(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】循環経路を有する蒸気使用システム
(51)【国際特許分類】
F25D 9/00 20060101AFI20240612BHJP
F22B 33/18 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
F25D9/00 B
F22B33/18
(21)【出願番号】P 2020215276
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】恩田 英
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-222281(JP,A)
【文献】特開2010-151359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 9/00
F22B 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気及び低温液体の混合によって生成される対象流体が、大気圧よりも高い所定の高圧力を維持しながら内部を循環する循環経路、
前記循環経路内を循環する前記対象流体から熱を受け取り、所定の動作を行う対象装置、
前記対象流体を前記循環経路内で循環させる循環動力手段、
前記循環経路に向けて前記蒸気を供給する蒸気供給手段、
前記循環経路に向けて前記低温液体を供給する低温液体供給手段、
前記循環経路に設けられた排出開閉弁であって、前記低温液体を供給するために、開弁することによって前記循環経路内を循環する前記対象流体の一部を循環経路外に排出する排出開閉弁、
を備えたことを特徴とする循環経路を有する蒸気使用システム。
【請求項2】
請求項1に係る循環経路を有する蒸気使用システムにおいて、
前記排出開閉弁は、開弁信号を受けて開弁するように構成されており、さらに、
前記循環経路内を循環する前記対象流体の温度を測定して検出信号を出力する温度測定手段、
前記温度測定手段からの検出信号に基づき、前記排出開閉弁に開弁信号を与え前記対象流体の一部を循環経路外に排出させることによって、前記低温液体の前記循環経路への供給を受容させる制御手段、
を備えたことを特徴とする循環経路を有する蒸気使用システム。
【請求項3】
請求項1または2に係る循環経路を有する蒸気使用システムにおいて、
前記循環動力手段は、前記循環経路に接続されており、前記対象流体を一次側から二次側に通過させることによって前記対象流体を前記循環経路内で循環させ、
前記蒸気供給手段は、前記循環動力手段の二次側の前記循環経路に向けて前記蒸気を供給し、
前記低温液体供給手段は、前記循環動力手段の一次側の前記循環経路に向けて前記低温液体を供給する、
ことを特徴とする循環経路を有する蒸気使用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る循環経路を有する蒸気使用システムは、対象流体を蒸気使用装置等の対象装置に向けて循環させるシステムの構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気使用システムは、ボイラー等で生成された蒸気を蒸気使用装置に向けて供給するシステムであり、蒸気使用装置は与えられた蒸気を熱源として所定の動作を行う。蒸気使用装置としては様々なものがあるが、装置の動作の内容によっては蒸気だけでなく冷却水も供給する場合がある。
【0003】
このような蒸気使用システムとしては、後記特許文献1に開示されている装置がある。この加熱冷却装置は、蒸気使用装置としての反応釜1のジャケット部2に加熱用流体タンク24を介して蒸気供給管15を接続している。また、反応釜1のジャケット部2に対して冷却用真空タンク16を配置し、管路14によって接続している。
【0004】
そして、ジャケット部2の下部に排出管19の一端を接続し、他端をエゼクタ6のノズル部12と接続する。エゼクタ6は循環通路9上に設けられており、循環通路9の両端はタンク8に接続されている。循環通路9にはさらに循環ポンプ10が設けられており、タンク8内の冷却水等が循環通路9を循環している。
【0005】
この加熱冷却装置においては、加熱と冷却の切り換え時、加熱用流体タンク24と冷却用真空タンク16をそれぞれ切り換えることによって、時間遅れなく加熱工程と冷却工程を切り換え、温度制御性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述の特許文献1に開示された加熱冷却装置においては、蒸気使用装置としての反応釜1のジャケット部2に蒸気を供給するために加熱用流体タンク24を設け、さらに冷却水を供給するために冷却用真空タンク16及びタンク8を設けている。すなわち、特許文献1に開示された加熱冷却装置においては、これら各種タンクを設ける必要があり、装置の大型化、複雑化を招く。
【0008】
そこで本願に係る循環経路を有する蒸気使用システムは、簡易な構成で蒸気及び冷却水等の低温液体を供給することができる循環経路を有する蒸気使用システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に係る循環経路を有する蒸気使用システムは、
蒸気及び低温液体の混合によって生成される対象流体が、大気圧よりも高い所定の高圧力を維持しながら内部を循環する循環経路、
前記循環経路内を循環する前記対象流体から熱を受け取り、所定の動作を行う対象装置、
前記対象流体を前記循環経路内で循環させる循環動力手段、
前記循環経路に向けて前記蒸気を供給する蒸気供給手段、
前記循環経路に向けて前記低温液体を供給する低温液体供給手段、
前記循環経路に設けられた排出開閉弁であって、前記低温液体を供給するために、開弁することによって前記循環経路内を循環する前記対象流体の一部を循環経路外に排出する排出開閉弁、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に係る循環経路を有する蒸気使用システムにおいては、低温液体を供給するために、排出開閉弁が対象流体の一部を循環経路外に排出することにより、低温液体の循環経路への供給を受容させる。
【0011】
すなわち、循環経路には対象流体が高圧力で循環しているが、排出開閉弁を通じて対象流体の一部を循環経路外に排出することによって循環経路の圧力を低下させ、循環経路を低温液体が供給され易い状態にすることができる。したがって、簡易な構成で蒸気及び冷却水等の低温液体を供給することができる循環経路を有する蒸気使用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願に係る循環経路を有する蒸気使用システムの第1の実施形態である蒸気使用システム1を示す全体のブロック図である。
【
図2】
図1に示す制御部8が実行するプログラムのフローチャートである。
【
図3】
図1に示す蒸気使用システム1における循環路10の検出温度bと低下させるべき圧力cとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る循環経路を有する蒸気使用システムの下記の要素に対応している。
【0014】
蒸気使用システム1・・・循環経路を有する蒸気使用システム
ポンプ2・・・循環動力手段
排出用電磁弁4・・・排出開閉弁
温度センサ6・・・温度測定手段
制御部8・・・制御手段
循環路10・・・循環経路
蒸気使用装置18・・・対象装置
蒸気用電磁弁21・・・蒸気供給手段
冷却水用電磁弁22・・・低温液体供給手段
冷却水・・・低温液体
混合流体・・・対象流体
排出信号・・・開弁信号
温度信号・・・検出信号
【0015】
[第1の実施形態]
本願に係る循環経路を有する蒸気使用システムの第1の実施形態を説明する。
【0016】
(蒸気使用システム1の構成の説明)
図1に本実施形態に係る蒸気使用システム1の全体構成を示す。蒸気使用システム1はポンプ2が設けられた循環路10を備えている。そして、ポンプ2の駆動によって、循環路10内を蒸気等の混合流体が循環する。混合流体は、蒸気、温水、フラッシュ蒸気及び蒸気の凝縮によって発生したドレンが混合した流体である。循環の上流が一次側、下流が二次側である。
【0017】
循環路10上には蒸気使用装置18が設置されており、蒸気使用装置18は循環路10内を循環する混合流体との間で熱交換を行い、混合流体を熱源として所定の動作を行う。蒸気使用システム1はクローズドシステムであり、循環路10内の高圧(基準高圧力)を維持したままで混合流体を循環させる。
【0018】
蒸気使用装置18の一次側の循環路10には圧力センサ7が設けられており、循環路10内の圧力を検出して圧力信号を出力している。また、圧力センサ7の一次側の循環路10には温度センサ6が設けられており、循環路10の温度を検出して温度信号を出力している。そして、圧力信号及び温度信号は、それぞれラインL1及びラインL2を通じて制御部8に取り込まれる。
【0019】
ポンプ2は、一次側から二次側に向けて混合流体を送り出して循環させており、ポンプ2の二次側の循環路10には、この混合流体で駆動するエゼクタ15が接続されている。そして、このエゼクタ15の吸引口には蒸気供給管31が接続されており、ボイラーで生成された蒸気が蒸気供給管31を通じて循環路10内に供給(吸引)される。なお、蒸気供給管31には蒸気用電磁弁21が設けられている。
【0020】
また、ポンプ2の一次側の循環路10には冷却水供給管32が接続されており、冷却水供給管32を通じて循環路10内には冷却水が供給される。供給された冷却水は蒸気によって加熱され温水として混合流体に混入する。なお、冷却水供給管32には冷却水用電磁弁22が設けられている。
【0021】
蒸気使用装置18の二次側の循環路10には排出管34が接続されており、この排出管34には排出用電磁弁4が設けられている。そして、制御部8は排出用電磁弁4、蒸気用電磁弁21及び冷却水用電磁弁22に対し、それぞれラインL3、ラインL6及びラインL7を通じて信号を与え、各電磁弁の開閉を制御する。
【0022】
(蒸気使用システム1の動作の説明)
次に、蒸気使用システム1の動作を説明する。前述のように、ポンプ2の駆動によって循環路10内には混合流体が循環しており、蒸気使用装置18はこの混合流体を熱源として所定の動作を行っている。
【0023】
蒸気使用システム1を作動している間、制御部8は
図2に示すフローチャートの処理を繰り返す。制御部8のこの処理の内容をフローチャートに基づいて説明する。まず、制御部8はラインL1を通じて圧力センサ7からの圧力信号を取り込み、循環路10内の圧力aを把握し(ステップS2)、圧力aが所定の基準高圧力よりも低いか否かを判別する(ステップS4)。
【0024】
そして、圧力aが所定の基準高圧力よりも低い場合、制御部8は蒸気用電磁弁21に信号を与えて開弁させ、圧力aが所定の基準高圧力に達するまで、蒸気供給管31を通じて循環路10内に蒸気を供給する(ステップS6)。蒸気用電磁弁21の開弁によって、蒸気はエゼクタ15に吸引されて循環路10内に供給される。
なお、ステップS4において、仮に圧力aが所定の基準高圧力よりも高い場合、そのままステップS8以降の処理に進むが、循環路10内の蒸気は蒸気使用装置18の熱源として使用されることによって凝縮してドレンを生じるため、圧力aは自然低下して基準高圧力に達するに至る。
【0025】
次に制御部8は、ラインL2を通じて温度センサ6からの温度信号を取り込み、循環路10内の温度bを把握し(ステップS8)、温度bが所定の基準温度よりも高いか否かを判別する(ステップS10)。蒸気使用装置18が必要とする熱源の温度に応じて基準温度が設定されているが、一般にボイラーで生成された蒸気は高温であり、そのままでは蒸気使用装置18の熱源として使用するには温度が高すぎる。
【0026】
このため、循環路10内に冷却水を供給する必要があるが、循環路10内は基準高圧力に維持されているため、このままの状態では冷却水を入れることができない。このため本実施形態では、循環路10内の混合流体を必要量だけ排出管34から排出することによって、循環路10内の圧力を低下させ、冷却水の供給を受容可能な状態にする。
【0027】
すなわち温度bが所定の基準温度よりも高い場合、制御部8はステップS10からステップS12に進み、ステップS8で把握した温度bに基づいて、低下させるべき圧力cを求める。具体的には、
図3のグラフが表す関係を制御部8は予め記憶しておき、温度bから低下させるべき圧力cを求める。なお制御部8は、予め記憶した所定の数式に基づいて温度bと基準温度との差から供給すべき冷却水量を求め、この冷却水量を供給するために必要な循環路10内の低下圧力量を算出してもよい。
【0028】
低下させるべき圧力cを求めた後、制御部8は排出用電磁弁4に信号を与えて開弁させ、圧力cの範囲内で循環路10内の圧力が低下するよう、排出管34を通じて循環路10内の混合流体を排出する(ステップS14)。循環路10内は高圧であるため、排出用電磁弁4の開弁によって混合流体は自動的に排出される。
この後、制御部8は冷却水用電磁弁22に信号を与えて開弁させ、冷却水供給管32を通じて循環路10内に冷却水を供給する(ステップS16)。ステップS12の処理で循環路10内の圧力は低下しているため、冷却水は無理なく供給される。このとき、前述のように冷却水供給管32は、ポンプ2の一次側の循環路10に接続されているため、冷却水はポンプ2の駆動によって循環路10内に円滑に引き込まれる。
【0029】
なお、ステップS10において、仮に温度bが所定の基準温度よりも低い場合、そのまま処理を終了するが、循環路10内にはステップS6で蒸気が供給されるため、この蒸気の供給を受けて混合流体は加熱され、これに従って温度bは徐々に高くなって基準温度に達するに至る。
【0030】
本実施形態においては、排出開閉弁として排出用電磁弁4を例示したが、排出用電磁弁4に代えて、配管内の圧力を入力電流に対して比例的に制御することができる比例電磁リリーフ弁や、さらに比例電磁リリーフ弁に減圧弁を一体に組合せた比例電磁式リリーフ付減圧弁を用いることもできる。
【0031】
また、本実施形態においては、蒸気使用装置18の一次側の循環路10に圧力センサ7を設け、循環路10内の圧力を検出した。これに対し、蒸気使用装置18の一次側と二次側にそれぞれ圧力センサを設け、蒸気使用装置18の前後の圧力差を求めることによって補充すべき圧力を把握し、循環路10内を基準高圧力に維持するように制御してもよい。
【0032】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、低温液体として冷却水を例示したが、循環経路内の温度を低下させるものであれば他の液体を用いてもよい。また、前述の実施形態においては、排出開閉弁として排出用電磁弁4、比例電磁リリーフ弁又は比例電磁式リリーフ付減圧弁を例示したが、循環経路に設けられており、開弁することによって循環経路内を循環する対象流体の一部を循環経路外に排出するものであれば、他の弁を採用することができる。
【0033】
また、排出開閉弁として排出用電磁弁4に代えて、開弁信号を受けず、設定圧力以上になると開弁し、設定圧力以下になると閉弁するリリーフ弁や安全弁を用いることもできる。なお、この場合、ステップS12において低下させるべき圧力cは設定圧力(所定値)と同一である。
【0034】
また、前述の実施形態においては、循環動力手段としてポンプ2を例示したが、対象流体の一部を循環経路内で循環させるものであれば他の構成を用いることができる。さらに、前述の実施形態においては、冷却水供給管32をポンプ2の一次側の循環路10に接続し、冷却水がポンプ2の駆動によって循環路10内に円滑に引き込まれるように構成したが、循環路10に冷却水用のエゼクタを配置し、このエゼクタによって冷却水を引き込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1:蒸気使用システム 2:ポンプ 4:排出用電磁弁 6:温度センサ
8:制御部 10:循環路 18:蒸気使用装置 21:蒸気用電磁弁
22:冷却水用電磁弁