤ304,306,308及び310を注意深く見ることによって見ることができる。ステントワイヤ304は、ステントワイヤ306がステントワイヤ304の下に潜り込む交差部312でステントワイヤ306と交差する。そして、ステントワイヤ304は、ステントワイヤ304がステントワイヤ308を乗り越える交差部314でステントワイヤ308と交差し、次の交差部316で再びステントワイヤ310の下に潜り込む。このように、ステントワイヤ304は、他のステントワイヤと交互に交差する。ステントワイヤは、ステントセル302の外周を画定する。
【0036】
図4は、ステント装置104を形成するステントワイヤの別のパターンを示す。図3と同様に、ステント装置104のステントワイヤは、互いに交互に交差し、ステントセル402(オープンセル)等のステントワイヤによって囲まれたセルを形成する。図4に開示される交互の状態は、図3のステントと比較してより複雑である。例えば、ステントワイヤ404及び406は、交差部408において交互に曲げられて交差する。ステントワイヤ404及び410等の屈曲したステントワイヤは、連結式ステントセル414を形成する連結式交差部412を形成する。
【0037】
図5Aは、ステント本体1041の全体を覆うステントカバーを有するステント装置104の図である。ステント装置104のステントワイヤ(例えば、ステントワイヤ502)は、他のステントワイヤと交差して、ステントワイヤによって囲まれた多数のステントセル(オープンセル)を形成する。ステント装置104を覆うステントカバーは、ワイヤ被覆部(例えば、図5Aに示す参照符号504)とセル被覆部(例えば、図5Aの符号506)の2つの部分を含み、ワイヤ被覆部504とセル被覆部506との多孔率は異なっていてもよい。
【0038】
例えば、ワイヤ被覆部504の多孔率が高い(すなわち、細孔が多い)と、ステントワイヤ付近の細孔は、ステントの内側管腔側への管腔組織の成長及び過形成を可能にし、ステントワイヤとそれ自体を会合させることになり、それにより、ワイヤ被覆部502が存在するステント104の本体全体にわたる内皮化を促進するための良好な固定を提供する。一方、セル被覆部506の多孔率が低い(すなわち、細孔が少ない)と、透水性が低く、体管からステントの内側管腔側への細胞浸潤が抑制され、それにより、ステント本体のセル部分への管腔組織の成長や過形成が抑制される。セル被覆部506と比較してワイヤ被覆部504の多孔率が低い反対の構造も、内皮化を促進する目的及びステント装置104の細胞浸潤の防止の目的に役立ち得るが、侵入する管腔組織がステントワイヤ502と会合し得ないので、あまり効果的ではない場合があり、この会合は、ステント装置104の内皮化を強化するように働く。
【0039】
管腔細胞がステント装置の内側管腔に入るのを防ぐために、セル被覆部の孔径は6μm未満であり得る。ワイヤ被覆部の孔径は、6μm以上25μm以下であってもよい。ステントカバーの材料には生体適合性を有する任意の材料が適しており、例えば、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びテトラフルオロエチレンビニルエーテル共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0040】
多孔性の作製方法の一例としては、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等に造孔剤を混合し、成形後に溶剤で造孔剤を除去することにより抽出するか、又は発泡剤を混合して細孔を形成する。成形方法を使用することもできる。多孔性は、造孔剤及び発泡剤を制御することにより制御することができる。さらに、PTFE材料を延伸して多孔性構造、いわゆるePTFEを形成することができる。このePTFE材料の多孔性は、延伸方向や延伸量を調整することで自由に変更することができる。例えば、一方向に延伸されたもの、縦横に延伸された二軸延伸されたもの等、好適な特性を有する多孔性材料を得ることができる。
【0041】
ステントカバーの厚みは、内殖に耐え、ステント装置の柔軟性を維持する目的で、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm~10μmである。
【0042】
図5Bは、ステント本体の全体を覆うステントカバーを有するステント装置104の別の図である。図5Aと同様に、ワイヤ被覆部504とセル被覆部506は、多孔率が異なってもよい。ワイヤ被覆部504の多孔率がより高い場合、ステントワイヤ付近の細孔は内皮化を促進し、セル被覆部506のより低い多孔率は、ステント本体のセル部分への管腔組織の侵入によって引き起こされるステント本体の内側管腔部分における目詰まりのリスクをより少なくする。ワイヤ被覆部504及びセル被覆部506の面積は、ワイヤ及びセルの位置に応じて異なる。ワイヤ被覆部504の面積は、ステントカバーの中央で小さく、ステントカバーの縁に近づくにつれて大きくなる。逆に、セル被覆部506の面積は、ステントカバーの中央で大きく、ステントカバーの縁に近づくにつれて大きくなる。
【0043】
図5Cは、ワイヤ被覆部504及びセル被覆部506の面積の変化を有するステント本体の全体を覆うステントカバーを有するステント装置104の別の図である。図5Cでは、ステントカバーの縁付近にセル被覆部506が存在せず、セル全体がワイヤ被覆部504によって被覆されている。この構成及び図5Bにおける構成は、ステント装置104が患者の身体の狭窄部508内に配置され、管腔組織が集中しやすい処置部510(例えば、癌)の焦点の位置にステント装置104の中央部分を割り当てることを目的としているという事実によって好ましい。多孔率がより低いセル被覆部506をステント装置104の中央部に配置することにより、ステント装置の内側管腔の内殖及び目詰まりのリスクが防止される。一方、ステント装置104の縁部に位置するワイヤ被覆部504は、ステント装置104の移動を防止する内皮化を促進する。
【0044】
図6Aは、ワイヤ被覆部504及びセル被覆部506の面積の変化を有するステント本体の全体を覆うステントカバーを有するステント装置104の別の図である。図5Cに開示される実施形態と同様に、ステントカバーの中央部分602は、隣接する縁部分604と比較して比較的低い多孔率を有する。比較的高い多孔率を有する縁部分604は、内皮化を促進するより高い多孔率を使用してステント装置104を適所に保持するためのアンカーとしての役割を果たす。中央部分602は、ステント装置の目詰まりを引き起こし得る、ステント本体の内側への管腔組織の侵入を防止するように働く。医療従事者は、管腔組織が集中している可能性が高い処置部の焦点にステント装置の中央部分602を直接配置することを目指すことになるため、この構成は有効である。
【0045】
図6Bは、ワイヤ被覆部504及びセル被覆部506の面積の変化を有するステント本体の全体を覆うステントカバーを有するステント装置104の別の図である。ステントカバーの中央部分606は、ステント装置104の中央部分の上半体を覆う半円筒状である。ステントカバーの残りの部分608は、ステント装置104の中央部分の下半体と、ステント装置104の縁部分を含む領域とを覆っている。図6Aのように、中央部分606は、内殖を防止するために比較的低い多孔率を有し、残りの部分608は、ステント装置104の移動を防止するために比較的高い多孔率を有する。
【0046】
図7Aは、位置に基づいて変化する多孔率を有するステントカバー700の図である。図6Aに開示される実施形態と同様に、ステントカバー700の中央部分702は、隣接する中間部分704と比較して低い多孔率を有し、中間部分704は、隣接する縁部分706と比較してさらに低い多孔率を有する。縁部分706は、内皮化を促進する高い多孔率を使用してステント装置104を定位置に保持するためのアンカーとしての役割を果たす。中央部分702は、ステント装置の目詰まりを引き起こし得る内殖を防止するように働く。医療従事者は、管腔組織が集中している可能性が高い処置部(例えば、癌)の焦点にステント装置の中央部分702を直接配置することを目指すことになるため、この構成は有効である。
【0047】
図7Bは、異なる多孔率を有するステントカバー700の別の図である。ステントカバー700の中央部分702は、隣接する中間部分704と比較して低い多孔率を有し、ステントカバー700は、ステント装置104の縁の手前で終わる。ステントカバー700を欠く領域(すなわち、領域708)は、管腔組織がステント装置104内を自由に侵入してステントワイヤと会合することを可能にして内皮化を促進することによって、ステント装置104を患者の治療部分内の所定の位置に保持するためのさらに強いアンカーとして機能する。
【0048】
図7Cは、異なる多孔率を有するステントカバー700の別の図である。ステントカバー700の中央部分702は、ステントカバー700の残りの部分(すなわち710)と比較して低い多孔率を有する。中央部分702は、被覆しようとする管腔組織に従って領域の位置及びサイズを最適化するように設計されてもよい。低い多孔率を有するステントカバー部分を管腔組織の正確な位置に割り当てることを目的とすることによって、ステント装置104の細胞浸潤の防止を最小限に抑えることができ、より高い多孔率を有するステントカバー部分を、管腔組織の集中が少ない処置部分内の領域を覆うように最適化することによって、ステント装置104の内皮化を最大限にすることができる。
【0049】
図8Aは、位置に基づいて変化する多孔率の別のパターンを有するステント装置104の図である。ステントカバー700の中央部は、図6Bに開示された実施形態と同様に、ステント装置104の上側にセル被覆部506が集中し、残りの部分はワイヤ被覆部504から構成される。図8Bは、高多孔性領域804と低多孔性領域802との関係を示す。高多孔性領域804は主にセル被覆部506からなり、低多孔性領域802は全体的にワイヤ被覆部504からなる。
【0050】
図8Cは、位置に基づいて変化する多孔率の別のパターンを有するステント装置104の図である。ステントカバー700の中央部は、図8Aに開示された実施形態と同様に、ステント装置104の上側にセル被覆部506が集中し、残りの部分はワイヤ被覆部504から構成される。ステントカバー700の中央部分では、セル被覆部506が様々な集中を有し、各セルを被覆する面積は、ステント装置104の中央に向かって大きくなる。図8Dは、高多孔性領域806、中間多孔性領域804及び低多孔性領域802の関係を示す。高多孔性領域806は主にセル被覆部506からなり、中間多孔性領域804はより小さい面積のセル被覆部506からなり、低多孔性領域802は全体がワイヤ被覆部504からなる。
【0051】
図9Aは、様々な多孔率を有するステントカバー700のセルの図である。ダイヤモンド状の中央部分902は、多孔率が高い残りの部分904と比較して、多孔率が低い。図9Bも、残りの部分904と比較して多孔率が低いダイヤモンド状の中央部分902と、多孔率が中央部分902より高く、残りの部分904より低い、中間の多孔率部分906を開示する。
【0052】
図9Cは、様々な多孔率を有するステントカバー700のセルの図である。円形状の中央部分902は、多孔率が高い残りの部分904と比較して、多孔率が低い。図9Dも、残りの部分904と比較して多孔率が低い円形状の中央部分902と、多孔率が中央部分902より高く、残りの部分904より低い、中間の多孔率部分906を開示する。
【0053】
様々な多孔率を有するステントカバーは、以下の方法によって製造することができる。図9A図9Cに示す部分902の多孔率を小さくしたい箇所に接着剤を塗布し、接着剤を多孔部に含浸させることで、カバーを接合すると同時に、多孔率の低い材料を接着剤で接合することができる。また、図9B及び図9Dに示すように多孔率を段階的に変化させる場合、各部分902,904,906は、熱圧着等の接合方法によって製造することができる。ePTFE材料は、融点温度以上で圧着することにより接合することができ、接合部の押圧力を変化させることにより、図9B及び図9Dに示すように、延伸された細孔構造の潰れ具合が変化し、多孔率が変化する。
【0054】
図10Aは、ステントワイヤ502とステントカバー700との構造的関係の一実施形態を開示する図である。図10Aに開示されるように、ステントカバー700は、外側管腔1004で(すなわち、ステント装置104の外側から)ステント装置104のステントワイヤ502を覆う。これに対して、図10Bに開示される実施形態は、内側管腔1002で(すなわち、ステント装置104内から)ステント装置104のワイヤ502を覆うステントカバー700を示す。
【0055】
図11Aは、ステント装置104のワイヤと複数のステントカバーとの構造的関係の一実施形態を開示する図である。ステントカバー1102は、外側管腔1004でステント装置104のワイヤ502を覆う。さらに、ステントカバー1104は、内側管腔1002でステント装置のワイヤ502を覆い、間隙1106を形成する。
【0056】
図11Bは、ステント装置104のワイヤと複数のステントカバーとの構造的関係の一実施形態を開示する別の図である。図11Aに開示されるように、ステントカバー1102は、外側管腔1004でステント装置104のワイヤ502を覆い、ステントカバー1104は、内側管腔1002でワイヤ502を覆う。図11Aと違って、ワイヤ502が存在しない箇所では、ステントカバー1102とステントカバー1104は互いに密着する。密着部分1108の多孔率は、互いの細孔を打ち消すステントカバーの重なり合いに起因して、個々のステントカバー1102及び1104よりも低くなるであろう。したがって、密着部分1108の多孔率は、ワイヤ502を覆うステントカバー、すなわち外側管腔1004のステントカバー1102及び内側管腔1002のステントカバー1104と比較して低くなるであろう。さらに、図11Bの構造は、ワイヤとカバーが直接固定されないので、ステントが柔軟に曲がることを可能にする。したがって、ステント装置104を生体管腔に湾曲した状態で埋め込む際に、生体管腔への負荷を軽減することができる。
【0057】
図12Aは、ステント装置104のワイヤと複数のステントカバーとの構造的関係の別の実施形態を開示する図である。ステントカバー1102は、外側管腔1004でワイヤ502を覆い、ステントカバー1104は、内側管腔1002でワイヤ502を覆い、間隙1106を形成する。ステントカバー1102とステントカバー1104の多孔率は異なってもよい。例えば、ステントカバー1102は、ステントカバー1104と比較してより高い多孔性を有することができ、それにより、管腔組織がステントカバー1102内及び間隙1106内に侵入しやすくなり、それ自体がステントワイヤ502と会合して内皮化をもたらす。一方、侵入は、より低い多孔率を有するステントカバー1104で止まり、その結果、内側管腔1002は、目詰まりに関連する問題の影響を受けにくくなる。
【0058】
図12Bは、ステント装置104のワイヤと複数のステントカバーとの構造的関係の一実施形態を開示する別の図である。図12Aに開示されるように、ステントカバー1102は、外側管腔1004でステントワイヤ502を覆い、ステントカバー1104は、内側管腔1002でステントワイヤ502を覆う。図12Aと違って、ステントカバー1102及び1104は、ステントワイヤ502が存在しない箇所で互いに密着し、内側管腔1002への管腔組織の侵入を効果的に防止する、より低い多孔率を有する密着部分1108を形成する。
【0059】
ステントカバー1102とステントカバー1104の多孔率は異なってもよい。例えば、ステントカバー1102は、ステントカバー1104と比較してより高い多孔性を有することができ、管腔組織がステントカバー1102内に侵入してステントワイヤ502と会合することを容易にし、内皮化を効果的に促進する。一方、両ステントカバーの重なりに起因する多孔率の低下に加えて、ステントカバー1104の多孔率が低いことに起因して、密着部分1108で侵入が止まることになる。侵入は、ステントワイヤ502の近くを覆うステントカバー1104でも止まり、その結果、内側管腔1002は、ステントカバー1104がステントカバー1102と同じ多孔率を有する場合と比較して、管腔組織の侵入による影響を受けにくくなる。
【0060】
ステント装置104の製造方法は、(i)NiTi合金(超弾性合金)からなるワイヤを編んでステントを形成する工程と、(ii)二軸延伸PTFE(細孔径:10μm、厚み:40μm)を円筒状芯材の外表面に巻き付け、ステント装置を円筒状芯材の上に被せた後、二軸延伸PTFE(細孔径:10μm、厚み:40μm)をステント装置の周囲に巻き付ける工程と、(iii)350℃程度に調整された半田鏝を用いて、ステント装置のメッシュ(セル)の中央部に半田鏝を押し当てて、PTFEをステント装置の外面及び内面に融着して固定する工程と、(iv)ステント装置を円筒状芯材から取り外す工程と、を含む。半田鏝が適用されるセルの面積は、ステント装置の中央に位置するセルに向かって大きく、ステント装置の両端に向かって小さくなければならない。
【0061】
上記の製造方法は、両面又は2層のカバー付きステントに限定されず、ステントカバーが接着、紐又はワイヤによってステント装置に固定されることを条件として、ステント装置の外面又は内面のいずれかにおいて1つのステントカバーのみでステントを被覆するために使用することもできる。半田鏝を用いて多孔率を任意に低下させることができるため、カバー付きステントの設計及び目的に応じて、カバー付きステントの各セルの多孔率を変更してもよい。
【0062】
上記の製造方法は、ステントを両面で覆うことに限定されず、ステントへの固定を接着、紐、ワイヤで行う限り、ステント管腔面のみ、又は外周面のみのカバーステントにも用いることができ、多孔率は小さくすることができ、多孔率を変化させてステントを覆うことができる。
【0063】
本発明をその好ましい実施形態に関連して説明したが、具体的に説明されていない追加、削除、修正、及び置換は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができることが当業者には理解されよう。
【0064】
開示されるステント装置の実施形態は、低多孔性領域によって覆われているオープンセルが円形形状を有する領域をさらに含む。
【0065】
開示されるステント装置の実施形態は、先端部と、ステント装置と、ステント装置を層間で運ぶ二重層シースと、シースからステント装置を取り外すためのハンドルとを備えるステント送達システムをさらに含む。ステント装置は、内部空隙空間を囲み、ステント本体の内側管腔側を画定し、且つステントカバーによって覆われる円筒状ステント本体を形成する、1本以上のステントワイヤを有する。円筒状ステント本体の1本以上のステントワイヤは、複数のオープンセルを形成し、各オープンセルは、ステントワイヤによって画定され、且つセル空隙空間を囲む周縁を含む。ステントカバーは、1つ以上の低多孔性領域と1つ以上の高多孔性領域とを含み、ステントカバーの低多孔性領域は、オープンセルの位置に対応し、高多孔性領域は、1本以上のステントワイヤの位置に対応する。
【0066】
開示されるステント装置の実施形態は、オープンセルが低多孔性領域によって覆われない領域が、高多孔性領域によって覆われることをさらに含む。
【0067】
開示されるステント装置の実施形態は、オープンセルが低多孔性領域によって覆われる面積の比が、少なくとも1組のオープンセルについて異なることをさらに含む。
【0068】
開示されるステント装置の実施形態は、低多孔性領域によって覆われているオープンセルの面積の比が、ステントカバーの円筒端部に位置するオープンセルと比較して、円筒中央に位置するオープンセルにおいてより高いことをさらに含む。
【0069】
開示されるステント装置の実施形態は、オープンセルが低多孔性領域によって覆われる面積の比が、ステントカバーの半円筒の半分と比較して、半円筒の他半分においてより高いことをさらに含む。
【0070】
開示されるステント装置の実施形態は、ステントカバーが円筒状ステント本体の両方の円筒端部に到達しないことをさらに含む。
【0071】
開示されるステント装置の実施形態は、低多孔性領域によって覆われているオープンセルの面積の比が、円筒端部に位置するオープンセルに関して0であることをさらに含む。
【0072】
開示されるステント装置の実施形態は、低多孔性領域によって覆われているオープンセルが円形形状を有する領域をさらに含む。
【0073】
開示されるステント装置の実施形態は、円筒状ステント本体が、屈曲部分を介して互いに連結するステントワイヤから構成されることをさらに含む。
【0074】
開示されるステント装置の実施形態は、ステントカバーが、円筒状ステント本体を外側から覆う外側カバーと、円筒状ステント本体を内側から覆う内側カバーとから構成されることをさらに含む。
【0075】
開示されるステント装置の実施形態は、外側カバーが、内側カバーと比較してより高い多孔率を有することをさらに含む。
【符号の説明】
【0076】
104 ステント装置
302,402 ステントセル(オープンセル)
700 ステントカバー
1041 円筒状ステント本体
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B