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  • 特許-鋼矢板の防食構造 図1
  • 特許-鋼矢板の防食構造 図2
  • 特許-鋼矢板の防食構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】鋼矢板の防食構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/12 20060101AFI20240612BHJP
   E02D 31/06 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
E02B3/12
E02D31/06 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021197356
(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公開番号】P2023072620
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000133331
【氏名又は名称】株式会社ダイトー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正久
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193941(JP,A)
【文献】特開2017-180048(JP,A)
【文献】特開平09-279568(JP,A)
【文献】特開2003-074038(JP,A)
【文献】特開平11-181734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04- 3/14
E02D 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板(1)の前面に所定間隔をおいて海底に打ち込まれ、その上部を護岸コンクリート(5)に固定された複数の鋼杭(3)と、各鋼杭(3)に連結された複数の水平梁(7)と、水平梁(7)の前面に設けられた連結部材(8,11)と、この連結部材を介して前記水平梁(7)に取り付けられた防食カバー(10)と、防食カバー(10)と前記鋼矢板(1)の間に注入固化された充填剤と、から成る鋼矢板の防食構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸構造物、特に腐蝕が進んだ鋼矢板に適した防食構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼矢板を防食カバーで被覆するには、まず鋼矢板の海中部分に底板やブラケット、鋼矢板の干満域及び飛沫域にボルトスタッドや金具を溶接し、間にスペーサと補強鉄筋を配置し、クレーンでFRP製の防食カバーを吊りながら底板に載置すると共にカバーの各孔を前記ボルトスタッドにはめ込んでナットで固定し、鋼矢板と防食カバーの間にコンクリートトを充填して固化させるのが一般的である。
【文献】実開昭57-137529号公報
【文献】実開昭60-159061号公報
【文献】特開平9-177109号公報
【文献】特開2009-215862号公報
【文献】特開2017-193941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら腐蝕の進んだ鋼矢板の場合、肉厚が減って劣化しているのでボルトスタッドや金具を溶接しても結合力が弱く、何とか溶接して防食カバーを取り付けても、充填されたコンクリートの圧力で結合部分が鋼矢板から剥がれるケースがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、腐蝕の進んだ鋼矢板であってもカバーを確実に取り付けられる防食構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明では、鋼矢板の前面に所定間隔をおいて海底に複数打ち込まれ、その上部を護岸コンクリートに固定された鋼杭と、各鋼杭に連結された複数の水平梁と、水平梁の前面に設けられた連結部材と、連結部材を介して前記水平梁に取り付けられた防食カバーと、防食カバーと前記鋼矢板の間に注入固化された充填剤とから成る防食構造を採用している。
【発明の効果】
【0005】
本発明の防食構造では、カバーを鋼矢板ではなく、連結部材及び水平梁を介して別設の鋼杭に固定しているので、鋼矢板の腐蝕進行に影響を受けることなく防食カバーを強固に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は本発明に係る防食構造の平面図、図2A,2Bは使用される部材の斜視図、図3図1の縦断側面図でコンクリート充填前の状態を示している。
【0007】
護岸の鋼矢板1の前面(海側)には複数のスタッドジベル2が固着され、その前面には間隔をおいて鋼杭3が複数配置され、この実施例では図2Aに示すような安価で強度のあるH鋼が使用されている。鋼杭3は図3から分かるように下端が海底に打ち込まれ、上部はアンカーボルト4により鋼矢板上部の護岸コンクリート5に打ち込まれて強く固定されている。
【0008】
鋼杭3にはアングル形の梁受け6(図3)が複数設けられ、梁受け6に断面コ字形の水平梁7(図2B)が載置固着されている。従って、鋼杭3と水平梁7は全体として格子形状となり、安定した剛性フレームになっている。また、水平梁7には複数のボルトスタッド8が立設され、水平梁7の前にコンクリート補強用の格子鉄筋9が配置されて前記ボルトスタッド8の先端が鉄筋9から突出している。
【0009】
鉄筋9の前にはFRP製の防食カバー10が設置され、カバー孔がボルトスタッド8にはめ込まれて、防食性の袋ナット11により締め付け固定されている。防食カバー10は平板ではなく格子ボードにプレートを接合した強度のあるタイプが使用され、これは格子部分にコンクリートが入り込むことで食いつきがよくなるメリットがある。
【0010】
次に防食カバー10の取り付け順序について説明すると、まずH鋼杭3を鋼矢板1前面の海底に複数打ち込んで整列させ、杭上部のアンカーボルト4を護岸コンクリート5に固定して鋼杭3を安定させる。続いて鋼杭の梁受け6に水平梁7を掛け渡して溶接等で固着する。次に格子鉄筋9を水平梁7の前に配置し、ボルトスタッド8の先端を鉄筋9から突出させる。
【0011】
次いでクレーン(図示せず)を用いて防食カバー10を鉄筋9の前に設置し、位置決めしてカバー孔をボルトスタッド8にはめて袋ナット11で締め付ける。防食カバー10の下端がストレート形状の場合は、図3のように鋼矢板1の下方に予め底板12を固着してカバー10を載置できるようにし、更にシート13を敷いてコンクリートの漏洩を防止する。また、鋼杭3と底板12やシート13の間に隙間があれば、必要に応じてシール(図示せず)で密封する。防食カバーによっては、下端が屈曲して底板を兼ねるタイプやシール付きのものもある。最後に鋼矢板1と防食カバー10の間に水中不分離コンクリート(図示せず)を流し込んで固化させる。
【0012】
コンクリートは、スタッドジベル2、鋼杭3及び水平梁7、格子鉄筋9、カバーの格子部分と一体化するので十分な強度が得られる。底板12は防食カバー10を位置決めするだけで、カバーは水平梁7を介して鋼杭3に固定されるから、底板12に大きな荷重が加わることはなく、腐蝕した鋼矢板1に取り付けても支障はない。また、鋼杭3の上部がアンカーボルト4で護岸コンクリート5に固定されているので、護岸の崩落を防止する効果もある。ただし、崩落の恐れがない護岸の場合には、見栄えを考慮してカバー10の上に出ている鋼杭部分を切除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】鋼矢板防食構造の平面図である。
図2】[図2A]H鋼杭の斜視図である。[図2B]水平梁の斜視図である。
図3図1の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 鋼矢板
3 H鋼杭
5 護岸コンクリート
7 水平梁
8 ボルトスタッド
10 防食カバー
11 袋ナット
図1
図2
図3