(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】装飾品及びその作成方法
(51)【国際特許分類】
A47G 7/02 20060101AFI20240612BHJP
A44C 27/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A47G7/02 J
A44C27/00
(21)【出願番号】P 2018208086
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518392222
【氏名又は名称】KieKa合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【氏名又は名称】山本 晃司
(72)【発明者】
【氏名】舘 美奈子
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】関口 哲生
【審判官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-145510(JP,A)
【文献】実開昭55-47367(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0066533(KR,A)
【文献】特開昭57-110500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G1/00
A47G7/02
A44C27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースの表面に配置される装飾素材と、前記ベースの表面に設けられて前記装飾素材を前記ベースに固定する樹脂層とを含み、
前記装飾素材として、一部が前記樹脂層に埋め込まれ、残部が前記樹脂層外に露出する露出型の装飾物が設けられ、前記樹脂層は前記装飾素材の固定位置外にも広がるように設けられ、
前記露出型の装飾物は、植物の草、花及び枝の少なくともいずれか一つを表すものであって、前記樹脂層に埋め込まれる部分から前記ベースに沿って離れて延びるように配置されて外観上の特徴部分が前記樹脂層外へ露出する植物の装飾物を含んでいる装飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース上に各種の装飾素材を固定した装飾品等に関する。
【背景技術】
【0002】
造花、押し花、宝飾品といった各種の装飾素材を飾るための装飾品として、金属板、アクリル板等のベース上に装飾素材を配置し、その装飾素材上に樹脂を流し込んで装飾素材を樹脂内に埋め込むようにした装飾品が従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。ベースの表面に接着剤を介して各種の装飾素材を接着することにより、装飾素材をベースの表面から突出するように固定する装飾品も提案されている(例えば特許文献2参照)。ベースの表面に熱硬化性樹脂をコーディングして接着層を形成し、その接着層上にガラス玉等の装飾素材と粉粒状の樹脂との混合物を散布し、余分な混合物を払い落とした上で混合物に熱を加えて接着層と混合物とを一体化することにより装飾素材をベースに固定する装飾品も提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-110500号公報
【文献】特開2003-182293号公報
【文献】特開平5-201199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された手法のように装飾素材を樹脂内に埋め込むと、装飾素材の立体感や素材感が損なわれるおそれがある。特許文献2に開示された手法のように、装飾素材とベースとの間に個別に接着層を介在させて装飾素材を固定する場合には、装飾素材の立体感等を活かし得るものの、多数の素材を個別に接着する作業が必要であって、作成に相応の手間を要する。適量を超える接着剤を塗布すると、装飾素材からの接着剤のはみ出しが生じて装飾品の美感が損なわれる、といった不都合が生じるおそれもある。特許文献3に開示された手法は装飾素材と粉粒状の樹脂との混合物を用いることが前提であり、適用できる装飾素材が限られる。
【0005】
そこで、本発明は各種の装飾素材の立体感や素材感を活かして美感を高めることが可能であって、かつ作成に要する作業負担の軽減を図ることが可能な装飾品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る装飾品(1)は、ベース(2)と、前記ベースの表面(2a)に配置される装飾素材(3)と、前記ベースの表面に設けられて前記装飾素材を前記ベースに固定する樹脂層(4)とを含み、前記装飾素材として、一部が前記樹脂層に埋め込まれ、残部が前記樹脂層外に露出する装飾物(3A、3B、3C、3G、3H)が設けられ、前記樹脂層は前記装飾素材の固定位置外にも広がるように設けられたものである。
【0007】
上記態様の装飾品によれば、樹脂層から露出するように装飾物を設けることにより、その装飾物の立体感や素材感を活かすことができる。樹脂層を装飾素材の固定位置に限らず、その固定位置外まで広がるように設けることにより、樹脂層の光沢感等の風合いを装飾性、あるいは意匠性を高める手段として利用することができる。これらの相乗効果により装飾品の美感を高めることができる。樹脂層を装飾品の装飾性や意匠性を高める手段として利用することにより、装飾素材に合わせて適量の樹脂を塗るといった手間のかかる作業を不要とし、それにより装飾品の作成に要する作業負担の軽減を図ることも可能である。
【0008】
上記態様の装飾品においては、前記装飾素材として、前記樹脂層に全体が埋め込まれる装飾物(3D、3E、3F)がさらに設けられてもよい。これによれば、樹脂層から露出する装飾物と樹脂層に全体が埋め込まれた装飾物とを適宜に織り交ぜて配置することにより装飾品の美感をさらに高めることができる。
【0009】
前記樹脂層は、前記ベースの表面の外縁(2b)まで広がるように設けられてもよい。これによれば、ベースの表面の全体に樹脂層を広げることにより、ベースの表面に選択的に樹脂層を形成する作業を不要とし、装飾品をより少ない工数で効率的に作成することが可能である。
【0010】
前記ベース及び前記樹脂層のそれぞれは、可視光に対する透過性を有していてもよい。これによれば、装飾素材が浮き上がるかのごとき外観を装飾品に与えることが可能である。
【0011】
本発明の一態様に係る装飾品(1)の作成方法は、ベース(2)の周囲を遮蔽物(10)で取り囲む手順と、前記ベースの表面に装飾素材(3)を配置する手順と、前記遮蔽物で取り囲まれ、かつ前記装飾素材が配置されたベースの表面に樹脂(12)を流し込んで樹脂層(4)を形成する手順と、前記樹脂層の硬化後に前記遮蔽物を除去する手順と、を含み、前記樹脂層を形成する手順では、前記装飾素材として、一部が前記樹脂層に埋め込まれ、残部が前記樹脂層外に露出する露出型の装飾物(3A、3B、3C、3G、3H)が生じるように前記樹脂の流し込み量を設定し、かつ、前記樹脂層が前記装飾素材の固定位置外にも広がるように前記樹脂層の範囲を設定するものである。
【0012】
上記態様の作成方法によれば、各手順を実施することにより、上述した態様の装飾品を作成することができる。ベースの表面に対して樹脂を流し込むことにより樹脂層を形成して装飾素材を固定しているので、装飾素材の固定位置に適量の樹脂を塗る場合と比較して、脂層を容易かつ効率よく形成することができる。それにより、装飾品の作成に要する手間を軽減することが可能である。
【0013】
上記態様の作成方法において、前記樹脂層を形成する手順では、前記樹脂層が前記ベースの表面の外縁(2b)まで広がるように前記樹脂層の範囲を設定してもよい。これによれば、ベースの表面の概ね全体に樹脂を流し込んで樹脂層を形成することができる。したがって、ベースの表面に選択的に樹脂層を形成する作業を不要とし、装飾品をより少ない工数で効率的に作成することが可能である。
【0014】
前記樹脂層を形成する手順では、前記樹脂の流し込みに先行して前記ベースの表面の外縁と前記遮蔽物との境界領域に樹脂を塗布してもよい。これによれば、ベースの外縁及びこれを取り囲む遮蔽物に樹脂を馴染ませてから樹脂を流し込んで樹脂層を形成することができる。そのため、ベースの外縁近傍における樹脂層の意図しない厚さ等のバラツキの発生を抑え、装飾品の美感の維持向上を図ることができる。
【0015】
前記遮蔽物を除去する手順の後、前記ベースの前記外縁から当該外縁に連なる側面(2d)にかけての領域を研磨する手順をさらに実施してもよい。遮蔽物との境界付近で樹脂層が比較的鋭利な角を形成し、あるいはベースの側面に樹脂が漏れて硬化しても、それらの領域を研磨することによりベースの外縁近傍の樹脂層の外観を整えて装飾品の美感をさらに高めることができる。
【0016】
前記装飾素材として、前記露出型の装飾物を含む複数の装飾物(3A~3H)を用意し、前記樹脂層を形成する手順では、前記樹脂を複数回に分けて流し込み、前記装飾素材を配置する手順では、少なくとも一回の樹脂の流し込みを間に挟むようにして、前記装飾物を複数回に分けて配置してもよい。これによれば、先行して配置される装飾物を樹脂層内に十分かつ確実に埋め込んで位置ずれを抑えつつ、後に配置される装飾物に関しては樹脂層4に適度に固定しつつその一部を樹脂層外に確実に露出させることができる。樹脂の流し込みを間に挟んで装飾物を分けて配置すれば、樹脂層内における装飾物に高低差を生じさせ、それにより樹脂層内における装飾素材の奥行き感を高めて装飾品の美感をさらに向上させることも可能である。
【0017】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】
図1の装飾品の作成手順の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の一形態を説明する。
図1及び
図2に示すように、一形態に係る装飾品1は、ベース2と、そのベース2の表面2a(
図2参照)上に配置される装飾素材3としての複数の装飾物3A、3B、…3Hと、ベース2の表面2aに設けられて装飾素材3をベース2に固定する樹脂層4とを含んでいる。
【0020】
ベース2は、装飾素材3を固定し、かつ装飾品1の基礎構造となるべき部材である。一例として可視光を透過させる透明なアクリル板がベース2として用いられる。ベース2は平板状に限らず、装飾素材3を固定するに足りる表面を有する限りにおいて、ブロック状、棒状、その他各種の形状に形成されてよい。ベース2の素材もアクリルに限らず、ガラス、木材、石材その他の各種の素材が選択されてよい。ベース2の素材は透過性を有するものに限定されない。ベース2を透過性の材料にて構成する場合でも、その透明度は適宜に選択されてよい。色味を帯びた透過性の材料にてベース2が構成されてもよい。
【0021】
装飾素材3は、装飾品1に装飾性、あるいは意匠性を与える素材として用いられる。装飾素材3としては、アートフラワー等の造花、ガラス、金属等を素材とする工芸品、宝飾類といったように人工的に作られた物品、プリザーブドフラワー、ドライフラワーといったように自然素材を加工して作られた物品、貝殻等の自然素材そのものといった各種の物品が適宜に選択されてよい。
【0022】
樹脂層4は、上述したように装飾素材3をベース2に固定する手段として機能するとともに、装飾品1の装飾性あるいは意匠性を高める手段としても機能するように設けられている。装飾素材3の固定に関して、樹脂層4は、樹脂層4内に全体が埋め込まれる埋込み型の装飾物と、一部が樹脂層4に埋め込まれ、残部が樹脂層4から露出する露出型の装飾物とが生じるようにその厚さが設定されている。図示例では、装飾物3D、3E、3Fが埋込み型の装飾物に該当し、装飾物3A、3B、3C、3G、3Hが露出型の装飾物に該当する。ただし、装飾素材3として埋込み型及び露出型の二種類の装飾物が設けられることは必ずしも必要ではない。本発明の目的を達成するためには、少なくとも露出型の装飾物が設けられていれば足りる。露出型の装飾物を設けることにより、例えば立体的な造花類を樹脂層4にて固定しつつ、その要部を樹脂層4から突出させてその立体感、素材感を十分に活かした装飾品1を得ることが可能である。例えば、装飾物3Aは植物の葉を、装飾物3Bは植物の花を、装飾物3Cは植物の枝をそれぞれ模したものであるが、それらの一部、例えば根元部分や茎部分を樹脂層4に埋込みつつ、葉や花、枝といった外観上の特徴的部分を樹脂層4から露出させることにより、装飾素材の立体感や素材感を十分に活かして装飾品1の美感を高めることができる。
【0023】
樹脂層4は、装飾素材3の固定位置に限らず、装飾素材3が存在しない範囲でもベース2の表面2aを覆うように設けられている。一例として、樹脂層4はベース2の表面2aを全面的に覆うように、換言すればベース2の表面2aの外縁2bまで広がるように設けられている。ただし、樹脂層4は必ずしもベース2の表面2aを全面的に覆うように設けられることを要しない。装飾素材3の固定位置外にまで樹脂層4が広げられている限りにおいて、ベース2の表面2aの一部に、樹脂層4で覆われない領域が存在してもよい。つまり、ベース2の表面2aが部分的に露出していてもよい。
図2では樹脂層4の表面4aを平坦に描いているが、樹脂層4の表面4aの少なくとも一部に凹凸が付されてもよい。装飾素材3の固定位置外まで樹脂層4を広げることにより、樹脂層4それ自体を装飾品1の装飾性、あるいは意匠性を高める手段として利用することができる。例えば、樹脂層4が持つ光沢感等の素材感を装飾性、意匠性を高める手段として利用することができる。個々の装飾物3A~3Hを樹脂によって個別に接着する手間をかける必要がなく、かつ装飾素材3の背後に樹脂層4が隠れるように樹脂の使用量を管理するといった手間をかける必要もない。したがって、装飾品1を作成するために要する作業負担の軽減を図ることができる。
【0024】
樹脂層4は、ベース2と同様に可視光に対して透過性を有している。つまり、樹脂層4はその硬化後も可視光に対する透過性を維持する樹脂材料にて形成されている。樹脂層4に透過性を与えることにより、ベース2の透過性を損なうことなく、装飾品1の表面の風合い等を樹脂層4によってベース2の表面2aが持つ風合いから変化させ、樹脂材料の風合い、例えば光沢感、透明感を装飾品1に付加してその装飾性、意匠性を高めることができる。ただし、樹脂層4も透過性を有する例に限定されない。樹脂層4は不透明であってもよい。樹脂層4に透過性を与える場合でも、その透明度は適宜に選択されてよい。色味を有する透過性の樹脂が樹脂層4に用いられてもよい。
【0025】
次に、
図3~
図7を参照して装飾品1の作成方法の一例を説明する。まず、作成の準備として、ベース2及び装飾素材3、並びに樹脂層4を形成するための樹脂材料を用意する。樹脂材料が硬化剤を必要とするものであれば、事前に硬化剤を適宜の割合で配合することを要する。樹脂材料の硬化に要する時間は、全ての装飾物3A~3Hを配置して適量の樹脂を流し終える前に硬化が完了しない範囲で適宜に設定すればよい。一例として、半日~数日で硬化が完了するように硬化時間が設定されてよい。
【0026】
準備が整ったら、
図3に示すようにベース2を裏返し、遮蔽物の一例としてのマスキングテープ10をベース2の裏面2cの外周部の全周に貼り付ける。次に、
図4に示すように、ベース2を表側に戻し、先に貼り付けたマスキングテープ10を折り返してベース2の周囲をマスキングテープ10で取り囲む。つまり、ベース2の表面2aの外側にマスキングテープ10による囲み壁10aを形成する。なお、ベース2の表面2a及び裏面2cに保護シート11が貼られている場合、裏面2cの保護シート11はマスキングテープ10の貼り付け作業(
図3)に剥がし、表面2aの保護シート11はマスキングテープ10の折り返し時に剥がせばよい。
【0027】
続いて、
図5に示すように、ベース2の表面2aの外縁2bとマスキングテープ10の囲み壁10aとの境界領域、すなわち表面2aの外周部の全周に樹脂12を塗布し、塗られた樹脂12がベース2の表面2aに適度に馴染むまで待機する。その待機時間を利用して装飾素材3の配置を検討してもよい。ここで塗られた樹脂12は樹脂層4の一部を形成するものである。表面2aの外周部に先行して樹脂12を塗ることにより、ベース2の外縁2bの近傍における樹脂層4の意図しない厚さ等のバラツキの発生を抑え、装飾品1の美感の維持向上を図ることができる。
【0028】
待機が終了したら、
図6に示すように、ベース2の表面2aに装飾素材3の一部、つまり一部の装飾物を配置する。この段階で配置されるべき装飾素材としては、樹脂層4に全体が埋め込まれるべき埋込み型の装飾物3D、3E、3Fが少なくとも選択される。また、露出型の装飾物であっても、その多くが樹脂層4内に埋め込まれるべき装飾物3Cもこの段階で配置されてよい。装飾素材3の一部の配置を終えたら、樹脂12をベース2の表面2aに流し込む。このときの樹脂量は樹脂層4を形成するに必要な量の一部に制限される。ただし、既に配置されている埋込み型の装飾物3D、3E、3Fが樹脂12に完全に埋まる程度の量の樹脂12を流し込む必要はない。この段階では、装飾物3D、3E、3Fの一部が樹脂12から露出していてもよい。
【0029】
一部の樹脂12の流し込みが完了した後、
図7に示すように装飾素材3の残部、図示例では、装飾物3A、3B、3G、3Hをベース2に流し込まれた樹脂12上に配置する。その後、残りの樹脂12をベース2の表面2aに流し込む。このときの樹脂量は、埋込み型の装飾物3D、3E、3Fの全体が樹脂12に埋まり、かつ露出型の装飾物3A、3B、3G、3Hの一部が樹脂12外に露出する範囲で調整される。これにより、上述した通りの厚さを有する樹脂層4を形成することができる。
【0030】
樹脂12の流し込みを完了した後、樹脂12の硬化を待ち、その硬化後にマスキングテープ10を剥がす。この時点では、ベース2の表面2aの外縁2bにおいて、樹脂層4が比較的鋭利な角を有し、あるいはベース2の側面2dに樹脂12がいくら漏れて硬化している場合がある。そのため、マスキングテープ10の除去後、ベース2の外縁2bから外縁2bに連なる側面2d(
図1参照)にかけての領域に対して、コンパウンド等の研磨剤にて研磨仕上げを施す。これにより、ベース2の外縁2bの近傍の外観を整えて装飾品1の美感をさらに高めることが可能である。なお、図示例では遮蔽物としてマスキングテープ10を用いたが、ベース2の表面2aから側面2dへの樹脂の漏れ出しを防ぎ得る限り、遮蔽物は適宜に変更されてよい。例えば型枠のような剛体、ゴム板のような弾性体等が遮蔽物として適宜に用いられてよい。
【0031】
以上の作成方法によれば、
図1に示した装飾品1を比較的少ない工数で作成することができる。すなわち、ベース2の周囲をマスキングテープ10で取り囲み、表面2aの外周部に樹脂12を塗布し、装飾素材3の配置と、樹脂12の流し込みとを二回に分けて施した後、マスキングテープ10の除去と研磨仕上げといった作業を行うだけで装飾品1を完成させることができる。樹脂層4を装飾素材3の固定手段として用いるだけでなく、装飾素材3の固定位置外でベース2の表面2aを覆って装飾品1に光沢感等の風合いを与える手段としても利用しているので、個々の装飾物3A~3Hと位置を合わせて樹脂12を塗布するような手間がかかる作業が不要であり、かつ樹脂12の装飾素材3からのはみ出しに留意しつつ作業を進める必要もない。
【0032】
上記の作成方法では、装飾素材3の配置、及び樹脂12の流し込みを二回に分けて行っているので、例えば先行して配置される装飾素材3に関して樹脂層4内に十分かつ確実に埋め込んで位置ずれを抑えつつ、後に配置される装飾素材3に関しては樹脂層4に適度に固定しつつその一部を樹脂層4外に確実に露出させることができる。しかも、樹脂層4内における各種の装飾素材3に高低差を生じさせることが可能である。それにより、樹脂層4内における装飾素材3の奥行き感を高めるといった作用効果も得られる。なお、装飾素材3の配置及び樹脂12の流し込みを複数回に分けて実施する場合、それらの実施回数は二回に限らず、三回以上に分けて実施されてもよい。樹脂12を複数回に分けて流し込む場合、少なくとも一回の樹脂12の流し込みを間に挟むようにして装飾物を複数回に分けて配置すればよい。一方、装飾素材3の配置と樹脂12の流し込みとをそれぞれ一回ずつ実施して装飾品1を作成してもよい。この場合は、最も少ない工数で装飾品1を作成することが可能である。
【0033】
以上のように作成された装飾品1は、例えば壁に掛け、あるいは適当な台座を用意して立て掛けるといった手法により装飾の用途に用いることが可能である。ただし、本発明の装飾品はそのような用途に限定されるものではない。自立性を有する置物として装飾品が構成されてもよい。ベースの選択に応じて装飾品を適宜の用途に向けることが可能である。例えば、ドア、窓等の建具の一部をベースとして用いることにより、本発明の装飾品を建築物の装飾用途に適応させてもよい。店舗、イベント会場等の看板、ディスプレイの用途に本発明の装飾品を用いてもよい。表札、フォトフレーム、ネームプレート、携帯電話、携帯ゲーム機等の機器類のカバー、傘、杖といった各種の用具、道具、器具、装置の少なくとも一部をベースとして用いることにより、それらの用具の装飾に本発明の装飾品を適応させることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 装飾品
2 ベース
2a ベースの表面
2b ベースの表面の外縁
2d ベースの側面
3 装飾素材
3A、3B、3C、3G、3H 露出型の装飾物
3D、3E、3F 埋込み型の装飾物
4 樹脂層
10 マスキングテープ(遮蔽物)
12 樹脂