(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20240612BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20240612BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20240612BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/24 C
B24B37/26
H01L21/304 622F
H01L21/304 622S
(21)【出願番号】P 2019180493
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】松岡 立馬
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】鳴島 さつき
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-110686(JP,A)
【文献】特開2004-042189(JP,A)
【文献】特開2004-343090(JP,A)
【文献】特開2004-134539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 37/24
B24B 37/26
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を研磨する研磨面を有する研磨層と、該研磨層の貫通孔に設けられて、検査光及び被研磨物からの反射光を透過させる終点検出用窓とを備える研磨パッドにおいて、
上記終点検出用窓の側部に、上記研磨面と直交方向において複数の凸部が形成されており、
上記研磨層の貫通孔の内周面に、上記終点検出用窓の凸部と係合する複数の凹部が形成されており、
接着剤を用いることなく上記複数箇所の凸部と凹部が隙間なく係合しており、
上記研磨層の研磨面に、スラリーを保持及び/又は排出する溝が形成されており、少なくとも1つの凸部と凹部が上記溝の底部の高さよりも下方に係合した状態で設けられており、
さらに、上記凸部のピッチが0.2~0.5mmであり、
上記凸部の高さが0.15~0.5mmであることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
上記凸部は、終点検出用窓の側部に形成された膨出部からなり、上記凹部は、研磨層の貫通孔の内周面に形成された凹部からなることを特徴とする
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
上記凸部がおねじであり、上記凹部がめねじであることを特徴とする
請求項1に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関し、より詳しくは、被研磨物の加工時に加工の終点を検出するための終点検出用窓を備えた研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被研磨物としてのウエハを研磨するための研磨パッドは知られており、さらに、ウエハを研磨加工する際の終点を検出するために、検査光を透過させる透明な終点検出用窓を備えた研磨パッドは知られている(例えば特許文献1~特許文献3)。
こうした従来の研磨パッドにおいては、本体部となる研磨層に貫通孔を設けるとともに、研磨に用いられる研磨液(スラリー)の漏出を防ぐため、そこに終点検出用窓となる透明な窓用部材を取り付ける構成となっている。具体的には、特許文献1の研磨パッドにおいては、終点検出用窓となる窓用部材を研磨層の貫通孔に嵌め込んで光硬化性接着剤で接着するようにしてあり、特許文献2の研磨パッドにおいては、研磨層の貫通孔に終点検出用窓となる窓用部材を接着剤なしで嵌合している。さらに、特許文献3の研磨パッドにおいては、研磨層の貫通孔の内周面に単一の凹部を形成する一方、終点検出用窓となる窓用部材の外周面に上記凹部と係合する凸部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-343090号公報
【文献】特開2004-134539号公報
【文献】特開2006-110686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の研磨パッドにおいては、それぞれ以下のような問題があった。
すなわち、上記特許文献1の研磨パッドにおいては、ウエハを研磨中において光硬化性の接着剤がウエハの被研磨面と接触するため、ウエハの被研磨面にスクラッチ等が生じて研磨性能が低下するという問題があった。また、特許文献2の研磨パッドにおいては、研磨層の貫通孔への終点検出用窓(窓用部材)の嵌合が不十分となりやすく、ウエハの研磨中に研磨層の貫通孔から終点検出用窓が脱落する恐れがあった。
さらに、特許文献3の研磨パッドにおいては、研磨パッドの使用に伴って研磨パッドの研磨層及び終点検出用窓が磨滅することで、終点検出用窓の外周面に形成されていた凸部が消滅すると、その後のウエハの研磨中に終点検出用窓が貫通孔から容易に脱落する恐れがあった。
そこで、本発明の目的は、研磨性能の低下を防止し、しかも研磨層から終点検出用窓が脱落するのを防止可能な研磨パッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、本発明は、被研磨物を研磨する研磨面を有する研磨層と、該研磨層の貫通孔に設けられて、検査光及び被研磨物からの反射光を透過させる終点検出用窓とを備える研磨パッドにおいて、
上記終点検出用窓の側部に、上記研磨面と直交方向において複数の凸部が形成されており、
上記研磨層の貫通孔の内周面に、上記終点検出用窓の凸部と係合する複数の凹部が形成されており、
接着剤を用いることなく上記複数箇所の凸部と凹部が隙間なく係合しており、
上記研磨層の研磨面に、スラリーを保持及び/又は排出する溝が形成されており、少なくとも1つの凸部と凹部が上記溝の底部の高さよりも下方に係合した状態で設けられており、
さらに、上記凸部のピッチが0.2~0.5mmであり、
上記凸部の高さが0.15~0.5mmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、接着剤を用いることなく、複数箇所の凹凸が相互に隙間なく係合した状態で終点検出用窓は貫通孔に取り付けられる。そのため、被研磨物の研磨加工の際に、被加工面が接着剤によって悪影響を受けることがなく、しかも上記複数の凹部と凸部が係合しているので、被研磨物の研磨中に終点検出用窓が研磨層の貫通孔から脱落するのを防止することができる。
また、少なくとも1つの凸部と凹部が上記研磨面の溝の底部の高さよりも下方に係合した状態で設けられているので、研磨面が磨滅して上記溝が消滅して研磨層の交換が必要になった状態においても、少なくとも1つの凸部と凹部が残留することになるため、終点検出用窓が研磨層の貫通孔から脱落するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】
図3に示す研磨パッドの研磨層の製造工程を示す図。
【
図5】
図2の要部の断面図であり、
図5(a)は研磨パッドの使用前の状態を示し、
図5(b)は使用後の状態を示している。
【
図6】本発明の他の実施例を示す断面図であり、
図6(a)は研磨パッドの使用前の状態を示し、
図6(b)は使用後の状態を示している。
【
図7】本発明の他の実施例を示す断面図であり、
図7(a)は研磨パッドの使用前の状態を示し、
図7(b)は使用後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、
図1ないし
図2において、1は研磨装置であり、この研磨装置1は、薄板状の被研磨物2(例えば半導体ウエハ)を研磨パッド3によって研磨するようになっている。また、この研磨装置1は、被研磨物2を研磨する研磨加工を行う際に被研磨物2の被研磨面2Aに検査光L1を照射し、その反射光を検出機構7(受光部7B)で受光することで、研磨加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出できるようになっている。
研磨装置1は、下方側に位置して上面に研磨パッド3が固定される研磨定盤4と、上方側に位置して下面に被研磨物2を保持する保持定盤5と、被研磨物2と研磨パッド3との間にスラリーを供給するスラリー供給機構6と、検査光L1を用いて被研磨物2の研磨加工の進捗状況と加工の終点を検出する検出機構7を備えている。
研磨装置1による研磨加工の対象となる被研磨物2は、光学材料、シリコンウェハ、液晶用ガラス基板、半導体基板の他、ガラス、金属、セラミック等の板状物である。また、スラリー供給機構6が供給するスラリーとしては、対象となる被研磨物2および求められる加工精度に応じて従来公知の好適な物を使用することができる。
上記研磨定盤4および保持定盤5はそれぞれ略円盤状となっており、それぞれ図示しない駆動機構によって矢印方向に回転するようになっており、また、上記保持定盤5は昇降可能に設けられている。
被研磨物2に研磨加工を行う際には、保持定盤5によって被研磨物2の被研磨面(下面)2Aを研磨パッド3の研磨面3Aに設定圧力で押し当てた状態で、それらが相対的に回転されるとともに、スラリー供給機構6からスラリーが被研磨物2の被研磨面2Aと研磨パッド3の研磨面3Aとの間に供給されるようになっている。
【0009】
ところで、被研磨物2の研磨加工を行う際には、該被研磨物2の研磨加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出する必要がある。そこで、この研磨装置1は、下方側から上方に向けて検査光L1を照射して、被研磨物2の被研磨面2Aからの反射光を基にして研磨加工の進捗状況と加工終点を検出する検出機構7を備えている。また、研磨パッド3の所定位置には、上記検査光L1を透過させ、かつ被研磨物2の被研磨面2Aからの反射光を透過させる透明な終点検出用窓3Bが設けられている。
研磨パッド3は、上方側に位置する円板状の研磨層3Cと、研磨層3Cの下面に接着剤で接着された円板状の支持層3Dとを備えている。研磨層3Cの所定位置に透明な終点検出用窓3Bが設けられており、その下方側となる支持層3Dの位置には、検査光L1及び被研磨物2からの反射光を通過させるための貫通孔3Daが穿設されている。
終点検出用窓3Bの上面3Bbと研磨層3Cの上面である研磨面3Aは同一平面となっている。また、終点検出用窓3Bの下面3Bcと研磨層3Cの下面は同一平面となっており、そこに接着剤により支持層3Dの上面が接着されている。そして、上下で一体となった研磨層3Cと支持層3Dからなる研磨パッド3は、その下面(支持層3Dの下面)を両面テープや接着剤等によって研磨定盤4の上面4Aに固定されている。
【0010】
研磨層3Cは、硬質ウレタンにより形成されている。硬質ウレタンは、ポリオール成分とイソシアネート成分との反応中間体であるウレタンプレポリマーを用い、ジアミン類又はジオール類等の硬化剤(鎖延長剤)、発泡剤、触媒等を添加混合して得られるポリウレタンポリウレア樹脂を硬化させるプレポリマー法により製造される。なお、以下に研磨層や終点検出用窓をポリウレタンポリウレア樹脂として説明するが、ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂を用いてもよい。
【0011】
研磨層3Cの製造方法としては、例えば、少なくともプレポリマーとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体を準備する準備工程;少なくとも、上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤を混合して成形体成形用の混合液を得る混合工程;上記成形体成形用混合液からポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する成形体成形工程;および上記ポリウレタンポリウレア樹脂成形体から、上記研磨面を有する研磨層を形成する研磨層形成工程、を含むことが挙げられる。
【0012】
上記準備工程として、上記研磨層3Cの製造には、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体の原料として、例えば、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体が用いられる。更にポリオール化合物を上記成分とともに用いてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を併せて用いてもよい。
【0013】
上記準備工程で準備される上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物は、下記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物であり、ポリウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がポリウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれていてもよい。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。上記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法および条件を用いて付加重合反応すればよい。
例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することが出来る。
【0014】
まず、上記ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。またポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。
例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。
さらに、ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物が好ましく、中でも2,4-TDI、2,6-TDI、MDIがより好ましく、2,4-TDI、2,6-TDIが特に好ましい。
これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
次に上記ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物を意味する。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。
また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。これらの中でも、PTMG、又はPTMGとDEGの組み合わせが好ましい。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ここで、NCO基1個当たりのプレポリマーの分子量を示すプレポリマーのNCO当量としては、200~800であることが好ましく、300~700であることがより好ましく、400~600であることがさらにより好ましい。
具体的に上記プレポリマーのNCO当量は以下のようにして求めることができる。
プレポリマーのNCO当量=(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]
【0017】
上記硬化剤としては、例えば、ポリアミン化合物および/又はポリオール化合物を用いることができる。
ポリアミン化合物とは、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味し、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物、特にはジアミン化合物を使用することができる。
例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。
また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、MOCA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、MOCAが特に好ましい。
ポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリアミン化合物を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミン化合物は、他の成分と混合し易くするためおよび/又は後の成形体形成工程における気泡径の均一性を向上させるために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。減圧下での脱泡方法としては、ポリウレタンの製造において公知の方法を用いればよく、例えば、真空ポンプを用いて0.1MPa以下の真空度で脱泡することができる。
硬化剤として固体の化合物を用いる場合は、加熱により溶融させつつ、減圧下脱泡することができる。
【0018】
また、硬化剤としてのポリオール化合物としては、ジオール化合物やトリオール化合物等の化合物であれば特に制限なく用いることができる。また、プレポリマーを形成するのに用いられるポリオール化合物と同一であっても異なっていてもよい。
具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの低分子量ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの高分子量のポリオール化合物などが挙げられる。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ここで、上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比であるR値が、0.60~1.40となるよう、各成分を混合する。R値は、0.65~1.30が好ましく、0.70~1.20がより好ましい。
【0020】
上記中空体とは、空隙を有する微小球体を意味する。微小球体には、球状、楕円状、およびこれらに近い形状のものが含まれる。中空体の例としては、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微小球状体や未発泡の加熱膨張性微小球状体を加熱膨張させたものが挙げられる。
上記ポリマー殻としては、特開昭57-137323号公報等に開示されているように、例えば、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル等を用いることができる。
なお、上記中空体を用いる他、水発泡等の化学的発泡や機械的な撹拌による発泡を用いて気泡を形成しても良く、これらの方法を組み合わせても良い。
【0021】
次に混合工程について説明すると、当該混合工程では、上記準備工程で準備した、プレポリマーとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤および中空体を、混合機内に供給して攪拌・混合する。混合工程は、上記各成分の流動性を確保できる温度に加温した状態で行われる。
混合順序に特に制限はないが、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物と中空体とを混合した混合液と、硬化剤および必要に応じて他の成分を混合した混合液とを用意し、両混合液を混合器内に供給して混合撹拌することが好ましい。このようにして、成形体成形用の混合液が調製される。
【0022】
次に成形体成形工程では、上記混合工程で調製された成形体成形用の混合液を50~100℃の型枠内に流し込み、プレポリマー、硬化剤が反応してポリウレタンポリウレア樹脂を形成することにより該混合液は硬化し、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する。
【0023】
そして、研磨層形成工程では、上記成形体成形工程により得られたポリウレタンポリウレア樹脂成形体をシート状にスライスするとともに、スライスした樹脂シートを所定形状に裁断する。
このようにして得られた状の樹脂シートは表面及び/又は裏面を研削処理する。一方の面が上記研磨面となり、当該研磨面に対して所要のカッターを用いて切削加工等を行うことで、任意のピッチ、幅、深さを有する溝を形成することができ、これにより研磨層3Cが得られることとなる。
【0024】
支持層3Dには、樹脂を含浸してなる含浸不織布、ポリエチレンフォームやポリウレタンフォームなどの発泡体、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の支持基材を用いることができる。
含浸不織布を支持層3Dとする場合、支持層3Dを製造するためには、少なくなくとも不織布基体に含浸した樹脂を湿式凝固させる工程、湿式凝固した繊維集合体の両面をバフ処理する工程、を含むことが挙げられる。本実施例の不織布基体は、特に限定されるものではなく、種種公知のものを採用できる。
不織布基体の例としては、ポリオレフイン系、ポリアミド系、ポリエステル系などの不織布を挙げることができる。また、不織布基体を得る際に繊維を交絡させる方法としても特に限定されず、例えば、ニードルパンチであってもよく、水流交絡であってもよい。
不織布基体は上述した中から1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。不織布基体は繊維の間の隙間が多く吸水性に富むが、樹脂を含浸させることにより隙間が樹脂で満たされるため吸水性が低下する。
【0025】
不織布基体に含浸させる樹脂は、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレアなどのポリウレタン系、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのビニル系、ポリサルホン、ポリエーテルサルホンなどのポリサルホン系、アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系、ポリアミド系及びポリスチレン系などが挙げられる。
【0026】
不織布の密度は、樹脂含浸前の状態(ウェッブの状態)で、好ましくは0.3g/cm3以下であり、より好ましくは0.1~0.2g/cm3である。また、樹脂含浸後の不織布の密度は、好ましくは0.5g/cm3以下であり、より好ましくは0.3~0.4g/cm3である。不織布の密度が高すぎると加工精度が悪化する傾向があり、低すぎると比較的吸水しやすくなる傾向がある。
また不織布に対する樹脂の付着率は、不織布の重量に対する付着させた樹脂の重量で表され、好ましくは50%以上であり、より好ましくは75~200%である。樹脂の付着率が大きすぎると支持層3Dとしての所望のクッション性を示さなくなる傾向があり、低すぎると支持層3Dが吸水してしまい、研磨特性に影響を及ぼす。
【0027】
不織布基体に樹脂を含浸させ湿式凝固する例としてポリウレタン樹脂を用いた場合を説明する。ポリウレタン樹脂と、ポリウレタン樹脂を溶解可能であって、後述の凝固液に混和する溶媒と、必要に応じてその他の添加剤とを混合し、更に必要に応じて減圧下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を準備する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロピルアルコール(IPA)及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。例えば、ポリウレタン樹脂を、ポリウレタン樹脂溶液の全体量に対して5~25質量%の範囲、より好ましくは8~15質量%の範囲で溶媒に溶解させてもよい。上記の範囲の場合、不織布基体に全体に行き渡らせやすくすることができる。
【0028】
次に、ポリウレタン樹脂溶液にシート状の不織布を浸漬した後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて樹脂溶液を絞り落とすことで所望の樹脂溶液付着量に調整し、不織布基体に樹脂溶液を略均一に含浸させる。次いで、樹脂溶液を含浸した不織布基体を、樹脂に対する貧溶媒、例えば水、を主成分とする凝固液中に浸漬することにより、ポリウレタン樹脂を凝固再生させる。凝固液には、樹脂の再生速度を調整するために、樹脂溶液中の溶媒以外の極性溶媒等の有機溶媒を添加してもよい。また、凝固液の温度は、樹脂を凝固できる温度であれば特に限定されず、例えば、15~60℃であってもよい。その後、必要に応じて、樹脂を含浸した不織布内に残存する溶媒を従来知られている洗浄液を用いて除去し、さらに、マングルローラを用いたり乾燥したりすることにより洗浄液を除去してもよい。このようにして、樹脂が湿式凝固した繊維集合体を得ることができる。その後、繊維集合体の両面にバフ処理を行い、繊維集合体の厚さを調整する。
【0029】
厚みが調整された繊維集合体は、所定位置に厚み方向に貫通孔が形成される。貫通孔は孔開け加工等により形成することができる。これにより、支持層3Dが得られることとなる。
【0030】
支持層3Dには、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の透明な基材も用いることができる。ポリエチレンテレフタレートの基材の両面に両面テープや接着剤などを用いて、必要により加圧することにより研磨層3Cと接着・固定することができる。研磨層3Cとの接着に用いる両面テープや接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープや接着剤の中から任意に選択して使用することができる。なお、基材が透明である場合は検査光が透過するため、貫通孔を設けなくてもよい。
【0031】
終点検出用窓3Bは、研磨層と同様の材料を用いることができ、例えば硬質ウレタンにより形成されている。終点検出用窓3Bの硬質ウレタンは、ウレタンプレポリマーを用い、ジアミン類又はジオール類等の硬化剤(鎖延長剤)、添加剤、触媒等を添加混合して得られるポリウレタンポリウレア樹脂を硬化させるプレポリマー法により製造される。
【0032】
終点検出用窓に用いるウレタンプレポリマーは、研磨層と同様の、例えばポリウレタン結合含有イソシアネート化合物を用いることができる。上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。上記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法および条件を用いて付加重合反応すればよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がポリウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれていてもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物が好ましく、研磨層で用いるジイソシアネート化合物を使用することができる。ジイソシアネート化合物の中でも、2,4-TDI、2,6-TDI、MDIがより好ましく、2,4-TDI、2,6-TDIが特に好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物も、研磨層で用いるポリオール化合物を使用することができる。ポリオール化合物の中でも、PTMG、又はPTMGとDEGの組み合わせが好ましい。上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
終点検出用窓に用いるプレポリマーについて、NCO基1個当たりのプレポリマーの分子量を示すプレポリマーのNCO当量としては、200~800であることが好ましく、300~700であることがより好ましく、400~600であることがさらにより好ましい。
【0035】
上記硬化剤としては、研磨層で用いられる化合物と同様の、例えば、ポリアミン化合物および/又はポリオール化合物を用いることができる。ポリアミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、MOCA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、MOCAが特に好ましい。ポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリアミン化合物を組み合わせて用いてもよい。
終点検出用窓に用いるポリアミン化合物は、研磨層のときと同様に、他の成分と混合し易くするためおよび/又は気泡を除去するために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。
【0036】
また、終点検出用窓に用いる硬化剤としてのポリオール化合物としては、ジオール化合物やトリオール化合物等の化合物であれば特に制限なく用いることができる。また、終点検出用窓に用いるプレポリマーを形成するのに用いられるポリオール化合物と同一であっても異なっていてもよい。上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ここで、終点検出用窓に用いるポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、終点検出用窓に用いる硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比であるR値が、0.60~1.40となるよう、各成分を混合する。R値は、0.65~1.30が好ましく、0.70~1.20がより好ましい。
【0038】
終点検出用窓には添加剤として、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤を用いることができる。これらの添加剤を用いることにより、終点検出用窓の黄変や劣化等を抑制することができる。
【0039】
研磨定盤4には、上記研磨パッド3の終点検出用窓3B及び支持層3Dの貫通孔3Daの下方位置に、検査光L1を鉛直上方へ照射する発光部7A及び被研磨物2からの反射光を受光する受光部7Bが設けられている。検査機構7は、これら発光部7A、受光部7Bと、それらの作動を制御し、かつ、研磨加工時における加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出する制御部7Cを備えている。
被研磨物2を研磨加工中においては、検査機構7の発光部7Aから検査光L1が上方に向けて照射されるので、該検査光L1は透明な終点検出用窓3Bを透過して被研磨物2の被研磨面2Aに照射される。すると、検査光L1は被研磨物2の被研磨面2Aによって下方に向けて反射され、その反射光は透明な終点検出用窓3を透過して受光部7Bによって検出される。受光部7Bで検出した反射光は制御部7Cへ伝達されるようになっている。
そして、被研磨物2の研磨加工が進行して、被研磨物2の被研磨面2Aが徐々に研磨されることに伴って、受光部7Bによって検出される反射光の強度等が変化する。制御部7Cは、受光部7Bによって検出された反射光の強度等が、予め登録された強度等になると、被研磨面2Aが加工終点になったものと判定して、研磨加工を停止させるようになっている。すると、駆動機構が停止されるので研磨定盤4及び保持定盤5の回転が停止するとともに、スラリー供給機構6からのスラリーの供給も停止されるようになっている。
検出機構7は、このようにして被研磨物2の研磨加工が行われる際に研磨加工の終点を検出するようになっている。なお、このような検査光L1を用いた検出機構7の構成は上述した特許文献1~3により公知である。
【0040】
しかして、本実施例は、研磨層3Cに設けた終点検出用窓3B及びその取り付け箇所等を以下のように改良したことが特徴であり、それによって終点検出用窓3Bが研磨層3Cから加工中に脱落するのを防止したものである。
図3に示すように、研磨層3Cの所定位置には上下方向の貫通孔3Caが形成されており、そこに略円柱状の終点検出用窓3Bが隙間なく係合した状態で設けられている。
終点検出用窓3Bは、軸方向寸法と外径が略同じとなる短い円柱状に形成されている。終点検出用窓3Bの側面となる外周部には、軸方向に所定間隔を維持してフランジ状の膨出部3Baが2箇所に形成されている。つまり、研磨面3Aと直交方向において、終点検出用窓3Bの外周部の2箇所に、凸部としての膨出部3Baが形成されている。終点検出用窓3Bは、ウレタンプレポリマーと硬化剤を混合したものを硬化させて作製されており、光を透過させることができるようになっている。なお、終点検出用窓3Bを円柱状であることを説明したが、四角柱状等の角柱状であってもよい。
各膨出部3Baの厚さ(軸方向寸法)及び外方への膨出長さは同じである。膨出部の長さ(高さ)は、0.1~0.5mmであることが好ましい。膨出部の長さが0.1~0.5mmとすることで、膨出部の強度を確保できつつ、終点検出用窓の脱落防止の効果を得ることができる。また、上下の膨出部3Baが隔てた距離(ピッチ)は、それらの厚さと略同じ程度の寸法となっている。膨出部3Baのピッチは、0.2~0.5mmであることが好ましい。膨出部3Baのピッチが0.2~0.5mmとすることにより、研磨層3Cの材料となる樹脂溶液が行き渡りやすく、膨出部を複数形成(加工)しやすくなるとともに、膨出部の強度を確保することができる。
また、上方側の膨出部3Baは、研磨面3Aと同じ上面3Bbから膨出部3Baの厚さよりも短い寸法だけ下方側に位置しており、下方側の膨出部3Baは、下面3Bcよりも膨出部3Baの厚さの半分程度上方側に位置している。なお、本発明の他の実施例として後述する膨出部3Baがねじ山(螺旋)を構成する場合は、膨出部3Bが上面3Bbから下面3Bcにかけて連続して位置する。
他方、研磨層3Cの貫通孔3Caは、上記終点検出用窓3Bの本来の外周面3Bd及び膨出部3Baと隙間なく係合されるように形成されている。
つまり、貫通孔3Caの本来の内周面には、終点検出用窓3Bの本来の外周面3Bdが隙間なく嵌合されている。また、貫通孔3Caの内周面の所定位置には、上記終点検出用窓3Bの各膨出部3Baの形状と寸法に合わせて、2箇所の凹部3Cbが形成されている。そして、終点検出用窓3Bの各膨出部3Baは、それらに対応する貫通孔3Caの凹部3Cbに隙間なく係合されている。
このように、本実施例の終点検出用窓3Bは、その外周部に脱落防止用の膨出部3Baが2箇所形成されており、他方、研磨層3Cの貫通孔3Caには、上記膨出部3Baが隙間なく係合される凹部3Cbが2箇所形成されている。
そして、終点検出用窓3Bの上面3Bdは研磨層3Cの研磨面3Aと同一平面となっており、終点検出用窓3の下面3Bcは研磨層3Cの下面3Ccと同一平面となっている。
研磨層3Cの上面が、被研磨物2の被研磨面2Aと摺動する研磨面3Aとなっており、その研磨面3Aの所定位置には、溝3Cdが形成されている。この溝3Cdは、研磨面3A面に格子状、同心円状、放射状等に形成されている。この溝3Cdの深さは全て同じとなっている。また、これらの溝3Cdの深さは、上記終点検出用窓3Bの上側の膨出部3Baよりも深く、かつ、下側の膨出部3Baよりも浅くなる深さに設定されている。この溝3Cdは、スラリーを保持又は排出するようになっている。本実施例の研磨パッド3における研磨層3C及び終点検出用窓3Bは以上のように構成されている。
【0041】
次に、以上のように構成された研磨パッド3の研磨層3Cの製造方法の一態様について
図4により説明する。
すなわち、先ず、所要の外径と軸方向長さを有する柱状素材100を製作する。本実施例の態様では、円柱状の柱状素材を記載しているが、角柱状の柱状素材としてもよい。この柱状素材100が後に上記終点検出用窓3Bとなる窓用部材となる。本実施例では、柱状素材の材料として、ウレタンプレポリマーと硬化剤を準備し、それらを混合させてから窓用の型枠に流し入れて硬化させることで柱状素材100を製作している(
図4(a)参照)。
次に、柱状素材100の外周部に、軸方向に等ピッチでフランジ状をした複数の膨出部100Aを形成する。本実施例では、柱状素材100の外周部を切削することにより、所定の幅(上下方向寸法)と深さ(半径方向寸法)を有する膨出部100Aを軸方向の複数箇所に形成している(
図4(b)参照)。換言すると、この工程では、柱状素材100の外周部に複数の凸部としての膨出部100Aを形成する。
次に、図示しない長方形の箱型をした型枠101を用意し、その型枠101内の所定位置に、上記複数の膨出部100Aが形成された柱状素材100を鉛直方向となるように設置する。
その後、研磨層3Cの材料となるウレタンプレポリマーと硬化剤を混合した混合液を型枠101内に流し入れて固める。これにより、柱状素材100が埋設された状態で、型枠101の内部空間と同一形状のポリウレタンポリウレア樹脂成形体102が作製される(
図4(c)参照)。このポリウレタンポリウレア樹脂成形体102が上記研磨層3Cの部分となる。
研磨層3Cの材料となるウレタンプレポリマーと硬化剤を混合した混合液は当初は液状となっているので、型枠101内に設置された柱状素材100の外周面及び複数の膨出部100Aの表面まで隙間なく混合液が充填されて固まるようになっている。
次に、上記ポリウレタンポリウレア樹脂成形体102を型枠101から取り外した後に、該ポリウレタンポリウレア樹脂成形体102における柱状素材100が埋設された箇所を、所定の厚さで水平面に沿って薄く切断して複数のシート状部材103として切り出す(
図4(d)参照)。
そして、該シート状部材103における上面及び下面を平滑となるように研磨する。この後、研磨面3Aと反対側の面にある研磨層3Cの下面に両面テープ等を貼り付ける。研磨面3Aとなる上面の所要位置に、スラリーの排出や保持をする溝が形成されるようになっている。これにより、
図3に示した本実施例の研磨パッド3の研磨層3Cが完成する(
図4(d)参照)。
このようにして、研磨パッド3の研磨層3Cが作製されたことになり、該研磨層3Cにおける上記柱状素材100の箇所が終点検出用窓3Bとなる。終点検出用窓3Bの外周部には、上下方向(軸方向)において少なくとも2箇所の膨出部3Baが維持されており、それらは隣接位置の研磨層3C側の貫通孔3Caに隙間なく係合した状態となっている。
このようにして研磨層3Cが作製されたら、予め貫通孔3Daを形成した支持層3Dを研磨層3Cの下面に貼り付ける。これにより、本実施例の研磨パッド3の製造が完了する(
図4(e))。
そして、このようにして製造された研磨パッド3は、その下面(支持層3Dの下面)が両面テープや接着剤等によって上記研磨定盤4の上面に固着されるようになっている。
なお、膨出部の形成方法として、柱状素材の外周部を切削する例を説明したがこれに限定されない。他の例としては、終点検出用窓の膨出部に対応する凹部が形成された窓用の型枠に混合した柱状素材の材料を流し入れ、柱状素材の材料が硬化したら、窓用の型枠を取り外し、硬化した柱状素材を取り出す方法がある。さらに他の例としては、柱状素材を埋設せずポリウレタンポリウレア樹脂成形体を作製し、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体の所定位置に貫通孔を形成してねじ切り加工等を施すことにより凹部を備えた貫通孔を形成する。その後、凹部を備えた貫通孔にウレタンプレポリマーと硬化剤を混合した混合液を流し入れて硬化することによっても柱状素材に膨出部を形成することができる。
【0042】
本実施例においては、以上のようにして研磨パッド3の研磨層3Cを製作し、それに支持層3Dを両面テープや接着剤等で接着して、研磨パッド3を製作するようにしている。
本実施例の研磨パッド3の研磨層3Cは、接着剤を用いることなく終点検出用窓3Bが研磨層3Cの貫通孔3Caに隙間なく係合した状態で取り付けられている。そのため、被研磨物2の被研磨面2Aに研磨層3Cの研磨面3Aが摺動する研磨加工中において、研磨面2Aに接着剤が混ざり込むことがなく、接着剤による被研磨物2への悪影響(スクラッチ等)を防止することができる。
また、本実施例においては、終点検出用窓3Bにおける少なくとも2箇所の膨出部3Baが、研磨層3Cの貫通孔3Caの凹部3Cbに隙間なく係合している。そのため、被研磨物2の研磨加工中において、終点検出用窓3Bが研磨層3Cの貫通孔3Caから脱落するのを防止することができる。
さらに、
図5(a)ないし
図5(b)に示すように、被研磨物2に対する研磨加工が繰り返されることに伴って、研磨パッド3における研磨層3Cの研磨面3Aが、
図5(a)に示す当初の状態から
図5(b)に示した交換すべき限度まで磨滅した状態となる。
研磨面3Aが磨滅することで、溝3Cdの深さが相対的に浅くなり、所定の限度まで溝3Cdの深さが浅くなると、研磨層3Cを取り換える交換時期となる(
図5(b)の状態)。その状態においても、溝3Cdの底部よりも下方側となる1箇所の膨出部3Baは磨滅することなく残存して凹部3Cbと係合している。換言すると、研磨層3Cを交換すべき時点においても、終点検出用窓3Bには少なくとも1つの膨出部3Baが残存するようになっている。したがって、本実施例によれば、被研磨物2の研磨加工中において、終点検出用窓3Bが研磨層3Cの貫通孔3Caから脱落するのを確実に防止することができる。
【0043】
次に、
図6(a)は、研磨パッド3の研磨層3Cに関する第2実施例を示したものである。この第2実施例においては、終点検出用窓3Bの外周面におねじ3Bfを形成してあり、それに合わせて、研磨層3Cの貫通孔3Caの内周面に、上記おねじ3Bfと隙間なく係合するめねじ3Cfが形成されている。なお、この第2実施例の研磨層3Cの製造方法は、
図4に示した第1の実施例の製造方法と同じである。
おねじ3Bfの凸部としてのネジ山は、軸方向(上下方向)において3か所以上、存在しており、溝3Cdが交換の限度まで浅くなった状態であっても、少なくとも1つのネジ山が残存するようになっている。その他の構成は、
図3、及び
図5(a)に示した第1の実施例と同じである。
この第2実施例においても、研磨層3Cの研磨面3Aが
図6(a)に示す当初の状態から
図6(b)に示した交換すべき限度まで磨滅した状態となっても、おねじ3Bfの凸部としてのネジ山が複数残存するようになっている。
したがって、この
図6(a)に示した第2実施例の研磨層3Cを備えた研磨パッド3であっても、上記第1の実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0044】
次に
図7(a)は、研磨パッド3の研磨層3Cに関する第3実施例を示したものである。この第3実施例においては、終点検出用窓3Bの外周面に角ネジ状のらせん状突起3Bgを形成してあり、それに合わせて、研磨層3Cの貫通孔3Caの内周面に、らせん状凹部3Cgが形成されており、それらは隙間なく係合した状態となっている。
らせん状突起3Bgによって形成される凸部は、軸方向(上下方向)の縦断面において2か所以上、形成されている。また、溝3Cdの底部よりも下方側には、らせん状突起3Bgによる凸部が少なくとも1つ形成されている。その他の構成は、
図3及び
図5(a)に示した第1の実施例と同じである。この第3実施例の研磨層3Cの製造方法も
図4に示した第1の実施例の製造方法と同じである。
この第3実施例においても、研磨層3Cの研磨面3Aが、
図7(a)に示す当初の状態から
図7(b)に示した交換すべき限度まで磨滅した状態となっても、らせん状突起3Bgの複数の凸部が残存するようになっている。
したがって、この
図7(a)に示す第3実施例の研磨層3Cを備えた研磨パッド3であっても、上記各実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0045】
なお、
図3に示した第1の実施例においては、終点検出用窓3Bに複数の膨出部3Baを形成し、それに対応させて研磨層3Cの貫通孔3Caの内周面に凹部3Cbを形成しているが、それらの凹凸の関係は逆の構成であってもよい。つまり、終点検出用窓3Bの外周部に複数の凹部を形成し、それに対応させて研磨層3Cの貫通孔3Caの内周面に膨出部を形成しても良い。この関係は、上記
図6、
図7に開示した各実施例についても同様である。
【符号の説明】
【0046】
1‥研磨装置 2‥被研磨物
3‥研磨パッド 3A‥研磨面
3B‥終点検出用窓 3Ba‥膨出部
3C‥研磨層 3Ca‥貫通孔
3Cb‥凹部 L1‥検査光