(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】繊維用サイジング剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
D06M 13/352 20060101AFI20240611BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20240611BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20240611BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20240611BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20240611BHJP
D06M 101/40 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
D06M13/352
C08J5/06
D06M15/55
D06M15/564
D06M15/693
D06M101:40
(21)【出願番号】P 2024515326
(86)(22)【出願日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2023040745
【審査請求日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2022199048
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌彦
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0058698(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0299852(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108821610(CN,A)
【文献】特開2017-106148(JP,A)
【文献】特開昭57-165238(JP,A)
【文献】特開2011-99167(JP,A)
【文献】特開昭53-115000(JP,A)
【文献】国際公開第98/38540(WO,A1)
【文献】特開2020-070517(JP,A)
【文献】特開2016-102275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
C08J5/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(A)及び硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)を含有し、前記化合物(A)が、
下記熱硬化性樹脂(A1)、
下記熱可塑性樹脂(A2)及びゴム(A3)から選ばれる少なくとも1種である、
炭素繊維用サイジング剤。
熱硬化性樹脂(A1):エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種
熱可塑性樹脂(A2):ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種
【請求項2】
前記化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の
炭素繊維用サイジング剤。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基又は水素原子であり、X及びYは独立して水素原子又はハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、R
2は、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子である。)
【請求項3】
前記繊維用サイジング剤の不揮発分に占める前記化合物(B)の重量割合が、5ppm~10000ppmである、請求項1又は2に記載の
炭素繊維用サイジング剤。
【請求項4】
親水性溶媒(D)をさらに含有し、前記親水性溶媒(D)が下記一般式(4)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の炭素繊維用サイジング剤。
【化3】
(式(4)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が芳香族エポキシ樹脂であり、前記ビニルエステル樹脂がオキシアルキレン基及びアリール基から選ばれる少なくとも1種を有し、前記不飽和ポリエステル樹脂が芳香族系不飽和ポリエステル樹脂であり、前記飽和ポリエステル樹脂が芳香族ポリエステル樹脂である、請求項1又は2に記載の炭素繊維用サイジング剤。
【請求項6】
界面活性剤(C)をさらに含有し、前記繊維用サイジング剤の不揮発分に占める、前記界面活性剤(C)の重量割合が1重量%~50重量%である、請求項
1又は2に記載の
炭素繊維用サイジング剤。
【請求項7】
前記繊維用サイジング剤の不揮発分に占める、前記化合物(A)の重量割合が20重量%~99重量%である、請求項1
又は2に記載の
炭素繊維用サイジング剤。
【請求項8】
請求項1
又は2に記載の繊維用サイジング剤を
炭素繊維に付着させる工程を含む、サイジング剤付着
炭素繊維の製造方法。
【請求項9】
繊維ストランドに対して、請求項1
又は2に記載の
炭素繊維用サイジング剤を付着させた、サイジング剤付着
炭素繊維ストランド。
【請求項10】
マトリックス樹脂と、請求項9に記載のサイジング剤付着
炭素繊維ストランドとを含む、
炭素繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用サイジング剤及びその用途に関する。詳細には、繊維用サイジング剤、サイジング剤付着繊維の製造方法、サイジング剤付着繊維ストランド及び繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用途、航空・宇宙用途、スポーツ・レジャー用途、一般産業用途等に、プラスチック材料(マトリックス樹脂と称される)を各種合成繊維で補強した繊維強化複合材料が幅広く利用されている。これらの複合材料に使用される繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維などの各種有機繊維が挙げられる。これら各種合成繊維は通常、フィラメント形状で製造され、その後ホットメルト法やドラムワインディング法等により一方向プリプレグと呼ばれるシート状の中間材料に加工されたり、フィラメントワインディング法によって加工されたり、場合によっては織物又はチョップドファイバー形状に加工されたりする等、各種高次加工工程を経て、例えば強化繊維として使用されている。
【0003】
繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等が広く使用されている。
繊維強化複合材料の機械強度を向上させるためには、マトリックス樹脂と繊維の接着性が重要となり、上記の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂に対して、繊維の接着性が向上するサイジング剤(例えば、特許文献1、2等)が提案されている。
【0004】
しかし、従来のサイジング剤の適用では、マトリックス樹脂と繊維との接着性が不十分であり、得られる複合材料の特性が満足され得るレベルに達しない場合があり、繊維に対して、マトリックス樹脂との優れた接着性を付与できるサイジング剤が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開昭53-52796号公報
【文献】日本国特開平06-173170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、マトリックス樹脂を補強するために用いられる繊維ストランドに対して、マトリックス樹脂との優れた接着性を付与することができる繊維用サイジング剤と、それを用いた繊維ストランド、及び繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の化合物(A)及び特定の化合物(B)を含む繊維用サイジング剤であれば、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の繊維用サイジング剤は以下の実施態様が含まれる。
<1> 化合物(A)及び硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)を含有し、前記化合物(A)が、熱硬化性樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)及びゴム(A3)から選ばれる少なくとも1種である、繊維用サイジング剤。
<2> 前記化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>に記載の繊維用サイジング剤。
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基又は水素原子であり、X及びYは独立して水素原子又はハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、R
2は、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子である。)
<3> 前記繊維用サイジング剤の不揮発分に占める前記化合物(B)の重量割合が、5ppm~10000ppmである、<1>又は<2>に記載の繊維用サイジング剤。
<4> 前記熱硬化性樹脂(A1)が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記熱可塑性樹脂(A2)が、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ゴム(A3)が、シリコーンゴム及びジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種である、<1>~<3>のいずれかに記載の繊維用サイジング剤。
<5> 界面活性剤(C)をさらに含有する<1>~<4>のいずれかに記載の繊維用サイジング剤。
<6> 前記繊維用サイジング剤の不揮発分に占める前記界面活性剤(C)の重量割合が1重量%~50重量%である、<5>に記載の繊維用サイジング剤。
<7> 前記繊維用サイジング剤の不揮発分に占める、前記化合物(A)の重量割合が50重量%~99重量%である、<1>~<6>のいずれかに記載の繊維用サイジング剤。
<8> <1>~<7>のいずれかに記載の繊維用サイジング剤を繊維に付着させる工程を含む、サイジング剤付着繊維の製造方法。
<9> 繊維ストランドに対して、<1>~<7>のいずれかに記載の繊維用サイジング剤を付着させた、サイジング剤付着繊維ストランド。
<10> マトリックス樹脂と、<9>に記載のサイジング剤付着繊維ストランドとを含む、繊維強化複合材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維用サイジング剤は、繊維に対してマトリックス樹脂との優れた接着性を付与することができる。本発明の繊維ストランドは、マトリックス樹脂との接着性に優れる。本発明の繊維ストランドを使用することにより、優れた物性を有する繊維強化複合材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維用サイジング剤の各成分について詳細に説明する。
〔化合物(A)〕
本発明の繊維用サイジング剤は、化合物(A)を含む。化合物(A)は、熱硬化性樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)及びゴム(A3)から選ばれる少なくとも1種である。化合物(A)は、1種でもよく2種以上を併用しても良い。
本発明の繊維用サイジング剤が熱硬化性樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)及びゴム(A3)から選ばれる少なくとも1種を含むことでマトリックス樹脂の接着性が向上する要因は、化合物(A)が繊維表面を均一に覆うことで繊維表面全体に適度な極性を付与させ、マトリックス樹脂との親和性を向上させているためと考えている。
繊維強化複合材料のマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、化合物(A)が熱硬化性樹脂(A1)を含むとマトリックス樹脂の接着性がより向上する点で好ましく、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、化合物(A)が熱可塑性樹脂(A2)を含むとマトリックス樹脂の接着性がより向上する点で好ましい。
【0010】
熱硬化性樹脂(A1)としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びフェノール樹脂等が挙げられ、これらの中でもエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エポキシ樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であると本願効果をより奏する点でより好ましい。これらの樹脂は1種でもよく2種以上を併用しても良い。これら熱硬化性樹脂(A1)としては公知のものを使用できる。
【0011】
熱可塑性樹脂(A2)としては、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、芳香族系ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、飽和ポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種が本願効果をより奏する点でさらに好ましい。これらの樹脂は2種以上を併用しても良い。これら熱可塑性樹脂(A2)としては公知のものを使用できる。
【0012】
ゴム(A3)としては、シリコーンゴム及びジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、これらの中でもジエン系ゴムであると本願効果をより奏する点でより好ましい。これらの樹脂は2種以上を併用しても良い。これらゴム(A3)としては、公知のものを使用できる。
【0013】
〔エポキシ樹脂〕
エポキシ樹脂とは、分子構造内に反応性のエポキシ基を2個以上有する化合物である。エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンと活性水素化合物から得られるグリシジルエーテル型が代表的であり、その他にグリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定はないが、100~1500g/eqが好ましい。エポキシ当量が前記範囲内であると、繊維ストランドの経時変化の抑制と、マトリックス樹脂との接着性とを両立できる。該エポキシ当量の上限は、より好ましくは1000g/eq、さらに好ましくは800g/eq、特に好ましくは700g/eqである。一方、該エポキシ当量の下限は、より好ましくは120g/eq、さらに好ましくは150g/eq、特に好ましくは170g/eqである。なお、エポキシ当量とは、JIS-K7236に準拠したものをいう。
【0015】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定はないが、耐熱性が良好となる点で、100~10000が好ましい。該平均分子量の下限は、より好ましくは150、さらに好ましくは200である。一方、該平均分子量の上限は、より好ましくは8000、さらに好ましくは7000である。
【0016】
エポキシ樹脂としては、脂肪族エポキシ樹脂及び芳香族エポキシ樹脂が挙げられるが、マトリックス樹脂の濡れ性が向上する観点から、分子構造中に芳香環を有する芳香族エポキシ樹脂が好ましい。
上記の芳香族エポキシ樹脂としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、レゾルシンノボラック、ビスフェノールFノボラック、ビスフェノールAノボラック、ジシクロペンタジエン変性フェノール、トリフェニルメタン、テトラフェニルエタンなどの多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
【0017】
これら芳香族エポキシ樹脂の中でも、下記一般式(3)で示される化合物であると、本願効果の観点から、好ましい。
【化3】
(式(3)中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。)
pは0~30の整数であり、マトリックス樹脂の濡れ性が向上する観点から、0~20が好ましく、0~10がさらに好ましい。
【0018】
上述のエポキシ樹脂の製造方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。また、上述のエポキシ樹脂は、一般に市販されているものであり、本発明の炭素繊維用サイジング剤では、それら市販のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0019】
〔ビニルエステル樹脂〕
ビニルエステル樹脂は、ビニルエステル基、アクリレート基及びメタクリレート基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物である。ビニルエステル樹脂は、1種又は2種以上を使用してもよい。なお、ビニルエステル基は「CH2=CHOCO-」で表される基を示し、アクリレート基は「CH2=CHCOO-」で表される基を示し、メタクリレート基は「CH2=CCH3COO-」で表される基を示すものとする。
【0020】
ビニルエステル樹脂としては、たとえば、アルキル(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ベンジル(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、2-ヒドロキシ-3フェノキシプロパノール(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールノニルフェニルエーテル(メタ)アクリル酸エステル、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、ビニルエステル樹脂としては、マトリックス樹脂との接着性が優れる点で、オキシアルキレン基及びアリール基から選ばれる少なくとも1種を有すると好ましく、アリール基を含むとより好ましい。具体的には、2-メタクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物が好ましく、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物がさらに好ましく、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物が特に好ましい。
【0022】
〔不飽和ポリエステル樹脂〕
不飽和ポリエステル樹脂としては、炭素-炭素二重結合を有するポリエステル樹脂であって、前記ビニルエステル樹脂以外の樹脂であれば特に限定はないが、例えば、α,β-不飽和ジカルボン酸を含む酸成分とアルコールとを反応させて得られる不飽和ポリエステルを挙げることができる。α,β-不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等及びこれらの酸無水物等の誘導体等を挙げることができ、これらは2種以上を併用してもよい。また、必要に応じてα,β-不飽和ジカルボン酸以外の酸成分としてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和ジカルボン酸及びこれらの酸無水物等の誘導体をα,β-不飽和ジカルボン酸と併用してもよい。アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族グリコール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド(1~100モル)付加物、キシレングリコール等の芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等を挙げることができ、これらの2種以上を併用してもよい。
【0023】
不飽和ポリエステル樹脂の中でも、マトリックス樹脂との接着性が優れるため、芳香族系不飽和ポリエステル樹脂であると好ましい。芳香族系不飽和ポリエステル樹脂の中でも、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略す)付加物との縮合物、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略す。)付加物との縮合物、並びに、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのEO及びPO付加物(EO及びPOの付加は、ランダムでもブロックでもよい)との縮合物がより好ましい。
【0024】
不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、耐熱性が良好となる点で1000~12000が好ましい。該重量平均分子量の上限は、8000がより好ましく、7000がさらに好ましい。一方、該重量平均分子量の下限は、1500がより好ましく、2000がさらに好ましい。酸価は5KOHmg/g以下が好ましく、0KOHmg/g以上が好ましい。
【0025】
〔フェノール樹脂〕
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノール、ノニルフェノール、カシュー油、リグニン、レゾルシン、カテコール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との縮合により得られる樹脂を挙げることができ、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等を挙げることができる。ノボラック樹脂は、シュウ酸等の酸触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はフェノール過剰の条件で反応させることで得られる。レゾール樹脂は、水酸化ナトリウム、アンモニア又は有機アミン等の塩基触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はホルムアルデヒド過剰の条件で反応させることにより得られる。
【0026】
〔ポリウレタン樹脂〕
ポリウレタン系樹脂は、ポリイソシアネート類とポリオール類と、必要により鎖伸長剤との反応により得ることができるものである。
【0027】
ポリイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート類等を挙げることができる。ポリイソシアネート類としては、アルキル基(例えば、メチル基)が主鎖又は環に置換した化合物を使用してもよい。
【0028】
ポリオール類としては、例えば、ポリエステルジオール(フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の炭素数4~12脂肪族ジカルボン酸成分;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸成分;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のC2-12脂肪族ジオール成分;ε-カプロラクトン等の炭素数4~12ラクトン成分等から得られるポリエステルジオール等)、ポリエーテルジオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールA-アルキレンオキサイド付加物等)、ポリエステルエーテルジオール(ジオール成分の一部として上記ポリエーテルジオールを用いたポリエステルジオール)等を挙げることができる。
【0029】
さらに、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数2~10アルキレンジオールの他、ジアミン類等を挙げることができる。ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタンなどの炭素数2~10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミンなどの直鎖又は分岐鎖状ポリアルキレンポリアミン等の脂肪族ジアミン類;イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン類;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン類等を挙げることができる。
【0030】
ポリウレタン樹脂の中でも、耐熱性とマトリックス樹脂との接着性を両立できる点で芳香族系ポリウレタン樹脂が好ましく、芳香族ポリエステル系ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0031】
〔飽和ポリエステル樹脂〕
飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂等を挙げることができる。飽和ポリエステル樹脂としては、耐熱性とマトリックス樹脂との接着性を両立できるため、ポリアルキレンアリレート樹脂又は芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、芳香族ポリエステル樹脂がより好ましい。
芳香族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリ炭素数2~4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリ炭素数2~4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど);1,4-シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT))等を挙げることができる。芳香族ポリエステル樹脂は、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよく、共重合成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどの炭素数2~6アルキレングリコール、ポリオキシ炭素数2~4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができる。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。
【0032】
さらに、変性化合物で変性した変性ポリエステル系樹脂(例えば、アミノ基及びオキシアルキレン基から選択された少なくとも一種を有する芳香族ポリエステル樹脂)を用いてもよい。変性化合物としては、ポリアミン類(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタンなどの炭素数2~10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン等の脂肪族ジアミン類;イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン類;例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン類;等)、ポリオール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコール等の(ポリ)オキシ炭素数2~4アルキレングリコール類等)等を挙げることができる。変性は、例えば、ポリエステル樹脂と変性化合物とを加熱混合し、アミド化、エステル化又はエステル交換反応を利用して行うことができる。
【0033】
飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、耐熱性が良好となる点で3000~20000が好ましい。該重量平均分子量の上限は、19000がより好ましく、18000がさらに好ましい。一方、該重量平均分子量の下限は、6000がより好ましく、7000がさらに好ましい。
【0034】
〔ポリオレフィン樹脂〕
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、オレフィン系モノマーと、オレフィン系モノマーと共重合可能な不飽和カルボン酸などのモノマーとの共重合体が挙げられ、公知の方法で製造できる。ポリオレフィン樹脂は、オレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、オレフィン系モノマーに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。ポリオレフィン樹脂は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0035】
オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどが挙げられる。これらは単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0036】
上記のオレフィン系モノマーと、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合比率としては、マトリックス樹脂との接着性が良くなる点で、共重合体の合計重量を100重量%として、オレフィン系モノマー80~99.5重量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー0.5~20重量%であることが好ましく、オレフィン系モノマー90~99重量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー1~10重量%であることがさらに好ましく、オレフィン系モノマー95~98重量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー2~5重量%であることが特に好ましい。
【0037】
なお、ポリオレフィン樹脂は、乳化物の保管安定性が良くなる点で、共重合により導入したカルボキシル基などの変性基が、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属塩;アンモニア;ラウリルアミン、エチレンジアミン、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、モノブタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。これらの中でもアミン類がさらに好ましく、ジエタノールアミンが特に好ましい。
【0038】
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量としては、耐熱性が良好となる点で5000~200000が好ましい。該重量平均分子量の上限は、150000がより好ましく、130000がさらに好ましい。一方、該重量平均分子量の下限は、6000がより好ましく、7000がさらに好ましい。
【0039】
〔シリコーンゴム〕
シリコーンゴムとしては、例えば付加型シリコーン樹脂、自己架橋型シリコーン樹脂、シリコーンゴム皮膜形成型シリコーン樹脂成分、およびシリコーンゴムパウダーが挙げられ、加熱や反応等により皮膜を形成するものであると好ましい。シリコーンゴムは1種または2種以上を用いても良い。
付加型シリコーン樹脂としては、例えば、室温硬化型シリコーンゴム(RTVシリコーンゴム)、低温硬化型シリコーンゴム(LTVシリコーンゴム)、反応性シリコーンを乳化剤で乳化したO/W型エマルジョンのシリコーン樹脂成分などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させるためには、室温硬化型シリコーンゴム(RTVシリコーンゴム)又は反応性シリコーンを乳化したシリコーン樹脂の水分散体であると好ましく、該水分散体を乾燥させることによりシリコーンゴム皮膜を形成できるものであるとさらに好ましい。
【0040】
〔ジエン系ゴム〕
ジエン系ゴムとしては、共役ジエン構造を有する重合性単量体を構成単位として含む重合体であれば、特に限定されず、共役ジエン構造を有する重合性単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどが挙げられる。
【0041】
ジエン系ゴムの具体例としては、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-イソプレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレン共重合体、メタアクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メタクリロニトリル-イソプレン共重合体、メタクリロニトリル-ブタジエン-イソプレン共重合体、アタクリロニトリル-メタクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸n-ブチル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸n-ブチル-イタコン酸モノn-ブチル共重合体などが挙げられる。なかでも、耐熱性に優れる点で、スチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ジエン系ゴムは水分散体を使用してもよく、該水分散体を乾燥させることにより皮膜を形成できるものであってもよい。
【0042】
〔硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)〕
本発明のサイジング剤は、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)(以下、化合物(B)ということがある。)を含有する。
化合物(B)は硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物であれば特に限定はないが、マトリックス樹脂との接着性向上の観点から、5員環内にヘテロ原子間の結合を有すると、化合物(A)とマトリックス樹脂との界面での接着性を高め、複合材料の物性を向上させるため好ましく、5員環内に窒素-硫黄結合を有するとさらに接着性を高め、複合材料の物性を向上させるため好ましく、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含むと接着性をさらに高め、複合材料の物性を向上させるため特に好ましい。
化合物(B)により接着性が向上する理由は、化合物(B)がサイジング剤とマトリックス樹脂の界面に存在し、サイジング剤成分とマトリックス樹脂との相溶性や反応性を高めているためであると考えている。つまり、相溶性が高まることで、マトリックス樹脂が繊維束内部まで十分含浸することができ、さらに、反応性が高まることで、サイジング剤成分とマトリックス樹脂が強固に化学結合でき、これらの作用によりマトリックス樹脂との接着性が向上していると推定される。そして、窒素-硫黄結合を有するとその効果がより促進され、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物であると特に促進されると考えている。
化合物(B)は1種又は2種以上を含んでいても良く、マトリックス樹脂との接着性が優れる点で、2種以上を含むとより好ましい。
【0043】
【0044】
式(1)中、R1は、炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基又は水素原子、X及びYは独立して水素原子又はハロゲン原子であると本願効果を奏する点で好ましい。
R1は、炭素数1~10のアルキル基、アラルキル基又は水素原子であるとより好ましく、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子であると特に好ましい。
R1の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、フェニル基及び水素原子が挙げられ、化合物(A)との相溶性の点でメチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基及び水素原子がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及び水素原子が特に好ましい。
式(1)中、X及びYは、それぞれ独立して水素原子、塩素原子又は臭素原子であるとより好ましく、水素原子又は塩素原子であると更に好ましい。
X及びYの少なくとも1つが水素原子である場合、化合物(A)との相溶性の点でR1はメチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基及び水素原子であるとより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及び水素原子であるとさらに好ましい。
【0045】
【0046】
式(2)中、R2は炭素数1~8のアルキル基又は水素原子であると本願効果を奏する点で好ましく、炭素数1~6のアルキル基又は水素原子であるとより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であると特に好ましい。
R2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及び水素原子が挙げられ、化合物(A)との相溶性の点で、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及び水素原子がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基及び水素原子が特に好ましい。
【0047】
化合物(B)としては、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物のほか、チアゾール類、チアジアゾール類等が挙げられる。
チアゾール類としては、4-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、2,4-ジクロロチアゾール、2-メチル-4-メチルチアゾール、2-イソプロピル-4-メチルチアゾール、2-メチル-4-メチルチアゾール、2-メルカプトチアゾール、2-アミノチアゾール、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-プロピオニルチアゾール、2-アセチルチアゾール、5-メチルチアゾール、2,5-ジブロモチアゾール及び5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾールが挙げられる。
チアジアゾール類としては、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジアミン、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-チオールが挙げられる。
【0048】
本発明の繊維用サイジング剤はその他成分としてさらに化合物(B)の誘導体を含有しても良い。化合物(B)の誘導体としては、化合物(B)と求核性を有する化合物との反応生成物等が挙げられる。
求核性を有する化合物としては、例えばチオール基、アミノ基及びアルコキシル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物が挙げられ、具体的には、有機チオール化合物、有機アミン化合物、有機アルコール化合物及びアミノ酸化合物等が挙げられ、これらの有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。
【0049】
〔界面活性剤(C)〕
本発明の繊維用サイジング剤は、界面活性剤(C)を含むと、マトリックス樹脂の濡れ性を向上させる点で好ましい。界面活性剤(C)は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であれば特に限定はないが、非イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、非イオン性界面活性剤を含むとより好ましい。
【0050】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル型非イオン性界面活性剤、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルアミド型非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
エーテル型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールフェニルエーテル;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端ショ糖エーテル化物;ビスフェノールAのポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン付加物等が挙げられる。
多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート等のグリセリン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンひまし油エーテル等のポリオキシアルキレンひまし油エーテル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル等を挙げることができる。
アルキルアミド型非イオン性界面活性剤としては、ジエタノールアミンモノラウロアミド等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤は、1種類の非イオン性界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は2種以上の非イオン性界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの非イオン性界面活性剤の中で、本発明の効果に優れるためエーテル型非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0051】
非イオン性界面活性剤の重量平均分子量は、本願効果を奏する観点から、1000~20000が好ましい。該重量平均分子量の上限は、より好ましくは18000、さらに好ましくは17000、特に好ましくは16000である。一方、該重量平均分子量の下限は、より好ましくは1500、さらに好ましくは1800、特に好ましくは2000である。
【0052】
オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体は、本願効果を奏する観点から、ブロック共重合体が好ましい。
オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体を構成するオキシエチレン基の平均付加モル数としては、本願効果を奏する観点から、10~500が好ましい。該平均付加モル数の上限は、より好ましくは450、さらに好ましくは400である。一方、該平均付加モル数の下限は、より好ましくは30、さらに好ましくは50である。
【0053】
オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体は、本願効果を奏する観点から、オキシプロピレン基の平均付加モル数としては、1~100が好ましい。該平均付加モル数の上限は、より好ましくは80、さらに好ましくは70、特に好ましくは60である。一方、該平均付加モル数の下限は、より好ましくは5、さらに好ましくは10、特に好ましくは15である。
【0054】
アニオン性界面活性剤としては、エーテルカルボン酸(塩)、エーテル硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル塩、(ポリ)オキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、アルキル基を有するスルホン酸塩、アルキル基を有するリン酸エステル塩、脂肪酸塩、アシル化アミノ酸塩、脂肪酸のアミン中和物等が挙げられる。
【0055】
カチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩型及びアミン塩型のカチオン界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
〔親水性溶媒(D)〕
本発明の繊維用サイジング剤は親水性溶媒(D)を含むと、化合物(A)と化合物(B)の相溶性を高める点で好ましい。
親水性溶媒(D)としては25℃における水への溶解度が0.05g/ml以上であれば特に限定はないが、下記一般式(4)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含むとさらに好ましい。親水性溶媒(D)は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0057】
【0058】
式(4)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。
一般式(4)で表される化合物としては、化合物(A)と化合物(B)の相溶性が向上し、本願効果がより得られやすくなる点で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であると好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であるとより好ましい。一般式(4)で表される化合物は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0059】
非プロトン性含窒素有機化合物としては化合物(A)と化合物(B)の相溶性向上の点で、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリルから選ばれる少なくとも1種であると好ましく、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる少なくとも1種であるとより好ましい。非プロトン性含窒素有機化合物は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0060】
〔繊維用サイジング剤〕
本発明の繊維用サイジング剤は、前述の化合物(A)及び化合物(B)を含むものである。
【0061】
本発明のサイジング剤の不揮発分に占める化合物(A)の重量割合は、マトリックス樹脂との接着性を向上させる観点から20重量%~99重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは98重量%、さらに好ましくは97重量%、特に好ましくは95重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは25重量%、さらに好ましくは30重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは50重量%である。また、例えば40重量%~97重量%がより好ましく、50重量%~95重量%がさらに好ましい。
なお、本発明における不揮発分とは、実施例に記載の方法により得られたものである。
【0062】
本発明のサイジング剤の不揮発分に占める化合物(B)の重量割合は、マトリックス樹脂との接着性を向上させる観点から、5ppm~10000ppmであると好ましい。該重量割合の上限は、9000ppmがより好ましく、8000ppmがさらに好ましく、7000ppmが特に好ましい。一方、該重量割合の下限は、10ppmがより好ましく、15ppmがさらに好ましく、17ppmが特に好ましい。また、例えば15ppm~8000ppmがより好ましく、17ppm~7000ppmがさらに好ましい。
【0063】
本発明のサイジング剤に含まれる化合物(A)10000重量部に対する化合物(B)の重量割合は、マトリックス樹脂との接着性を向上させる観点から、1重量部~500重量部であると好ましい。尚、化合物(A)及び化合物(B)の重量とは、本発明のサイジング剤に含まれる不揮発分に占める各成分の重量をさす。該重量割合の上限は、350重量部がより好ましく、400重量部がさらに好ましく、450重量部が特に好ましい。一方、該重量割合の下限は、3重量部がより好ましく、4重量部がさらに好ましく、5重量部が特に好ましい。また、例えば4重量部~400重量部がより好ましく、5重量部~450重量部がさらに好ましい。
【0064】
本発明の繊維用サイジング剤が界面活性剤(C)を含む場合、マトリックス樹脂との接着性を向上させる観点から、本発明のサイジング剤の不揮発分に占める界面活性剤(C)の重量割合は1重量%~50重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは45重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは35重量%である。一方、該重量比の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは3重量%、特に好ましくは5重量%である。また、例えば3重量%~40重量%がより好ましく、5重量%~35重量%がさらに好ましい。
【0065】
本発明の繊維用サイジング剤が界面活性剤(C)を含む場合、マトリックス樹脂との接着性を向上させる観点から、本発明のサイジング剤の不揮発分に占める化合物(A)の重量割合は1重量%~50重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは45重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは35重量%である。一方、該重量比の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは3重量%、特に好ましくは5重量%である。また、例えば3重量%~40重量%がより好ましく、5重量%~35重量%がさらに好ましい。
【0066】
本発明の繊維用サイジング剤が界面活性剤(C)を含む場合、マトリックス樹脂との接着性の観点から、化合物(A)と界面活性剤(C)の合計に対する界面活性剤(C)の重量比((C)/((A)+(C)))は、0.05~0.5が好ましい。尚、化合物(A)及び界面活性剤(C)の重量とは、本発明のサイジング剤に含まれる不揮発分に占める各成分の重量をさす。該重量比の上限は、より好ましくは0.45、さらに好ましくは0.4、特に好ましくは0.3である。一方、該重量比の下限は、より好ましくは0.07、さらに好ましくは0.08、特に好ましくは0.1である。また、例えば0.08~0.4がより好ましく、0.1~0.3がさらに好ましい。
【0067】
本発明の繊維用サイジング剤が親水性溶媒(D)を含む場合、マトリックス樹脂との接着性を向上させる観点から、本発明のサイジング剤の不揮発分10000重量部に対する親水性溶媒(D)の重量割合は10重量部~1000重量部であると好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは900重量部、さらに好ましくは800重量部、特に好ましくは700重量部である。一方、該重量比の下限は、より好ましくは15重量部、さらに好ましくは20重量部、特に好ましくは30重量部である。また、例えば20重量部~800重量部がより好ましく、30重量部~700重量部がさらに好ましい。
本発明のサイジング剤を製造する方法については、特に限定はなく、公知の手法が採用できる。サイジング剤を構成する各成分を攪拌下の水中に投入して水溶液、乳化物または水分散物とする方法、サイジング剤を構成する各成分を製造する際に水溶液、乳化物または水分散物とする方法、界面活性剤の入った水中に、サイジング剤を構成する各成分を攪拌下、投入して乳化または分散する方法、サイジング剤を構成する各成分を、予め乳化分散した乳化分散液に混合する方法、サイジング剤を構成する各成分を混合し、得られた混合物を軟化点以上に加温後、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法、サイジング剤を付与する給油浴において、乳化分散した乳化分散液とを混合する方法等が挙げられる。
【0068】
本発明のサイジング剤は、水に自己乳化及び/又は乳化分散してなると好ましい。サイジング剤が水に自己乳化及び/又は乳化分散してなる場合の平均粒子径は、特に限定はないが、保管安定性の観点から、10μm以下が好ましく、0.01~1μmがより好ましく、0.01~0.5μmがさらに好ましい。なお、本発明でいう平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製LA-920)で測定された算術平均径をいう。
【0069】
〔繊維ストランド及びその製造方法〕
本発明の繊維ストランドは、原料合成繊維ストランドに対して、上記の繊維用サイジング剤を付着させたものであり、熱硬化性マトリックス樹脂又は熱可塑性マトリックス樹脂を補強するための強化繊維として好適に使用できる。
【0070】
本発明の繊維ストランドの製造方法は、前述した繊維用サイジング剤を原料合成繊維ストランドに付着させ、得られた付着物を乾燥するサイジング処理工程を含む製造方法である。
繊維用サイジング剤を原料合成繊維ストランドに付着させて付着物を得る方法については、特に限定はないが、繊維用サイジング剤をキスローラー法、ローラー浸漬法、スプレー法その他公知の方法で、原料合成繊維ストランドに付着させる方法であればよい。これらの方法のうちでも、ローラー浸漬法が、繊維用サイジング剤を原料合成繊維ストランドに均一付着できるので好ましい。
得られた付着物の乾燥方法については、特に限定はなく、例えば、加熱ローラー、熱風、熱板等で加熱乾燥することができる。
【0071】
なお、本発明の繊維用サイジング剤の原料合成繊維ストランドへの付着にあたっては、繊維用サイジング剤の構成成分全てを混合後に付着させてもよいし、構成成分を別々に二段階以上に分けて付着させてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、フェノキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びポリエーテルケトン樹脂などの熱可塑性樹脂を原料合成繊維ストランドに付着させてもよい。
【0072】
本発明の繊維ストランドは、各種熱硬化性樹脂又は各種熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化繊維として使用でき、使用する形態としては、連続繊維の状態でも、所定の長さに切断された状態でもよい。
【0073】
原料合成繊維ストランドへの繊維用サイジング剤の不揮発分の付着量は適宜選択でき、合成繊維ストランドが所望の機能を有するための必要量とすればよいが、その付着量は原料合成繊維ストランドに対して0.1~20重量%であることが好ましい。連続繊維の状態の合成繊維ストランドにおいては、その付着量は原料合成繊維ストランドに対して0.1~10重量%がより好ましく、0.5~5重量%がさらに好ましい。また、所定の長さに切断された状態のストランドにおいては0.5~20重量%がより好ましく、1~10重量%がさらに好ましい。
【0074】
本発明の繊維用サイジング剤を適用し得る(原料)合成繊維ストランドの合成繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリケトン繊維などの各種有機繊維が挙げられる。得られる繊維強化複合材料としての物性の観点から、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維およびポリケトン繊維から選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭素繊維がさらに好ましい。
【0075】
〔繊維強化複合材料〕
本発明の繊維強化複合材料は、熱硬化性マトリックス樹脂又は熱可塑性マトリックス樹脂と前述の繊維ストランドを含むものである。繊維ストランドは本発明の繊維用サイジング剤により処理されているので、繊維ストランドおよび熱可塑性マトリックス樹脂との親和性が良好となり、接着性に優れた繊維強化複合材料となる。
本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と前述の繊維ストランドを含むものである。繊維ストランドは本発明のサイジング剤により処理されて、サイジング剤が均一に付着しており、繊維ストランド及びマトリックス樹脂との親和性が良好となり、接着性に優れた繊維強化複合材料となる。さらに、高温処理時のサイジング剤の熱分解を抑制でき、熱分解に起因したマトリックス樹脂との接着阻害を抑制できる。ここで、マトリックス樹脂とは、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂をいい、1種又は2種以上含んでいてもよい。熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、フェノキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられる。これらの中でも本発明のサイジング剤による接着性向上効果がより高い点から熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂がさらに好ましい。
【0076】
これらマトリックス樹脂は、繊維ストランドとの接着性をさらに向上させるなどの目的で、その一部又は全部が変性したものであっても差し支えない。
繊維強化複合材料の製造方法としては、特に限定はなく、チョップドファイバー、長繊維ペレットなどによるコンパウンド射出成型、UDシート、織物シートなどによるプレス成型、その他フィラメントワインディング成型など公知の方法を採用できる。
繊維強化複合材料中の合成繊維ストランドの含有量についても特に限定はなく、繊維の種類、形態、熱可塑性マトリックス樹脂の種類などにより適宜選択すればよいが、得られる繊維強化複合材料に対して、5~70重量%が好ましく、20~60重量%がより好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)、部は特に限定しない限り、「重量%」、「重量部」を示す。各特性値の測定は以下に示す方法に基づいて行った。
【0078】
<サイジング剤の付着率>
約2gのサイジング剤塗布炭素繊維束を秤量(W1)(小数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm3)に30分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させた。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、次式よりサイジング剤付着量を求めた。本実施例では、測定を2回おこない、その平均値をサイジング剤の付着率とした。
サイジング剤付着量(重量%)=[W1(g)-W2(g)]/[W1(g)]×100
【0079】
<マトリックス樹脂のドロップの作製方法>
エポキシ樹脂:エポキシ樹脂jER828(三菱ケミカル株式会社製)100重量部、DICY(三菱ケミカル株式会社製)3重量部に調整されたマトリックス樹脂のドロップを炭素繊維フィラメント上に形成させ、80℃×1時間、150℃×3時間加熱し硬化させた。
ポリアミド樹脂:ポリアミド樹脂T-663(東洋紡社製)を複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)上で溶融させ、ドロップを炭素繊維フィラメント上に形成させた。
【0080】
<繊維用サイジング剤の不揮発分試料の作製>
繊維用サイジング剤2.0~3.0gをアルミシートに平らに広げ、赤外線ランプ照射下110℃で乾燥し、150秒間の揮発分の変動幅が0.15%になったときのアルミシート上の残分を繊維用サイジング剤の不揮発分とした。
【0081】
<接着性>
複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)を使用し、マイクロドロップレット法により接着性を評価した。
実施例及び比較例で得られた炭素繊維ストランドより、炭素繊維フィラメントを取り出し、試料ホルダーにセッティングした。各マトリックス樹脂のドロップを炭素繊維フィラメント上に形成させ、測定用の試料を得た。測定試料を装置にセッティングし、ドロップを装置ブレードで挟み、炭素繊維フィラメントを装置上で0.06mm/分の速度で走行させ、炭素繊維フィラメントからドロップを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。
次式により界面剪断強度τを算出し、炭素繊維フィラメントとマトリックス樹脂との接着性を評価した。マトリックス樹脂としては上記のエポキシ樹脂及びポリアミド樹脂を用いた。各マトリックス樹脂ドロップの作製は上記に示した方法で行った。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引き抜き荷重 d:炭素繊維フィラメント直径 l:ドロップの引き抜き方向の粒子径)
評価結果を元に以下の基準で判定し、◎と〇を合格とした。
◎:界面剪断強度が60Mpa超
〇:界面剪断強度が50MPa超、60MPa以下
×:界面剪断強度が50MPa以下
【0082】
<耐擦過性>
TM式摩擦抱合力試験機TM-200(大栄科学精器製作所(株)製)を用い、ジグザグに配置した鏡面クロムメッキステンレス針3本を介して50gの張力で、実施例及び比較例で得られた炭素繊維ストランドを1000回擦過させ(往復運動速度300回/分)、炭素繊維ストランドの毛羽たちの状態を下記基準で目視判定し、◎及び〇を合格とした。
◎:擦過前と同じく毛羽発生が全く見られなかった。
○:数本の毛羽は見られたものの、実用上全く問題ないレベルであった。
△:毛羽立ちが多くみられ、糸切れも若干確認できた。
×:毛羽立ち及び単糸の糸切れが非常に多く確認できた。
【0083】
<集束性>
炭素繊維に各サイジング剤(水で3%に希釈、目標付着率1%)をサイジングしたものを、カッターナイフで5mmの長さで10本切りだした際にほぐれるかどうか目視で評価した。以下の評価基準で判断し、◎及び○を合格とした。
◎:2本以下ほぐれる
○:3~4本ほぐれる
△:5本~7本ほぐれる
×:8本以上ほぐれる
【0084】
実施例に使用した化合物は次の通り。
a1-1:jER828(三菱ケミカル株式会社製エポキシ樹脂)/エポトートYD-011(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製エポキシ樹脂)=50/50(重量比)
a1-2:ビニルエステル樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物)
a1-3:不飽和ポリエステル樹脂(下記合成例a1-3)
a1-4:jER807/jER4005P=50/50(重量比)(三菱ケミカル株式会社製エポキシ樹脂混合物)
a1-5:ビニルエステル樹脂(トリメチロールプロパントリメタクリレート)
a1-6:不飽和ポリエステル樹脂(下記合成例a1-6)
a2-1:芳香族ポリウレタン樹脂(下記合成例a2-1)
a2-2:飽和ポリエステル樹脂(下記合成例a2-2)
a2-3:ポリオレフィン樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(プロピレン/無水マレイン酸グラフト共重合比率(重量%):95/5、重量平均分子量:30000))
a2-4:芳香族ポリウレタン樹脂(下記合成例a2-4)
a2-5:飽和ポリエステル樹脂(下記合成例a2-5)
a2-6:ポリオレフィン樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(プロピレン/無水マレイン酸グラフト共重合比率(重量%):85/15、重量平均分子量:37000))
a3-1:KM-9749(信越化学工業株式会社製シリコーンエマルション)
a3-2:SBL0533(株式会社エネオスマテリアル製ラテックス)
a3-3:KM-2002-L-1(信越化学工業株式会社製シリコーンエマルション)
a3-4:SBL0548(株式会社エネオスマテリアル製ラテックス)
a’4 :イソオクチルステアレート
b1:式(1)においてR1がオクチル基、X及びYが水素原子である化合物
b2:式(1)においてR1がメチル基、X及びYが水素原子である化合物
b3:式(2)においてR1が水素原子である化合物
b4:2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール
b5:b1とシステインの反応生成物(モル比1:1)
b’1:1,4-チアジン
b’2:インドール
c1:POEOブロックポリエーテル(PO/EO=20/80)(Mw15500)
c2:POEOブロックポリエーテル(PO/EO=50/50)(Mw4500)
d1:ジエチレングリコール
d2:プロピレングリコール
d3:1-メチル-2-ピロリドン
尚、a1-1、a1-2、a1-3、a1-4、a1-5、a1-6、a2-3、a2-6、a’4は非自己乳化性成分であった。
【0085】
(合成例a1-3)
無水マレイン酸0.9モルとビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物1.0モルを140℃で5時間反応させて、酸価2.5の不飽和ポリエステル樹脂(a1-3)を得た。重量平均分子量(Mw)は5051であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.6であった。
【0086】
(合成例a1-6)
無水マレイン酸0.8モルとビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物1.0モルを140℃で3時間反応させて、酸価3.5の不飽和ポリエステル(a1-6)を得た。重量平均分子量(Mw)は1626であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.7であった。
【0087】
(合成例a2-1)
反応器中に窒素ガスを封入下、テレフタル酸498部、イソフタル酸332部、エチレングリコール248部、ジエチレングリコール106部、テトラメチレングリコール45部およびジブチル錫オキサイド0.2部を仕込み、190~240℃で10時間エステル化反応を行い、芳香族ポリエステルポリオールを得た。次に、得られた芳香族ポリエステルポリオール1000部を120℃で減圧により脱水し、80℃まで冷却後、メチルエチルケトン680部を仕込み撹拌溶解した。引き続きイソホロンジイソシアネート218部および鎖伸張化剤として2,2-ジメチロールプロピオン酸67部を仕込み、70℃で12時間ウレタン化反応を行った。反応終了後、40℃まで冷却し、13.6%アンモニア水97部を加えて中和反応後、65℃で減圧処理をしてメチルエチルケトンを留去し、芳香族ポリウレタン樹脂(a2-1)を得た。
【0088】
(合成例a2-4)
反応器中に窒素ガスを封入下、テレフタル酸332部、イソフタル酸332部、アジピン酸146部、エチレングリコール258部、ジエチレングリコール106部、ネオペンチルグリコール52部およびジブチル錫オキサイド0.2部を仕込み、190~240℃で10時間エステル化反応を行い、芳香族ポリエステルポリオールを得た。次に、得られた芳香族ポリエステルポリオール1000部を120℃で減圧により脱水し、80℃まで冷却後、メチルエチルケトン680部を仕込み撹拌溶解した。引き続きヘキサメチレンジイソシアネート160部および鎖伸張化剤として2,2-ジメチロールプロピオン酸67部を仕込み、70℃で12時間ウレタン化反応を行った。反応終了後、40℃まで冷却し、13.6%アンモニア水97部を加えて中和反応後、65℃で減圧処理をしてメチルエチルケトンを留去し、芳香族ポリウレタン樹脂(a2-4)を得た。
【0089】
(合成例a2-2)
反応器中に窒素ガスを封入下、ジメチルイソフタレート950部、ジエチレングリコール1000部、酢酸亜鉛0.5部および三酸化アンチモン0.5部を仕込み、140~220℃で3時間エステル交換反応を行った。次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸30部を添加し、220~260℃で1時間エステル化反応を行った後、240~270℃で減圧下2時間重縮合反応を行い、飽和ポリエステル樹脂(a2-2)を得た。
【0090】
(合成例a2-5)
反応器中に窒素ガスを封入下、ジメチルイソフタレート475部、ジメチルテレフタレート475部、ジエチレングリコール1000部、酢酸亜鉛0.5部および三酸化アンチモン0.5部を仕込み、140~220℃で3時間エステル交換反応を行った。次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸30部を添加し、220~260℃で1時間エステル化反応を行った後、240~270℃で減圧下2時間重縮合反応を行った後、240~270℃で減圧下2時間重縮合反応を行い、飽和ポリエステル樹脂(a2-5)を得た。
【0091】
(繊維用サイジング剤の製造)
(製造例1)
非自己乳化性成分であるエポキシ樹脂混合物a1-1 80重量部、乳化剤としてc1 10重量部とc2 10重量部とを乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、均一な非自己乳化性成分の水分散体(不揮発分濃度40重量%)を得た。
【0092】
(製造例2~6、9、12、17)
非自己乳化性成分としてa1-2、a1-3、a1-4、a1-5、a1-6、a2-3、a2-6及びa’4から選ばれる成分を、乳化剤としてc1及びc2から選ばれる成分をそれぞれ表1に記載の不揮発分組成とする以外は製造例1と同様にして、均一な非自己乳化性成分の水分散体(不揮発分濃度40重量%)を得た。なお、表に記載の数値は水分散体の不揮発分に占める各成分の重量割合を示す。
【0093】
(製造例7、8、10、11、13~16)
自己乳化性成分又は水分散体であるa2-1、a2-2、a2-4、a2-5及びa3-1~a3-4から選ばれる成分に水を加え、表1に記載の不揮発分組成である水分散体(不揮発分濃度40重量%)を得た。
【0094】
(製造例18)
製造例1で得られた水分散体50重量部と製造例8で得た水分散体50重量部を混合し、水分散体(不揮発分濃度40重量%)を得た。
【0095】
(製造例19~24)
製造例18において、製造例1及び製造例8で得た水分散体を、それぞれ表2に記載の不揮発分組成とする以外は同様にして、水分散体(不揮発分濃度40重量%)を得た。
【0096】
(実施例1)
サイジング剤の不揮発分に占めるb1の重量割合が150ppm、b3の重量割合が300ppm、サイジング剤の不揮発分10000重量部に対するd1及びd2の重量割合がそれぞれ1000ppm、100ppmとなるように、製造例1で得た水分散体にb1、b3、d1及びd2を加えて、実施例1のサイジング剤を得た。
【0097】
(実施例2~53及び比較例1~8)
サイジング剤の不揮発分に占めるb1~b5、b’1及びb’2の重量割合、サイジング剤の不揮発分10000重量部に対するd1~d3の重量割合、及び、使用する水分散体を表3~5に記載のものとする以外は実施例1と同様にして、実施例2~53及び比較例1~8のサイジング剤を得た。
【0098】
(サイジング剤付着繊維ストランドの製造)
得られたサイジング剤を水で希釈して不揮発分濃度が2重量%のサイジング剤希釈液を調製した。
次いで、サイジング剤未処理炭素繊維ストランド(繊度800tex、フィラメント数3000本)を調製したサイジング剤希釈液にDip Nip法により浸漬・含浸させた後、105℃で15分間熱風乾燥させて、サイジング剤処理炭素繊維ストランドを得た。得られたサイジング剤処理炭素繊維ストランドを用いて前述の方法により、サイジング剤の付着率、接着性、耐擦過性及び集束性を評価した。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
表3、4から明らかなように、実施例のサイジング剤は、化合物(A)及び化合物(B)を含有する為、繊維にマトリックス樹脂との優れた接着性を与え、サイジング剤として好適に利用できる。
一方、表5に示すように、比較例のサイジング剤は、化合物(B)を含まない場合(比較例1~7)、化合物(A)を含まない場合(比較例8)である。評価の結果、比較例1~8ではマトリックス樹脂との接着性が不足し、本願課題を解決できない。
【要約】
マトリックス樹脂を補強するために用いられる繊維ストランドに対して、マトリックス樹脂との優れた接着性を付与することができる繊維用サイジング剤、それを用いた繊維ストランド及び繊維強化複合材料を提供する。
化合物(A)及び硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)を含有し、前記化合物(A)が、熱硬化性樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)及びゴム(A3)から選ばれる少なくとも1種である、繊維用サイジング剤。