(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ふろ装置、及び、ふろ装置での入退浴誤判定対応のガイダンス方法
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20240612BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20240612BHJP
F24H 15/265 20220101ALI20240612BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20240612BHJP
F24H 15/414 20220101ALI20240612BHJP
【FI】
F24H15/196 301W
F24H15/246
F24H15/265
F24H15/269
F24H15/414
(21)【出願番号】P 2020146164
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-351497(JP,A)
【文献】特開2004-301381(JP,A)
【文献】特開2018-071858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽を含むふろ装置であって、
前記浴槽内の水位を検出する水位検出器と、
浴槽水の循環経路を前記浴槽の外部に形成するための循環ポンプと、
前記循環経路を通流する前記浴槽水を加熱するための追焚回路と、
前記水位検出器による前記浴槽の水位検出値に基づいて、前記浴槽への入浴、及び、前記入浴の検知後における前記浴槽からの退浴を検知する制御部と、
前記制御部による前記入浴の検知時及び前記退浴の検知時の各々において、入浴判定又は退浴判定に関連する判定データを記憶するための記憶部とを備え、
前記判定データは、前記入浴又は前記退浴の検知日時を含
み、
前記制御部は、退浴状態において、前記水位検出値の変化量が予め設定された判定値よりも大きくなると、前記退浴状態から入浴状態への遷移である前記入浴を検知し、
前記判定データは、前記入浴の検知時における、前記変化量及び前記判定値を更に含み、
前記判定データは、前記循環ポンプ及び前記追焚回路の少なくとも一方の作動を伴うふろ動作の終了から一定時間内で前記入浴が検知されたときと、それ以外のときに前記入浴が検知されたときとの間で異なるデータを更に含む、ふろ装置。
【請求項2】
浴槽を含むふろ装置であって、
前記浴槽内の水位を検出する水位検出器と、
浴槽水の循環経路を前記浴槽の外部に形成するための循環ポンプと、
前記循環経路を通流する前記浴槽水を加熱するための追焚回路と、
前記水位検出器による前記浴槽の水位検出値に基づいて、前記浴槽への入浴、及び、前記入浴の検知後における前記浴槽からの退浴を検知する制御部と、
前記制御部による前記入浴の検知時及び前記退浴の検知時の各々において、入浴判定又は退浴判定に関連する判定データを記憶するための記憶部とを備え、
前記判定データは、前記入浴又は前記退浴の検知日時を含み、
前記制御部は、予め定められた複数の退浴判定方式のうちの1つを適用して、前記退浴を検知し、
前記判定データは、前記複数の退浴判定方式の間で異なるデータを更に含み、
前記制御部は、前記浴槽及び前記水位検出器の配置高さの差が所定範囲内であるときと、当該所定範囲外であるときとの間で、前記複数の退浴判定方式のうちの異なる退浴判定方式を適用する
、ふろ装置。
【請求項3】
請求項
1に記載のふろ装置に適用される入退浴誤判定対応のガイダンス方法であって、
前記入浴の誤判定が、前記退浴状態から前記入浴状態への誤検知が生じている第1のケースと、前記退浴状態から前記入浴状態への非検知が生じている第2のケースとのいずれであるかの入力を受ける入力ステップと、
前記入力ステップにおいて前記第1のケースと入力された場合に、前記判定値を自動的に上昇させるステップと、
前記入力ステップにおいて前記第2のケースと入力された場合に、前記判定値を自動的に低下させるステップとを備える、ふろ装置の入退浴誤判定対応のガイダンス方法。
【請求項4】
請求項
2に記載のふろ装置に適用される入退浴誤判定対応のガイダンス方法であって、
前記退浴は、初期設定時に入力された、前記浴槽及び前記水位検出器の配置高さの差に係る情報に基づいて選択された、前記複数の退浴判定方式のうちの1つを用いて判定され、
前記配置高さの差に係る実際の情報の入力を受ける入力ステップと、
前記初期設定で入力された情報と、前記入力ステップでの前記実際の情報とが異なる場合に、前記実際の情報に従って前記複数の退浴判定方式の1つを選択するように、前記配置高さに係る情報を修正するステップとを備える、ふろ装置の入退浴誤判定対応のガイダンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふろ装置、及び、当該ふろ装置での入退浴誤判定への対応のガイダンス方法に関し、より特定的には、浴槽に対する入退浴検知機能を有するふろ装置と、当該ふろ装置での入退浴の誤判定原因解析のガイダンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽内の水位を検出するための水位センサの検出値を用いて、浴槽に対する入退浴を検知するふろ装置が公知である。例えば、特許第3683938号公報(特許文献1)には、予め定めた単位時間(例えば、30秒)内に現在水位が、予め実験等で求められて記憶部に予め格納された判定値(例えば、3cm)以上上昇したときに、入浴を検知する制御が記載されている。
【0003】
又、特開2014-199168号公報(特許文献2)では、水位センサの出力特性として、浴槽への湯張り完了後における循環配管路内の湯水温度の変化に伴う比重の変化に起因して、浴槽水位の判断誤差が大きくなる可能性が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3683938号公報
【文献】特開2014-199168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような、入退浴の検知結果を用いて、入浴後の一定時間が経過しても退浴が検知されないときに浴室外に対して報知する機能や、入浴時間の計測機能等を有する、入浴者のみまもり機能を実現することができる。一方で、入浴又は退浴していないのに入浴又は退浴が検知される誤検知、及び、入浴又は退浴したのに検知されない非検知を含む、入退浴の誤判定が発生すると、みまもり機能が所望のパフォーマンスを発揮できなくなることが懸念される。
【0006】
しかしながら、機器故障の発生時にはメンテナンスのための故障に係るデータを蓄積することが一般的に行われる一方で、入退浴判定に関連するデータを蓄積することは行われておらず、この結果、入退浴の誤判定に関する問題がユーザから指摘された際に、その原因を適切に究明することが困難であった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、入退浴の誤判定の原因を究明することが可能なふろ装置、及び、当該ふろ装置での入退浴の誤判定に対応するためのガイダンス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面では、浴槽を含むふろ装置であって、水位検出器と、循環ポンプと、追焚回路と、制御部と、記憶部とを備える。水位検出器は、浴槽内の水位を検出する。循環ポンプは、浴槽水の循環経路を浴槽の外部に形成する。追焚回路は、循環経路を通流する浴槽水を加熱するように構成される。制御部は、水位検出器による浴槽の水位検出値に基づいて、浴槽への入浴、及び、入浴の検知後における浴槽からの退浴を検知する。記憶部は、制御部による入浴の検知時及び退浴の検知時の各々において、入浴判定又は退浴判定に関連する判定データを記憶する。
【0009】
本発明の他のある局面では、ふろ装置に適用される入退浴誤判定対応のガイダンス方法であって、入浴の誤判定が、退浴状態から入浴状態への誤検出である第1のケースと、退浴状態から入浴状態へ非検知である第2のケースとのいずれであるかの入力を受ける入力ステップと、入力ステップにおいて第1のケースと入力された場合に判定値を自動的に上昇させるステップと、入力ステップにおいて第2のケースと入力された場合に、判定値を自動的に低下させるステップとを備える。判定データは、入浴又は退浴の検知日時を含む。
【0010】
本発明の更に他のある局面では、ふろ装置に適用される入退浴誤判定対応のガイダンス方法であって、退浴は、初期設定時に入力された、浴槽及び水位検出器の配置高さの差に係る情報に基づいて選択された、複数の退浴判定方式のうちの1つを用いて判定される。ガイダンス方法は、配置高さの差に係る実際の情報の入力を受ける入力ステップと、初期設定で入力された情報と、入力ステップでの実際の情報とが異なる場合に、実際の情報に従って複数の退浴判定方式の1つを選択するように、配置高さに係る情報を修正するステップとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御部による入浴及び退浴の各検知時において、入浴判定又は退浴判定に関連する判定データが記憶部に蓄積されるので、入退浴の誤判定の原因を究明することが可能なふろ装置を提供することができる。又、当該ふろ装置での入退浴の誤判定について一次的対応のためのガイダンス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係るふろ装置を含む給湯システムの概略構成図である。
【
図2】水位センサの検出値を用いた入退浴検知を説明する概念図である。
【
図3】入退浴判定の一例を説明する概念的な波形図である。
【
図4】浴槽形状の主要なバリエーションを説明する概念図である。
【
図5】浴槽の配置高さの分類を説明する概念図である。
【
図6】浴槽の配置高さに依存した水位検出値の変化を説明する概念図である。
【
図7】ふろ装置の初期設定時における入退浴判定に係る制御処理を説明するフローチャートである。
【
図8】入浴検知時における入退浴判定データの蓄積処理を説明するフローチャートである。
【
図9】退浴検知時における入退浴判定データの蓄積処理を説明するフローチャートである。
【
図10】本実施に係るふろ装置を含む通信システムの構成例を説明するブロック図である。
【
図11】本実施の形態に係るふろ装置での誤判定入退浴誤判定対応のガイダンス方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るふろ装置を含む給湯システムの概略構成図である。
【0015】
図1を参照して、給湯システム300は、給湯装置100を備える。給湯装置100は、給湯回路5、追焚回路7、循環路8、及び、コントローラ12を備える。給湯装置100は、図示しない給湯栓等に加えて、浴室200に設置された浴槽20を給湯先に含む。
【0016】
給湯回路5は、導入された低温水を加熱するための加熱機構(図示せず)を含むように構成される。加熱機構は、例えば、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱、及び、発電時の排熱又はヒートポンプによる加熱の何れを利用する構成であってもよい。又、給湯回路5は、加熱された高温水がそのまま出湯される構成の他、加熱された高温水を貯留する貯湯式の構成であってもよい。
【0017】
給湯回路5は、加熱機構の作動により、ユーザによる設定温度に従う温水を出力することができる。一方で、当該加熱機構の停止時には、低温水が加熱されることなく給湯回路5から出力される。
【0018】
給湯回路5の出湯経路(図示せず)は、浴槽20へ至る注湯配管13aと接続される。注湯配管13aには、ふろ注湯弁13が介挿接続される。ふろ注湯弁13は、例えば、開閉制御可能な電磁弁によって構成することができる。ふろ注湯弁13を開放することにより、給湯回路5から注湯配管13aへ湯水が出力される経路を形成することができる。これにより、給湯装置100は、給湯栓等に加えて、給湯先に浴槽20を含むことができる。以下では、給湯回路5からの出力温度に関わらず、ふろ注湯弁13の開放により、湯又は水が、注湯配管13aを経由して浴槽20へ供給される動作を「注湯」と称する。注湯配管13aには、図示しない流量センサが設けられており、当該流量センサによって注湯流量を検出することができる。
【0019】
循環路8は、浴槽20の湯水21(以下、浴槽水21とも称する)を給湯装置100内で循環するためのものであり、戻り配管8a及び往き配管8bと、循環ポンプ10とを有する。戻り配管8aの一方端は、浴槽20内の循環アダプタ25と接続され、他端は、追焚回路7の入力側と接続される。往き配管8bの一端は、追焚回路7の出力側と接続され、他端は循環アダプタ25と接続される。
【0020】
循環ポンプ10の作動により、循環アダプタ25から吸入された浴槽水21が、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して、循環アダプタ25から吐出される経路(追焚循環経路)が形成される。追焚回路7は、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱機構(図示せず)を含むように構成することができる。追焚回路7は、追焚循環経路の形成時に作動して、戻り配管8aから導入された浴槽水21を加熱して、往き配管8bに出力する。加熱後の浴槽水21が往き配管8bによって浴槽20へ供給されることにより、浴槽水21の温度を上昇する追焚運転を行うことができる。
【0021】
戻り配管8aには、温度センサ9及び水位センサ11が接続されている。温度センサ9により、浴槽水21の温度を検出することができる。温度センサ9は、例えば、サーミスタによって構成することができる。
【0022】
水位センサ11は、例えば、圧力センサによって構成されて、浴槽水21の水圧に基づいて、浴槽20内での浴槽水21の水位(以下、単に「浴槽水位」とも称する)を検知する。温度センサ9及び水位センサ11は、循環ポンプ10の停止時においても、戻り配管8a内で浴槽水21が浸入する領域に配置される。水位センサ11は、「水位検出器」の一実施例に対応する。
【0023】
戻り配管8aは、更に、接続点8cにおいて、注湯配管13aと接続される。この結果、循環ポンプ10の停止時に給湯装置100から注湯すると、注湯配管13aから、接続点8c及び戻り配管8aを経由して浴槽20へ至る第1の注湯経路と、注湯配管13aから、接続点8c、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して浴槽20へ至る第2の注湯経路とを形成することができる。これにより、給湯装置100からの注湯によるふろ湯張り運転を行うことができる。
【0024】
この様に、給湯装置100(注湯回路)からの湯水は、循環路8を含む第1及び第2の注湯経路を介して、浴槽20へ供給される。浴槽20には、排水栓26が設けられる。
【0025】
コントローラ12は、例えば、マイクロコンピュータによって構成すること可能であり、メモリ12mを含んで構成される。コントローラ12は、給湯回路5、追焚回路7、温度センサ9、循環ポンプ10、水位センサ11、及び、ふろ注湯弁13等と電気的に接続されている。コントローラ12は、図示しない電気配線を介して電源と接続されて、電力供給を受ける。コントローラ12は「制御回路」の一実施例に対応する。コントローラ12には、温度センサ9及び水位センサ11による検出値が入力される。
【0026】
更に、コントローラ12は、リモコン30及びリモコン50と通信可能に接続されている。尚、これらの機器間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、又、有線であっても無線であってもよい。
【0027】
リモコン30は、浴室200の壁面に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン30は、情報を表示するための表示部31と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部32とを含む。表示部31は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、浴槽水位及び温度を表示可能に構成されている。操作部32は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、少なくとも、浴槽水位及び温度に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0028】
リモコン50は、浴室200の外部に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン50は、代表的には台所の壁面に設置されている。リモコン50は、情報を表示するための表示部51と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部52とを含む。
【0029】
表示部51は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、給湯設定温度、及び、ふろ設定温度等を表示可能に構成されている。操作部52は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯装置100の運転に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0030】
コントローラ12は、リモコン30,50からのユーザ等の入力設定操作に基づき、給湯システム300がユーザ指示に従って運転されるように、給湯装置100の動作を制御する。
【0031】
当該制御の一例として、コントローラ12は、リモコン30,50の操作により、ふろ自動運転が指示されると、浴槽20への湯張り運転を実行する。当該湯張り運転は、給湯装置100からの注湯により、浴槽20において、浴槽水位が設定水位に達し、かつ、温度センサ9によって検出される浴槽水温度がふろ設定温度に達すると終了される。
【0032】
給湯システム300では、浴槽20への湯張り運転の終了後、給湯装置100によって浴槽水21の温度及び水位を維持する自動モードを設定することが可能である。当該自動モードの選択時には、温度センサ9によって検出された浴槽水温度が、ふろ設定温度に対応されて設定された基準温度(例えば、ふろ設定温度よりも2~3℃低く設定)よりも低下すると、保温制御のために追焚運転が自動的に起動される。更に、水位センサ11によって検出された浴槽水位が設定水位よりも低下すると、給湯装置100から浴槽20へ追加的に注湯する足し湯運転が起動される。
【0033】
本実施の形態に係る給湯システムでは、浴槽20の水位センサ11の検出値を用いて、浴槽20への入退浴が検知される。
【0034】
図2には、水位センサの検出値を用いた入退浴の検知を説明する概念図が示される。
【0035】
図2を参照して、浴槽20への湯張り運転の終了時には、水位センサ11によって検出される浴槽水位は、設定水位に達している。この状態が「退浴状態」として初期設定される。
【0036】
退浴状態において、水位上昇に関する予め定められた入浴判定条件が成立すると、退浴状態から入浴状態への遷移、即ち、入浴が検知される。これに対して、入浴状態において、水位低下に関する予め定められた退浴判定条件の成立が検知されると、入浴状態から退浴状態への遷移、即ち、退浴が検知される。
【0037】
図3には、入退浴判定の一例を説明するための概念的な波形図が示される。
【0038】
図3を参照して、浴槽20の水位検出値Xは、水位センサ11による各時点での出力値をそのまま用いてもよく、或いは、ローパスフィルタ等によって当該出力値からノイズ(高周波成分)を除去したものであってもよい。
【0039】
図3の例では、水位検出値Xは、時刻taでの入浴に応じて上昇した後、時刻tbにおいて、入浴者が体勢を変更したことによって低下する。例えば、時刻tbでは、段差付の浴槽20において、入浴者が半身浴のために段差部に腰掛けた動作を想定している。その後、時刻tcにおいて、入浴者が退浴することで、水位検出値Xは、さらに低下する。
【0040】
まず、時刻ta~tcのユーザ挙動に対する入退浴判定例を説明する。
【0041】
コントローラ12は、退浴状態時には、水位検出値Xを周期的に収集するとともに、現在の水位検出値Xtnと、所定時間Tx(秒)前の水位検出値Xtxとの間の水位変化量(上昇量)ΔXtnを算出する。ここで、Tx(秒)は、水位検出値Xtnを収集する周期の複数個分の時間長に相当する。
【0042】
そして、水位変化量ΔXtnが判定値Xth以上になると、退浴状態から入浴状態への遷移、即ち、入浴を検知する。この際に、ΔXtn≧XthがTx(秒)よりも短い一定時間連続したことを条件に、入浴を検知することも可能である。
図3の例では、時刻t1又は時刻t1から上記一定時間が連続したタイミングで入浴を検知することができる。
【0043】
ここで、入浴判定に用いられる判定値Xthは、所定体積(例えば、20[l]程度)の体積増減に対応する水位変化量として予め定めて、コントローラ12に記憶することができる。但し、判定値Xthは、浴槽20の断面積によって変わってくる。
【0044】
図4は、浴槽形状の主要なバリエーションを説明する概念図である。
図3には、浴槽20の概念的な断面図が示される。
【0045】
図4(a)を参照して、いわゆる和式の浴槽20では、浴槽面積が比較的小さく、かつ、浴槽水位に依らず浴槽面積はほぼ一定である。
【0046】
これに対して、
図4(b)に示される、いわゆる洋式の浴槽20では、浴槽面積が比較的大きく、かつ、斜面形状によって、浴槽面積が水位によって変化する。
図4(a)及び(b)において、循環アダプタ25は、入浴時に想定される標準的な浴槽水位よりも下側領域において浴槽20の壁面に設けられる。
【0047】
更に、
図4(c)に示される浴槽20では、半身浴用の腰掛け台としても利用可能な段差部23が設けられる。
図4(c)の浴槽20では、段差部23の高さに相当する浴槽水位H0を挟んで浴槽面積が大きく変化する。循環アダプタ25は、段差部23の側面に設けられることが一般的である。
【0048】
図4(a)~(c)に共通して、水位センサ11(
図1)によって浴槽水位を検出するには、循環アダプタ25が水没していること、即ち、浴槽水位が循環アダプタ25の設定位置に対応する基準水位Xrよりも高いことが必要である。
【0049】
例えば、浴槽20の配設を含む給湯システム300の施工時において、浴槽20の機種番号又はサイズ(上記断面積を特定できるデータ)を施工者が入力することで、コントローラ12が、当該入力値を用いて、予め設定されたテーブル等の参照によって判定値Xthを算出し、かつ、記憶することが可能である。
【0050】
或いは、上記給湯システム300の施工時におけるふろ試運転時に試験的に実行されるふろ湯張り運転における水位検出値Xの挙動から、自動的に求めることも可能である。具体的には、
図1の注湯配管13aに設けられた流量センサ(図示せず)の検出値の積算によって算出される浴槽20への注湯水量と、水位検出値Xの変化量とを用いて、当該ふろ試運転時は、コントローラ12が予め定められた演算処理を実行することによって浴槽20の断面積を算出するとともに、算出された断面積から判定値Xthを自動的に設定することが可能である。
【0051】
或いは、入浴判定のシンプルな方式として、特許文献1と同様に、一定時間間隔毎での水位変化量ΔXが、判定値Xth以上上昇した場合に、入浴を検知することも可能である。以下では、当該方式を「シンプル入浴判定」、上述した入浴判定を「Tx比較入浴判定」とも称する。このように、ふろ装置での入浴判定には、複数の判定方式が存在している。
【0052】
次に、退浴判定について説明する。退浴判定の一例としては、上述のシンプル入浴判定とは逆に、一定時間間隔毎での水位変化量ΔXが、判定値Xthを超えて低下した場合に、退浴を検知することも可能である。以下では、この様な退浴判定を「シンプル退浴判定」とも称する。
【0053】
一方で、退浴判定では、時刻tyでのユーザの体勢変更に伴う水位検出量の低下によって退浴を誤検知しないことが求められる。しかしながら、上記シンプル退浴判定では、時刻t2で退浴を誤検知することも懸念される。
【0054】
このため、本実施の形態に係るふろ装置では、下記の第1及び第2の退浴判定いずれかによって、入浴状態から退浴状態への遷移、即ち、退浴を検知する。
【0055】
第1の退浴判定では、コントローラ12は、入浴の検知時点において、入浴前水位に従って退浴判定値Xoutを設定する。代表的には、入浴検知時点(例えば、時刻t1)におけるTx(秒)前での水位検出値Xtxと、判定値Xthとの加算によって、入浴検知時に退浴判定値Xoutを設定することができる。
【0056】
コントローラ12は、入浴状態では、各時点において、水位検出値Xtnと退浴判定値Xoutとを比較し、水位検出値Xtnが退浴判定値Xoutよりも低下したことに応じて、退浴を検知する。この際には、Xtn<Xoutが一定時間連続したことを条件に、退浴を検知することも可能である。
【0057】
この様な、第1の退浴判定によれば、
図3の例では、時刻t2では、退浴が検知されない一方で、時刻t3又は時刻t3から上記一定時間が連続したタイミングで退浴を検知することができる。
【0058】
第2の退浴判定ではコントローラ12は、入浴の検知後において、入浴時の水位上昇量ΔXinを取得するとともに、当該水位上昇量ΔXinと対応付けて退浴判定値ΔXoutを設定する。例えば、入浴検知時点よりも前の水位検出値Xtx(入浴前水位)と、入浴検知後の安定状態での水位検出値Xtn(入浴後水位Xin)との差分によって水位上昇量ΔXinを算出し、かつ、水位上昇量ΔXinと比例するように退浴判定値ΔXoutを設定することができる(ΔXout<ΔXin)。
【0059】
コントローラ12は、入浴状態では、各時点において、Tx(秒)前からの水位低下量ΔXdcを算出する。即ち、水位低下量ΔXdcは、現在の水位検出値Xtnと、現在からTx(秒)前での水位検出値Xtxとの差分(ΔXdc=Xtx-Xtn)として算出される。そして、当該水位低下量ΔXdcを退浴判定値ΔXoutと比較し、水位低下量ΔXdcが退浴判定ΔXoutよりも大きいことに応じて、退浴を検知する。この場合にも、ΔXdc>ΔXoutがTx(秒)よりも短い一定時間連続したことを条件に、退浴を検知することが可能である。
【0060】
第2の退浴判定によっても、
図3の例では、時刻t2では、退浴が検知されない一方で、時刻t3又は時刻t3から上記一定時間が連続したタイミングで退浴を検知することができる。
【0061】
上記第1及び第2の退浴判定では、入浴前水位に対応付けた退浴判定値Xout、又は、入浴時の水位上昇量ΔXinに対応付けた退浴判定値ΔXoutを用いることで、入浴者の体格(体積)に左右されずに、正確な退浴判定が可能となる。
【0062】
但し、第1の退浴判定では、退浴判定値Xoutが、入浴状態の各時点での水位検出値Xtnと直接比較されるので、水位センサ11による水位検出値Xtnの精度が必要とされる。一方で、特許文献2に記載される様に、浴槽20及び水位センサ11の間で配置高さの差が大きいと、浴槽20及び水位センサ11間の湯水の温度変化によって水位センサ11による水位検出値が変化する。
【0063】
図5には、浴槽の配置高さの分類を説明する概念図が示される。
【0064】
図5を参照して、給湯装置100内での水位センサ11の配置高さを基準高さ(H=0)とすると、浴槽20の配置高さは、当該基準高さに対する
図1に示された循環アダプタ25の配置高さの差である高さ差ΔHで定義することができる。
【0065】
例えば、
図5に示す様に、高さ差ΔHと、予め定められた境界値H1,-H2との比較により、屋外で地上配置される給湯装置100(水位センサ11)に対する浴槽20の配置高さを、2階以上への配置に対応する「階上配置」、1階への配置に対応する「平地配置」、及び、地階への配置に対応する「階下配置」に層別することができる。
【0066】
図6は、浴槽の配置高さに依存した水位検出値の変化を説明する概念である。
図6には、ふろ湯張り運転の完了後、時間経過に応じて、浴槽20(循環アダプタ25)及び水位センサ11の間に滞留する湯水の温度が徐々に低下する際の、圧力センサで構成された水位センサ11の出力電圧(即ち、水位検出値)の推移が示される。
【0067】
図6を参照して、時間経過に応じて上記滞留湯水の温度Tbtが低下するのに応じて、当該滞留湯水の比重が徐々に増加する。水位センサよりも高い位置に浴槽20が配置されたケース(階上配置)では、比重の増加が水圧上昇として水位センサ11に作用する。従って、特性線L1に示される様に、温度低下に応じて、水位センサ11の水位検出値が徐々に上昇する。
【0068】
これに対して、水位センサよりも低い位置に浴槽20が配置されたケース(階下位置)では、比重の増加が水圧低下として水位センサ11に作用する。従って、特性線L2に示される様に、温度低下に応じて、水位センサ11の水位検出値が徐々に低下する。一方で、水位センサ11と浴槽20との高さ差が小さいケース(平地配置)では、滞留湯水の温度に依存して、水位センサ11の水位検出値上昇又は低下する現象は生じない。
【0069】
この様に、階上配置及び階下配置の場合には、水位センサ11による水位検出値には、湯水の温度変化に起因する誤差が含まれる虞がある。このため、水位検出値Xtnそのものが退浴判定値Xoutと比較される第1の退浴判定では、退浴の誤検知の可能性が生じる。
【0070】
これに対して、第2の退浴判定は、Tx(秒)間隔での水位検出値の差分である水位低下量ΔXdcを用いるので、上述した温度変化に依存した誤差の影響を無視できることが期待される。一方で、入浴時水位上昇量ΔXinに対する退浴判定値ΔXoutの比によっては、退浴の誤検知又は非検知による誤判定の虞がある。
【0071】
従って、上述した第1及び第2の退浴判定は、水位センサ11及び浴槽20の配置高さの差に対応させて選択的に適用することが好ましい。例えば、平地配置の浴槽20には第1の退浴判定が適用される一方で、階上配置又は階下配置の浴槽20に対しては、第2の退浴判定が適用されるように、初期設定することが好ましい。
【0072】
この様に、本実施の形態に係るふろ装置では、退浴判定についても、複数の判定方式(シンプル退浴判定/第1の退浴判定/第2の退浴判定)が存在している。
【0073】
再び、
図3を参照して、時刻t3での退浴検知後、ユーザによる追焚運転の起動等により、循環ポンプ10が時刻t4~t6の間作動する。循環ポンプ10の作動中には、循環経路内の浴槽水が加圧されることから水位センサ11による水位検出値に誤差が発生する。
図3では、時刻t4~t6の間での実際の浴槽水位の水位を点線で表記している。当該期間では、水位検出値Xtnが正確に得られないため、入退浴判定は、一時的に停止される。
【0074】
時刻t4~t6の間の時刻tdにおいてユーザが入浴すると、時刻t5において、時刻t1と同様の浴槽水位の変化が生じる。しかしながら、時刻t5では、退浴状態時の入浴判定が停止されているので、退浴状態が維持される。
【0075】
時刻t4において、循環ポンプ10が作動を開始すると、その時点でのTx(秒)前の水位検出値が、比較用水位Xoffとして、循環ポンプ10の停止(時刻t6)まで維持される。時刻t6での循環ポンプ10の停止に応じて、入退浴判定が再開されると、当該時点では、Tx(秒)前の水位検出値は取得できていないが、循環ポンプ10の作動開始時に保持された比較用水位Xoffを基準することで、水位変化量(上昇量)ΔXtn(ΔXtn=Xtn-Xoff)と判定値Xthとの比較が可能となる。これにより、
図3の例では、時刻t6以降において、速やかに入浴を検知することができる。
【0076】
この様に、循環ポンプ10及び追焚回路7の少なくとも一方の作動を伴う動作であって、水位センサ11の検出値に外乱を与えるために、入退浴検知が一時的に停止される様なふろ装置での動作を「ふろ動作」と定義すると、ふろ動作後の(具体的には、当該ふろ動作の終了から予め定められた一定時間内での)入浴検知であるか否かによって、入退浴の判定内容が異なってくることが理解される。
図3の例では、時刻t4~t6でふろ動作が実行されており、時刻t6直後での、比較用水位Xoffを用いた退浴検知は、ふろ動作後の入浴検知に対応する。
【0077】
本実施の形態に係るふろ装置では、上述の様な入退浴判定での不具合の原因究明のために、以下に説明するような、入退浴判定データの蓄積処理を実行する。
【0078】
図7には、ふろ装置の初期設定時における入退浴判定に係る制御処理を説明するフローチャートが示される。又、
図8には、入浴検知時における入退浴判定データの蓄積処理を説明するフローチャートが示され、
図9には、退浴検知時における入退浴判定データの蓄積処理を説明するフローチャートが示される。
図7~
図9に示される各ステップの制御処理は、コントローラ12が予め格納されたプログラムを実行することで実現することができる。即ち、本実施の形態では、コントローラ12が「制御部」の一実施例に対応する。又、メモリ12mは「記憶部」の一実施例に対応する。
【0079】
図7を参照して、コントローラ12は、ステップ(以下、単に「S」とも表記する)110により、給湯システム300の施工時におけるふろ試運転の為の制御処理を実行する。S110では、当該ふろ試運転のうちの入退浴判定に係る制御処理として、浴槽配置高さ、及び、入退浴の判定値Xthに係る情報が取得される。
【0080】
浴槽配置高さについては、
図5で説明した、平地配置、階上配置、及び、階下配置のいずれであるかを示す情報が取得される。例えば、当該情報は、施工者によるコード入力等によって求めることができる。
【0081】
或いは、特許文献2に開示される様に、浴槽20への湯張り動作時における水位センサ11のオフセット電圧の調整に伴って、水位センサ11に対する浴槽20の配置高さを自動的に検知することも可能である。即ち、上記ふろ試運転時に試験的に実行されるふろ湯張り運転の際に、浴槽20の配置高さを示す情報を自動的に取得することも可能である。
【0082】
判定値Xthについては、上述の様に、ふろ湯張り運転における水位検出値Xの挙動から、自動的に設定することが可能である。或いは、浴槽20の断面積を特定できるデータ(機種番号又はサイズ)に関する施工者の入力データから、コントローラ12が、予め設定されたテーブル等の参照によって、判定値Xthを求めることもできる。
【0083】
コントローラ12は、S120では、S110で設定された、浴槽配置高さを示す情報をメモリ12mに記憶する。更に、S120では、記憶された情報(浴槽高さ位置)に基づき、退浴判定を上述の第1の退浴判定及び第2の退浴判定のいずれで実行するかを選択する初期設定を行うことができる。
【0084】
更に、コントローラ12は、S130により、S110で求められた判定値Xthを記憶する。記憶された判定値Xthは、以降の入退浴判定で用いられる。
【0085】
コントローラ12は、退浴状態時には、
図8の制御処理を繰り返し実行する。
【0086】
図8を参照して、コントローラ12は、S210において、退浴状態から入浴状態への遷移、即ち、入浴の検知を待機する。入浴が検知されるまでの間(S210のNO判定時)、S220以降の処理は実行されない。
【0087】
コントローラ12は、入浴が検知されると(S210のYES判定時)、S220以降の入退浴判定に係るデータの蓄積のための処理を実行する。
【0088】
コントローラ12は、S220では、入浴検知日時を記憶し、S230では、入浴検知時の浴槽水温度(温度センサ9の検出値)を記憶する。更に、コントローラ12は、S240では、入浴判定の方式を示す情報を記憶する。例えば、S240では、上述の「シンプル入浴判定」及び「Tx比較入浴判定」のいずれによって入浴が検知されたかを示すためのコードが記憶される。
【0089】
コントローラ12は、S250では、上述した、ふろ動作後(当該ふろ動作の終了から所定時間内)での入浴検知であるか否かを示す情報を記憶する。そして、コントローラ12は、ふろ動作後の検知であるか否かに応じて、異なるデータを記憶する。
【0090】
ふろ動作後の入浴検知であるときには(S260のYES判定時)、コントローラ12は、S270により、入浴検知時における水位検出値Xtnと、比較用水位Xoffとを記憶する。尚、シンプル入浴判定の適用時には、入浴検知時における水位検出値Xtnが記憶される。
【0091】
コントローラ12は、S275により、当該入浴検知に用いられた水位上昇量ΔXtn及び判定値Xthを記憶する。上述のTx比較入浴判定では、ΔXtn=Xtn-Xoffであり、シンプル入浴判定では、ΔXtnは、検出周期間での水位検出値の変化量である。
【0092】
これに対して、コントローラ12は、ふろ動作後の入浴検知ではないときには(S260のNO判定時)、S280により、入浴検知時における水位検出値Xtnと、Tx(秒)前の水位検出値Xtxとを記憶する。尚、シンプル入浴判定の適用時には、入浴検知時における水位検出値Xtnが記憶される。
【0093】
コントローラ12は、S285により、当該入浴検知に用いられた水位上昇量ΔXtn及び判定値Xthを記憶する。上述のTx比較入浴判定では、ΔXtn=Xtn-Xtxであり、シンプル入浴判定では、ΔXtnは、検出周期間での水位検出値の変化量である。
【0094】
この様に、本実施の形態に係るふろ装置では、入浴が検知される毎に、入退浴判定に関連するデータを記憶することができる。
【0095】
コントローラ12は、入浴状態時には、
図9の制御処理を繰り返し実行する。
【0096】
図9を参照して、コントローラ12は、S310において、入浴状態から退浴状態への遷移、即ち、退浴の検知を待機する。退浴が検知されるまでの間(S310のNO判定時)、S320以降の処理は実行されない。
【0097】
コントローラ12は、退浴が検知されると(S310のYES判定時)、S320以降の入退浴判定に係るデータの蓄積のための処理を実行する。
【0098】
コントローラ12は、S320では、退浴検知日時を記憶し、S330では、退浴検知時の浴槽水温度(温度センサ9の検出値)を記憶する。更に、コントローラ12は、S340では、退浴判定の方式を示す情報を記憶する。例えば、S340では、上述の「シンプル退浴判定」、「第1の退浴判定」、及び、「第2の退浴判定」のいずれによって退浴が検知されたか示すためのコードが記憶される。更に、コントローラ12は、S350では、上述した、ふろ動作後(当該ふろ動作の終了から所定時間内)での入浴検知であるか否かを示す情報を記憶する。
【0099】
そして、コントローラ12は、退浴判定の方式に応じて、異なるデータを記憶する。シンプル退浴判定の適用時(S360のYES判定時)には、コントローラ12は、S370により、当該退浴検知に用いられた水位変化(低下)量ΔXtn及び判定値Xthを記憶する。
【0100】
第1の退浴判定の適用時(S360のNO判定、及び、S365のYES判定時)には、コントローラ12は、S380により、退浴検知時の水位検出値Xtn及び退浴判定値Xoutを記憶する。これに対して、第2の退浴判定の適用時(S360のNO判定、及び、S365のNO判定時)には、コントローラ12は、S390により、退浴検知時の水位低下量ΔXdcと、当該ΔXdcの算出に用いられた、水位検出値Xtn及びTx(秒)前の水位検出値Xtx(退浴前水位に相当)と、退浴判定値ΔXoutと、退浴判定値ΔXoutの算出に用いられた入浴検知時の水位上昇量ΔXinとを記憶する。
【0101】
この様に、本実施の形態に係るふろ装置では、入退浴判定によって入浴又は退浴が検知される毎に、当該入浴検知又は退浴検知に関連する入退浴判定データを記憶することができる。これらの入退浴判定データは、コントローラ12内のメモリ12mに記憶することが可能である。メモリ12mに蓄積された入退浴判定データは、通信ケーブルの接続等によって、コントローラ12(給湯装置100)の外部に読み出すことが可能である。
【0102】
図10には、本実施に係るふろ装置を含む通信システムの構成例を説明するブロック図が示される。
【0103】
図10を参照して、本実施の形態に係るふろ装置を含む給湯システム300は、外部機器との間での通信システム250を構成すること可能である。
【0104】
通信システム250は、給湯装置100と、インターフェイス機器110と、インターフェイス機器110と通信接続可能な端末機器130と、外部通信網(代表的には、インターネット)140と接続されるサーバ150を更に備える。インターフェイス機器110は、給湯装置100(浴槽20)と同一住宅への配置を想定するものである。
【0105】
更に、端末機器130は、宅外のルータ160、又は、基地局170を介して、外部通信網140と接続することにより、インターフェイス機器110と通信できない場所からでも、給湯装置100と通信接続することができる。
【0106】
通信システム250によれば、給湯装置100(コントローラ12)とサーバ150との通信接続により、メモリ12mに記憶された上記入退浴判定データをサーバ150へ送信して、サーバ150によって入退浴判定データを蓄積及び管理することが可能となる。これにより、メモリ12mの容量を過度に増大することなく、入退浴判定データを記憶することが可能となる。尚、記憶される入退浴判定データは、
図8及び
図9で説明したデータ項目を任意に組み合わせて構成することが可能であるが、少なくとも、入退浴の検知日時(S220,S320)が含まれる。
【0107】
従って、本実施の形態に係るふろ装置では、入退浴の誤判定に関する問題がユーザから指摘された際には、入浴又は退浴の検知毎に蓄積された入退浴判定データを用いて、その原因を適切に究明することが可能となる。言い換えると、入退浴の誤判定の原因を究明するための情報を蓄積する構成を実現することができる。
【0108】
図11には、本実施の形態に係るふろ装置での入退浴誤判定対応のガイダンス方法の一例を説明するフローチャートが示される。例えば、
図11に示されたガイダンス方法は、端末機器130において、ガイダンスプログラムとして実行することができる。この場合には、端末機器130は、サーバ150からダウンロードされたアプリケーションプログラムを、サーバ150及び給湯装置100(コントローラ)と通信接続することによって実行することになる。
【0109】
図11を参照して、端末機器130は、S410により、ユーザ宅での実際の浴槽20の配置高さ(
図5)に係る入力を受ける。即ち、S410では、端末機器130のディスプレイ(図示せず)に、「平地配置」、「階上配置」、及び、「階下配置」のいずれであるかの入力要求画面が表示されるとともに、当該入力画面への操作を端末機器130が検知する。
【0110】
端末機器130は、S420では、給湯装置100(コントローラ12)に記憶されている浴槽20の配置高さを示す情報、即ち、初期設定時(
図7のS120)の記憶内容を読み出して、S410での入力と一致しているか否かを判定する。もし一致していないとき(S420のNO判定時)には、上述した第1及び第2の退浴判定方式の選択が不適切であることが不具合の原因と推定される。このため、S430により、給湯装置100に対して、入退浴判定に用いる、浴槽20の配置高さを示す情報の修正指示が生成される。
【0111】
端末機器130は、浴槽20の配置高さの情報が正常であるとき(S420のYES判定時)には、S440により、誤判定のケース分類を示す情報の入力を受ける。S440では、端末機器130のディスプレイ(図示せず)に、「退浴中に誤って入浴が検知されるケース(即ち、入浴の誤検知)」及び「入浴中に退浴が誤って検知されるケース(即ち、入浴の非検知)」、及び、「それ以外のケース」のいずれが発生しているかの入力要求画面が表示されるとともに、当該入力画面への操作を端末機器130が検知する。
【0112】
端末機器130は、S450では、S440での入力から、入浴の誤検知が発生しているか否かを判定する。入浴誤検知が発生していると入力されたとき(S450のYES判定時)には、S460により、判定値Xthを引き上げる指令が生成される。例えば、蓄積された入退浴判定データのうちの、入浴誤検知時の水位上昇量ΔXth(NG)に対して、予め定められたマージン値αを加算した値以上とするように、判定値Xthの修正指示を発生することができる。
【0113】
これに対して、S440にて入浴の非検知が発生していると入力されたとき(S470のYES判定時)には、S480により、現在の判定値Xthから予め定められた調整量βを減算した値を、新たに判定値Xthとして用いる様に修正指示が生成される。
【0114】
一方で、退浴の誤判定(退浴の誤検知及び/又は非検知)のケース、又は、誤判定のケースが特定できないときには、S440において「それ以外のケース」が入力されるので、S460及びS470の両方がNO判定とされる。この場合には、S490により、判定値Xthの自動修正では対応できない「その他の原因」であることが特定される。この場合には、複数項目に亘る、蓄積された入退浴判定データの詳細な解析が必要となるので、
図11のガイダンス方法では対処できない旨を出力して、当該ガイダンスプログラムが終了される。
【0115】
この様に、
図11の示されたガイダンス方法では、ユーザからの入退浴の誤判定の指摘に対して、誤判定の原因が比較的単純であるケースに絞って対処する、適切な一次的対応のためのガイダンス方法を提供することが可能となる。
【0116】
尚、
図11で説明したガイダンス方法を実現するためのガイダンスプログラムは、リモコン30,50の表示部31,51及び操作部32,52を用いる態様で、給湯装置100で実行されてもよい。この場合には、
図11に示された各ステップの処理は、コントローラ12によって実行される。或いは、サーバ150による機器管理の一環として、サーバ150によって、上記ガイダンスプログラムを実行することも可能である。
【0117】
又、本実施の形態では、コントローラ12に内蔵されたメモリ12mに入退浴判定データを記憶する構成例を説明したが、給湯装置100(ふろ装置)内部において、コントローラ12とは別個のメモリを「記憶部」として、入浴又は退浴が検知されたときの入退浴判定データを記憶する構成とすることも可能である。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
5 給湯回路、7 追焚回路、8 循環路、8a 戻り配管、8b 往き配管、8c 接続点、9 温度センサ、10 循環ポンプ、11 水位センサ、12 コントローラ、13 注湯弁、13a 注湯配管、20 浴槽、21 浴槽水、23 段差部、25 循環アダプタ、26 排水栓、30,50 リモコン、31,51 表示部、32,52 操作部、100 給湯装置、110 インターフェイス機器、130 端末機器、140 外部通信網、150 サーバ、160 ルータ、170 基地局、200 浴室、250 通信システム、300 給湯システム、Xtn,Xtx 水位検出値、Xoff 比較用水位、Xout,ΔXout 退浴判定値、Xth 判定値。