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  • 特許-樹脂シートの製造方法、押出ヘッド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】樹脂シートの製造方法、押出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/30 20190101AFI20240612BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240612BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240612BHJP
【FI】
B29C48/30
B29C48/08
B29C48/21
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160179
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053376
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031500(JP,A)
【文献】特開2008-173931(JP,A)
【文献】特開2013-193437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの製造方法であって、
押出ヘッド内で溶融樹脂を筒状化して形成した樹脂筒体を、前記押出ヘッドから押し出す前に前記樹脂筒体の内面同士が融合するように扁平化して樹脂シートにする工程を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記樹脂筒体は、多層構造を有する、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記押出ヘッドは、コアと、前記コアを収容するダイスを備え、
前記コアの外面と前記ダイスの内面の間には、前記溶融樹脂が流通する流通空間が設けられ、
前記流通空間は、上流側から順に、筒状空間と、扁平化空間と、融合空間を備え、
前記樹脂筒体は、前記扁平化空間において前記筒状空間での状態よりも扁平化された後に、前記融合空間において内面同士が融合されて樹脂シートとなる、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記扁平化空間での前記樹脂筒体の偏厚度の最小値は、0~0.5である、方法。
【請求項5】
押出ヘッドであって、
前記押出ヘッドは、前記押出ヘッド内で溶融樹脂を筒状化して形成した樹脂筒体を、前記押出ヘッドから押し出す前に前記樹脂筒体の内面同士が融合するように扁平化して樹脂シートにするように構成され、
前記押出ヘッドは、コアと、前記コアを収容するダイスを備え、
前記コアの外面と前記ダイスの内面の間には、前記溶融樹脂が流通する流通空間が設けられ、
前記流通空間は、上流側から順に、筒状空間と、扁平化空間と、融合空間を備え、
前記樹脂筒体は、前記扁平化空間において前記筒状空間での状態よりも扁平化された後に、前記融合空間において内面同士が融合されて樹脂シートとなり、
前記コアは、胴部と、扁平部を備え、
前記扁平部は、前記胴部よりも下流側に配置され、かつ前記胴部よりも扁平度が高い部位であり、
前記胴部に対向する空間が前記筒状空間となり、前記扁平部に対向する空間が扁平化空間となり、
前記コアの下端は、前記ダイスの下端よりも上流側に配置されており、前記コアの下端と前記ダイスの下端の間の空間が前記融合空間となる、押出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの製造方法及び押出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、押出ヘッドから押し出された筒状パリソンを、ガイド部材を用いて一方向に延伸させた後に一対のローラで押し潰すことによって樹脂シートを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-31500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、ガイド部材及びローラが必要になるので装置構成が複雑になってしまう。また、特許文献1の構成では、押出ヘッドから押し出された筒状パリソンを押し潰して樹脂シートにするので、筒状パリソンの内面同士の溶着が不十分になったり、押し潰しの際に空気が十分に排出されずに樹脂シート内に空気が混入してしまったりして樹脂シートの品質が安定しない虞がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、単純な装置構成で安定した品質の樹脂シートを製造可能な樹脂シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、樹脂シートの製造方法であって、押出ヘッド内で溶融樹脂を筒状化して形成した樹脂筒体を、前記押出ヘッドから押し出す前に前記樹脂筒体の内面同士が融合するように扁平化して樹脂シートにする工程を備える、方法が提供される。
【0007】
本発明の樹脂シートの製造方法では、押出ヘッド内で樹脂筒体を扁平化して樹脂シートにしているので、ガイド部材やローラなどの部材が必要でなく、装置構成が単純である。また、押出ヘッドから押し出される前の樹脂筒体を扁平化して樹脂シートにしているので、樹脂筒体の内面同士の溶着が不十分になったり、樹脂シートを形成する際に樹脂シート内に空気が混入することが抑制される。このため、安定した品質の樹脂シートが得られる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記樹脂筒体は、多層構造を有する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記押出ヘッドは、コアと、前記コアを収容するダイスを備え、前記コアの外面と前記ダイスの内面の間には、前記溶融樹脂が流通する流通空間が設けられ、前記流通空間は、上流側から順に、筒状空間と、扁平化空間と、融合空間を備え、前記樹脂筒体は、前記扁平化空間において前記筒状空間での状態よりも扁平化された後に、前記融合空間において内面同士が融合されて樹脂シートとなる、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記扁平化空間での前記樹脂筒体の偏厚度の最小値は、0~0.5である、方法である。
好ましくは、押出ヘッドであって、前記押出ヘッドは、前記押出ヘッド内で溶融樹脂を筒状化して形成した樹脂筒体を、前記押出ヘッドから押し出す前に前記樹脂筒体の内面同士が融合するように扁平化して樹脂シートにするように構成され、前記押出ヘッドは、コアと、前記コアを収容するダイスを備え、前記コアの外面と前記ダイスの内面の間には、前記溶融樹脂が流通する流通空間が設けられ、前記流通空間は、上流側から順に、筒状空間と、扁平化空間と、融合空間を備え、前記樹脂筒体は、前記扁平化空間において前記筒状空間での状態よりも扁平化された後に、前記融合空間において内面同士が融合されて樹脂シートとなり、前記コアは、胴部と、扁平部を備え、前記扁平部は、前記胴部よりも下流側に配置され、かつ前記胴部よりも扁平度が高い部位であり、前記胴部に対向する空間が前記筒状空間となり、前記扁平部に対向する空間が扁平化空間となり、前記コアの下端は、前記ダイスの下端よりも上流側に配置されており、前記コアの下端と前記ダイスの下端の間の空間が前記融合空間となる、押出ヘッドである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の押出ヘッド1の斜視図である。
図2図1からベース2を取り除き、かつダイス3を図3B中のB-B線で半分に切断した状態の斜視図である。
図3図3Bは、押出ヘッド1の底面図であり、図3Aは、図3B中のA-A断面図である。
図4図3B中のB-B断面図である。
図5図5Aは、図4中の位置P1での樹脂筒体8を示す断面図であり、図5Bは、図4中の位置P2での樹脂筒体8を示す断面図であり、図5Cは、図4中の位置P3での樹脂シート9を示す断面図である。図5では、ダイス3及びコア4は図示省略している。
図6図6Aは、ダイス3をコア4に対して相対移動させることによって樹脂筒体8を偏肉させた後の状態を示す、図4に対応する断面図であり、図6Bは、樹脂シート9から切り出された樹脂シート片19を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.押出ヘッド1
図1図5を用いて、本発明の一実施形態の樹脂シートの製造方法に適した押出ヘッド1について説明する。
【0012】
図1図4に示すように、押出ヘッド1は、ベース2と、ダイス3と、コア4を備える。ダイス3及びコア4は、ベース2の下側に装着される。コア4は、ダイス3内に収容される。
【0013】
図1に示すように、ベース2には、注入口2a~2cが設けられている。注入口2a~2cは、それぞれ、別々の押出機(不図示)に繋がっており、各押出機から押し出された第1~第3溶融樹脂が注入口2a~2cを通じてベース2内に注入される。図3に示すように、ベース2内には、各注入口2a~2cに連通する筒状空間2d~2fと、筒状空間2d~2fが合流するように設けられた筒状空間2gが設けられている。
【0014】
注入口2a~2cに注入された第1~第3溶融樹脂は、筒状空間2d~2f内で筒状に広がった後に筒状空間2g内で層状に合流する。これによって、多層構造を有する樹脂筒体8が形成される(図5Aに図示)。図5Aに示すように、樹脂筒体8は、外側から順に、第1溶融樹脂で構成された最外層8a,第2溶融樹脂で構成された中間層8b、及び第3溶融樹脂で構成された最内層8cを備える。第1及び第3溶融樹脂は、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂である。第2溶融樹脂は、例えば、EVOHや芳香族ポリアミドなどのガスバリア性に優れた樹脂である。
【0015】
図3図4に示すように、ダイス3及びコア4がベース2に装着された状態では、コア4の外面とダイス3の内面の間には、溶融樹脂が流通する流通空間5が設けられる。流通空間5は、上流側から順に、筒状空間5aと、扁平化空間5bと、融合空間5cを備える。筒状空間5aは、筒状空間2gに繋がっている筒状の空間である。
【0016】
図5Aに示す樹脂筒体8は、筒状空間5aを介して扁平化空間5bに移動し、図5Bに示すように、扁平化空間5bにおいて筒状空間での状態よりも扁平化された後に、図5Cに示すように、融合空間5cにおいて内面同士が融合されて樹脂シート9となる。樹脂シート9は、ダイス3の下端3cに設けられた開口3dを通じて押し出される。
【0017】
樹脂筒体8が多層構造を有するので、樹脂シート9も多層構造を有する。具体的には、樹脂筒体8が3層構造の場合、図5Cに示すように、樹脂シート9は、第1~第5層9a~9eを備える。第1及び第5層9a,9eは、最外層8aに由来し、第2及び第4層9b,9dは、中間層8bに由来し、第3層9cは、最内層8cに由来する。融合空間5cでは対向する最内層8c同士が融合して第3層9cとなる。このように、n層構造の樹脂筒体8によって(2n-1)層構造の樹脂シート9が得られる。樹脂筒体8は単層構造であってもよい。その場合、樹脂シート9も単層構造となる。従って、nは、1以上の整数であり、例えば、1,2,3,4,又は5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
樹脂シート9の幅(図5Cでの左右方向の長さ)をWとし、厚さ(図5Cでの上下方向の長さ)をTとすると、T/Wの値は、例えば、0.1~0.95(図5Cでは0.65)であり、好ましくは、0.3~0.8である。この値は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Tダイを用いた方法では、厚肉の樹脂シートを安定して形成することは容易ではないが、本実施形態の構成によれば、厚肉の樹脂シート9を安定して形成することができる。
【0019】
樹脂筒体8が扁平化される際の樹脂筒体8の展開度は、T1/W1で定義される。図5Bに示すように、T1,W1は、それぞれ、展開度を算出する対象の断面での、樹脂シート9の厚さ方向についての樹脂筒体8の長さ(T1)と樹脂シート9の幅方向についての樹脂筒体8の長さ(W1)を意味する。対象の断面は、樹脂筒体8の移動方向に垂直な断面であり、通常は水平面である。展開度の値小さいほど、樹脂筒体8が広げられて扁平化されていることを意味する。本実施形態では、筒状空間5aではT1=W1であるので、樹脂筒体8の展開度は、1である。扁平化空間5bでの樹脂筒体8の展開度は、下流に向かって徐々に小さくなる。扁平化空間5bでの展開度の最小値は、例えば、0.1~0.95(図5Bでは0.65)であり、好ましくは、0.3~0.8である。この値は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
樹脂筒体8は、筒状空間5aでは、周方向に沿って厚さが均一であることが好ましいが、扁平化空間5bでは幅方向の両端8dが薄肉化されていることが好ましい。両端8dでの樹脂筒体8の厚さが薄いほど、中間層8bに由来する第2及び第4層9b,9dが樹脂シート9の両端9fに到達しやすくなるからである。
【0021】
樹脂筒体8の偏厚度は、A1/A2で定義される。A1,A2は、それぞれ、偏厚度を算出する対象の断面での、樹脂筒体8の肉厚の最小値(A1)と樹脂筒体8の肉厚の最大値(A2)を意味する。対象の断面の説明は、展開度と同様である。偏厚度が小さいほど、樹脂筒体8の肉厚が局所的に薄くなっていることを意味する。図5Aに示すように、筒状空間5aではA1=A2であるので、樹脂筒体8の偏厚度は、1である。一方、樹脂筒体8の偏厚度は、下流に向かって徐々に小さくなる。扁平化空間5bでの偏厚度の最小値は、例えば、0~0.5(図5Bでは0)であり、好ましくは、0~0.2である。この値は、具体的には例えば、0、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
偏厚度が0であることは、樹脂筒体8の幅方向の両端8dでの厚さが0であるということであり、言い換えると樹脂筒体8が両端8dにおいて分断されたことを意味する。また、このことは、中間層8bに由来する第2及び第4層9b,9dが樹脂シート9の両端9fにまで到達することを意味する。従って、偏厚度は0に近いほど好ましい。
【0023】
図2図4に示すように、ベース2は、筒部2iと、中央部2jを有する。中央部2jは、筒部2i内に配置され、筒部2iに対して上下方向にスライド移動可能になっている。ダイス3は、空洞部3aと、取付凹部3bを備える。空洞部3a内にコア4が収容される。取付凹部3b内には、ベース2の取付凸部2hが挿入され、この状態でダイス3がベース2の筒部2iに装着される。
【0024】
図4に示すように、取付凸部2hと取付凹部3bの間には隙間10が設けられており、ダイス3を筒部2iに対して、コア4の扁平部4cの厚さ方向(図4の左右方向)にスライド移動可能になっている。これによって、ダイス3をコア4に対して、コア4の扁平部4cの厚さ方向に相対移動することができる。これによって、扁平部4cの厚さ方向の両側での樹脂筒体8の厚さを互いに異ならせる(つまり、偏肉させる)ことができ、樹脂筒体8の多層構造の各層の厚さのバランスが適宜変更可能になる。
【0025】
また、図6に示すように、樹脂筒体8を偏肉させると、樹脂シート9が押出ヘッド1から斜め方向に押し出されるようになる。この状態で樹脂シート9を所定長さで切り出して樹脂シート片19を形成すると、樹脂シート片19は、樹脂シート片19を構成する各層19a~19eがそれぞれ水平になるように落下する。樹脂シート片19がこのような配向で落下することによって、樹脂シート片19を用いた圧縮成形などの成形をスムーズに行うことができる。層19a~19eは、樹脂シート9の第1~第5層9a~9eに対応する。
【0026】
コア4は、取付部4aと、胴部4bと、扁平部4cを備える。取付部4aは、胴部4bから上方に向かって突出する。コア4は、取付部4aにおいてベース2の中央部2jに固定される。このため、中央部2jと共にコア4を上下方向にスライド移動させることが可能である。
【0027】
胴部4bは、好ましくは円柱状である。扁平部4cは、胴部4bよりも下流側に配置され、かつ胴部4bよりも扁平度が高い部位である。胴部4bに対向する空間が筒状空間5aとなり、扁平部4cに対向する空間が扁平化空間5bとなる。扁平部4cは、好ましくは、移行部4c1と、先端部4c2を備える。移行部4c1は、コア4の扁平度が徐々に大きくなっている部位である。先端部4c2は、コア4の先端近傍の部位であり、先端部4c2においてコア4の扁平度が最大になっている。移行部4c1では、コア4の先端に向かって、図3Aに示すようにコア4の幅が徐々に広くなり、図4Aに示すようにコアの厚さが徐々に薄くなる。但し、図3Aに示すように、コア4は、位置Pにおいてダイス3の内面に接触する幅となるので、位置Pよりも下側ではコア4の幅が一定になっている。
【0028】
扁平度を算出する対象の断面での、樹脂シート9の幅方向についてのコア4の長さをW2とし、樹脂シート9の厚さ方向についてのコア4の長さをT2とすると、コア4の扁平度は、(W2-T2)/W2で定義される。コア4が真円(W2=T2)であるときに扁平度が0となり、コア4が扁平になるにつれて扁平度が1に近づく。
【0029】
コア4は、扁平度の最大値が例えば0.1~0.99(本実施形態では0.83)であり、好ましくは、0.5~0.95である。この値は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、0.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
図3Aに示すように、コア4の下端4dは、ダイス3の下端3cよりも上流側に配置されており、コア4の下端4dとダイス3の下端3cの間の空間が融合空間5cとなる。図3図4に示すように、コア4の下端4dとダイス3の下端3cの間の鉛直方向の距離をDとし、コア4の下端4dの厚さをT3とすると、D/T3の値は、1以上(本実施形態では1.7)が好ましい。この場合に樹脂筒体8が融合して樹脂シート9となる際にエアーが樹脂シート9に混入することが特に抑制される。この値は、例えば1~20であり、1~10が好ましい。この値は、具体的には例えば、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Dは、5以上であり、10mm以上が好ましい。Dが短すぎると樹脂筒体8の内面同士が融合せずに筒のまま押し出される場合があるからである。この値は、例えば5~200mmであり、具体的には例えば、5、10、20、30、40、50、100、150、200mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか1つの値以上であってもよい。
【0031】
2.樹脂シート9の製造方法
本発明の一実施形態の樹脂シート9の製造方法は、押出ヘッド1内で溶融樹脂を筒状化して形成した樹脂筒体8を、押出ヘッド1から押し出す前に樹脂筒体8の内面同士が融合するように扁平化して樹脂シート9にする工程を備える。
【0032】
この方法によれば、樹脂シート9を連続的に製造することができる。また、この方法によれば、樹脂筒体8の内面同士が不十分になったり、樹脂シート9を形成する際に樹脂シート9内に空気が混入したりすることが抑制される。このため、安定した品質の樹脂シート9が得られる。さらに、樹脂シート9が多層構造を有する場合、本実施形態の方法によれば、コア4の位置を移動させることによって、樹脂シート9に含まれる各層の厚さの割合を容易に変更することができる。
【0033】
3.樹脂シート9の用途
樹脂シート9は、成形体の製造に用いることができる。製造直後の樹脂シート9は、溶融状態であり、この状態のまま成形してもよく、再加熱して成形してもよい。樹脂シート9の成形方法としては、真空成形や圧縮成形が挙げられる。樹脂シート9の成形は、樹脂シート9が押出ヘッド1に繋がった状態で行ってもよく、樹脂シート9を押出ヘッド1から切り離した後に行ってもよい。
【0034】
一例では、樹脂シート9を所定長さ毎に押出ヘッド1から切り離し、切り離した樹脂シート9をメス型内に配置し、その状態でメス型内にオス型を挿入して樹脂シート9を圧縮することによって成形体を製造することができる(圧縮成形)。また、この成形体がプリフォームである場合には、このプリフォームをブロー成形することによって容器を製造することができる。
【0035】
プリフォームを用いたブロー成形をするためには、肉厚の大きいプリフォームを製造する必要があり、そのためには、肉厚の大きい樹脂シート9が必要である。従来は、肉厚の大きい多層の樹脂シート9を安定して製造することが容易ではなかったが、本実施形態によれば、肉厚の大きい多層の樹脂シート9を安定して製造することが容易である。
【符号の説明】
【0036】
1 :押出ヘッド
2 :ベース
2a :注入口
2b :注入口
2c :注入口
2d :筒状空間
2e :筒状空間
2f :筒状空間
2g :筒状空間
2h :取付凸部
2i :筒部
2j :中央部
3 :ダイス
3a :空洞部
3b :取付凹部
3c :下端
3d :開口
4 :コア
4a :取付部
4b :胴部
4c :扁平部
4c1 :移行部
4c2 :先端部
4d :下端
5 :流通空間
5a :筒状空間
5b :扁平化空間
5c :融合空間
8 :樹脂筒体
8a :最外層
8b :中間層
8c :最内層
8d :両端
9 :樹脂シート
9a :第1層
9b :第2層
9c :第3層
9d :第5層
9e :第5層
9f :両端
10 :隙間
19 :樹脂シート片
19a~19e :層
図1
図2
図3
図4
図5
図6