(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】投射光学系および照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/08 20060101AFI20240612BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240612BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240612BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20240612BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20240612BHJP
F21S 41/176 20180101ALI20240612BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240612BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240612BHJP
【FI】
G02B13/08
G02B13/18
G03B21/00 F
F21S41/16
F21S41/675
F21S41/176
F21V5/04 500
F21V5/04 400
F21V5/04 550
F21V5/00 600
(21)【出願番号】P 2020096890
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】澤本 章
(72)【発明者】
【氏名】鹿間 孝太
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-232661(JP,A)
【文献】特開2004-191479(JP,A)
【文献】特開平11-006955(JP,A)
【文献】特開平01-303971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G03B 21/00 - 21/30
F21S 2/00 - 45/70
F21V 1/00 - 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像面に形成された像を担持する光線を複数のレンズに通して、光照射対象の物体側に投射する投射光学系において、
該投射光学系は、2面以上のレンズ面がトロイダル面である複数のレンズを含み、
前記トロイダル面は少なくとも、
最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面、および、
前記像面側レンズよりも物体側に配置されるレンズを物体側レンズとした際に、物体側レンズの物体側のレンズ面のうち、曲率半径が最大である物体側のレンズ面に、それぞれ形成され
ており、
投射光学系の光軸方向をZ方向、Z方向に対して直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向としたとき、トロイダル面である前記像面側レンズの像面側のレンズ面は、XZ面における面形状およびYZ面における面形状がいずれも、光軸近辺において像面側に凹である投射光学系。
【請求項2】
投射光学系の光軸方向をZ方向、Z方向に対して直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向としたとき、トロイダル面であるレンズ面は、XZ面における面形状およびYZ面における面形状の少なくとも一方が非球面である請求項
1に記載の投射光学系。
【請求項3】
投射光学系の光軸方向をZ方向、Z方向に対して直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向としたとき、トロイダル面である前記物体側レンズのレンズ面は、XZ面における面形状およびYZ面における面形状のうち、少なくとも一方が非球面であり、
前記非球面の面形状を有するレンズ面は、光軸近辺において物体側に凸である請求項1
または2に記載の投射光学系。
【請求項4】
構成する複数のレンズが全て正レンズである請求項1から
3のいずれか1項に記載の投射光学系。
【請求項5】
構成する複数のレンズがいずれも、アッベ数νnが50以上のものである請求項1から
4のいずれか1項に記載の投射光学系。
【請求項6】
構成する複数のレンズが全て、同一の硝材からなる請求項1から
5のいずれか1項に記載の投射光学系。
【請求項7】
前記同一の硝材がPMMAである請求項
6に記載の投射光学系。
【請求項8】
前記像面側レンズの物体側のレンズ面は、物体側に凸であり、
この像面側レンズと物体側で隣接する隣接レンズの像面側のレンズ面は、像面側に凸である、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の投射光学系。
【請求項9】
像面に形成された像を担持する光線を複数のレンズに通して、光照射対象の物体側に投射する投射光学系において、
該投射光学系は、2面以上のレンズ面がトロイダル面である複数のレンズを含み、
前記トロイダル面は少なくとも、
最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面、および、
前記像面側レンズよりも物体側に配置されるレンズを物体側レンズとした際に、物体側レンズの物体側のレンズ面のうち、曲率半径が最大である物体側のレンズ面に、それぞれ形成され、
物体側のレンズ面にトロイダル面を有する前記物体側レンズよりも物体側に配置され、
前記像面から前記物体側に向かって配置された、物体側に凸の正メニスカスレンズ、像面側に凸の正メニスカスレンズを含
む投射光学系。
【請求項10】
光軸上の像面側NAが、 0.625≦NA (式1)
である請求項1から
9のいずれか1項に記載の投射光学系。
【請求項11】
前記最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面に入射する光線の主光線がレンズ光軸となす主光線傾角αの最大値を最大主光線傾角とすると、
最大主光線傾角<15° (式2)
である請求項1から
10のいずれか1項に記載の投射光学系。
【請求項12】
前記最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面の有効径をLLとし、全系のバックフォーカスをFBとすると、
2<LL/FB<5 (式3)
である請求項1から
11のいずれか1項に記載の投射光学系。
【請求項13】
光源と、
DMDからなる画像表示面と、
この画像表示面を前記像面として、該画像表示面からの出射光を投射する請求項1
または9に記載の投射光学系と、
を有する照明装置。
【請求項14】
レーザー光源と、
前記レーザー光源から発せられた光線を走査させる走査ミラーと、
前記走査ミラーで反射した後の光線が入射する蛍光体からなる画像表示面と、
この画像表示面を前記像面として、該画像表示面からの出射光を投射する請求項1
または9に記載の投射光学系と、
を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射光学系および、それを用いた照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、自動車の前照灯に適用される照明装置において、車載カメラ等から得た自車前方の状態に対応させて、照明光の配光パターンを制御可能としたものが提案されている。また、その種の照明装置において、光源から発せられて、複数のレンズ等から構成された投射光学系に入射する前の光を、DMD(登録商標)等の空間光変調器によって変調することにより、照明光配光パターンを精細に制御可能としたものも提案されている。(特許文献1参照)。この空間光変調器を適用した照明装置においては、例えば夜間に照明光をいわゆるハイビームにした際に、ハイビーム状態は維持したまま、対向車の運転手の目の部分には照明光が照射されないようにする等、照明光配光パターンを高精細に制御することも可能になる。
【0003】
上述のようにして照明光配光パターンを高精細に制御可能とした照明装置において、投射光学系はいわば、空間光変調器によって形成された高精細画像を投射していると考えることもできる。そこでこの投射用の投射光学系は、照明光配光パターンを所望通りのものとするために、換言すれば歪みの少ない画像を投射するために、収差が小さいものであることが望まれる。またこの投射光学系は本来、自動車の前照灯に適用されるものであるから、明るいこと、つまりF値が小さいことが望まれる。
【0004】
特許文献2には、2次元像を走査するための投射光学系において、歪の少ない画像を得るために、トロイダルレンズを用いて投射光学系を構成することが示されている。また特許文献3には、上記と同様に配光パターン制御を行う自動車用照明装置において、トロイダルレンズを用いて投射光学系を構成することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-127125号公報
【文献】特許第5268988号公報
【文献】特開2016-105427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、トロイダルレンズを用いて構成された従来の投射光学系は、F値が小さいものとする、収差を小さく抑える、という二つの要求を共に満足する上で改良の余地が残されている。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、F値が小さくて、発生する各種収差も小さい投射光学系、およびそのような投射光学系を備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による投射光学系は、
像面に形成された像を担持する光線を複数のレンズに通して、光照射対象の物体側に投射する投射光学系において、
該投射光学系は、2面以上のレンズ面がトロイダル面である複数のレンズを含み、
前記トロイダル面は少なくとも、
最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面、および、
上記像面側レンズ以外の物体側レンズのレンズ面のうち、曲率半径が最大であるレンズ面に、
それぞれ形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記構成を有する本発明による投射光学系においては、
投射光学系の光軸方向をZ方向、Z方向に対して直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向としたとき、トロイダル面である上記像面側レンズの像面側のレンズ面は、XZ面における面形状およびYZ面における面形状がいずれも、光軸近辺において像面側に凹であることが望ましい。
【0009】
また、本発明による投射光学系においては、
投射光学系の光軸方向をZ方向、Z方向に対して直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向としたとき、トロイダル面であるレンズ面は、XZ面における面形状およびYZ面における面形状の少なくとも一方が非球面であることが望ましい。
【0010】
また、本発明による投射光学系においては、
投射光学系の光軸方向をZ方向、Z方向に対して直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向としたとき、トロイダル面である上記物体側レンズのレンズ面は、XZ面における面形状およびYZ面における面形状のうち、少なくとも一方が非球面であり、
上記非球面の面形状を有するレンズ面は、光軸近辺において物体側に凸であることが望ましい。
【0011】
また、本発明による投射光学系においては、構成する複数のレンズが全て正レンズであることが望ましい。
【0012】
また、本発明による投射光学系においては、構成する複数のレンズがいずれも、アッベ数νnが50以上のものであることが望ましい。
【0013】
また、本発明による投射光学系においては、構成する複数のレンズが全て、同一の硝材からなることが望ましい。そしてその同一の硝材は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)であることが特に望ましい。
【0014】
また、本発明による投射光学系においては、
上記像面側レンズの物体側のレンズ面は、物体側に凸であり、
この像面側レンズと物体側で隣接する隣接レンズの像面側のレンズ面は、像面側に凸である、
ことが望ましい。
【0015】
また、本発明による投射光学系は、
上記像面から上記物体側に向かって配置された、物体側に凸の正メニスカスレンズ、像面側に凸の正メニスカスレンズを含むことが望ましい。
【0016】
また、本発明による投射光学系においては、光軸上の像面側NAが、
0.625≦NA (式1)
であることが望ましい。
【0017】
また、本発明による投射光学系においては、
上記最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面に入射する光線の主光線がレンズ光軸となす主光線傾角αの最大値を最大主光線傾角とすると、
最大主光線傾角<15° (式2)
であることが望ましい。
【0018】
また、本発明による投射光学系においては、
上記最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面の有効径をLLとし、全系のバックフォーカスをFBとすると、
2<LL/FB<5 (式3)
であることが望ましい。
【0019】
他方、本発明による一つの照明装置は、
光源と、
DMDからなる画像表示面と、
この画像表示面を上記像面として、該画像表示面からの出射光を投射する、本発明による投射光学系と、
を備えてなるものである。
【0020】
また、本発明による別の照明装置は、
レーザー光源と、
上記レーザー光源から発せられた光線を走査させる走査ミラーと、
上記走査ミラーで反射した後の光線が入射する蛍光体からなる画像表示面と、
この画像表示面を上記像面として、該画像表示面からの出射光を投射する、本発明による投射光学系と、
を備えてなるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明による投射光学系は上に述べた通り、2面以上のレンズ面がトロイダル面である複数のレンズを含み、トロイダル面は少なくとも、最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面、および、上記像面側レンズ以外の物体側レンズのレンズ面のうち、曲率半径が最大であるレンズ面にそれぞれ形成されているので、F値が小さい半面、発生する各種収差も小さいものとなる。すなわち通常は、投射光学系のF値が小さいと発生する収差も増大する。球面レンズからなる投射光学系であると、各種収差を十分に補正できないのに対し、本発明による投射光学系は上に述べた通り、2面以上のレンズ面がトロイダル面である複数のレンズを含むので、各種収差を十分に補正可能となる。特に補正可能な収差は非点収差、像面湾曲およびコマ収差である。
【0022】
本発明による投射光学系は2面以上のトロイダル面を含むので、トロイダル面が1面の場合は収差を補正し切れないのに対し、収差補正のバランスを取って、各種収差を十分に補正可能となる。また、最も像面側のレンズ面は、投射光学系の入射側のNAが高いため各光線のマージナル光線および上下光線の入射角度が大きくなり、それらの光線を屈折させる面であるため収差への影響が大きいが、このレンズ面をトロイダル面にしていることから、収差をより有効に補正することができる。さらに、像面側レンズ以外の物体側レンズのレンズ面のうち、曲率半径が最大である物体側のレンズ面は、曲率が緩くなるため光線の出射角度が小さくなり収差の感度が低いが、このレンズ面をトロイダル面にしていることから、一方向の収差を他方向との収差のずれを微調整するのに有効となる。
【0023】
なお、本発明による投射光学系において特に、トロイダル面である像面側レンズの像面側のレンズ面が、XZ面における面形状およびYZ面における面形状がいずれも、Z軸近辺において像面側に凹である場合は、光軸周辺の光線を取り込みやすくなって、投射光学系の明るさ増大に寄与する。
【0024】
また、本発明による投射光学系において特に、トロイダル面であるレンズ面が、XZ面における面形状およびYZ面における面形状の少なくとも一方が非球面である場合は、球面の場合は収差の補正不足になりがちであるのに対し、非点収差、像面湾曲およびコマ収差をより確実に補正可能となる。
【0025】
また、本発明による投射光学系において特に、構成する複数のレンズが全て正レンズである場合は、光をより十分に集光可能となるので、明るい投射光学系を得る上で有利となる。
【0026】
また、本発明による投射光学系において特に、構成する複数のレンズがいずれも、アッベ数νnが50以上のものである場合は、色収差をより十分に低減可能となる。
【0027】
また、本発明による投射光学系において特に、構成する複数のレンズが全て同一の硝材からなる場合は、投射光学系の製造性が良くなる。また、その同一の硝材が特にPMMAである場合は、レンズを正レンズとして色収差を補正する上で有利となる。また、PMMAからなるレンズは、プラスチックレンズの中でも耐衝撃性が高く、万が一割れた際に尖った破片が発生し難い。
【0028】
また、本発明による投射光学系において特に、前記像面側レンズの物体側のレンズ面が物体側に凸であり、この像面側レンズと物体側で隣接する隣接レンズの像面側のレンズ面が像面側に凸である場合は、これらのレンズの凸面同士を向かい合わせることで各種収差を打ち消し合うことができる。
【0029】
また、本発明による投射光学系において特に、物体側のレンズ面にトロイダル面を有する物体側レンズよりも物体側に配置され、前記像面から前記物体側に向かって配置された、像面側に凸の正メニスカスレンズ、物体側に凸の正メニスカスレンズのレンズの並びを含む場合、対称的なレンズ配置となり収差の発生を低減することが可能になり、また、凹面で凸面を挟み込むことで、像面側からの光線を像面側の凹面で広げて像高が高い状態で挟み込んだ二面の凸面へ入射することで凸面における収差補正能力を高めることが可能となり、かつ、物体側の凹面により、間の二面の凸面により発生する過剰な収差を補正することが可能となる。
【0030】
また、本発明による投射光学系において特に、光軸上の像面側NA(開口数)が、
0.625≦NA (式1)
である場合は、投射光学系の十分な明るさが確保される。
【0031】
また、本発明による投射光学系において特に、最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面に入射する光線の主光線がレンズ光軸となす主光線傾角αの最大値を最大主光線傾角として、
最大主光線傾角<15° (式2)
である場合は、投射光学系の十分な明るさが確保される。
【0032】
また、本発明による投射光学系において特に、最も像面側に配置された像面側レンズの像面側のレンズ面の有効径をLLとし、全系のバックフォーカスをFBとして、
2<LL/FB<5 (式3)
である場合は、全系のバックフォーカスを短くして投射光学系の小型化等に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】(1)は本発明による投射光学系の光軸と像面との関係を示す概略図、(2)は像面上の位置を示す概略図
【
図2】実施例1の投射光学系のレンズ構成を示す断面図であり、互いに直交する面内における断面形状をそれぞれ上側、下側に示す
【
図3】実施例1の投射光学系を構成するレンズの基本データを示す図
【
図4】実施例1の投射光学系を構成するレンズの非球面データを示す図
【
図5】実施例1の投射光学系を構成する一つのレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図6】実施例1の投射光学系を構成する別のレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図7】実施例1~4の投射光学系における条件式1~3の値を示す図
【
図8】実施例1~4の投射光学系における主光線傾角の値を示す図
【
図9】実施例1の投射光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示すグラフ
【
図10】実施例1の投射光学系の横収差を示すグラフ
【
図12】実施例2の投射光学系のレンズ構成を示す断面図であり、互いに直交する面内における断面形状をそれぞれ上側、下側に示す
【
図13】実施例2の投射光学系を構成するレンズの基本データを示す図
【
図14】実施例2の投射光学系を構成するレンズの非球面データを示す図
【
図15】実施例2の投射光学系を構成する一つのレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図16】実施例2の投射光学系を構成する別のレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図17】実施例2の投射光学系を構成するさらに別のレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図18】実施例2の投射光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示すグラフ
【
図19】実施例2の投射光学系の横収差を示すグラフ
【
図20】実施例3の投射光学系のレンズ構成を示す断面図であり、互いに直交する面内における断面形状をそれぞれ上側、下側に示す
【
図21】実施例3の投射光学系を構成するレンズの基本データを示す図
【
図22】実施例3の投射光学系を構成するレンズの非球面データを示す図
【
図23】実施例3の投射光学系を構成する一つのレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図24】実施例3の投射光学系を構成する別のレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図25】実施例3の投射光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示すグラフ
【
図26】実施例3の投射光学系の横収差を示すグラフ
【
図27】実施例4の投射光学系のレンズ構成を示す断面図であり、互いに直交する面内における断面形状をそれぞれ上側、下側に示す
【
図28】実施例4の投射光学系を構成するレンズの基本データを示す図
【
図29】実施例4の投射光学系を構成するレンズの非球面データを示す図
【
図30】実施例4の投射光学系を構成する一つのレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図31】実施例4の投射光学系を構成する別のレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図32】実施例4の投射光学系を構成するさらに別のレンズのレンズ面サグ量を示す図
【
図33】実施例4の投射光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示すグラフ
【
図34】実施例4の投射光学系の横収差を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1の(1)は本発明による投射光学系の光軸と、それに係る像面Pとの関係を示す概略図であり、(2)は像面P上の位置を示す概略図である。以下では、これらの光軸および像面Pに基づいて本発明の実施形態を説明する。また以下では、光軸方向をZ方向とし、Z方向に対して直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向として説明する。
【0035】
図2は本発明の一実施形態に係る投射光学系100の構成を、Z方向およびX方向を含むXZ面内の断面形状(上側の図)、およびZ方向およびY方向を含むYZ面内の断面形状(下側の図)について示す断面図である。
図2においてPは像面であり、投射光学系100は、この像面Pに形成された像を担持する光線を複数のレンズに通して、光照射対象の物体側、つまり図中の左方に投射する。なお、上記物体は図示を省略してあるが、投射光学系100が例えば自動車の前照灯に適用される照明装置を構成するものであれば、物体は自動車前方の対向車や歩行者等となる。
【0036】
この投射光学系100は基本的に、
像面P側から物体側に向かって順次配置された3枚のレンズL1、L2およびL3から構成されている。ここで各レンズのレンズ面を、例えばレンズL1については光線の進行方向前方のレンズ面をL1f、光線の進行方向後方のレンズ面をL1rというように、レンズ名に「f」および「r」を付けて示す。これは、以下で説明する実施形態および実施例に関しても同様である。レンズL
3およびL2は正の屈折力を有する(以下、これを単に「正の」あるいは「正」という)両凸レンズであり、レンズL
1は物体側に凸の正メニスカスレンズである。この
図1に示す投射光学系100は、後述する実施例1に対応している。
【0037】
次に、本開示の実施形態に係る実施例1における構成要素の詳細なデータについて
図3~6を参照して説明する。まず
図3に、構成要素の基本データを示す。この
図3の基本データにおいて、面番号No.の欄には最も前方つまり物体側のレンズ面を1番目として、像面P側に向かうに従い順次増加する面番号を示している。すなわち本実施例1では、レンズ面L
3fがNo.=1の面、レンズ面L
3rがNo.=2の面
、レンズ面L2fがNo.=3の面、レンズ面L2rがNo.=4の面・・・となる。各面番号の面の中において、回転対称形で非球面形状の面には*の表記を付している。本実施形態ではその他の面も非球面形状であるが、それらの面は回転対称形ではなくトロイダル面であり、それらの面については面特性の欄に「トロイダル」の表記をしている。YZ面曲率半径およびXZ面曲率半径の欄にはそれぞれ、各レンズ面のYZ面内近軸曲率半径およびXZ面内近軸曲率半径を示している。なおこれらの曲率半径の値は、物体側に凸の場合を正値で、物体側に凹の場合を負値で示している。トロイダル面ではないレンズ面については、上記2通りの曲率半径は共通であるから、前者のみを示している。間隔の欄には、当該レンズ面から次のレンズ面まで(最も像面P側のレンズ面であるNo.=6の面については像面Pまで)の間隔を、有効径の欄には各レンズ面の有効径を示している。なお、以上の4項目の数値の単位はmm(ミリ・メートル)である。屈折率nd、アッベ数νdおよび硝材の欄には、各レンズ面を有するレンズのd線(波長587.6nm)に対する屈折率、同じくd線に対するアッベ数、および硝材を示している。
【0038】
図4には非球面に関するデータとして、非球面の面番号と非球面係数を示す。非球面の形状はXZ面で非球面かつYZ面で球面の場合は、Zを光軸方向の座標、Xを前記X方向の座標、光の進行方向を正、RxをXZ面内近軸曲率半径とすると、
図4に示した係数K、A、B、C、およびDを用いて次式で表わされる。なお、「en」は、「10のn乗」を意味する。
Z=(1/Rx)X
2/[1+{1-(1+K)(1/Rx)
2X
2}
1/2]
+AX
4+BX
6+CX
8+DX
10
また、YZ面で非球面かつXZ面で球面の場合、非球面の形状は、Zを光軸方向の座標、Yを前記Y方向の座標、光の進行方向を正、RyをYZ面内近軸曲率半径として、次式で表わされる。
Z=(1/Ry)Y
2/[1+{1-(1+K)(1/Ry)
2Y
2}
1/2]
+AY
4+BY
6+CY
8+DY
10
また、レンズ面が回転対称形でYZ面およびYZ面が互いに同形状の非球面である場合、非球面の形状は、Zを光軸方向の座標、Yを前記Y方向の座標(これはX方向の座標と等しい)、光の進行方向を正、RをYZ面内近軸曲率半径(これはXZ面内近軸曲率半径と等しい)として、次式で表わされる。
Z=(1/R
2)Y/[1+{1-(1+K)(1/R)
2Y
2}
1/2]
+AY
4+BY
6+CY
8+DY
10
【0039】
図5および
図6には、以上の通りにして求められるレンズ面のZ方向位置つまりサグ量を、トロイダル面である面番号No.=1および6の面について具体的に示す。ここに示すサグ量は、各レンズ面の有効半径を1として、光軸上の位置0.0から径外方に0.1ずつ離れた距離毎にZ方向位置を「1」に対する相対値で示している。なお面番号No.=1および6の面はいずれも、XZ面内では非球面でYZ面内では球面であり、前者の面内のサグ量を左列に、後者の面内のサグ量を右列に示している。ここではサグ量に特に正、負の符号は付けていないが、面番号No.=1の面および面番号No.=6の面はそれぞれ
図2に示した凸のレンズ面L
3f、凹のレンズ面L
1rであって、像高が高くなるに伴ってレンズ面位置は像面P側に変位する。
【0040】
以上説明した
図3における表示の仕方は、後述する
図13、21、28においても同様である。また、以上説明した
図4における表示の仕方は、後述する
図14、22、29においても同様である。また、以上説明した
図5、6における表示の仕方は、後述する
図15~17、23、24、30~32においても同様である。
【0041】
この投射光学系100は、例えば自動車の前照灯に適用される照明装置を構成するために利用可能である。そのように利用する場合は、例えばLED等の光源およびDMD等からなる画像表示面が、投射光学系100と組み合わされる。そして、画像表示面を前記像面Pとして、該画像表示面からの出射光を投射光学系100が投射するようにして照明装置が構成される。
【0042】
あるいは、ビーム状の光線を発するレーザー光源、このレーザー光源から発せられた光線を走査させる走査ミラー、およびこの走査ミラーで反射した後の光線が入射する蛍光体からなる画像表示面が、投射光学系100と組み合わされる。そして、上記蛍光体からなる画像表示面を前記像面Pとして、該画像表示面からの出射光(蛍光)を投射光学系100が投射するようにして照明装置が構成される。
【0043】
本実施例1の投射光学系100は、一つのレンズ面がトロイダル面であるレンズL1と、同じく一つのレンズ面がトロイダル面であるレンズL3を含んでいる。そしてトロイダル面は、最も像面P側に配置された像面側レンズL1の像面側のレンズ面L1r、および
、上記像面側レンズL1以外の物体側レンズのレンズ面のうち、曲率半径が最大であるレンズ面L3fにそれぞれ形成されている。そこでこの投射光学系100は、光が入射する像面側の光軸上のNAの値が十分に大きく光の取り込み効率が高く、それによりF値が小さく明るい投射光学系であり、それでいて発生する各種収差は十分に小さいものとなる。その詳しい理由は先に述べた通りである。
【0044】
また本実施例1の投射光学系100は、2面以上のトロイダル面を含むので、トロイダル面が1面の場合は収差を補正し切れないことが多いのに対し、収差補正のバランスを取って、各種収差を十分に補正可能となる。また、最も像面側のレンズ面L1rは収差への影響が大きいが、このレンズ面L1rをトロイダル面にしていることから、収差をより有効に補正することができる。さらに、上記曲率半径が最大であるレンズ面L3fは収差の感度が低いが、このレンズ面L3fをトロイダル面にしていることから、一方向の収差を微調整するのに有効となる。
【0045】
また本実施例1の投射光学系100では、像面側レンズL1のトロイダル面である像面側のレンズ面L1rが、XZ面における面形状およびYZ面における面形状がいずれも、Z軸近辺において像面側に凹の面であるので、光軸周辺の光線を取り込みやすくなって、投射光学系100の明るさ増大に寄与する。
【0046】
また本実施例1の投射光学系100において、トロイダル面であるレンズ面L3fはXZ面における面形状が非球面であり、そして同じくトロイダル面であるレンズ面L1rはYZ面における面形状が非球面であるので、レンズ面が球面の場合は収差の補正不足になりがちであるのに対し、非点収差、像面湾曲およびコマ収差をより確実に補正可能となる。
【0047】
また本実施例1の投射光学系100では、構成する複数のレンズL1、L2およびL3が全て正レンズであるので、光をより十分に集光可能となり、明るい投射光学系を得る上で有利となる。
【0048】
また本実施例1の投射光学系100では、構成する複数のレンズL1、L2およびL3がいずれも、
図3に示される通りアッベ数νnが50以上のものであるので、色収差をより十分に低減可能となる。
【0049】
また本実施例1の投射光学系100は、構成する複数のレンズL1、L2およびL3が全て同一の硝材からなるので、投射光学系100の製造性が良くなる。また、その同一の硝材が特にPMMAであるので、レンズを正レンズとして色収差を補正する上で有利となる。また、PMMAからなるレンズL1、L2およびL3は、プラスチックレンズの中でも耐衝撃性が高く、万が一割れた際に尖った破片が発生し難いという利点がある。
【0050】
また本実施例1の投射光学系100では、像面側レンズL1の物体側のレンズ面L1fが物体側に凸であり、この像面側レンズL1と物体側で隣接する隣接レンズL2の像面側のレンズ面L2rが像面側に凸であるので、これらのレンズL1、L2の凸面同士を向かい合わせることで各種収差を打ち消し合うことができる。
【0051】
以上説明した実施例1の投射光学系100により得られる作用、効果は、後述する実施例2~4の投射光学系200、300および400も基本的に同様に奏するものである。
【0052】
図7には、前述した式1が規定している光軸Z上の像面側のNAと、式2が規定している最大主光線傾角(clmと表記、単位は°)と、式3が規定しているLL/FBの値とを、本実施例1および、後述するその他の各実施例2~4についてそれぞれ示す。なお、主光線傾角は、像面Pの各点(f1~f9)から出射される光線の主光線と光軸Zとのなす角αのことである。また像面Pの各点(f1~f9)は
図1の(1)および(2)に示すように、光軸Zと交わる点を含む位置で像面PをX方向とY方向に平行な線に沿って四等分し、そのうちの任意の一角について9か所の地点をf1~f9と規定したものである。f1が、像面Pと光軸とが交わる位置を表している。これらの各点(f1~f9)における主光線傾角の値(単位は°)を、本実施例1および、後述するその他の各実施例2~4についてそれぞれ
図8に示す。
図7に示した最大主光線傾角(clm)は、各実施例1~4毎の主光線傾角の最大値である。
【0053】
図7に示される通り、
0.625≦NA (式1)
最大主光線傾角<15° (式2)
2<LL/FB<5 (式3)
は全て、実施例1~4のいずれにおいても満足されている。
【0054】
前述した通り、(式1)および(式2)が満足されていることにより、投射光学系100の十分な明るさが確保される。また(式3)が満足されていることにより、投射光学系100の全系のバックフォーカスを短くして、投射光学系100の小型化等に有利となる。
【0055】
ここで、本実施例1の投射光学系100における球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)を
図9において左から順に示す。球面収差の測定は、波長が656.27nm、546.07nm、486.13nmの光に関して行い、各波長に関する測定結果をグラフの線種を変えて区別している。非点収差と歪曲収差の測定は、波長が546.07nmの光に関して行った。非点収差については、XZ面内およびYZ面内に関して行ない、前者に関してはX、後者に関してはYの表記を付して示している。ここに示されるように球面収差、非点収差、歪曲収差は良好に補正されている。
【0056】
なお、後述する実施例2の投射光学系200、実施例3の投射光学系300、実施例4の投射光学系400についても同様の収差図をそれぞれ
図18、
図25、
図33として示しているが、各収差の測定の仕方および測定結果の表示の仕方は、上記と同様である。
【0057】
また、本実施例1の投射光学系100における横収差を
図10に示す。横収差の測定は、波長が656.27nm、546.07nm、486.13nmの光に関して行い、各波長に関する測定結果をグラフの線種を変えて区別している。この横収差の測定は、投射画面上の1~5の5点において行った。それらの5点は各収差図の左右方向中央に、下から1、2・・と順次記してある。それらの1~5の点の具体的な位置は、
図1に示した横方向、縦方向の位置をそれぞれX、Yとし、光軸Zの位置を原点とする、像面P上の5つの座標(X,Y)=(0.00,0.00)、(0.50,0.50)、(1.00,0.00)、(0.00,1.00)および(1.00,1.00)を各々通過した光が到達する位置である。これらの座標上の位置は、記載順に投射画面上の点1、点2、点3、点4および点5に対応する位置である。なお、上記座標位置は、原点を(0.00,0.00)として、光軸を通りX方向に平行な線上において最も光軸から離れた座標位置を(1.00,0.00)、光軸を通りY方向に平行な線上において最も光軸から離れた座標位置を(0.00,1.00)とした場合の座標を示す。上記像面P上の5つの座標をそれぞれ(1)、(2)、(3)、(4)および(5)として
図11に示す。なお、
図2、
図12、
図20、
図27に開示される各実施例の断面図は概略図であり、図中の最も像面側に記載された像面を示す光軸に直交する線分は、像面の位置を示した目印であり、実際の像面上に配置される画像表示面のサイズや形状を示したものではない。また、
図1、
図11ではわかりやすさを優先して像面上に配置される画像表示面の形状を正方形で表しているが、実際には、本願の各実施例の像面上に配置される画像表示面は、X方向の辺の長さがY方向の辺の長さよりも長く、具体的には約X:Y=4:1のアスペクト比を有する長方形である。
【0058】
横収差の測定は、上記X方向とY方向とに関して行ない、各結果をx-FAN、y-FANと付記して
図10に示している。この
図10に示されている通り、横収差が良好に抑えられていることが分かる。なお、後述する実施例2の投射光学系200、実施例3の投射光学系300、実施例4の投射光学系400についても同様の収差図をそれぞれ
図19、
図26、
図34として示しているが、横収差の測定の仕方および測定結果の表示の仕方は、上記と同様である。
【0059】
次に、本発明の実施例2である投射光学系200について、
図12~19を参照して説明する。なおこれらの図において、先に説明した実施例1中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについては特に必要の無い限り説明を省略する(以下、同様)。この実施例2の投射光学系200は、実施例1の投射光学系100と同様に、
像面側から物体側に向かって順次配置された3枚の凸レンズL1、L2およびL3から構成されたものである。
【0060】
この実施例2の投射光学系200の構成を示す断面図を
図12に、基本データを
図13に、非球面データを
図14に示す。この投射光学系200においては、レンズL
3のレンズ面L
3f、レンズL2のレンズ面L2f、およびレンズL
1のレンズ面L
1rがトロイダル面とされている。各トロイダル面において、レンズ面L
3fはYZ面が非球面であり、レンズ面L2fおよびレンズ面L
1rはZX面が非球面である。トロイダル面である上記レンズ面L
3f、L2f、およびL
1rのサグ量を
図15、16および17にそれぞれ示す。また、この投射光学系200の球面収差、非点収差、歪曲収差を
図18に、横収差を
図19に示す。
【0061】
次に、本発明の実施例3である投射光学系300について、
図20~26を参照して説明する。この実施例3の投射光学系300は、
像面側から物体側に向かって順次配置された4枚の凸レンズL1、L2、L3およびL4から構成されたものであり、具体的にはレンズL
4は物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズであり、レンズL
3は像面側に凹面を向けた正のメニスカスレンズであり、レンズL
2は両凸レンズであり、レンズL
1は物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズである。また、全てのレンズはPMMAからなる。
【0062】
この実施例3の投射光学系300の構成を示す断面図を
図20に、基本データを
図21に、非球面データを
図22に示す。この投射光学系300においては、レンズL
2のレンズ面L
2f、レンズL
1のレンズ面L
1rがトロイダル面とされている。各トロイダル面において、レンズ面L
2fはXZ面が非球面であり、レンズ面L
1rはYZ面が非球面である。トロイダル面である上記レンズ面L
2fおよびL
1rのサグ量を
図23、および24にそれぞれ示す。また、この投射光学系300の球面収差、非点収差、歪曲収差を
図25に、横収差を
図26に示す。
【0063】
なお、トロイダル面であるレンズ面L2fおよびL1rは、それぞれ、レンズ面L2fは光学系全体の中で最も曲率半径の大きなレンズ面であり、レンズ面L1rは最も像側に配置されたレンズ面である。
【0064】
また、レンズL4およびL3は、像面側から物体側に向かって配置された、物体側に凸の正メニスカスレンズ、像面側に凸の正メニスカスの並びとなっている。このような配置とすることで、対称的なレンズ配置となり収差の発生を低減することが可能になり、また、凹面で凸面を挟み込むことで、像面側からの光線を像面側の凹面で広げて像高が高い状態で挟み込んだ二面の凸面へ入射することで凸面における収差補正能力を高めることが可能となり、かつ、物体側の凹面により、間の二面の凸面により発生する過剰な収差を補正することが可能となる。
【0065】
また、レンズL2およびL1について詳しく説明すると、曲率半径の小さな凸面であるレンズ面L2rおよびL1fを向け合っている。このような配置とすることで、つまりレンズの凸面同士を向かい合わせることで、各種収差を打ち消し合うことができる。
【0066】
次に、本発明の実施例4である投射光学系400について、
図27~34を参照して説明する。この実施例4の投射光学系400は、
像面側から物体側に向かって順次配置された4枚の凸レンズL1、L2、L3およびL4から構成されたものであり、具体的にはレンズL
4は物体側に凹面を向けた正のメニスカスレンズであり、レンズL
3は像面側に凹面を向けた正のメニスカスレンズであり、レンズL
2は両凸レンズであり、レンズL
1は物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズである。
【0067】
この実施例4の投射光学系400の構成を示す断面図を
図27に、基本データを
図28に、非球面データを
図29に示す。この投射光学系300においては、レンズL
4のレンズ面L
4f、レンズL
2のレンズ面L
2f、レンズL
1のレンズ面L
1rがトロイダル面とされている。各トロイダル面において、レンズ面L
4fおよびレンズ面L
2fはXZ面が非球面であり、レンズ面L
1rはYZ面が非球面である。トロイダル面である上記レンズ面L
4f、L
2fおよびL
1rのサグ量を
図30、31および32にそれぞれ示す。また、この投射光学系400の球面収差、非点収差、歪曲収差を
図33に、横収差を
図34に示す。
【0068】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明の投射光学系は、上記実施例のものに限られるものではなく種々の態様の変更が可能であり、例えば各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数を適宜変更することが可能である。また以上説明した実施例の投射光学系は前述した通り、例えば自動車の前照灯に適用される照明装置を構成するために利用可能であるが、それ以外の照明装置を構成するために利用することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
L1、L2、L3、L4 レンズ
L1f、L1r、L2f、L2r、L3f、L3r、L4f、L4r レンズ面
P 像面
X 光軸に直交する方向
Y 光軸に直交する方向
Z 光軸