(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】細胞観察装置及び細胞観察方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/26 20060101AFI20240612BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240612BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240612BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240612BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20240612BHJP
G02B 7/36 20210101ALI20240612BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G02B21/26
C12M1/34 D
C12Q1/06
G03B13/36
G02B7/28 J
G02B7/36
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2020060187
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】化生 徹
(72)【発明者】
【氏名】西田 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大介
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/213709(WO,A1)
【文献】特開2014-085599(JP,A)
【文献】特開平10-048505(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003340(WO,A1)
【文献】特開2019-070751(JP,A)
【文献】特開2016-071588(JP,A)
【文献】特開2012-141457(JP,A)
【文献】特開2011-065253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
C12M 1/00 - 3/10
C12Q 1/00 - 3/00
G02B 7/28 - 7/40
G03B 3/00 - 3/12
G01N 21/00 - 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が収容された容器が載置されるステージと、容器内の細胞を撮像する撮像手段と、上記ステージの高さ位置または上記撮像手段の焦点の高さ位置を変更する昇降手段と、上記撮像手段が撮像した画像における細胞を検出して、該検出された細胞に関する算出値の合計値を求める制御手段とを備え、
上記昇降手段によって上記ステージの高さ位置または上記撮像手段の焦点の高さ位置が変更されながら所定の高さ位置毎に上記撮像手段によって容器内の細胞が撮像され、
上記制御手段は、上記撮像手段が撮像した各高さ位置の画像における
細胞の外周の長さ、細胞の外周の近似円の直径、細胞の外接円の直径、または細胞の内接円の直径のいずれかの合計値を算定して、該合計値が
減少傾向から増加傾向に切り替わる極小値となる位置を上記撮像手段の合焦点位置と判定し、
上記昇降手段により、上記ステージに載置された容器を合焦点位置に位置させるようにした細胞観察装置であって、
上記制御手段は、先ず、合焦点位置
に対応する上記極小値が含まれる高さ領域を粗サーチにより求め、次に、合焦点位置
が含まれる高さ領域で上記粗サーチよりも小さい寸法で高さ位置が変更される詳細サーチによって合焦点位置を求めることを特徴とする細胞観察装置。
【請求項2】
細胞が収容された容器の高さ位置または容器を撮像する撮像手段の焦点の高さ位置を変更して、所定の高さ位置毎に撮像手段によって容器内の細胞の画像を取得し、
取得した各細胞の画像内における細胞を検出し、該検出された細胞の外周長さ、細胞の外周の近似円の直径、細胞の外接円の直径、
または細胞の内接円の直
径のいずれかの合計値を算定し、
該合計値が
減少傾向から増加傾向に切り替わる極小値となる高さ位置を上記撮像手段の焦点が容器内の細胞の位置に合った合焦点位置と判定するようにした細胞観察方法であって、
制御手段は、先ず、合焦点位置
に対応する上記極小値が含まれる高さ領域を粗サーチにより求め、次に、合焦点位置
が含まれる高さ領域で上記粗サーチよりも小さい寸法で高さ位置が変更される詳細サーチによって合焦点位置を求めることを特徴とする細胞観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞観察装置及び細胞観察方法に関し、より詳しくは、観察対象となる細胞の良否判定や細胞のカウントの精度を向上させることが可能な細胞観察装置及び細胞観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡などの画像観察装置で細胞を観察する場合には、デジタルカメラなどの撮像手段で細胞を撮像し、該撮像された細胞の画像を画像処理してコントラストを判定することにより、オートフォーカス動作を行う装置が公知である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなコントラストを判定するオートフォーカス動作を行う装置を用いて細胞の観察や細胞のカウントを行う場合には、作業者が目視でピントを合わせた位置とは撮像手段の焦点位置がずれてしまい細胞の良否判定や細胞のカウントに誤りが生じる場合があった。そのため、細胞培養の自動化が進まず、再生医療製品のコスト高を招く要因ともなって再生医療普及の妨げとなっており、適切な焦点位置を設定できる細胞観察装置と細胞観察方法が要望されていたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、細胞が収容された容器が載置されるステージと、容器内の細胞を撮像する撮像手段と、上記ステージの高さ位置または上記撮像手段の焦点の高さ位置を変更する昇降手段と、上記撮像手段が撮像した画像における細胞を検出して、該検出された細胞に関する算出値の合計値を求める制御手段とを備え、
上記昇降手段によって上記ステージの高さ位置または上記撮像手段の焦点の高さ位置が変更されながら所定の高さ位置毎に上記撮像手段によって容器内の細胞が撮像され、
上記制御手段は、上記撮像手段が撮像した各高さ位置の画像における細胞の外周の長さ、細胞の外周の近似円の直径、細胞の外接円の直径、または細胞の内接円の直径のいずれかの合計値を算定して、該合計値が減少傾向から増加傾向に切り替わる極小値となる位置を上記撮像手段の合焦点位置と判定し、
上記昇降手段により、上記ステージに載置された容器を合焦点位置に位置させるようにした細胞観察装置であって、
上記制御手段は、先ず、合焦点位置に対応する上記極小値が含まれる高さ領域を粗サーチにより求め、次に、合焦点位置が含まれる高さ領域で上記粗サーチよりも小さい寸法で高さ位置が変更される詳細サーチによって合焦点位置を求めることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載した本発明は、細胞が収容された容器の高さ位置または容器を撮像する撮像手段の焦点の高さ位置を変更して、所定の高さ位置毎に撮像手段によって容器内の細胞の画像を取得し、
取得した各細胞の画像内における細胞を検出し、該検出された細胞の外周長さ、細胞の外周の近似円の直径、細胞の外接円の直径、または細胞の内接円の直径のいずれかの合計値を算定し、
該合計値が減少傾向から増加傾向に切り替わる極小値となる高さ位置を上記撮像手段の焦点が容器内の細胞の位置に合った合焦点位置と判定するようにした細胞観察方法であって、
制御手段は、先ず、合焦点位置に対応する上記極小値が含まれる高さ領域を粗サーチにより求め、次に、合焦点位置が含まれる高さ領域で上記粗サーチよりも小さい寸法で高さ位置が変更される詳細サーチによって合焦点位置を求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、適切なオートフォーカス機能を有する細胞観察装置及び細胞観察方法を提供することができ、細胞の良否判定や細胞のカウントの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図1のZ軸(上下方向)の異なる高さ位置で撮像手段が撮像した細胞の画像における細胞に関する算出値の合計値を示すグラフ。
【
図3】
図1の撮像手段が撮影した細胞の画像と細胞に関する算出値との関係を示す図であり、
図3(A)は細胞の外周の長さを算出値とする場合、
図3(B)は近似円の直径を算出値とする場合、
図3(C)は外接円の直径を算出値とする場合、
図3(D)は内接円の直径を算出値とする場合、
図3(E)は面積を算出値とする場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、
図1において1は細胞観察装置であり、この細胞観察装置1は実質的に顕微鏡と同じ構成からなり、無菌細胞培養システムとしてのアイソレータ2の隣接位置に配置されている。
細胞観察装置1と対向するアイソレータ2の壁面の一部には、アイソレータ2の内部と連通する観察部2Aが外方に向けて突設されている。この観察部2Aの底部にステージ3が水平に配置されており、ステージ3上には、観察対象となる容器4が載置されている。なお、容器4としては、上面が開口した皿状の血球計算盤を用いている。
アイソレータ2内に配置された図示しないロボットハンドまたは作業者がピペットを用いてアイソレータ2内で培養容器から細胞懸濁液を上記容器4内に供給するようになっており、該容器4内に収容された細胞Cを細胞観察装置1によって観察するようになっている。観察部2A、ステージ3及び容器4はガラス等の透明な材料からなり、ステージ3に載置された容器4内の細胞Cを細胞観察装置1によって観察することができる。
なお、細胞懸濁液を容器4に供給する前に、アイソレータ2内の培養容器にトリプシンなどの試液を加えても良く、また、細胞Cのカウントを行いやすくするために細胞懸濁液を容器4に供給する前に該細胞懸濁液に希釈したトリパンブルー液などの試液を加えても良い。
【0009】
細胞観察装置1は、ステージ3上の容器4に向けて白色光源5から白色光L1を照射するとともに、白色光L1が照射された状態において容器4内の細胞Cを下方側から撮像手段6で撮像し、撮像手段6によって撮像された画像を基にして制御手段7が細胞Cの良否の判定や細胞Cの粒子数(個数)をカウントするようになっている。
ここで、細胞観察装置1の観察対象となる細胞Cとしては、iPS細胞やES細胞等の幹細胞、幹細胞から分化した細胞、生検などにより採取された細胞、及び採取された細胞が培養された細胞などを想定している。
細胞観察装置1は、細胞Cを収容した容器4が載置される上記ステージ3と、フレーム8と、フレーム8の上部に配置されて、上記ステージ3上の容器4内に向けて白色光L1を照射する白色光源5と、この白色光源5から照射された白色光L1をステージ3上の容器4へ案内する第1光学系11と、フレーム8の下部に配置されて容器4内の細胞Cを下方側から撮像する撮像手段6と、ステージ3の下方側の位置から撮像手段6の間に配置された第2光学系12と、第2光学系12の対物レンズ13を昇降させる昇降機構14と、白色光源5や昇降機構14等の作動を制御するとともに細胞Cの良否の判定や細胞Cの粒子数(個数)のカウントを行う制御手段7を備えている。
上記各構成部材が配置されたフレーム8は、図示しない水平移動機構15に支持されており、該水平移動機構15によってフレーム8全体が水平面における相互に直交するX方向とY方向に移動可能となっている。これにより、ステージ3を除いた細胞観察装置1全体が水平面のXY方向に移動可能となっており、撮像手段6がステージ3上の容器4を撮像する際の水平方向の位置の調整や観察領域の変更ができるようになっている。
【0010】
フレーム8の前面の中央部には上記アイソレータ2内の観察部2Aの位置に合わせて収容凹部8Aが形成されており、この収容凹部8Aに観察部2Aを収容した状態において、容器4内の細胞の観察を行うようになっている。
白色光源5及び第1光学系11は、フレーム8の上方側に配置されており、撮像手段6及び第2光学系12は、フレーム8の下方側に配置されている。
第1光学系11は、フレーム8の収容凹部8Aの上方側に配置されており、上方側から順次、第1反射ミラー17、位相差リング18及びコンデンサレンズ19によって構成されている。これら第1光学系11の構成部材は、フレーム8の所定の高さ位置に固定して配置されている。
白色光源5の作動は制御手段7によって制御されるようになっており、制御手段7が白色光源5を作動させると、該白色光源5から発光された白色光L1は第1反射ミラー17によって下方に向けて反射された後に、位相差リング18及びコンデンサレンズ19を経由して、ステージ3上の容器4に照射されるようになっている。
一方、第2光学系12は、フレーム8における収容凹部8Aの下方側に配置されており、収容凹部8Aの直下位置に水平に配置された対物レンズ13と、その下方に配置された第2反射ミラー21と、この第2反射ミラー21と撮像手段6の間に順次配置された位相差板22及び集光レンズ23を備えている。
第2反射ミラー21、位相差板22及び集光レンズ23は所定の高さ位置に固定して配置されているが、対物レンズ13は、昇降機構14に支持されてZ方向(上下方向)に昇降可能となっている。
昇降機構14の作動は制御手段7によって制御されるようになっており、制御手段7は、昇降機構14によって対物レンズ13を可動可能な上下方向の範囲において昇降させることにより、撮像手段6が容器4内の細胞Cを撮像する際に対物レンズ13の焦点位置を調整できるようになっている。
本実施例は、白色光源5から白色光L1を発光させて、第1光学系11を経由してステージ3上の容器4に白色光L1を照射し、そのように白色光L1が照射された状態の容器4内の細胞Cを下方側から第2光学系12を介して撮像手段6によって撮像するようにしている。
撮像手段6としてはデジタルカメラを用いており、該撮像手段6が撮像した容器4内の細胞Cの画像は、制御手段7に送信されるようになっている。そして、制御手段7は、撮像手段6が撮像した容器4内の細胞Cの画像を基にして細胞の良否や細胞の数をカウントするようになっている。
後に詳述するが、本実施例は、撮像手段6が容器4内の細胞Cを撮像する際に対物レンズ13の焦点が容器4内の細胞Cの位置に合った合焦点位置にオートフォーカス可能な装置と方法を提案するものであり、合焦点位置を求めたら、その位置で容器4を撮像手段6によって再度、撮像し、その撮像画像を基にして細胞Cの良否等を判定するようになっている。
【0011】
以下、細胞観察装置1による具体的なオートフォーカス方法と判定処理について説明する。
先ず、アイソレータ2内で細胞を培養している図示しない培養容器(ディッシュ、プレート、フラスコなど)内に所要に応じてロボットハンド(または作業者)がトリプシン等の試液を加える。
次に、アイソレータ2内において、上記培養容器からロボットハンド(または作業者)がピペットを用いて細胞懸濁液を取り出した後、ステージ3上の容器4内に供給する。なお、必要に応じて上記アイソレータ2内において上記培養容器内から取り出された細胞懸濁液に、希釈したトリパンブルー液等の試液を加えることで、細胞観察装置1による細胞Cの数のカウントを行いやすくなる。
この後、細胞観察装置1においては、先ず粗サーチによって撮像手段6が容器4を撮像する際の対物レンズ13の合焦点位置がある高さ領域を求め、次に、詳細サーチによって上記高さ領域における合焦点位置を求めるようになっている。
より詳細には、粗サーチは次のようにして行われる。すなわち、先ず、白色光源5から容器4に向けて白色光L1を照射した状態において、昇降機構14によって対物レンズ13を昇降可能な範囲における上昇端の高さ位置から下降端の高さ位置(Z軸における0~X)まで所定量ずつ(例えば30μmずつ)下降させながら、該所定量ずつ下降させる高さ毎に撮像手段6によって容器4内の細胞Cを撮像して、撮像する高さ位置が異なる複数の画像を取得する。なお、このように間欠的に下降させるのではなく、連続的に下降させながら所定量下降する毎に撮像手段6で容器4を撮像するようにしても良い。
撮像手段6が撮像した容器4内の細胞Cの画像は制御手段7に送信されるので、制御手段7は、撮像手段6が撮像した所定量ずつ下降させた各高さ位置における画像において、各画像内にある全ての細胞Cまたは細胞領域の各々の外周の長さを算出値として算出した後、さらにそれら算出値としての外周の長さの合計値を算定する。本実施例では、各画像について求めた細胞Cの外周の長さを算出値として用いている(
図2、
図3(A)参照)。
なお、理解を容易にするために、
図3(A)では細胞Cを1つだけ示しているが、実際には複数の細胞Cまたは細胞領域が検出されるものであって、それら全ての細胞Cまたは細胞領域に対して外周の長さを算出した後、合計値を算定するものである。
なお、算出値としては、細胞Cまたは細胞領域の外周の長さを用いる代わりに、各画像における各細胞Cまたは細胞領域の外周の近似円の直径を算出値として求めて、それら各々の細胞の外周の近似円の直径の合計値を算定しても良い(
図3(B)参照)。また、細胞Cの外周の近似円の直径の代わりに、細胞Cの外接円の直径(
図3(C))、または細胞Cの内接円の直径(
図3(D))、または細胞Cの面積(
図3(E))のいずれかを算出値として求めて、それらについての合計値を算定しても良い。
このようにして、対物レンズ13を上昇端から下降端まで所定量ずつ下降させた際における撮像手段6による各高さでの細胞Cの撮像画像を取得すると、制御手段7は、算出された算出値の合計値が極小値A4(山A2と山A3の谷間となる値)となる大まかな高さ領域A1を求める(
図2参照)。
ここでいう「極小値A4」は、
図2における局所的最小値を意味するものであり、単なる最小値とは異なるものである。つまり、算出値としての細胞Cの外周の長さの合計値の変動に着目するが、山A2と山A3の谷の部分A4(減少傾向から増加傾向に切り替わる最小値)を「極小値A4」として制御手段7が認識するようになっている。
このようにして、本実施例では、先ず粗サーチを行うことで、合焦点位置AXに対応する極小値A4が含まれている高さ領域A1を制御手段7が求めるようになっている。
【0012】
上述した粗サーチの後に詳細サーチが行われる。すなわち、この後、上記極小値A4が含まれる高さ領域A1に関して、上述した粗サーチの場合と比べて小さな寸法となる所定量(例えば6μm)毎に、高さ領域A1における上昇端の高さから下降端の高さまで昇降機構14によって対物レンズ13を下降させて、その都度、撮像手段6によって容器4内の細胞Cの画像を撮像する。
そして、高さ領域A1において撮像手段6によって撮像された各高さ位置における容器4内の細胞Cの画像を基にして、上述した粗サーチの場合と同様に、制御手段7は、各高さ位置の画像における細胞Cの外周の長さを算出値として求めた後に、それらの合計値を算定する。
なお、ここでも、算出値として細胞Cの外周の長さの代わりに、
図3(B)~
図3(E)に示すように、細胞Cの外周の近似円の直径、細胞Cの外接円の直径、細胞Cの内接円の直径、または細胞の面積のいずれかを求めて、それらを検出して用いても良い。
この後、制御手段7は、上記高さ領域A1において算出値の合計値が極小値A4(最小値)となる高さ位置を、撮像手段6が容器4を撮影する際の対物レンズ13の焦点が合った合焦点位置AXとして判定する。
本実施例では、以上のようにして、制御手段7が昇降機構14を介して対物レンズ13を上昇端から下降端まで所定量ずつ下降させ、それに伴って撮像手段6によって容器4内の細胞Cの画像を順次、撮像手段6により撮像し、先ず粗サーチにおいて極小値A4がある高さ領域A1を求め、次に、詳細サーチによって極小値A4の位置、つまり、対物レンズ13の焦点が容器4内の細胞Cの高さと合った合焦点位置AXを求める。
そして、この後、合焦点位置AXとして検出された極小値A4の高さ位置まで昇降機構14によって対物レンズ13を移動させて、その高さ位置で対物レンズ13を停止させてから、再度、撮像手段6によって容器4内の細胞Cを撮像する。これにより、容器4内の細胞Cに対して正確にピントが合った状態で、撮像手段6によって容器4内の細胞Cを撮像することができる。
この後、制御手段7は、合焦点位置AXで撮像手段6が撮影した容器4内の細胞Cの画像を基にして、細胞の良否の判定を行うとともに細胞粒子のカウントを行うようになっている。
【0013】
以上のように、本実施例によれば、作業者が目視で対物レンズ13を昇降させることで撮像手段6のピントが容器4内の細胞に合った合焦点位置を探す場合と同等の精度で合焦点位置AXをオートフォーカスで検出することができる。そのため、容器4内の細胞Cを撮像手段6で撮像するにあたって最適なオートフォーカス機能を有する細胞観察装置1を提供することができる。また、細胞Cの良否の判定や細胞の数のカウントの精度を向上させることが可能な細胞観察装置1を提供することができる。
さらに、本実施例の細胞観察装置1は細胞自動培養装置に搭載することが可能であり、それによって再生医療の普及に大きく貢献することが可能である。
【0014】
なお、本実施例においては、観察対象となる細胞Cとして、iPS細胞、ES細胞といった幹細胞、幹細胞から分化した細胞、生検などにより採取された細胞、採取された細胞が培養された細胞を想定しているが、特にこれらに限定されるものではない。
また、細胞の種類や培養の経過(初期、中期、後期)に応じて、
図3(A)~
図3(E)に示した算出値のもとになる対象(細胞の外周の長さ、細胞の外周の近似円の直径、細胞の外接円の直径、細胞の内接円の直径、細胞の面積)を適宜使い分けても良い。
また、上述した実施例においては、粗サーチ及び詳細サーチにおいて昇降機構14を介して対物レンズ13を上昇端から下降端まで所定量(寸法)ずつ下降させているが、これとは逆に、対物レンズ13を下降端から上昇端まで所定量(寸法)ずつ上昇させることで上記算出値を得るようにしても良い。また、必ずしも上昇端から下降端まで下降、または下降端から上昇端まで上昇させなくとも良く、所定の範囲で下降または上昇させるものでも良い。
また、昇降機構14によって対物レンズ13を昇降させる代わりに、ステージ3自体を昇降させる構成を採用しても良く、さらには、撮像手段6及び第2光学系12を一体的に昇降させる構成を採用しても良い。
また、観察部2Aにおいてステージ3の代わりに、ロボットハンドが容器4を保持し、容器4を水平または上下に移動させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0015】
1‥細胞観察装置 3‥ステージ
4‥容器 6‥撮像手段
7‥制御手段 13‥対物レンズ
14‥昇降機構 AX‥合焦点位置
A4‥極小値 C‥細胞