(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】時計の同期システム及び同期方法
(51)【国際特許分類】
G04G 7/00 20060101AFI20240612BHJP
G04G 5/00 20130101ALI20240612BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20240612BHJP
G06F 1/12 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G04G7/00
G04G5/00 J
H04L7/00 990
G06F1/12
(21)【出願番号】P 2020073166
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志賀 信泰
(72)【発明者】
【氏名】安田 哲
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-231310(JP,A)
【文献】特開2011-200100(JP,A)
【文献】特開2017-143429(JP,A)
【文献】特開2003-242278(JP,A)
【文献】特開2002-229869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 7/00
G04G 5/00-5/04
H04L 7/00-7/10
G06F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムであって、
マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定手段と、
算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正手段と
を備え、
サーバ装置にて受信した証明情報が、サーバ装置にて生成され、送信された証明情報に対応するものである場合に、時刻ずれ算定手段及び/又は時刻補正手段を実行するものであり、
証明情報が、スレーブ装置の時刻をマスター装置の時刻に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期システム。
【請求項2】
スレーブ装置が、
サーバ装置へ
証明情報の送信要求を送信する送信要求手段と、
サーバ装置から
証明情報を受信すると、マスター装置へ受信した
証明情報を送信する第二所定情報送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
スレーブ装置から
証明情報の送信要求を受信すると、スレーブ装置へ
証明情報を送信する第一所定情報送信手段と、
マスター装置から
証明情報を受信すると、マスター装置から受信した
証明情報が、スレーブ装置へ送信した
証明情報に対応するものであるか否かを判定する所定情報判定手段と
を備え、
マスター装置が、
スレーブ装置から
証明情報を受信すると、サーバ装置へ
証明情報を送信する第三所定情報送信手段と
を備え、
マスター装置から受信した
証明情報が、スレーブ装置へ送信した
証明情報に対応するものであると判定された場合に、時刻ずれ算定手段及び/又は時刻補正手段を実行する、請求項1に記載の同期システム。
【請求項3】
スレーブ装置が、
マスター装置へ情報又は信号を送信する第一情報送信手段と
を備え、
マスター装置が、
スレーブ装置へ情報又は信号を送信する第二情報送信手段と
を備え、
時刻ずれ算定手段が、
マスター装置からスレーブ装置へ情報又は信号を送信した時刻、スレーブ装置からマスター装置へ情報又は信号を送信した時刻、マスター装置から送信されスレーブ装置が受信して刻時した時刻、さらに、スレーブ装置から送信されマスター装置が受信して刻時した時刻をもとに、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する、請求項1又は2に記載の同期システム。
【請求項4】
時刻ずれ算定手段が、
マスター装置からスレーブ装置へ情報又は信号を送信した時刻をT
Mと定義し、スレーブ装置からマスター装置へ情報又は信号を送信した時刻をT
Sと定義し、マスター装置から情報又は信号が送信されスレーブ装置が受信して刻時した時刻をT
MSと定義し、さらに、スレーブ装置から情報又は信号が送信されマスター装置が受信して刻時した時刻をT
SMと定義した場合に、1/2×((T
SM-T
S)-(T
MS-T
M))を算定することで、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する、請求項3に記載の同期システム。
【請求項5】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムであって、
マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定手段と、
算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正手段と
を備え、
サーバ装置が
証明情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定手段及び/又は位相補正手段を実行する
ものであり、
証明情報が、スレーブ装置の位相をマスター装置の位相に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期システム。
【請求項6】
サーバ装置にて受信した証明情報が、サーバ装置にて生成され、送信された証明情報に対応するものである場合に、位相ずれ算定手段及び/又は位相補正手段を実行する、請求項5に記載の同期システム。
【請求項7】
スレーブ装置が、
サーバ装置へ
証明情報の送信要求を送信する送信要求手段と、
サーバ装置から
証明情報を受信すると、マスター装置へ受信した
証明情報を送信する第二所定情報送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
スレーブ装置から
証明情報の送信要求を受信すると、スレーブ装置へ
証明情報を送信する第一所定情報送信手段と、
マスター装置から
証明情報を受信すると、マスター装置から受信した
証明情報が、スレーブ装置へ送信した
証明情報に対応するものであるか否かを判定する所定情報判定手段と
を備え、
マスター装置が、
スレーブ装置から
証明情報を受信すると、サーバ装置へ
証明情報を送信する第三所定情報送信手段と
を備え、
マスター装置から受信した
証明情報が、スレーブ装置へ送信した
証明情報に対応するものであると判定された場合に、位相ずれ算定手段及び/又は位相補正手段を実行する、請求項5に記載の同期システム。
【請求項8】
スレーブ装置が、
マスター装置へ情報又は信号を送信する第一情報送信手段と
を備え、
マスター装置が、
スレーブ装置へ情報又は信号を送信する第二情報送信手段と
を備え、
位相ずれ算定手段が、
マスター装置からスレーブ装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、スレーブ装置において該情報又は該信号の受信した時にスレーブ装置の時計の発振器により発振される信号の位相との位相差、及び、スレーブ装置からマスター装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、マスター装置において該情報又は該信号の受信した時にマスター装置の時計の発振器により発振される信号の位相との位相差をもとに、位相ずれを算定する、請求項
5~7のいずれかに記載の同期システム。
【請求項9】
位相ずれ算定手段が、
マスター装置からスレーブ装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、スレーブ装置における該情報又は該信号の受信時に時計の発振器により発振される信号の位相との位相差をΔΦ
Sと定義し、スレーブ装置からマスター装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、マスター装置における該情報又は該信号の受信時に時計の発振器により発振される信号の位相との位相差をΔΦ
Mと定義した場合に、ΔΦ
P=1/2×(ΔΦ
S-ΔΦ
M)を算定することで、マスター装置とスレーブ装置間の位相ずれを算定する、請求項
8に記載の同期システム。
【請求項10】
証明情報の生成、送信及び/若しくは受
信、時刻の補正、位相ずれの算定、又は、位相の補正に応じて、スレーブ装置の所有者又は利用者に対して課金を実行する課金手段と
を備える、請求項1~
9のいずれかに記載の同期システム。
【請求項11】
課金手段による課金額に応じて、時刻補正手段若しくは位相補正手段を実行する頻度、時刻ずれ算定手段若しくは位相ずれ算定手段の算定の基となるマスター装置の時計の精度、マスター装置とスレーブ装置の距離、又は、マスター装置、スレーブ装置及び/若しくはサーバ装置の応答速度、を制御する制御手段と
を備える、請求項1~
10のいずれかに記載の同期システム。
【請求項12】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、
マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定ステップと、
算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正ステップと
を有し、
サーバ装置にて受信した証明情報が、サーバ装置にて生成され、送信された証明情報に対応するものである場合に、時刻ずれ算定ステップ及び/又は時刻補正ステップを実行するものであり、
証明情報が、スレーブ装置の時刻をマスター装置の時刻に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期方法。
【請求項13】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、
マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定ステップと、
算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正ステップと
を有し、
サーバ装置が
証明情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定ステップ及び/又は位相補正ステップを実行する
ものであり、
証明情報が、スレーブ装置の位相をマスター装置の位相に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期方法。
【請求項14】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムであって、
マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定手段と、
算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正手段と
を備え、
マスター装置
にて受信した証明情報が、マスター装置にて生成され、送信された証明情報に対応するものである場合に、時刻ずれ算定手段及び/又は時刻補正手段を実行するものであり、
証明情報が、スレーブ装置の時刻をマスター装置の時刻に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期システム。
【請求項15】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムであって、
マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定手段と、
算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正手段と
を備え、
マスター装置が
証明情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定手段及び/又は位相補正手段を実行する
ものであり、
証明情報が、スレーブ装置の位相をマスター装置の位相に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期システム。
【請求項16】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、
マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定ステップと、
算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正ステップと
を
有し、
マスター装置
にて受信した証明情報が、マスター装置にて生成され、送信された証明情報に対応するものである場合に、時刻ずれ算定ステップ及び/又は時刻補正ステップを実行するものであり、
証明情報が、スレーブ装置の時刻をマスター装置の時刻に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期方法。
【請求項17】
マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、
マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定ステップと、
算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正ステップと
を
有し、
マスター装置が
証明情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定ステップ及び/又は位相補正ステップを実行する
ものであり、
証明情報が、スレーブ装置の位相をマスター装置の位相に同期する処理の実行を可能とするための情報である、同期方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の同期システム及び同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計の同期を行う方法として、地上の2局であるマスターノードとスレーブノードの双方向で無線通信を行って、マスターノードとスレーブノード間のデータ通信による往復分の伝搬遅延時間から、マスターノードの時計とスレーブノードの時計との時刻差を求め、その時刻差からスレーブノードの時刻補正を行うことが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、近年、IoT機器の普及によりセンサの出荷数が年々増加しているが、今後、自動運転車が導入されると、国内外で利用されるセンサの数がさらに増えていくと予想される。自動運転車で利用されるセンサ等では、正確なタイミングで必要な情報をセンシングする必要があるため、より精密な計時機能を有することが求められる。そのためセンサに搭載される時計について、高精度なマスタークロックと同期し、精密な計時機能を維持することが求められ、さらには、同期の実行管理が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、各種装置に搭載される時計の同期システムにおいて、同期の実行を管理することを可能とする、同期システム及び同期方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[16]のいずれかにより、上記課題を解決するものである。
[1]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムであって、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定手段と、算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正手段とを備え、サーバ装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、時刻ずれ算定手段及び/又は時刻補正手段を実行する、同期システム;
[2]スレーブ装置が、サーバ装置へ所定の情報の送信要求を送信する送信要求手段と、サーバ装置から所定の情報を受信すると、マスター装置へ受信した所定の情報を送信する第二所定情報送信手段とを備え、サーバ装置が、スレーブ装置から所定の情報の送信要求を受信すると、スレーブ装置へ所定の情報を送信する第一所定情報送信手段と、マスター装置から所定の情報を受信すると、マスター装置から受信した所定の情報が、スレーブ装置へ送信した所定の情報に対応するものであるか否かを判定する所定情報判定手段とを備え、マスター装置が、スレーブ装置から所定の情報を受信すると、サーバ装置へ所定の情報を送信する第三所定情報送信手段とを備え、マスター装置から受信した所定の情報が、スレーブ装置へ送信した所定の情報に対応するものであると判定された場合に、時刻ずれ算定手段及び/又は時刻補正手段を実行する、[1]に記載の同期システム;
[3]スレーブ装置が、マスター装置へ情報又は信号を送信する第一情報送信手段とを備え、マスター装置が、スレーブ装置へ情報又は信号を送信する第二情報送信手段とを備え、時刻ずれ算定手段が、マスター装置からスレーブ装置へ情報又は信号を送信した時刻、スレーブ装置からマスター装置へ情報又は信号を送信した時刻、マスター装置から送信されスレーブ装置が受信して刻時した時刻、さらに、スレーブ装置から送信されマスター装置が受信して刻時した時刻をもとに、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する、[1]又は[2]に記載の同期システム;
[4]時刻ずれ算定手段が、マスター装置からスレーブ装置へ情報又は信号を送信した時刻をTMと定義し、スレーブ装置からマスター装置へ情報又は信号を送信した時刻をTSと定義し、マスター装置から情報又は信号が送信されスレーブ装置が受信して刻時した時刻をTMSと定義し、さらに、スレーブ装置から情報又は信号が送信されマスター装置が受信して刻時した時刻をTSMと定義した場合に、1/2×((TSM-TS)-(TMS-TM))を算定することで、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する、[3]に記載の同期システム;
[5]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムであって、マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定手段と、算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正手段とを備え、サーバ装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定手段及び/又は位相補正手段を実行する、同期システム;
[6]スレーブ装置が、サーバ装置へ所定の情報の送信要求を送信する送信要求手段と、サーバ装置から所定の情報を受信すると、マスター装置へ受信した所定の情報を送信する第二所定情報送信手段とを備え、サーバ装置が、スレーブ装置から所定の情報の送信要求を受信すると、スレーブ装置へ所定の情報を送信する第一所定情報送信手段と、マスター装置から所定の情報を受信すると、マスター装置から受信した所定の情報が、スレーブ装置へ送信した所定の情報に対応するものであるか否かを判定する所定情報判定手段とを備え、マスター装置が、スレーブ装置から所定の情報を受信すると、サーバ装置へ所定の情報を送信する第三所定情報送信手段とを備え、マスター装置から受信した所定の情報が、スレーブ装置へ送信した所定の情報に対応するものであると判定された場合に、位相ずれ算定手段及び/又は位相補正手段を実行する、[5]に記載の同期システム;
[7]スレーブ装置が、マスター装置へ情報又は信号を送信する第一情報送信手段とを備え、マスター装置が、スレーブ装置へ情報又は信号を送信する第二情報送信手段とを備え、位相ずれ算定手段が、マスター装置からスレーブ装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、スレーブ装置において該情報又は該信号の受信した時にスレーブ装置の時計の発振器により発振される信号の位相との位相差、及び、スレーブ装置からマスター装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、マスター装置において該情報又は該信号の受信した時にマスター装置の時計の発振器により発振される信号の位相との位相差をもとに、位相ずれを算定する、[5]又は[6]に記載の同期システム;
[8]位相ずれ算定手段が、マスター装置からスレーブ装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、スレーブ装置における該情報又は該信号の受信時に時計の発振器により発振される信号の位相との位相差をΔΦSと定義し、スレーブ装置からマスター装置へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、マスター装置における該情報又は該信号の受信時に時計の発振器により発振される信号の位相との位相差をΔΦMと定義した場合に、ΔΦP=1/2×(ΔΦS-ΔΦM)を算定することで、マスター装置とスレーブ装置間の位相ずれを算定する、[7]に記載の同期システム;
[9]所定の情報の生成、送信及び/若しくは受信、時刻ずれの算定、時刻の補正、位相ずれの算定、又は、位相の補正に応じて、スレーブ装置の所有者又は利用者に対して課金を実行する課金手段とを備える、[1]~[8]のいずれかに記載の同期システム;
[10]課金手段による課金額に応じて、時刻補正手段若しくは位相補正手段を実行する頻度、時刻ずれ算定手段若しくは位相ずれ算定手段の算定の基となるマスター装置の時計の精度、マスター装置とスレーブ装置の距離、又は、マスター装置、スレーブ装置及び/若しくはサーバ装置の応答速度を制御する制御手段とを備える、[1]~[9]のいずれかに記載の同期システム;
[11]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定ステップと、算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正ステップとを有し、サーバ装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、時刻ずれ算定ステップ及び/又は時刻補正ステップを実行する、同期方法;
[12]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置と、マスター装置及び/又はスレーブ装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定ステップと、算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正ステップとを有し、サーバ装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定ステップ及び/又は位相補正ステップを実行する、同期方法;
[13]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムであって、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定手段と、算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正手段とを備え、マスター装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、時刻ずれ算定手段及び/又は時刻補正手段を実行する、同期システム;
[14]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムであって、マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定手段と、算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正手段とを備え、マスター装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定手段及び/又は位相補正手段を実行する、同期システム;
[15]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、マスター装置とスレーブ装置間の時刻のずれを算定する時刻ずれ算定ステップと、算定された時刻ずれに基づいて、スレーブ装置における時刻を補正する時刻補正ステップとを備え、マスター装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、時刻ずれ算定ステップ及び/又は時刻補正ステップを実行する、同期方法;
[16]マスター装置と、マスター装置と通信接続が可能なスレーブ装置とを備える、時計の同期システムにおいて実行される、時計の同期方法であって、マスター装置とスレーブ装置間の時計の位相のずれを算定する位相ずれ算定ステップと、算定された位相ずれに基づいて、スレーブ装置における位相を補正する位相補正ステップとを備え、マスター装置が所定の情報を生成した場合、送信した場合及び/又は受信した場合に、位相ずれ算定ステップ及び/又は位相補正ステップを実行する、同期方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各種装置に搭載される時計の同期システムにおいて、同期の実行を管理することを可能とする、同期システム及び同期方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる同期システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかるマスター装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかるサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態にかかる同期処理のフローチャートを示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態にかかる同期処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態にかかる同期システムの構成を示すブロック図である。図示するように、同期システムは、マスター装置1と、サーバ装置2と、スレーブ装置3とから構成されている。マスター装置1は、通信ネットワークを介してサーバ装置2及びスレーブ装置3と、それぞれ通信接続をすることが可能である。マスター装置1は、スレーブ装置3の時計を同期するための基準となる装置であり、複数のスレーブ装置3に対して、1つのマスター装置1がマスター装置として機能することもできる。なお、本発明の同期システムは、複数のマスター装置1から構成されていてもよい。
【0011】
さらに、あるマスター装置1に対してスレーブ装置3として機能するものであっても、他のスレーブ装置に対して、マスター装置として機能することもできる。ある1つのマスター装置1に対して複数のスレーブ装置3が存在し、これらの複数のスレーブ装置3のそれぞれが、複数の他のスレーブ装置に対してマスター装置として機能することで、ピラミッド状の関係が形成される。
【0012】
スレーブ装置3は、通信ネットワークを介してマスター装置1及びサーバ装置2と、それぞれ通信接続をすることが可能である。本同期システムでは、マスター装置1で刻時される時刻を基準に、スレーブ装置3の時刻が同期され、マスター装置1内の発振器により発生する信号の位相を基準に、スレーブ装置3内の発振器により発生する信号の位相が同期される。
【0013】
また、スレーブ装置3は、他のスレーブ装置に対してマスターとして機能することができ、スレーブ装置3で刻時される時刻を基準に、他のスレーブ装置の時刻が同期され、スレーブ装置3内の発振器により発生する信号の位相を基準に、他のスレーブ装置内の発振器により発生する信号の位相が同期される。このスレーブ装置3をマスターとして機能させる場合にも、本同期システムを適用することができる。
【0014】
本発明のマスター装置1について説明をする。
図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、マスター装置の構成を示す図である。マスター装置1は、制御部11、RFチップ12、発振器13、時計14及び位相検出器15を備えている。RFチップ12には、時計14及び位相検出器15が備えられている。マスター装置1が、例えば、センサ装置として機能するものである場合、制御部11、RFチップ12、発振器13、時計14及び位相検出器15以外に、必要に応じて、センサなどの他の要素を備えていてもよい。
【0015】
制御部11としては、特に限定されないが、例えば、マイコン(マイクロコントローラ)を使用することができる。制御部11では、プログラム及びデータをもとに、プログラム実行処理を行う。RFチップ12は、通信ネットワーク2を介して無線信号の受信及び送信の処理を行う。RFチップ12にて受信したデータは、制御部11にて演算処理の対象となる。
【0016】
発振器13は、所定の周波数で発振し、装置各部の動作タイミングを与えるための信号を出力する。発振器13としては、原子発振器や水晶発振器を用いることができる。時計14は、発振器13の出力信号を源振として刻時し、時刻を出力する。時計14で刻時された時刻は、制御部11により、RFチップ12を介してスレーブ装置3へ送信するよう制御される。位相検出器15では、スレーブ装置3から受信した情報を構成する搬送波の位相を検出し、マスター装置1における発振器13により発振される信号の位相を検出する。
【0017】
本発明のスレーブ装置3について説明をする。
図3は、本発明の実施の形態にかかるスレーブ装置の構成を示す図である。スレーブ装置3は、制御部31、RFチップ32、発振器33、時計34及び位相検出器35を備えている。RFチップ32には、時計34及び位相検出器35が備えられている。スレーブ装置3が、例えば、センサ装置として機能するものである場合、制御部31、RFチップ32、発振器33、時計34及び位相検出器35以外に、必要に応じて、センサなどの他の要素を備えていてもよい。
【0018】
制御部31としては、特に限定されないが、例えば、マイコンを使用することができる。制御部31では、プログラム及びデータをもとに、プログラム実行処理を行う。RFチップ32は、通信ネットワーク2を介して無線信号の受信及び送信の処理を行う。RFチップ32にて受信したデータは、制御部11にて演算処理の対象となる。
【0019】
発振器33は、所定の周波数で発振し、装置各部の動作タイミングを与えるための信号を出力する。発振器33としては、例えば、水晶発振器を用いることができる。時計34は、発振器33の出力信号を源振として刻時し、時刻を出力する。時計34で刻時された時刻は、制御部31により、RFチップ32を介してマスター装置1へ送信するよう制御される。位相検出器35では、マスター装置1から受信した情報を構成する搬送波の位相を検出し、スレーブ装置3の発振器33により発振される信号の位相を検出する。
【0020】
次に、本発明のサーバ装置について説明をする。
図4は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、サーバ装置の構成を示すブロック図である。サーバ装置2は、制御部21、RAM22、ストレージ部23及び通信インタフェース24を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。
【0021】
制御部21は、CPUやROMから構成され、ストレージ部23に格納されたプログラムを実行し、サーバ装置2の制御を行う。また、制御部21は時間を計時する内部タイマを備えている。RAM22は、制御部21のワークエリアである。ストレージ部23は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。制御部21は、プログラム及びデータをRAM22から読み出し、マスター装置1又はスレーブ装置3から受信した情報等をもとに、プログラム実行処理を行う。
【0022】
次に、本発明の実施の形態にかかる時計の同期処理について説明をする。
図5及び
図6は、本発明の実施の形態にかかる時計の同期処理のフローチャートを示す図である。1つの同期処理のフローチャートを、
図5及び
図6に分けて表している。フローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
【0023】
スレーブ装置3の同期処理は、定期的に実行することができる。例えば、1日1回、予め設定された所定の時間になると、ステップS1~S38の同期処理が開始されるような設定とすることができる。
【0024】
まず、マスター装置1から、マスター装置1を識別することができる識別情報を、スレーブ装置3へ送信する(ステップS1)。マスター装置1のそれぞれには、マスター装置1を一意に特定することができる識別番号等の識別情報が予め登録されている。マスター装置1では、ステップS1にて情報を送信した時刻を刻時し、送信時の位相を計測する(ステップS2)。そして、刻時した時刻と、計測した位相を、制御部11内のメモリに記憶する(ステップS3)。
【0025】
次に、スレーブ装置3にて、マスター装置1の識別情報を受信する(ステップS4)。マスター装置1では、ステップS4にて識別情報を受信した時刻を刻時し、送信時の位相を計測する(ステップS5)。そして、刻時した時刻と、計測した位相を、制御部31内のメモリに記憶する(ステップS6)。
【0026】
スレーブ装置3では、ステップS4にて受信したマスター装置1の識別情報をもとに、スレーブ装置3の同期の対象となるマスター装置1であるか否かを判定する(ステップS7)。スレーブ装置3の同期の対象となるマスター装置1でないと判定された場合(ステップS7にてNo)、処理は終了する。
【0027】
スレーブ装置3の同期の対象となるマスター装置1であると判定された場合(ステップS7にてYes)、スレーブ装置3は、サーバ装置2へ所定の情報の送信要求を送信する(ステップS8)。ここで、所定の情報とは、例えば、本発明の同期システムを利用して、スレーブ装置3の時計を同期していることを証明するための情報である。以下、所定の情報を証明情報という。
【0028】
次に、サーバ装置2が、スレーブ装置3から証明情報の送信要求を受信する(ステップS9)と、サーバ装置2の制御部21にて証明情報が生成される(ステップS10)。生成される証明情報は、改竄不能なものとすることができる。
【0029】
生成した証明情報は、サーバ装置2からスレーブ装置3へ送信される(ステップS11)。証明情報としては、例えば、ランダムに生成される文字列を利用することができる。ステップS11にて送信される情報には、証明情報の他、スレーブ装置3を識別できる識別情報、又は、該スレーブ装置3の同期の基準となるマスター装置1を識別できる識別情報などの他の情報を含めることができる。また、ステップS11にて、証明情報及びその他情報を暗号化した情報を送信してもよい。証明情報を含む暗号化された情報は、マスター装置1やサーバ装置2にて復号化され、利用される。
【0030】
本発明の同期システムの運営者は、スレーブ装置3の同期処理を実行したことの対価として、スレーブ装置3の所有者又は利用者に対して課金をすることができる。ステップS11にて、サーバ装置2からスレーブ装置3へ証明情報が送信されると、サーバ装置2にて課金を実行するための処理が行われる(ステップS12)。例えば、スレーブ装置3にて同期処理を実行した回数に応じて、課金額を算定する場合は、ステップS12において、サーバ装置2からスレーブ装置3へ証明情報を送信した回数をカウントし、ストレージ部23にてカウントした回数を記憶しておくことで、課金を実行することが可能となる。課金は、スレーブ装置3の所有者又は利用者に対して、毎月1回など所定の期間ごとにまとめて課金することも可能であり、同期するごとに課金することも可能である。
【0031】
なお、本実施の形態では、サーバ装置2からスレーブ装置3へ証明情報が送信された回数に応じて課金を実行することとしたが、サーバ装置2での証明情報の生成、マスター装置1及び/若しくはスレーブ装置3での証明情報の受信、マスター装置1とスレーブ装置3との間の時刻ずれの算定若しくは位相ずれの算定、又は、スレーブ装置3の時刻の補正若しくは位相の補正に応じて、課金を実行することとしてもよい。
【0032】
スレーブ装置3が、サーバ装置2から証明情報を受信すると(ステップS13)、受信した証明情報をマスター装置1へ送信する(ステップS14)。なお、ステップS14にて送信される証明情報は、ステップS11にて受信した証明情報をもとに、スレーブ装置3にて新たに生成したものを用いてもよい。
【0033】
さらに、スレーブ装置3は、マスター装置1へ同期要求を送信する(ステップS15)。スレーブ装置3では、同期要求を送信した時刻を刻時し、送信時の位相を計測する(ステップS16)。そして、刻時した時刻と計測した位相を、制御部31内のメモリにて記憶する(ステップS17)。
【0034】
マスター装置1は、スレーブ装置3からステップS14にて送信された証明情報を受信し(ステップS18)、さらにステップS15にて送信された同期要求を受信する(ステップS19)。ステップS14とS15の情報の送信が同時に行われた場合は、マスター装置1におけるステップS18とS19の情報の受信も同時に行われる。
【0035】
ステップS19にて、マスター装置1において同期要求を受信すると、ステップS19にて同期要求を受信した時刻を刻時し、受信時の位相を計測する(ステップS20)。そして、刻時された時刻及び計測された位相を、制御部11内のメモリにて記憶する(ステップS21)。ステップS21が終了すると、ステップS22へ移行する。
【0036】
マスター装置1は、サーバ装置2へ証明情報及び証明情報の確認要求を送信する(ステップS22)。なお、ステップS22にて送信される証明情報は、ステップS18にて受信した証明情報をもとに、マスター装置1にて新たに生成したものを用いてもよい。
【0037】
ステップS14又はステップS22にて送信される情報には、ステップS11と同様、証明情報だけでなく、スレーブ装置3又はマスター装置1の識別情報などの他の情報を含めることができる。また、同様に、ステップS14又はステップS22では、証明情報及びその他情報を暗号化した情報を送信してもよい。
【0038】
サーバ装置2が、マスター装置1から証明情報及び証明情報の確認要求を受信すると(ステップS23)、マスター装置1から受信した証明情報が、サーバ装置2からスレーブ装置3へ送信した証明情報に対応するものであるか否かの判定が行われる(ステップS22)。そして、ステップS24の判定結果についての情報が、サーバ装置2からマスター装置1へ送信される(ステップS25)。
【0039】
次に、マスター装置1にて、ステップS24の判定結果についての情報を受信する(ステップS26)。マスター装置1から受信した証明情報が、サーバ装置2からスレーブ装置3へ送信した証明情報に対応するものでないと判定された場合は(ステップS27にてNo)、スレーブ装置3の時刻の同期は行われずに、処理は終了する。
【0040】
一方、マスター装置1から受信した証明情報が、サーバ装置2からスレーブ装置3へ送信した証明情報に対応するものであると判定された場合は(ステップS27にてYes)、マスター装置1は、ステップS3にて記憶した、ステップS1にて識別情報を送信した時の時刻及び送信時の位相に関する情報、及び、ステップS21にて記憶した、ステップS19にて同期要求を受信した時の時刻及び受信時の位相に関する情報を、RFチップ12によりスレーブ装置3へ送信する(ステップS28)。
【0041】
そして、スレーブ装置3にて、ステップS1にて識別情報を送信した時の時刻及び送信時の位相に関する情報、及び、ステップS19にてマスター装置1が同期要求を受信した時の時刻及び受信時の位相に関する情報を受信する(ステップS29)。
【0042】
次いで、スレーブ装置3の制御部31において、マスター装置1の発振器にて発生する信号の位相と、スレーブ装置3の発振器にて発生する信号の位相との位相ずれが算定される(ステップS30)。位相ずれは、マスター装置1からスレーブ装置3へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、スレーブ装置3において該情報又は該信号の受信した時にスレーブ装置3の発振器により発振される信号の位相との位相差、及び、スレーブ装置3からマスター装置1へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、マスター装置1において該情報又は該信号の受信した時にマスター装置1の時計の発振器により発振される信号の位相との位相差をもとに、算定することができる。
【0043】
マスター装置1からスレーブ装置3へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相とは、ステップS1にて送信した情報の位相である。該位相に関する情報は、ステップS28にてマスター装置1からスレーブ装置3へ送信される。スレーブ装置3において情報又は信号の受信した時にスレーブ装置3の発振器により発振される信号の位相とは、ステップS4にて受信した情報の位相である。該位相に関する情報は、ステップS5にてスレーブ装置3にて計測され、ステップS6にて記憶される。スレーブ装置3からマスター装置1へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相とは、例えば、ステップS15にて送信した同期要求の位相である。該位相に関する情報は、ステップS17にてスレーブ装置3により記憶されている。マスター装置1において情報又は信号の受信した時にマスター装置1の時計の発振器により発振される信号の位相とは、例えば、ステップS19にて受信した同期要求の位相である。該位相に関する情報は、ステップS20にて計測され、ステップS28にてマスター装置1からスレーブ装置3へ送信される。
【0044】
ここで、マスター装置1からスレーブ装置3へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相とは、マスター装置1からスレーブ装置3へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相だけでなく、この情報又は信号をミックスダウンすることにより得られる信号を構成する搬送波の位相も含む概念である。同様に、スレーブ装置3からマスター装置1へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相とは、スレーブ装置3からマスター装置1へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相だけでなく、この情報又は信号をミックスダウンすることにより得られる信号を構成する搬送波の位相も含む概念である。
【0045】
マスター装置1からスレーブ装置3へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、スレーブ装置3において該情報又は該信号の受信した時にスレーブ装置3の発振器により発振される信号の位相との位相差をΔΦSと定義し、スレーブ装置3からマスター装置1へ送信した情報又は信号を構成する搬送波の位相と、マスター装置1において該情報又は該信号の受信した時にマスター装置1の発振器により発振される信号の位相との位相差をΔΦMと定義すると、位相差ΔΦSと位相差ΔΦMとの相加平均から、マスター装置1及びスレーブ装置3間を信号が伝搬することにより生じる位相差ΔΦPを算定することができる。つまり、式(1):ΔΦP=1/2×(ΔΦS+ΔΦM)により、位相差ΔΦPを算定できる。
【0046】
マスター装置1とスレーブ装置3間の位相のずれをΔΦCと定義すると、式(2):ΔΦM=ΔΦP+(-ΔΦC)で示す関係が成立するから、位相のずれΔΦCは、位相差ΔΦPから位相差ΔΦMを差し引くことで算定することができる。つまり、式(2):ΔΦC=1/2×(ΔΦS-ΔΦM)により、位相差ΔΦCを算定できる。ステップS30では、式(2)を利用して、マスター装置1とスレーブ装置3間の位相ずれを算定する。
【0047】
なお、ここでは、位相ずれΔΦCを式(2)により算定することとしたが、算定すべき位相のずれΔΦCが、さらに2πや4π、つまり2nπを差し引いたものである場合もある。nは0又は正の整数を取りうる。そのため、後述する伝搬時間TPや、マスター装置1とスレーブ装置3間の時刻のずれをもとに、nが0であるのか、1や2であるのか(つまり、式(2)より求められる位相差ΔΦCからさらに2nπを差し引いた値が、本来の位相ずれであるのか、差し引かない値が、本来の位相ずれであるのか)を特定することもできる。
【0048】
マスター装置1からスレーブ装置3へ送信した信号、及び、スレーブ装置3からマスター装置1へ送信した信号は、送信開始時における出力が0ではなく、任意の値をもった状態から始まる場合がある。このような場合は、送信開始時の位相及び送信時刻を計測して、位相のずれΔΦCを補正する必要がある。なお、送信開始時の位相を常にある一定とし、所定の時刻に送信することで、送信開始時の位相及び送信時刻を計測したうえでΔΦCを補正するといった処理を省略することが可能となる。
【0049】
スレーブ装置3では、算定された位相のずれΔΦCに基づいて、マスター装置1の発振器により発生する信号と同期するように、スレーブ装置3の発振器により発生する信号の位相を補正する(ステップS31)。ステップS31における位相の補正は、制御部11により制御され実行される。スレーブ装置3の発振器の位相のずれは、スレーブ装置3の周囲の環境により発生する。このように定期的に同期処理を行うことで、スレーブ装置3の時計34を継続して高い精度で刻時させることができる。
【0050】
次に、マスター装置1にて、マスター装置1からスレーブ装置3へ情報又は信号を送信した時刻、スレーブ装置3からマスター装置1へ情報又は信号を送信した時刻、マスター装置1から情報又は信号が送信されスレーブ装置3が受信して刻時した時刻、さらに、スレーブ装置3から情報又は信号が送信されマスター装置1が受信して刻時した時刻をもとに、マスター装置1とスレーブ装置3間の時刻のずれを算定する(ステップS32)。
【0051】
マスター装置1からスレーブ装置3へ情報又は信号を送信した時刻とは、ステップS1にて情報を送信した時刻である。該時刻に関する情報は、ステップS28にてマスター装置1からスレーブ装置3へ送信される。スレーブ装置3からマスター装置1へ情報又は信号を送信した時刻とは、ステップS15にて同期要求を送信した時刻である。該時刻に関する情報は、ステップS17にてスレーブ装置3により記憶されている。次に、マスター装置1から情報又は信号が送信されスレーブ装置3が受信して刻時した時刻とは、ステップS4にて情報を受信した時刻である。該時刻に関する情報は、ステップS5にてスレーブ装置3にて刻時され、ステップS6にて記憶される。スレーブ装置3から情報又は信号が送信されマスター装置1が受信して刻時した時刻とは、ステップS19にて同期要求を受信した時刻である。該時刻に関する情報は、ステップS20にて刻時され、ステップS28にてマスター装置1からスレーブ装置3へ送信される。
【0052】
マスター装置1からスレーブ装置3へ情報又は信号を送信した時刻をTMと定義し、スレーブ装置3からマスター装置1へ情報又は信号を送信した時刻をTSと定義し、マスター装置1から送信されスレーブ装置3が情報又は信号を受信して刻時した時刻をTMSと定義し、さらに、スレーブ装置3から送信されマスター装置1が受信して情報又は信号を刻時した時刻をTSMと定義すると、マスター装置1とスレーブ装置3間の時刻のずれは、式(3):TL=1/2×((TSM-TS)-(TMS-TM))により算定できる。ステップS32では、式(3)により、マスター装置1とスレーブ装置3間の時刻のずれを算定する。
【0053】
スレーブ装置3では、算定された時刻のずれに基づいて、マスター装置1の時刻に同期するように、スレーブ装置3における時刻を補正する(ステップS33)。
【0054】
次に、スレーブ装置3からマスター装置1へ時刻評価要求とともに、ステップ4にて識別情報を受信した時刻及び受信した識別情報の位相、並びに、ステップS15にて同期要求を送信した時刻及び送信した同期要求の位相に関する情報を送信する(ステップS34)。なお、識別情報を受信した時刻及び識別情報の位相は、ステップS5にて計測され、ステップS6にてスレーブ装置3に記憶されたものである。同期要求を送信した時刻及び同期要求の位相は、ステップS16にて計測され、ステップS17にてスレーブ装置3に記憶されたものである。マスター装置1では、時刻評価要求とともに、ステップ4にて識別情報を受信した時刻及び受信した識別情報の位相を受信する(ステップS35)。
【0055】
マスター装置1では、ステップS35にて受信した情報をもとに、スレーブ装置3の時刻精度を評価する(ステップS36)。ステップS36では、ステップS30と同様の方法で、スレーブ装置3における位相のずれを算定し、ステップS32と同様の方法で、スレーブ装置3における時刻のずれを算定することで、スレーブ装置3の時刻精度を評価する。算定された時刻のずれ及び位相のずれについて、予め決められた基準をもとに、時刻精度の等級を付与することができる。スレーブ装置3に付与された時刻精度の等級は、認定情報として、マスター装置1からスレーブ装置3へ送信される(ステップS37)。スレーブ装置3にて認定情報を受信すると(ステップS38)、一連の処理は終了する。
【0056】
上の実施の形態では、マスター装置1とサーバ装置2は、それぞれ別の装置であることを前提として説明をしたが、マスター装置1とサーバ装置2が一体となった装置であってもよい。この場合、上の実施の形態においてサーバ装置2にて実行されていた処理が、マスター装置1にて実行される。例えば、ステップS9~S12及びS23~S25の処理が、マスター装置1にて実行される。
【0057】
上の実施の形態では、同期処理を実行する度に、サーバ装置2にて証明情報を生成する構成としていたが、スレーブ装置3の同期を実行する際に、毎回、サーバ装置2にて証明情報を生成し、証明情報をサーバ装置2からスレーブ装置3へ送信し、証明情報をスレーブ装置3からマスター装置へ送信することなく、スレーブ装置3の時刻ずれ及び位相ずれを補正することもできる。例えば、証明情報には、スレーブ装置3の同期処理を実行できる期間や条件に関する情報が含まれていてもよい。スレーブ装置3は、一度、サーバ装置2から証明情報を受信すると、この期間や条件を満たす限り、サーバ装置2から証明情報を受信しなくても、複数回にわたって同期処理を実行することが可能となる。
【0058】
また、複数のスレーブ装置3が存在する場合に、そのうちの1のスレーブ装置3がサーバ装置2から証明情報を受信することで、証明情報を受信したスレーブ装置3だけでなく、それ以外のスレーブ装置3においても、同期処理を実行するような構成とすることができる。この場合、証明情報には、同期処理の対象となり得るスレーブ装置3を特定できる情報が含まれており、特定されたスレーブ装置3については、サーバ装置2から証明情報を受信しなくても同期処理を実行することが可能となる。
【0059】
上の実施の形態では、課金処理を実行することを述べたが、課金額に応じて、時刻補正若しくは位相補正を実行する頻度、時刻ずれの算定若しくは位相ずれの算定の基となるマスター装置1の時計の精度、マスター装置1とスレーブ装置3の距離、又は、マスター装置1、スレーブ装置3及び/若しくはサーバ装置2の応答速度を異なるように制御することができる。例えば、所定回数あたりの課金額や所定期間あたりの課金額が高額となるほど、時刻補正や位相補正の頻度を高くし、または、より高い精度の時計をもとに時刻ずれや位相ずれを算定することができる。また、所定回数あたりの課金額や所定期間あたりの課金額が高額となるほど、マスター装置1、スレーブ装置3及びサーバ装置2のいずれからか情報を送信した後、情報を受信した装置における応答速度(例えば、情報を受信した装置において次の処理を実行するまでの速度、又は情報を受信した装置から次の装置へ情報を送信するまでの速度)が早くなるように制御することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 マスター装置
2 サーバ装置
3 スレーブ装置
11 制御部
12 RFチップ
13 発振器
14 時計
15 位相検出器
21 制御部
22 RAM
23 ストレージ部、
24 通信インタフェース
31 制御部
32 RFチップ
33 発振器
34 時計
35 位相検出器