(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】熱源システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/84 20180101AFI20240612BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240612BHJP
【FI】
F24F11/84
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2020051168
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 義臣
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 徳臣
(72)【発明者】
【氏名】松本 勇司
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141014(JP,A)
【文献】特開2016-061541(JP,A)
【文献】特開2014-035092(JP,A)
【文献】特開2014-169833(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125863(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0100618(US,A1)
【文献】特開2018-087658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の冷却および/または加熱を行う複数の熱源機と、
複数の負荷側装置と、
前記複数の熱源機と、前記複数の負荷側装置との間で前記液体を循環させる配管と、
を含む熱源システムであって、
前記複数の熱源機は、
前記熱源機毎に設けられ、当該設けられた熱源機内の前記液体の温度を変化させる第1制御部と、
前記複数の熱源機の前記第1制御部を制御する第2制御部と、
を備え、
前記複数の負荷側装置は、複数の領域毎に分けられ、当該領域毎に含まれる前記負荷側装置は第3制御部により管理され、
前記第2制御部と、前記第3制御部とがそれぞれ通信を行うことにより、他の制御部の制御情報を取得し、当該取得する前記制御情報に基づいて、前記第2制御部、前記第3制御部はそれぞれの制御対象を制御
し、
前記複数の負荷側装置の1つは室内空調装置であり、前記複数の負荷側装置の1つは外気処理装置であり、
前記室内空調装置を含む領域は、さらに前記室内空調装置をそれぞれ含む複数のグループに分けられ、前記外気処理装置が取り込む外気は、前記複数のグループの1つ又は、所定数のグループに跨って当該グループ内の前記室内空調装置に取り込まれるように構成され、
前記外気処理装置が取り込む外気の量は、当該外気処理装置を含む前記領域を管理する前記第3制御部が、他の制御部により取得する前記制御情報に基づいて調整される、
熱源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の熱源機と、複数の空気熱交換器を備え、空気熱交換器が設置された室内空間の温度を調整する熱源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の熱源機を用いて多数の室内空間の温度を調整する場合、一般に各室内空間に設置される1又は複数の空調装置等の負荷側装置にはそれぞれコントローラが対応付けて設けられる。そして、多数の室内空間を管理する管理装置が、各コントローラと通信を行うことにより空気熱交換器が設置されている室内空間の温度等を取得し、この取得した温度等に基づいて複数の熱源機に指示を送信することにより、熱源機から空調装置に流れる媒体の温度や流量を調整し、各室内空間の温度を調整していた。このため、熱源機と、空調装置とは直接通信をしておらず、管理装置に故障等の異常が発生した場合、熱源システムは動作できなくなる等の事態を招来する可能性があった。
本発明の目的は、熱源機と、負荷側装置とを管理する管理装置を不要とすることができる熱源システムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によると、熱源システムは、液体の冷却および/または加熱を行う複数の熱源機と、複数の負荷側装置と、前記複数の熱源機と、前記複数の負荷側装置との間で前記液体を循環させる配管と、を含む。前記複数の熱源機は、前記熱源機毎に設けられ、当該設けられた熱源機内の前記液体の温度を変化させる第1制御部と、前記複数の熱源機の前記第1制御部を制御する第2制御部と、を備える。前記複数の負荷側装置は、複数の領域毎に分けられ、当該領域毎に含まれる前記負荷側装置は第3制御部により管理され、前記第2制御部と、前記第3制御部とがそれぞれ通信を行うことにより、他の制御部の制御情報を取得し、当該取得する前記制御情報に基づいて、前記第2制御部、前記第3制御部はそれぞれの制御対象を制御する。前記複数の負荷側装置の1つは室内空調装置であり、前記複数の負荷側装置の1つは外気処理装置である。前記室内空調装置を含む領域は、さらに前記室内空調装置をそれぞれ含む複数のグループに分けられ、前記外気処理装置が取り込む外気は、前記複数のグループの1つ又は、所定数のグループに跨って当該グループ内の前記室内空調装置に取り込まれるように構成される。前記外気処理装置が取り込む外気の量は、当該外気処理装置を含む前記領域を管理する前記第3制御部が、他の制御部により取得する前記制御情報に基づいて調整される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る熱源システムの構成の一例を示す図。
【
図2】同実施形態に係る熱源システムの処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】同実施形態に係る熱源システムの処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】第2実施形態に係る熱源システムの構成の一例を示す模式図。
【
図5】同実施形態に係る熱源システムの制御構成の一例をブロック図。
【
図6】同実施形態に係る熱源システムの処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の熱源システム101の構成の一例を示す図である。なお、熱源システム101は、熱媒体の液体として水を用いる場合について説明する。
図1に示すように、熱源システム101は、熱源機102、複数の負荷側装置103、熱源機102と複数の負荷側装置103との間で水を循環させるための送水管104および還水管105、送水管104と環水管105との間を複数の負荷側装置103と並列に接続するフリーバイパス管106、送水管104において熱源機102側と複数の負荷側装置103側との間に設けられている送水側ヘッダ107、還水管105において熱源機102側と複数の負荷側装置103側との間に設けられている還水側ヘッダ108、還水管105を流れる水に圧力を加えるための膨張タンク109等が設けられている。
【0009】
また、熱源システム101は、各熱源機102に設けられる一次ポンプ111と、送水側ヘッダ107に複数設けられる二次ポンプ116とによって水を循環させるように構成された複式ポンプ式の熱源システムとなっている。
【0010】
このような熱源システム101は、熱源機102によって所定の温度に調整した水を、送水管(配管)104を介して、複数の負荷側装置103側に送るとともに、複数の負荷側装置103側からの水が還水管(配管)105を通って熱源機102側に環流する構成となっている。なお、
図1では、水が流れる向きを便宜的に白抜きの矢印を用いて示している。また、複数の負荷側装置103は、例えばビルを空調する室内空調装置や工場に設置される洗浄装置、乾燥装置、外気を取り込む外気装置などであり、本実施形態では、後述するエリアA2に含まれる複数の室内空調装置と、エリアA3に含まれる室内空調装置、及び外気処理装置が負荷側装置103に相当する。
【0011】
熱源機102は、要求される仕様に基づいて、また、故障した際にバックアップが可能となるように、例えば2台から十数台程度の複数台が設置されている。各熱源機102は、熱処理部110、一次ポンプ111、水熱交換器111a、熱源機102を個別に制御するユニットコントローラ112等を備えている。
【0012】
熱処理部110は、本実施形態では各熱源機102に複数個が設けられており、例えば水と冷媒との間で熱交換を行う冷凍サイクル装置であって、水熱交換機111aに供給される水を冷却および/または加熱する。なお、熱処理部110としては、いわゆる温水を生成可能なもの、いわゆる冷水を生成可能なもの、温水および冷水のいずれも生成可能なものを目的に応じて適宜採用することができる。 一次ポンプ111は、図示しないインバータによって制御されるものであり、水熱交換器111aの入口側において還水管105に接続されている。この一次ポンプ111は、還水管105を流れる水を所定の圧力に調整した後に水熱交換器111aに送っている。これにより、水熱交換器111aに一定の圧力で水が送られるようになり、水熱交換器111aにおいて適切な熱交換を行うことが可能になる。
【0013】
ユニットコントローラ(第1制御部)112は、熱源機102を個別に制御するものであり、水熱交換器111a内を流れる水の流量や温度の制御等を行っている。言い換えれば、ユニットコントローラ112は、当該ユニットコントローラ112が設けられる熱源機102内の水の温度や流量を変化させる制御を行うものである。このユニットコントローラ112は、熱源システム101全体を制御するモジュールコントローラ(熱源側制御部、第2制御部)113に接続されている。 モジュールコントローラ113は、本実施形態では複数台設置されている熱源機102のうちの1台に内蔵されており、熱源システム101を制御するための制御指令を各熱源機102に出力するとともに、各熱源機102の運転状態を取得する。言い換えれば、モジュールコントローラ113は、複数の負荷側装置103が必要とする流量及び温度の水を供給するために、各ユニットコントローラ112を制御し、複数の熱源機102の流量や設定温度を変化させるものである。また、モジュールコントローラ113は、送水側ヘッダ107および複数の負荷側装置103と、エリアコントローラ(負荷側管理部、第3制御部)210,220,230、及び通信回線L1を介して相互に通信可能に接続されている。なお、モジュールコントローラ113は、熱源機102が含まれるエリア(領域)のユニットコントローラ112の制御を司るエリアコントローラということができる。なお、領域は、同一の機能を有する負荷側装置103の集合、又は同一空間のように区分けすることが考えられる。
【0014】
フリーバイパス管106は、弁体が設けられていない配管部材であり、白抜きの矢印にて示すように、送水管104を流れる水の圧力が還水管105を流れる水の圧力よりも高ければ送水管104から還水管105に向かって水が流れる一方、送水管104を流れる水の圧力が還水管105を流れる水の圧力よりも低ければ還水管105から送水管104に向かって水が流れる構成となっている。
【0015】
送水側ヘッダ107は、熱源機102側に位置する上流側ヘッダ114、複数の負荷側装置103側に位置する下流側ヘッダ115、上流側ヘッダ114と下流側ヘッダ115の間に設けられている1台以上の二次ポンプ116、過剰な水を上流側ヘッダ114に環流させる圧力逃がし弁117、二次ポンプ116を制御するポンプコントローラ118、下流側ヘッダ115から複数の負荷側装置103側に送られる水の量を検出する流量計119等を備えている。
【0016】
この熱源機102側と複数の負荷側装置103側とにそれぞれポンプを備える構成は、複式ポンプ方式と呼ばれている。なお、複式ポンプ方式の作動は周知であるので詳細な説明は省略するが、熱源機102側から送られた水が上流側ヘッダ114に貯留し、その上流側ヘッダ114に貯留している水を二次ポンプ116で複数の負荷側装置103側に送り、複数の負荷側装置103を通った水が還水側ヘッダ108を介して熱源機102に環流する。
【0017】
二次ポンプ116は、送水側ヘッダ107に複数台、本実施形態では2台設けられている。各二次ポンプ116にはそれぞれインバータが設けられており、ポンプコントローラ118がインバータを制御することによって、二次ポンプ116を設定された運転周波数で運転させている。このとき、同時に運転される二次ポンプ116は、いずれも同じ運転周波数が設定されている。
【0018】
また、熱源システム101において、複数の負荷側装置103側においては、エリア(領域)A1,A2,A3が設けられている。エリアA1は、負荷側装置103である送水側ヘッダ107を含むエリアであり、エリアA2は、負荷側装置103である室内空調装置を含むエリアであり、エリアA3は負荷側装置である室内空調装置、及び外気処理装置を含むエリアである。なお、エリアA2は、さらに、それぞれ室内空調装置を含むエリア(グループ)A21,A22,…A2nのように区分けされている。
【0019】
エリアA1においては、エリアコントローラ210が送水側ヘッダ107制御を司るように構成されている。エリアコントローラ210は、ポンプコントローラ108と通信可能に接続されると共に、複数のI/Oポート210a,…,210nが接続されている。複数のI/Oポート210a,…210nには、各種センサ等が接続される。エリアコントローラ210は、ポンプコントローラ108の運転状況の把握や運転内容の変更を指示することができると共に、複数のI/Oポート210a,…,210nに接続された各種センサ等が検出した値を把握することができる。
【0020】
エリアA2においては、エリアコントローラ220がエリアA2内の複数の負荷側装置(室内空調装置)103の制御を司るように構成されている。エリアコントローラ220は、エリアA21,A22,…,A2nにそれぞれ含まれる各負荷側装置103内のコントローラと通信可能に接続されていると共に、複数のI/Oポートが接続されている。具体的には、エリアA21においては、エリアコントローラ220は、室内空調装置103のコントローラ221と接続される共に、負荷側装置103であるダンパーシステム(VAV:バリアブル・エア・ボリューム)223のコントローラ222と接続される。また、コントローラ221,222は、それぞれ、複数のI/Oポート221a,…,221n、222a,…,222nが接続される。なお、ダンパーシステム223は、後述する外気処理装置からダクトPを介して空間内に送付される外気の量を制御するシステムである。エリアA22,エリアA2nにおいては、エリアコントローラ220は、室内空調装置103のコントローラ224,225とそれぞれ接続される。また、コントローラ224,225は、それぞれ複数のI/Oポート224a,…,224n、225a,…,225nと接続される。これらエリアA2内のI/Oポートには、各種センサ等が接続される。したがって、エリアコントローラ220は、各コントローラ221,222,224,225に指示を送信することにより室内空調装置103の空調を制御すると共に、I/Oポートに接続された各種センサ等が検出した値を把握することができる。
【0021】
エリアA3においては、エリアコントローラ230がエリアA3内の負荷側装置(室内空調装置、及び外気処理装置)103の制御を司るように構成されている。エリアコントローラ230は、エリアA3内の室内空調装置103のコントローラ231、外気処理装置のコントローラ232と接続されており、コントローラ231には複数のI/Oポート231a,…,231nが接続されている。なお、エリアコントローラ230とコントローラ232との制御線は
図1において省略している。複数のI/Oポート231a,…,231nには、各種センサ等が接続される。また、コントローラ231は、室内空調装置を制御すると共に、各種センサ等が検出した値を把握することができる。エリアA3に含まれる外気処理装置103は、外部から取り込んだ外気を、ダクトPを介してエリアA21の負荷側装置103に送風可能になっている。そして、コントローラ232は、外気処理装置103の外気の取り込み量(言い換えれば、ダクトPの流量)を制御することができる。なお、本実施形態では、外気処理装置103から延在するダクトPは、エリアA21の負荷側装置(室内空調装置)103にのみ送付される構成で説明するが、エリアA21,A22,…,A2nのうちの所定数のエリアの負荷側装置(室内空調装置)103にも送付するように構成してもよい。
【0022】
また、熱源システム101において、既述のように、モジュールコントローラ113、エリアコントローラ210,220,230は、通信回線L1を介して接続されており、相互に情報を送信することが可能になっている。
【0023】
次に、既述のように構成された熱源システム101の制御について説明する。なお、本実施形態では、熱源システム101が起動中に実行される制御の一例を説明する。
図2は、熱源システム101が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、熱源機102のモジュールコントローラ113、及び各エリアコントローラ210,220,230が実行する処理の説明は、同様になるため、エリアコントローラ220を例に挙げて説明する。
【0024】
エリアコントローラ220は、熱源システム101の動作中において、所定時間が経過したか否かを判定する(ST101)。エリアコントローラ220が所定時間を経過したと判定しない場合(ST101:NO)、処理は待機状態のままである。この所定時間は、任意に設定可能である。
【0025】
所定時間が経過したと判定した場合(ST101:YES)、エリアコントローラ220は、配下のコントローラに情報取得を指示する(ST102)。本実施形態では、エリアコントローラ220には、コントローラ221,222,224,225等が接続されているため、これらのコントローラ221,222,224,225にそれぞれ情報取得の指示が送信される。ここで、取得される情報は、各コントローラ221,222,224,225に接続されている各種センサ等が取得する値、及び負荷側装置(室内空調装置)103の運転状況等である。これにより、エリアコントローラ220の配下のコントローラ221,222,224,225は、情報を取得する。例えば、コントローラ221のI/Oポート221aに温度センサが接続されている場合は、当該温度センサが検出した温度がコントローラ221により取得される。また、コントローラ221のI/Oポート221nに送水管104に設置された流量センサが接続されている場合は、コントローラ231により水の流量が取得される。このように、I/Oポートに複数の各種センサや装置が接続されている場合は、それら全てのセンサ及び装置に関する情報がコントローラ221により取得される。
【0026】
次に、エリアコントローラ220は、配下のコントローラ221,222,224,225から情報を取得する(ST103)。これにより、ステップST102において、配下のコントローラ221,222,224,225が取得した情報がエリアコントローラ220に取得される。
【0027】
エリアコントローラ220は、配下のコントローラ221,222,224,225から情報を取得すると、熱源機102のモジュールコントローラ113、及び他のエリアコントローラ210,230へ取得した情報を送信し(ST104)、この処理を終了する。これにより、エリアコントローラ220は、所定時間が経過する毎に、配下のコントローラ221,222,224,225から情報を取得し、当該取得した情報を熱源機102のモジュールコントローラ113、及び他のエリアコントローラ210,230に送信することができる。このような処理を熱源機102のモジュールコントローラ113、及び他のエリアコントローラ210,220でも同様に行うため、熱源機102のモジュールコントローラ113、及びエリアコントローラ210,220,230は、それぞれ熱源機102、及び他のエリアA1,A3に設けられている負荷側装置103の動作状況等を把握することができる。
【0028】
なお、熱源機102のモジュールコントローラ113、及び各エリアコントローラ210,220,230が本処理を実行する所定時間の設定は、同一のタイミングとしてもよいし、異なるタイミングとしてもよい。さらに、本処理を実行するタイミングにおいて、モジュールコントローラ113、及び各エリアコントローラ210,220,230が少しずつずらしてシーケンシャルに本処理を実行するようにしてもよい(例えば、10分毎に本処理を行う場合、数秒ずつずらして各コントローラが本処理を実行する)。このように構成すれば、通信回線L1にかかる負荷を低減することが可能になる。
【0029】
次に、既述の
図2で示す処理がモジュールコントローラ113、及び各エリアコントローラ210,220,230でそれぞれ実行され、エリアコントローラ220が他のコントローラ(モジュールコントローラ113、及びエリアコントローラ210,220)から情報を取得した場合の処理について説明する。
図3は、当該処理の一例を示すフローチャートである。なお、熱源機102のモジュールコントローラ113、及び各エリアコントローラ210,230が実行する処理の説明は、エリアコントローラ220の場合と同様になるため、説明を省略する。
【0030】
エリアコントローラ220がモジュールコントローラ113、及びエリアコントローラ210,230から情報を受信した場合(ST201)、エリアコントローラ220は、取得した情報に基づいて動作状況や各種センサの値を確認する(ST202)。これにより、エリアコントローラ220は、熱源機102、及びエリアA1,A3に含まれる負荷側装置103の動作状況及び環境状態を把握することができる。
【0031】
次に、エリアコントローラ220は、動作の変更が必要か否かを判定する(ST203)。より詳細には、エリアコントローラ220が配下のコントローラ221,222,224,225から取得した情報と、モジュールコントローラ113、及びエリアコントローラ210,230から取得した情報とに基づいて、エリアA2に含まれる負荷側装置103の動作を変更する必要があるか否かを判定する。例えば、エリアコントローラ220は、外気処理装置からエリアA21の負荷側装置(室内空調装置)103への送風が停止していることを把握した場合、当該負荷側装置(室内空調装置)103の運転内容を変更する必要があるか否かを判定する。
【0032】
動作を変更する必要があると判定した場合(ST203:YES)、エリアコントローラ220は、動作を変更する必要がある負荷側装置103のコントローラに動作内容の変更を指示する(ST204)。例えば、エリアコントローラ220の配下のコントローラ221に負荷側装置(室内空調装置)103の動作を変更する指示が送信され、エリアA21の負荷側装置103の動作が変更される。なお、動作を変更する必要がないと判定した場合は(ST203:NO)、エリアコントローラ220は、この処理を終了する。また、例えば、エリアA21内の負荷側装置(室内空調装置)103の運転が停止されていることがエリアコントローラ220により確認されている場合は、エリアコントローラ230により、負荷側装置(外気処理装置)103を制御し、外気処理装置が送付する外気の量を停止する等の送風量を調整する処理が実行される。
【0033】
以上のように構成された熱源システム101によると、熱源機102の制御をモジュールコントローラ113が、エリアA1,A2,A3に含まれる負荷側装置103の制御をエリアコントローラ210,220,230がそれぞれ担当し、モジュールコントローラ113、及びエリアコントローラ210,220,230が通信回線L1で接続され、所定時間経過する毎に情報を共有することにより、他の装置の動作状況を自身の配下の装置の動作に反映させながら運転することが可能になり、熱源機102、及び負荷側装置103を管理する管理装置を不要とすることができる。
【0034】
また、従来の中央監視装置等で熱源装置、負荷側装置を一元管理する熱源システムにおいて、中央監視装置が停止した場合に熱源システム全体が停止してしまう問題があったが、本実施形態のように、熱源側制御部であるモジュールコントローラ(第1制御部)及びユニットコントローラ(第2制御部)と、負荷側制御部であるエリアコントローラ(第3制御部)がそれぞれ独立した制御部として、各コントローラの制御情報を相互に送受信しておくことによって、熱源装置と負荷側装置の連携制御を行いつつ、熱源システム全体の停止リスクを回避することができる。
【0035】
(第2実施形態)
本第2実施形態では、モジュールコントローラ113が直接負荷側装置103の制御を実行するようになっている点が上記第1実施形態と異なっている。このため、当該異なる点について詳細に説明する。なお、上記第1実施形態と同一構成には同一の符号を付し、これらの構成については詳細な説明は省略する。
【0036】
図4は、第2実施形態における熱源システム101aの構成の一例を示す模式図である。
図4に示すように、熱源システム101aは、熱源機102と、複数の負荷側装置103を含み、熱源機102と、複数の負荷側装置103とは、送水管104、及び環水管105で接続されている。また、熱源機102と、複数の負荷側装置103とは、通信回線L1で接続されている。なお、
図4において、送水側ヘッダ107等の構成は図示を省略している。
【0037】
図5は、熱源システム101aの制御構成の一例を示す図である。
図5に示すように、熱源機102内のモジュールコントローラ(制御部)113は、コントロールパネル113aと接続されると共に、制御線L1を介して複数の負荷側装置103内のI/Oポート103a,…,103nと接続されている。つまり、第1実施形態のようにエリアコントローラ210,220,230等を介して負荷側装置103と接続される構成ではなく、モジュールコントローラ113が直接負荷側装置103を制御する構成になっている。
【0038】
負荷側装置103には、複数のI/Oポート103a,…,103nが含まれており、これらI/Oポート103a,…,103nには、デバイス、例えば各種センサ、又は各種装置がそれぞれ接続される。本実施形態では、I/Oポート103aにセンサ1031が接続されており、I/Oポート103nにバルブ1032が接続されている場合を示している。センサ1031は、例えば、負荷側装置103の設置された空間の温度を検出する温度センサである。センサ1031で検出された温度はモジュールコントローラ113へ送信される。バルブ1032は、例えば、送水管104を流れる水の流速を調整する。バルブ1032の開度の調整は、モジュールコントローラ113の指示に基づいて実行される。このようにI/Oポート103a,…,103nに接続されるセンサ1031、及びバルブ1032等のデバイスは、モジュールコントローラ113により直接制御される。なお、本実施形態では、I/Oポート103a,103nには、センサ1031、バルブ1032がそれぞれ接続される構成で説明したが、他のデバイスが接続されるようにしてもよいし、負荷側装置103毎に接続するセンサや装置に相違があってもよい。
【0039】
次に、熱源システム101aの制御について説明する。
図6は、熱源システム101aの処理の一例を示すフローチャートである。この制御は、熱源機102のモジュールコントローラ113により実行される。また、本実施形態では、熱源システム101aの起動時間、停止時間、設定温度が予めスケジュールとして登録されている場合で説明する。このスケジュールは、コントロールパネル113aにより設定が可能であり、また、コントロールパネル113aにより設定変更も可能になっている。さらに、予めスケジュールが設定されていなくても、オペレータがコントロールパネル113aを操作して、熱源システム101aの起動、停止を行うと共に、設定温度を設定するようにしてもよい。なお、これの制御は、既述の第1実施形態の熱源システム101の場合も同様である。
【0040】
図7に示すように、モジュールコントローラ113は、起動時間となったか否かを判定する(ST301)。つまり、モジュールコントローラ113は、例えば、スケジュールされている起動時間となったか否かを時計機能により判定する。起動時間でないと判定した場合(ST301:NO)、モジュールコントローラ113は、待機状態を続け、起動時間であると判定した場合(ST301:YES)、熱源機102を起動する(ST302)。そして、モジュールコントローラ113は、負荷側装置103を順次起動していく(ST303)。具体的には、モジュールコントローラ113は、負荷側装置103を起動する信号を負荷側装置103のI/Oポートに、予め定められた順に送信する。これにより、負荷側装置103が順次起動し、熱源システム101aが動作可能状態になる。
【0041】
次に、モジュールコントローラ113は、センサ温度を取得する(ST304)。モジュールコントローラ113は、例えば、負荷側装置103のI/Oポート103aに接続されているセンサ1031から通信回線L1を介して温度を取得する。これにより、モジュールコントローラ113は、当該負荷側装置103の設置された空間の現在の温度を取得できる。
【0042】
次に、モジュールコントローラ113は、バルブ開度を算出する(ST305)。モジュールコントローラ113は、ステップST104で取得した温度と、スケジュールで設定されている設定温度とに基づいて、設定温度の状態が実現されるようになるバルブ1032の開度を算出する。そして、モジュールコントローラ113は、当該算出したバルブ1032の開度となるように、当該負荷側装置103が接続されたI/Oポート103nにバルブ開度を指示する(ST306)。これにより、当該バルブ1032は、設定温度の状態になるように開度が調整される。
【0043】
次に、モジュールコントローラ113は、負荷側装置103全てにステップST304からST306の処理を行ったか否かを判定する(ST307)。モジュールコントローラ113が負荷側装置103全てに処理を行っていないと判定した場合(ST307:NO)、処理はステップST304に戻り、まだ処理を行っていない負荷側装置103に対してステップST304からST306の処理が実行される。これにより、熱源システム101a内の全ての負荷側装置103内のバルブ1032の開度を調整することができる。
【0044】
一方、負荷側装置103全てに処理を行ったと判定した場合(ST307:YES)、モジュールコントローラ113は、所定時間が経過したか否かを判定する(ST308)。所定時間が経過していないと判定した場合(ST308:NO)、モジュールコントローラ113は、待機状態を続ける。また、所定時間を経過したと判定した場合(ST308:YES)、モジュールコントローラ113は、停止時間か否かを判定する(ST309)。モジュールコントローラ113が停止時間になっていないと判定した場合(ST309:NO)、処理はステップST304に戻る。これにより、停止時間が経過するまで、所定時間毎に負荷側装置103のバルブ1032の開度を調整する処理が実行される。よって、負荷側装置103が設置された空間の温度を設定温度に調整するようにすることができる。
【0045】
一方、停止時間であると判定した場合(ST109:YES)、モジュールコントローラ113は、負荷側装置103の動作を順次停止し(ST110)、熱源機102の動作を停止し(ST111)、この処理を終了する。これにより、熱源システム101aが停止時間に動作を停止する。
【0046】
以上のように構成された熱源システム101aにおいては、モジュールコントローラ113が負荷側装置103を直接制御するため、熱源機102、及び負荷側装置103を管理する管理装置を不要とすることができる。
【0047】
その他、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
101,101a…熱源システム、102…熱源機、103…負荷側装置、103a,…103n…I/Oポート、113…モジュールコントローラ、118…ポンプコントローラ、210,220,230…エリアコントローラ、221,224,225,231…コントローラ、A1,A2,A3…エリア(領域)、A21,A22,A23…エリア(グループ)、L1…通信回線、P…ダクト、1031,1033…センサ、1032,1034…バルブ