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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】製氷ユニット
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/045 20180101AFI20240612BHJP
【FI】
F25C1/045 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020073203
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169889
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年4月8日に株式会社クレディセゾンへ販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000208503
【氏名又は名称】大和冷機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 慎
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-125116(JP,A)
【文献】特開平04-363565(JP,A)
【文献】特開平11-237149(JP,A)
【文献】特開2006-266538(JP,A)
【文献】特開2008-157599(JP,A)
【文献】特開2010-019393(JP,A)
【文献】特公昭47-001518(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視が概略矩形形状に形成され、矩形形状とした一辺の側を枢動可能に支持され、矩形形状とした他方の辺の側がコイルスプリングの下端で吊り下げ支持されて上下動可能な水皿と、
この水皿の前記他方の辺の側で駆動アームを回転駆動し、同駆動アームにて前記コイルスプリングの上端を上下動させるギアモーターとを備え、
前記水皿の側面には、ボス軸が突出して形成され、前記コイルスプリングの下端は、同ボス軸に装着されたスプリングボルトキャップに係合しており、
前記水皿の側面の上縁には、滑り板が装着されるとともに、前記駆動アームは、前記水皿を上昇させたときに、所定位置において前記滑り板の上面に当接し、
前記駆動アームが所定範囲で回転するときに前記コイルスプリングで吊り下げ支持される前記水皿の他方の辺を上下方向に駆動することで脱氷時に所定方向に氷を落下させる製氷ユニットであって、
前記スプリングボルトキャップは、前記ボス軸の外形に密着する内側空間を形成してあるとともに、前記水皿の側に突き出て可撓性を有する係止アームを有し、
前記水皿の側面には、同係止アームを挿通して係止可能な係止穴を形成してあり、
前記滑り板は、前記水皿の側面に対して凹凸係合可能であり、
前記スプリングボルトキャップは、前記水皿の側面に沿って延設される押さえ板を有し、同押さえ板の一部が前記滑り板の側面を覆うことを特徴とする製氷ユニット。
【請求項2】
前記滑り板には貫通穴を形成してあり、前記水皿の側面には同貫通穴に挿通可能な突起を形成してあり、同突起が同貫通穴に入り込んで凹凸係合することを特徴とする請求項1に記載の製氷ユニット。
【請求項3】
前記係止アームは2つあり、それぞれの先端には互いに反対方向に突出するくさび形の係止突起を形成してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製氷ユニット。
【請求項4】
前記押さえ板は上方に延設され、上方にて前記滑り板の下部に重なり合うことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の製氷ユニット。
【請求項5】
前記ボス軸は、根元側に太径部、先端側に細径部を有し、前記スプリングボルトキャップの内周面は、同太径部と細径部が密着する断面形状となっていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の製氷ユニット。
【請求項6】
前記ボス軸の側面と、前記スプリングボルトキャップの内側側面には、Dカットを形成してあることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の製氷ユニット。
【請求項7】
前記スプリングボルトキャップは、概略円柱状であり、先端側には、前記コイルスプリングの先端の円環部位を係止する円環状で細径の下端側係止溝を形成してあり、同下端側係止溝の概略中心はボス軸の中心よりも下方にずらしてあることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の製氷ユニット。
【請求項8】
前記下端側係止溝は、下方側の半径が上方側の半径よりも長い形状となっていることを特徴とする請求項7に記載の製氷ユニット。
【請求項9】
前記スプリングボルトキャップには、前記下端側係止溝を基準として前記水皿と反対の側には鍔状部位を形成してあり、同鍔状部位は、下方よりも上方を長く形成してあることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の製氷ユニット。
【請求項10】
前記鍔状部位の外周は、上縁と下縁との間において、上方に幅狭となるように切り欠かれた幅狭部位を有することを特徴とする請求項9に記載の製氷ユニット。
【請求項11】
前記幅狭部位は、概略直線状であることを特徴とする請求項10に記載の製氷ユニット。
【請求項12】
前記概略直線状とした幅狭部位は、互いに平行な線を基準としてそれぞれ略5~30度傾斜することで前記鍔状部位が下方で幅狭に形成されていることを特徴とする請求項11に記載の製氷ユニット。
【請求項13】
前記ボス軸は、真円ではないことを特徴とする請求項1~請求項12のいずれかに記載の製氷ユニット。
【請求項14】
平面視が概略矩形形状に形成され、矩形形状とした一辺の側を枢動可能に支持され、矩形形状とした他方の辺の側がコイルスプリングの下端で吊り下げ支持されて上下動可能な水皿と、
この水皿の前記他方の辺の側で駆動アームを回転駆動し、同駆動アームにて前記コイルスプリングの上端を上下動させるギアモーターとを備え、
前記水皿の側面には、ボス軸が突出して形成され、前記コイルスプリングの下端は、同ボス軸に装着されたスプリングボルトキャップに係合しており、
前記駆動アームが所定範囲で回転するときに前記コイルスプリングで吊り下げ支持される前記水皿の他方の辺を上下方向に駆動することで脱氷時に所定方向に氷を落下させる製氷ユニットであって、
前記スプリングボルトキャップは、前記ボス軸の外形に密着する内側空間を形成してあるとともに、前記水皿の側に突き出て可撓性を有する係止アームを有し、
前記水皿の側面には、同係止アームを挿通して係止可能な係止穴を形成してあり、
前記スプリングボルトキャップは、前記水皿の側面に沿って延設される押さえ板を有していることを特徴とする製氷ユニット。
【請求項15】
平面視が概略矩形形状に形成され、矩形形状とした一辺の側を枢動可能に支持され、矩形形状とした他方の辺の側がコイルスプリングの下端で吊り下げ支持されて上下動可能な水皿と、
この水皿の前記他方の辺の側で駆動アームを回転駆動し、同駆動アームにて前記コイルスプリングの上端を上下動させるギアモーターとを備え、
前記水皿の側面には、ボス軸が突出して形成され、前記コイルスプリングの下端は、同ボス軸に装着されたスプリングボルトキャップに係合しており、
前記駆動アームが所定範囲で回転するときに前記コイルスプリングで吊り下げ支持される前記水皿の他方の辺を上下方向に駆動することで脱氷時に所定方向に氷を落下させる製氷ユニットであって、
前記スプリングボルトキャップは、前記ボス軸の外形に密着する内側空間を形成してあるとともに、同ボス軸に係合固定され、
前記スプリングボルトキャップは、前記水皿の側面に沿って延設される押さえ板を有していることを特徴とする製氷ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
製氷機の水皿は、一辺で枢動可能に支持されて、他辺の側が上昇・下降する必要がある。水皿の他辺に近い側面にはボス軸が突き出して設けられ、このボス軸にコイルスプリングの下端を引っ掛け、上方へ吊る構造となっている。上昇・下降時にコイルスプリングの下端が回動するため、摩耗を防ぐ目的でPOM製のキャップ(スプリングボルトキャップ)をボス軸に被せる必要がある。このキャップが抜けないように、M5ねじで固定されている。
【0003】
製氷時は、水皿を上昇させて、所定位置で保持する必要がある。このため、上昇位置で十分な引き上げ力を発揮しつつも、ある位置以上には引き上げないようにストッパを設けている。ストッパの役割を果たすのが、駆動アームに設けた下肉部であり、下肉部はカムとして水皿の上端縁部に当接することでストッパとなる。下肉部が水皿の縁部に当接してからもある回転角度の範囲で滑動する必要があり、摩耗を防ぐ目的で水皿の縁部には金属製の滑り板を被せてある。この滑り板は、水皿に対してネジ止め固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-002647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の製氷ユニットは、組み立て時に滑り板やキャップをネジ止め固定する必要があり、組み立てに多くの工数を要していた。
本発明は、組み立て工数削減のため、ネジ止め固定や、代替的なEリングを不要とする製氷ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、平面視が概略矩形形状に形成され、矩形形状とした一辺の側を枢動可能に支持され、矩形形状とした他方の辺の側がコイルスプリングの下端で吊り下げ支持されて上下動可能な水皿と、この水皿の前記他方の辺の側で駆動アームを回転駆動し、同駆動アームにて前記コイルスプリングの上端を上下動させるギアモーターとを備え、前記水皿の側面には、ボス軸が突出して形成され、前記コイルスプリングの下端は、同ボス軸に装着されたスプリングボルトキャップに係合しており、前記水皿の側面の上縁には、滑り板が装着されるとともに、前記駆動アームは、前記水皿を上昇させたときに、所定位置において前記滑り板の上面に当接し、前記駆動アームが所定範囲で回転するときに前記コイルスプリングで吊り下げ支持される前記水皿の他方の辺を上下方向に駆動することで脱氷時に所定方向に氷を落下させる製氷ユニットであって、前記スプリングボルトキャップは、前記ボス軸の外形に密着する内側空間を形成してあるとともに、前記水皿の側に突き出て可撓性を有する係止アームを有し、前記水皿の側面には、同係止アームを挿通して係止可能な係止穴を形成してあり、前記滑り板は、前記水皿の側面に対して凹凸係合可能であり、前記スプリングボルトキャップは、前記水皿の側面に沿って延設される押さえ板を有し、同押さえ板の一部が前記滑り板の側面を覆う構成としてある。
【0007】
上記構成において、前記スプリングボルトキャップは、前記ボス軸の外形に密着する内側空間を形成してあるため、スプリングボルトキャップをボス軸に被せると、自ずから両者は密着し、スプリングボルトキャップにコイルスプリングの下端を係止させて吊り下げたとき、スプリングボルトキャップに加わる荷重はボス軸によって支持される。
また、スプリングボルトキャップにおける水皿の側に突き出た可撓性を有する係止アームを、前記水皿の側面に形成した係止穴に挿通すると、同係止アームは憧憬し穴に係止する。スプリングボルトキャップはボス軸に密着し、かつ、係止アームによって水皿から離れてしまうことを防止しているので、以後、スプリングキャップは外れない。
滑り板は、水皿の側面に対して凹凸係合して固定されている。この状態で、スプリングボルトキャップから水皿の側面に沿って延設される押さえ板が、同滑り板の一部を覆う。従って、滑り板は水皿から外れることはない。
【0008】
また、前記滑り板には貫通穴を形成してあり、前記水皿の側面には同貫通穴に挿通可能な突起を形成してあり、同突起が同貫通穴に入り込んで凹凸係合する構成とすることができる。
さらに、前記係止アームの先端にはくさび形の係止突起を形成して構成することができる。
【0009】
また、前記押さえ板は上方に延設され、上方にて前記滑り板の下部に重なり合う構成とすることができる。
さらに、前記ボス軸は、根元側に太径部、先端側に細径部を有し、前記スプリングボルトキャップの内周面は、同太径部と細径部が密着する断面形状となる構成とすることができる。
【0010】
また、前記ボス軸の側面と、前記スプリングボルトキャップの内側側面には、Dカットを形成した構成とすることができる。
さらに、前記スプリングボルトキャップは、概略円柱状であり、先端側には、前記コイルスプリングの先端の円環部位を係止する円環状で細径の下端側係止溝を形成してあり、同下端側係止溝の概略中心はボス軸の中心よりも下方にずらした構成とすることができる。
【0011】
また、前記下端側係止溝は、下方側の半径が上方側の半径よりも長い形状とした構成とすることができる。
さらに、前記スプリングボルトキャップには、前記下端側係止溝を基準として前記水皿と反対の側には鍔状部位を形成してあり、同鍔状部位の外周は、上方を長く形成した構成とすることができる。
【0012】
また、前記鍔状部位の外周は、上縁と下縁との間において、上方に幅狭となるように切り欠かれた幅狭部位を有する構成とすることができる。
さらに、前記幅狭部位は、概略直線状とした構成とすることができる。
また、前記概略直線状とした幅狭部位は、互いに平行な線を基準としてそれぞれ略5~30度傾斜することで前記鍔状部位が下方で幅狭に形成した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、滑り板を水皿に凹凸係合させた状態で、スプリングボルトキャップを装着することで、同滑り板を固定することができ、ネジ止めを不要として工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】製氷機の外観を示す斜視図である。
図2】水皿が上昇した状態の正面図である。
図3】水皿が下降した状態の正面図である。
図4】駆動アームの斜視図である。
図5】水皿の側面の外側から見た斜視図である。
図6】水皿の側面の内側から見た斜視図である。
図7】スプリングボルトキャップを背面側から見た斜視図である。
図8】スプリングボルトキャップ装着部位の断面図である。
図9】水皿が上昇した状態の駆動アームとスプリングの関係を示す模式図である。
図10】水皿が下降した状態の駆動アームとスプリングの関係を示す模式図である。
図11】スプリングボルトキャップにコイルスプリングが係止している拡大正面図である。
図12】変形例に係るスプリングボルトキャップ装着部位の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した製氷機の外観を示す斜視図である。
同図において、概略矩形箱形の筺体を有する製氷機40は、上部に貯氷庫部41、下部に機械室部42を備えており、貯氷庫部41は前面に扉43を備えている。扉43は下縁を回転軸として上縁側が円弧を描いて手前側(前面側)に引き出して回動させて開口させ、あるいは逆の手順で回動させて閉じることが可能となっている。
【0016】
貯氷庫部41には、概略矩形箱形の貯氷庫41aが形成されるとともに当該貯氷庫41aの内部の上方部分には、製氷ユニット10が収容されている。
同製氷ユニット10は、製氷機40の前方から見て左側を支点として、右側が上下に傾動するように構成されている。すなわち、後述する水皿を水平とした状態で製氷し、製氷後に脱氷させるとき(脱氷時)には、水皿は左端を回動支点として右端が時計回り方向に回転するように下降する。右端が下降すると水皿の表面が傾斜し、水皿の上方に配置されている製氷皿から氷が脱落すると、水皿の表面に沿って右側方向(所定方向)に落下する。
【0017】
落下した氷は下方の貯氷庫41a内にたまっていく。脱氷が終了したら、水皿は反対の反時計回り方向に回転し、右端部分が上昇して当初の水平な状態へと戻って製氷を繰り返す。
図2は、製氷ユニットの水皿が上昇した状態の正面図であり、図3は、水皿が下降した状態の正面図である。
同図は、製氷ユニット10は、図示しない冷却機構と連結された製氷皿部11と、平面視が概略矩形形状に形成され、矩形形状とした一辺の側を支点として枢動(枢動可能)することにより矩形形状とした他方の辺の側が上下動可能となって前記製氷皿部11を開閉する水皿部12と、この水皿部12の前記他方の辺の側で支持されて同水皿部12を回動させるギアモーターユニット13とを示している。これらの製氷皿部11と水皿部12とギアモーターユニット13は貯氷庫部41の上部に設置される。
【0018】
製氷皿部11は、下面に開口した複数のセルを有しており、その下方には同セルに向けて製氷のための水を噴出する水皿を含む水皿部12が備えられている。図2に示すように、セル内で製氷される間は水皿部12は上昇位置にて前記製氷皿部11に対面しているが、セル内で製氷されると、図3に示すように、水皿部12は一端を支点として他端が前記製氷皿部11から離れるように回動することで傾斜する。すると、製氷皿部11から落下した氷が水皿部12の上面を滑り落ちて下方の貯氷庫41aに収容される。
【0019】
ギアモーターユニット13は製氷皿部11と同じフレーム14に固定されており、水皿部12の幅方向に配置された回転軸13aを所定範囲で回転駆動することにより、同回転軸13aにおける水皿部12の前方と後方(前方から後方への方向を幅方向と呼ぶ)に配置されて連結されている駆動アーム21を枢動させる。
図4は、駆動アームの斜視図である。
【0020】
一対の駆動アーム21は、ギアモーターユニット13にて回動されて水皿部12の他方の辺と平行に配置される回転軸13aが連結され、水皿部12の他方の辺の側で水皿部12の上方にて同水皿部12を幅方向に挟むように配置されている。駆動アーム21は、回転軸13aにて回動され、同回転軸13aに連結される根元部位21aと、円弧を描いて回動する先端部位21bとを有しており、先端部位21bの端部に円柱状部位21cが形成され、この円柱状部位21cに係止されるコイルスプリング22を介して前記水皿部12における前記支点と離れた部位に連結されている。このため、駆動アーム21の回転位置に応じて前記水皿部12は上昇位置と下降位置との間で往復動する。
【0021】
このように、一対のコイルスプリング22は、それぞれの一端(上端)22a1で円柱状部位21cに係止され、他端(下端)で水皿部12の幅方向の側面に係止されている。また、製氷ユニット10は、駆動アーム21が所定範囲で回転するときにコイルスプリング22で吊り下げ支持される水皿部12の他方の辺を上下方向に駆動することで脱氷時に所定方向に氷を落下させる。また、駆動アーム21は、回転軸13aの側の根元部位21aと、先端の側の先端部位21bとを有し、先端部位21bには回転面に対して直交して突出する円柱状の円柱状部位21cを有している。
【0022】
駆動アーム21には、根元部位21aを基準としたときに先端部位21bと反対側に下肉部21dが形成されている。下肉部21dは一種のカムであり、水皿部12の上端縁部12aに対面している。同上端縁部12aには金属製の滑り板12bをかぶせて装着してあり、水皿部12が上昇したときに下肉部21dは同滑り板12bに当接することで、水皿部12が一定の高さ以上には上昇させないようにしている。
【0023】
図5は、水皿部の側面の外側から見た斜視図であり、図6は、水皿部の側面の内側から見た斜視図であり、図7は、スプリングボルトキャップを背面側から見た斜視図であり、図8は、スプリングボルトキャップ装着部位の断面図である。
水皿部12の両側面(回転軸13aの軸方向)には、略円柱状のボス軸12c,12cが突き出るように形成されている。コイルスプリング22の下端22a2を支持するときに、ボス軸12cに直に係止させると、ボス軸12cが摩耗する。摩耗を防いだり、滑りをよくするため、スプリングボルトキャップ30をボス軸12cに装着する。なお、ボス軸12c,12cは真円に限定されるものではなく、楕円や半円などもありえる。楕円や半円とすると軸の幅を大きく取ることで高さを減じ、コイルバネのコイル部長さを稼ぐことができるようになる。すなわち、Rtsinを極力減少させることが可能となる。後述するように、これに対応してスプリングボルトキャップ30の内側空間はボス軸12c,12cの外形とほぼ一致させる。また、コイルスプリング22の上端や下端のフックの形状も真円に限る必要は無い。
【0024】
スプリングボルトキャップ30にコイルスプリング22の円環状の下端22a2を係止するため、スプリングボルトキャップ30の先端には下端側係止溝31を形成する必要がある。このため、図8に示すように、スプリングボルトキャップ30の内側空間は、開口側には一定の太径の太径円筒部位30aとなっており、先端側には細径の細径円筒部位30bが形成される。ボス軸12cは、スプリングボルトキャップ30の内側空間に挿入されて密着するように太径円筒部位30aに密着する太径円柱部位(太径部)12c1と、細径円筒部位30bに密着する細径円柱部位(細径部)12c2を備えた外形となっている。スプリングボルトキャップ30の内周面の断面形状はこのような形状となっている。
【0025】
本実施例では、スプリングボルトキャップ30の内側空間で、先端側の細径円筒部位30bまでボス軸12cの細径円筒部位30bが挿入されて密着している。スプリングボルトキャップ30の先端の下端側係止溝31にコイルスプリング22の下端22a2を係止させて吊り上げるとき、スプリングボルトキャップ30からボス軸12cにかかる作用点はスプリングボルトキャップ30の先端の係止位置に近い位置となるため、スプリングボルトキャップ30がボス軸12cから受ける反力によって回転し、抜けてしまいにくくすることができる。
【0026】
また、スプリングボルトキャップ30は、ボス軸12cを両側から挟みつつ、水皿部12の側に向かって突出する一対の可撓性を有する係止アーム32a,32aを有しており、同係止アーム32a,32aの先端には、互いに反対方向に突出する断面くさび形の係止突起32a1,32a1が形成されている。くさび形としているのは、水皿部12の側面に開口する係止穴12d,12dに係止アーム32a,32aの先端が挿入されるとき、係止突起32a1,32a1は係止穴12d,12dの開口縁部に沿って押し撓められながら挿入され、係止突起32a1,32a1が係止穴12d,12dの開口縁部を通過すると、撓められていた係止アーム32a,32aが復帰することで、同係止突起32a1,32a1が係止穴12d,12dの開口縁部にしっかりと係止できるようにするためである。なお、スプリングボルトキャップ30がボス軸12cに完全に密着するまで押し込んだときに、係止突起32a1,32a1が係止穴12d,12dの開口縁部にしっかりと係止できるようにしてある。
【0027】
上述したように、スプリングボルトキャップ30の内側空間で、先端側の細径円筒部位30bまでボス軸12cの細径円筒部位30bが挿入されて密着し、スプリングボルトキャップ30がボス軸12cから受ける反力によって回転し、抜けてしまいにくくすることができるため、係止穴12d,12dと係止アーム32a,32aの係合によって必要十分な固定が実現できる。このため、別途ネジ止めする必要が無く、組み立て工数を削減することができる。なお、スプリングボルトキャップ30をボス軸12cに対して抜け止め固定する方法としては、係止穴12d,12dと係止アーム32a,32aの係合固定に限られず、他の様々な方法も可能である。例えば、図12に示すように、ボス軸12cの外周に円環状の太径部12dを形成しつつスプリングボルトキャップ30の内側空間には同太径部12dが入るような太径の溝30dを形成しておき、スプリングボルトキャップ30にボス軸12cを押し込んで挿入し、嵌合させるということも可能である。
【0028】
スプリングボルトキャップ30は、ボス軸12cを被覆するほか、滑り板12bを固定する役割も担っている。滑り板12bは、水皿部12の上端縁部12aを被覆できるように、断面L字型に屈曲されており、上面側部位12b1と側面側部位12b2とを備えている。側面側部位12b2には円形の貫通穴12b3が形成され、水皿部12の側面には、当該貫通穴12b3に挿通可能な突起12eが形成されている。滑り板12bは、突起12eを貫通穴12b3に挿通させるように水皿部12に装着することで凹凸係合可能であり、水皿部12の上端縁部12a上に上面側部位12b1が密着した状態となる。
【0029】
この状態では滑り板12bは水皿部12に対して側面方向外側に引き出すと容易に外れてしまう。しかし、スプリングボルトキャップ30は、水皿部12の側面に沿って上方に延設される押さえ板33を有しており、この押さえ板33は、滑り板12bを所定位置に装着した状態で同滑り板12bの外側表面に密着しつつ、上記突起12eの先端が入り込める程度の貫通穴33aを形成してある。
【0030】
このように、水皿部12の上端縁部12aに密着するように滑り板12bを装着した後、スプリングボルトキャップ30の係止アーム32a,32aを水皿部12の係止穴12d,12dに挿入していく。すると、押さえ板33は滑り板12bの下端の一部を覆って重なり合い、側面方向外側から水皿部12に向けて押しつけ、係止突起32a1,32a1が係止穴12d,12dの開口縁部に係止すると、滑り板12bは水皿部12と押さえ板33とに挟持される。また、滑り板12bは突起12eと凹凸係合しているので、以後は滑り板12bは当該位置に固定されることになる。従って、従来のように,押さえ板33を固定するためのネジ止めは不要であり、組み立て工数を削減することができる。
【0031】
図9は、水皿が上昇した状態の駆動アームとスプリングの関係を示す模式図であり、図10は、水皿が下降した状態の駆動アームとスプリングの関係を示す模式図である。
製氷時、水皿部12には所定の水が保持された状態となり、一定の重量を有する。この水皿部12を所定位置に保持するためには、コイルスプリング22に所定長のたわみ量を発生させる必要がある。図9を参照し、
コイルの自由長Li
たわみ量δ2
としたとき、
総高さHall=Li+δ2 …(1)
である。
【0032】
駆動アーム21の回転軸芯から円柱状部位21cの中心までをカム長さRcam
円柱状部位21cの中心から、円柱状部位21cに形成される係止溝21eの上端(先端側方向)までの距離Rcout
駆動アーム21の回転軸芯から下肉部21dの下端までの距離Rcbtm
水皿部12の上端から水面までの距離を水面距離Hwall
水皿面からコイルスプリング22の下端が係止されるスプリングボルトキャップ30の中心までの距離Yts
スプリングボルトキャップ30の中心から、スプリングボルトキャップ30に形成される下端側係止溝31の下端までの距離Rtsout
とすると、
総高さHall=Rcam+Rcout+Rcbtm+Hwall+Yts+Rtsout
…(2)
となる。なお、スプリングボルトキャップ30の中心から、スプリングボルトキャップ30に形成される下端側係止溝31の上端までの距離Rtsinは、下端までの距離Rtsoutとは、必ずしも一致する必要は無い。楕円であったり、半円であったりしても良いからである。
従って、たわみ量δ2は、
δ2=(Rcam+Rcout+Rcbtm+Hwall+Yts+Rtsout)-Li
…(3)
【0033】
なお、対荷重量は、(ばね定数xδ2)である。貯氷量を稼ぐためには製氷ユニット10を高い位置に設置する必要があるが、上述したパラメータのうち、
1)駆動アーム21の回転軸芯から下肉部21dの下端までの距離Rcbtm
2)水皿部12の上端から水面までの距離を水面距離Hwall
3)水皿面からコイルスプリング22の下端が係止される円柱状のスプリングボルトキャップ30の中心までの距離Yts
については、変更の許容性が極めて低い。
【0034】
また、
4)駆動アーム21の回転軸芯から円柱状部位21cの中心までをカム長さRcamについては、長くすることでδ2を増やせるが、長くすると貯氷庫41aの天井に当接することになり、製氷ユニット10の取り付け高さを下げることになる。
従って、残る要素は、
5)円柱状部位21cの中心から、円柱状部位21cに形成される係止溝21eの上端までの距離Rcout
6)スプリングボルトキャップ30の中心から、スプリングボルトキャップ30に形成される下端側係止溝31の下端までの距離Rtsout
である。しかしながら、これらは従来であれば、当然に円柱状部位21cとスプリングボルトキャップ30の中心位置が決まった時点で同時に決まっており、変更の余地はなかった。
【0035】
次に、水皿部12は最低限の下降長が必要である。水皿部12が傾斜することで製氷皿部11との間に隙間を形成させ、できあがった氷が同隙間から滑り出る必要があるからである。
図10を参照し、実際の隙間に比例するパラメータとして、
駆動アーム21の回転軸芯から、コイルスプリング22の下端までの距離を下降距離Lext
円柱状部位21cの中心から、円柱状部位21cに形成される係止溝21eの下端(根元側方向)までの距離Rcin
とすると
下降距離Lext=Rcam-Rcin+Li …(4)
となる。なお、水皿面の高さは、コイルスプリング22の下端が係止される円柱状のスプリングボルトキャップ30の中心までの距離Ytsと、スプリングボルトキャップ30の中心からスプリングボルトキャップ30に形成される下端側係止溝31の下端までの距離Rtsoutとの和である。
【0036】
これらから、
6)スプリングボルトキャップ30の中心から、スプリングボルトキャップ30に形成される下端側係止溝31の下端までの距離Rtsout
7)円柱状部位21cの中心から、円柱状部位21cに形成される係止溝21eの下端(根元側方向)までの距離Rcin
が、下降距離Lextを決定する変更可能な要素となる。ただし、これらは従来であれば、当然に円柱状部位21cとスプリングボルトキャップ30の中心位置が決まった時点で同時に決まっており、変更の余地はなかった。
【0037】
図11は、スプリングボルトキャップの先端部位にコイルスプリングが係止している拡大正面図である。
スプリングボルトキャップ30は概略円柱状であり、その先端側には、コイルスプリング22の下端22a2の円環部位を係止する円環状で細径の下端側係止溝31を形成してある。前提として、スプリングボルトキャップ30において、太径円筒部位30aと細径円筒部位30bは基本形状として円柱状であるが、下端側係止溝31の概略中心31a1は太径円筒部位30aと細径円筒部位30bの中心30a1およびボス軸12cの中心12c4と一致しておらず、下方側にずらした位置となっている。
【0038】
このように、スプリングボルトキャップ30では、コイルスプリング22の他端22a2の円環部位が係止する下端側係止溝31が形成され、スプリングボルトキャップ30やボス軸12cの中心12c4と、この下端側係止溝31の中心31a1を一致させず、下端側係止溝31の中心を0.5mmだけ下方にずらしてある。
また、太径円筒部位30aは、正確には下方側の半径φ8であるのに対して、上方側の半径φ7よりも長い形状となっている。このように、スプリングボルトキャップの外径はφ16(R8)だが、上側の円筒面については半径7mmとしてあり、コイルスプリング22のコイル部分との干渉を避けている。
【0039】
なお、駆動アーム21においては、円柱状部位21cの半径を15.4mmとして設計してあり、係止溝21eの半径を11.2mmとして設計してある。そして、係止溝21eの概略中心21e1が円柱状部位21cの中心21c1よりも1mmだけ径方向外側にずらしてある。
【0040】
このように、中心がずれるということは、前述した
5)円柱状部位21cの中心から、円柱状部位21cに形成される係止溝21eの上端までの距離Rcout
6)スプリングボルトキャップ30の中心から、スプリングボルトキャップ30に形成される下端側係止溝31の下端までの距離Rtsout
が、それぞれ1mmと、0.5mm生じていることになり、たわみ量δ2については1.5mmだけ増えることで対荷重量は増加している。また、下降距離Lextについても、距離Rcoutと距離Rtsoutの和だけ長くなっている。
【0041】
すなわち、駆動アーム21の実質長がRcamであるとして、これを長くすることなく、対荷重量も増加し、下降距離も長くなった。これは実質的には製氷ユニットの配設高さを高くできることになり、貯氷量を増大できたといえる。また、駆動アーム21の実質長を長くすることなく、対荷重量を増加できたので、製氷機40の大型機種で必要となる対荷重量を小型機種に使用できる駆動アーム21のまま維持できることになる。従って、部品の共通化を実現できた。
【0042】
スプリングボルトキャップ30に下端側係止溝31を形成した上で、この下端側係止溝31を基準として水皿部12と反対の側には鍔状部位30cを形成してある。鍔状部位30cは、コイルスプリング22の下端22a2が下端側係止溝31から容易に外れないようにするために下端22a2の円環部位よりも大きな径である必要があるが、大きすぎると嵌めることができず、小さすぎると嵌めやすいものの外れやすくなる。
【0043】
本実施例では、鍔状部位30cの外周は、上縁と下縁との間において、上方に向かうほど幅狭となるように切り欠かれた幅狭部位30c1,30c1を有する形状としてある。さらに、この幅狭部位30c1,30c1は、概略直線状であるとともに、互いに平行な線を基準としてそれぞれ略20度傾斜して形成されている。なお、20度というのは一例であり、約5~30度程度の範囲が好適である。
【0044】
この結果、鍔状部位30cは上方が幅狭となっていて、かつ、下端側係止溝31の中心31a1からの距離は長くなっている。すなわち、鍔状部位30cは、下方よりも上方を長く形成してある。このような形状とすることで、まず、コイルスプリング22の下端22a2を上にして、その円環部位を鍔状部位30cにおける上方の細い部分に引っ掛け、その後、コイルスプリング22を下方に引き下げていくと、幅狭部位30c1,30c1の部位が自然に下端22a2の円環部位に入っていく。最後に鍔状部位30cにおける下方の部位が同円環部位に入り込んだらコイルスプリング22は完全に下端側係止溝31に係止し、外れなくなる。鍔状部位30cにおける上方の細い部分は先端側よりも長くなっており、この部分は細いために円環部位に入りやすい。係止後は、鍔状部位30cにおける根元側から先端側までの長さが太径円筒部位30aとほぼ同じであって、下端側係止溝31の径よりも十分に大きいので、装着しやすいが外れにくいという効果を奏する。
【0045】
また、ボス軸12cにおける太径円柱部位12c1の両側面12c3と、スプリングボルトキャップ30の太径円筒部位30aにおける内側の両側面(内側側面)には、それぞれ対応する位置にDカットを形成してある。従って、スプリングボルトキャップ30をボス軸12cに被せたときには両者は相互に回転不能になる。
なお、本発明によって、スプリングボルトキャップ30や押さえ板33を固定するためのネジ止めは不要となる。しかし、より大きな荷重がかかる場合にはさらにネジ止め固定をすることでより強固に固定することも可能である。この場合、スプリングボルトキャップ30とボス軸12c、および突起12eと押え板33の貫通穴33aとをネジ止め固定すれば良い。
【0046】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0047】
10…製氷ユニット、
11…製氷皿部、
12…水皿部、
12a…上端縁部、
12b…滑り板、
12b1…上面側部位、
12b2…側面側部位、
12b3…貫通穴、
12c…ボス軸、
12c1…太径円柱部位(太径部)、
12c2…細径円柱部位(細径部)、
12c3…内側側面、
12c4…中心、
12d…係止穴、
12e…突起、
13…ギアモーターユニット、
13a…回転軸、
14…フレーム、
21…駆動アーム、
21a…根元部位、
21b…先端部位、
21c…円柱状部位、
21c1…中心、
21d…下肉部、
21e…係止溝、
21e1…概略中心、
22…コイルスプリング、
22a2…下端、
30…スプリングボルトキャップ、
30a…太径円筒部位、
30a1…中心、
30b…細径円筒部位、
30c…鍔状部位、
30c1…幅狭部位、
31…下端側係止溝、
31a1…中心、
32a…係止アーム、
32a1…係止突起、
33…押さえ板、
33a…貫通穴、
40…製氷機、
41…貯氷庫部、
41a…貯氷庫、
42…機械室部、
43…扉。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12