(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】アミノ酸自己組織化超分子ポリマーおよびその製造と使用
(51)【国際特許分類】
C07C 233/47 20060101AFI20240612BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20240612BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240612BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240612BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240612BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240612BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240612BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20240612BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240612BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C07C233/47
A61K8/84
A61K8/44
A61Q11/00
A61Q19/00
A61K9/70
A61K8/02
A61K31/785
A61P31/04
C07C231/12
(21)【出願番号】P 2021517889
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2019089816
(87)【国際公開番号】W WO2019233375
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】201810562197.6
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810562174.5
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810562220.1
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520479180
【氏名又は名称】▲蘇▼州欧▲麗▼特生物医▲薬▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼健
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107260563(CN,A)
【文献】特開2004-315515(JP,A)
【文献】特開昭49-085244(JP,A)
【文献】特開平06-040850(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106118914(CN,A)
【文献】特開平03-223398(JP,A)
【文献】Sivaramakrishna, D. et al,Self-assembly, supramolecular organization, and phase transitions of a homologous series of N-acyl-L-alanines (n = 8-20),Colloids and Surfaces, A: Physicochemical and Engineering Aspects ,2015年,471,p.108-116, Supplementary data p.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸自己組織化超分子ポリマーの製造方法であって、
前記ポリマーは、N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成され、
前記ポリマーは、ラウリン酸を実質的に含有しない又は含有せず、
前記ポリマーの重量平均分子量は2000~500万の範囲内にあり、
前記ポリマーの融点は82~84℃であり、
下記の工程を含む
製造方法:
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、溶媒、L-アラニンおよび触媒を混合して攪拌し、
前記アミノ酸自己組織化超分子ポリマーを得る。
【請求項2】
前記N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続することで、下記式(I)で表される構造を形成する、請求項1に記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの製造方法。
【化1】
【請求項3】
前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、および上記溶媒と水からなる混合溶媒からなる群から選ばれるものであり;前記触媒は、硫酸、p-トルエンスルホン酸、および乳化剤からなる群から選ばれる1種または2種以上であり;前記N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、前記溶媒、前記L-アラニン、前記触媒のモル比は1:(5~10):(0.2~1.1):(0.001~0.2)であり;前記攪拌の条件は:温度25℃~100℃、圧力5kg~50kg、時間1~3時間であり、かつ、
前記N-ラウロイル-L-アラニン粗製品は、下記の工程によって製造されることを特徴とする、請求項
1に記載の
製造方法;
(1)L-アラニンおよび金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニン塩溶液を得る;
(2)以上で得られるL-アラニン塩溶液に塩化ラウロイルと金属無機塩基を順次に加えた後、攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得る;
(3)以上で得られるペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させた後、氷浴で放置してろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得る;さらに、
前記工程(1)において、前記L-アラニンと金属無機塩基のモル比は1:(1~1.5)であり;前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上であり;かつ、前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、およびテトラヒドロフランからなる群から選ばれる1種または2種以上である;
または、
前記工程(2)において、前記塩化ラウロイルとL-アラニンの仕込モル比は(0.8~1):1であり;前記攪拌の条件は:温度5~50℃、時間0.5~3.5時間であり;前記金属無機塩基の濃度は30~80%であり;前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸系界面活性剤の製造の技術分野に属し、具体的には、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーおよびその製造と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、家庭用化学製品産業、農業、医薬品産業などの多くの分野で不可欠な構成要素です。現在市場で使用されている界面活性剤は数十種類もあるが、一般的に使用されているものは主に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SLS)、ラウレス硫酸ナトリウム(AES)、ラウリル硫酸ナトリウム(K12)である。これらの3つの主要な界面活性剤は、数十年間、ひいては数百年間もの間で使用されてきたため、使用の過程でそれらの悪影響が徐々に現れ、人間の安全および環境への影響がよく報告される。
【0003】
他の界面活性剤としては、糖類であるアルキルポリグリコシド(APG)や、ラウロイル-L-グルタミン酸、ラウロイルグリシン、ラウロイルサルコシンのようなアミノ酸系界面活性剤などがある。それらは生体物質系界面活性剤であり、安全性が高く、生分解性に優れ、肌触りに優れながら、注目を集めているが、このような界面活性剤は、洗浄力が低いため、主な界面活性剤として単独で使用されることは殆どなく、他の主な界面活性剤と組み合わせて使用する必要があることは多く、家庭用化学製品の主な界面活性剤による安全性と生分解性でのネガティブな問題を根本的に解決していなかった。
【0004】
純N-ラウロイル-L-アラニンは界面活性剤として、優れた湿潤性、発泡性、抗菌性および防食性、帯電防止能を備え、実質的に無毒で無害で、肌にやさしく、生分解生成物はアミノ酸や脂肪酸であり、環境に影響を実質的に与えず、しかも他の界面活性剤との相溶性も良好である。
【0005】
しかしながら、Schotten-Banmann縮合反応などの従来の方法によって製造されるN-ラウロイル-L-アラニンを表面活性剤としてテストすると、その洗浄力は理論のように高いわけではないことが分かり、発明者は一連の探索的実験を行った結果、N-ラウロイル-L-アラニンの洗浄力の低下に繋がる主な理由は、この方法によって製造されるN-ラウロイル-L-アラニンは、ラウリン酸を高い含有量で含むが、ラウリン酸の存在で、それは自己組織化ポリマーを形成することができなくなり、それから製造されるナトリウム塩化合物の効果に関するデータは本発明ほど良くない、という知見を見出した。高い含有量のラウリン酸は、製品の純度の低下に繋がり、N-ラウロイル-L-アラニンの品質に深刻な影響を及ぼし、不純物を除去するためにも、元の製造プロセスの上でさらにクロマトグラフィーにより製品をさらに精製する必要があり、取り扱いが煩雑で、コストも高く、工業生産の実現が困難になる。
【0006】
以上により、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーの製造と使用は期待されており、ただし、該方法で製造されるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、ラウリン酸の含有量がHPLCやGCによって検出できず、洗浄効果に優れると共に、該方法は、プロセスが簡単で、コストが低く、工業生産を実現しやすい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、純度が低く、不純物含有量が高く、製品の品質に深刻な影響を及ぼすという、従来技術によって製造されるN-ラウロイル-L-アラニンの欠陥を克服するために、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの製造方法と使用を提案することにあり、製造されるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーは、生分解性に優れ、洗浄力が強く、家庭用化学製品産業、農業および医薬品産業などの分野で好適に使用できる。
【0008】
本発明にかかるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの構造は、
【0009】
【0010】
である。
本発明にかかるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、N-ラウロイル-L-アラニンを基本単位として、水素結合により自己組織化して超分子ポリマーとなり、前記ポリマーは、ラウリン酸を実質的に含有しない;実質的に含有しないとは、ラウリン酸をHPLCやGCによって検出できないことを意味する。
【0011】
本発明は、N-ラウロイル-L-アラニンを基本単位として、水素結合により自己組織化して超分子ポリマーとなり、超分子ポリマーの重量平均分子量の数値は2000~500万の範囲内にあるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーを開示した。
【0012】
以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、ラウリン酸を実質的に含有しないアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの製造方法であって、下記の工程を含む方法は提出される:
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品に溶媒、L-アラニンおよび触媒を加え、所定の条件下で攪拌した後、冷却してろ過し、得られる固形物を洗浄して乾燥し、ラウリン酸を実質的に含有しないN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得る。
【0013】
前記N-ラウロイル-L-アラニン粗製品の製造は、下記の工程を含む:
(1)L-アラニンおよび金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニン塩溶液を得る;
(2)以上で得られるL-アラニン塩溶液に塩化ラウロイルと金属無機塩基を順次に加えた後、所定の条件下で攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得る;
(3)以上で得られるペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させた後、氷浴で放置してろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得る。
【0014】
前記方法において、前記工程(1)における前記L-アラニンと金属無機塩基のモル比は1:(1~1.5)である。
前記方法において、前記工程(1)における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0015】
前記方法において、前記工程(1)における前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0016】
前記方法において、前記工程(1)における前記蒸留水と有機溶媒の体積比は1:(1~1.5)である。
前記方法において、前記工程(2)における前記塩化ラウロイルとL-アラニンの仕込モル比は(0.8~1):1である。
【0017】
前記方法において、前記工程(2)における前記攪拌の条件は:温度5~50℃、時間0.5~3.5hである。
前記方法において、前記工程(2)における前記金属無機塩基の濃度は30~80%である。
【0018】
前記方法において、前記工程(2)における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0019】
前記方法において、前記工程(4)における前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、または上記溶媒と水からなる混合溶媒からなる群から選ばれるものである。
【0020】
前記方法において、前記工程(4)における前記触媒は、硫酸、p-トルエンスルホン酸、乳化剤からなる群から選ばれる1種または複数種である。
前記方法において、前記工程(4)における前記N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、溶媒、L-アラニン、触媒のモル比は1:(5~10):(0.2~0.6):(0.001~0.2)である。
【0021】
前記方法において、前記工程(4)における前記乾燥の温度は40~70℃である。
前記方法において、前記工程(4)における前記攪拌の条件は:温度25℃~100℃、圧力5kg~50kg、時間1~3hである。
【0022】
本発明はさらに、下記の構造を有する、ラウリン酸を実質的に含有しないアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩に関する。
【0023】
【0024】
ただし、nはN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムで形成される自己組織化超分子ポリマーの分子の数を表す。
本発明はさらに、N-ラウロイル-L-アラニンナトリウムを基本単位として、水素結合により自己組織化して超分子ポリマーとなり、重量平均分子量の数値は2800~77万の範囲内にある、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩に開示する。
【0025】
さらに、以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、前記製造方法によって得られるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの、家庭用化学製品分野、農業、医薬品産業における界面活性剤としての使用は提出される。
【0026】
さらに、以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、前記製造方法によって得られるN-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成される超分子アミノ酸は提出される。
【発明の効果】
【0027】
従来技術に比べて、本発明の有益な技術効果は:
1、本発明にかかるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、その製造方法のプロセス工程が簡単であり、天然ラウリン酸と天然L-アラニンの縮合によって形成されるもので、通常の条件下で安定して存在し、人間に無毒で無害であり、人体や自然に入るとすぐにラウリン酸とL-アラニンに生分解され、生分解生成物もリサイクル可能な天然物であり、しかも反応条件が緩やかで工業生産に適している。
【0028】
2、本発明にかかる方法によって製造されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーにおいて、ラウリン酸の含有量はHPLCやGCによって検出できず、即ち、ラウリン酸の含有量はN-ラウロイル-L-アラニンの構造および性能に影響を与えず、製品の品質に対するラウリン酸の影響を効果的に回避した。
【0029】
3、本発明にかかる方法によって得られるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、三次元ネットワーク構造を取り、油汚れなどの有機物を強力に吸着でき、使用中でpHを6~7とし、pHに対する人間の要求をより満たせ、その90%以上はナトリウム塩として存在し、残部は酸として存在し、二次元と三次元の形で共存し、強力な洗浄能力と、細菌、農薬、臭気などを吸着する特性とが付与される。
【0030】
4、本発明にかかる方法によって製造されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、構造と性能が安定し、且つ超分子の性質も持ち、その分子は溶液中で、水素結合、静電力、疎水力やπ-π相互作用などの各種のゲル化因子の存在によって、液体成分を静止させ、三次元ネットワーク空間構造を持つアミノ酸を形成し、それにより物理的滅菌、臭気除去、農薬残留物除去などの特性を備える:優れた静菌率を有し、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対する静菌率はいずれも100%に達する;農薬残留物を効果的に除去し、メタミドホスに対する除去率は64.63%、アセフェートに対する除去率は74.66%に達する;優れた脱臭性能も共に有する。
【0031】
5、本発明にかかる方法によって製造されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、無数の柱状体の形で存在し、分子間に巨大な隙間があり、薬物分子、農薬残留物や微細な無機粒子などの有機物をカプセル化することができる。医薬品分野での使用において、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、薬物分子をカプセル化し、酵素の作用下で薬物の活性成分をゆっくりと放出させ、徐放剤として機能することができる;農薬分野での使用において、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、農薬をカプセル化し、農薬が植物の内部に浸透して侵入するのを防ぐことができる;化粧品分野での使用において、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーは天然油と組み合わせると、人体自身から分泌される油に近くなるように油の物理的性質を変化させ、優れた触り心地を有する。アミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、化粧品の活性成分をカプセル化することにより、活性成分を酸化・失活しにくくすることもできるし、粒子を化粧品系に均一に分散・懸濁させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の実例3における合成方法によってN-ラウロイル-L-アラニンを製造する化学反応式である;
【
図2】
図2は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの赤外スペクトルである;
【
図3a】
図3aは、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの1H-NMRスペクトルである;
【
図3b】
図3bは、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの13C-NMRスペクトルである;
【
図4】
図4はN-ラウロイル-L-アラニンの標準クロマトグラムである;
【
図5】
図5は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである;
【
図6】
図6は、ラウリン酸の、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである;
【
図7】
図7は、L-アラニンの、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである;
【
図8】
図8は、カラムによって調製して分離されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである;
【
図9】
図9は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の構造形成図である;
【
図10a】
図10aは、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの300倍電子顕微鏡画像である;
【
図10b】
図10bは、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの1000倍電子顕微鏡画像である;
【
図10c】
図10cは、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの2000倍電子顕微鏡画像である;
【
図11a】
図11aは、市販のN-ラウロイル-L-アラニン(ラウリン酸を2~5%含有)の500倍電子顕微鏡画像である;
【
図11b】
図11bは、市販のN-ラウロイル-L-アラニン(ラウリン酸を2~5%含有)の1000倍電子顕微鏡画像である;
【
図11c】
図11cは、市販のN-ラウロイル-L-アラニン(ラウリン酸を2~5%含有)の2000倍電子顕微鏡画像である;
【
図12】
図12は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニンから超分子アミノ酸ナトリウム塩をさらに形成する形成過程図である。
【
図13-1-13-4】
図13は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニンから超分子アミノ酸ナトリウム塩をさらに形成する分子量データ図であり、ただし、 GPC sample results:サンプルの結果 Retention Time:保持時間 Mn:数平均分子量 Mw:重量平均分子量 Mz:より高い平均分子量 Mp:ピークトップ分子量 Polydispersity: その分子量が相同体の平均値であることを指す;
【
図14-16】
図14~16は、実施例3のアミノ酸練り歯磨きの検査報告書である;
【
図17】
図17は、アミノ酸練り歯磨きで患者の歯を洗浄する前の効果である;
【
図18】
図18は、アミノ酸練り歯磨きで患者の歯を洗浄した後の効果である;
【
図20】
図20は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの質量分析スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明者は広範囲にわたって詳細に研究した結果、特定の方法により、N-ラウロイル-L-アラニンモノマーが水素結合を介して自己組織化して形成されるポリマーを、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないものにすることができると共に、油性物質を固形化させることのできる隙間含有弾性構造を形成することができることと、ポリマーが塩基と塩を形成すると、ポリマー塩もまた界面活性剤として機能することができることと、を見出した。それらに基づき、本発明を完成した。
【0034】
本文に用いられるように、「本発明で提供されるポリマーまたはその塩はラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しない」とは、例えば高速液体クロマトグラフ(紫外線検出器を備える;クロマトグラフィーカラム:ODS-2 HYPERSIL C18 250*4.6mm 5μm;移動相真空吸引ろ過脱気装置および0.45μm有機フィルター膜)によってラウリン酸を検出できないこと、即ち、ラウリン酸の含有量は、N-ラウロイル-L-アラニンが水素結合の形成により自己組織化して超分子ポリマーとなるという性質および構造に影響を与えないことを意味する。或いは、質量分析において、得られる質量分析スペクトルではラウリン酸の特徴的な分子イオンピークを検出できないことを意味する。例えば、Agilent 1200/6220液体クロマトグラフィー/質量分析計によって取得された
図20に示す質量分析スペクトルがあるが、それに限定されない。
【0035】
本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニン塩は、N-ラウロイル-L-アラニンナトリウムおよび/またはN-ラウロイル-L-アラニンカリウムである。N-ラウロイル-L-アラニンが塩基性アミノ酸と形成される塩、例えばアルギニン、ヒスチジン、リジンなどと形成される塩であっても良い。
【0036】
ポリマーまたはその塩
本発明は、N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーであって、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩を提供する。
【0037】
前記N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(I)で表される構造を形成できる:
【0038】
【化23】
。
本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの重量平均分子量は2000~500万の範囲内にあり、その融点は82~84℃である。
【0039】
本発明はさらに、前記アミノ酸自己組織化超分子ポリマーの塩を提供し、上記塩はポリマーと塩基で形成されるものであり、上記塩基は無機塩基と有機塩基を含む。
一つの好ましい例において、前記無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムからなる群から選ばれる。
【0040】
一つの好ましい例において、前記有機塩基は、天然塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、またはヒスチジン)である。
本発明で提供される前記アミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩の最大溶解度は15w/v%であり、これは溶解度法(「中国薬局方」(2015年版)汎用例)によって決定されるものであり、つまり、25℃、1気圧で、100mlの水に溶解できるN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムの自己組織化ポリマーは最大で15グラムである。
【0041】
本発明の一つの実施形態では、N-ラウロイル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーのナトリウム塩であって、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩を提供する。
【0042】
前記N-ラウロイル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(II)で表される構造を形成できる:
【0043】
【0044】
ただし、nはN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムで形成される自己組織化超分子ポリマーの分子の数を表す。
n個のN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムは、同じ平面で水素結合を介して順番に接続されている、或いはn個のN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムは、水素結合を介して順番に接続され、且つそれらの両端部が水素結合を介して接続することで、柱状に形成されている。
【0045】
提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩の重量平均分子量は2800~77万の範囲内にある;これから推測できるように、nは10~3000の範囲内にあり、得られるナトリウム塩の水への溶解度は15グラム/100mlを超えない。
【0046】
本発明はさらに、本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩と、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーまたはその塩とを含む組成物を提供し、ただし、組成物の総重量で、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーまたはその塩の重量百分率含有量は0~40%の範囲内にある。
【0047】
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(I′)で表される構造を形成できる:
【0048】
【化25】
;
その重量平均分子量は5000~500万の範囲内にあり、その融点は148~150℃である。
【0049】
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(II′)で表される構造を形成できる:
【0050】
【0051】
ただし、nは8~20000である;n個のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムは、同じ平面で水素結合を介して順番に接続されている、或いはn個のN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムは、水素結合を介して順番に接続され、且つそれらの両端部が水素結合を介して接続することで、柱状に形成されている。
【0052】
式(II′)で表されるポリマーのナトリウム塩の重量平均分子量は5000~500万の範囲内にある。
【0053】
ポリマーまたはその塩の製造方法
本発明は、下記の工程を含むアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの製造方法を提供する:
第1工程では、L-アラニンおよび金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニン塩溶液を得る;
第2工程では、以上で得られるL-アラニン塩溶液に塩化ラウロイルと金属無機塩基を順次に加え、反応系をpH=8~10にした後、所定の条件下で攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得る;
第3工程では、以上で得られるペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩をpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で1~3時間放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得る;
第4工程では、以上で得られるN-ラウロイル-L-アラニン粗製品に溶媒、L-アラニンおよび触媒を加え、所定の条件下で攪拌し、本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーを得る。
【0054】
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記蒸留水と有機溶媒の体積比は1:(1~1.5)である。
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記L-アラニンと金属無機塩基のモル比は1:(1~1.5)である。
【0055】
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0056】
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0057】
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程における前記塩化ラウロイルとL-アラニンの仕込モル比は(0.8~1):1である。
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程における前記攪拌の条件は:温度5~50℃、時間0.5~3.5時間である。
【0058】
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程における前記金属無機塩基の濃度は30~80%である;前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0059】
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、または上記溶媒と水からなる混合溶媒からなる群から選ばれるものである。
【0060】
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記触媒は、硫酸、p-トルエンスルホン酸、乳化剤からなる群から選ばれる1種または2種以上である。
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、溶媒、L-アラニン、触媒の混合モル比は1:(5~10):(0.2~1.1):(0.001~0.2);好ましくは1:(5~10):(0.2~0.5):(0.01~0.2))である。
【0061】
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記攪拌の条件は:温度25℃~100℃、圧力5kg~50kg、時間1~3時間である。
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程では、攪拌してから、冷却してろ過し、得られる固形物を洗浄して乾燥し、ラウリン酸を実質的に含有しないN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得る。
【0062】
ポリマーまたはその塩の使用
本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、油性物質の固形化に適用でき、その塩は界面活性剤として適用できる。
【0063】
本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩は、家庭用化学製品分野、農業または医薬品産業において広範に使用することができ、例えば練り歯磨き、スキンケア組成物、洗濯用洗剤、石鹸、粉石鹸、食器用洗剤、顔面マスクなどの製造に使用できるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0064】
以下、図面および実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、本発明を説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するためものではないことが理解されるべきである。また、本発明の開示内容を読み終わった後、当業者は本発明に各種の変動や修正をすることができるが、それらの均等の様態も同様に本願の特許請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0065】
実施例1 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの合成
実例1
常温で、1Lの三つ口フラスコにおいて、89g(1mol)のL-アラニンと40g(1mol)の水酸化ナトリウムを150mLの蒸留水と150mLのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0066】
25℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に218.7g(1mol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に50%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、25℃で2h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0067】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得た。
【0068】
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:7.5:0.35:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度60℃、圧力27kgの条件下で2h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に60℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が250.5gで、収率が92.3%で、純度が97%を上回り、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が82~84℃であった。
【0069】
試験により分かるように、上記の反応系を常圧条件下で攪拌すると、反応系にまだ少量のラウリン酸が検出され、最終の製品としてN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーが得られない。
【0070】
実例2
常温で、1Lの三つ口フラスコにおいて、89g(1mol)のL-アラニンと56g(1mol)の水酸化カリウムを150mLの蒸留水と150mLのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0071】
25℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に218.7g(1mol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に50%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、25℃で2h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0072】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得た。
【0073】
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.3:0.003のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力43kgの条件下で2h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に60℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0074】
得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が243.7gで、収率が89.8%で、純度が97%を上回り、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が82~84℃であった。
【0075】
実例3
常温で、1000Lの反応ケトルにおいて、89kg(1Kmol)のL-アラニンと40kg(1Kmol)の水酸化ナトリウムを150Lの蒸留水と150Lのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0076】
25℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に175kg(0.8Kmol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に50%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、25℃で2h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0077】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得た。
【0078】
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:5:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度100℃、圧力50kgの条件下で2h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に60℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0079】
得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が217.2kgで、収率が98.5%で、純度が97%を上回り、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が82~84℃であった。
【0080】
実例4
常温で、1Lの三つ口フラスコにおいて、89g(1mol)のL-アラニンと106g(1mol)の炭酸ナトリウムを150mLの蒸留水と150mLのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0081】
50℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に218.7g(1mol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に30%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=8にし、滴下完了後、25℃で3.5h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0082】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で3h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得た。
【0083】
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品にメタノール溶液、L-アラニンおよび硫酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、メタノール溶液、L-アラニン、硫酸を1:5:0.2:0.005のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力5kgの条件下で1h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0084】
得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が244.7gで、収率が90.2%で、純度が97%を上回り、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が82~84℃であった。
【0085】
実例5
常温で、1Lの三つ口フラスコにおいて、89g(1mol)のL-アラニンと106g(1mol)の炭酸ナトリウムを150mLの蒸留水と150mLのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0086】
5℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に218.7g(1mol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に80%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=10にし、滴下完了後、50℃で0.5h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0087】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で1h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得た。
【0088】
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品にメタノール溶液、L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、メタノール溶液、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:5:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度100℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に40℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0089】
得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が235.4gで、収率が86.7%で、純度が97%を上回り、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が82~84℃であった。
【0090】
実例6
常温で、1000Lの反応ケトルにおいて、89kg(1Kmol)のL-アラニンと40kg(1Kmol)の水酸化ナトリウムを150Lの蒸留水と150Lのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0091】
25℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に175kg(0.8Kmol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に50%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、25℃で2h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0092】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品を得た。
【0093】
N-ラウロイル-L-アラニン粗製品にテトラヒドロフラン溶液、L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニン粗製品、テトラヒドロフラン溶液、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:7.5:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度63℃、圧力22.5kgの条件下で2h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に60℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0094】
得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が218.2kgで、収率が99.0%で、純度が97%を上回り、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が82~84℃であった。
【0095】
実施例2 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの構造的特徴
1、赤外スペクトル解析(GBT 6040-2002)
装置:フーリエ変換赤外分光計(FTS-1000)
分光条件:被験サンプルのN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーと臭化カリウム(スペクトル的に純粋なCP、国薬化学試剤集団社から購入)を1:100の比率で十分に混合・研磨・プレスした;波長スキャン範囲は4000cm-1~400cm-1で、解像度は4cm-1で、スキャン回数は16回とした。
【0096】
図2は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの赤外スペクトルである。
図2に示すように、実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの赤外スペクトルのデータは:
IR Vmax(KBr):3322cm-1(N-H);2955 cm-1,2871 cm-1,1377 cm-1(CH3);2919 cm-1,2850 cm-1,1469 cm-1,720 cm-1(=CH2);1646 cm-1(C=O);1541 cm-1(C-N,N-H);1271 cm-1,2120 cm-1(COOH);1707 cm-1(C=O);1414 cm-1(-OH);1241 cm-1(C-O)。
【0097】
2、NMR解析(JY/T 007-1996)
UNITY-400NMR分光計を用いて、得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーについてNMR解析をした。
図3aは、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの1H-NMRスペクトルである;
図3bは、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの13C-NMRスペクトルである。NMRで得られたデータは:
1H NMR(DMSO): δ7.95 (d, 1H); 4.15 (m, 1H); 2.08 (t, 2H); 1.48 (m, 2H); 1.2 (m, 19H); 0.86 (t, 3H);
13C NMR(CDCl3): δ174.63; 171.77; 47.74; 35.11; 31.33; 29.08; 29.06; 29.01; 28.87; 28.76; 28.67; 25.24; 22.13; 18.03; 13.92。
【0098】
3、HPLC解析(GBT 16631-2008)
高速液体クロマトグラフィーは、紫外線検出器を用いて、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを認識・同定した。サンプルのN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの保持時間を標準製品と比較して物質を認識し、且つ面積正規化法によって定量化した。特に指定のない限り、全ての試薬はスペクトル的に純粋であり、水は超純水であった。
【0099】
20mmolの緩衝塩溶液(pH 3.0)の調製方法:リン酸二水素カリウム(KH2PO4)を0.001gの精度で1.36g秤量し、100mLのフラスコにおいて水で溶解させ、500mL定容瓶に移し、水を加えて目盛りまで定容し、20mmolのリン酸二水素カリウム溶液を得、リン酸でpHを3.0に調節し、緩衝塩溶液を得た。
装置:高速液体クロマトグラフ:紫外線検出器を備える;クロマトグラフィーカラム:ODS-2 HYPERSIL C18 250 *4.6mm5μm;移動相真空吸引ろ過脱気装置および0.45μm有機フィルター膜。
【0100】
測定:
(1)標準サンプル溶液の調製
30mgのN-ラウロイル-L-アラニンの標準サンプルを正確に秤量し、適量の移動相で溶解させ、10mLの定容瓶において定容し、均一に振とうした。0.45μm有機フィルター膜でろ過し、ろ液を使用に備えた。
【0101】
(2)被験サンプル溶液の調製
150mgのN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの被験サンプルを正確に秤量し、適量の移動相で溶解させ、50mLの定容瓶において定容し、均一に振とうした。0.45μm有機フィルター膜でろ過し、ろ液を使用に備えた。
【0102】
(3)クロマトグラフィー条件:
移動相:メタノール:20mmolの緩衝塩溶液(pH 3.0)=70:30(v/v);流速:1.0mL/min;カラム温度:30℃;検出波長:210nm;仕込み量:20μL
【0103】
(4)サンプルの測定
クロマトグラフィー条件に従って機器のパラメーターを調整し。機器のベースラインが安定したら、20μLの標準溶液とサンプル溶液をそれぞれクロマトグラフィーカラムに注入し、N-ラウロイル-L-アラニン標準溶液およびサンプル溶液のクロマトグラムを記録した。標準溶液の保持時間により、サンプルにおけるN-ラウロイル-L-アラニンのクロマトグラフィーピークを定性的に決定し、サンプルのピーク面積から、面積正規化法によって被験物質の百分率含有量を測定した。
【0104】
図4はN-ラウロイル-L-アラニンの標準クロマトグラムである;
図5は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである;
図6は、ラウリン酸の、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである;
図7は、L-アラニンの、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである;
図8は、カラムによって調製して分離されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの、
図4と同様な条件下で測定された高速液体クロマトグラムである。
図4~8から分かるように、本合成法によって得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、その不純物にラウリン酸が含まれず、純度が97%以上も達し、それに含まれる不純物は主にN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンであり、それは、反応プロセスにおいてN-ラウロイル-L-アラニンがさらにL-アラニンと脱水して凝縮してなるものであると解析した。
【0105】
4、質量分析
Agilent 1200/6220液体クロマトグラフィー/質量分析計によって仕込み、分析によってN-ラウロイル-L-アラニンの質量分析スペクトル20を得た。N-ラウロイル-L-アラニンの分子式はC
15H
29NO
3、その質量分析スペクトルの特徴的なピークの理論値[M+H]+は272.222で、測定値は272.2223で、理論値からの偏差は1.03ppmであった。[M+Na]+は294.204で、測定値は294.2034で、理論値からの偏差は2.08ppmであり、サンプルの測定値は、分子式C
15H
29NO
3の物質の質量分析スペクトルの特性ピークと一致していた。
図20ではラウリン酸の分子イオンピークが見られなかったが、質量分析の感度が非常に高いため、質量分析により、N-ラウロイル-L-アラニンにラウリン酸が含まれないと定性的に判断できた。
【0106】
5、旋光度の解析
旋光計で測定されたN-ラウロイル-L-アラニンの(比)旋光度:[α]D 20℃=-14.7°~-16.7°(C=2、CH3OH)
【0107】
6、構造的特徴の説明
図9は、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の構造形成図である。上記の赤外、NMR、HPLC解析および旋光度測定から分かるように、本発明のプロセスで生産されたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、不純物としてのラウリン酸を含有せず、プロセスで合成されたN-ラウロイル-L-アラニンは2つの水素結合を形成でき、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは3つの水素結合を形成でき、2つのN-ラウロイル-L-アラニンのカルボキシ基は水素結合を介して接続し、両末端にそれぞれ炭素数11の炭素鎖のアルカン構造を有し、油と油の適合性の原理に従って、親油性末端と親油性末端が互いに鎖状に適合し、両端部が接続することで、環を形成する。環同士もまた、水素結合および油と油の適合性により、無限に重なり合って柱状の分子クラスターを形成する。柱状の分子クラスターもまた、無限に重なり合って特殊な空間構造を形成し、自己組織化超分子アミノ酸ポリマーと呼ばれる。
【0108】
図10a、10bおよび10cはそれぞれ、本発明の実例3における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの300倍、1000倍および2000倍電子顕微鏡画像を示す。
図10a、10bおよび10cに示すように、本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、その微細構造がひも状となり、且つ絡み合って「超分子アミノ酸」を形成した。
図9、10a、10bおよび10cにより、N-ラウロイル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の形成原理および構造はより一層証明された。
【0109】
超分子アミノ酸は形成されると、さらに水酸化ナトリウムと反応し、
図12に示される超分子アミノ酸のナトリウム塩の構造を生成する。
図13に示すように、N-ラウロイル-L-アラニンナトリウムは基本単位であり、水素結合を介して自己組織化して超分子ポリマーとなり、検出によれば、重量平均分子量は125841である。
図12に示すように、そのナトリウム塩の構造は、一方の端部が親水性で、他方の端部が親油性であり、分子同士が水素結合を介して接続し、特殊な秩序的に配置される二次元ネットワーク構造を得て、油汚れとの強い結合能を有し、主な界面活性剤として使用することができる。
【0110】
また、本願はさらに、市販のN-ラウロイル-L-アラニン(長沙普済バイオテック株式会社より購入)に走査電子顕微鏡測定を行ったところ、該N-ラウロイル-L-アラニンアミノ酸には0.21%~5%の含有量でラウリン酸が検出され、走査結果は
図11a、11b、11cに示す。
図11a、11b、11cはそれぞれ、0.21%~5%のラウリン酸を含む市販のN-ラウロイル-L-アラニンの500倍、1000倍、2000倍の電子顕微鏡画像を示し、
図11a、11b、11cに示すように、市販のN-ラウロイル-L-アラニンの電子顕微鏡画像は、不規則に配置された構造状態を示し、且つ本発明のプロセスによって得られたN-ラウロイル-L-アラニンの相応の300倍、1000倍、2000倍の電子顕微鏡画像と異なり、本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニンの電子顕微鏡画像のようなひも状または柱状の構造はない。このような状況の原因は、市販のN-ラウロイル-L-アラニンはラウリン酸を含むが、ラウリン酸の存在は、N-ラウロイル-L-アラニン同士の水素結合を介する無限な接続の形成を阻害することにより、N-ラウロイル-L-アラニンの構造と性能を変化させるためである。
【0111】
本発明のプロセスは、不純物であるラウリン酸の残留で、N-ラウロイル-L-アラニンの構造が破壊され、ひいてはN-ラウロイル-L-アラニンの性能が影響・破壊されるという問題を効果的に解決したことにより、N-ラウロイル-L-アラニン同士は水素結合を形成して無限に接続しやすくなり、特殊な性能を備える。本プロセスによって生成される不純物のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、N-ラウロイル-L-アラニンと同様に水素結合を形成することもでき、これにより、N-ラウロイル-L-アラニンの性能に影響することなく、構造の安定性を強化する。
【0112】
更なる実験において、本発明は、N-デカノイル-L-アラニンを使用して、同じ条件下で構造研究を行ったが、上記のような三次元ネットワーク構造を見出さなかった;それは、N-デカノイル-L-アラニンは炭素鎖の長さが短く、2つの分子の親油性末端で環を形成できないからであると推測される;同様に、それにより、親油性基の炭素鎖が12~18である場合、L-アラニンと形成される脂肪族アシル-L-アラニンは、脂肪酸を除いた条件下でも、分子間の水素結合および油と油の適合性によって、上記のような空間構造を形成できると推測される。このような構造は、一旦形成されると安定となり、実験により証明されたように、10%未満の少量の脂肪酸を追加しても、既存の構造の安定性および性能・使用が損なわれない。
【0113】
実施例3 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの使用
使用例1 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの細菌に対する静菌作用の評価
実例3の方法で合成されたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを10g取り、水に入れ、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7になるように中和し、100mLの水溶液を調製した。原液を5mL取り、この溶液で黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンスなどの一般的な細菌が事前に接種されたフルーツプレートをそれぞれ浸漬し、所定の時間で作用され、浄水で1回すすぎ、フルーツプレート上の細菌の残留を確認した。検出結果は表1に示す:
【0114】
【0115】
上記のデータから明らかなように、本発明の方法に従って合成されたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマー溶液は、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対して顕著な静菌作用を有し、原液であるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマー溶液は大腸菌に2分間作用した後、静菌率が96.3%に達し、5分間後の静菌率が既に100%に達した;また、原液は黄色ブドウ球菌に2分間作用した後、静菌率が100%に達した;カンジダ・アルビカンスに5分間作用した後の静菌率も同様に100%に達した。
【0116】
本分野の公知常識によれば、細菌のサイズは通常0.5~5μmであるが、本発明に用いられる、ラウリン酸を実質的に含有しないN-ラウロイル-L-アラニンによって形成される超分子構造の柱状クラスター同士の隙間もミクロンオーダーであるため、細菌を包み込んで取り除くことができることから、ナノオーダーの泡状細孔を生成できると考えられる。
【0117】
使用例2 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの農薬に対する除去効果の評価
事前に農薬のメタミドホスとアセフェートが噴霧された100gの緑色野菜(チンゲンサイ)を2個取り、その1個をそのまま1Lの浄水に浸漬してから、取り出して野菜の葉における農薬残留物を検出し、それを洗浄前とした。他の1個を実例3の方法に従って合成されたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーから調製した溶液で洗浄し、それを洗浄後とした。手順は以下の通りであった:
実例3の方法で合成されたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを10g取り、水に入れ、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7になるように中和し、100mLの水溶液を調製した。原液を5mL取り、他の1個の事前に農薬のメタミドホスとアセフェートが噴霧された100gの緑色野菜(チンゲンサイ)を細かく切り、上記の溶液に2分間浸漬し、取り出して500mLの浄水ですすいでから、取り出して野菜の葉における農薬残留物を検出した。洗浄前後の農薬残留物のデータの比較は表2に示す:
【0118】
【0119】
上記のデータから明らかなように、本発明に用いられる界面活性物質であるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの溶液は、メタミドホスとアセフェートに対して顕著な除去作用を有し、2分間作用した後、メタミドホスに対する除去率は64.63%に達し、アセフェートに対する除去率は74.66%に達し、効果は顕著であった。
【0120】
使用例3 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの臭気に対する脱臭効果の評価
実例3の方法で合成されたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを10g取り、水に入れ、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7になるように中和し、100mLの水溶液を調製した。原液を5mL取り、上記の溶液に臭気(匂い、油臭、臭いなど)のある10平方センチメートルの綿布を2分間含浸した後、取り出して水洗いし、乾燥させたところ、綿布の臭気が全て消えた。それから分かるように、本発明の方法に従って合成されたN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、優れた脱臭効果を有する。
【0121】
以上により分かるように、本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの製造方法は、プロセス工程が簡単で、反応条件が緩やかで、工業生産に適している。本発明にかかる方法によって製造されるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、純度が凡そ97%以上と高く、しかもラウリン酸の含有量が0.0001%~0.02%の範囲内にあり、製品の品質に対するラウリン酸の影響を効果的に回避した。得られるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、構造・性能が安定である;優れた静菌率を有し、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対する静菌率はいずれも100%に達する;農薬残留物を効果的に除去し、メタミドホスに対する除去率は64.63%、アセフェートに対する除去率は74.66%に達する;優れた脱臭性能も共に有し、家庭用化学製品分野、農業、医薬品産業のいずれにも好適に使用できる。
【0122】
使用例4 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーのスキンケアにおける使用
【0123】
【0124】
表3に示す処方1の調製工程は具体的に、57%の天然油混合物と40%のコーンスターチをミキサーに入れ、均質化して粒子を最初に分散させた。その後、油分散体における粒子を83~86℃に加熱しながら混合した。加熱しながら、3%のN-ラウロイル-L-アラニンをミキサーに入れた。サンプルを加熱し、且つ73~86℃で5~10分間保持した。その後、それを65~72℃の範囲内の温度まで冷却しながら、混合可能に保持した。その後、サンプルを体積30mlのタンクに流し、スキンケア組成物を得て、保管して評価に適用した。ただし、処方2~6にかかるスキンケア組成物の製造方法としては、いずれも処方1と同様な方法が採用されたので、ここではそれらの詳細が繰り返されない。
【0125】
上記の実施例で得られたスキンケア組成物において、原料には異なる種類の粒子が異なる含有量で添加された。結果から分かるように、粒子の添加によって油の粘度を上げることに加えて、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを使用することによっても、固形有機/無機粒子や、油と混合可能な液体(例えばグリセリン)などを濃厚な天然油に安定して懸濁させ、皮膚に追加のメリットをもたらすことができる。
【0126】
4種類の油不溶性粒子、例えばデンプン、TiO2、マイカ、窒化ホウ素粒子(Koboから由来のCaress BN02)、並びに1種類の油と混合可能な液体、例えばグリセリンを適用した。処方1~6に用いられた天然油混合物の組成はいずれも同じであり、即ち、40%のブドウ種子油と、37.2%のヒマワリ種子油および22.8%のアロエ油を含む。結果によって示されるように、表3に示す処方で得られた組成物はいずれも、室温でも48℃オーブンの中でも安定しており、粒子分離の問題が全く起こっていなかった。処方7は比較試験として、処方1におけるN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの代わりにラウロイルアラニン(ラウリン酸を2%以上含有)を適用したが、その結果、得られた組成物は48℃オーブンの中で48時間後に不安定となり、油っぽくなることが分かった。
【0127】
実施例4~8
実施例において、アミノ酸練り歯磨きのペーストの総重量部はいずれも100とした。練り歯磨きにおける各物質の組成および具体的な含有量は表4に示す:
【0128】
【0129】
実施例9~13
実施例において、アミノ酸練り歯磨きのペーストの総重量部はいずれも100とした。練り歯磨きにおける各物質の組成および具体的な含有量は表5に示す:
【0130】
【0131】
実施例4の処方に従って練り歯磨きを調製し、具体的には、10gの水、37.5gのソルビトール、0.2gのサッカリンナトリウム、2gのポリエチレングリコール-400g、5gのグリセリン、0.4gの安息香酸ナトリウムを水溶液に調製し、練り歯磨き製造機に入れるという工程を含んだ。次に、4gのカルボキシメチルセルロース、35gの水和シリカ、0.2gのトチャカエキス、0.1gのカンゾウエキス、および0.1gのスベリヒユエキスを混合した上で練り歯磨き製造機に入れ、ペーストが均一になるまで20~30分間攪拌・研磨した後、真空脱泡した;4.4gのN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムポリマー、1gの食品香料(ミントフレーバー)、0.1gのCI42090を順次に練り歯磨き製造機に入れ、ペーストが均一になるまで10~15分間攪拌・研磨した後、脱泡してアミノ酸練り歯磨きを得た。
図14~16は、実施例4の処方およびその製造方法によって得られたアミノ酸練り歯磨きの成分検査報告書であり、該報告書によれば、本発明により提供されるアミノ酸練り歯磨きは安全であり、全ての検査結果が基準を満たしていることが分かった。
【0132】
実施例5~13はいずれも実施例4に記載の方法によって調製されたため、実施例ではそれらの詳細が繰り返されない。
実施例4~13に記載の配合量に従って調製したアミノ酸練り歯磨きにより、アミノ酸界面活性剤を異なる重量部で取り、処方試験を複数回繰り返し、頻繁な歯痛および歯茎出血を有する100人のボランティアに効果の評価を委託したが、使用頻度は1日の朝と夕方にそれぞれ1回ずつで、使用量は1回あたりに約1gのペーストで、歯を磨く時間は1回につき約5分間であった。得られた結果から明らかなように、アミノ酸界面活性成分を含む練り歯磨きは、鎮痛、抗炎症および歯茎出血防止において顕著な効果があり、しかも使用時の味と臭気除去の2つの方面から評価すると、該練り歯磨きのペーストに占めるアミノ酸界面活性成分の重量比は、好ましくは0.1~25%であり、より好ましくは0.5~10%であり、最も好ましくは1~5%である。該薬用練り歯磨きのペーストに占めるアミノ酸界面活性成分の重量比が1~5%になる場合、練り歯磨きの効能と味のバランスが一番良く、しかも口臭の除去も最高レベルに達したと共に、歯を磨いた直後に果物を食べても果物の味に影響を与えず、苦くて乾いた感じがしなかった。
図17および
図18はそれぞれ、本発明の実施例4に従って得られたアミノ酸練り歯磨きで患者の歯を洗浄する前後の効果の比較を示す。図から分かるように、本発明のアミノ酸練り歯磨きを使用して、3分間の通常の歯磨き時間で歯を磨いた後、患者の歯は使用前よりも明らかに白くてきれいになった。
【0133】
使用例5 超分子アミノ酸の洗濯用洗剤における使用の実例
【0134】
【0135】
蘇州市商品品質監督検査機関によって検査すると、処方1に従って配合された洗濯用洗剤は、洗浄力が標準洗濯用洗剤の洗浄力を上回り、又はそれと同じ、得られたサンプルは、JB01、JB02、JB03汚れ布に対する洗浄力が、JB01、JB02、JB03汚れ布に対する標準洗濯用洗剤の洗浄力を上回った。一方、蘇州市商品品質監督検査機関によって検査すると、処方2に従って配合された洗濯用洗剤は、洗浄力が標準洗濯用洗剤の洗浄力を下回った(
図19)。
【0136】
使用例6 超分子アミノ酸と塩基性アミノ酸で形成された塩の洗顔料における使用の実例
【0137】
【0138】
N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーとアルギニンのような塩基性アミノ酸が水性系で形成された有機塩は、清潔用の界面活性剤として、より緩やかで、刺激性が無く、敏感な皮膚により一層適切である。肌を洗浄しながら、肌をより一層ケアする。
【0139】
使用例7 自己組織化超分子ポリマーとN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンで形成された自己組織化ポリマーの洗濯用洗剤における使用の実例
【0140】
【0141】
N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーとN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーが塩基性条件下で形成された塩は、清潔用の界面活性剤として、より緩やかで、手を傷つけず、しかも洗浄力もより強力である。
【0142】
また、当業者が理解できるように、ここに記載のいくつかの実施例が他の特徴ではなく、他の実施例に含まれるいくつかの特徴を含むが、異なる実施例の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内に入っていると共に、異なる実施例を形成することを意味する。例えば下記の特許請求の範囲において、保護が請求された実施例のいずれか1つも、任意の組み合わせで適用することができる。