(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】補体媒介性溶解に対する細胞感受性を増加させる方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240612BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240612BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240612BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240612BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20240612BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240612BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240612BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240612BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
G01N33/53 N
C12Q1/02 ZNA
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/07
C12N5/078
C12N15/09 110
C12N15/12
C07K14/705
(21)【出願番号】P 2021556418
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 US2020023747
(87)【国際公開番号】W WO2020191255
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-17
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301044015
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テクター,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】テクター,マット
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515215(JP,A)
【文献】特開2008-061539(JP,A)
【文献】米国特許第05962239(US,A)
【文献】Junfang Zhang,Potential Antigens Involved in Delayed Xenograft Rejection in a Ggta1/Cmah Dko Pig-to-Monkey Model,Sci Rep.,2017年08月30日,7(1):10024,pp.1-11,doi: 10.1038/s41598-017-10805-0.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48~33/98
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者にお
いて、超急性拒絶反応を媒介することができる移植ドナー臓器反応性抗体を検出する方法であって、
(a)
異種の動物
ドナーまたはヒト
ドナーの臓器に由来する細胞の集団を遺伝子修飾することによって、前記細胞の集団による
CD46様ポリペプチド、CD46、CD55、及びCD59からなる群から選択される少なくとも1つの補体阻害剤の発現を減少させるステップと、
(b)前記遺伝子修飾された細胞の集団を、前記移植ドナー臓器を受容することを望む患者から単離された血清の試料と接触させるステップと、
(c)前記遺伝子修飾された細胞の集団の溶解を検出するステップであって、溶解が、前記移植ドナー臓器を受容することを望む前記患者がドナー臓器反応性抗体を発現するかどうかを示し、前記溶解が、検出可能であるか、または前記臓器に由来しかつ
CD46様ポリペプチド、CD46、CD55、及びCD59からなる群から選択される少なくとも1つの発現される補体阻害剤の減少を有するように遺伝子修飾されていない細胞の集団と比較して増加している、溶解を検出するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞の集団が、候補の移植臓器に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞の集団が、ドナーリンパ球である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞の集団が、腎臓に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞の集団が、腎内皮細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、
(i)
単離された臓器
サンプルから組織試料を得ることと、
(ii)遺伝子修飾臓器由来細胞の集団であって、前記細胞をガイドRNAおよびCRISPR Cas9をコードする少なくとも1つの発現ベクターでトランスフェクトすることによって生成される不活性補体阻害剤をコードする遺伝子を含み、前記ガイドRNAが、補体阻害剤に特異的である、遺伝子修飾臓器由来細胞の集団を生成することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記不活性補体阻害剤をコードする遺伝子が、CD46様、CD46、CD55、およびCD59からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記補体阻害剤が、CD46様であり、配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも90%の類似性を有するヌクレオチド配列によってコードされる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記補体阻害剤が、CD46様であり、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%類似のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
不活性補体阻害剤をコードする遺伝子を不活性化する前記ガイドRNAが、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、および配列番号11からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、および配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列と、を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
前記補体阻害剤が、CD46様であり、CRISPR Cas9ベースの不活性化のための前記ガイドRNAが、配列番号19の配列またはその相補鎖と、生理学的条件下でハイブリダイズし、配列番号20のヌクレオチド配列を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記発現ベクターが、プラスミドPX330またはPX458であり、前記プラスミドが哺乳動物細胞にトランスフェクトされた場合、前記発現
ベクターが、Cas9を発現する、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記発現ベクターが、配列番号13~18からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%の類似性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
患者にお
いて、超急性拒絶反応を媒介することができる移植ドナー臓器反応性抗体を検出する方法であって、
(a)
異種の候補の
ドナー動物またはヒトの移植ドナー腎臓に由来する腎内皮細胞の集団による少なくとも1つの補体阻害剤の発現を、前記細胞の集団を遺伝子修飾することによって減少させるステップであって、前記遺伝子修飾が、
(i)前記腎臓から組織試料を得るステップと、
(ii)腎内皮細胞をガイドRNAおよびCRISPR Cas9をコードする少なくとも1つの発現ベクターでトランスフェクトすることによって生成される不活性CD46補体阻害剤をコードする遺伝子を含む遺伝子修飾腎臓由来細胞の集団を生成するステップであって、前記ガイドRNAが、前記
不活性CD46補体阻害剤に特異的であり、配列番号1および配列番号7からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、配列番号2および配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列と、を含み、前記発現ベクターが、配列番号13または16から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%の類似性を有するヌクレオチド配列を含む、生成するステップと、によってなされる、減少させるステップと、
(b)前記遺伝子修飾腎内皮細胞の集団を、前記移植ドナー臓器を受容することを望む患者から単離された血清の試料と接触させるステップと、
(c)前記遺伝子修飾腎内皮細胞の集団の溶解を検出するステップであって、溶解が、前記移植ドナー臓器を受容することを望む前記患者がドナー臓器反応性抗体を発現するかどうかを示し、前記溶解が、検出可能であるか、または前記臓器に由来しかつ少なくとも1つの発現される補体阻害剤の減少を有するように遺伝子修飾されていない腎内皮細胞の集団と比較して増加している、溶解を検出するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月21日に出願された「METHOD FOR INCREASING CELL SUSCEPTIBILITY TO COMPLEMENT-MEDIATED LYSIS」と題された米国仮特許出願第62/821,641号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、2020年3月18日に作成された「2221042940_ST25」と題するASCII.txtファイルとして電子形式で出願された配列表を含む。配列表の内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
異種移植(異なる種のドナーからの臓器、組織、および細胞の移植)は、ヒトドナー膵臓の不足に効果的に対処することができる。また、異種移植片は、有利にも(i)予測可能な非緊急性ベースで供給され、(ii)制御された環境で生成され、(iii)移植前の特性評価および研究に利用可能である。
【0004】
ドナー種とレシピエント種との関係に応じて、異種移植は、一致または不一致として説明することができる。一致種は、系統学的に密接に関連する種である(例えば、ラットに対してマウス)。不一致種は、密接な関連がない(例えば、ヒトに対してブタ)。ブタは、ヒトと多くの解剖学的および生理学的な特徴を共有しているため、異種移植領域のほとんどの研究の焦点となっている。ブタはまた、比較的短い妊娠期間を有し、病原体のない環境で繁殖することができ、食物源として一般的に使用されない動物(例えば、霊長類)に関連する同じ倫理的問題を提示しない場合がある。ブタから霊長類への異種移植の分野における科学的知識および専門知識は、過去10年間で急速に成長し、結果として、救命ブタ異種移植片の霊長類レシピエントの生存期間がかなり延びた(Cozzi et al.,Xenotransplantation 16:203-214.2009)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異種移植拒絶反応は、超急性拒絶反応、急性液性異種移植拒絶反応、およびT細胞媒介性細胞拒絶反応の3つの段階に分類することができる。超急性拒絶反応(HAR)は、非常に急速な事象であり、移植片の再灌流後、数分から数時間以内に、不可逆的な移植片の損傷および損失をもたらす。これは、移植時に、レシピエント内に存在する異種反応性自然抗体の存在によって引き起こされる。ヒトは、ブタ細胞に見られるα1,3-ガラクトース(Gal)エピトープに対して天然に存在する抗体を有する。この抗体は大量に産生され、HARの原理的な媒介物である。αGT(GTKO)としてα1,3-ガラクトース(Gal)エピトープをブタ細胞から遺伝的に除去すると、GTKOブタはHARを受けない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、患者における移植ドナー臓器反応性抗体を検出する方法の実施形態を包含し、当該方法は、(a)動物またはヒトの臓器に由来する細胞の集団を遺伝子修飾することによって、細胞の集団による少なくとも1つの補体阻害剤の発現を減少させるステップと、(b)遺伝子修飾細胞の集団を、移植ドナー臓器を受容することを望む患者から単離された血清の試料と接触させるステップと、(c)遺伝子修飾細胞の集団の溶解を検出するステップであって、溶解が、移植ドナー臓器を受容することを望む患者がドナー臓器反応性抗体を発現するかどうかを示し、溶解が、検出可能であるか、または臓器に由来しかつ少なくとも1つの発現される補体阻害剤の減少を有するように遺伝子修飾されていない細胞集団と比較して増加している、溶解を検出するステップと、を含む。
【0007】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、候補の移植臓器に由来し得る。
【0008】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、ドナーリンパ球であり得る。
【0009】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、腎臓に由来し得る。
【0010】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、腎内皮細胞であり得る。
【0011】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、当該方法は、(i)臓器から組織試料を得ることと、(ii)遺伝子修飾臓器由来細胞の集団であって、細胞をガイドRNAおよびCRISPR Cas9をコードする少なくとも1つの発現ベクターでトランスフェクトすることによって生成される不活性補体阻害剤をコードする遺伝子を含み、ガイドRNAが、補体阻害剤に特異的である、遺伝子修飾臓器由来細胞の集団を生成することと、をさらに含み得る。
【0012】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、不活性補体阻害剤のコード遺伝子は、CD46、CD55、およびCD59からなる群から選択され得る。
【0013】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46であり得る。
【0014】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、不活性補体阻害剤をコードする遺伝子を不活性化するガイドRNAは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、および配列番号11からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、および配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列と、を含み得る。
【0015】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様であり得、CRISPR Cas9ベースの不活性化のためのガイドRNAは、生理学的条件下で、配列番号19の配列またはその相補鎖とハイブリダイズすることができ、配列番号20のヌクレオチド配列を有し得る。
【0016】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、発現ベクターは、プラスミドPX330またはPX458であり得、発現プラスミドは、プラスミドが哺乳動物細胞にトランスフェクトされた場合、Cas9を発現する。
【0017】
本開示の本態様の一部の実施形態では、発現ベクターは、配列番号13~18からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%の類似性を有するヌクレオチド配列と、を含み得る。
【0018】
本開示の別の態様は、患者における移植ドナー臓器反応性抗体を検出する方法の実施形態を包含し、当該方法は、(a)候補の動物またはヒトの移植ドナー腎臓に由来する腎内皮細胞の集団による少なくとも1つの補体阻害剤の発現を、細胞の集団を遺伝子修飾することによって減少させるステップであって、遺伝子修飾が、(i)腎臓またはリンパ球から組織試料を得るステップと、(ii)腎内皮細胞をガイドRNAおよびCRISPR Cas9をコードする少なくとも1つの発現ベクターでトランスフェクトすることによって生成される不活性CD46補体阻害剤をコードする遺伝子を含む遺伝子修飾腎臓由来細胞の集団を生成するステップであって、ガイドRNAが、補体阻害剤CD46に特異的であり、配列番号1および配列番号7からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、配列番号2および配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列と、を含み得、発現ベクターが、配列番号13または16から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%の類似性を有するヌクレオチド配列を含み得る、生成するステップと、によってなされ得る、減少させるステップと、(b)遺伝子修飾腎内皮細胞の集団を、移植ドナー臓器を受容することを望む患者から単離された血清の試料と接触させるステップと、(c)遺伝子修飾腎内皮細胞の集団の溶解を検出するステップであって、溶解が、移植ドナー臓器を受容することを望む患者がドナー臓器反応性抗体を発現するかどうかを示し、溶解が、検出可能であるか、または臓器に由来しかつ少なくとも1つの発現される補体阻害剤の減少を有するように遺伝子修飾されていない腎内皮細胞の集団と比較して増加している、溶解を検出するステップと、を含む。
【0019】
本開示のさらに別の態様は、遺伝子修飾哺乳動物細胞であり、細胞は、ドナー組織に由来し、細胞は、補体阻害剤の発現を減少させるか、または発現されないように遺伝子修飾される。
【0020】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46、CD55、またはCD59であり得る。
【0021】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様、CD46、CD55、またはCD59であり得る。
【0022】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様であり得、配列番号23のアミノ酸配列に少なくとも90%類似のアミノ酸配列を有し得る。
【0023】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様であり得、配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも90%の類似性を有するヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0024】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞は、補体阻害剤をコードする細胞のゲノムのすべてまたは断片のCRISPR Cas9による欠失によって、遺伝子修飾され得る。
【0025】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞は、培養細胞の集団であり得る。
【0026】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、ドナー組織は、腎臓、肺、心臓、筋肉、皮膚組織、またはリンパ球からなる群から選択される臓器から得ることができる。
【0027】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞は、候補ドナー臓器から得られる。
【0028】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、候補臓器は、腎臓、肺、心臓、筋肉、および皮膚組織からなる群から選択される。
【0029】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、候補臓器は、腎臓である。
【0030】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、遺伝子修飾哺乳動物細胞は、腎内皮細胞またはリンパ球である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示のさらなる態様は、添付の図面と併せて考慮すると、以下に記載されるその様々な実施形態の詳細な説明を検討すると、より容易に理解されるであろう。
【0032】
【
図1A-1C】CD46が欠損した腎内皮細胞(REC)の作製を示す。CRISPR/Cas9を使用して、創始腎内皮細胞で、GGTA1遺伝子およびクラスIのSLA遺伝子を欠損させた。その結果、クラスIのSLAタンパク質およびαガラクトース炭水化物は、これらの細胞の表面上で発現されなかった。創始細胞のフローサイトメトリー分析は、点線のヒストグラムで表されている。陰性対照の細胞は、未染色であり(灰色のヒストグラム)、インタクトなクラスIのSLAおよびGGTA1遺伝子を有する陽性対照のRECは、実線のヒストグラムで示されている。これらの不死RECを、CD46遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9で処理した。
【
図1A】モノクローナル抗体を使用して検出されたクラスIタンパク質(パネルA)およびα galエピトープの発現を検出するために使用されたIB4レクチン(パネルB)を示す。
【
図1B】CD46遺伝子が破壊されたことを示すPCR産物(「-」でマークされたレーン)の欠如を示す。細胞を単離し、逆転写酵素PCRを使用してCD46遺伝子の転写について評価した。インタクトなCD46遺伝子を有する親RECを陽性対照として使用し、CD46遺伝子産物を表す明瞭なバンドが示された(「+」でマークされたレーン)。
【
図1C】親細胞(実線のヒストグラム)およびCD46ノックアウト(点線のヒストグラム)において評価した細胞表面のCD46発現を示す。未染色の細胞を、陰性対照として使用した(灰色のヒストグラム)。
【
図2A】CD46 KO RECによる2つの既知の外抗原の発現を示す。親RECは、B4GalNT2遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9で処理されていた。DBAレクチンを使用してフローサイトメトリーを行って、B4GalNT2酵素によって産生される異種抗原であるN-アセチル-ガラクトサミンをプローブした。親細胞(パネルA)およびCD46-KO(パネルB)の両方を試験した。結果は、点線のヒストグラムとして表示されている。パネルAおよびBにおいて、同じ陰性対照の細胞(灰色のヒストグラム-未染色細胞を表す)およびインタクトのB4GalNT2による陽性対照の細胞(実線のヒストグラム)を使用した。
【
図2B】第2の異種抗原であるNeu5Gcの発現レベルを示し、Neu5Gc特異的モノクローナル抗体を使用しても評価した。未染色の細胞を、陰性対照として使用した(灰色のヒストグラム)。実線のヒストグラムは、親細胞によるNeu5Gcの発現を示し、点線のヒストグラムは、CD46-KO細胞を表す。
【
図3】CD46(+)親REC対CD46(-)RECの補体依存性細胞傷害の分析を示す。フローサイトメトリーベースのCDCアッセイは、両方のタイプのRECを、13名の異なるヒトから採取された循環抗体とインキュベートすることによって行った。仔ウサギ補体に加えてヒト抗体で観察された死に対して、仔ウサギ補体単独で観察された死(%)を差し引くことによって、死細胞(%)を計算した。線は、両方の細胞株で、各ヒト抗体試料について観察された死のレベルを強調している。実験は、13試料すべてを用いて2回実施された。
【
図4A-4D】細胞溶解活性とIgMおよびIgGの結合レベルとの比較を示す。
図3で使用した細胞を、13種類のヒト試料に対するIgMおよびIgGの結合レベルについて試験した。CDC結果の3つのパターンを使用して、様々な試料を分類した。これらのカテゴリを強調するために、
図3に示されるデータからの代表例を示す。
【
図4A】CD46の有無にかかわらず、陽性であった(20%超の死細胞)CDCの2つの例を示す。
【
図4B】CD46の有無にかかわらず、陰性である(20%未満の死細胞)CDCの2つの例を示す。
【
図4C】CDCは、CD46(+)細胞を使用すると陰性であるが、CD46(-)細胞では陽性になることを示す。
【
図4D】CDCは、CD46(+)細胞よりも、CD46(-)細胞の溶解が少ないことを示す。これらの試料に結合する抗体のフローサイトメトリー分析を三重で行い、CD46(+)およびCD46(-)のRECに対する相対的なIgGおよびIgMの結合を調べた。各CDCプロットの下の棒グラフは、IgGおよびIgMの分析の結果を表す。
【
図5】配列番号1~12のヌクレオチド配列を示す。
【
図6】配列番号13~18のヌクレオチド配列を示す。
【
図7】受託番号XM_003482667.3を有し、ブタCD46様補体阻害剤をコードするmRNAヌクレオチド配列である、ヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。gRNAの位置に、下線が引かれている。ガイドRNS配列(配列番号20)も示されている。
【
図8】アミノ酸配列であるヒトCD46(配列番号21)、ブタCD46(配列番号22)、およびブタCD46様(配列番号23)の補体阻害剤間の類似性を示すアミノ酸配列整列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、記載される特定の実施形態に限定されず、そのため、もちろん、変化し得る。本明細書で使用される専門用語は、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。
【0034】
値の範囲が提供される場合、別途文脈によって明確に既定されない限り、下限の単位の10分の1までの各中間値は、その範囲の上限と下限との間で提供され、記載された範囲の任意の他の記載された値または中間値は、本開示内に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、より小さな範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲の任意の特定の除外された制限に従うことを条件として、本開示内に包含される。記載される範囲が、制限の一方または両方を含む場合、それらの含まれる制限の一方または両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0035】
本開示の実施形態は、別段の指示がない限り、医学、有機化学、生化学、分子生物学、薬理学などの技法を用い、それらは、当該技術分野の範囲内である。かかる技術は、文献において十分に説明されている。
【0036】
以下の実施例は、当該方法の実施方法および本明細書に開示および特許請求される組成物および化合物の使用方法の完全な開示および説明を、当業者に提供するために示される。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気圧またはその付近である。標準温度および標準圧力は、20℃および1気圧と定義されている。
【0037】
本開示の実施形態が詳細に説明される前に、本開示は、別段の指示がない限り、特定の材料、試薬、反応材料、製造プロセス、寸法、周波数範囲、用途などに、それらが変化し得るため、限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことを理解されたい。また、本開示では、ステップが論理的に可能である場合に、異なる順序で実行され得ることも可能である。また、本開示の実施形態は、本明細書に記載の実施例(限定することを意図するものではない)を超える測定値を伴う追加の実施形態に適用されることも可能である。さらに、本開示の実施形態は、本明細書に記載の実施例(限定することを意図するものではない)を超える他の測定技術と組み合わされるか、または統合されることが可能である。
【0038】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、別途文脈によって明確に既定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「支持体」への言及は、複数の支持体を含む。本明細書および以下の特許請求の範囲では、反対の意図が明らかでない限り、以下の意味を有するように定義されるいくつかの用語を参照する。
【0039】
本文中に引用される各々の出願および特許、ならびに各々の出願および特許で引用される各文書または参照文献(各発行された特許の経過中を含む、「出願引用文献」)、ならびにこれらの出願および特許のいずれかに対応するおよび/またはそれらから優先権を主張する各々のPCTおよび外国出願または特許、ならびに各々の出願引用文献で引用または参照された各々の文書は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。さらに、本文中、特許請求の範囲の前の参考文献リスト、または本文自体に引用される文書または参考文献、ならびにこれらの文書または参考文献の各々(「本明細書で引用される参考文献」)、ならびに本明細書で引用される参考文献の各々の文書または参考文献(任意の製造元の仕様、説明書などを含む)は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0040】
様々な実施形態を説明する前に、以下の定義が提供され、別段の指示がない限り使用されるべきである。
【0041】
定義
本明細書で使用される「補体依存性細胞傷害性」(CDC)という用語は、IgG抗体およびIgM抗体のエフェクター機能を指す。それらが標的細胞(例えば、細菌もしくはウイルスに感染した細胞、または移植臓器のものなどの外来細胞)上の表面抗原に結合している場合、古典的な補体経路は、これらの抗体へのタンパク質C1qの結合によって引き起こされ、膜侵襲複合体(MAC)の形成および標的細胞の溶解をもたらす。補体系は、ヒトIgG1、IgG3、およびIgM抗体によって効率的に活性化され、IgG2抗体によって弱く活性化され、IgG4抗体によって活性化されない。
【0042】
本明細書で使用される「CD46補体調節タンパク質」(CD46、表面抗原分類46、膜補因子タンパク質としても知られる)という用語は、CD46遺伝子によってコードされ、CD46であるタンパク質を指し、抑制性補体受容体である。遺伝子は、補体系の構造成分をコードする他の遺伝子とともにクラスター内で見出される。この遺伝子については、14種の異なるアイソフォームをコードする少なくとも14種類の異なる転写バリアントが見出されている。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、I型膜タンパク質であり、補体系の調節部分である。コードされたタンパク質は、補体による損傷から宿主細胞を保護する血清第I因子による補体成分C3bおよびC4bの不活性化(切断による)のための補因子活性を有する。
【0043】
CD46に相同な1つの有利な標的補体阻害剤は、ブタCD46様ポリペプチドであり、配列番号23に記載のアミノ酸配列を有し、ヌクレオチド配列の配列番号19と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0044】
本明細書で使用される「補体崩壊促進因子」(CD55またはDAFとしても知られる)という用語は、CD55遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。DAFは、細胞表面上の補体系を調節する。C4(古典経路またはレクチン経路)またはC3(代替経路)の活性化中に生成されるC4bおよびC3bの断片を認識する。DAFと古典経路およびレクチン経路の細胞結合C4bとの相互作用は、C2からC2bへの転換を妨げ、それによってC4b2b C3転換酵素の形成を防止し、DAFと代替経路のC3bとの相互作用は、D因子によるB因子からBbへの変換を妨げ、それによって代替経路のC3bBb C3転換酵素の形成を防止する。したがって、補体カスケードの増幅コンバターゼを制限することによって、DAFは、膜侵襲複合体の形成を間接的に遮断する。この糖タンパク質は、造血細胞と非造血細胞に広く分布している。
【0045】
用語「CD59糖タンパク質」(MAC阻害タンパク質(MAC-IP)、反応性溶解の膜阻害剤(MIRL)、またはプロテクチンとしても知られる)は、ヒトにおいてCD59遺伝子によってコードされるタンパク質である。LY6/uPAR/α-神経毒タンパク質ファミリーに属する。CD59はグリコホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して宿主細胞に結合する。補体活性化が宿主細胞上のC5b678の沈着をもたらす場合、CD59は、C9の重合を防止し、補体膜侵襲複合体を形成することができる。CD59-CD9複合体のエンドサイトーシスなどの能動的測定を行うように細胞にシグナルを伝達し得る。
【0046】
「ノックアウト」という用語は、所与の遺伝子が改変、除去、または破壊されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物または細胞を指す。
【0047】
本明細書で使用される「天然に存在しない」または「操作された」という用語は、互換的であり、ヒトの手の関与を示す。この用語は、核酸分子またはポリペプチドを指す場合、核酸分子またはポリペプチドが、それらが自然界で天然に関連付けられ、自然界で見出される少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。
【0048】
本明細書で使用される「相補性」という用語は、従来のワトソン-クリックまたは他の非伝統的なタイプのいずれかによる別の核酸配列と水素結合を形成する核酸の能力を指す。パーセント相補性は、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン-クリック塩基対合)を形成することができる核酸分子の残基のパーセンテージを示す(例えば、10のうちの5、6、7、8、9、10は、50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補的である)。「完全に相補的」とは、核酸配列のすべての連続した残基が、第2の核酸配列における同じ数の連続した残基と水素結合することを意味する。「実質的に相補的」は、本明細書で使用される場合、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、もしくはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%。90%、95%。97%、98%、99%、もしくは100%である相補性の程度を指すか、または厳密な条件下でハイブリダイズする2本の核酸を指す。
【0049】
本明細書で使用されるハイブリダイゼーションについての「厳密な条件(stringent conditions)」という用語は、標的配列との相補性を有する核酸が主に標的配列とハイブリダイズし、非標的配列と実質的にハイブリダイズしない条件を指す。厳密な条件は、一般に、配列依存的であり、いくつかの要因に応じて変化する。一般に、配列がその標的配列に特異的にハイブリダイズする温度は、配列が長いほど高い。厳密な条件の非限定的な例は、Tijssen(1993),Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology-Hybridization With Nucleic Acid Probes Part 1,Second Chapter”Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay”,Elsevier,N.Y.に詳細に記載されている。
【0050】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、1つ以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンークリック塩基対形成、フーグスタイン結合、または任意の他の配列特異的様式によって生じ得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多本鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始、または酵素によるポリヌクレオチドの切断などの、より広範なプロセスにおけるステップを構成し得る。所与の配列とハイブリダイズすることができる配列は、所与の配列の「相補鎖」と称される。
【0051】
「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから転写されるプロセス(例えば、mRNAもしくは他のRNA転写物に)、および/または転写されたmRNAが、その後、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写産物およびコードされたポリペプチドは、「遺伝子産物」と総称され得る。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。
【0052】
本明細書で使用される「CRISPR系」という用語は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するか、またはその活性を誘導する転写物および他の要素を総称し、Cas遺伝子をコードする配列、ガイド配列(内因性CRISPR系の文脈では「スペーサー」とも称される)、またはCRISPR遺伝子座からの他の配列および転写物が含まれる。一部の実施形態では、CRISPR系の1つ以上の要素は、タイプI、タイプII、またはタイプIIIのCRISPR系に由来する。一部の実施形態では、CRISPR系の1つ以上の要素は、Streptococcus pyogenesなどの内因性CRISPR系を含む特定の生物に由来する。概して、CRISPR系は、標的配列(内因性CRISPR系の文脈ではプロトスペーサーとも称される)の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進する要素によって特徴付けられる。
【0053】
CRISPR複合体の形成の文脈では、「標的配列」は、ガイド配列が相補性を有するように設計されている配列を指し、標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションにより、CRISPR複合体の形成が促進される。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性がある場合、完全な相補性は必ずしも必要ではない。標的配列は、DNAまたはRNAポリヌクレオチドなどの任意のポリヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、標的配列は、細胞の核または細胞質に位置する。一部の実施形態では、標的配列は、真核細胞、例えば、ミトコンドリアまたは葉緑体のオルガネル内にあってもよい。標的配列を含む標的遺伝子座への組換えに使用され得る配列または鋳型は、「編集鋳型」または「編集ポリヌクレオチド」または「編集配列」と称される。本開示の主題の態様では、外因性鋳型ポリヌクレオチドは、編集鋳型と称されてもよい。本開示の主題の一態様では、組換えは、相同組換えである。
【0054】
一部の実施形態では、ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列などの1つ以上の挿入部位(「クローニング部位」とも称される)を含む。一部の実施形態では、1つ以上の挿入部位(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10箇所、またはそれ以上の挿入部位)は、1つ以上のベクターの1つ以上の配列エレメントの上流および/または下流に位置する。複数の異なるガイド配列を使用する場合、単一の発現構築物を使用して、CRISPR活性を、細胞内の複数の異なる対応する標的配列に標的化することができる。例えば、単一のベクターは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20個またはそれ以上のガイド配列を含み得る。一部の実施形態では、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のかかるガイド配列を含むベクターが提供され得、任意選択的に、細胞に送達され得る。
【0055】
一部の実施形態では、ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に連結された調節エレメントを含む。例えば、S.pyogenesのCas9タンパク質のアミノ酸配列は、受託番号Q99ZW2の下、Swissportデータベースに見出すことがきる。一部の実施形態では、未修飾CRISPR酵素は、Cas9などのDNA切断活性を有する。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、Cas9であり、S.pyogenesまたはS.pneumoniae由来のCas9であり得る。
【0056】
一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列内および/または標的配列の相補鎖内などの標的配列の位置における一方または両方の鎖の切断を指示する。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500またはそれ以上の塩基対内の一方または両方の鎖の切断を指示する。一部の実施形態では、ベクターは、変異したCRISPR酵素が標的配列を含む標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に対して変異したCRISPR酵素をコードする。
【0057】
一部の実施形態では、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、真核細胞などの特定の細胞における発現のためにコドン最適化される。真核細胞は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、または非ヒト霊長類を含むがこれらに限定されない哺乳動物などの特定の生物の細胞、またはそれらに由来する細胞であり得る。一般に、コドン最適化は、天然配列の少なくとも1つのコドン(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、またはそれ以上のコドン)を、天然のアミノ酸配列を維持しながら、その宿主細胞の遺伝子においてより頻繁にまたは最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることによって、目的の宿主細胞における発現の増強のために核酸配列を修飾するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸の特定のコドンに対して、特定のバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用の差異)は、多くの場合、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関し、これは、中でも、翻訳されるコドンの特性および特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられている。細胞における選択されたtRNAの優位性は、概して、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンの反映である。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために調整され得る。コドン使用率表は、例えば、「コドン使用データベース」で容易に入手可能であり、これらの表は、いくつかの方法で適合され得る。特定の宿主細胞における発現のために、特定の配列を最適化するためのコンピュータアルゴリズムも利用可能である。一部の実施形態では、CRISPR酵素をコードする配列の1つ以上のコドン(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、もしくはそれ以上、またはすべてのコドン)は、特定のアミノ酸について最も頻繁に使用されるコドンに対応する。
【0058】
一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズするのに十分な相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列であり、CRISPR複合体の標的配列への直接的な配列特異的結合である。一部の実施形態では、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適な整列アルゴリズムを使用して最適に整列される場合、約50%、6/0、75%、80、85%、90%、95%、97.5%/0、99%、またはそれ以上である。最適な整列は、配列を整列するための任意の好適なアルゴリズムを使用することによって決定することができ、その非限定的な例としては、スミス・ウォーターマンアルゴリズム、ニードルマン・ブンシュアルゴリズム、バーローズ・ホイーラー変換に基づくアルゴリズム(例えば、バーローズ・ホイーラーAlinger)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina,San Diego,Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで入手可能)、およびMaqが挙げられる。一部の実施形態では、ガイド配列は、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、またはそれ以上のヌクレオチド長である。一部の実施形態では、ガイド配列は、約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12、またはそれ以下のヌクレオチド長である。
【0059】
ガイド配列が、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を指示する能力は、任意の好適なアッセイによって評価することができる。例えば、CRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPR系の成分(試験されるガイド配列を含む)は、CRISPR配列の成分をコードするベクターを用いたトランスフェクションなどによって、対応する標的配列を有する宿主細胞に提供されてもよく、続いて、本明細書に記載されるSurveyorアッセイなどによって、標的配列内の優先的な切断の評価を行ってもよい。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、試験管内で標的配列、CRISPR複合体の成分(試験対象のガイド配列および試験ガイド配列とは異なる対照ガイド配列を含む)を提供し、試験ガイド配列および対照ガイド配列の反応間で、標的配列における結合または切断速度を比較することによって、評価することができる。他のアッセイが可能であり、当業者に行われるであろう。
【0060】
本出願は、典型的な非ヒト動物(ブタ)を記載するが、他の動物の細胞も同様に遺伝子修飾することができる。上記のように、ブタは、ヒトへの臓器移植において望ましい。本明細書で使用される場合、「ブタ」という用語は、当該技術分野において既知の任意のブタを指し、野生ブタ、家畜ブタ、ミニブタ、イノシシ(Sus scrofa)ブタ、Sus scrofa domesticusブタ、ならびに近交系ブタを含むが、これらに限定されない。ブタの臓器、組織または細胞は、ブタ由来の臓器、組織、失活した動物組織、および細胞を含む。
【0061】
本明細書で使用される「ドナー臓器」という用語は、異種移植片として使用するための動物由来の臓器、組織、および/または細胞を指す。移植材料は、臓器移植を必要とするヒト対象の一時的または恒久的な臓器置換として使用され得る。任意のブタ臓器を使用することができ、これらに限定されないが、脳、心臓、肺、眼、胃、膵臓、腎臓、肝臓、腸、子宮、膀胱、皮膚、毛髪、爪、耳、腺、鼻、口、唇、脾臓、歯肉、歯、舌、唾液腺、扁桃、咽頭、食道、大腸、小腸、小腸、直腸、肛門、甲状腺、胸腺、骨、軟骨、腱、靭帯、腎上体、骨格筋、平滑筋、血管、血液、脊髄、気管、尿道、尿道、視床下部、下垂体、幽門、副腎、卵巣、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精嚢、陰茎、リンパ、およびリンパ管を含む。
【0062】
本明細書で使用される「合成」および「操作された」という用語は、互換的に使用することができ、ヒトの手によって作製または修飾された天然に存在しない材料(例えば、そのゲノムにおいて1つまたは所定の操作された遺伝子修飾を有する遺伝子修飾動物または細胞)を指すか、またはそのような材料(例えば、そのような遺伝子修飾動物から得られた組織または器官)を使用して誘導される。1つ以上の合成核酸または操作された核酸を含む細胞は、操作された細胞または遺伝子修飾された細胞であるとみなされる。本明細書で使用される場合、「遺伝子操作された組織」という用語は、操作された/遺伝子修飾された細胞の集合体を指す。
【0063】
遺伝子産物の発現は、遺伝子産物の総発現が低下した場合、変化したサイズの遺伝子産物が産生された場合、または遺伝子産物が変化した機能性を示す場合に、低下する。したがって、遺伝子が野生型の量の産物を発現するが、産物が変化した酵素活性、変化したサイズ、変化した細胞局在パターン、変化した受容体-リガンド結合、または他の変化した活性を有する場合、その遺伝子産物の発現が低下したとみなされる。発現は、当該技術分野において既知の任意の手段によって分析することができ、こられに限定されないが、RT-PCR、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、マイクロアレイ分析、免疫沈降、放射線アッセイ、ポリペプチド精製、分光光度分析、アクリルアミドゲルのクマシー染色、ELISA、2-Dゲル電気泳動、インサイツハイブリダイゼーション、化学発光、銀染色、酵素アッセイ、ポンソーS染色、多重RT-PCR、免疫組織化学アッセイ、放射免疫アッセイ、比色分析、免疫放射線測定アッセイ、陽電子放出断層撮影、蛍光定量分析、透過処理細胞の蛍光活性化セルソーター染色、放射免疫吸着アッセイ、リアルタイムPCR、ハイブリダイゼーションアッセイ、サンドイッチ免疫アッセイ、フローメトリー、SAGE、示差増幅、または電子分析を含む。例えば、Ausubel et al.,eds.(2002)Current Protocols in Molecular Biology,Wiley-Interscience,New York,New York、Coligan et al.,(2002)Current Protocols in Protein Science,Wiley-Interscience,New York,New Yorkを参照されたい(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0064】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリンを指し、別の分子の特定の空間的および極性組織に特異的に結合し、それによって相補的であると定義される。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または組換え抗体であり得、宿主の免疫化および血清(ポリクローナル)の採取などの当該技術分野で周知の技術によって調整され得、または連続したハイブリッド細胞株を調製し、分泌されたタンパク質(モノクローナル)を採取することによって調整され得、または自然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列もしくはその変異誘発されたバージョンをクローニングし、発現させることによって調製され得る。抗体には、完全な免疫グロブリンまたはその断片が含まれ得る。免疫グロブリンとしては、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3、IgM、IgYなどの様々なクラスおよびアイソタイプが挙げられる。その断片としては、Fab、Fv、およびF(ab’)2、Fab’、scFvなどが挙げられ得る。加えて、免疫グロブリンまたはその断片の集合体、ポリマー、およびコンジュゲートは、特定の分子に対する結合親和性が維持される限り、該当する場合に使用することができる。
【0065】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、抗体アレイ上に配置された抗体に結合し、抗体上の少なくとも1つの共有される立体構造エピトープを誘導する任意の実体を指す。抗原は、タンパク質、ペプチド、抗体、小分子、脂質、炭水化物、核酸、およびアレルゲンであり得る。抗原は、その純粋な形態であっても、または抗原が他の成分と混合されている試料中であってもよい。
【0066】
本明細書で使用される「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列という用語は、適切な調節配列(または「制御エレメント」)の制御下に配置された場合、インビボで転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子を指す。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン、および3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、ウイルス、原核生物、または真核生物のmRNA由来のcDNA、ウイルスまたは原核生物のDNA由来のゲノムDNA配列、さらには合成DNA配列が含まれ得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列の3’に位置し得る。
【0067】
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、増幅または複製されるDNAセグメントに相補的なオリゴヌクレオチドを指す。典型的には、プライマーは、PCRで使用される。プライマーは、鋳型DNAとハイブリダイゼーション(または「アニール」)し、ポリメラーゼ酵素によって、複製/増幅プロセスの開始点として使用される。
【0068】
本明細書で使用される「発現される」または「発現」という用語は、遺伝子からの転写を指し、遺伝子の2本の核酸鎖のうちの1本の領域に少なくとも部分的に相補的なRNA核酸分子を与える。本明細書で使用される「発現される」または「発現」という用語はまた、当該RNA核酸分子からの翻訳を指し、タンパク質、アミノ酸配列、またはその一部を与える。
【0069】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、本明細書で使用されるタンパク質をコードするDNAを発現し、タンパク質を産生するのに有用な核酸を指す。発現ベクターは、様々な原核宿主細胞および/または真核宿主細胞においてタンパク質をコードする遺伝子を発現し、このタンパク質を産生する限り、限定されない。宿主として酵母、動物細胞、または昆虫細胞を使用する場合、発現ベクターは、少なくとも、プロモーター、開始コドン、タンパク質をコードするDNA、および終止コドンを含むことが好ましい。また、タンパク質をコードする遺伝子のシグナルペプチド、エンハンサー配列、5’および3’非翻訳領域、スプライシングジャンクション、ポリアデニル化部位、選択可能なマーカー領域、およびレプリコンをコードするDNAを含んでいてもよい。発現ベクターは、必要に応じて、通常使用される遺伝子増幅のための遺伝子(マーカー)を含んでいてもよい。
【0070】
細菌においてタンパク質を発現させるプロモーター/オペレーター領域は、プロモーター、オペレーター、およびシャイン・ダルガーノ(SD)配列(例えば、AAGG)を含む。例えば、宿主がE.coliである場合、好ましくはTrpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、lambda.PLプロモーター、b 1ppプロモーター、tacプロモーターなどを含む。宿主が哺乳動物細胞などの真核細胞である場合、例えば、SV40由来プロモーター、レトロウイルスプロモーター、熱ショックプロモーターなどが挙げられる。当然のことながら、プロモーターは、上記例に限定されない。加えて、エンハンサーを使用することは、発現に効果的である。好ましい開始コドンは、例えば、メチオニンコドン(ATG)である。一般的に使用される終止コドン(例えば、TAG、TAA、およびTGA)は、終止コドンとして例示される。通常、使用される天然または合成のターミネーターは、ターミネーター領域として使用される。当該技術分野で通常使用されるエンハンサー配列、ポリアデニル化部位、およびスプライシングジャンクション(SV40に由来するものなど)も使用することができる。通常用いられる選択可能なマーカーを通常の方法に従って使用することができる。その例は、テトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシンなどの抗生物質に対する耐性遺伝子である。
【0071】
本明細書で使用される発現ベクターは、少なくとも上述のプロモーター、開始コドン、タンパク質をコードするDNA、終止コドン、およびターミネーター領域を適切なレプリコンに連続的かつ環状に連結することによって調製することができる。必要であれば、制限酵素による消化またはT4DNAリガーゼによるライゲーションなどの方法によって、適切なDNA断片(例えば、リンカー、制限酵素部位など)を使用することができる。形質転換体は、上述の発現ベクターを宿主細胞に導入することによって調製することができる。
【0072】
本明細書で使用されるタンパク質または核酸などの分子の「断片」という用語は、アミノ酸またはヌクレオチド遺伝子配列の任意の部分を指す。
【0073】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、機能的なタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする核酸単位を指す。
【0074】
本明細書で使用される「同一性」という用語は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間の関係を指す。当該技術分野では、「同一性」はまた、かかる配列の文字列間の一致によって決定されるポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」および「類似性」は、既知の方法によって容易に計算することができ、これらに限定されないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,Ed.,Oxford University Press,NY,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,Ed.,Academic Press,NY,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M. & and Griffin,H.G.,Eds.,Humana Press,NJ,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M. & Devereux,J.,Eds.,M Stockton Press,NY,1991、およびCarillo & Lipman(1988)SIAM J.Applied Math.,48:1073に記載されている方法が挙げられる。
【0075】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにコード化されている。2つの配列間のパーセント同一性は、ニードルマン・ブンシュ((1970)J.Mol.Biol.,48:443-453)アルゴリズム(例えば、NBLASTおよびXBLAST)を組み込んだ分析ソフトウェア(すなわち、Genetics Computer Group,Madison,Wisの配列解析ソフトウェアパッケージ)を使用することによって決定することができる。デフォルトパラメータは、本開示のポリペプチドの同一性を決定するために使用される。
【0076】
例として、ポリペプチド配列は、参照配列と同一あってもよく(すなわち、100%同一)、または参照配列と比較して、パーセント同一性が100%未満であるような、特定の数(整数)のアミノ酸変化を含んでいてもよい。かかる改変は、少なくとも1つのアミノ酸欠失、置換(保存的および非保存的置換を含む)、または挿入から選択され、当該改変は、参照ポリペプチド配列のアミノ末端位置もしくはカルボキシ末端位置で、またはそれらの末端位置の間の任意の場所で起こり得、参照配列内のアミノ酸間で個別にもしくは参照配列内の1つ以上の連続した基のいずれかに散在し得る。所与のパーセント同一性のためのアミノ酸変化の数は、参照ポリペプチド中のアミノ酸の総数にそれぞれのパーセント同一性の数値パーセント(100で割ったもの)を乗じ、次いで、参照ポリペプチドの当該アミノ酸の総数からその積を差し引くことによって決定される。
【0077】
本明細書で使用される「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチド類似体を使用して生成されるDNAまたはRNAの類似体、ならびにそれらの誘導体、断片およびホモログを指す。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得るが、有利には二本鎖DNAである。「単離された」核酸分子は、核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離されたものである。「ヌクレオシド」は、糖に連結された塩基を指す。塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)(またはその置換体であるイノシン(I))、シトシン(C)、またはチミン(T)(またはその置換体であるウラシル(U))であり得る。糖は、リボース(RNA中の天然ヌクレオチドの糖)または2-デオキシリボース(DNA中の天然ヌクレオチドの糖)であってもよい。「ヌクレオチド」は、単一のリン酸基に連結されたヌクレオシドを指す。
【0078】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、一連の連結されたヌクレオチド残基を指し、オリゴヌクレオチドは、PCR反応で使用するのに十分な数のヌクレオチド塩基を有する。短いオリゴヌクレオチド配列は、ゲノム配列またはcDNA配列に基づいても、またはそれから設計されてもよく、特定の細胞または組織における同一の、類似の、もしくは相補的なDNAもしくはRNAの存在を増幅、確認、または明らかにするために使用される。オリゴヌクレオチドは、化学的に合成され得、プライマーまたはプローブとして使用され得る。オリゴヌクレオチドは、3塩基を超える長さの任意のヌクレオチドを意味し、プローブおよびプライマーを含む、標的核酸の検出または同定を容易にするために使用される。
【0079】
本明細書で使用される「形質転換体」という用語は、発現ベクターが導入される1つ以上のレシピエント細胞を指す。当業者によって理解されるように、この機能用語には、ゲノム配列、cDNA配列、プローブ、オリゴヌクレオチド、またはそれらの断片(および、それらの組み合わせ)、ならびに、ユーザによって設計および/または改変され得るものを含む遺伝子産物が含まれる。精製された遺伝子、核酸、タンパク質などは、それが通常会合する少なくとも1つの混入している核酸またはタンパク質から識別および分離される場合、これらの実体を指すために使用される。
【0080】
「トランスフェクション」という用語は、作用剤が細胞に導入されるプロセスを指す。トランスフェクトされ得る作用剤のリストは大きく、これらに限定されないが、ガイドRNA、センス配列および/またはアンチセンス配列、1つ以上の遺伝子をコードするDNAが含まれ、発現プラスミド、タンパク質、タンパク質断片などに体系化される。作用剤を細胞にトランスフェクトするための方法が複数あり、これらに限定されないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムベースのトランスフェクション、DEAE-デキストランベースのトランスフェクション、脂質ベースのトランスフェクション、分子コンジュゲートベースのトランスフェクション(例えば、ポリリジン-DNAコンジュゲート)、マイクロインジェクション、およびその他が含まれる。
【0081】
考察
抗腫瘍療法の抗体の開発は、それらのエフェクター機能のインビトロ分析を伴い、標的細胞を殺傷するCDCを誘発する能力を含む。古典的なアプローチは、抗体を、標的細胞および補体の供給源(すなわち、血清)とともにインキュベートすることである。次いで、細胞死は、いくつかのアプローチにより決定される:
【0082】
CDCアッセイは、臓器移植または骨髄移植のための好適なドナー、すなわち、組織適合系HLAの表現型が一致するドナーを見つけるために使用される。患者およびドナーについてそれらのHLA表現型を決定するためのHLAタイピングが行われた後、移植片拒絶反応を引き起こす可能性があるドナー特異的抗HLA抗体を産生する患者を除外するために、交差適合試験が行われる。
【0083】
CDC HLAタイピング(または血清学的タイピング)は、特徴付けられた同種抗血清由来の抗HLA抗体またはモノクローナル抗体のバッチを使用する。これらの抗体を、患者またはドナーのリンパ球および補体源と、1つずつインキュベートすることができる。死細胞の量(したがって、陽性結果)は、死細胞または生細胞の染色によって測定される。
【0084】
したがって、CDCアッセイは、典型的には、患者の血清とドナーのリンパ球とのインキュベーション、およびウサギ補体を添加した後の第2のインキュベーションを伴う。死細胞の存在(陽性試験)は、ドナーがこの特定の患者に好適でないことを意味する。試験の感度を高めるために利用可能な改変があり、最小限のインキュベーション時間の延長、抗ヒトグロブリン(AHG)の添加、非結合抗体の除去後の補体の添加、T細胞およびB細胞のサブセットの分離を含む。CDCクロスマッチに加えて、フローサイトメトリーのクロスマッチが利用可能であり、これは、より感度が高く、補体未活性化抗体でさえも検出することができる。しかしながら、依然として、候補ドナー細胞を溶解する能力を有し、それによって最終的に組織拒絶反応を引き起こす、非常に低レベルの患者抗体を検出することができる必要がある。
【0085】
本開示は、潜在的な移植レシピエント患者が、レシピエントによるドナー臓器の受容を低減または防止するドナー臓器反応性抗体を発現するかどうかを確立する、補体依存性細胞傷害の分析の感度を増加させる方法を包含する。したがって、CRISP Cas9ベースの手順を使用して、補体阻害剤をコードする少なくとも1つの遺伝子からの発現を、候補の移植臓器に由来する細胞において不活性化することができる。かかる修飾細胞は、潜在的な移植レシピエントから血清試料中に配置された場合、それらがもはや少なくとも1つの補体阻害剤を産生しないため、血清補体の有効な活性を低下させない。結果として、より低いレベルのレシピエント患者の血清抗体は、ドナー細胞の溶解を誘導するのに有効になる。本開示の方法は、潜在的なドナー臓器に由来する細胞に有用に適用されてもよく、その細胞は、初代細胞、培養細胞、または単離されたドナー臓器細胞から生成された不死化細胞株、および当該技術分野で既知の技術によって不死化された不死化細胞株であり得、一方、当該方法は、ドナーリンパ球などの細胞に適用される場合にも有用である。
【0086】
したがって、本開示の一態様は、候補ドナー臓器が潜在的なレシピエント患者の抗体による拒絶反応の対象となるかどうかを決定する方法を包含する。一部の実施形態では、組織試料が候補臓器から取り出され、CRISPR Cas9遺伝子編集システムによって、補体阻害剤をコードする遺伝子が、細胞のゲノムから欠失される。好適な標的となる補体阻害剤としては、これらに限定されないが、CD46様、CD46、CD55、およびCD59が挙げられる。この方法の一実施形態では、遺伝子操作細胞を生成するのに必要な時間は、患者に著しく影響を及ぼさないことが企図される。
【0087】
本開示による遺伝子修飾細胞は、複数の患者からの複数の血清試料を試験する際に使用するための、当業者に周知の方法によって不死化、培養、または保存され得ることがさらに意図され、したがって、各試験についてドナー由来の細胞を遺伝子修飾する必要性が回避される。これにより、費用対効果がより高く、迅速に実施されるアプローチが提供される。
【0088】
本開示はさらに、異種移植ドナーの複数の臓器由来の細胞による補体阻害剤の発現を不活性化する際に使用するのに好適なガイドRNAヌクレオチド配列を提供する。限定することを意図するものではないが、一実施例では、補体阻害剤であるCD46を発現する能力が、腎内皮細胞のゲノムから排除された。
【0089】
ゲノム編集技術としては、操作されたII型CRISPR/Cas9システムの使用による高効率のゲノム編集が挙げられる。合成ガイドRNA(gRNA)と結合したCas9タンパク質のヌクレアーゼ活性に依存するCRISPR構築物は、単純かつ迅速に合成され、多重化され得る。しかしながら、それらの合成が比較的容易であるにもかかわらず、CRISPRは、Cas9自体の特性およびそのgRNAの合成の両方の機能である標的化可能なゲノム空間へのアクセスに関する技術的制限を有する。
【0090】
CRISPR系による切断には、gRNAと、20ヌクレオチドのDNA配列および標的部位の3’に見出される短いヌクレオチドモチーフである必要なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)との相補的な塩基対合が必要である(Jinek et al.,(2012)Science 337:816-821)。理論的には、CRISPR技術を使用して、ゲノム内の任意の固有のN20-PAM配列を標的化することができる。PAM配列のDNA結合特異性は、用いる特異的Cas9の起源の種に応じて変化し、1つの制約を与える。現在、最も制限が少なく、最も一般的に使用されるCas9タンパク質は、S.pyogenesからのものであり、配列NGGを認識し、したがって、ゲノム内の任意の固有の21ヌクレオチド配列に続く2つのグアノシンヌクレオチド(N20NGG)を標的とすることができる。タンパク質成分によって課される利用可能な標的化空間の拡大は、変化したPAM要件を有する新規のCas9タンパク質の発見および使用、または変異誘発または定向進化を介した新規のCas9バリアントの生成を待つことに限定される。
【0091】
CRISPR系の第2の技術的制約は、5’グアノシンヌクレオチドで開始するgRNA発現から生じる。III型クラスのRNAポリメラーゼIIIプロモーターの使用は、十分に定義された末端を有するこれらの短い非コード転写産物、および1+のヌクレオチドを除く転写に必要なすべてのエレメントが上流プロモーター領域に含まれるため、gRNAの発現に有用である。しかしながら、一般的に使用されるU6プロモーターは、転写を開始するためにグアノシンヌクレオチドを必要とするため、U6プロモーターの使用で、ゲノム標的化部位がGN19NGGにさらに拘束された。
【0092】
gRNAの実施形態は、これらに限定されないが、CD46様、CD46、CD55、およびCD59などの、補体阻害剤をコードする遺伝子を標的とする。一部の実施形態では、組成物は、(a)1つ以上のベクターを含む天然に存在しないヌクレアーゼ系(例えば、CRISPR)を含み、ベクターは、i)ヌクレアーゼ系ガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター(例えば、双方向H1プロモーター)であって、gRNAが、対象の細胞のDNA分子の補体阻害剤をコードする標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、細胞で発現される1つ以上の遺伝子産物をコードする、プロモーターと、ii)ゲノム標的化ヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された細胞で作動可能な調節エレメントと、を含み、成分(i)および(ii)が、系の同じまたは異なるベクターに位置し、gRNAが、標的配列を標的とし、標的配列とハイブリダイズし、ヌクレアーゼが、DNA分子を切断して、1つ以上の遺伝子産物の発現を変化させる。
【0093】
一部の実施形態では、系は、単一のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子またはプラスミドにパッケージングされる。一部の実施形態では、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、51種類のヒトアデノウイルス血清型(例えば、血清型2、5、または35)のうちのいずれかを含んでもよい。一部の実施形態では、系は、1つ以上の遺伝子産物を不活性化する。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ系は、少なくとも1つの遺伝子変異を切除する。一部の実施形態では、プロモーターは、a)gRNAをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列の一方向の転写を提供する制御エレメントと、b)ゲノム標的化ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列の反対方向の転写を提供する制御エレメントと、を含む。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、細胞における発現のためにコドン最適化される。一部の実施形態では、プロモーターは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のgRNAに作動可能に連結される。
【0094】
一部の実施形態では、本開示の方法は、1つ以上のベクターを含む天然に存在しないCRISPR系を含む組成物を利用し、ベクターは、a)CRISPR系ガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結されたH1プロモーターであって、gRNAが、細胞のDNA分子の標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、細胞で発現される1つ以上の遺伝子産物をコードする、H1プロモーターと、b)Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された細胞で作動可能な調節エレメントと、を含み、成分(a)および(b)が、系の同じまたは異なるベクターに位置し、gRNAが、標的配列を標的とし、標的配列とハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断して、1つ以上の遺伝子産物の発現を変化させる。
【0095】
一部の実施形態では、本開示の方法は、1つ以上のベクターを含む天然に存在しないCRISPR系を含む組成物を利用し、ベクターは、a)CRISPR系ガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結されたH1プロモーターであって、gRNAが、真核細胞のDNA分子の標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、真核細胞で発現される1つ以上の遺伝子産物をコードする、H1プロモーターと、b)II型Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された真核細胞で作動可能な調節エレメントと、を含み、成分(a)および(b)が、系の同じまたは異なるベクターに位置し、gRNAが、標的配列を標的とし、標的配列とハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断し、それによって1つ以上の遺伝子産物の発現が変化する。一態様では、標的配列は、任意のヌクレオチド、例えば、N20NGGで始まる標的配列であり得る。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列GN19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列CN19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列TN19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN19NGGまたはGN19NGGを含む。別の態様では、Cas9タンパク質は、細胞における発現のためにコドン最適化される。別の態様では、Cas9タンパク質は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。さらなる態様では、真核細胞は、哺乳動物細胞またはヒト細胞である。さらに別の態様では、1つ以上の遺伝子産物の発現が減少する。
【0096】
したがって、本開示の一態様は、患者における移植ドナー臓器反応性抗体を検出する方法の実施形態を包含し、当該方法は、(a)動物またはヒトの臓器に由来する細胞の集団を遺伝子修飾することによって、細胞の集団による少なくとも1つの補体阻害剤の発現を減少させるステップと、(b)遺伝子修飾細胞の集団を、移植ドナー臓器を受容することを望む患者から単離された血清の試料と接触させるステップと、(c)遺伝子修飾細胞の集団の溶解を検出するステップであって、溶解が、移植ドナー臓器を受容することを望む患者がドナー臓器反応性抗体を発現するかどうかを示し、溶解が、検出可能であるか、または臓器に由来しかつ少なくとも1つの発現される補体阻害剤の減少を有するように遺伝子修飾されていない細胞集団と比較して増加している、溶解を検出するステップと、を含む。
【0097】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、候補の移植臓器に由来し得る。
【0098】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、ドナーリンパ球であり得る。
【0099】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、腎臓に由来し得る。
【0100】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞集団は、腎内皮細胞であり得る。
【0101】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、当該方法は、(i)臓器から組織試料を得ることと、(ii)遺伝子修飾臓器由来細胞の集団であって、細胞をガイドRNAおよびCRISPR Cas9をコードする少なくとも1つの発現ベクターでトランスフェクトすることによって生成される不活性補体阻害剤をコードする遺伝子を含み、ガイドRNAが、補体阻害剤に特異的である、遺伝子修飾臓器由来細胞の集団を生成することと、をさらに含み得る。
【0102】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、不活性補体阻害剤のコード遺伝子は、CD46、CD55、およびCD59からなる群から選択され得る。
【0103】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46であり得る。
【0104】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、不活性補体阻害剤をコードする遺伝子を不活性化するガイドRNAは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、および配列番号11からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、および配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列と、を含み得る。
【0105】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様であり得、CRISPR Cas9ベースの不活性化のためのガイドRNAは、生理学的条件下で、配列番号19の配列またはその相補鎖とハイブリダイズすることができ、配列番号20のヌクレオチド配列を有し得る。
【0106】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、発現ベクターは、プラスミドPX330またはPX458であり得、発現プラスミドは、プラスミドが哺乳動物細胞にトランスフェクトされた場合、Cas9を発現する。
【0107】
本開示の本態様の一部の実施形態では、発現ベクターは、配列番号13~18からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%の類似性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0108】
本開示の別の態様は、患者における移植ドナー臓器反応性抗体を検出する方法の実施形態を包含し、当該方法は、(a)候補の動物またはヒトの移植ドナー腎臓に由来する腎内皮細胞の集団による少なくとも1つの補体阻害剤の発現を、細胞の集団を遺伝子修飾することによって減少させるステップであって、遺伝子修飾が、(i)腎臓またはリンパ球から組織試料を得るステップと、(ii)腎内皮細胞をガイドRNAおよびCRISPR Cas9をコードする少なくとも1つの発現ベクターでトランスフェクトすることによって生成される不活性CD46補体阻害剤をコードする遺伝子を含む遺伝子修飾腎臓由来細胞の集団を生成するステップであって、ガイドRNAが、補体阻害剤CD46に特異的であり、配列番号1および配列番号7からなる群から選択されるヌクレオチド配列ならびに配列番号2および配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み得、発現ベクターが、配列番号13または16から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%の類似性を有するヌクレオチド配列を含み得る、生成するステップと、によってなされ得る、減少させるステップと、(b)遺伝子修飾腎内皮細胞の集団を、移植ドナー臓器を受容することを望む患者から単離された血清の試料と接触させるステップと、(c)遺伝子修飾腎内皮細胞の集団の溶解を検出するステップであって、溶解が、移植ドナー臓器を受容することを望む患者がドナー臓器反応性抗体を発現するかどうかを示し、溶解が、検出可能であるか、または臓器に由来しかつ少なくとも1つの発現される補体阻害剤の減少を有するように遺伝子修飾されていない腎内皮細胞の集団と比較して増加している、溶解を検出するステップと、を含む。
【0109】
本開示のさらに別の態様は、遺伝子修飾哺乳動物細胞であり、細胞は、ドナー組織に由来し、細胞は、補体阻害剤の発現を減少させるか、または発現されないように遺伝子修飾される。
【0110】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46、CD55、またはCD59であり得る。
【0111】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様、CD46、CD55、またはCD59であり得る。
【0112】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様であり得、配列番号23のアミノ酸配列に少なくとも90%類似のアミノ酸配列を有し得る。
【0113】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、補体阻害剤は、CD46様であり得、配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも90%の類似性を有するヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0114】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞は、補体阻害剤をコードする細胞のゲノムのすべてまたは断片のCRISPR Cas9による欠失によって、遺伝子修飾され得る。
【0115】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞は、培養細胞の集団であり得る。
【0116】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、ドナー組織は、腎臓、肺、心臓、筋肉、皮膚組織、またはリンパ球からなる群から選択される臓器から得ることができる。
【0117】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、細胞は、候補ドナー臓器から得られる。
【0118】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、候補臓器は、腎臓、肺、心臓、筋肉、および皮膚組織からなる群から選択される。
【0119】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、候補臓器は、腎臓である。
【0120】
本開示のこの態様の一部の実施形態では、遺伝子修飾哺乳動物細胞は、腎内皮細胞またはリンパ球である。
【0121】
本開示の実施形態は、実施例および対応するテキストおよび図面に関連して説明されるが、本開示をこれらの説明における実施形態に限定する意図はない。反対に、意図は、本開示の実施形態の趣旨および範囲内に含まれるすべての代替物、変更、および均等物を網羅することである。
【実施例】
【0122】
実施例1
親細胞株の培養:GGTA1/B4GalNT2/SLA1 KOを有する不死化腎内皮細胞株を、付着因子コートプレート(Thermo Fisher,Waltham,MA)上で、10%のCosmic仔牛血清(HyClone,Logan,UT)、100ug/mlの内皮細胞特異的増殖因子(Corning,Bedford,MA)、および1%のペニシリン/ストレプトマイシン(HyClone,Logan,UT)を補充したRosewell Park Memorial Institute(RPMI)培地1640(gibco,Carlsbad,CA)中で、37℃および5%CO2で培養した。DyLight 649 Griffonia simplicifoliaレクチンI,アイソレクチンB4(Vector Labs,Burlingame,CA)とのインキュベーションによって、細胞が、ガラクトース-α1,3-ガラクトース陰性であることを確認し、SLAクラスI(Invitrogen,Rockford,IL)とのインキュベーションによってSLAクラスI陰性であることを確認し、Birminghamのthe University of Alabama総合フローサイトメトリーコアのBD FACS ARIA IIを使用して分析した。
【0123】
実施例2
gRNA発現ベクターの生成:プラスミドpSpCas9(BB)-2A-GFP(PX458)(Addgene,プラスミド48138)を使用して、設計されたアニーリングされたオリゴ(表I)をクローニングし、CRISPR関連Cas9ヌクレアーゼ系を使用して、ガイドRNAを生成した。1ugのプラスミドpX458を、BbsI(New England Biolabs,Ipswich,MA)で、37℃で30分間消化した。各対のリン酸化オリゴを、Bio-RADサーマルサイクラー(Applied Biosystems,Foster City,California)を使用して、37℃で30分間から始めて、続いて95℃で5分間、次いで5℃/分の勾配で25℃まで下げるステップでアニーリングした。消化したpX458を、アニーリングしたオリゴ対と、室温で10分間ライゲーションした。ライゲーション反応を使用して、製造元のプロトコルに従って、TOP10コンピテント細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)を形質転換した。QIAprepキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して、処理ごとに8つのコロニーからプラスミドを単離した。DNAクローンを配列決定した(Heflin center Genomics Core-DNA,UAB)。
【0124】
実施例3
標的細胞のトランスフェクションおよび同定:ブタRECは、製造元の説明書に従って、ネオントランスフェクションシステム(Life Technologies,Grand Island,NY,USA)を使用してエレクトロポレーションによってトランスフェクションした。Cas9発現プラスミドの濃度および細胞数は一定のままで、トランスフェクション当たり2μg/1×106細胞であった。Cas9発現ベクターは、緑色蛍光タンパク質(GFP)の有無のみで異なった。細胞を、抗生物質不含培地で24時間培養した。48時間後、GFP発現ベクターでトランスフェクトした細胞を、BD FACS Aria IIで選別した。最も明るい細胞を保持するためにゲートを確立し、これは、全集団の5%未満に制限された。高レベルのGFP発現を有する細胞を、FACS Ariaフローサイトメーターによって1ウェル当たり1細胞を96ウェルプレートに選別した。細胞は、選別後、コンフルエントになるまで14日間の培養で保持した。
【0125】
実施例4
遺伝子型解析:QIAmp.RTM DNAミニキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して、ブタ細胞からゲノムDNAを単離した。RNA試料を、RNeasy Plus mini Kit(Qiagen,Valencia,CA)を使用して、製造元のプロトコルに従って単離した。RNAの質および量を、ナノドロップ分光光度計(ND-1000,Wilmington,DE)によって確認した。RNA試料を、OneStep RT-PCRキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して逆転写した。PCR産物を精製し、pCR4-TOPO TA(Invitrogen,Carlsbad,CA)にライゲーションした。形質転換された細菌を、クローン選択用に50μg/mlのカナマイシンを含むルリア・ベルターニ寒天上に蒔いた。QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen,Valencia,CA,USA)を使用して、プラスミドを単離した。ヌクレオチド配列は、サンガー法によって行った。
【0126】
実施例5
表現型分析:表現型特異的な変異効率を、ブタCD46の発現を測定することによって解析した。細胞を、抗CD46抗体(クローン6D8/8、FITC)(Lifespan Biosciences,Seattle,WA)で染色して、遺伝子発現機能を調べた。標識していない細胞を、陰性対照として使用した。フローサイトメトリーのデータを、BD FACS Aria IIで収集し、FlowJoバージョン10(Treestar Inc、Ashland、OR)を用いて分析を行った。
【0127】
実施例6
配列分析:ヌクレオチド配列を、Geneious 11.0.4を使用して解析した。重複する順方向および逆方向の配列の断片から、各アレルの完全なコード配列が構築された。各遺伝子座について、複数の配列整列を作成した。NCBI参照配列:NM_213888.1.を使用することによって、配列を確認した。
【0128】
実施例7
補体媒介性細胞傷害:96ウェルV底アッセイプレートにおいて、13名の腎臓移植待機患者からの100μlの連続希釈された熱不活性化ヒト血清を、親ブタCD46KO由来のRECの100μlアリコートと混合した。ヒト血清は、37℃で30分間、IgM破壊剤のジチオスレイトール(DTT)(最終2.5mM)の有無で処理した。各ウェルにおけるRECの最終濃度は1×106/mlであり、血清濃度は希釈によって異なった(100、50、25、12.5、6.25、3.125%)。アッセイを、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを6分間遠心分離し(400g)、デカントし、HBSSで洗浄した。このステップを2回繰り返した。ヒト血清の熱不活性化は、保存された血清の中の補体の可変的な存在により、結果が影響を受けることを防止する。低TOX-Hウサギ補体(Cedarlane,Burlington,NC,USA)をHBSS中に1:15に希釈し、140μlを各ウェルに添加し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを6分間遠心分離し(400g)、デカントし、HBSSで洗浄した。RECを、ヨウ化プロピジウム(PI)(2.5mg/mL,Sigma-Aldrich)を用いて、室温で15分間標識した。BD Accuri C6フローサイトメーターおよびソフトウェア(BD Biosciences,Ann Arbor,MI)を使用してデータを収集した。
【0129】
実施例8
抗体結合:各群の2×105のRECを、13名の腎臓移植待機患者由来の25%の熱不活性化ヒト血清と4℃で30分間インキュベートした。その後、試料を、ハンクの緩衝塩溶液(HBSS)で3回洗浄した。ヒトIgGおよびIgMは、4℃で30分間、Alexa Fluor 488(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、West Grove,PA,USA)にコンジュゲートされた抗ヒト二次抗体で個別に検出した。PBMCを、HBSS中で3回洗浄した。蛍光検出は、Accuri C6フローサイトメーター(Accuri,Ann Arbor,MI,USA)を使用して行った。データの解析は、FlowJoバージョン10(Treestar Inc.,Ashland,OR,USA)を用いて行った。
【0130】
実施例9
図7に、ブタCD46様補体阻害剤をコードするmRNAヌクレオチド配列である受託番号XM_003482667.3を有するヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。有利なgRNA配列は、配列番号19の配列にハイブリダイズし、配列番号20が与えられる(
図7)。
【0131】
実施例10
図8に、アミノ酸配列ヒトCD46(配列番号21)、ブタCD46(配列番号22)、およびブタCD46様(配列番号23)の補体阻害剤間の類似性を示すアミノ酸配列整列を示す。
【配列表】