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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】組合せ端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/12 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
H01R11/12 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021099236
(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公開番号】P2022190795
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】中村 英人
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-146116(JP,A)
【文献】特開平09-232019(JP,A)
【文献】特開2006-012608(JP,A)
【文献】特開2022-079222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板部を有する第1端子金具と、
前記第1基板部に積層される第2基板部を有し、積層方向と交差する方向に変位させることによって前記第1端子金具に組み付けられる第2端子金具とを備え、
前記第1端子金具には、弾性変形可能な弾性ロック片が形成され、
前記第2端子金具には、前記弾性ロック片と係止することによって前記第1端子金具と前記第2端子金具を組付け状態にロックするロック部が形成され、
前記第1端子金具には、前記弾性ロック片に対する異物の干渉を防止する保護部材が取り付けられている組合せ端子。
【請求項2】
前記保護部材は、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け過程で前記第2端子金具を摺接させるガイド面を有している請求項1に記載の組合せ端子。
【請求項3】
前記第1端子金具と前記第2端子金具は、相対的に回転しながら組み付けられるようになっており、
前記弾性ロック片が、前記第1基板部から、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組み付け方向と同心の円弧状に延出した形状である請求項1又は請求項2に記載の組合せ端子。
【請求項4】
前記第1端子金具に対して積層状態で組み付けられる第1サブ端子を備えており、
前記第1端子金具と前記第1サブ端子には、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け開始時に前記第2端子金具を位置決めする位置決め部が形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組合せ端子。
【請求項5】
前記第1端子金具に対し、前記第2端子金具とは反対側から積層した状態で組み付けられる第1サブ端子を備えており、
前記弾性ロック片は、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け過程で、前記第2端子金具との干渉によって前記第1サブ端子側へ弾性変位し、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け完了時に弾性復帰して前記ロック部に係止するようになっており、
前記第1サブ端子に、前記弾性ロック片の弾性変形を可能にする撓み許容空間が形成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組合せ端子。
【請求項6】
前記第1基板部は、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付けが完了した状態で、前記第2基板部に接触する突起状の接点部を有し、
前記第2基板部には、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け開始時に、前記接点部との干渉を回避する干渉回避部が形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の組合せ端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組合せ端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1端子本体と第2端子本体とを組み付ける構造が開示されている。各端子本体は、一対の板状重ね合わせ部を段差状の連結部によって繋いだ形状である。2つの端子本体は、板状重ね合わせ部同士と連結部同士を互い違いに重ね合わせることによって組み付けられている。一方の端子本体の板状重ね合わせ部に形成したロック突部を、他方の板状重ね合わせ部に形成したロック孔に嵌合することによって、2つの端子本体が組付け状態にロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-067305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端子本体同士を組み付ける過程では、ロック突部が相手側の板状重ね合わせ部に対して強く押し付けられた状態で擦れることによって、大きな摺動抵抗が生じる。そのため、手作業で端子本体同士を組み付けることは困難である。
【0005】
本開示の組合せ端子は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、手作業での組付けを可能にすることをことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の組合せ端子は、
第1基板部を有する第1端子金具と、
前記第1基板部に積層される第2基板部を有し、積層方向と交差する方向に変位させることによって前記第1端子金具に組み付けられる第2端子金具とを備え、
前記第1端子金具には、弾性変形可能な弾性ロック片が形成され、
前記第2端子金具には、前記弾性ロック片と係止することによって前記第1端子金具と前記第2端子金具を組付け状態にロックするロック部が形成され、
前記第1端子金具には、前記弾性ロック片に対する異物の干渉を防止する保護部材が取り付けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、手作業での組付けが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の組合せ端子の斜視図である。
図2図2は、第1端子モジュールと第2端子モジュールを組み付けた状態をあらわす斜視図である。
図3図3は、第1端子モジュールと保護部材を分離した状態をあらわす斜視図である。
図4図4は、第1端子金具と第1サブ端子を分離した状態をあらわす斜視図である。
図5図5は、第1端子モジュールと保護部材を組み付けた状態の断面図である。
図6図6は、保護部材の底面図である。
図7図7は、第2端子モジュールの斜視図である。
図8図8は、第2端子金具と第2サブ端子を分離した状態をあらわす斜視図である。
図9図9は、第1端子モジュールと第2端子モジュールの組付を開始した状態をあらわす平面図である。
図10図10は、第1端子モジュールと第2端子モジュールの組付けが完了した状態をあらわす平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の組合せ端子は、
(1)第1基板部を有する第1端子金具と、前記第1基板部に積層される第2基板部を有し、積層方向と交差する方向に変位させることによって前記第1端子金具に組み付けられる第2端子金具とを備え、前記第1端子金具には、弾性変形可能な弾性ロック片が形成され、前記第2端子金具には、前記弾性ロック片と係止することによって前記第1端子金具と前記第2端子金具を組付け状態にロックするロック部が形成され、前記第1端子金具には、前記弾性ロック片に対する異物の干渉を防止する保護部材が取り付けられている。本開示の構成によれば、両端子金具の組付け過程では弾性ロック片が弾性変形する。弾性変形しない突起部を相手側の端子金具に強く擦り付けながら組み付ける場合に比べると、両端子金具の組付け過程に生じる抵抗が小さいので、手作業による組付けが可能である。弾性ロック片に対する異物の干渉が、保護部材によって防止されるので、弾性ロック片とロック部とによるロック機能の信頼性が高い。
【0010】
(2)前記保護部材は、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け過程で前記第2端子金具を摺接させるガイド面を有していることが好ましい。この構成によれば、両端子金具を組み付けるときの作業性が良い。ガイド面を、第1端子金具に形成する場合に比べると、第1端子金具の形状を簡素化することができる。
【0011】
(3)前記第1端子金具と前記第2端子金具は、相対的に回転しながら組み付けられるようになっており、前記弾性ロック片が、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組み付け方向と同心の円弧状に延出した形状であることが好ましい。この構成によれば、第1端子金具の外形寸法を大きくしなくても、弾性ロック片の延出寸法を大きく確保できる。これにより、第1端子金具と第2端子金具の組み付け過程において、弾性ロック片の弾性変形に起因する摺動抵抗を低減できる。
【0012】
(4)前記第1端子金具に対して積層状態で組み付けられる第1サブ端子を備えており、前記第1端子金具と前記第1サブ端子には、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け開始時に前記第2端子金具を位置決めする位置決め部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1端子金具と第2端子金具を組み付ける際の作業性が良い。
【0013】
(5)前記第1端子金具に対し、前記第2端子金具とは反対側から積層した状態で組み付けられる第1サブ端子を備えており、前記弾性ロック片は、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け過程で、前記第2端子金具との干渉によって前記第1サブ端子側へ弾性変位し、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け完了時に弾性復帰して前記ロック部に係止するようになっており、前記第1サブ端子に、前記弾性ロック片の弾性変形を可能にする撓み許容空間が形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1サブ端子の厚さの範囲内に、弾性ロック片の弾性変位時の撓み許容空間が確保されるので、第1端子金具と第1サブ端子との間に弾性ロック片の撓み許容空間を確保せずに済む。
【0014】
(6)前記第1基板部は、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付けが完了した状態で、前記第2基板部に接触する突起状の接点部を有し、前記第2基板部には、前記第1端子金具と前記第2端子金具の組付け開始時に、前記接点部との干渉を回避する干渉回避部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1端子金具と第2端子金具の組付け開始時に、接点部が干渉回避部に収容されるので、第1基板部と第2基板部を隙間無く積層することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1を、図1図10を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、上下の方向については、図1~5,7,8にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0016】
本実施例1の組合せ端子は、第1端子モジュール10と保護部材40と第2端子モジュール50とを組み付けて構成されている。第1端子モジュール10は、1つの第1端子金具11と1つの第1サブ端子30とを組み付けて構成されている。保護部材40か単一部品である。第2端子モジュール50は、1つの第2端子金具51と1つの第2サブ端子60とを組み付けて構成されている。
【0017】
<第1端子モジュール10>
第1端子金具11は、所定形状の金属板材に曲げ加工等を施して成形された単一部品である。図4に示すように、第1端子金具11は、板厚方向を上下方向に向けた第1基板部12と、オープンバレル状状の第1圧着部13とを有する。第1基板部12の平面視形状は円形である。第1圧着部13は、第1基板部12の外周縁から径方向外方へ突出している。第1基板部12の中心部には、第1基板部12を板厚方向に貫通する第1ボルト孔14が形成されている。
【0018】
第1ボルト孔14の孔縁部には、第1ボルト孔14の中心を挟むように配置された一対の第1覆い部15が形成されている。第1覆い部15は、第1基板部12に対して第1基板部12の板厚寸法分だけ段差状に高い位置に配置されている。一方の第1覆い部15には係止孔16が形成され、他方の第1覆い部15には係止突起17が形成されている。第1基板部12のうち他方の第1覆い部15を挟んで第1ボルト孔14とは反対側の位置に、貫通孔18が形成されている。
【0019】
第1基板部12には、3つの弾性ロック片20が形成されている。3つの弾性ロック片20は、第1ボルト孔14と同心の円周方向に沿って細長く延びている。3つの弾性ロック片20は、周方向に間隔を空けて配置されている。第1基板部12を上から見た平面視において、3つの弾性ロック片20は、円弧形をなし、反時計周り方向へ片持ち状に延出している。
【0020】
弾性ロック片20は、周方向両端部のうち第1基板部12に繋がる基端部を支点として、第1基板部12の板厚方向、即ち上下方向へ弾性変位することが可能である。弾性ロック片20を第1基板部12の板厚方向と直角に見たときに、弾性ロック片20は第1基板部12に対して斜めをなしている。弾性ロック片20が弾性変位していない自由状態では、弾性ロック片20の延出端部21は、第1基板部12よりも下方へ突出するように配置されている。
【0021】
第1基板部12には、3つの突起状をなす接点部23が形成されている。3つの接点部23は、第1基板部12を部分的に下方へ突出するように叩き出すことによって形成されている。接点部23の平面視形状は、平面視において時計回り方向前方を頂点とする三角形をなしている。平面視において、接点部23は、弾性ロック片20と同心同径の円周上に位置し、弾性ロック片20の延出端部21に対して周方向に隣り合うように配置されている。
【0022】
第1基板部12には、周方向に間隔を空けた3つの位置決め用凹部24と、1つの回止め用凹部25が形成されている。3つの位置決め用凹部24は、第1基板部12の外周縁部を第1基板部12と同心の円弧形に切欠した形状である。第1基板部12の外周縁部のうち、位置決め用凹部24に対して反時計周り方向側に隣り合う部位は、板状嵌合部26して機能する。回止め用凹部25は、第1基板部12の外周縁部を第1基板部12と同心の円弧形に切欠した形状である。回止め用凹部25の周長は、1つの位置決め用凹部24の周長よりも短い。
【0023】
第1サブ端子30は、所定形状の金属板材に曲げ加工等を施して成形された単一部品である。第1サブ端子30は、板厚方向を上下方向に向けた第1板状基部31と、オープンバレル状の第1圧着部13とを有する。第1板状基部31の平面視形状は円形である。第1圧着部13は、第1板状基部31の外周縁から径方向外方へ突出している。第1板状基部31の中心部には、第1板状基部31を板厚方向に貫通する第1ボルト孔14が形成されている。
【0024】
第1ボルト孔14の孔縁部には、第1ボルト孔14の中心を挟むように配置された一対の第1受け部32が形成されている。第1受け部32は、第1板状基部31に対して第1板状基部31の板厚寸法分だけ段差状に低い位置に配置されている。一方の第1受け部32には係止孔16が形成され、他方の第1受け部32には係止突起17が形成されている。第1板状基部31のうち他方の第1受け部32を挟んで第1ボルト孔14とは反対側の位置には、貫通孔18が形成されている。
【0025】
第1板状基部31には、第1板状基部31を板厚方向に貫通した形状の3つの撓み許容空間33が形成されている。3つの撓み許容空間33は、周方向に間隔を空けて配置されている。撓み許容空間33は、弾性ロック片20と同様、第1ボルト孔14と同心の円周方向に沿って細長く延びている。第1板状基部31を上から見た平面視において、3つの撓み許容空間33は、円弧形をなし、反時計周り方向へ片持ち状に延出している。3つのうちつの撓み許容空間33の一部は、貫通孔18の開口範囲と共通である。
【0026】
第1板状基部31には、周方向に間隔を空けた3つの位置決め用凹部24と、1つの回止め用凹部25が形成されている。3つの位置決め用凹部24は、第1板状基部31の外周縁部を第1板状基部31と同心の円弧形に切欠した形状である。回止め用凹部25は、第1板状基部31の外周縁部を第1板状基部31と同心の円弧形に切欠した形状である。回止め用凹部25の周長は、1つの位置決め用凹部24の周長よりも短い。
【0027】
第1端子金具11と第1サブ端子30を組み付けた状態では、第1板状基部31が第1基板部12の上面に積層され、第1覆い部15が第1受け部32の上面に積層されることによって、第1端子金具11と第1サブ端子30が板厚方向へ離隔しないように保持される。第1受け部32の係止孔16と係止突起17が、第1覆い部15の係止突起17と係止孔16に係止することによって、第1端子金具11と第1サブ端子30が、積層方向と直交する水平方向へ離脱しないように保持される。
【0028】
第1端子金具11と第1サブ端子30を組み付けた状態では、第1端子金具11の第1ボルト孔14と第1サブ端子30の第1ボルト孔14が同軸状に配置され、第1端子金具11の第1圧着部13と第1サブ端子30の第1圧着部13が周方向に隣り合うように配置される。平面視において、3つの撓み許容空間33内には、3つの弾性ロック片20の全体が個別に配置される。弾性ロック片20が上方へ弾性変位してときに、弾性ロック片20は、撓み許容空間33内に収容されるので、第1板状基部31と干渉することはない。
【0029】
第1端子金具11の回止め用凹部25の全領域と、第1サブ端子30の回止め用凹部25の全領域とが周方向において重なる。第1端子金具11の位置決め用凹部24の一部と第1サブ端子30の位置決め用凹部24の一部が、周方向において重なる。双方の位置決め用凹部24が重なり合った3つの空間は、周方向に間隔を空けて配置された位置決め部34として機能する。平面視において、第1端子金具11の3つの板状嵌合部26は、3つの位置決め部34に対して反時計周り方向に隣接するように配置される。
【0030】
<保護部材40>
保護部材40は、平面視形状が円形のリング状をなす単一部品である。保護部材40には、1つの第1切欠部41が形成されている。第1切欠部41は、保護部材40の上面のうち周方向の一部を凹ませた形状である。第1切欠部41は、保護部材40の上面と内周面と外周面とに開口している。保護部材40には、1つの第2切欠部42が形成されている。第2切欠部42は、保護部材40の下面のうち周方向の一部を凹ませた形状である。第2切欠部42は、保護部材40の下面と内周面と外周面とに開口している。第1切欠部41と第2切欠部42は、周方向において異なる領域に配置されている。
【0031】
保護部材40には、周方向に間隔を空けた3つの第3切欠部43が形成されている。第3切欠部43は、保護部材40の下面のうち周方向の一部を凹ませた形状である。各第3切欠部43は、保護部材40の下面と内周面に開口しているが、保護部材40の外周面には開口していない。3つのうち1つの第3切欠部43は、第2切欠部42と連通している。
【0032】
保護部材40には、周方向に間隔を空けた3つの突出部44が形成されている。3つの突出部44は、保護部材40の内周面の上端部から、径方向内側へ突出している。突出部44の内周面には、径方向内側へ突出した抜止め突起45が形成されている。抜止め突起45は、突出部44からの突出寸法が下方に向かって次第に大きくなるようなテーパ形状をなしている。
【0033】
保護部材40には、1つの回止め用凸部46が形成されている。回止め用凸部46は、保護部材40の内周面のうち上端側領域から、径方向内側へ突出した形状である。回止め用凸部46の上面は、保護部材40の上面に対して面一状に連続している。回止め用凸部46の下面は、突出部44の下面よりも下方に位置する。
【0034】
保護部材40の内周面のうち、上下方向において突出部44の下面よりも下方の領域は、円弧形のガイド面47として機能する。ガイド面47は、第2切欠部42と3つの第3切欠部43において途切れている。図6に示すように、保護部材40を下から見た底面視において、全てのガイド面47は、同心同径の1つの円周を構成する。
【0035】
<第2端子モジュール50>
第2端子金具51は、所定形状の金属板材に曲げ加工等を施して成形された単一部品である。図7,8に示すように、第2端子金具51は、板厚方向を上下方向に向けた第2基板部52と、1つの第2圧着部53とを有する。第2基板部52の平面視形状は円形である。第2圧着部53は、第2基板部52の外周縁から径方向外方へ突出している。第2基板部52の中心部には、第2基板部52を板厚方向に貫通する第2ボルト孔54が形成されている。
【0036】
第2ボルト孔54の孔縁部には、第2ボルト孔54の中心を挟むように配置された一対の第2受け部55が形成されている。第2受け部55は、第2基板部52に対して第2基板部52の板厚寸法分だけ段差状に低い位置に配置されている。一方の第2受け部55には係止孔16が形成され、他方の第2受け部55には係止突起17が形成されている。第2基板部52のうち他方の第2受け部55を挟んで第2ボルト孔54とは反対側の位置に、貫通孔18が形成されている。
【0037】
第2基板部52には、周方向に間隔を空けた3つのロック部56が形成されている。ロック部56は、第2基板部52を板厚方向に貫通した孔形状である。周方向におけるロック部56のピッチは、3つの弾性ロック片20と同じピッチである。3つのロック部56は、弾性ロック片20が構成する円と同径の円周上に配置されている。
【0038】
第2基板部52には、2つの干渉回避部57が形成されている。2つの干渉回避部57は、第2基板部52を板厚方向に貫通するように形成されている。2つの干渉回避部57と第2基板部52の貫通孔18は、3つの接点部23を同時に収容し得る位置関係となるように配置されている。
【0039】
第2基板部52の外周縁には、3対の折返部58が形成されている。対をなす折返部58は、周方向において近接して並ぶように配置されている。3対の折返部58は、周方向において3つの板状嵌合部26と同じピッチで配置されている。各折返部58は、第2基板部52の外周縁から、第2基板部52の上面側へ折り返されて、径方向内側へ片持ち状に延出した形状である。第2基板部52の上面と折返部58の下面との間には、第1基板部12の板状嵌合部26の板厚と同じか、それよりも少し小さい寸法に設定されている。
【0040】
第2サブ端子60は、所定形状の金属板材に曲げ加工等を施して成形された単一部品である。第2サブ端子60は、板厚方向を上下方向に向けた第2板状基部61と、オープンバレル状の第2圧着部53とを有する。第2板状基部61の平面視形状は円形である。第2圧着部53は、第2板状基部61の外周縁から径方向外方へ突出している。第2板状基部61の中心部には、第2板状基部61を板厚方向に貫通する第2ボルト孔54が形成されている。
【0041】
第2ボルト孔54の孔縁部には、第2ボルト孔54の中心を挟むように配置された一対の第2覆い部62が形成されている。第2覆い部62は、第2板状基部61に対して第2板状基部61の板厚寸法分だけ段差状に高い位置に配置されている。一方の第2覆い部62には係止孔16が形成され、他方の第2覆い部62には係止突起17が形成されている。第2板状基部61のうち他方の第2覆い部62を挟んで第2ボルト孔54とは反対側の位置には、貫通孔18が形成されている。
【0042】
第2端子金具51と第2サブ端子60を組み付けた状態では、第2板状基部61の上面に第2基板部52が積層され、第2覆い部62が第2受け部55の上面に積層されることによって、第2端子金具51と第2サブ端子60が板厚方向へ離隔しないように保持される。第2覆い部62の係止突起17と係止孔16が、第2受け部55の係止孔16と係止突起17に係止することによって、第2端子金具51と第2サブ端子60が、積層方向と直交する水平方向へ離脱しないように保持される。第2端子金具51の第2ボルト孔54と第2サブ端子60の第2ボルト孔54が同軸状に配置される。第2端子金具51の第2圧着部53と第2サブ端子60の第2圧着部53が周方向に隣り合うように配置される。
【0043】
<組合せ端子の組付け手順>
第1端子モジュール10と第2端子モジュール50を組み付ける前に、第1端子モジュール10と保護部材40を組み付けておく。組付けに際しては、第1端子モジュール10のうち第1基板部12と第1板状基部31を、保護部材40の内部へ上から落とし込むように収容する。このとき、回止め用凸部46を回止め用凹部25に嵌合し、3つの位置決め部34を3つの突出部44に嵌合することによって、第1端子モジュール10が保護部材40に対して周方向に位置決めされる。第1端子モジュール10の嵌合過程では、2つの第1圧着部13が第1切欠部41に収容される。
【0044】
第1端子モジュール10が保護部材40に組み付けられると、第1圧着部13が第1切欠部41の底面に載置され、第1基板部12が抜止め突起45を通過する。抜止め突起45が第1基板部12の上面における外周縁部に係止することによって、第1端子モジュール10が保護部材40に対して上方への離脱を規制される。回止め用凸部46が回止め用凹部25に嵌合した状態に保たれるので、第1端子モジュール10は保護部材40に対して位置決めされるとともに、相対回転を規制された状態に保持される。
【0045】
図5に示すように、第1端子金具11に形成されている3つの弾性ロック片20の延出端部21は、第1基板部12よりも下方へ突出されている。そのため、弾性ロック片20の延出端部21に異物が干渉し、弾性ロック片20が塑性変形してしまうことが懸念される。しかし、保護部材40の下面は、弾性ロック片20の延出端部21よりも下方に位置するので、弾性ロック片20の延出端部21に異物が干渉するおそれはない。
【0046】
第1端子モジュール10と保護部材40を組み付けた後、第1端子モジュール10に第2端子モジュール50を組み付ける。組付けの際には、第2端子モジュール50のうち第2基板部52と第2板状基部61を保護部材40の内部へ下方から収容し、第2基板部52の上面を、第1基板部12の下面に対して対向させた状態で接近させる。このとき、3対の折返部58を3つの第3切欠部43に収容し、2つの第2圧着部53は第2切欠部42に収容する。3対の折返部58を3つの位置決め部34に嵌合することによって、第2端子モジュール50が保護部材40及び第1端子モジュール10に対して周方向に位置決めされる。第2端子モジュール50の外周縁がガイド面47に当接することによって、両端子モジュール10,50が同心状に位置決めされ、第1ボルト孔14と第2ボルト孔54が同心状に配置される。
【0047】
第1端子モジュール10は、第1基板部12の下面から下方へ突出する接点部23を有するため、接点部23が第2基板部52の上面と干渉することが懸念される。しかし、第2端子モジュール50を第1端子モジュール10に対して位置決めすると、接点部23が干渉回避部57内に収容されるので、接点部23が第2基板部52と干渉することはない。これにより、第2基板部52の上面が第1基板部12の下面に対して当接した状態で積層される。
【0048】
第1基板部12と第2基板部52が当接状態で積層されると、弾性ロック片20の延出端部21が第2基板部52の上面に当接するので、弾性ロック片20は第2基板部52によって上方へ押圧される。弾性ロック片20の上方には、第1サブ端子30に形成した撓み許容空間33が確保されているので、弾性ロック片20は撓み許容空間33内に進入しながら上方へ弾性変位することができる。したがって、弾性ロック片20は、第1板状基部31と第2基板部52との間に挟まれて塑性変形するおそれがない。
【0049】
第2端子モジュール50を第1端子モジュール10に対して位置決めして仮組みした後は、平面視において、第2端子モジュール50を、第1端子モジュール10と保護部材40に対して反時計周り方向へ相対回転させる。周方向において、第2端子モジュール50の回転方向は、弾性ロック片20が片持ち状に延出する方向と同じ方向である。
【0050】
両端子モジュール10,50の相対回転の過程では、第2基板部52の外周面と第2板状基部61の外周面が、ガイド面47に摺接することによって、両端子モジュール10,50が同心状に位置決めされた状態を保つ。両端子モジュール10,50の相対回転が進むのに伴い、板状嵌合部26が第2基板部52と折返部58との間に潜り込むように嵌合する。両端子モジュール10,50の組付け過程では、弾性ロック片20の延出端部21が第2基板部52の上面を摺接し、弾性ロック片20が撓み許容空間33内に進入して弾性変位した状態に保たれる。
【0051】
両端子モジュール10,50の組付が完了すると、弾性ロック片20が弾性復帰して、弾性ロック片20の延出端部21がロック部56内に進入する。弾性ロック片20の延出端部21の先端縁が、ロック部56の内面に対して係止し得る位置関係で対向する。ロック部56に対する延出端部21の対向方向は、第2端子モジュール50に対する第1端子モジュール10の組付け方向とは逆の方向である。
【0052】
弾性ロック片20の延出端部21とロック部56とが係止可能な位置関係で対向することによって、組付け状態の第1端子モジュール10と第2端子モジュール50が周方向へ離脱しない状態にロックされる。両端子モジュール10,50の組付けが進むと、干渉回避部57に収容されていた接点部23が、第2基板部52に当接することによって、第1端子モジュール10と第2端子モジュール50が所定の接触圧で接続される。以上により、第1端子モジュール10と保護部材40と第2端子モジュール50からなる組合せ端子の組付が完了する。
【0053】
本実施例1の組合せ端子は、第1基板部12を有する第1端子金具11と、第1基板部12に積層される第2基板部52を有する第2端子金具51と、保護部材40とを備えている。第2端子金具51は、両基板部12,52の積層方向と交差する方向に変位させることによって第1端子金具11に組み付けられる。第1端子金具11には、弾性変形可能な弾性ロック片20が形成されている。第2端子金具51には、弾性ロック片20と係止することによって両端子金具11,51を組付け状態にロックするロック部56が形成されている。第1端子金具11には、弾性ロック片20に対する異物の干渉を防止する保護部材40が取り付けられている。
【0054】
両端子金具11,51の組付け過程では弾性ロック片20が弾性変形する。弾性変形しない突起部を相手側の端子金具に強く擦り付けながら組み付ける場合に比べると、両端子金具11,51の組付け過程に生じる抵抗が小さいので、手作業による組付けが可能である。弾性ロック片20に対する異物の干渉が、保護部材40によって防止されるので、弾性ロック片20が塑性変形するおそれがない。したがって、弾性ロック片20とロック部56とによるロック機能の信頼性が高い。
【0055】
保護部材40は、両端子金具11,51の組付け過程で第2端子金具51を摺接させるガイド面47を有しているので、両端子金具を組み付けるときの作業性が良い。ガイド面47を第1端子金具11に形成する場合に比べると、本実施例1の組合せ端子は、第1端子金具11の形状を簡素化することができる。
【0056】
両端子金具11,51は、相対的に回転しながら組み付けられる。弾性ロック片20は、両端子金具11,51の組み付け方向と同心の円弧状に延出した形状である。この構成によれば、第1端子金具11の外形寸法を大きくしなくても、弾性ロック片20の延出寸法を大きく確保できる。これにより、両端子金具11,51の組み付け過程において、弾性ロック片20の弾性変形に起因する摺動抵抗を低減できる。
【0057】
第1端子モジュール10は、第1端子金具11に対して積層状態で組み付けられる第1サブ端子30を備えている。第1端子金具11と第1サブ端子30には、両端子金具11,51の組付け開始時に第2端子金具51を位置決めする位置決め部34が形成されている。この構成によれば、両端子金具11,51を組み付ける際の作業性が良い。
【0058】
第1端子モジュール10は、第1端子金具11に対して、第2端子金具51とは反対側の上面側から積層した状態で組み付けられる第1サブ端子30を備えている。弾性ロック片20は、両端子金具の組付け過程で、第2端子金具51との干渉によって第1サブ端子30側へ弾性変位する。弾性ロック片20は、両端子金具11,51の組付け完了時に弾性復帰してロック部56に係止する。第1サブ端子30には、弾性ロック片20の弾性変形を可能にする撓み許容空間33が形成されている。この構成によれば、第1サブ端子30の厚さの範囲内に、弾性ロック片20の弾性変位時の撓み許容空間33が確保されるので、第1端子金具11と第1サブ端子30との間に弾性ロック片20の撓み許容空間33を確保せずに済む。これにより、第1端子モジュール10の低背化が実現されている。
【0059】
第1基板部12は、両端子金具11,51の組付けが完了した状態で、第2基板部52に接触する突起状の接点部23を有するる。第2基板部52には、両端子金具11,51の組付け開始時に、接点部23との干渉を回避する干渉回避部57が形成されている。これにより、両基板部12,52を隙間無く積層することができるので、組合せ端子の低背化が実現されている。
【0060】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1では、1つの第1端子金具に3つの弾性ロック片を形成したが、1つの第1端子金具に形成する弾性ロック片の数は、2つ以下でもよく、4つ以上でもよい。
上記実施例1では、弾性ロック片が両端子金具の組み付け方向と同心の円弧状に延出した形状であるが、弾性ロック片は、両端子金具の組み付け方向と交差する径方向に延出した形状でもよい。
上記実施例1では、第1端子金具と第2端子金具が回転しながら組み付けられるが、第1端子金具と第2端子金具は直線状に平行移動しながら組み付けられるようにしてもよい。
上記実施例1では、両端子金具の組み付け過程における弾性ロック片の撓み許容空間を、第1サブ端子の板厚の範囲に確保したが、弾性ロック片の撓み許容空間は、第1端子金具と第1サブ端子との間に確保しても良い。
上記実施例1では、保護部材が第2端子金具を摺接させるガイド面を有しているが、保護部材はガイド面を有しないものであってもよい。この場合、第2端子金具を摺動させるガイド面を第1端子金具に形成すればよい。
上記実施例1では、両端子金具の組み付け開始時に第2端子金具を位置決めするための位置決め部を、第1端子金具と第1サブ端子に形成したが、第2端子金具を位置決めするための位置決め部を、保護部材に形成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…第1端子モジュール
11…第1端子金具
12…第1基板部
13…第1圧着部
14…第1ボルト孔
15…第1覆い部
16…係止孔
17…係止突起
18…貫通孔
20…弾性ロック片
21…延出端部
23…接点部
24…位置決め用凹部
25…回止め用凹部
26…板状嵌合部
30…第1サブ端子
31…第1板状基部
32…第1受け部
33…撓み許容空間
34…位置決め部
40…保護部材
41…第1切欠部
42…第2切欠部
43…第3切欠部
44…突出部
45…抜止め突起
46…回止め用凸部
47…ガイド面
50…第2端子モジュール
51…第2端子金具
52…第2基板部
53…第2圧着部
54…第2ボルト孔
55…第2受け部
56…ロック部
57…干渉回避部
58…折返部
60…第2サブ端子
61…第2板状基部
62…第2覆い部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10