IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京電力株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社エステックの特許一覧 ▶ 三桜株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ライフラインの特許一覧

特許7502734地中ケーブル縁切り装置、および地中ケーブル撤去工法
<>
  • 特許-地中ケーブル縁切り装置、および地中ケーブル撤去工法 図1
  • 特許-地中ケーブル縁切り装置、および地中ケーブル撤去工法 図2
  • 特許-地中ケーブル縁切り装置、および地中ケーブル撤去工法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】地中ケーブル縁切り装置、および地中ケーブル撤去工法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20240612BHJP
   H02G 9/04 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G9/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019205699
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021078324
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(73)【特許権者】
【識別番号】519110227
【氏名又は名称】三桜機材サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514136185
【氏名又は名称】株式会社ライフライン
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】戸矢 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】吉本 正浩
(72)【発明者】
【氏名】足立 倫海
(72)【発明者】
【氏名】椙島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】陶山 晃
(72)【発明者】
【氏名】岩下 修二
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-085380(JP,A)
【文献】実開昭60-018617(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
H02G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラフ内を通る地中ケーブルを撤去するために該トラフ内の土と地中ケーブルの縁切りを行う地中ケーブル縁切り装置において、
前記地中ケーブルを挿通する円筒部を有するヘッドと、
前記ヘッドに推進方向の打撃を加える打撃ユニットと、
前記打撃ユニットに駆動力としてのエアを供給する中空管と、
前記中空管にエアを供給するエアコンプレッサと、
を備え
前記打撃ユニットは、ケーシングと、該ケーシングの内部に内蔵されたピストンおよびチゼルとを有し、
前記打撃ユニットにエアが供給されると前記ピストンが前記ケーシング内を前進して前記チゼルを打撃することにより前記ヘッドが前進し、該ヘッドの円筒部によって前記トラフ内の土と前記地中ケーブルとが縁切りされることを特徴とする地中ケーブル縁切り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地中ケーブル縁切り装置を用いて地中ケーブルと土を縁切りした後に地中ケーブルを引き抜くことを特徴とする地中ケーブル撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフ内を通る地中ケーブルを撤去するためにトラフ内の土と地中ケーブルの縁切りを行う地中ケーブル縁切り装置、およびそれを用いた地中ケーブル撤去工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市における景観への配慮や安全性という観点から地中配線の普及が進んでいる。地中配線では、地中にトラフや管路を埋設し、その内部に電力ケーブルや通信ケーブル等(以下、地中ケーブルと称する)を敷設する。地中ケーブルは、経年劣化した際や、不要になった際には撤去される。
【0003】
トラフでは、地中ケーブルの周囲に埋設材(土や砂等)が充填されている。地中ケーブルは送電中に発熱する。このとき、埋設材は、放熱するための伝熱材として機能する。また発熱した地中ケーブルは昇温によって延びて蛇行しようとするが、このとき、埋設材は、蛇行を抑える支持部材としての役割も果たす。その一方で、埋設材は加熱されながら圧縮されるためトラフ内において固化してしまい、さらには固化した埋設材が地中ケーブルに固着してしまう。すると、摩擦抵抗が増加してしまい、地中ケーブルの引き抜きが難しくなる。
【0004】
特許文献1はトラフ内ではなく管路内であるが、推進管を用いた地中ケーブルの撤去方法が開示されている。特許文献1の地中ケーブルの撤去方法では、まず管路内に通されている電力ケーブルをマンホール内で切断する。そして、切断端からケーブルに推進管(削進管と同義)を嵌め、この推進管を継ぎ足しながら推進装置で管路内に押し込んで先頭推進管の先端のビットで固着部を剥離する。その後、ケーブルを管路から引き抜いている。特許文献1において推進装置は油圧シリンダーを用いている。
【0005】
特許文献2もトラフ内ではなく管路内であるが、縁切り器具を用いて地中ケーブルとケーブル間の固着をはがす撤去方法が記載されている。特許文献2において縁切り器具は短い円筒形であって、ケーブルを通線して移動する。特許文献2において縁切り器具の推進はワイヤで牽引している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-224112号公報
【文献】特開2012-080693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1も特許文献2も、地中ケーブルを囲う縁切り器具や推進管を通すという点においては同様である。ここで縁切り器具等の推進力が問題となる。トラフや管路は土中にあり、数十メートルの長さを推進しなくてはならない。特許文献1のように推進管を継ぎ足すのは、部材が重く大きく、また土との抵抗も大きいため、大型の油圧の推進装置が必要となる。特許文献2のようにワイヤで牽引する場合には、牽引中にワイヤが切れる可能性があり、作業に技術や経験を要する。特許文献2ではワイヤが切れたときのために縁切り器具の後方にもワイヤを接続しているが、残留した縁切り器具を取り出すことはできるものの、パイロット線の通線からやり直しとなってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、使用する機器を少なくし、また特別な技術や経験がなくても簡単に作業可能な地中ケーブル縁切り装置、および地中ケーブル撤去工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる地中ケーブル縁切り装置の代表的な構成は、トラフ内を通る地中ケーブルを撤去するためにトラフ内の土と地中ケーブルの縁切りを行う地中ケーブル縁切り装置において、地中ケーブルを挿通する円筒部を有するヘッドと、ヘッドに推進方向の打撃を加える打撃ユニットと、打撃ユニットに駆動力としてのエアを供給する中空管と、中空管にエアを供給するエアコンプレッサと、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、エアコンプレッサから中空管を介してエアがヘッドに供給される。これにより、打撃ユニットからヘッドに対して推進方向の打撃が加えられ、ヘッドがトラフ内を推進し、トラフ内の埋設材である土と地中ケーブルとが縁切りされる。このとき、ヘッドがトラフ内を自走するため、油圧の推進装置が必要なく、継ぎ足す推進管も必要ないことから、使用する機器を少なくすることができる。また牽引するためのワイヤをあらかじめトラフ内に通線する必要がないため、作業が短時間で終了する。またワイヤが切れてしまうおそれもないため、特別な技術や経験がなくても簡単に作業することが可能である。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる地中ケーブル撤去工法の代表的な構成は、上記に記載の地中ケーブル縁切り装置を用いて地中ケーブルと土を縁切りした後に地中ケーブルを引き抜くことを特徴とする。上述した地中ケーブル縁切り装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該地中ケーブル撤去工法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用する機器を少なくし、また特別な技術や経験がなくても簡単に作業可能な地中ケーブル縁切り装置、および地中ケーブル撤去工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかる地中ケーブル縁切り装置を説明する図である。
図2】本実施形態の地中ケーブル撤去工法を説明する図である。
図3】本実施形態の縁切り装置およびそれを用いた撤去工法の詳細を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる地中ケーブル縁切り装置(以下、縁切り装置100と称する)を説明する図である。図1(a)は、縁切り装置100の全体図であり、図1(b)は、図1(a)のA方向からの断面図である。図1(b)に示すように、作業現場10では、路面の下の地中にトラフ12が埋設されていて、そのトラフ12の内部に地中ケーブル14が敷設されている。
【0016】
トラフ12内に埋設材18(例えば土)が充填されていることにより、地中ケーブル14の周囲は埋設材18によって被覆されている。トラフ12の上面には蓋16が設けられている。本実施形態の地中ケーブル撤去工法では、縁切り装置100によってトラフ12内の埋設材18である土と地中ケーブル14の縁切りを行い、トラフ12内を通る地中ケーブル14を撤去する。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施形態の縁切り装置100は、ヘッド110、中空管120および打撃ユニット130を備える。ヘッド110は、地中ケーブル14を挿通する円筒部112、および円筒部112と打撃ユニット130を連結する連結部114を有する。
【0018】
打撃ユニット130は、ヘッド110に推進方向の打撃を加える。打撃ユニット130には中空管120が連結されていて、中空管120には、かかる中空管120にエアを供給するエアコンプレッサ150が連結されている。中空管120に供給されたエアは、駆動力として打撃ユニット130に供給される。中空管120は耐圧ホースのように可撓性があるものでもよいし、塩ビ管のように弾性があるものや、単管パイプのように剛性のあるものであってもよい。ただし自走するために重量が軽い物が望ましい。
【0019】
図2は、本実施形態の地中ケーブル撤去工法(以下、撤去工法と称する)を説明する図である。本実施形態の撤去工法では、図2(a)に示すように円筒部112に地中ケーブル14を挿通する。そして、打撃ユニット130からの推進力によってヘッド110が自走する。
【0020】
上記構成によれば、ヘッド110の円筒部112によって、トラフ12内の埋設材18と地中ケーブル14とが縁切りされる。ヘッド110がトラフ12内を自走するため、油圧の推進装置が必要なく、継ぎ足す推進管も必要ないことから、使用する機器を少なくすることができる。また牽引するためのワイヤをあらかじめトラフ12内に通線する必要がないため、作業が短時間で終了する。またワイヤが切れてしまうおそれもないため、特別な技術や経験がなくても簡単に作業することが可能である。
【0021】
そして、図2(b)に示すようにトラフ12内の埋設材18と地中ケーブル14とを縁切りしたら、地中ケーブル14をトラフ12から引き抜いて撤去する。
【0022】
図3は、本実施形態の縁切り装置100およびそれを用いた撤去工法の詳細を説明する図である。図3(a)に示すように、本実施形態の縁切り装置100では、打撃ユニット130のケーシング138の内部には、ピストン132およびチゼル134が内蔵されている。そして、エアコンプレッサ150(図1参照)からのエアによって打撃ユニット130のピストン132が前進する。
【0023】
すると、図3(b)に示すように、ピストン132がチゼル134を打撃し、連結部114ひいてはヘッド110が前進する。これにより、上述したようにヘッド110の円筒部112によって地中ケーブル14と埋設材18とが縁切りされる。このとき、チゼル134の周囲に巻き回されたバネ136は、連結部114側に向かって押し込まれる。
【0024】
その後、図3(c)に示すように、バネ136がピストン132に向かって広がることにより、打撃ユニット130のケーシング138が前進すると共に、チゼル134がピストン132に向かって後退する。そして、チゼル134によってピストン132が押し戻される。そして、本実施形態の打撃ユニット130では、押し戻されたピストン132を、エアコンプレッサ150からのエアによって前進させることを繰り返し、連結部114ひいてはヘッド110に繰り返し打撃力を加える。これにより、ヘッド110はトラフ12内を徐々に推進していくこととなる。したがって、ヘッド110はトラフ12内を自走して、トラフ12内の埋設材18である土と地中ケーブル14とを縁切りする作業を効率的に行うことが可能となる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、トラフ内を通る地中ケーブルを撤去するためにトラフ内の土と地中ケーブルの縁切りを行う地中ケーブル縁切り装置、およびそれを用いた地中ケーブル撤去工法に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…作業現場、12…トラフ、14…地中ケーブル、16…蓋、18…埋設材、100…縁切り装置、110…ヘッド、112…円筒部、114…連結部、120…中空管、130…打撃ユニット、132…ピストン、134…チゼル、136…バネ、150…エアコンプレッサ
図1
図2
図3