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特許7502811BETブロモドメイン阻害物質およびナトリウム依存性グルコース輸送体2阻害物質の組み合わせで主要な心血管有害事象(MACE)を処置および/または予防する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】BETブロモドメイン阻害物質およびナトリウム依存性グルコース輸送体2阻害物質の組み合わせで主要な心血管有害事象(MACE)を処置および/または予防する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20240612BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20240612BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20240612BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240612BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240612BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240612BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240612BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K31/351
A61K31/4155
A61K45/06
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022525779
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2020000912
(87)【国際公開番号】W WO2021090061
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】62/930,860
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115525
【氏名又は名称】レスバーロジックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】レビオダ,ケネス ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ハリデイ,クリストファー ロス アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】カーン,アジズ ナイーム
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-517946(JP,A)
【文献】Cardiovascular Therapeutics,2017年,Vol.35,e12265
【文献】American Journal of Cardiovascular Drugs,2019年02月,Vol.19,p.249-257
【文献】Diabetes Care,2019年02月,Vol.42,p.318-326
【文献】Diabetologia,2018年,Vol.61,p.2108-2117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置および/または予防を必要とする患者において主要な心血管有害事象(MACE)を処置および/または予防するための医薬であって、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害物質、および2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を含み;
ここで、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害物質と同時にまたは順次に投与され;そして、
前記対象は2型糖尿病を有し、かつスタチン療法を受けている、医薬。
【請求項2】
処置および/または予防を必要とする患者においてMACEの個々の要素のいずれかを処置および/または予防するための医薬であって、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害物質、および2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を含み;
ここで、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害物質と同時にまたは順次に投与され;そして、
前記対象は2型糖尿病を有し、かつスタチン療法を受けている、医薬。
【請求項3】
1日用量として2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン200mgまたは対応量のその薬学的に許容できる塩が、それを必要とする対象に投与される、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
それを必要とする対象が、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン100mgまたは対応量のその薬学的に許容できる塩を1日に2回投与される、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】
SGLT2阻害物質が、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、レモグリフロジン、イプラグリフロジン、HM41322、およびダパグリフロジンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
SGLT2阻害物質が、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、およびトホグリフロジンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
該対象がヒトである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
該対象が、40mg/dL未満のHDLコレステロール(男性)/45mg/dL未満のHDLコレステロール(女性)であり、かつ7~90日前以内の急性冠症候群(ACS)を有するヒトである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
MACEが、非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、卒中、および心血管疾患事象のための入院から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
心血管疾患事象がうっ血性心不全である、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
心血管疾患事象のための入院がうっ血性心不全のための入院である、請求項9に記載の医薬。
【請求項12】
MACEが、非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、および卒中から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンまたは対応量のその薬学的に許容できる塩およびSGLT2阻害物質が、単一医薬組成物で同時に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンまたは対応量のその薬学的に許容できる塩およびSGLT2阻害物質が、別々の医薬組成物として同時にまたは順次に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月5日出願の米国仮特許出願62/930,860の優先権の利益を主張し、この全内容は引用により本明細書に包含される。
【0002】
本開示は、主要な心血管有害事象(MACE)(非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、卒中、および心血管疾患(CVD)事象のための入院を含む)を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein 2, SGLT2)阻害物質と、式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物との組み合わせを投与することによる方法に関する。
【0003】
式Iで示される化合物は、米国特許8,053,440(引用により本明細書に包含される)に記載されている。式Iで示される化合物は、
【化1】
[式中、R1およびR3はそれぞれ、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され;
R5およびR7はそれぞれ、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され;
WはCおよびNから選択され、ここで、WがNである場合、pは0または1であり、そして、WがCである場合、pは1であり;そして
W-(R4)pにおいて、WはCであり、pは1であり、そして、R4はHであり、あるいは、WはNであり、そして、pは0である]
またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を含む。
【0004】
迅速な冠動脈再建術、二重抗血小板療法、および集中的な脂質低下療法を含む最新のエビデンスベースの療法の使用にもかかわらず、急性冠症候群(ACS)後に主要な心血管有害事象(MACE)が高い頻度で再発している。2型糖尿病(T2DM)患者は、特別に危険性が高く、ACS症例の約3分の1を占めている(Cannon et al. 2015; Schwartz et al. 2013; Schwartz et al. 2018)。
【0005】
ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein 2)の阻害によって尿中のグルコースの分泌を誘導するSGLT2阻害物質などの新しい治療法 (Zinman et al. 2015; Neal et al. 2017; Perkovic et al. 2019)は、確立した心血管疾患、糖尿病および慢性腎疾患を有する患者における心血管関連障害の危険性の低減を示している(Zinman et al. 2015; Neal et al. 2017; Perkovic et al. 2019)。しかし、最近のACSを有する患者におけるMACEを減少させる糖尿病医薬は示されておらず、この集団には相当な残存の危険性が残っている。
【0006】
SGLT2阻害物質の、2型糖尿病患者のMACEを減少させる能力は、エンパグリフォジン(empaglifozin)のEMPA-REG OUTCOME(NCT01131676);カナグリフォジン(canaglifozin)のCANVAS Program(NCT01032629およびNCT01989754);およびダパグリフォジン(canaglifozin)のDECLARE-TIMI(NCT01730534)などのいくつかの臨床試験で研究されている。要約すると、エンパグリフォジン(empaglifozin)は、狭義に定義されるMACEを14%(ハザード比 [HR]、0.86; 95%CI、0.74-0.99)で、広義に定義されるMACEを11%(HR 0.89, 95%CI, 0.78-1.01)で軽度に減少させる能力が示された(Guettier, J.M. Endocrinologic and Metabolic Drugs Advisory Committee (EMDAC) Meeting, June 28, 2016, U.S. Food and Drug Administration (FDA))。しかし、心血管系死亡(HR 0.62、95% CI、0.49~0.77)を除き、エンパグリフォジン(empaglifozin)は個々のMACE事象の減少(すなわちHR 1.0)を示さなかった(Rastogi et al. (2017) Diabetes Ther, 8:1245-1251)。また、カナグリフォジン(canaglifozin)は、狭義に定義されるMACEを14%(HR 0.86, 95% CI, 0.75~0.97)で軽度に減少させる能力を有することが示された(Carbone et al. (2019) Cardiovasc Diabetol, 18(64):1-13)。カナグリフォジン(canaglifozin)は個々のMACE事象の減少に関連していたが、これらの個々の効果は統計的な有意性に達しなかった(Carbone et al.)。ダパグリフロジンについては、このSGLT2での処置により、狭義に定義されるMACEの割合がプラセボよりも高くも低くもしなかったが(HR 0.93、95%CI、0.82~1.04)、心血管系死亡または心不全のための入院では17%の適当な減少をもたらした(HR 0.83、95% CI、0.73-0.95) (Wiviott et al., N Engl J Med, 380(4):347-357)。最近完了した臨床第3相試験(BETonMACE; NCT02586155)では、低HDLコレステロール(男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)および最近のACS(7~90日前)を有する2型糖尿病患者におけるアパベタロン(RVX-208)のMACEに対する効果が評価された。すべての患者は高強度のスタチン処置とその他のエビデンスベースの処置を受けた。本試験には2,425名の患者が登録され、MACEアウトカム集団は2,418名の患者からなる。合計150名の患者はRVX-208およびSGLT2阻害物質の両方を投与され;合計148名はSGLT2阻害物質を投与されたが、RVX-208を投与されなかった;合計1,062名はRVX-208を投与されたが、SGLT2阻害物質を投与されなかった;合計1,058名はRVX-208またはSGLT2阻害物質のどちらも投与されなかった。
【0007】
驚くべきことに、実施例2で詳述されているように、RVX-208およびSGLT2阻害物質の組み合わせで処置した患者では、どちらかの療法単独で処置した場合と比較して、MACE減少により測定される心血管関連障害および心血管疾患(CVD)事象の顕著な減少を示すことが判明された。実施例2で検討した結果は、アパベタロン自体が、ハザード比またはMACE事象(非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、卒中、および心血管系疾患のための任意の入院といった事象の単一複合エンドポイントとして)、または心筋梗塞、心血管系死亡、心血管疾患のための入院およびうっ血性心不全のための入院などの特定のMACE事象を有する患者の数を減少させる能力を有することを一貫して示している(図2図5図8図11図14および図17を参照のこと)。しかしながら、アパベタロンとSGLT2阻害物質とを組み合わせた場合、上記の全体としてまたは特定の個別のMACE事象を有する患者の数は、意外なことに一貫して、統計的に有意性に達し、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質個々の相加効果(例えば、少なくとも約50%、最大約70%;図1図3図4図6図7図9図10図12図13図15図16および図18を参照のこと)ならびに上記のSGLT2単剤療法の臨床試験の結果よりはるかに上回る程度に減少した。
【0008】
RVX-208およびSGLT2阻害物質の同時投与の効果は、独立した医学諮問委員会が判定した心血管関連障害を用いて定量化され、プラセボおよびSGLT2阻害物質と比較して事象の有意な減少を示した[HR = 0.40(95% CI, 0.16~1.00; p = 0.05)]。
【0009】
本発明は、主要な心血管有害事象(MACE)(非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、卒中、およびCVD事象のための入院を含む)を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein, SGLT2)阻害物質、および式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を投与することによる方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施態様において、本発明は、心血管系死亡を予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein, SGLT2)阻害物質、および式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を投与することによる方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施態様において、本発明は、CVD事象のための入院を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein 2, SGLT2)阻害物質、および式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を投与することによる方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施態様において、本発明は、非致死性心筋梗塞を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein 2, SGLT2)阻害物質、および式Iで示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を投与することによる方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施態様において、式Iで示される化合物は、SGLT2阻害物質と同時に投与される。いくつかの実施態様において、式Iで示される化合物は、SGLT2阻害物質と順次に投与される。いくつかの実施態様において、式Iで示される化合物は、SGLT2阻害物質Iと単一医薬組成物で投与される。いくつかの実施態様において、式Iで示される化合物およびSGLT2阻害物質は、別々の組成物として投与される。
【0014】
いくつかの実施態様において、式Iaで示される化合物は、
【化2】
[式中、R1およびR3はそれぞれ、アルコキシ、アルキル、および水素から独立して選択され;
R2アルコキシ、アルキル、および水素から選択され;
R5およびR7はそれぞれ、アルキル、アルコキシ、および水素から独立して選択され;
R6は、アルキル、ヒドロキシル、およびアルコキシから選択され;
WはCおよびNから選択され、ここで、WがNである場合、pは0または1であり、そして、WがCである場合、pは1であり;そして
W-(R4)pにおいて、WはCであり、pは1であり、そして、R4はHであり、あるいは、WはNであり、そして、pは0である]
またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物から選択される。
【0015】
いくつかの実施態様において、式Iで示される化合物は、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその薬学的に許容できる塩である。
【0016】
いくつかの実施態様において、SGLT2阻害物質は、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、レモグリフロジン、イプラグリフロジン、またはHM41322である。いくつかの実施態様において、SGLT2阻害物質は、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、またはトホグリフロジンである。
【0017】
いくつかの実施態様において、MACEエンドポイントは、狭義には、心血管(CV)系死亡、非致死性心筋梗塞、または卒中の単一複合エンドポイントとして定義される。
【0018】
いくつかの実施態様において、MACEエンドポイントは、広義には、心血管(CV)系死亡、非致死性心筋梗塞、CVD事象のための入院、または卒中の単一複合エンドポイントとして定義される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対プラセボとSGLT2阻害物質を投与した患者における、狭義に定義されるMACEの累積発生率の比較を示す。
【0020】
図2図2は、SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでプラセボを投与した患者における、狭義に定義されるMACEの累積発生率の比較を示す。
【0021】
図3図3は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者における、狭義に定義されるMACEの累積発生率の比較を示す。
【0022】
図4図4は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対プラセボとSGLT2阻害物質を投与した患者における、広義に定義されるMACEの累積発生率の比較を示す。
【0023】
図5図5は、SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでプラセボを投与した患者における、広義に定義されるMACEの累積発生率の比較を示す。
【0024】
図6図6は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者における、広義に定義されるMACEの累積発生率の比較を示す。
【0025】
図7図7は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対プラセボとSGLT2阻害物質を投与した患者における、非致死性心筋梗塞の累積発生率の比較を示す。
【0026】
図8図8は、SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでプラセボを投与した患者における、非致死性心筋梗塞の累積発生率の比較を示す。
【0027】
図9図9は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者における、非致死性心筋梗塞の累積発生率の比較を示す。
【0028】
図10図10は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対プラセボとSGLT2阻害物質を投与した患者における、CV系死亡の累積発生率の比較を示す。
【0029】
図11図11は、SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでプラセボを投与した患者における、CV系死亡の累積発生率の比較を示す。
【0030】
図12図12は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者における、CV系死亡の累積発生率の比較を示す。
【0031】
図13図13は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対プラセボとSGLT2阻害物質を投与した患者における、CVD事象のための入院の累積発生率の比較を示す。
【0032】
図14図14は、SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでプラセボを投与した患者における、CVD事象のための入院の累積発生率の比較を示す。
【0033】
図15図15は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者における、CVD事象のための入院の累積発生率の比較を示す。
【0034】
図16図16は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対プラセボとSGLT2阻害物質を投与した患者における、うっ血性心不全のための入院の累積発生率の比較を示す。
【0035】
図17図17は、SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでプラセボを投与した患者における、うっ血性心不全のための入院の累積発生率の比較を示す。
【0036】
図18図18は、RVX-208とSGLT2阻害物質を投与した患者対SGLT2阻害物質なしでRVX-208を投与した患者における、うっ血性心不全のための入院の累積発生率の比較を示す。
【0037】
定義
「場合による」または「場合により」とは、その後に記載される事象または状況が発生してもしなくてもよく、その説明には、その事象または状況が発生する例および発生しない例が含まれることを意味する。例えば、「場合により置換されていてよいアリール」は、以下に定義される「アリール」および「置換アリール」の両方を包含する。当業者には、1つまたはそれ以上の置換基を含むいずれかの基に関して、そのような基は、立体的に実行不可能、合成的に実現不可能、および/または本質的に不安定であるいずれかの置換または置換パターンを導入することを意図しないことが理解されるであろう。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「水和物」とは、化学量論的または非化学量論的ないずれかの量の水が結晶構造に組み込まれている結晶形態を示す。
【0039】
本明細書で使用される用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和直鎖または分岐炭化水素、例えば2~8個の炭素原子の直鎖または分岐基(ここでは(C2-C8)アルケニルと称する)を意味する。例示的なアルケニル基には、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキセニル、2プロピル 2-ブテニル、および4-(2-メチル-3-ブテン)-ペンテニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」とは、酸素に結合したアルキル基(O-アルキル)を意味する。「アルコキシ」基はまた、酸素に結合したアルケニル基(「アルケニルオキシ」)または酸素に結合したアルキニル基(「アルキニルオキシ」)基を含む。例示的なアルコキシ基には、1~8個の炭素原子のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を有する基(本明細書では(C1-C8)アルコキシと称される)が含まれるが、これらに限定されない。例示的なアルコキシ基には、メトキシおよびエトキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される用語「アルキル」とは、飽和直鎖または分岐炭化水素、例えば1~8個の炭素原子の直鎖または分岐基(本明細書では(C1-C8)アルキルと称される)を意味する。例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3 メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3 メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4 メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される用語「アミド」とは、NRaC(O)(Rb)またはC(O)NRbRc(ここで、Ra、RbおよびRcはそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および水素から独立して選択される)の形態を意味する。アミドは、炭素、窒素、Rb、またはRcを介して別の基と結合していてもよい。アミドはまた、環状であってもよく、例えば、RbおよびRcは、結合して3~8員環、例えば、5員環または6員環を形成していてもよい。用語「アミド」は、スルホンアミド、尿素、ウレイド、カルバメート、カルバミン酸、およびこれらの環状バージョンなどの基を包含する。用語「アミド」はまた、カルボキシ基に結合したアミド基、例えば、アミド-COOHまたはアミド-COONaなどの塩、カルボキシ基に結合したアミノ基(例えば、アミノ-COOHまたはアミノ-COONaなどの塩)も包含する。
【0043】
本明細書で使用される用語「アミン」または「アミノ」とは、NRdReまたはN(Rd)Re(ここで、RdおよびReは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロ環、および水素から独立して選択される)の形態を意味する。アミノは、窒素を介して親分子基と結合していてもよい。アミノはまた、環状であってもよく、例えば、RdおよびReのいずれかの2つが一緒になって結合して、またはNと結合して、3~12員環(例えば、モルホリノまたはピペリジニル)を形成していてもよい。アミノという用語はまた、いずれかのアミノ基の対応する第4級アンモニウム塩も含む。例示的なアミノ基には、アルキルアミノ基(ここで、RdおよびReの少なくとも1つはアルキル基である)が含まれる。いくつかの実施態様において、RdおよびReはそれぞれ、場合により、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、エステル、またはアミノによって置換されていてよい。
【0044】
本明細書で使用される用語「アリール」とは、単環式、二環式、または他の多環式の炭素環式の芳香族環系を意味する。アリール基は、場合により、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから選択される1つまたはそれ以上の環に縮合され得る。本開示のアリール基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンによって置換されていてもよい。例示的なアリール基としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびにベンゾ-縮合炭素環式部分、例えば、5,6,7,8-テトラヒドロナフチルが含まれるが、これらに限定されない。例示的なアリール基にはまた、単環式芳香環系(ここで、該環は6個の炭素原子を含み、本明細書では「(C6)アリール」と称される)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用される用語「アリールアルキル」とは、少なくとも1つのアリール置換基を有するアルキル基(例えば、アリール-アルキル)を意味する。例示的なアリールアルキル基には、単環式芳香族環系を有するアリールアルキル(ここで、該環は6個の炭素原子を含み、本明細書では「(C6)アリールアルキル」と称される)が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される用語「カルバメート」とは、RgOC(O)N(Rh)、RgOC(O)N(Rh)Ri、またはOC(O)NRhRi(ここで、Rg、RhおよびRiはそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および水素から選択される)の形態を意味する。例示的なカルバメートには、アリールカルバメートまたはヘテロアリールカルバメート(例えば、ここで、Rg、RhおよびRiの少なくとも1つは、アリールまたはヘテロアリール、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジンから独立して選択される)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される用語「カルボサイクル」は、アリール基またはシクロアルキル基を意味する。
【0048】
本明細書で使用される用語「カルボキシ」は、COOHまたはその対応するカルボキシレート塩(例えば、COONa)を意味する。カルボキシという用語はまた、「カルボキシカルボニル」、例えばカルボニル基に結合したカルボキシ基、例えばC(O)-COOHまたは塩、例えばC(O)-COONaを含む。
【0049】
本明細書で使用される用語「シクロアルコキシ」とは、酸素に結合したシクロアルキル基を意味する。
【0050】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」とは、シクロアルカンから誘導される、3~12個の炭素の飽和もしくは不飽和環式、二環式、または架橋二環式炭化水素基、または3~8個の炭素の飽和もしくは不飽和環式、二環式、または架橋二環式炭化水素基(本明細書では、(C3-C8)シクロアルキルと称される)を意味する。例示的なシクロアルキル基には、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、およびシクロペンテンが含まれるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンによって置換されていてもよい。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル飽和または不飽和、アリール、ヘテロシクリル基に縮合され得る。
【0051】
本明細書で使用される用語「ジカルボン酸」は、飽和および不飽和炭化水素ジカルボン酸およびその塩などの少なくとも2つのカルボン酸基を含む基を意味する。例示的なジカルボン酸には、アルキルジカルボン酸が含まれる。ジカルボン酸は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンによって置換されていてもよい。ジカルボン酸には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、(+)/(-)-リンゴ酸、(+)/(-)酒石酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が含まれるが、これらに限定されない。ジカルボン酸にはさらに、そのカルボン酸誘導体、例えば、無水物、イミド、ヒドラジド(例えば、コハク無水物およびスクシンイミド)が含まれる。
【0052】
用語「エステル」とは、C(O)O-、C(O)ORj、RkC(O)O-Rj、またはRkC(O)O-(ここで、Oは水素に結合されなく、そして、RjおよびRkは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから独立して選択される)の構造を意味する。Rkは水素であり得るが、Rjは水素であってはいけない。エステルは環式であり、例えば、炭素原子およびRj、酸素原子およびRk、またはRjおよびRkは結合して3員環~12員環を形成し得る。例示的なエステルには、アルキルエステル(ここで、RjおよびRkの少なくとも1つはアルキル、例えばO-C(O)アルキル、C(O)-O-アルキル、およびアルキルC(O)-O-アルキルである)が含まれる。例示的なエステルにはまた、アリールまたはヘテロアリールエステル(例えば、ここで、RjおよびRkの少なくとも1つはヘテロアリール基、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジン、例えばニコチネートエステルである)が含まれる。例示的なエステルにはまた、RkC(O)O-(ここで、酸素は親分子に結合する)の構造を有するエステルが含まれる。例示的な逆エステルには、スクシネート、D-アルギニネート(argininate)、L-アルギニネート、L-リシネート(lysinate)およびD-リシネートが含まれる。エステルにはまた、カルボン酸無水物および酸ハロゲン化物も含まれる。
【0053】
本明細書で使用される用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0054】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」とは、1つまたはそれ以上のハロゲン原子によって置換されているアルキル基を意味する。「ハロアルキル」はまた、1つまたはそれ以上のハロゲン原子によって置換されているアルケニルまたはアルキニル基を包含する。
【0055】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」とは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素、硫黄を含む、単環式、二環式、または多環式の芳香族環系を意味する。ヘテロアリールは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンを含む1つまたはそれ以上の置換基によって置換されていてもよい。ヘテロアリールはまた、非芳香環に縮合され得る。ヘテロアリール基の例示的な例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)-および(1,2,4)-トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、フェニル、イソオキサゾリル、およびオキサゾリルが含まれるが、これらに限定されない。例示的なヘテロアリール基には、単環式芳香環(ここで、該環は2~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を含み、本明細書では「(C2-C5)ヘテロアリール」と称される)が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環式」とは、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含む飽和または不飽和3員環、4員環、5員環、6員環または7員環を意味する。ヘテロ環は、芳香族(ヘテロアリール)または非芳香族であり得る。ヘテロ環は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンを含む1つまたはそれ以上の置換基によって置換されていてもよい。ヘテロ環にはまた、上記のいずれかのヘテロ環式環が、アリール、シクロアルキル、およびヘテロ環から独立して選択される1つまたは2つの環に縮合されている二環式、三環式、および四環式基が含まれる。例示的なヘテロ環には、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ビオチニル、シンノリニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリジニル(isoxazolidinyl)、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジン-2-オニル(pyrrolidin-2-onyl)、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、キノキサロイル(quinoxaloyl)、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、チオピラニル、およびトリアゾリルが含まれる。
【0057】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」とは-OHを意味する。
【0058】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」とは、アルキル基に結合したヒドロキシを意味する。
【0059】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアリール」とは、アリール基に結合したヒドロキシを意味する。
【0060】
本明細書で使用される用語「ケトン」とは、C(O)-Rn(アセチル、C(O)CH3など)またはRn-C(O)-Roの構造を意味する。ケトンは、RnまたはRoを介して別の基に結合していてもよい。RnおよびRoは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはアリールであり得るか、あるいは、RnおよびRoは結合して3員環~12員環を形成し得る。
【0061】
本明細書で使用される用語「フェニル」とは、6-員炭素環式芳香環を意味する。フェニル基はまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタン環に縮合され得る。フェニルは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンを含む1つまたはそれ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0062】
本明細書で使用される用語「チオアルキル」とは、硫黄に結合したアルキル基(S-アルキル)を意味する。
【0063】
「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アルコキシ」、「アミノ」および「アミド」基は、場合により、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボニル、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、チオケトン、ウレイドおよびNから選択される少なくとも1つの基によって置換されていてもよく、中断されていてもよく、分岐されていてもよい。置換基は分岐されて、置換または非置換のヘテロ環またはシクロアルキルを形成し得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、場合により置換されていてよい置換基に対する適当な置換とは、本開示の化合物またはそれを調製するのに有用な中間体の合成または薬学的有用性を無効にしない基を意味する。適当な置換の例としては、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニルまたはアルキニル;C6アリール、5員または6員ヘテロアリール;C3-C7シクロアルキル;C1-C8アルコキシ;C6アリールオキシ;CN;OH;oxo;ハロ、カルボキシ;アミノ、例えば、NH(C1-C8アルキル)、N(C1-C8アルキル)2、NH((C6)アリール)、またはN((C6)アリール)2;ホルミル;ケトン、例えば、CO(C1-C8アルキル)、-CO((C6アリール)エステル、例えば、CO2(C1-C8アルキル)およびCO2(C6アリール)があるが、これらに限定されない。当業者は、本開示の化合物の安定性ならびに薬理学的および合成活性に基づいて、適切な置換を容易に選択することができる。
【0065】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される組成物」とは、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化される、本明細書に開示されている少なくとも1つの化合物を含む組成物を意味する。
【0066】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」とは、医薬品投与と適合性のあるすべての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを意味する。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。組成物はまた、補足的、追加的、または増強された治療機能を提供する他の活性化合物を含み得る。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される組成物」とは、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化される、本明細書に開示されている少なくとも1つの化合物を含む組成物を意味する。
【0067】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容されるプロドラッグ」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応なしにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/危険性の比率に見合った、その意図する使用に有効な本発明の化合物のプロドラッグ、ならびに可能ならば式Iで示される化合物の双性イオン形態のものを示すものである。議論は、Higuchi et al., “Prodrugs as Novel Delivery Systems,” ACS Symposium Series, Vol. 14, and in Roche, E.B., ed. Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987(両方とも引用により本明細書に包含される)に提供されている。
【0068】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本発明の組成物に使用される化合物に存在し得る酸性または塩基性基の塩を意味する。本質的に塩基性である、本組成物に含まれる化合物は、さまざまな無機酸および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用され得る酸には、非毒性の酸付加塩を形成するもの、すなわち、薬学的に許容されるアニオンを含む塩、例えば、サルフェート、シトレート、マテート(matate)、アセテート、オキサレート、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、ニトレート、サルフェート、重硫酸塩、ホスフェート、酸 ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、ラクテート、サリシレート、シトレート、タートレート、オレエート、タンナート、パントテナート、重酒石酸塩、アスコルベート、スクシネート、マレアート、ゲンチシネート(gentisinate)、フマレート、グルコネート、グルカロネート(glucaronate)、サッカラート(saccharate)、ホルマート(formate)、ベンゾエート(benzoate)、グルタメート(glutamate)、メタンスルホネート(methanesulfonate)、エタンスルホネート(ethanesulfonate)、ベンゼンスルホネート(benzenesulfonate)、p-トルエンスルホネート(p-toluenesulfonate)およびパモエート(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩を含むが、これらに限定されない。本組成物に含まれる、アミノ部分を含む化合物は、上記の酸に加えて、種々のアミノ酸と薬学的に許容できる塩を形成し得る。本質的に酸性である、本組成物に含まれる化合物は、種々の薬学的に許容されるカチオンと塩基性塩を形成できる。このような塩の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄の塩が含まれる。
【0069】
また、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、酸塩の溶液を塩基化することによって得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従い、遊離塩基を適当な有機溶媒に溶解し、その溶液を酸で処理することによって製造し得る。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用され得る様々な合成方法論を認識するであろう。
【0070】
式IまたはIaで示される化合物は、1つまたはそれ以上のキラル中心および/または二重結合を含むことで、立体異性体、例えば幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在し得る。本明細書で使用される場合、用語「立体異性体」とは、すべての幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、立体
の炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、記号「R」または「S」で定義されることがある。本発明は、これらの化合物の種々の立体異性体およびそれらの混合物を包含する。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、命名法において「(±)」と命名されることがあるが、当業者は、構造が暗黙のうちにキラル中心を示し得ることを認識するであろう。
【0071】
本発明の方法に使用するための化合物の個々の立体異性体は、非対称中心または立体中心を含む市販の出発物質から合成的に、またはラセミ混合物の調製とそれに続く当業者によく知られている分解方法によって調製することができる。これらの分離方法は、(1)エナンチオマーの混合物のキラル補助剤への付着、再結晶またはクロマトグラフィーによる得られたジアステレオマーの混合物の分離、または該補助剤からの光学的に純粋な生成物の遊離、(2)光学活性分離剤を用いた塩形成、または(3)キラルクロマトグラフィーカラムでの光学エナンチオマーの混合物の直接分離、が例示される。立体異性体混合物はまた、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、化合物のキラル塩複合体としての結晶化、または化合物のキラル溶媒中での結晶化など、よく知られている方法により構成要素立体異性体に分解され得る。また、立体異性体は、よく知られている不斉合成方法により、立体異性体的に純粋な中間体、試薬、および触媒から得ることができる。
【0072】
式IまたはIaの化合物には幾何異性体も存在することができる。本発明は、炭素-炭素二重結合の周りの置換基の配置または炭素環の周りの置換基の配置から生じる様々な幾何異性体およびその混合物を包含する。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」または「E」配置(ここで、用語「Z」および「E」は、IUPAC基準に従って使用される)であると指定される。特に断らない限り、二重結合を示す構造はEおよびZの異性体の両方とも包含する。
【0073】
炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、交互に「cis」または「trans」と称することができ、ここで「cis」は二重結合の同じ側の置換基を示し、「trans」は二重結合の反対側の置換基を示す。炭素環の周りの置換基の配置は、「cis」または「trans」と指定される。用語「cis」は、環の平面の同じ側にある置換基を示し、用語「trans」は、環の平面の反対側にある置換基を示す。環の平面の同じ側および反対側の両方に置換基が配置されている化合物の混合物は、「cis/trans」と指定される。
【0074】
本明細書に開示される式Iの化合物は互変異性体として存在することができ、1つの互変異性体構造のみが示されているにもかかわらず、両方の互変異性形態が本発明の範囲に包含されることが意図されている。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「SGLT2阻害物質」は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein 2, SGLT2)を阻害する活性を有する、低分子有機化学化合物(≦1kDa)または大きな生体分子、例えばペプチド(例えば、可溶性ペプチド)、タンパク質(例えば、抗体)、核酸(例えば、siRNA)もしくはこれらの2またはそれ以上のいずれかを組み合わせたコンジュゲートの物質を意味する。SGLT2阻害物質の非限定的な例には、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、レモグリフロジン、イプラグリフロジン、HM41322、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、またはこれらの薬学的に許容できる塩が含まれる。SGLT2阻害物質の追加の例は、WO01/027128、WO04/013118、WO04/080990、EP1852439A1、WO01/27128、WO03/099836、WO2005/092877、WO2006/034489、WO2006/064033、WO2006/117359、WO2006/117360、WO2007/025943、WO2007/028814、WO2007/031548、WO2007/093610、WO2007/128749、WO2008/049923、WO2008/055870、およびWO2008/055940(これらの全体内容はそれぞれ引用により本明細書に包含される)に開示されている。
【0076】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置する」とは、疾患または障害、またはその少なくとも1つの認識できる症状の改善を意味する。別の実施態様において、「処置」または「処置する」とは、必ずしも患者によって認識できることではない、少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの改善を意味する。さらに別の実施態様において、「処置」または「処置する」とは、身体的に、例えば、認識できる症状の安定化、生理学的に、例えば、身体的パラメータの安定化、またはその両方で、疾患または障害の進行を低減させることを意味する。さらに別の実施態様において、「処置」または「処置する」とは、疾患または障害の発症または進行を遅延させることを意味する。例えば、コレステロール障害を処置することは、血中コレステロールレベルを低下させることを含み得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「予防」または「予防する」は、所定の疾患若しくは障害または所定の疾患もしくは障害の症状を獲得する危険性の低減を意味する。
【0078】
用語「狭義に定義されるMACE」は、心血管(CV)系死亡、非致死性心筋梗塞、または卒中の単一複合エンドポイントとして定義されるものである。
【0079】
用語「広義に定義されるMACE」とは、心血管(CV)系死亡、非致死性心筋梗塞、CVD事象のための入院、または卒中の単一複合エンドポイントとして定義されるものである。
【0080】
本明細書で使用される場合、「心血管疾患事象」または「CVD事象」は、心血管関連障害の身体的発現(physical manifestation)であり、卒中、非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、およびCVD事象およびうっ血性心不全のための入院などの事象を含む。本明細書で使用される場合、「CVD事象のための入院」は、不安定アンギナ、進行性閉塞性冠状動脈疾患の症状、随時の緊急血行再建操作、または無作為化前の指標事象後≧30日での緊急血行再建操作、のための入院と定義される。いくつかの実施態様において、「CVD事象のための入院」は、うっ血性心不全を含む心血管関連障害の物理的発現のための入院を含む。一実施態様において、CVD事象のための入院は、うっ血性心不全のための入院である。
【0081】
本明細書で使用される場合、「心血管関連障害」には、心血管系死亡、非致死性心筋梗塞、卒中、不安定アンギナ、進行性閉塞性冠状動脈疾患の症状、随時の緊急血行再建操作、または指標事象後≧30日での緊急血行再建操作、およびうっ血性心不全を含むCVD事象のための入院が含まれる。
【0082】
(本発明の例示的な実施態様)
一実施態様において、本発明は、非致死性心筋梗塞、CV系死亡、卒中、およびCVD事象のための入院を含む主要な心血管有害事象(MACE)を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein 2, SGLT2)阻害物質、および式I:
【化3】
[式中、R1およびR3はそれぞれ、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され;
R5およびR7はそれぞれ、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され;
WはCおよびNから選択され、ここで、WがNである場合、pは0または1であり、そして、WがCである場合、pは1であり;そして
W-(R4)pにおいて、WはCであり、pは1であり、そして、R4はHであり、あるいは、WはNであり、そして、pは0である]
で示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物、の組み合わせを投与することによる方法を提供する。
【0083】
一実施態様において、式Iで示される化合物は、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその薬学的に許容できる塩である。
【0084】
いくつかの実施態様において、SGLT2阻害物質は、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、およびHM41322から選択される。いくつかの実施態様において、SGLT2阻害物質は、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、およびトホグリフロジンから選択される。
【0085】
一実施態様において、MACEエンドポイントは、狭義には、心血管(CV)系死亡、非致死性心筋梗塞、または卒中の単一複合エンドポイントとして定義される。
【0086】
一実施態様において、MACEエンドポイントは、広義には、心血管(CV)系死亡、非致死性心筋梗塞、CVD事象のための入院または卒中の単一複合エンドポイントとして定義される。
【0087】
一実施態様において、心血管(CV)系死亡、非致死性心筋梗塞、CVD事象のための入院または卒中を含む、MACEの個々の要素のいずれかを処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(sodium glucose transport protein 2, SGLT2)阻害物質、および式Ia:
【化4】
[式中、R1およびR3はそれぞれ、アルコキシ、アルキル、および水素から独立して選択され;
R2は、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され;
R5およびR7はそれぞれ、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R6は、アルキル、ヒドロキシル、およびアルコキシから選択され;
WはCおよびNから選択され、ここで、WがNである場合、pは0または1であり、そして、WがCである場合、pは1であり;そして
W-(R4)pにおいて、WはCであり、pは1であり、そして、R4はHであり、あるいは、WはNであり、そしてpは0である]
で示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物、を投与することによる方法。
【0088】
一実施態様において、式Iで示される化合物は、SGLT2阻害物質と同時に投与される。
【0089】
一実施態様において、式Iで示される化合物は、SGLT2阻害物質と順次に投与される。
【0090】
一実施態様において、式Iで示される化合物は、SGLT2阻害物質とともに単一医薬組成物で投与される。
【0091】
一実施態様において、式Iで示される化合物およびSGLT2阻害物質は、別々の組成物として投与される。
【0092】
一実施態様において、それを必要とする対象は、毎日所定の200mgの2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンのまたは対応量のその薬学的に許容できる塩を投与される。
【0093】
一実施態様において、それを必要とする対象は、所定の100mgの2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンまたは対応量のその薬学的に許容できる塩を1日2回投与される。
【0094】
一実施態様において、対象はヒトである。
【0095】
一実施形態において、対象は、2型糖尿病および低HDLコレステロール(男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)および最近の急性冠症候群(ACS)(前の7~90日)を有するヒトである。
【0096】
一実施態様において、対象は、2型糖尿病を有するヒトである。
【0097】
一実施態様において、対象は、低HDLコレステロール(すなわち、男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)を有するヒトである。
【0098】
一実施態様において、対象は、最近のACS(前の7~90日)を有するヒトである。
【0099】
一実施態様において、対象は、スタチン療法を受けているヒトである。
参考文献
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【実施例
【0100】
実施例1:臨床開発
アパベタロン(RVX-208)は、最近終了した臨床第3相試験(BETonMACE;NCT02586155)において、低HDLコレステロール(男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)、および最近の急性冠症候群(ACS)(7~90日前)を有する2型糖尿病患者のMACEに対する効果について評価した。全患者は、高強度スタチン処置とその他のエビデンスベースの処置を受けた。
【0101】
7~90日前にACSを有し、2型糖尿病および低HDLコレステロール(男性では≦40mg/dl、女性では≦45mg/dl)を有し、アトルバスタチンまたはロスバスタチンでの集中的なまたは最大耐容量療法を受けた患者(n=2425)を、二重盲検法で割り当て、アパベスタロン100mgを1日2回経口的にまたはマッチングプラセボを投与した。ベースラインの特徴には、女性(25%)、指標ACS事象としての心筋梗塞(74%)、指標ACSのための冠動脈再建(76%)、二重抗血小板療法での処置(87%)およびレニン-アンジオテンシン系阻害物質での処置(91%)、LDLコレステロールの中央値65mg/デシリットル、およびHbA1c中央値7.3%が含まれる。主要評価測定(primary efficacy measure)は、心血管系死亡、非致死性心筋梗塞、または卒中が最初に発生するまでの時間である。前提としては、プラセボ群における年間7%の主要事象率、1.5年の経過観察(follow-up)の中央値が含まれる。患者は少なくとも250の主要エンドポイント事象が発生するまで追跡し、アパベタロンでの主要エンドポイントの30%低下を検出するための80%の検出力が得られた。
【0102】
実施例2:事後分析
BETonMACE臨床試験では、合計N=298人の患者(アパベタロン処置群ではN=150人、プラセボ処置群ではN=148人)に、RVX-208に加えてSGLT2阻害物質(エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、またはカナグリフロジン)を指定スタチン療法(アトルバスタチンおよびロスバスタチン)およびその他のガイドラインで定義された処置とともに投与した。無作為化され、最初の事象発生日以前にSGLT2処置を少なくとも1回受けた患者は、事象が確認された日にMACE事象として打ち切った。最初の事象発生日後にSGLT2処置を少なくとも1回受けた患者は、非MACE事象として打ち切り、最終連絡日を打ち切り日とした。試験期間中にSGLT2処置を受けなかったすべての患者については、無作為化日および確定した事象の発生日、または打ち切られた対象についての最後の接触日を用いて、最初の事象までの時間を計算した。
【0103】
アパベタロン群とプラセボ群内のエンドポイントの分布は、両側log-rank検定(LRT)を用いて、アルファ=0.05の有意レベルで比較した。累積発生率は、事象率の1-KM(Kaplan-Meier)推定値で示している。
【0104】
狭義に定義されるMACE
図1~3はそれぞれ、狭義に定義されるMACE(すなわち、心血管系死亡、非致死性心筋梗塞、または卒中として定義される複数の主要エンドポイントの単一複合エンドポイントとして)の累積発生率を、試験群と対照群の2群間で比較しており、以下のように記載する:
i. SGLT2阻害物質およびアパベタロンで処置した患者(試験)、およびSGLT2阻害物質で処置しプラセボを投与された患者(対照)(図1);
ii. SGLT2阻害物質で処置しなかったが、アパベタロンで処置した患者(試験)、およびSGLT2阻害物質で処置しなかったが、プラセボを投与された患者(対照)(図2);および
iii. アパベタロンおよびSGLT2阻害物質で処置した患者(試験)、およびアパベタロンのみで処置した患者(対照)(図3)。
【0105】
患者においてSGLT2阻害物質で処置し、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図1において、主要エンドポイントは合計18であった:アパベタロン群で5(3.3%)、プラセボ群で13(8.9%)、18ヶ月でKaplan-Meier推定事象率はアパベタロン群で2.7%、プラセボ群で5.4%と示した。これは、18ヶ月での、SGLT2阻害物質のみで処置した患者の推定の狭義に定義されるMACE事象率は5.4%であったが、患者がアパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせで処置した場合、推定の狭義に定義されるMACE事象率は2.7%で半分となったことを意味する。図1に示すように、アパベタロンとSGLT2阻害物質との組み合わせにより、SGLT2阻害物質単独での処置と比較して、特に任意の時点で狭義に定義されるMACE事象を有する患者の数を60%減少させることにより、狭義に定義されるMACEの複合エンドポイントを有意に減少させた(ハザード比[HR]、0.40; 95%CI、0.16-1.00; P = 0.05)。
【0106】
患者においてSGLT2阻害物質で処置しなかったが、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図2において、主要エンドポイントは合計214であった:アパベタロン群で111(10.5%)、プラセボ群で130(12.3%)であり、18ヶ月での、Kaplan-Meier推定事象率はアパベタロン群で8.0%、プラセボ群で9.8%と示した。これは、18ヶ月での、アパベタロンのみで処置した患者の推定の狭義に定義されるMACE事象率は10.5%であり、アパベタロンまたはSGLT2阻害物質で処置しなかった患者の推定の狭義に定義されるMACE事象率は12.3%であったことを意味する。図2に示すように、アパベタロン単剤療法により、非処置と比較して、特に任意の時点で狭義に定義されるMACE事象を有する患者の数を16%減少させることにより、狭義に定義されるMACEの複合エンドポイントをわずかに減少させた(ハザード比 [HR]、0.84; 95%CI、0.65-1.08; P = 0.18)。
【0107】
図3に示すように、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせで処置した患者は、アパベタロン単独で処置した患者と比較して、狭義に定義されるMACEの複合エンドポイントについて0.47の有意なハザード比(95%CI, 0.27-0.81; P = 0.007)を示した。これは、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせにより、アパベタロン単独で処置した場合と比較して、任意の時点で狭義に示されるMACE事象を有する患者の数を53%減少させたことを意味する。
【0108】
結論として、アパベタロン単剤療法により、非処置と比較して、任意の時点で狭義に定義されるMACE事象を有する患者の数を16%減少させることができた(図2を参照のこと)。このように、アパベタロンおよびSGLT2の組み合わせにより、SGLT2単剤療法と比較して、任意の時点で狭義に定義されるMACE事象を有する患者の数を60%で有意に減少させたことは予想外であった。
【0109】
広義に定義されるMACE
図4~6はそれぞれ、図1~3について上述したのと同じ2群の患者間で、広義に定義されるMACE(すなわち、心血管系死亡、非致死性心筋梗塞、卒中、または心血管疾患(CVD)のための入院として定義される複数の主要エンドポイントの単一複合エンドポイントとして)の累積発生率を比較したものである。
【0110】
患者においてSGLT2阻害物質で処置し、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された図4において、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせでは、SGLT2阻害物質単独で処置した場合と比較して、特に任意の時点で広義に定義されるMACE事象を有する患者の数を50%減少させることにより、広義に定義されるMACEの複合エンドポイントを減少させた(傾向的統計有意性)(ハザード比 [HR]、0.50; 95%CI、0.22-1.11; P = 0.09)。
【0111】
患者においてSGLT2阻害物質で処置しなかったが、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図5において、アパベタロン単独療法では、非処置と比較して、特に任意の時点で広義に定義されるMACE事象を有する患者の数を13%減少させることにより、広義に定義されるMACEの複合エンドポイントをわずかに減少させたと考えられる(ハザード比 [HR]、0.87; 95%CI、0.69-1.10; P = 0.25)。
【0112】
図6に示すように、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質で処置した患者は、アパベタロン単独で処置した患者と比較して、広義に定義されるMACEの複合エンドポイントについて0.54(95%CI, 0.33-0.89; P = 0.02)の有意なハザード比を示した。これは、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせは、アパベタロン単独での処置と比較して、任意の時点で広義に定義されるMACE事象を有する患者の数を46%減少させたことを意味する。
【0113】
結論として、アパベタロン単剤療法が非処置と比較して任意の時点で広義に定義されるMACE事象を有する患者の数を適度に13%減少させるといった適度の能力を有すること考慮しても(図5を参照のこと)、アパベタロンおよびSGLT2の組み合わせは、SGLT2単剤療法と比較して、任意の時点で広義に定義されるMACE事象を有する患者の数を50%で有意に少させたことは驚きかつ予想外であった。
【0114】
非致死性心筋梗塞
図7~9はそれぞれ、図1~3について上述したのと同じ2群の患者間の非致死的心筋梗塞の累積発生率を比較したものである。
【0115】
患者においてSGLT2阻害物質で処置し、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図7において、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせでは、SGLT2阻害物質単独での処置と比較して、特に任意の時点で非致死的心筋梗塞事象を有する患者の数を69%減少させることにより、非致死的心筋梗塞のエンドポイントを有意に減少させた(ハザード比 [HR]、0.31; 95%CI、0.11-0.88; P = 0.03)。
【0116】
患者においてSGLT2阻害物質で処置しなかったが、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図8において、アパベタロン単独療法では、非処置と比較して、特に任意の時点で非致死的心筋梗塞事象を有する患者の数を15%減少させることにより、非致死的心筋梗塞のエンドポイントを減少させたことがわかる(ハザード比 [HR]、0.85; 95%CI、0.61-1.17; P = 0.31)。
【0117】
図9に示すように、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせで処置した患者は、アパベタロン単独で処置した患者と比較して、非致死性心筋梗塞のエンドポイントについて0.47(95%CI, 0.33-0.89; P = 0.03)の有意なハザード比を示した。これは、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせは、アパベタロン単独での処置と比較して、任意の時点で非致死的心筋梗塞事象を有する患者の数を53%減少させたことを意味する。
【0118】
結論として、アパベタロン単剤療法では、非処置と比較して、任意の時点で非致死性心筋梗塞事象を有する患者の数を15%で適度に減少させたことを考えると(図8を参照)、したがって、アパベタロンおよびSGLT2の組み合わせ療法では、SGLT2単剤療法と比較して、任意の時点で非致死性心筋梗塞事象を有する患者の数を69%で有意に減少させたことは予想外であった。
【0119】
心血管系死亡
図10~12はそれぞれ、図1~3について上述したのと同じ2群の患者間で心血管系死亡の累積発生率を比較したものである。
【0120】
患者においてSGLT2阻害物質で処置し、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図10において、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせでは、SGLT2阻害物質単独での処置と比較して、特に任意の時点で心血管系死亡事象を有する患者の数を60%で有意に減少させることにより、心血管系死亡のエンドポイントを有意に減少させたことがわかる(ハザード比 [HR]、0.40; 95%CI、0.06-2.88; P = 0.36)。
【0121】
患者においてGLT2阻害物質で処置しなかったが、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図11において、アパベタロン単剤療法では、非処置と比較して、特に任意の時点で心血管系死亡事象を有する患者の数を16%減少させることにより、心血管系死亡のエンドポイントを減少させたことがわかる((ハザード比 [HR]、0.84; 95%CI、0.56-1.25; P = 0.39)。
【0122】
図12に示すように、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせで処置した患者は、アパベタロン単独で処置した患者と比較すると、心血管系死亡のエンドポイントについて0.39(95%CI、0.16-0.95; P = 0.04)の有意なハザード比を示した。これは、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせでは、アパベタロン単独での処置と比較して、任意の処置時点で心血管系死亡事象を有する患者の数を61%減少させることを意味する。
【0123】
結論として、アパベタロン単剤療法では、プラセボのみを投与された患者と比較して、任意の時点で心血管系死亡事象を有する患者の数を16%で適度に減少させたことを考えると(図11を参照のこと)、アパベタロンおよびSGLT2の組み合わせでは、結果的に、SGLT2単独療法と比較して、任意の時点で非致死性心筋梗塞事象を有する患者の数を60%で有意に減少させたことは予想外であった。
【0124】
心血管疾患のための入院
図13~15はそれぞれ、図1~3について上述したのと同じ2群の患者間の心血管疾患のための入院の累積発生率を比較したものである。
【0125】
患者においてSGLT2阻害物質で処置し、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図13において、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせでは、SGLT2阻害物質単独での処置と比較して、特に任意の時点で心血管疾患のための入院の事象を有する患者の数を52%減少させることにより、心血管疾患のための入院のエンドポイントを有意に減少させたことがわかる(ハザード比 [HR]、0.48; 95%CI、0.18-1.27; P = 0.14)。
【0126】
患者においてSGLT2阻害物質で処置しなかったが、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図14において、アパベタロン単剤療法では、非処置と比較して、特に任意の時点で心血管疾患事象のための入院を有する患者の数を13%減少させることにより、心血管疾患のための入院のエンドポイントをわずかに減少させたがわかる(ハザード比 [HR]、0.87; 95%CI、0.60-1.27; P = 0.47)。
【0127】
図15に示すように、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせで処置した患者は、アパベタロン単独で処置した患者と比較すると、心血管疾患のための入院のエンドポイントについて0.70(95%CI、0.32-1.52; P = 0.37)の有意なハザード比を示した。これは、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせでは、アパベタロン単独での処置と比較して、任意の時点で心血管疾患事象のための入院を有する患者の数を30%減少させたことを意味する。
【0128】
結論として、アパベタロン単独療法では、非処置と比較して、任意の時点で心血管疾患事象のための入院を有する患者の数を13%減少させることを考えると(図14を参照のこと)、アパベタロンおよびSGLT2の組み合わせでは、SGLT2単剤療法と比較して、任意の時点で心血管疾患事象のための入院を有する患者の数を52%で有意に減少させることは予想外であった。
【0129】
うっ血性心不全のための入院
図16~18はそれぞれ、図1~3について上述したのと同じ2群の患者間で、うっ血性心不全のための入院の累積発生率を比較したものである。
【0130】
患者においてSGLT2阻害物質で処置し、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図16において、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせは、SGLT2阻害物質単独での処置と比較して、特に任意の時点でうっ血性心不全事象のための入院を有する患者の数を51%減少させることにより、うっ血性心不全のための入院のエンドポイントを有意に減少させたことが分かる(ハザード比 [HR]、0.49; 95%CI、0.05-4.73; P = 0.54)。
【0131】
患者においてSGLT2阻害物質で処置しなかったが、アパベタロンまたはプラセボのどちらかを投与された図17において、アパベタロン単剤療法では、非処置と比較して、特に任意の時点でうっ血性心不全事象のための入院を有する患者の数を39%低減させることにより、うっ血性心不全のための入院のエンドポイントを減少させたことがわかる(ハザード比 [HR]、0.61; 95%CI、0.38-0.97; P = 0.04)。
【0132】
図18に示すように、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせで処置した患者は、アパベタロン単独で処置した患者と比較すると、うっ血性心不全のための入院のエンドポイントについて0.44(95%CI, 0.14-1.33; P = 0.14)のハザード比を示した。これは、アパベタロンおよびSGLT2阻害物質の組み合わせでは、アパベタロン単独での処置と比較して、任意の時点でうっ血性心不全事象のための入院を有する患者の数を56%減少させたことを意味する。
【0133】
結論として、アパベタロン単剤療法では、プラセボのみを投与された患者と比較して、任意の時点でうっ血性心不全事象のための入院を有する患者の数のみを39%減少させることができると考えると(図17参照)、アパベタロンおよびSGLT2の組み合わせ療法では、SGLT2単剤療法と比較して、任意の時点でうっ血性心不全ための入院を有する患者の数を51%で有意に減少できることは予想外であった。
さらに、本願発明は次の態様を含む。
[態様1]
主要な心血管有害事象(MACE)を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする患者に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害物質、および式I:
【化5】
[式中、R 1 およびR 3 はそれぞれ、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R 2 は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され;
R 5 およびR 7 はそれぞれ、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R 6 は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され;
WはCおよびNから選択され、ここで、WがNである場合、pは0または1であり、そして、WがCである場合、pは1であり;そして
W-(R 4 ) p において、WはCであり、pは1であり、そして、R 4 はHであり、あるいは、WはNであり、そして、pは0である]
で示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を投与することを含む方法。
[態様2]
MACEの個々の要素のいずれかを処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害物質、および式I:
【化6】
[式中、R 1 およびR 3 はそれぞれ、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R 2 は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され;
R 5 およびR 7 はそれぞれ、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から独立して選択され;
R 6 は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され;
WはCおよびNから選択され、ここで、WがNである場合、pは0または1であり、そして、WがCである場合、pは1であり;そして
W-(R 4 ) p において、WはCであり、pは1であり、そしてR 4 はHであり、あういは、WはNであり、そしてpは0である]
で示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物を投与することを含む方法。
[態様3]
式Iで示される化合物が、式1a:
【化7】
[式中、R 1 およびR 3 はそれぞれ、アルコキシ、アルキル、および水素から独立して選択され;
R 2 は、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され;
R 5 およびR 7 はそれぞれ、アルキル、アルコキシ、および水素から独立して選択され;
R 6 は、アルキル、ヒドロキシル、およびアルコキシから選択され;
WはCおよびNから選択され、ここで、WがNである場合、pは0または1であり、そして、WがCである場合、pは1であり;そして
W-(R 4 ) p において、WはCであり、pは1であり、そして、R 4 はHであり、あるいは、WはNであり、そして、pは0である]
で示される化合物またはその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、またはその水和物から選択される、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
式IまたはIaで示される化合物が、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその薬学的に許容できる塩である、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
[態様5]
1日用量として2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン200mgまたは対応量のその薬学的に許容できる塩を、それを必要とする対象に投与する、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
[態様6]
それを必要とする対象に、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン100mgまたは対応量のその薬学的に許容できる塩を1日に2回投与する、態様5に記載の方法。
[態様7]
SGLT2阻害物質が、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、レモグリフロジン、イプラグリフロジン、HM41322、およびダパグリフロジンから選択される、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
SGLT2阻害物質が、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、およびトホグリフロジンから選択される、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]
該対象がヒトである、態様1~8のいずれか一項に記載の方法。
[態様10]
該対象が、2型糖尿病および低HDLコレステロール(男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)および最近の急性冠症候群(ACS)(7~90日前)を有するヒトである、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
[態様11]
該対象がスタチン療法を受けている、態様1~10のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
MACEが、非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、卒中、および心血管疾患事象のための入院から選択される、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
[態様13]
心血管疾患事象がうっ血性心不全である、態様12に記載の方法。
[態様14]
心血管疾患事象のための入院がうっ血性心不全のための入院である、態様12に記載の方法。
[態様15]
MACEが、非致死性心筋梗塞、心血管系死亡、および卒中から選択される、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18