(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】タオル製品
(51)【国際特許分類】
A41B 15/00 20060101AFI20240612BHJP
A47K 10/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A41B15/00
A47K10/02 C
(21)【出願番号】P 2021032172
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】512332563
【氏名又は名称】プリントメモリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【氏名又は名称】松島 理
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】中山 恭一
(72)【発明者】
【氏名】合田 佑
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061621(JP,A)
【文献】登録実用新案第3223692(JP,U)
【文献】特開平07-189063(JP,A)
【文献】登録実用新案第3206869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/00- 9/16
A41B13/00-17/00
A47K10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1生地と、第1生地と重なる第2生地と、
第1生地と第2生地の接する面の全域にわたって設けられた第1生地と第2生地を接合する
接着剤のボンディング層を有し、
周辺部に縫製による飾り処理が施され、
第1生地はポリエステル糸を有する編物であり、非パイル面である外面をボンディング層と反対の面に有し、
第2生地はパイル面である外面をボンディング層と反対の面に有する
タオル製品。
【請求項2】
第1生地は冷感生地である請求項1に記載の
タオル製品。
【請求項3】
第2生地は第1地糸と第2地糸と無撚糸と不溶性糸の複合糸であるパイル糸とにより経編機により編成され、第1地糸と第2地糸により基布が形成されパイル糸によりパイル面が形成されたパイル編地である請求項1または請求項2に記載の
タオル製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面と裏面が異なる生地によって構成される複合パイル布製品に関する。
【背景技術】
【0002】
表面と裏面に異なる生地を用い、これを重ねて周囲を縫着して構成された複合ハンカチが特許文献1~3に記載されている。特許文献1~3のすべてにおいて、一方の面は織物生地であり、他方は編物生地である。そして、織物生地の面が通常のハンカチの機能を有している。また、編物生地の面は、吸湿性と放湿機能を有したり、ワイピング機能を有するようになっており、1枚のハンカチで複数の機能を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-100267号公報
【文献】実用新案登録第3178407号公報
【文献】実用新案登録第3204424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載されているものなど、従来の複合ハンカチは織物生地と編物生地の組み合わせか、性質の異なる2種類の織物生地の組み合わせであった。このように性質の異なる2種類の生地を組み合わせることによって、通常のハンカチにはない多彩な機能を持たせることができる。
【0005】
しかし、2枚の生地を周辺で縫着する場合、2枚の生地を引き剥がすような力が加わったときに、織物生地の縁部では繊維が滑脱する場合があり、そこから結合が損なわれて分離してしまうことがある。また、周辺部のみの接続であるので、それ以外の部分では2枚の生地が使用中に離反し、浮き上がったような感じになり、使い勝手もよくない。
【0006】
この発明は、機能性が高く、しかも厚みと一体感があり、使用感の良い複合パイル布製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、この発明の複合パイル布製品は、第1生地と、第1生地と重なる第2生地と、第1生地と第2生地を接合するボンディング層を有し、第1生地はポリエステル糸を有する編物であり、非パイル面である外面をボンディング層と反対の面に有し、第2生地はパイル面である外面をボンディング層と反対の面に有する。第1生地は冷感生地としてもよい。また、第2生地は第1地糸と第2地糸と無撚糸と不溶性糸の複合糸であるパイル糸とにより経編機により編成され、第1地糸と第2地糸により基布が形成されパイル糸によりパイル面が形成されたパイル編地としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明の複合パイル布製品は、2種類の異なる生地を重ね合わせて結合しているため、表面と裏面で異なる性質を有し、多彩な機能を備えることができ、また十分な厚さがあるのでボリューム感がり、水分吸収量も大きい。2枚の生地が全面で接続されているので、生地同士の離反がなく、一体感があり使い勝手もよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】複合パイル布製品の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第2生地の例の断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】第2生地の例のパイル編地を構成する各糸を示す組織図である。
【
図6】第2生地の例のパイル編地の編成を示す組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について説明する。
図1は複合パイル布製品を示す斜視図、
図2は同断面図、
図3は複合パイル布製品の構成を模式的に示す斜視図である。複合パイル布製品1は、第1生地2と第2生地3を有する。この第1生地2と第2生地3とは実質的に同じ形状である。その形状は、布製品の種類に合わせて適宜選択する。第1生地2と第2生地3の接する面には全域にわたってボンディング層4が設けられ、これによって第1生地2と第2生地3は接合される。
【0011】
複合パイル布製品1は第2生地3にパイルを有する布製品であり、タオル製品としては、フェイスタオル、スポーツタオル、タオルハンカチ、バスタオル、タオルケットなどを選択でき、マフラーなどを選択してもよい。
図1はタオルハンカチの例であり、第1生地2と第2生地3はたとえば標準的なハンカチの寸法の正方形である。
【0012】
第1生地について説明する。第1生地2はポリエステル糸を有する編物である。編成は特に制限はないが、本例は経編である。特にポリエステルの長繊維を使用し、ボンディング層4と反対の面である外面2aの側に現われるようにすることにより、外面2aを印刷に適した面にすることができ、転写印刷を施すこともできる。また、第1生地2の外面はパイルが形成されていないフラットな非パイル面である。
図1はタオルハンカチの例であるが、このような場合はポリエステルのマイクロファイバー糸が外面に表れるように使用されることが好ましく、ここに転写印刷を施すことができる。
【0013】
第2生地3について説明する。第2生地3は織物であってもよく、編物であってもよい。糸も、綿糸、ポリエステル長繊維、スパン糸など任意に選択できる。そして、第2生地3の外面3a、すなわちボンディング層4と反対の面はパイル面になっている。このパイル面はループ状のパイルによって形成されることが好ましい。
【0014】
第2生地3の例について詳細について説明する。
図4は第2生地の例の構造を示す断面図、
図5は第2生地の例のパイル編地を構成する各糸を示す組織図、
図6は第2生地の例のパイル編地の編成を示す組織図である。本例の第2生地3は、第1地糸L1、第2地糸L2、パイル糸L3で経編機によって編製される経編生地である。第1地糸L1と第2地糸L2により経編の基布3bが形成される。この基布5の一方の面を外面3aとし、この外面3aにパイル糸L3によるループ状のパイルが形成される。他方の面、すなわち、ボンディング層4の側の面3cにはパイルを設ける必要はない。
【0015】
使用される糸の例について説明する。第1地糸L1、第2地糸L2はポリエステルのフィラメント糸である。パイル糸L3には無撚糸と不溶性糸の複合糸が使用される。この複合糸は綿糸に他の糸を合わせ、綿糸の撚りの撚り方向に対して逆方向にこの組み合わせの糸を回転させて綿糸の撚りをなくした複合糸である。他の糸として不溶性の糸を使用することによって、その糸がそのまま残るようにしたものである。例えば、細いポリエステル単糸を使用する。
【0016】
本例で使用した糸は、次の通りである。
第1地糸L1:ポリエステルフィラメント(75d/36f)
第2地糸L2:ポリエステルフィラメント(75d/36f)
パイル糸L3:コットン30/2とポリエステル20d単糸による無撚糸
【0017】
編成について説明する。第2生地3は、縦編編成を有するパイル生地であり、機械編みで製造することができ、本例ではカール・マイヤー社の経編機を使用している。
【0018】
縦編編成の各列は、3本の糸を一組にしている。第1地糸L1、第2地糸L2、そして、外面3aに現れるパイル糸L3が組となって各列で用いられる。
【0019】
第1地糸L1(挿入)は00/55”を往復する。一方、第2地糸L2(鎖編)は01/10で往復する。ニードルゲージに対し1-in,1-outで、1/2ゲージにセットされている。
【0020】
パイル糸L3は長いパイルを形成する場合には10/56であるが、短いパイルを形成したい場合は10/34とすることができる。
【0021】
パイル糸L3は基布3bの外面3aにループ状のパイルを形成する。外面3aは通常の縦編みパイルの状態である。パイル糸L3は無撚糸であるので、ボリューム感があり、しかも柔らかな手触りである。本例では、ポリエステル糸のような不溶性の糸を使用しているので、水で洗浄しても無撚糸の回りに巻き着いている糸はなくならない。これにより、無撚糸の毛羽落ちが生じにくい。
【0022】
こうして得られた第2生地は、ハンドタオルやバスタオル、タオルハンカチなどタオル製品のための原反として適している。特にこのパイル編地はタオルハンカチに適している。
【0023】
ボンディング層について説明する。本発明では、第1生地2と第2生地3は、その合わせ面において全面的にボンディングにより接続される。ボンディングとしては2枚の生地を強固に接合し、長期間において接合力を維持できるような方法であればよい。例えば、第1生地2と第2生地3の間に接着材を挟んで、高温・高圧でプレスする。貼り合わせるために使われる接着剤は、フィルム状のものやポリウレタン樹脂のものを使用することができる。これにより布地が2枚貼り合った状態でも、柔軟性が保たれる。
【0024】
さらに本例では、周辺部に縫製による飾り処理を施している。本発明では2枚の生地はボンディングによって接合するので、周囲を縫着により接合する必要はない。しかし、飾り処理部5を設けることによって、周辺部における生地のほつれを防止でき、また、装飾性を高めることができる。
【0025】
以上、複合パイル布製品としてタオルハンカチを選択した場合を中心に説明したが、マフラーあるいはタオルマフラーの場合について説明する。この場合、第1生地1と第2生地2は、首に巻き付けるのに十分な長さを有する帯状に形成する。そして、第1生地2は外面2aが冷感を有する冷感生地とすることが好ましい。たとえば、熱伝導性の高いポリエチレンを使用することにより熱を拡散しやすくなり、この面を触ったときに冷たく感じる冷感機能をもたせることができる。
【0026】
なお、冷感生地の第1生地2はタオルハンカチなどの布製身の回り品に適用してもよい。第2生地3はパイル面を有するので汗などを拭うのに十分な吸水性と柔らかさを有し、一方、第1生地2を冷感生地とすることによってその面を顔などに当てたときに、冷涼な感じを与えることができる。
【0027】
この発明の複合パイル布製品は、第1生地2と第2生地3をボンディングにより接合しており、一体感のある厚みの布製品を実現している。吸水量も大きい。
【符号の説明】
【0028】
1.複合パイル布製品
2.第1生地
3.第2生地
4.ボンディング層
5.飾り処理部
L1.第1地糸
L2.第2地糸
L3.パイル糸