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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両用バッテリパック周辺構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240612BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240612BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/20
H01M50/342 201
B60R16/02 610B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020218219
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103526
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 綱一郎
(72)【発明者】
【氏名】水鳥 将希
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0246259(US,A1)
【文献】特開2014-032896(JP,A)
【文献】特開2009-259785(JP,A)
【文献】特開2016-018590(JP,A)
【文献】特開2015-162345(JP,A)
【文献】特開2011-251621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0056481(US,A1)
【文献】特開2020-090271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/20 ー 50/298
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアパネルの下方に配置されるバッテリパック及びその周辺を含む車両用バッテリパック周辺構造であって、
前記バッテリパックが、
バッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、
前記バッテリケースの外部の機器から延びる電力ケーブルと電気的に接続可能に構成される接続端子組立体と、
前記バッテリケースの内部及び外部間の圧力差を調整可能とする1つ又は複数の圧力調整弁と、
前記接続端子組立体及び前記1つ又は複数の圧力調整弁を前記バッテリケースの側方壁の外方面に取り付けるように構成される取付機構と
を含み、
前記取付機構が、前記接続端子組立体及び前記1つ又は複数の圧力調整弁を支持する支持部を有し、
前記支持部が、前記バッテリパックの水平方向の外方を向く支持面を有し、
前記接続端子組立体は、前記バッテリケース側の第1接続端子と、前記電力ケーブル側の第2接続端子とを有し、
前記第1接続端子は、前記支持部の支持面上に配置される第1接続部を有し、
前記第2接続端子は、前記第1接続部に接続される第2接続部と、前記支持部の支持面と水平方向に間隔を空け、かつ前記支持部の支持面と対向するように前記第2接続部から前記水平方向に沿って突出する端子凸部とを有し、
前記1つの圧力調整弁又は前記複数の圧力調整弁のうち少なくとも1つが、前記端子凸部に対して前記水平方向に対向するように前記支持部の支持面に配置されている、車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項2】
前記取付機構の支持部の支持面が、下方から上方に向かうに従って前記バッテリパックの水平方向の中心に接近するように傾斜しており、
前記支持部の支持面及び前記端子凸部間の間隔が、上方から下方に向かうに従って狭くなっている、請求項1に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項3】
前記バッテリケースが、その上部を形成するアッパーケースと、前記バッテリケースの下部を形成するロアケースとを有し、
前記アッパーケースは、アッパーケース本体と、前記アッパーケース本体から前記バッテリパックの水平方向の外方に向かって突出するフランジとを有し、
前記ロアケースは、ロアケース本体と、前記ロアケース本体から前記バッテリパックの水平方向の外方に向かって突出するフランジとを有し、
前記アッパー及びロアケースのフランジのうち少なくとも一方に、前記1つの圧力調整弁又は前記複数の圧力調整弁のうち少なくとも1つの真下を横切る跳ね返し部が設けられている、請求項1又は2に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項4】
前記アッパーケースのフランジが、前記アッパーケース本体の下方縁から前記バッテリパックの水平方向の外方に向かって突出し、
前記ロアケースのフランジが、前記ロアケース本体の上方縁から前記バッテリパックの水平方向の外方に向かって突出し、
前記アッパー及びロアケースがこれらのフランジを上下方向に重ねると共に結合した重ね合わせ部を用いて互いに取り付けられており、
前記跳ね返し部が、前記重ね合わせ部に設けられている、請求項3に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項5】
前記支持部の支持面が前記車両の後方を向いており、
前記車両が、上方から下方に膨出し、かつ前記支持部の支持面に対して前記車両の後方に位置する底側凹部を有し、
前記底側凹部が、前記支持部の支持面及び前記重ね合わせ部に対向する前方壁を有し、
前記前方壁が、前記水平方向にて前記重ね合わせ部に対して平行に延びる延伸部を有する、請求項4に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【請求項6】
前記前方壁が、前記延伸部の延伸方向の端から前記車両の幅方向の外方に向かうに従って前記重ね合わせ部から離れるように湾曲する湾曲部を有し、
前記複数の圧力調整弁のうち一部分は、前記端子凸部に対して前記車両の前後方向に対向するように前記支持部の支持面上に配置され、
前記複数の圧力調整弁のうち残りの部分は、前記前方壁の湾曲部に対して前記車両の前後方向に対向するように前記支持部の支持面上に配置されている、請求項5に記載の車両用バッテリパック周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のフロアパネルの下方に配置されるバッテリパック及びその周辺を含む車両用バッテリパック周辺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の車両においては、この車両の電動駆動等のためにバッテリパックが搭載されることがある。バッテリパックは、バッテリモジュールと、このバッテリモジュールを収容するバッテリケースとを有しており、バッテリパックは、車体のフロアパネルの下方に配置されることがある。しかしながら、バッテリモジュールの異常、経年劣化等によりバッテリモジュールからガス等の流体が発生することがあり、このようなガス等の流体によってバッテリケースの内圧がバッテリケースの外圧よりも高くなるという問題がある。
【0003】
このような問題を解消可能とするバッテリパックの一例として、バッテリ(バッテリモジュール)と、このバッテリを収容するバッテリボックス(バッテリケース)と、バッテリボックス内の圧力が所定以上になるとバッテリボックス内の流体を外部に放出するように作動し、これによって、バッテリボックス内の圧力を低下させるように構成された減圧弁(圧力調整弁)とを有するバッテリパックが挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-090271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車体のフロアパネル下方の空間においては、車輪等によって巻き上げられた泥、小石、水等が飛散する。そのため、このような空間に配置されるバッテリパックの減圧弁には、飛散した小石、水等が接触するおそれがある。この場合、飛散した泥、小石等によって圧力調整弁が破損するおそれがある。また、寒冷地等において、飛散した水等が減圧弁に付着すると、圧力調整弁が凍り、これによって、圧力調整弁が塞がれるおそれがある。
【0006】
このような実情を鑑みると、車両用バッテリパック周辺構造において、バッテリパックの圧力調整弁を効率的に保護することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するために、一態様に係る車両用バッテリパック周辺構造は、車体のフロアパネルの下方に配置されるバッテリパック及びその周辺を含む車両用バッテリパック周辺構造であって、前記バッテリパックが、バッテリモジュールと、前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、前記バッテリケースの外部の機器から延びる電力ケーブルと電気的に接続可能に構成される接続端子組立体と、前記バッテリケースの内部及び外部間の圧力差を調整可能とする1つ又は複数の圧力調整弁と、前記接続端子組立体及び前記1つ又は複数の圧力調整弁を前記バッテリケースの側方壁の外方面に取り付けるように構成される取付機構とを含み、前記取付機構が、前記接続端子組立体及び前記1つ又は複数の圧力調整弁を支持する支持部を有し、前記支持部が、前記バッテリパックの水平方向の外方を向く支持面を有し、前記接続端子組立体は、前記バッテリケース側の第1接続端子と、前記電力ケーブル側の第2接続端子とを有し、前記第1接続端子は、前記支持部の支持面上に配置される第1接続部を有し、前記第2接続端子は、前記第1接続部に接続される第2接続部と、前記支持部の支持面と水平方向に間隔を空け、かつ前記支持部の支持面と対向するように前記第2接続部から前記水平方向に沿って突出する端子凸部とを有し、前記1つの圧力調整弁又は前記複数の圧力調整弁のうち少なくとも1つが、前記端子凸部に対して前記水平方向に対向するように前記支持部の支持面に配置される。
【発明の効果】
【0008】
一態様に係る車両用バッテリパック周辺構造においては、バッテリパックの圧力調整弁を効率的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造を含む車体の底部を、フロアパネルを透明視した状態で概略的に示す平面図である。
図2図2は、図1のX部拡大図である。
図3図3は、一実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造の取付機構及びその周辺部分を、概略的に示す背面図である。
図4図4は、図2のY-Y線断面図である。
図5図5は、一実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造の取付機構及びその周辺部分を、接続端子組立体の第2接続端子を取り外した状態で概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造を、それを搭載した車両と共に説明する。本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造(以下、必要に応じて、単に「バッテリパック周辺構造」という)を搭載した車両は、電気自動車となっている。しかしながら、車両は、バッテリパック周辺構造を搭載可能とする電気自動車以外の車両とすることもできる。
【0011】
本明細書中の説明に用いられる図面においては、車両を基準とした方向を次のように示す。図1図2図4、及び図5においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ片側矢印F及び片側矢印Bによって示す。図1図3及び図5においては、車両前方を向いた場合の左方及び右方を、それぞれ片側矢印L及び片側矢印Rによって示す。車両幅方向は、片側矢印L及び片側矢印Rによって示される。さらに、図3図5においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ片側矢印U及び片側矢印Dによって示す。
【0012】
なお、左方及び右方は、それぞれ車両前方を向いた場合の左方及び右方を指すものとする。水平方向は、車両の前後方向及び幅方向に沿った方向を指すものとする。また、車両上方及び車両下方を、場合によっては、それぞれ単に上方及び下方と呼ぶ。
【0013】
「バッテリパック周辺構造及び車両の概略」
図1図5を参照して、本実施形態に係るバッテリパック周辺構造10及び車両の概略について説明する。すなわち、本実施形態に係るバッテリパック周辺構造10及び車両は、概略的には次のように構成される。図1図5に示すように、バッテリパック周辺構造10は、バッテリパック11及びその周辺を含む。図1及び図3に示すように、このバッテリパック11は、車両における車体1のフロアパネル2(図1及び図3では、透明視するように破線により示す)の下方に配置される。
【0014】
図2図5を参照すると、バッテリパック11は、バッテリモジュール12と、このバッテリモジュール12を収容するバッテリケース20とを有する。バッテリパック11は、バッテリケース20の外部の機器(図示せず)から延びる電力ケーブルCと電気的に接続可能に構成される接続端子組立体30を有する。
【0015】
バッテリパック11は、バッテリケース20の内部及び外部間の圧力差を調整可能とする複数の圧力調整弁40を有する。特に図5において図示されるバッテリパック11は、4つの圧力調整弁40を有している。しかしながら、圧力調整弁の数はこれに限定されない。バッテリパックは、2つ、3つ、又は5つ以上の圧力調整弁を有することもできる。もちろん、バッテリパックは、1つの圧力調整弁を有することもできる。
【0016】
図2図5を参照すると、バッテリパック11は、接続端子組立体30及び複数の圧力調整弁40をバッテリケース20の側方壁20aの外方面20bに取り付けるように構成される取付機構50を有する。バッテリケース20の側方壁20aの外方面20bは、バッテリケース20の水平方向の外方を向く。取付機構50は、接続端子組立体30及び複数の圧力調整弁40を支持する支持部51を有する。支持部51は、バッテリパック11の水平方向の外方を向く支持面51aを有する。
【0017】
接続端子組立体30は、バッテリケース20側の第1接続端子31と、電力ケーブルC側の第2接続端子32とを有する。第1接続端子31は、支持部51の支持面51a上に配置される第1接続部31aを有する。第2接続端子32は、第1接続部31aに接続される第2接続部32aを有する。第2接続端子32は、支持部51の支持面51aと水平方向に間隔を空け、かつ支持部51の支持面51aと対向するように第2接続部32aから水平方向に沿って突出する端子凸部32bを有する。
【0018】
複数の圧力調整弁40のうち少なくとも1つは、端子凸部32bに対して水平方向に対向するように支持部51の支持面51aに配置されている。なお、バッテリパックが1つの圧力調整弁を有する場合は、この1つの圧力調整弁が、端子凸部に対して水平方向に対向するように支持部の支持面に配置される。
【0019】
本実施形態に係るバッテリパック周辺構造10及び車両は、概略的には次のように構成することができる。特に図4に示すように、取付機構50の支持部51の支持面51aは、下方から上方に向かうに従ってバッテリパック11の水平方向の中心に接近するように傾斜している。支持部51の支持面51a及び端子凸部32b間の間隔が、上方から下方に向かうに従って狭くなっている。
【0020】
図3図5に示すように、バッテリケース20は、その上部を形成するアッパーケース21と、バッテリケース20の下部を形成するロアケース22とを有する。アッパーケース21は、アッパーケース本体21aと、このアッパーケース本体21aからバッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出するフランジ21bとを有する。ロアケース22は、ロアケース本体22aと、このロアケース本体22aからバッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出するフランジ22bとを有する。アッパー及びロアケース21,22のフランジ21b,22bのうち少なくとも一方に、複数の圧力調整弁40のうち少なくとも1つの真下を横切る跳ね返し部21c,22cが設けられている。
【0021】
アッパーケース21のフランジ21bは、アッパーケース本体21aの下方縁からバッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出する。ロアケース22のフランジ22bは、ロアケース本体22aの上方縁からバッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出する。アッパー及びロアケース21,22がこれらのフランジ21b,22bを上下方向に重ねると共に結合した重ね合わせ部Pを用いて互いに取り付けられている。跳ね返し部21c,22cは、重ね合わせ部Pに設けられている。
【0022】
図2に示すように、支持部51の支持面51aは車両の後方を向いている。しかしながら、支持部の支持面は、車両の後方以外である水平方向中の1つの方向を向くこともできる。例えば、支持部の支持面は、車両の前方、左方、又は右方を向くこともできる。
【0023】
車両の車体1は、上方から下方に膨出し、かつ車両の後方を向く支持部51の支持面51aに対して後方に位置する底側凹部3を有する。底側凹部3は、支持部51の支持面51a及び重ね合わせ部Pに対向する前方壁4を有する。前方壁4は、水平方向にて重ね合わせ部Pに対して実質的に平行に延びる延伸部4aを有する。
【0024】
前方壁4は、延伸部4aの延伸方向の端から車両の幅方向の外方に向かうに従って重ね合わせ部Pから離れるように湾曲する湾曲部4bを有する。複数の圧力調整弁40のうち一部分は、端子凸部32bに対して車両の前後方向に対向するように支持部51の支持面51a上に配置される。複数の圧力調整弁40のうち残りの部分は、前方壁4の湾曲部4bに対して車両の前後方向に対向するように支持部51の支持面51a上に配置される。
【0025】
「車両の詳細」
図1及び図2を参照すると、車両は、詳細には次のように構成することができる。車両における車体1の底側凹部3は、後部座席(図示せず)に対して車両の後方側に位置するスペアタイヤハウジング3となっている。しかしながら、底側凹部は、スペアタイヤハウジングに限定されない。
【0026】
車体1はまた、車両の幅方向に互いに間隔を空けて配置される2つのサイドメンバ5を有する。各サイドメンバ5は細長形状に形成されている。各サイドメンバ5は、車両前後方向に沿って配置されている。バッテリパック11は、平面視にて、2つのサイドメンバ5の間に位置する。2つのサイドメンバ5はフロアパネル2の下方に位置する。各サイドメンバ5の上面はフロアパネル2の下面に接合される。バッテリパック11は、2つのサイドメンバ5に取り付けられている。
【0027】
車体1は、2つのサイドメンバ5を連結するように車両の幅方向に延びるクロスメンバ6を有する。クロスメンバ6は、バッテリパック11の上方に位置する。クロスメンバ6はまた、平面視にて、バッテリパック11を横切るように延びる。図1においては、車体1は、2つのクロスメンバ6を有する。しかしながら、車体は、1つ又は3つ以上のクロスメンバを有することもできる。
【0028】
「バッテリパック周辺構造の詳細」
図2図4を参照すると、バッテリパック周辺構造10は、詳細には次のように構成することができる。図4に示すように、バッテリパック周辺構造10のバッテリパック11は、複数のバッテリモジュール12を有する。複数のバッテリモジュール12は、バッテリケース20内に収容される。
【0029】
図2図4を参照すると、電力ケーブルCは、可撓性を有し、かつ第2接続端子32の端子凸部32bから端子凸部32bの突出方向に向かって延びる。バッテリパック周辺構造10は、少なくとも1本の電力ケーブルCを有する。バッテリパック周辺構造10が複数の電力ケーブルCを有する場合、複数の電力ケーブルCは、上下方向に実質的に並列に配向される。図2図4においては、バッテリパック周辺構造10は、2本の電力ケーブルCを有する。しかしながら、電力ケーブルの数は、これに限定されない。バッテリパック周辺構造は、1本又は3本以上の電力ケーブルを有することもできる。
【0030】
「バッテリケースの詳細」
図2図5を参照すると、バッテリケース20は、詳細には次のように構成することができる。図2図4を参照すると、バッテリケース20は、金属を用いて構成することができる。この場合、バッテリケース20のアッパー及びロアケース21,22は、板金から成るプレス成型品とすることができる。しかしながら、バッテリケースは、樹脂を用いて構成することもできる。この場合、バッテリケースのアッパー及びロアケースの少なくとも一方は、樹脂成型品とすることができる。
【0031】
バッテリケース20の側方壁20aは、アッパーケース本体21aの側方壁21dと、ロアケース本体22aの側方壁22dとを含む。アッパーケース本体21aの側方壁21dは、下方から上方に向かうに従ってバッテリパック11の水平方向の中心に接近するように傾斜している。ロアケース本体22aの側方壁22dは、上方から下方に向かうに従ってバッテリパック11の水平方向の中心に接近するように傾斜している。取付機構50は、アッパーケース本体21aの側方壁21dに取り付けられる。
【0032】
図4に示すように、鉛直軸Tに対するアッパーケース本体21aにおける側方壁21dの傾斜角度は、鉛直軸Tに対する取付機構50における支持部51の支持面51aの傾斜角度と実質的に等しくなっている。しかしながら、鉛直軸に対するアッパーケース本体における側方壁の傾斜角度は、鉛直軸に対する取付機構における支持部の支持面の傾斜角度よりも大きくすることもできる。鉛直軸に対するアッパーケース本体における側方壁の傾斜角度は、鉛直軸に対する取付機構における支持部の支持面の傾斜角度よりも小さくすることもできる。
【0033】
図2図5を参照すると、アッパーケース本体21aは、その上端に位置する頂上壁21eを有する。この頂上壁21eは、上下方向にて取付機構50の上端に対応するように配置されている。アッパーケース本体21aの側方壁21dは、その頂上壁21eの外周縁から下方に向かって延びる。図4を参照すると、ロアケース本体22aは、その下端に位置する底壁22eを有する。ロアケース本体22aの側方壁22dは、その底壁22eの外周縁から上方に向かって延びる。
【0034】
図5に示すように、バッテリケース20の側方壁20aには、それを貫通するように開口孔20cが形成されている。この開口孔20cは、アッパーケース本体21aの側方壁21dに位置する。取付機構50は、この開口孔20cを覆うようにバッテリケース20の側方壁20aに取り付けられている。具体的には、取付機構50は、開口孔20cを覆うようにアッパーケース本体21aの側方壁21dに取り付けられている。
【0035】
図4に示すように、アッパーケース21は、取付機構50に対して下方に位置し、かつロアケース本体22aの側方壁22dからバッテリパック11の水平方向の外方に向かって膨出するように形成される下側補強部材23を有する。下側補強部材23は、ロアケース22の跳ね返し部22cの下方に位置する。下側補強部材23は、ロアケース本体22aに取り付けられている。
【0036】
支持部51の支持面51aが車両の後方を向く場合において、下側補強部材23は、車両の前方から後方に向かって膨出するように形成される。下側補強部材23は、その膨出方向の先端に位置する後端壁23aを有する。後端壁23aは、下方から上方に向かうに従って車両の後方寄りとなるように傾斜する。後端壁23aと、跳ね返し部21c,22cの後端とを通過する仮想平面Q(一点鎖線により示す)を設定した場合、複数の圧力調整弁40は、仮想平面Qよりも車両の前方寄りに配置される。
【0037】
下側補強部材23は、後端壁23aの上端から車両前方に延びる上方壁23bを有する。上方壁23bの前端部はフランジ形状に形成される。上方壁23bの前端部はロアケース本体22aの側方壁22dに接合されている。下側補強部材23は、後端壁23aの下端から車両前方に延びる下方壁23cを有する。下方壁23cの前端部は、ロアケース本体22aの底壁22eに沿って形成される。下方壁23cの前端部は、ロアケース本体22aの底壁22eに接合されている。
【0038】
「接続端子組立体の詳細」
図2図5を参照すると、接続端子組立体30は、詳細には次のように構成することができる。特に図5に示すように、接続端子組立体30における第1接続端子31の第1接続部31aは、取付機構50における支持部51の支持面51aから水平方向に突出するように形成されている。特に図4に示すように、第1接続端子31は、バッテリケース20の内部に位置するバッテリモジュール12と電気的に接続されている。
【0039】
図2図4に示すように、接続端子組立体30における第2接続端子32の第2接続部32aは、第1接続端子31の第1接続部31aに離脱可能に機械的に接続されている。第1及び第2接続部31a,32aは、互いに機械的に接続された状態で互いに電気的に接続される。第2接続端子32における端子凸部32bの突出方向の基端は、第2接続部32aに連結される。
【0040】
電力ケーブルCは、端子凸部32bの突出方向の先端側から端子凸部32bと機械的に接続される。第1及び第2接続端子31,32の剛性は、電力ケーブルCの剛性よりも高くなっている。電力ケーブルCは、端子凸部32bを介して第2接続部32aと電気的に接続される。第1及び第2接続部31a,32aが互いに接続された状態で、電力ケーブルCは、接続端子組立体30を介してバッテリモジュール12と電気的に接続される。電力ケーブルCはまた、バッテリケース20の側方壁20aの一部と水平方向にて対向するように配置される。特に、電力ケーブルCは、アッパーケース本体21aの側方壁21dの後面と水平方向にて対向するように配置することができる。
【0041】
「圧力調整弁の詳細」
図2図5を参照すると、圧力調整弁40は、詳細には次のように構成することができる。図2図5を参照すると、各圧力調整弁40は、バッテリケース20の内部及び外部の圧力差が一定の閾値以上になったときに、バッテリケース20の内部のガスをバッテリケース20の外部に排出するように開放される。各圧力調整弁40は、バッテリケース20の内部及び外部の圧力差が一定の閾値よりも小さいときには、バッテリケース20の内部及び外部間におけるガスの流通を遮断するように閉鎖される。
【0042】
複数の圧力調整弁40のうち一部分は、端子凸部32bの突出側に位置し、かつ端子凸部32bに対して車両の前後方向に対向する。複数の圧力調整弁40のうち残りの部分は、端子凸部32bの突出側とは反対側に位置し、かつ前方壁4の湾曲部4bに対して車両の前後方向に対向する。
【0043】
特に図5において図示されるバッテリパック11は、4つの圧力調整弁40が、略四角形状に形成された支持部51の支持面51aの角部に配置されている。図2図5を参照すると、これら4つの圧力調整弁40のうち、端子凸部32bの突出側に位置する2つの圧力調整弁40が、端子凸部32bに対して車両の前後方向に対向する。これら4つの圧力調整弁40のうち、端子凸部32bの突出側とは反対側に位置する2つの圧力調整弁40が、前方壁4の湾曲部4bに対して車両の前後方向に対向する。しかしながら、圧力調整弁の配置は、これらに限定されない。例えば、複数の圧力調整弁のすべてを、端子凸部の突出側に配置し、かつ端子凸部に対して車両の前後方向に対向させることができる。
【0044】
「取付機構の詳細」
図2図5を参照すると、取付機構50は、詳細には次のように構成することができる。取付機構50は、前記バッテリケース20の側方壁20aの外方面20bに取り付けられる取付基部52を有する。図5に示すように、取付基部52は、バッテリケース20の側方壁20aの開口孔20c(破線により示す)を覆うように配置される。
【0045】
取付基部52は、この開口孔20c(破線により示す)に対応するように取付基部52を貫通する貫通孔52a(破線により示す)を有する。取付基部52は、バッテリパック11の水平方向の外方を向く段差面52bを有する。段差面52bは、下方から上方に向かうに従ってバッテリパック11の水平方向の中心に接近するように傾斜する。
【0046】
鉛直軸Tに対する取付基部52の段差面52bの傾斜角度は、鉛直軸Tに対する支持部51の支持面51aの傾斜角度よりも小さくなっている。しかしながら、鉛直軸に対する取付基部の段差面の傾斜角度は、鉛直軸に対する支持部の支持面の傾斜角度と実質的に等しくすることもできる。鉛直軸に対する取付基部の段差面の傾斜角度は、鉛直軸に対する支持部の支持面の傾斜角度よりも大きくすることもできる。
【0047】
支持部51は、段差面52bの面内方向の略中央に配置される。言い換えれば、段差面52bは、支持部51の周囲に配置される。図5に示すように、支持部51は、バッテリケース20の側方壁20aの開口孔20c(破線により示す)及び取付機構50の取付基部52の貫通孔52aを覆うように配置されている。
【0048】
以上、本実施形態に係る車両用バッテリパック周辺構造10は、車体1のフロアパネル2の下方に配置されるバッテリパック11及びその周辺を含む車両用バッテリパック周辺構造10であって、前記バッテリパック11が、バッテリモジュール12と、前記バッテリモジュール12を収容するバッテリケース20と、前記バッテリケース20の外部の機器から延びる電力ケーブルCと電気的に接続可能に構成される接続端子組立体30と、前記バッテリケース20の内部及び外部間の圧力差を調整可能とする1つ又は複数の圧力調整弁40と、前記接続端子組立体30及び前記1つ又は複数の圧力調整弁40を前記バッテリケース20の側方壁20aの外方面20bに取り付けるように構成される取付機構50とを含み、前記取付機構50が、前記接続端子組立体30及び前記1つ又は複数の圧力調整弁40を支持する支持部51を有し、前記支持部51が、前記バッテリパック11の水平方向の外方を向く支持面51aを有し、前記接続端子組立体30は、前記バッテリケース20側の第1接続端子31と、前記電力ケーブルC側の第2接続端子32とを有し、前記第1接続端子31は、前記支持部51の支持面51a上に配置される第1接続部31aを有し、前記第2接続端子32は、前記第1接続部31aに接続される第2接続部32aと、前記支持部51の支持面51aと水平方向に間隔を空け、かつ前記支持部51の支持面51aと対向するように前記第2接続部32aから前記水平方向に沿って突出する端子凸部32bとを有し、前記1つの圧力調整弁40又は前記複数の圧力調整弁40のうち少なくとも1つが、前記端子凸部32bに対して前記水平方向に対向するように前記支持部51の支持面51aに配置されている。
【0049】
このようなバッテリパック周辺構造10によれば、車体1のフロアパネル2の下方に配置されるバッテリパック11において、1つの圧力調整弁40又は複数の圧力調整弁40のうち少なくとも1つが、水平方向に対向する取付機構50の支持部51の支持面51a及び接続端子組立体30の第2接続端子32の端子凸部32b間の空間に配置される。そのため、1つの圧力調整弁40又は複数の圧力調整弁40のうち少なくとも1つに向かう泥、小石、水等の移動を、支持部51及び第2接続端子32の端子凸部32bによって遮ることができる。その結果、飛散した泥、小石等によって圧力調整弁40が破損することを防止できる。また、飛散した水等が圧力調整弁40に付着することを防止でき、ひいては、寒冷地等において圧力調整弁40が凍ることによって圧力調整弁40が塞がれることを防止できる。よって、圧力調整弁40を効率的に保護することができる。
【0050】
一実施形態に係るバッテリパック周辺構造10においては、前記取付機構50の支持部51の支持面51aが、下方から上方に向かうに従って前記バッテリパック11の水平方向の中心に接近するように傾斜しており、前記支持部51の支持面51a及び前記端子凸部32b間の間隔が、上方から下方に向かうに従って狭くなっている。
【0051】
このようなバッテリパック周辺構造10によれば、泥、小石、水等が取付機構50の支持部51の支持面51a及び接続端子組立体30の第2接続端子32の端子凸部32b間の空間に堆積することを防ぐように、泥、小石、水等を下方に流すことができる。そのため、堆積した泥、小石等が圧力調整弁40を塞ぐことを防止できる。また、堆積した水等が圧力調整弁40に付着することを防止でき、ひいては、寒冷地等において圧力調整弁40が凍ることによって圧力調整弁40が塞がれることを防止できる。よって、圧力調整弁40を効率的に保護することができる。
【0052】
一実施形態に係るバッテリパック周辺構造10においては、前記バッテリケース20が、その上部を形成するアッパーケース21と、前記バッテリケース20の下部を形成するロアケース22とを有し、前記アッパーケース21は、アッパーケース本体21aと、前記アッパーケース本体21aから前記バッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出するフランジ21bとを有し、前記ロアケース22は、ロアケース本体22aと、前記ロアケース本体22aから前記バッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出するフランジ22bとを有し、前記アッパー及びロアケース21,22のフランジ21b,22bのうち少なくとも一方に、前記1つの圧力調整弁40又は前記複数の圧力調整弁40のうち少なくとも1つの真下を横切る跳ね返し部21c,22cが設けられている。
【0053】
一実施形態に係るバッテリパック周辺構造10においては、前記アッパーケース21のフランジ21bが、前記アッパーケース本体21aの下方縁から前記バッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出し、前記ロアケース22のフランジ22bが、前記ロアケース本体22aの上方縁から前記バッテリパック11の水平方向の外方に向かって突出し、前記アッパー及びロアケース21,22がこれらのフランジ21b,22bを上下方向に重ねると共に結合した重ね合わせ部Pを用いて互いに取り付けられており、前記跳ね返し部21c,22cが、前記重ね合わせ部Pに設けられている。
【0054】
このようなバッテリパック周辺構造10によれば、1つの圧力調整弁40又は複数の圧力調整弁40のうち少なくとも1つに向かう泥、小石、水等の移動を、跳ね返し部21c,22cによって遮ることができる。よって、圧力調整弁40を効率的に保護することができる。
【0055】
一実施形態に係るバッテリパック周辺構造10においては、前記支持部51の支持面51aが前記車両の後方を向いており、前記車両が、上方から下方に膨出し、かつ前記支持部51の支持面51aに対して前記車両の後方に位置する底側凹部3を有し、前記底側凹部3が、前記支持部51の支持面51a及び前記重ね合わせ部)に対向する前方壁4を有し、前記前方壁4が、前記水平方向にて前記重ね合わせ部Pに対して平行に延びる延伸部4aを有する。
【0056】
このようなバッテリパック周辺構造10によれば、車両の後突によって底側凹部3の前方壁4が圧力調整弁40に向かって移動する場合であっても、前方壁4が圧力調整弁40よりも先に重ね合わせ部Pに接触する。そのため、車両の後突時において、圧力調整弁40を重ね合わせ部Pによって効率的に保護することができる。
【0057】
一実施形態に係るバッテリパック周辺構造10においては、前記前方壁4が、前記延伸部4aの延伸方向の端から前記車両の幅方向の外方に向かうに従って前記重ね合わせ部Pから離れるように湾曲する湾曲部4bを有し、前記複数の圧力調整弁40のうち一部分は、前記端子凸部32bに対して前記車両の前後方向に対向するように前記支持部51の支持面51a上に配置され、前記複数の圧力調整弁40のうち残りの部分は、前記前方壁4の湾曲部4bに対して前記車両の前後方向に対向するように前記支持部51の支持面51a上に配置されている。
【0058】
このようなバッテリパック周辺構造10によれば、車両の後突によって底側凹部3の前方壁4が圧力調整弁40に向かって移動し、その結果、前方壁4が複数の圧力調整弁40のうち一部分と接触したとしても、前方壁4の延伸方向の湾曲部4bが、複数の圧力調整弁40のうち残りの部分と接触することを避けることができる。そのため、このような状況下においても、少なくとも複数の圧力調整弁40のうち残りの部分が使用可能な状態で維持できるので、圧力調整弁40を効率的に保護することができる。
【0059】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…車体、2…フロアパネル、3…底側凹部(スペアタイヤハウジング)、4…前方壁、4a…延伸部、4b…湾曲部
10…バッテリパック周辺構造
11…バッテリパック
12…バッテリモジュール
20…バッテリケース、20a…側方壁、20b…外方面、21…アッパーケース
21a…アッパーケース本体、21b…フランジ、21c…跳ね返し部、22…ロアケース、22a…ロアケース本体、22b…フランジ、22c…跳ね返し部、P…重ね合わせ部
30…接続端子組立体、31…第1接続端子、31a…第1接続部、32…第2接続端子、32a…第2接続部、32b…端子凸部、C…電力ケーブル
40…圧力調整弁
50…取付機構、51…支持部、51a…支持面
図1
図2
図3
図4
図5