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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/10 20060101AFI20240612BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20240612BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B23B27/10
B23B51/06 D
B23B51/06 C
B23Q11/00 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023201221
(22)【出願日】2023-11-29
【審査請求日】2023-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 凌
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-151507(JP,A)
【文献】特表2003-530224(JP,A)
【文献】実開平06-063219(JP,U)
【文献】米国特許第05085540(US,A)
【文献】米国特許第03597103(US,A)
【文献】英国特許出願公告第00261651(GB,A)
【文献】国際公開第2014/073610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 51/00-51/14
B23Q 11/00-13/00
B23D 67/00-81/00
B23P 15/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具であって、
当該切削工具の基端部に設けられた、工作機械に搭載可能なスリーブに取り付けられる部分となる、略円柱形状であるシャンク部と、
当該切削工具の先端部に配置された切れ刃と、
該切れ刃から当該切削工具の基端部へ向け形成された、切削により生じる切りくずを案内し排出するための切りくず排出溝と、
前記先端部に向けてクーラントを供給する、当該切削工具の外周に設けられた溝状のクーラント流路と、
を備え、
前記先端部から見た先端視にて、前記クーラント流路は、周方向にて前記切りくず排出溝とは異なる位置であって、かつ、前記切れ刃と前記切りくず排出溝のいずれとも重なり合わない位置に設けられ、
前記シャンク部は、その外径が、前記先端部の外径よりも大きく、
前記クーラント流路は、前記シャンク部の外周にのみ設けられている、切削工具。
【請求項2】
前記シャンク部と、前記シャンク部よりも前記先端部寄りの部分との間に段差部が形成されている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記シャンク部に、前記工作機械の前記スリーブに対する回り止めとして機能する切り欠き部が平坦面で構成されていて、前記クーラント流路は、前記切り欠き部とは重なり合わない位置に形成されている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項4】
前記クーラント流路は、円弧形状の溝で構成されている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項5】
前記クーラント流路は、当該切削工具の中心軸と平行に真っ直ぐ形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項6】
前記クーラント流路が複数設けられている、請求項5に記載の切削工具。
【請求項7】
前記切れ刃は、当該切削工具と一体の刃で構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項8】
前記先端部に、切削インサートが取り付けられるインサート取付座が設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項9】
旋削用工具である、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項10】
前記先端部に、切削インサートがロウ付けされるロウ付け工具である、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
工具の外部から給油するいわば外部給油タイプの切削工具には、加工点にクーラントが届きにくいという課題がある。そのような課題を解決するための従来技術として、特許文献3,4,5といった内部給油タイプの切削工具が提案されている。ただし、これら内部給油タイプの切削工具は、内部に設けられた流路を通じて給油するという構造上、小型化に向いていない。その解決手段として特許文献1,2のような、シャンクに溝が設けられた工具のような従来技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-501638号公報
【文献】特表2013-519537号公報
【文献】特開2003-71608号公報
【文献】特開2007-185765号公報
【文献】特開2010-105084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、当該工具の外周側からクーラントをはじめとする流体を供給するいわば外部供給タイプの切削工具だと、内径加工や穴あけ加工において、流体がワーク(被削材)内の加工点近傍に十分に届かないことがある。このような場合、工具内部の穴40’を通して流体を供給するいわば内部供給タイプの切削工具10’を代わりに用いることが考えられるが(図10参照)、比較的小径の加工を行う場合、小さな穴の中に入る程度に工具を小型化すると、もはや当該工具内に給油穴を設けるスペースが無くなってしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、工具自体がとくに小型である場合にもクーラント等の流体をワークの加工点近傍へ十分に供給することが可能な構造の切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく、本発明者は種々検討した。従来の切削工具には、シャンク部に冷却溝を保有することで加工点近傍に給油をするものがあり、このような切削工具における給油の方向は、加工時に加工点近傍から切りくずが排出される方向と正反対である。このことはいわば当然のことのようでもあるが、このような構造だと、給油溝から排出された流体が逆に切りくずを押し込んでしまい、切りくず排出を妨げてしまうことがある。この点に着目しつつさらに検討を重ねた本発明者は、課題の解決に結びつく知見を得るに至った。
【0007】
本発明はかかる知見に基づき想到するに至ったものであり、その一態様は、切削工具であって、
当該切削工具の基端部に設けられた、工作機械に搭載可能なスリーブに取り付けられる部分となる、略円柱形状であるシャンク部と、
先端部に配置された切れ刃と、
該切れ刃から当該切削工具の基端部へ向け形成された、切削により生じる切りくずを案内し排出するための切りくず排出溝と、
先端部に向けてクーラントを供給する、当該切削工具の外周に設けられた溝状のクーラント流路と、
を備え、
クーラント流路は、切れ刃と切りくず排出溝のいずれとも重なり合わない位置に設けられている、切削工具である。
【0008】
この切削工具においては、外周に設けられたクーラント流路が、切れ刃と切りくず排出溝のいずれとも重なり合わない位置に設けられた状態、別言すれば、クーラント流路が切れ刃や切りくず排出溝に関与しない状態となっていることから、給油の流れが切りくず排出を妨げることなく、また、切りくず排出の流れが給油を妨げることもない。このため、クーラント流路を内部に設けることが困難な小型の切削工具などにおいて、クーラントを加工点近傍へ十分に供給することが可能な構造とすることができる。
【0009】
上記のごとき切削工具を先端部から見た先端視にて、クーラント流路は、周方向にて切りくず排出溝とは異なる位置に設けられていてもよい。
【0010】
上記のごとき切削工具において、シャンク部は、その外径が、先端部の外径よりも大きくてもよい。
【0011】
上記のごとき切削工具において、シャンク部と、シャンク部よりも先端部寄りの部分との間に段差部が形成されていてもよい。
【0012】
上記のごとき切削工具において、クーラント流路は、シャンク部の外周にのみ設けられていてもよい。
【0013】
上記のごとき切削工具において、シャンク部に、工作機械のスリーブに対する回り止めとして機能する切り欠き部が平坦面で構成されていて、クーラント流路は、切り欠き部とは重なり合わない位置に形成されていてもよい。
【0014】
上記のごとき切削工具において、クーラント流路は、円弧形状の溝で構成されていてもよい。
【0015】
上記のごとき切削工具において、クーラント流路は、当該切削工具の中心軸と平行に真っ直ぐ形成されていてもよい。
【0016】
上記のごとき切削工具において、クーラント流路が複数設けられていてもよい。
【0017】
上記のごとき切削工具において、切れ刃は、当該切削工具と一体の刃で構成されていてもよい。
【0018】
上記のごとき切削工具において、先端部に、切削インサートが取り付けられるインサート取付座が設けられていてもよい。
【0019】
上記のごとき切削工具は、旋削用工具であってもよい。
【0020】
上記のごとき切削工具は、先端部に、切削インサートがロウ付けされるロウ付け工具であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明にかかる切削工具の一例を示す斜視図である。
図2】切削工具を別の角度から見た斜視図である。
図3】切削工具を先端部から見た(先端視)図である。
図4】切削工具を基端部から見た図である。
図5工作機械のスリーブに取り付けられた状態の切削工具を示す斜視図である。
図6工作機械のスリーブに取り付けられた状態の切削工具を先端部から見た(先端視)図である。
図7工作機械のスリーブに取り付けられた状態の切削工具を先端部から見たときのクーラント流路を示す図である。
図8工作機械のスリーブに取り付けられた状態の切削工具のクーラント流路からクーラントが供給される様子を示す模式図である。
図9】穴あけ加工時のワーク(被削材)の内部の様子を説明する図である。
図10】従来の切削工具の一例を参考として示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る切削工具の好適な実施形態について詳細に説明する(図1図9参照)。
【0023】
本発明に係る切削工具は、特に小型の旋削用工具や穴あけ工具といった内径加工用の工具として好適な工具として構成されているものである。本実施形態の切削工具10は、シャンク部14、切れ刃18、切りくず排出溝30、クーラント流路40などを備えていて、中心軸10Aに沿って基端部10bから先端部10tまで延びる略円筒状に形成されている(図1図2等参照)。当該切削工具10の基端部10b側にはシャンク部14が設けられ、先端部10tには切れ刃18が配置されている。
【0024】
シャンク部14は、当該切削工具10のうち、工作機械に搭載可能なスリーブ210に取り付けられる部分であり、切削工具10の基端部10b側に設けられている(図1図5図6等参照)。このシャンク部14は略円柱形状であって、当該シャンク部14の一部には、スリーブ210に対する回り止めとして機能する切り欠き部14fが形成されている。切り欠き部14fは、中心軸10Aに平行な平坦面であってもよい(図1等参照)。本実施形態の切削工具10におけるシャンク部14は、その外径が、切削工具10の他の部分(たとえば先端部10t)の外径よりも大きく、切削工具10においてもっとも大きい部分となっている。このシャンク部14と、切削工具10のうち当該シャンク部14よりも先端部10t寄りの部分との間には、外径が急に変化する段差部15が形成されている(図1図2等参照)。
【0025】
切れ刃18は、先端部10tに配置された刃で構成されている(図1等参照)。本実施形態の切削工具10においては、切れ刃18は当該切削工具10と一体の刃で構成されている。ただしこれは好適な一例にすぎない。特に図示はしていないものの、切削工具10として、その先端部10tに、切削インサートが取り付けられるインサート取付座が設けられているものを採用してもよいし、切削インサートをロウ付けしたロウ付け工具を採用してもよい。
【0026】
切りくず排出溝30は、切削により生じる切りくず(図9において符号120で示す)を案内し排出するための溝である。本実施形態の切削工具10における切りくず排出溝30は、切れ刃18から当該切削工具10の基端部10b側へ向けて延びる螺旋状のポケットで形成されている(図1図3等参照)。
【0027】
クーラント流路40は、先端部10tに向けてクーラントCを供給するように当該切削工具10に形成されている。本実施形態の切削工具10におけるクーラント流路40は、切削工具10の外周(符号10pで示す)のうち、シャンク部14の外周部分にのみ設けられた例えば2本の給油溝で構成されている(図2図6参照)。クーラント流路40の吐出口40dは段差部15がある部分に位置している(図2等参照)。クーラント流路40は例えば本実施形態におけるごとく断面が円弧形状の溝で構成されていてもよいし(図3図4参照)、これ以外の形状の溝で構成されていてもよい。これらクーラント流路40は、当該切削工具10の中心軸10Aと平行に、中心軸10Aの方向に沿って真っ直ぐに形成されている(図2図3等参照)。
【0028】
本実施形態の切削工具10におけるクーラント流路40は、切れ刃18と切りくず排出溝30のいずれとも重なり合わない位置に設けられている(図2等参照)。例えば、この切削工具10を先端部10tから見た場合(本明細書では先端視と呼んでいる)、クーラント流路40は、周方向にて切りくず排出溝30とは異なる位置(周方向にて切りくず排出溝30とは重なり合わない位置)に設けられている(図3参照)。このような切削工具10においては、クーラント流路40が、切れ刃18と切りくず排出溝30のいずれとも重なり合わない状態、別言すれば、切れ刃18や切りくず排出溝30に関与しない状態となっている(図7等参照)。このため、クーラント流路40を通って先端部10b側へと供給されるクーラントCの流れが切りくず120の排出を妨げることなく、また、切りくず排出の流れが給油を妨げることもない(図8等参照)。このため、クーラント流路40を内部に設けることが困難な特に小型の切削工具10などにおいて、クーラントCをワーク100の加工点近傍へ十分に供給することが可能となる(図9参照)。したがって、本実施形態のごとき切削工具10によれば、特に小型の旋削用工具や穴あけ工具といった内径加工用の工具に適用した際、シャンク部14からワーク100の内部に向かって給油し、切りくず120の排出、刃先の冷却、潤滑を効果的に実施することを可能とする。
【0029】
上述のごときクーラント流路40は、また、切り欠き部14とも重なり合わない位置に形成されている(図2図4等参照)。なお、本実施形態では2本のクーラント流路40を、基端部10bから見た場合(基端視)において、切り欠き部14f(の中心位置)を基準にして時計回り、反時計回りにそれぞれ105°以上135°以下の位置(例えば、およそ120°の位置)に配置した例(別言すれば、先端部10tから見た場合(先端視)において(図3参照)、中心軸10Aと切れ刃18の最外部とを結ぶ直線を基準にして時計回りに65°以上95°以下の位置と反時計回りに155°以上185°以下の位置に配置した例)を示しているが(図4参照)、これは好適な配置の一例にすぎず、切れ刃18や切りくず排出溝30、さらには切り欠き部14と重なり合わない配置である限り、具体的な位置が限定されることはない。また、クーラント流路40の本数もまた限定されないし、さらには、クーラント流路40の形状や形態もまた限定されることはない。また、複数のクーラント流路40を設ける場合、それらクーラント流路40の大きさや形状が互いに異なっていても構わない。
【0030】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、切削工具に適用して好適である。
【符号の説明】
【0032】
10…切削工具
10A…中心軸
10b…基端部
10p…外周
10t…先端部
14…シャンク部
14f…切り欠き部
15…段差部
18…切れ刃
30…切りくず排出溝
40…クーラント流路
40d…吐出口
100…ワーク(被削材)
120…切りくず
210…スリーブ
C…クーラント


【要約】
【課題】工具自体がとくに小型である場合にもクーラント等の流体をワークの加工点近傍へ十分に供給することが可能な構造とする。
【解決手段】当該切削工具10の基端部に設けられた、工作機械に搭載可能なスリーブ210に取り付けられる部分となる、略円柱形状であるシャンク部と、先端部10tに配置された切れ刃18と、該切れ刃18から当該切削工具10の基端部へ向け形成された、切削により生じる切りくずを案内し排出するための切りくず排出溝30と、先端部10tに向けてクーラントCを供給する、当該切削工具10の外周に設けられた溝状のクーラント流路40と、を備えた切削工具10である。クーラント流路40は、切れ刃18と切りくず排出溝30のいずれとも重なり合わない位置に設けられている。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10