(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】屈曲樹脂管の製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20240612BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240612BHJP
B29C 45/78 20060101ALI20240612BHJP
B29C 45/73 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/26
B29C45/78
B29C45/73
(21)【出願番号】P 2022003815
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2024-02-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】栗林 延全
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-164465(JP,A)
【文献】特開2012-25090(JP,A)
【文献】特開平8-281690(JP,A)
【文献】特開平10-296733(JP,A)
【文献】特開平11-309740(JP,A)
【文献】特開平7-299838(JP,A)
【文献】特開2020-82622(JP,A)
【文献】特開2021-84375(JP,A)
【文献】特開2017-154477(JP,A)
【文献】実開平6-23724(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
B29C 45/26
B29C 45/78
B29C 45/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドに形成された屈曲して延在するキャビティに溶融した樹脂を射出した後、このキャビティにアシスト材を注入し、射出した前記樹脂を硬化させて屈曲樹脂管を製造する屈曲樹脂管の製造方法において、
前記キャビティに前記アシスト材を注入する際に、前記キャビティの予め選択された屈曲部の屈曲内側部分を屈曲外側部分に比して低温の状態にすることを特徴とする屈曲樹脂管の製造方法。
【請求項2】
前記屈曲内側部分と前記屈曲外側部分との温度差を20℃以上40℃以下にする請求項1に記載の屈曲樹脂管の製造方法。
【請求項3】
前記屈曲内側部分の温度を30℃以上70℃以下にする請求項1または2に記載の屈曲樹脂管の製造方法。
【請求項4】
予め選択された前記屈曲部の前記屈曲内側部分の屈曲角度が90°以下、かつ、曲率半径が20mm以下である請求項1~3のいずれかに記載の屈曲樹脂管の製造方法。
【請求項5】
屈曲して延在するキャビティが形成されているモールドと、前記キャビティに溶融した樹脂を射出する射出成形機と、前記樹脂が射出された前記キャビティにアシスト材を注入するアシスト材注入部とを有する屈曲樹脂管の製造装置において、
前記キャビティの予め選択された屈曲部の屈曲内側部分と屈曲外側部分との少なくとも一方が、温度調整可能なピース部で構成されていて、前記ピース部の温度を制御する制御部を有し、
前記アシスト材を前記キャビティに注入する際に、前記制御部により前記ピース部を温度制御することで、前記屈曲内側部分が前記屈曲外側部分に比して低温の状態にされる構成にしたことを特徴とする屈曲樹脂管の製造装置。
【請求項6】
前記ピース部が、前記モールドの前記ピース部以外の部分を形成している金属よりも高い熱伝導性を有する金属によって形成されている請求項5に記載の屈曲樹脂管の製造装置。
【請求項7】
前記ピース部と前記モールドの前記ピース部以外の部分との間に断熱層が介在して前記ピース部が前記モールドの一部として組み込まれている請求項5または6に記載の屈曲樹脂管の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲樹脂管の製造方法および装置に関し、さらに詳しくは、ガスアシスト成形方法などのアシスト材を用いた樹脂射出成形により屈曲樹脂管を製造する際に、屈曲部の偏肉をより確実に是正できる屈曲樹脂管の製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂射出成形により樹脂管を成形する際に、溶融した樹脂をモールドに射出した後に、窒素ガスなどの高圧ガスをモールドに注入するガスアシスト成形方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。高圧ガスに代わって、水や金属球、樹脂球をアシスト材としてモールドに高圧で注入することもある。
【0003】
アシスト材を用いた樹脂射出成形によって屈曲樹脂管を製造する場合、モールドのキャビティに注入されたアシスト材は、キャビティの屈曲部では最短ルートで通過しようとする特性がある。そのため、注入されたアシスト材は、キャビティの屈曲部では屈曲内側に偏在するように通過して、屈曲内側部分では屈曲外側部分に比して樹脂の厚さが薄くなって偏肉が生じる。これに伴って、製造された屈曲樹脂管は、予め設定された目標内圧に耐える耐圧性を確保し難くなる。そこで、キャビティの屈曲内側部分にリブ成形部を設けておき、製造した屈曲樹脂管の屈曲内側部分にリブを形成して補強することで耐圧性を確保することが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この提案の方法では、屈曲樹脂管の屈曲内側部分は相対的に薄肉のままであり、本来は必要がないリブが突出した形状なる。それ故、屈曲部の偏肉を確実に是正するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-181868号公報
【文献】特開2020-82621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガスアシスト成形方法などのアシスト材を用いた樹脂射出成形により屈曲樹脂管を製造する際に、屈曲部の偏肉をより確実に是正できる屈曲樹脂管の製造方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の屈曲樹脂管の製造方法は、モールドに形成された屈曲して延在するキャビティに溶融した樹脂を射出した後、このキャビティにアシスト材を注入し、射出した前記樹脂を硬化させて屈曲樹脂管を製造する屈曲樹脂管の製造方法において、前記キャビティに前記アシスト材を注入する際に、前記キャビティの予め選択された屈曲部の屈曲内側部分を屈曲外側部分に比して低温の状態にすることを特徴とする。
【0007】
本発明の屈曲樹脂管の製造装置は、屈曲して延在するキャビティが形成されているモールドと、前記キャビティに溶融した樹脂を射出する射出成形機と、前記樹脂が射出された前記キャビティにアシスト材を注入するアシスト材注入部とを有する屈曲樹脂管の製造装置において、前記キャビティの予め選択された屈曲部の屈曲内側部分と屈曲外側部分との少なくとも一方が、温度調整可能なピース部で構成されていて、前記ピース部の温度を制御する制御部を有し、前記アシスト材を前記キャビティに注入する際に、前記制御部により前記ピース部を温度制御することで、前記屈曲内側部分が前記屈曲外側部分に比して低温の状態にされる構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶融した樹脂が射出された前記キャビティに前記アシスト材を注入する際に、前記キャビティの予め選択された屈曲部の屈曲内側部分を屈曲外側部分に比して低温の状態にする。これにより、射出された溶融樹脂は、注入した前記アシスト材が通過する際には、屈曲内側部分では屈曲外側部分に比して硬くなる。そのため、前記アシスト材が屈曲部を通過する際に屈曲内側部分に偏在しようとしても、屈曲内側部分に充填されている溶融樹脂は通過するアシスト材によって除去され難く(削られ難く)なる。その結果、屈曲部の偏肉をより確実に是正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の屈曲樹脂管の製造装置の実施形態を例示する説明図である。
【
図2】
図1のモールドを平面視で例示する説明図である。
【
図3】
図2を一部拡大してモールドの内部を例示する説明図である。
【
図5】
図3のキャビティに溶融した樹脂を射出した状態を例示する説明図である。
【
図6】
図5のキャビティにアシスト材を注入した状態を例示する説明図である。
【
図7】本発明により製造された屈曲樹脂管を平面視で例示する説明図である。
【
図8】
図7を一部拡大して屈曲樹脂管の内部を例示する説明図である。
【
図10】樹脂が充填されているキャビティに、ピース部の温度を制御を実施せずにアシスト材を注入した状態を例示する説明図である。
【
図11】
図10の工程を経て製造された屈曲樹脂管の屈曲部の内部を平面視で例示する説明図である。
【
図13】ピース部の変形例を平面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の屈曲樹脂管の製造方法および装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図4に例示する屈曲樹脂管の製造装置7の実施形態は、モールド10と、モールド10のキャビティ11に溶融した樹脂Rを射出する射出成形機8と、キャビティ11にアシスト材Sを注入するアシスト材注入部9とを有している。このモールド10の一部は温度調整可能なピース部15で構成されていて、ピース部15の温度を制御する制御部17を有している。
【0012】
この製造装置7を用いて、
図7~
図9に例示する屈曲樹脂管1が製造される。この屈曲樹脂管1は、曲率半径が小さい屈曲部4(4A、4B)と、曲率半径が大きい屈曲部5とを有して延在する筒状体であり、直線部3も有している。屈曲樹脂管1の管路1aの長手方向両端は開口部2になっている。図中の一点鎖線CLは、管路1aの横断面中心を通過する中心線を示している。屈曲樹脂管1は、直線部3を有していない場合もあり、屈曲部4、5の数も限定されない。
【0013】
射出成形機8は、熱可塑性の樹脂Rを射出する公知の種々の仕様のものを用いることができる。使用する樹脂Rは、製造される屈曲樹脂管1に要求される性能等に応じて適切な種類が選択される。例えば、自動車に搭載されるエアコンディショナー用の屈曲樹脂管1を製造する場合には、樹脂Rとしては例えば、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等が使用される。
【0014】
アシスト材注入部9は、キャビティ11にアシスト材Sを注入する公知の種々の仕様のものを用いることができる。使用するアシスト材Sは、公知のものでよく、製造される屈曲樹脂管1の形状などに応じて、窒素ガスなどの気体、水などの液体、金属球や樹脂球などの固体から適切な材料が選択される。
【0015】
モールド10には、屈曲して延在するキャビティ11が形成されている。この実施形態では、モールド10は、組み付けられる一対のモールド10a、10bで構成されている。互いのモールド10a、10bはパーティングラインPLを境界にして型閉めおよび型開きされる。
【0016】
モールド10には、キャビティ11に対してゲート18bを介して接続されるランナー18aが形成されている。このランナー18aは、モールド10に形成されたスプルーを介して、射出成形機8やアシスト材注入部9のノズルに接続される。モールド10にはキャビティ11に注入されたアシスト材Sの排出部も設けられている。
【0017】
空洞を形成するキャビティ11は、製造される屈曲樹脂管1と同様の形状で屈曲して延在している。キャビティ11の予め選択された屈曲部12(12A、12B)の屈曲内側部分14aと屈曲外側部分14bとの少なくとも一方が、温度調整可能なピース部15で構成されている。即ち、モールド10は、予め選択された屈曲部12(12A、12B)の屈曲内側部分14aと屈曲外側部分14bとの少なくとも一方に、ピース部15が組み込まれて構成される。
【0018】
この実施形態では、屈曲内側部分14aのみがピース部15で構成されている。ピース部15は、一対のモールド10a、10bに対応して、一対のピース部15a、15bで構成されている。一方のピース部15aが一方のモールド10aに組み込まれ、他方のピース部15bが他方のモールド10bに組み込まれている。
【0019】
屈曲内側部分14aおよび屈曲外側部分14bの内、屈曲外側部分14bのみがピース部15で構成された仕様にすることも、屈曲内側部分14aおよび屈曲外側部分14bがピース部15で構成された仕様にすることもできる。尚、屈曲部12A、12Bは同様の構成になるので、図面では代表して屈曲部12Aが詳細に記載されている。
【0020】
キャビティ11の屈曲部12(12A、12B)は、屈曲樹脂管1の曲率半径が小さい屈曲部4(4A、4B)に対応し、キャビティ11の屈曲部13は、屈曲樹脂管1の曲率半径が大きい屈曲部5に対応している。したがって、曲率半径および屈曲角度が比較的小さい屈曲部12が選択されて、その選択された屈曲部12の少なくとも一部がピース部15で構成される。
【0021】
選択される屈曲部12の屈曲内側部分14aの屈曲角度Caは例えば90°以下であり、より好ましくは75°以下である。この屈曲内側部分14aの曲率半径Crは例えば20mm以下、より好ましくは10mm以下である。
【0022】
ピース部15は例えば、屈曲内側部分14aの屈曲頂点Pの前後方向(キャビティ11の延在方向)15mm~20mm程度の範囲を構成する。ピース部15で構成する範囲(長さ)が過小であると屈曲部4での屈曲樹脂管1の偏肉を是正できなくなる。一方、ピース部15で構成する範囲(長さ)が過大であると屈曲部4以外の部分での偏肉が生じ易くなる。ピース部15で構成する範囲(キャビティ11の延在方向範囲など)は、事前テストやコンピュータシミュレーションを行って適切な値に設定する。
【0023】
ピース部15は、モールド10のピース部15以外の部分を形成している金属よりも高い熱伝導性を有する金属によって形成することが好ましい。モールド10のピース部15以外の部分は例えば一般炭素鋼により形成されるが、ピース部15は例えばベリリウム銅合金により形成される。
【0024】
ピース部15を温度制御する制御部17には公知のコンピュータが用いられる。ピース部15には例えば、水などの媒体が流れる専用の流路が形成されていて、その媒体の温調器が制御部17により制御されて媒体の温度を調整することで、ピース部15が所望の温度範囲に制御される。この実施形態では、水が媒体として使用されていて、制御部17により水の冷却温度が調整されてピース部15が所望の温度範囲に冷却される。
【0025】
詳述すると、アシスト材Sをキャビティ11に注入する際に、制御部17はピース部15を温度制御することで、屈曲内側部分14aを屈曲外側部分14bに比して低温の状態にする。ピース部15の熱伝導性を、モールド10の他の部分よりも高くすることで、ピース部15と他の部分(屈曲外側部分14b)との温度差を迅速に大きくするには有利になる。
【0026】
次に、本発明の屈曲樹脂管の製造方法の手順の一例を説明する。
【0027】
図1、
図2に例示するように一対のモールド10a、10bを互いに組み付けて型閉めした状態で、溶融した樹脂Rを射出成形機8からモールド10に射出する。射出された樹脂Rは、モールド10に形成されたスプルー、ランナー18a、ゲート18bを通過して
図5に例示するようにキャビティ11注入される。キャビティ11は、溶融した樹脂Rが充填された状態になる。
【0028】
次いで、アシスト材注入部9からアシスト材Sをモールド10に所定の高圧で注入する。注入されたアシスト材Sは、注入された溶融樹脂Rが充填されているキャビティ11の内部をその延在方向に沿って高圧で通過する。
【0029】
図6に例示するようにキャビティ11の屈曲部12A、12Bでは、高圧で注入されたアシスト材Sは、キャビティ11の最短ルートになる屈曲内側に偏って通過しようとする。そのため、通常であれば屈曲部12A、12Bの屈曲内側部分14aの樹脂Rが高圧で通過するアシスト材Sによってより多く削られる。そのため、屈曲内側部分14aの壁面の樹脂Rの厚さは、屈曲外側部分14bの樹脂Rの厚さに比して薄くなって偏肉が生じる。そこで、この偏肉を是正するために、この実施形態では、ピース部15の温度制御が行われる。
【0030】
尚、屈曲部13においても、アシスト材Sは上記と同様に通過する。しかし、屈曲部13は曲率半径Crが比較的大きいため、屈曲内側部分14aの壁面の樹脂Rは高圧で通過するアシスト材Sによって削られ難い。それ故、屈曲部13では、樹脂Rの偏肉は生じ難く、基準の肉厚を確保できるので、屈曲部12A、12Bだけがピース部15を組み込む部位として選択されている。
【0031】
この実施形態では、キャビティ11にアシスト材Sを注入する際に、制御部17によりピース部15を温度制御することで、予め選択された屈曲部12A、12Bの屈曲内側部分14aを屈曲外側部分14bに比して低温の状態にする。キャビティ11のピース部15以外のすべての部分は概ね同じ温度になっていて、キャビティ11では屈曲部12A、12Bの屈曲内側部分14aだけが相対的に低温になっている。
【0032】
このようにピース部15が温度制御されることで、アシスト材Sが通過する際には、キャビティ11に充填されている溶融樹脂Rは、屈曲内側部分14aでは屈曲外側部分14bに比して硬くなる。そのため、アシスト材Sが屈曲部12A、12Bを通過する際に、上述したように屈曲内側部分14aに偏在しようとしても、屈曲内側部分14aに充填されている溶融樹脂Rは通過するアシスト材Sによって削られ難く(除去され難く)なる。
【0033】
アシスト材Sがキャビティ11の全長を通過することで、モールド10では、キャビティ11に残留している樹脂Rによって管路1aが形成され、この樹脂Rが硬化することで、キャビティ11に沿った形状の屈曲樹脂管1が製造される。この実施形態では、通過するアシスト材Sによって相対的に削られ易い配置になっている屈曲内側部分14aの樹脂Rを相対的に硬くすることで、削られ難くしている。その結果、屈曲部12A、12Bの屈曲内側部分14aと屈曲外側部分14bとの樹脂Rの偏肉が是正されて、屈曲部4A、4Bの屈曲内側部分6aと屈曲外側部分6bでの偏肉がより確実に是正された
図7~
図9に例示する屈曲樹脂管1を製造することが可能になる。
【0034】
ピース部15の温度制御を行わずに、屈曲部12A、12Bの屈曲内側部分14aと屈曲外側部分14bとが実質的に同じ温度になっていると、
図10~
図12に例示するように、通過するアシスト材Sによって屈曲内側部分14aでは屈曲外側部分14bに比してより多くの樹脂Rが削られる。そのため、屈曲部4A、4B(12A、12B)では偏肉が発生するが、本願発明では、このような偏肉の発生を抑制することができる。それ故、本発明によれば、屈曲内側部分6aの樹脂Rの肉厚不足を補うリブを省略することも可能になる。
【0035】
この実施形態では、屈曲部12A、12Bの屈曲内側部分14aを冷却することで、アシスト材Sをキャビティ11に注入する際に屈曲内側部分14aを屈曲外側部分14bよりも低温の状態にしているが、キャビティ11を温度制御する方法はこれに限定されない。良品の屈曲樹脂管1を製造できる温度範囲であれば、例えば、屈曲部12A、12Bの屈曲外側部分14bを追加的に加熱することで、アシスト材Sをキャビティ11に注入する際に屈曲内側部分14aを屈曲外側部分14bよりも低温の状態にしてもよい。この温度制御によっても、キャビティ11に充填されている溶融樹脂Rは、屈曲内側部分14aでは屈曲外側部分14bに比して硬くなる。そのため、屈曲内側部分14aに充填されている溶融樹脂Rは通過するアシスト材Sによって削られ難く(除去され難く)なる。
【0036】
本発明によれば、複雑な形状の屈曲樹脂管1であっても大量生産することもできる。製造した屈曲樹脂管1を用いることで、金属管に比して軽量化を図りつつ、必要な耐圧性を確保することができる。例えば、使用内圧が5MPa以上で内径10mm~20mm程度の屈曲樹脂管1を製造することもできる。低圧の配管としても使用できるので、汎用的な屈曲金属管をこの屈曲樹脂管1に置き換えることで大幅に軽量化を図ることも可能になる。
【0037】
ピース部15の温度制御では、屈曲内側部分14aと屈曲外側部分14bとの温度差を20℃以上40℃以下にすることが好ましい。この温度差が20℃未満であると、屈曲内側部分14aと屈曲外側部分14bとでの溶融樹脂Rの硬さの差異を大きくできないので、製造された屈曲樹脂管1の屈曲部4A、4Bでの偏肉を是正する効果を得難くなる。一方、この温度差が40℃超であると、屈曲内側部分14aに充填されている樹脂Rの流動性が低くなり過ぎる、或いは、屈曲外側部分14bに充填されている樹脂Rが過剰に加熱されて焼けが生じるなどの問題が生じて、製造される屈曲樹脂管1の品質に悪影響が生じるリスクが高くなる。
【0038】
屈曲内側部分14aに充填されている樹脂Rの十分な流動性を確保しつつ、屈曲部4A、4B(12A、12B)での偏肉を是正するには、ピース部15の温度制御によって、屈曲内側部分14aの温度を30℃以上70℃以下にすることが好ましく、40℃~50℃程度にすることがより好ましい。
【0039】
図13、
図14に例示する仕様のモールド10を用いることもできる。このモールド10では、ピース部15とモールド10のピース部15以外の部分との間に断熱層16が介在している。この断熱層16を介在させてピース部15はモールド10の一部として組み込まれている。
【0040】
断熱層16としては、モールド10のピース部15以外の部分よりも熱伝導性が低い材料を用いる。例えば、モールド10が一般炭素鋼(熱伝導率は49.81W/m/C程度)により形成されている場合は、この熱伝導率よりも低い材料を用いて断熱層16が形成される。例えば、公知のセラミック(熱伝導率は0.61W/m/C程度)によって断熱層16を形成する。
【0041】
このように断熱層16を介在させることで、ピース部15とモールド10のピース部15以外の部分との間での伝熱がある程度遮断される。これにより、ピース部15がモールド10の周辺部分の温度から受ける影響を抑制して、ピース部15を迅速に所望温度にするには有利になり、所望温度に安定して維持するにも有利になる。
【符号の説明】
【0042】
1 屈曲樹脂管
1a 管路
2 開口部
3 直線部
4(4A、4B) 屈曲部
5 屈曲部
6a 屈曲内側部分
6b 屈曲外側部分
7 製造装置
8 射出成形機
9 アシスト材注入部
10(10a、10b) モールド
11 キャビティ
12(12A、12B) 屈曲部
13 屈曲部
14a 屈曲内側部分
14b 屈曲外側部分
15(15a、15b) ピース部
16 断熱層
17 制御部
18a ランナー
18b ゲート
R 樹脂
S アシスト材