(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】汎用型の臨床における異体DNT細胞の複数回再注入用の効率的体外増幅方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240612BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20240612BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240612BHJP
A61P 31/00 20060101ALN20240612BHJP
A61P 37/06 20060101ALN20240612BHJP
A61P 37/08 20060101ALN20240612BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20240612BHJP
A61K 35/17 20150101ALN20240612BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/02
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P37/02
A61K35/17
(21)【出願番号】P 2022564067
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 CN2021087312
(87)【国際公開番号】W WO2021213236
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】202010313732.1
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522410019
【氏名又は名称】瑞創生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】RUICHUANG BIOTECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 803-806,Kechuang Building A,Keqiao Economic Development Park,Keqiao District Shaoxing,Zhejiang 312030,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 黎明
(72)【発明者】
【氏名】相 志強
(72)【発明者】
【氏名】孫 清華
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104109653(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0046768(US,A1)
【文献】国際公開第2016/103570(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0071983(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0098095(US,A1)
【文献】Journal of Experimental and Clinical Cancer Research,2019年,Vol.38, No.123,pp.1-14
【文献】The Journal of Immunology,2006年,Vol.177,pp.6920-6929
【文献】Journal for ImmunoTherapy of Cancer,2019年,Vol.7, No.17,pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎用型DNT細胞体外増幅方法であって、
(i) あらかじめ提供された末梢血の開始サンプル
IにおけるCD4
+およびCD8
+ T細胞を除去することにより、サンプルIIを得る工程、
(i
i) DNT細胞生長に適する培地を含有し、固定されたT細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIIを培養することにより、サンプルIIIを得る工程、
(i
ii) DNT細胞生長に適する培地を含有し、濃度が30-80 ng/m
Lの可溶性T細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIIIを培養することにより、サンプルIVを得る工程、
(
iv) DNT細胞の生長に適する培地を含有し、濃度が
25 ng/m
Lの可溶性T細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIVを培養することにより、所要量の汎用型DNT細胞としてサンプルVを得る工程、ならびに
(
v) DNT細胞の保存に適し、ヒト血清アルブミンを含有する溶液系において、サンプルVを収集することにより、臨床において使用される汎用型DNT細胞としてDNT細胞製剤を得る工程を含み、
ここで、前記工程
(ii)~(iv)の培養系には、いずれ
も300-700 IU/m
Lの組み換えヒトインターロイキン-2が含有され、そしていずれも組み換えヒトインターロイキン-4およびAB血清が含有されて
おらず、
前記T細胞分裂促進因子は、CD3と結合する抗体であり、
前記サンプルIIは、凍結保存後に再生しない、そのままの細胞溶液であることを特徴とする
体外増幅方法。
【請求項2】
前記工程(ii)~(iv)の培養系には、いずれも500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2が含有されることを特徴とする請求項1に記載の体外増幅方法。
【請求項3】
前記工程(iii)の前記培地は、濃度が40-60 ng/mLの可溶性T細胞分裂促進因子を含むことを特徴とする請求項1に記載の体外増幅方法。
【請求項4】
前記工程(iii)の前記培地は、濃度が50 ng/mLの可溶性T細胞分裂促進因子を含むことを特徴とする請求項3に記載の体外増幅方法。
【請求項5】
前記工程(i
i)~
(iv)の培養系には、さらに、IL-7、IL-12、IL-15、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるサイトカインが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の体外増幅方法。
【請求項6】
前記工程(i
i)では、培養系における増幅されるDNT細胞の初期濃度は1×10
6~4×10
6 細胞/mLであることを特徴とする請求項1に記載の体外増幅方法。
【請求項7】
工程(
iii)では、さらに、DNT細胞の表現型および生存率を検出することを含むことを特徴とする請求項1に記載の体外増幅方法。
【請求項8】
工程(
v)では、
(
va)遠心でサンプルVにおけるDNT細胞を収集する工程、
(
vb)2.5%ヒト血清アルブミン含有生理食塩
水でDNT細胞を洗浄する工程、ならびに
(
vc)2.5%ヒト血清アルブミン含有生理食塩
水でDNT細胞を濃度が1×10
8細胞/mLになるように調整する工程を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の体外増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に属し、具体的に、汎用型の臨床における異体DNT細胞の複数回再注入用の効率的体外増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫細胞治療は、顕著な治療効果を有する、新しい腫瘍治療手段で、免疫による抗癌の新規な治療方法である。生物技術および生物製剤で患者や健常者のドナーの体内から採集された免疫細胞を体外で培養および増幅した後、患者の体内に戻す方法で、生体の自己免疫機能を活性化、増強することによって、腫瘍治療する目的を果たす。
【0003】
免疫細胞治療は、癌、自己免疫疾患、臓器移植の拒絶反応、重度のアレルギー性疾患を含む、多くの人類を脅かす重病の重要な治療手段で、重度のウイルス感染でさえ、免疫細胞治療が成功した症例がある。
【0004】
現在、免疫細胞治療は、自家免疫細胞を採取して体外で培養して増幅した後、再注入する場合が多い。複数回の再注入治療が必要な場合、数回にわたってヒト末梢血における免疫細胞を採取して培養・増幅を行わなければ、臨床における再注入の要求を満たすことができない。病状が重篤なため、治療が必要な患者は培養に十分な免疫細胞を提供できないことが多く、そして患者は病気の体質や様々な薬物投与による治療のため、免疫細胞の体外における培養・増幅が非常に困難で、培養できないこともある。
【0005】
そのため、本分野では、健常者のドナーから免疫細胞を獲得し、かつ複数回の再注入に使用することができる汎用型免疫細胞体外増幅方法が必要で、それによって臨床治療における使用が便利になって複数回の採取と複数回の再注入が臨床にもたらす不便がなくなり、同時に腫瘍患者の末梢血の低品質、そして腫瘍細胞が存在するリスクが解消される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、斬新な汎用型の臨床における異体DNT細胞の複数回再注入用の効率的体外増幅方法を提供することである。
【0007】
本発明の第一の側面では、汎用型DNT細胞体外増幅方法であって、
(i) ドナーからの末梢血の開始サンプルIを提供する工程、
(ii) 開始サンプルにおけるCD4+およびCD8+ T細胞を除去することにより、サンプルIIを得る工程、
(iii) DNT細胞の生長に適する培地を含有し、固定されたT細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIIを培養することにより、サンプルIIIを得る工程、
(iv) DNT細胞の生長に適する培地を含有し、濃度が30-80 ng/mL(好ましくは40-60 ng/mL、より好ましくは50 ng/mL)の可溶性T細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIIIを培養することにより、サンプルIVを得る工程、
(v) DNT細胞の生長に適する培地を含有し、濃度が15-40 ng/mL(好ましくは20-30 ng/mL、より好ましくは25 ng/mL、さらに好ましくはサブ工程(va)における前記T細胞分裂促進因子の添加量の1/2)の可溶性T細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIVを培養することにより、所要量の汎用型DNT細胞としてサンプルVを得る工程、ならびに
(vi) DNT細胞の保存に適し、ヒト血清アルブミンを含有する溶液系において、サンプルVを収集することにより、臨床において使用される汎用型DNT細胞としてDNT細胞製剤を得る工程を含み、
ここで、前記工程(iii)~(v)の培養系には、いずれも200-1000 IU/mL(好ましくは300-700 IU/mL、より好ましくは500 IU/mL)の組み換えヒトインターロイキン-2が含有され、そしていずれも組み換えヒトインターロイキン-4およびAB血清が含有されていないことを特徴とする方法を提供する。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)では、前記のドナーは健常者のドナーである。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記サンプルIの量は10-300 ml、好ましくは20-200 mlである。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記サンプルIIは、凍結保存後に再生させた細胞溶液である。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記工程(ii)は、開始サンプルにおけるCD4+およびCD8+ T細胞を除去することにより、サンプルIIa(濃縮されたDNT細胞)を得ること、遠心でサンプルIIa(濃縮されたDNT細胞)を収集した後、凍結保存液で再懸濁させ、プログラム制御で降温させた後、液体窒素において保存し、サンプルIIb(濃縮・凍結保存されたDNT細胞)とすること、サンプルIIbを凍結保存した後、37℃で解凍し、培地で1回洗浄し、さらに培地で再懸濁させ、サンプルIIc(濃縮・凍結保存・再生されたDNT細胞)とすることを含む。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)~(v)の培養系では、培養条件は37℃、5% CO2である。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)~(v)の培養系には、さらに、IL-7、IL-12、IL-15、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるサイトカインが含まれている。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)の前に、さらに、0.9%生理食塩水でサンプルIIを洗浄する工程(iia)を含む。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記T細胞分裂促進因子は、CD3と結合する抗体、レクチン、DNT細胞が増幅するように刺激できる化合物、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0016】
もう一つの好適な例において、レクチンは、コンカナバリンA(ConA)、インゲンマメレクチン(PHA)、ダイズレクチン(SBA)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記DNT細胞が増幅するように刺激できる化合物は、IPP、パミドロネート(Pamidronate)、ゾレドロネート(Zoledronate)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記T細胞分裂促進因子は、CD3と結合する抗体である。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)における培養系は培養瓶、好ましくはT25培養フラスコにある。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記固定されたT細胞分裂促進因子とは、培養瓶またはマイクロプレートにコーティングされたT細胞分裂促進因子のことである。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)では、培養系における増幅されるDNT細胞の初期濃度は1×106~4×106 細胞/mLである。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)の培養時間は24-72時間、好ましくは36-60時間、より好ましくは48時間である。
【0023】
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記培地に15%-25%(好ましく18%-22%、より好ましく20%)の前記ドナーの血漿が添加してある。
【0024】
もう一つの好適な例において、工程(iii)は、サブ工程(iiia)、(iiib)および(iiic)に分かれ、前記サブ工程(iiia)、(iiib)および(iiic)はサンプルIIIにおけるDNT細胞に対する3回の増幅である。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記サブ工程(iiia)では、培養系における増幅されるDNT細胞の初期濃度は1×106~4×106 細胞/mLである。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記サブ工程(iiia)および(iiib)では、培養系における増幅されるDNT細胞の初期濃度はそれぞれ独立に0.5×106~1×106 細胞/mLである。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記サブ工程(iiia)、(iiib)および(iiic)の培養時間はそれぞれ独立に24-72時間、好ましくは36-60時間、より好ましくは48時間である。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)の培養時間は96-192時間、好ましくは120-168時間、より好ましくは144時間である。
【0029】
もう一つの好適な例において、工程(iv)では、2-5回(好ましくは3-4回、より好ましくは3回)のDNT細胞の増幅を含み、各増幅で、増幅されるDNT細胞の初期濃度はそれぞれ独立に1×106~3×106 細胞/mLで、かつ各増幅の培養時間は24-72時間、好ましくは36-60時間、より好ましくは48時間である。
【0030】
もう一つの好適な例において、工程(iv)では、さらに、DNT細胞の表現型および生存率を検出することを含む。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記工程(iv)の培養時間は72-168時間、好ましくは96-144時間、より好ましくは120時間である。
【0032】
もう一つの好適な例において、工程(v)では、2-4回(好ましくは2回)のDNT細胞の増幅を含み、各増幅で、増幅されるDNT細胞の初期濃度はそれぞれ独立に1×106~3×106 細胞/mLで、かつ各増幅の培養時間は24-72時間、好ましくは36時間である。
【0033】
もう一つの好適な例において、工程(v)では、さらに、DNT細胞の表現型および生存率を検出することを含む。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記工程(v)の培養時間は48-96時間、好ましくは72時間である。
【0035】
もう一つの好適な例において、工程(vi)では、
(via)遠心でサンプルVにおけるDNT細胞を収集する工程、
(vib)2.5%ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(または「溶媒」)でDNT細胞を洗浄する工程、ならびに
(vic)2.5%ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(または「溶媒」)でDNT細胞を濃度が1×108細胞/mLになるように調整する工程を含む。
【0036】
本発明の第二の側面では、有効量の本発明の第一の側面に記載の方法によって得られるDNT細胞の使用であって、薬物組成物または製剤の製造に使用され、前記薬物組成物または製剤は
(a) 腫瘍の予防および/または治療、
(b) 感染性疾患の予防および/または治療、
(c) 自己免疫性疾患の予防および/または治療、
(d) アレルギー反応の予防および/または治療、
(e) 移植片対宿主病の予防および/または治療、ならびに/あるいは
(f) 免疫応答の調節
に用いられる使用を提供する。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は前記DNT細胞と異体の腫瘍である。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記血液腫瘍は、リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、急性骨髄球性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単核球性白血病(CMML)、骨髄異形成症候群(MDS)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記固形腫瘍は、胃癌、胃癌腹膜転移、肝臓癌、白血病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、メラノーマ、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、リンパ癌、鼻咽頭癌、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、脳膠細胞腫、頭頚部癌、膵臓癌、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記自己免疫性疾患は、糖尿病、関節炎、多発性硬化、エリテマトーデス、炎症性腸疾患、皮膚炎、脳膜炎、血栓性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、脳炎、ブドウ膜炎、白血球接着不全症、リウマチ熱、ライター症候群、全身性進行性硬化、原発性胆汁性肝硬変、壊死性血管炎、重症筋無力症、多発性筋炎、サルコイドーシス、肉芽腫症、血管炎、悪性貧血、CNS炎症性病症、抗原抗体複合体を介する疾患、自己免疫溶血性貧血、リンパ腫性甲状腺腫、中毒性びまん性甲状腺腫、習慣性自然流産、レイノー症候群、糸球体性腎炎、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、セリアック病、組織特異性自己免疫、変性自己免疫遅延型過敏反応、AIDSの自己免疫合併症、萎縮性胃炎、強直性脊椎炎、アジソン病、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記アレルギー反応は、花粉熱、喘息、アトピー性皮膚炎、アメリカツタウルシおよびキヅタ、室内ヤケヒョウヒダニ、蜂花粉、堅果、甲殻類動物、ペニシリンに対するアレルギー反応、またはこれらの組み合わせを含む。
【0043】
本発明の第三の側面では、本発明の第一の側面に記載の方法によって得られるDNT細胞の使用であって、
(a) 腫瘍の予防および/または治療、
(b) 感染性疾患の予防および/または治療、
(c) 自己免疫性疾患の予防および/または治療、
(d) アレルギー反応の予防および/または治療、
(e) 移植片対宿主病の予防および/または治療、ならびに/あるいは
(f) 免疫応答の調節
に用いられることを特徴とする使用を提供する。
【0044】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】応用例1-4と比較例1および2の細胞生長曲線を示すが、具体的に、応用例と比較例の細胞をそれぞれ培養の1日目、7日目、14日目および17日目にサンプリングして細胞総数を検出し、細胞総数を比較した変化の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明者は、幅広く深く研究し、大量のプロセス最適化実験を行ったところ、初めて、ドナーから末梢血を一括に採取して臨床において異体DNT細胞を複数回で再注入する、実用型の効率的体外増幅方法を開発した。具体的に、本発明では、DNT細胞の培地の配合および培養のプロセスを最適化し、現在のDNT細胞の体外増幅方法と比べ、本発明の方法では、別途にIL-4を添加する必要がなく、そして連続培養の過程において段階的にT細胞活性化剤(ここで、抗ヒトCD3抗体)の使用量を減らすことで、高純度の汎用型DNT細胞を獲得し、最終製品における不純物の含有量を大幅に減少させることができる。
【0047】
結果から、本発明の方法は、ヒト末梢血から新鮮なサンプルを採取してDNT細胞を濃縮する効率的な体外増幅にも、上記DNT細胞を凍結保存しておき、後で再生して体外で効率的にDNT細胞を増幅するのにも使用可能であることがわかる。本発明のプロセスによって増幅して得られるDNT細胞は数が多く、そしてそのうちのDNT細胞の特徴的表面マーカーとしてCD3+CD4-CD8- T細胞の純度が高い(>85%)。DNT細胞は腫瘍殺傷活性がT細胞受容体に依存しないため、同一のドナーから製造されるDNT細胞は異なる患者の臨床治療における使用に提供することができる。
【0048】
これに基づき、本発明を完成させた。
【0049】
用語
本開示が理解しやすくなるように、まず、一部の用語を定義する。本願に用いられるように、本明細書で別途に明確に規定しない限り、以下の用語はいずれも下記の意味を有する。出願全体において、ほかの定義が記述されている。
【0050】
本明細書で用いられるように、用語「約」とは当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内にある値または組成で、それによって部分的にどのように値または組成を計量または測定するかというのが決まる。
【0051】
本明細書で用いられるように、用語「投与」、「施用」とは、当業者に既知の様々な方法および送達システムの任意の一つによって本発明の製品を物理的に被験者に導入することで、静脈内、筋肉内、皮下、腹膜内、脊髄またはほかの胃腸外の投与経路、たとえば注射または輸注によるものを含むが、入れ替えて使用することができる。
【0052】
本発明の体外増幅方法
本発明において、汎用型DNT細胞体外大量増幅方法であって、
(i) ドナーからの末梢血の開始サンプルIを提供する工程、
(ii) 開始サンプルにおけるCD4+およびCD8+ T細胞を除去することにより、サンプルIIを得る工程、
(iii) DNT細胞の生長に適する培地を含有し、固定されたT細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIIを培養することにより、サンプルIIIを得る工程、
(iv) DNT細胞の生長に適する培地を含有し、濃度が30-80 ng/mL(好ましくは40-60 ng/mL、より好ましくは50 ng/mL)の可溶性T細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIIIを培養することにより、サンプルIVを得る工程、
(v) DNT細胞の生長に適する培地を含有し、濃度が15-40 ng/mL(好ましくは20-30 ng/mL、より好ましくは25 ng/mL、さらに好ましくはサブ工程(va)における前記T細胞分裂促進因子の添加量の1/2)の可溶性T細胞分裂促進因子を含む培養系において、サンプルIVを培養することにより、所要量の汎用型DNT細胞としてサンプルVを得る工程、ならびに
(vi) DNT細胞の保存に適し、ヒト血清アルブミンを含有する溶液系において、サンプルVを収集することにより、臨床において使用される汎用型DNT細胞としてDNT細胞製剤を得る工程を含み、
ここで、前記工程(iii)~(v)の培養系には、いずれも200-1000 IU/mL(好ましくは300-700 IU/mL、より好ましくは500 IU/mL)の組み換えヒトインターロイキン-2が含有され、そしていずれも組み換えヒトインターロイキン-4およびAB血清が含有されていない方法を提供する。
【0053】
本明細書で用いられるように、用語「二重陰性T細胞」および「DNT細胞とは、Tリンパ球のサブグループで、その細胞表面にCD3分子が発現されるが、CD4、CD8分子およびCD16/CD56分子が欠けている細胞であるが、入れ替えて使用することができる。ここで、CD4はヘルパーT細胞の特徴的表面分子で、CD8は細胞傷害性T細胞の特徴的表面分子で、CD16/CD56はNK細胞の特徴的表面分子である。DNT細胞はT細胞受容体(TCR)を発現するが、αβまたはγδ TCRでもよい。本発明の方法によって増幅されるDNT細胞のサブグループは、αβ+とγδ+ T細胞の混合物を含んでもよい。一つの好適な実施様態において、DNT細胞は、ヒト末梢血由来の細胞である。
【0054】
開始サンプルは、二重陰性T細胞またはその前駆体を含有する任意の生物学的サンプル由来のものでもよい。このようなサンプルは、新鮮か、冷蔵保存の血液、骨髄、リンパ組織、胸腺、肝臓、脾臓、リンパ節組織、腫瘍組織、胎児組織細胞およびその分別または濃縮された画分を含むが、これらに限られず、人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell、iPSC)由来のものでもよい。
【0055】
一つの好適な実施形態において、開始サンプルは血液、好ましくはヒト血液、より好ましくはヒト末梢血である。
【0056】
開始サンプルの培養または分別前に、開始サンプルは基本的にCD4+およびCD8+ T細胞が除去されている。「基本的」とは、これらの細胞のうちの大半が除去されていることであるが、これらの細胞のうちの一部が残っていることもある。
【0057】
本分野で既知の技術によってサンプルにおけるこれらの細胞の種類を除去することができる。具体的に、開始サンプルに、除去されるCD4+およびCD8+ T細胞と結合するが、二重陰性T細胞と結合しない抗体を添加することができる。一つの好適な実施形態において、サンプルに特異的にCD4およびCD8のマーカーと結合する抗体を添加する。
【0058】
もう一つの好適な実施形態において、サンプルに特異的にCD4およびCD8と結合する磁気ビーズを添加する。
【0059】
一旦開始サンプルからCD4+およびCD8+ T細胞が除去されると、本発明の方法はすぐに続けてもよく、当該サンプルを凍結して保存し、後の使用に備えてもよいが、低温冷蔵庫または設備(-80℃以下)または液体窒素でもよい。そのため、DNT細胞が必要な場合、DNT細胞の体外増幅は、その時点の凍結サンプルから開始してもよい。
【0060】
本発明の一つの実施形態において、健常者のドナーから一括に末梢血(100-400 ml)を採取し、体外でDNT細胞を濃縮させた後、すぐに凍結保存し、臨床再注入プランに従って当該濃縮されたDNT細胞を再生させ、本発明の体外増幅に使用する方法を提供する。
【0061】
好ましくは、前記の本発明の方法の工程(ii)は、開始サンプルにおけるCD4+およびCD8+ T細胞を除去することにより、サンプルIIa(濃縮されたDNT細胞)を得ること、サンプルIIaをそのまま本発明の体外増幅方法によって培養するか、液体窒素で凍結保存した後、再生して培養すること、サンプルIIa(濃縮されたDNT細胞)を遠心で収集した後、凍結保存液で再懸濁させ、プログラム制御で降温させた後、液体窒素において保存し、サンプルIIb(濃縮・凍結保存されたDNT細胞)とすること、サンプルIIbを凍結保存した後、臨床の要求によって再生して培養すること、37℃で解凍した後、培地で1回洗浄し、さらに培地で再懸濁させ、サンプルIIc(濃縮・凍結保存・再生されたDNT細胞)とすることを含んでもよい。
【0062】
培地において基本的にCD4+およびCD8+細胞が除去されたサンプルを培養し、前記培地は固定されたT細胞分裂促進因子およびDNT細胞が生長するように刺激できる試薬を含む。
【0063】
固定されたT細胞分裂促進因子は、CD3またはT細胞受容体と結合する抗体およびコンカナバリンA(ConA)やインゲンマメレクチン(PHA)を含むレクチンを含むが、これらに限定されない二重陰性T細胞を刺激できる任意の試薬、あるいはIPP、パミドロネート(Pamidronate)およびゾレドロネート(Zoledronate)を含むが、これらに限定されないDNT細胞が増幅するように刺激できる化合物でもよい。好ましくは、T細胞分裂促進因子は、CD3の抗体、たとえば、OKT3である。
【0064】
本分野で既知の技術でT細胞分裂促進因子を固定することができる。好ましくは、T細胞分裂促進因子は固相支持体にコーティングされ、前記固相支持体はマイクロプレート、シャーレ、培養バッグ、または培養瓶を含むが、これらに限定されない。好ましくは、T細胞分裂促進因子は、固定された抗CD3抗体で、より好ましくは、マイクロプレートに固定されたものである。
【0065】
DNT細胞が生長するように刺激できる試薬は、任意の適切な試薬でもよく、好ましくはサイトカイン、たとえば、インターロイキンである。好ましくは、サイトカインは、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)またはこれらのうちの2種または2種以上の混合物を含む。
【0066】
なお、本発明において、増幅培養に使用される培地に、IL-4が含まれず、かつAB血清が含まれない。
【0067】
試薬の濃度は、二重陰性細胞の増幅の促進に適するものである。好ましくは、サイトカインの投与範囲は、約200 IU/mL~1000 IU/mLである。特に好適な実施形態において、IL-2の培地における濃度は500 IU/mLである。
【0068】
培地は、T細胞の培養に適する任意の培地でもよく、AIM-V培地、RPMI培地、X-VIVOI0およびX-VIVOI5、ならびに任意のほかの市販の無動物血清培地をふくんでもよいが、これらに限定されない。培地は、抗生物質を含むほかの適切な試薬を含有することが好ましい。
【0069】
一つの実施形態において、DNT細胞が生長するように刺激できる試薬および固定されたT細胞分裂促進因子で培養するとき、細胞はDC細胞と共培養するか、抗原およびサイトカインで刺激してもよい。抗腫瘍DNT細胞の製造において、不活性化された腫瘍細胞あるいは腫瘍特異的または腫瘍関連の抗原、ペプチドまたはネオアンチゲン(neoantigens)を使用してもよい。
【0070】
細胞は、工程(ii)-(v)のうちのいずれかで範囲が約2-8日の一定の時間で培養することが好ましい。好ましくは、各工程は、約3-7日、より好ましくは4-6日行われる。
【0071】
本方法によって製造されるDNT細胞の純度は本分野で既知の技術、たとえば、フローサイトメトリーやほかの生細胞表現型同定技術によって実証することができる。
【0072】
本発明によるDNT細胞の用途
また、本発明は、本発明の方法によって得られる二重陰性T細胞の任意の応用の全部における使用を含む。本発明の方法によって製造される異体T細胞は、多くの腫瘍の治療に使用することができ、大規模の製造が可能で、品質が安定して制御可能で、任意の適切な患者に随時に使用することができる。
【0073】
本発明の実施形態において、本発明の方法によって増幅された二重陰性T細胞は強い抗腫瘍作用を有する。そのため、一つの実施形態において、本発明は、腫瘍を治療する方法であって、それが必要な動物に有効量の本発明の方法によって得られた汎用型DNT細胞を投与することを含む方法を提供する。また、本発明は、本発明の方法によって得られる有効量の汎用型DNT細胞の腫瘍を治療するための使用を含む。また、本発明は、有効量の本発明の方法によって得られる汎用型DNT細胞の腫瘍を治療する薬物の製造における使用を含む。
【0074】
ここで使用される用語「有効量」とは、投与量および要求される時間内で有効に必要な結果を実現される投与量、たとえば、癌を治療する投与量である。
【0075】
ここで使用される用語「動物」は、動物界のすべてのメンバーを含み、ヒトを含む。一つの好適な実施形態において、前記動物はヒトである。
【0076】
用語「治療」は、疾患または病症(たとえば、癌、移植拒絶や移植片対宿主病、自己免疫疾患、アレルギー反応、感染など)の1つまたは複数の症状の軽減または改善、疾患の程度の軽減、疾患の安定化状態、疾患の拡散の予防、疾患の進行の遅延または緩和および疾患状態の改善または緩和、検出可能か、検出不能な症状の緩和および/または治療を受けない場合に予想される生存よりも延びる生存を含むが、これらに限定されない。
【0077】
腫瘍または癌の治療において、治療可能な腫瘍は、二重陰性T細胞を、単独であるいは、ほかの治療、たとえば、手術、放射線療法または様々な標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤、免疫細胞増強剤やDNT細胞の腫瘍組織における浸潤を増強させるナノ材料を含む化学療法などと併用して治療することができる任意の腫瘍である。
【0078】
治療可能な癌は、血管新生がしていない腫瘍または血管新生が基本的にしていない腫瘍、および血管新生がした腫瘍を含む。癌は、非固形腫瘍(たとえば血液腫瘍、たとえば白血病やリンパ腫)または固形腫瘍を含んでもよい。本発明で治療する癌の種類は、癌、胚細胞腫瘍や肉腫、および一部の白血病やリンパ性悪性腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、および悪性腫瘍、たとえば肉腫、癌やメラノーマを含むが、これらに限定されない。成人腫瘍/癌および児童腫瘍/癌も含む。
【0079】
血液癌は血液、骨髄、またはリンパ組織の癌である。血液(または血液原性)癌の例は、白血病を含み、それに急性白血病(たとえば急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球型、単核球性や赤白血病)、慢性白血病(たとえば慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髓性白血病や慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンスリンパ腫(無痛および重症の場合)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、H鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病や脊髄形成異常が含まれる。
【0080】
固形腫瘍は、通常、嚢腫や液体領域の組織の腫瘤を含まない。固形腫瘍は良性でも悪性でもよい。異なる種類の固形腫瘍はこれらを形成する細胞の種類によって命名される(たとえば肉腫、癌やリンパ腫)。固形腫瘍は、たとえば肉腫および癌の例は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、中皮腫、リンパ性悪性腫瘍、膵臓癌、卵巣癌を含む。
【0081】
また、本発明は、DNT細胞のほかの治療の用途、たとえば、感染性疾患の治療および、たとえば、自己免疫疾患、アレルギー反応、移植拒絶や移植片対宿主病の治療における免疫応答の調節を含む。このような場合、DNT細胞を製造する方法は、適切な感染物、アレルゲンになる細胞または組織を抗原として添加することを含んでもよい。
【0082】
そのため、一つの実施形態において、本発明は、感染性疾患を治療する方法であって、有効量の本発明の方法によって得られる二重陰性T細胞を投与することを含む方法を提供する。また、本発明は、有効量の本発明の方法によって得られる二重陰性T細胞で感染性疾患を治療する使用を含む。また、本発明は、本発明の方法によって得られる有効量の二重陰性T細胞の感染性疾患を治療する薬物の製造における使用を含む。
【0083】
更なる実施形態において、本発明は、免疫応答を調節する方法であって、有効量の本発明の方法によって得られる二重陰性T細胞を投与することを含む方法を提供する。また、本発明は、有効量の本発明の方法によって得られる二重陰性T細胞の免疫応答を調節するための使用を含む。また、本発明は、本発明の方法有効量によって得られるの二重陰性T細胞の免疫応答を調節する薬物の製造における使用を含む。
【0084】
一つの実施形態において、DNT細胞は、自己免疫疾患の治療に使用される。本発明によって治療できる自己免疫疾患は、糖尿病、関節炎、多発性硬化、エリテマトーデス、炎症性腸疾患、皮膚炎、脳膜炎、血栓性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、脳炎、ブドウ膜炎、白血球接着不全症、リウマチ熱、ライター症候群、全身性進行性硬化、原発性胆汁性肝硬変、壊死性血管炎、重症筋無力症、多発性筋炎、サルコイドーシス、肉芽腫症、血管炎、悪性貧血、CNS炎症性病症、抗原抗体複合体を介する疾患、自己免疫溶血性貧血、リンパ腫性甲状腺腫、中毒性びまん性甲状腺腫、習慣性自然流産、レイノー症候群、糸球体性腎炎、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、セリアック病、組織特異性自己免疫、変性自己免疫遅延型過敏反応、AIDSの自己免疫合併症、萎縮性胃炎、強直性脊椎炎およびアジソン病を含むが、これらに限定されない。
【0085】
もう一つの実施形態において、DNT細胞は、移植片対宿主病の治療に使用され、ここで、移植片における免疫細胞がレシピエントの正常組織に免疫攻撃をする。移植された組織が免疫細胞を含有するとき、たとえば、白血病、再生不良性貧血を治療するとき、および酵素または免疫欠陥のため、健常者のドナーの骨髄またはリンパ組織を移植するとき、そのような場合がある。
【0086】
更なる実施形態において、DNT細胞は、アレルギー反応の治療に使用される。アレルギー反応において、免疫系は、通常、無毒性・無害の抗原またはアレルゲンを攻撃する。本発明の方法によって予防または治療できるアレルギー反応は、花粉熱、喘息、アトピー性皮膚炎ならびにアメリカツタウルシおよびキヅタ、室内ヤケヒョウヒダニ、蜂花粉、堅果、甲殻類動物、ペニシリンに対するアレルギー反応を含むが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の方法によって製造されるDNT細胞は、体内への投与に適する生物的適応性の形態で対象に投与する薬物にしてもよい。「体内への投与に適する生物的適応性の形態」とは、投与される物質の一つの形態で、ここで、治療効果が任意の毒性作用を超える。物質は、生きている生物に投与してもよく、ヒトおよび動物が含まれる。組成物は適切な形態、好ましくは注射、たとえば、静脈内、皮下、筋肉内の注射などによって投与される。
【0088】
ここに記載される組成物は、既知の薬学的に許容される組成物を製造する方法によって製造することができ、前記組成物は対象に投与可能で、このような有効量の細胞と薬学的に許容される担体の組み合わせは混合物である。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 2000)に適切な担体が記載されている。これに基づき、組成物は、物質と1種または複数種の薬学的に許容される担体または希釈剤を合わせた溶液、生理溶液を含む、適切なpHを有する等張の緩衝溶液を含むが、これらに限定されない。
【0089】
たとえば、個体の疾患状態、年齢、性別および体重ならびに個体の必要な応答を引き起こす能力などの要素により、組成物の有効量は異なる。投与量の方案を調節することにより、最適な治療応答を提供することができる。たとえば、複数に分かれる投与量で毎週投与するか、投与量は治療状況に応じる比率で減少してもよい。
【0090】
本発明と併用できる薬物は、治療される疾患または病症を治療することができるほかの活性物質を含む。たとえば、腫瘍治療において、ほかの抗癌剤は同一の組成物または別の組成物で投与してもよい。
【0091】
本発明の薬物組成物は、治療(または予防)が必要な疾患に適する形態によって施用することができる。施用の数量および頻度は、患者の病床、および患者の疾患の種類、重篤度のような要素によって決まるが、適切な投与量は臨床試験によって決定する。
【0092】
「免疫学的な有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍抑制有効量」または「治療量」と記載する場合、施用される本発明の組成物の精確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度および病症の個体差を考慮し、臨床試験によって決められる。通常、本明細書に記載のT細胞を含む薬物組成物は、104~109細胞/kg体重の投与量、好ましくは106~108細胞/kg体重の投与量(これらの範囲内におけるすべての整数値を含む)で施用することができる。T細胞の組成物はこれらの投与量で数回施用してもよい。細胞は、免疫療法で公知の注入技術(たとえばRosenbergら,New Eng. J. of Med. 319:1676,1988)によって施用することができる。具体的な患者対する最適な投与量および治療プランは、患者の疾患の状況をモニタリングすることによって得られるため、治療の調節は医学分野の技術者によって容易に決めることができる。
【0093】
対象への組成物の施用は噴霧法、注射、経口、輸液、植込みまたは移植を含む任意の便利な手段によって行ってもよい。本明細書に記載の組成物は皮下、皮内、腫瘍内、リンパ節内、脊髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射または腹膜内で患者に施用されてもよい。一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物は皮内または皮下注射によって患者に施用される。もう一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物はi.v.注射によって施用することが好ましい。T細胞の組成物は直接腫瘍、リンパ節または感染の箇所に注入してもよい。
【0094】
本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載の方法または本分野で既知のほかのT細胞を治療的投与量に増殖させる方法によって活性化および増幅した細胞を使用し、任意の数量の関連治療手段と合わせて(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用し、前記治療手段は、抗ウイルス療法、シドフォビルおよびインターロイキン-2、アザシチジン(ARA-Cとして知られる)のような試薬で治療するもの、あるいはMS患者に対するナタリズマブによる治療または乾癬患者に対するエファリズマブによる治療またはPML患者に対するほかの治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学治療、放射線、免疫抑制剤、たとえばシクロスポリンA、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチルやFK506、抗体またはほかの免疫治療剤と併用することができる。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、化学治療剤、たとえばフルダラビン、外部光線放射線療法(XRT)、シクロホスファミドと併用して(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用する。たとえば、一つの実施形態において、対象は高投与量の化学治療の後、末梢血幹細胞移植してもよい。一部の実施形態において、移植後、対象は本発明の増幅した免疫細胞の注入を受ける。別の一つの実施形態において、増殖した細胞は外科手術前または外科手術後に施用される。
【0095】
患者に施用する以上の治療の投与量は治療する病症の精確な属性および治療するレシピエントによって変わる。ヒトへ施用する投与量の比率は本分野で許容される実践によって実施することができる。通常、1回の治療または1回の治療クールに、1×109個~1×1011個の本発明の二重陰性T細胞を、たとえば静脈輸液の手段によって、患者に施用することができる。
【0096】
本発明の主な利点は以下の通りである。
【0097】
1) 配合とプロセスが改善され、臨床用ヒトDNT細胞の体外効率的増幅方法に適する。
【0098】
2) 配合とプロセスが改善され、ヒトAB血清を使用することがなく、ウシ胎児血清(FBS)も必要ではない。
【0099】
3) 配合とプロセスが改善され、新しく濃縮されたDNT細胞も、凍結保護後に再生したDNT細胞も培養することができる。
【0100】
4) 配合とプロセスが改善され、一括に採取/凍結保存が可能で、複数回で再生して培養し、複数回の再注入または複数の患者に提供することができる。
【0101】
5) 配合とプロセスが改善され、細胞増幅数は1×109細胞/mL全血以上に達することができる。
【0102】
6) 配合とプロセスが改善され、最終製品のDNT細胞の純度(CD3+CD4-CD8-) ≧ 85%になるように保証される。
【0103】
7) 配合とプロセスが改善され、細胞体外効率的腫瘍殺傷活性(生物学的効力) ≧ 50%になるように保証される。
【0104】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0105】
実施例1:磁気ビーズによって濃縮されるDNT細胞の体外増幅培養
1.1 健常者ドナーのDNT細胞の磁気ビーズによる濃縮
健常者のドナーから末梢血を20~200 ml収集してヘパリンナトリウム含有管に入れた。リンパ細胞分離液で白膜層細胞を分離し、まずCD4磁気ビーズでCD4+細胞を除去し、さらにCD8磁気ビーズでCD8+細胞を除去し、これによって得られたがCD4+とCD8+が除去されたDNT細胞である。
【0106】
1.2 DNT細胞の体外増幅培養
まず、抗ヒトCD3モノクローナル抗体(10μg/mL)でT25培養瓶をコーティングし、工程1.1で得られたDNT細胞をAIM-V培地(10%ドナー血漿および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)で1×106~4×106細胞/mLの濃度になるように調整し、前記のコーティングされたT25培養瓶に入れた。37oCの5%CO2のインキュベーターで培養した。
【0107】
3日目に、新鮮なAIM-V培地(10%ドナー血漿および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~1×106細胞/mLの濃度になるように調整して続いて培養した。
【0108】
5日目に、新鮮なAIM-V培地(10%ドナー血漿および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~2×106細胞/mLの濃度になるように調整して続いて培養した。
【0109】
7日目に、DNT細胞の表現型と生存率を検出し、そして新鮮なAIM-V培地(50 ng/mLの抗ヒトCD3モノクローナル抗体および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~3×106細胞/mLの濃度になるように調整して続いて培養した。
【0110】
9日目に、新鮮なAIM-V培地(50 ng/mLの抗ヒトCD3モノクローナル抗体および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~3×106細胞/mLの濃度になるように調整して続いて培養した。
【0111】
10日目に、DNT細胞の表現型と生存率を検出し、そして新鮮なAIM-V培地(50 ng/mLの抗ヒトCD3モノクローナル抗体および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~3×106細胞/mLの濃度になるように調整して培養バッグに移し、続いて培養した。
【0112】
12日目に、新鮮なAIM-V培地(50 ng/mLの抗ヒトCD3モノクローナル抗体および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~3×106細胞/mLの濃度になるように調整して培養バッグに移し、続いて培養した。
【0113】
14日目に、DNT細胞の表現型と生存率を検出し、最終製品の不純物の干渉が低下し、DNT細胞の純度が向上するように、AIM-V培地における抗ヒトCD3モノクローナル抗体の濃度を25 ng/mLに低下させた。新鮮なAIM-V培地(25 ng/mLの抗ヒトCD3モノクローナル抗体および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~3×106細胞/mLの濃度になるように調整して続いて培養した。
【0114】
15~16日目に、必要により、新鮮なAIM-V培地(25 ng/mLの抗ヒトCD3モノクローナル抗体および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)でDNT細胞を1×106~3×106細胞/mLの濃度になるように調整して続いて培養した。
【0115】
17~18日目に、必要により、DNT細胞を回収した。
【0116】
1.3 DNT細胞の回収およびDNT細胞製剤の作成
17~18日目に、必要により、DNT細胞を回収した。250 ml円錐底遠心瓶尖で細胞を収集し、900×gで10分間遠心し、さらに溶媒で洗浄した。収集されたDNT細胞を溶媒で0.5~1×108細胞/mLの濃度になるように調整し、これをDNT細胞製剤の完成品とし、品質チェックに合格した後、臨床における使用に供した。
【0117】
実施例2:磁気ビーズによって濃縮されるDNT細胞の凍結保存後の体外増幅培養
2.1 健常者ドナーのDNT細胞の磁気ビーズによる濃縮
上記1.1と同様である。
【0118】
2.2 得られたDNT細胞の凍結保存
工程2.1で得られたDNT細胞を、0.9%生理食塩水で1回洗浄し、凍結保存液で再懸濁させて細胞濃度が3~5×106細胞/mLになるように調整し、液体窒素において凍結保存し、必要によって再生して体外増幅培養を行った。
【0119】
2.3.凍結保存DNT細胞の再生
工程2.2で凍結保存されたDNT細胞を液体窒素から取出し、37oCの恒温オーブンで解凍した。解凍されたDNT細胞をAIM-V培地(500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)で1回洗浄し、さらにAIM-V培地(10%ドナー血漿および500 IU/mLの組み換えヒトインターロイキン-2を含有する)で再懸濁させた。
【0120】
2.4 DNT細胞の体外増幅培養
上記1.2と同様である。
【0121】
17~18日目に、必要により、DNT細胞を回収した。
【0122】
2.5 DNT細胞の回収およびDNT細胞製剤の作成
上記1.3と同様である。
【0123】
実施例3:沈降で濃縮されるDNT細胞の体外増幅培養
3.1 健常者ドナーのDNT細胞の濃縮
健常者のドナーから末梢血を20~200 ml収集してヘパリン化管に入れた。CD4/CD8リンパ細胞除去剤(RossettSep、StemCell)を利用し、CD4+とCD8+ T細胞を除去し、さらに等体積のFicoll-Hypaque溶液でPBMC分離を行った。このように得られた細胞は、CD4+とCD8+が除去されたDNT細胞である。分離して得られた細胞を、0.9%生理食塩水で1回洗浄し、体外増幅培養を行った。
【0124】
3.2 DNT細胞の体外増幅培養
上記1.2と同様である。
【0125】
17~18日目に、必要により、DNT細胞を回収した。
【0126】
3.3 DNT細胞の回収およびDNT細胞製剤の作成
上記1.3と同様である。
【0127】
実施例4:沈降で濃縮されるDNT細胞の凍結保存後の体外増幅培養
4.1 健常者ドナーのDNT細胞の濃縮
上記3.1と同様である。
【0128】
4.2 得られたDNT細胞の凍結保存
上記2.2と同様である。
【0129】
4.3.凍結保存DNT細胞の再生
上記2.3と同様である。
【0130】
4.4 DNT細胞の体外増幅培養
上記1.2と同様である。
【0131】
17~18日目に、必要により、DNT細胞を回収した。
【0132】
4.5 DNT細胞の回収およびDNT細胞製剤の作成
上記1.3と同様である。
【0133】
実施例5:応用例および効果データ
本実施例において、CD3+CD4-CD8- T細胞(二重陰性T細胞、Double Negative T細胞、DNT細胞)を例とし、上記汎用型臨床用ヒトDNT細胞の効率的体外増幅方法によって体外増幅を行う過程と効果を検証した。
【0134】
応用例1
実施例1の方法に従い、磁気ビーズでCD4+とCD8+を除去して得られたDNT細胞を、そのまま本発明の方法(組み換えヒトインターロイキン-2の濃度が500 IU/mLで、二段階で抗ヒトCD3モノクローナル抗体の使用量(第一段階50 ng/mL、第二段階25 ng/mL)を減少させ、インターロイキン-4も、AB血清も使用しない)によって体外増幅培養を行い、17~20日目に細胞を収集し、細胞の活性、表現型および細胞増幅総数を検出した。
【0135】
応用例2
実施例2の方法に従い、磁気ビーズでCD4+とCD8+を除去して得られたDNT細胞を、凍結保存後、再生し、さらに本発明の方法(組み換えヒトインターロイキン-2の濃度が500 IU/mLで、二段階で抗ヒトCD3モノクローナル抗体の使用量(第一段階50 ng/mL、第二段階25 ng/mL)を減少させ、インターロイキン-4も、AB血清も使用しない)によって体外増幅培養を行い、17~20日目に細胞を収集し、細胞の活性、表現型および細胞増幅総数を検出した。
【0136】
応用例3
実施例3の方法に従い、CD4/CD8リンパ細胞除去剤でCD4+とCD8+を除去して得られたDNT細胞を、そのまま本発明の方法(組み換えヒトインターロイキン-2の濃度が500 IU/mLで、二段階で抗ヒトCD3モノクローナル抗体の使用量(第一段階50 ng/mL、第二段階25 ng/mL)を減少させ、インターロイキン-4も、AB血清も使用しない)によって体外増幅培養を行い、17~20日目に細胞を収集し、細胞の活性、表現型および細胞増幅総数を検出した。
【0137】
応用例4
実施例4の方法に従い、CD4/CD8リンパ細胞除去剤でCD4+とCD8+を除去して得られたDNT細胞を、凍結保存後、再生し、さらに本発明の方法(組み換えヒトインターロイキン-2の濃度が500 IU/mLで、二段階で抗ヒトCD3モノクローナル抗体の使用量(第一段階50 ng/mL、第二段階25 ng/mL)を減少させ、インターロイキン-4も、AB血清も使用しない)によって体外増幅培養を行い、17~20日目に細胞を収集し、細胞の活性、表現型および細胞増幅総数を検出した。
【0138】
比較例1
既存技術に従い、培地に組み換えヒトインターロイキン-2(500 IU/mL)、組み換えヒトインターロイキン-4(2 ng/mL)、組み換えヒトインターロイキン-7(8 ng/mL)、組み換えヒトインターロイキン-12(5 ng/mL)、5%自家血漿および6%AB血清を添加した。具体的な細胞培養過程は上記応用例と同様である。
【0139】
比較例2
既存文献(Lee JBら, Clin Cancer Res. 25(7):2241-2253, 2019)を参照し、250 IU/mLのインターロイキン-2と100 ng/mL抗ヒトCD3モノクローナル抗体を使用した。具体的な細胞培養過程は上記応用例と同様である。
【0140】
前記応用例と比較例の細胞を、それぞれ培養の1日目、7日目、14日目および17日目にサンプリングして細胞総数を検出し、細胞総数の変化を比較し、
図1のように応用例と比較例の細胞生長曲線を得た。
図1からわかるように、応用例の細胞は、7日目から細胞数が顕著に増え始めたが、比較例1では、14日目になって初めて顕著に増え始めた。比較例2では、7日目から14日目で細胞数が少し増加し、14日目から初めて細胞数が顕著に増え始めた。同様の培養時点では、本発明の方法は比較例と比べてDNT細胞が多く増幅できたことが示された。
【0141】
17日目にDNT細胞を収集し、応用例と比較例の細胞生存率、表現型の純度およびDNT増幅倍率を比較し、結果を表1に示す。
【表1】
【0142】
表1では、応用例1および応用例3と比較例1および比較例1はいずれもDNT細胞を新しく分離した後、そのまま培養したものである。DNT細胞の増幅倍率を比較すると、本発明の方法では、磁気ビーズと沈降でDNT細胞を濃縮した後、体外増幅で得られたDNT細胞の増幅倍率がそれぞれ15873.68倍と20948.08倍で、遥かに比較例1の8827.93倍と比較例2の9402.65倍よりも高く、一方、細胞の表現型および細胞生存率に大きな差がなかった。そのため、2種の異なる方法によって濃縮されたDNT細胞は本発明の増幅技術によってより多いDNT細胞の製品が得られた。
【0143】
得られた細胞を分離して凍結保存し、再生後、本発明の方法によって体外増幅を行い、応用例2および応用例4を得た(表1)。凍結保存なしにそのまま培養された比較例1および比較例2と比較すると、2種の異なる方法によってDNT細胞を濃縮した後、凍結保存してDNT細胞を再生させた後、体外増幅で得られたDNT細胞の増幅倍率がそれぞれ10778.95倍と10819.41倍で、凍結保存なしにそのまま培養された比較例1(8827.93倍)と比較例2(9402.65倍)に相当し、かつDNT細胞の純度および細胞生存率に顕著な差がなかった。
【0144】
応用例5
末梢血からCD4+とCD8+を除去して濃縮して得られたDNT細胞を、液体窒素で7日、14日、および30日凍結保存した後、再生し、さらに本発明の増幅方法(組み換えヒトインターロイキン-2の濃度が500 IU/mLで、二段階で抗ヒトCD3モノクローナル抗体の使用量(第一段階50 ng/mL、第二段階25 ng/mL)を減少させ、インターロイキン-4も、AB血清も使用しない)によって体外増幅培養を行い、17日目に細胞を収集し、細胞の生存率、純度、細胞の生物学的効力および細胞増幅倍数を検出した。
【0145】
新鮮な全血から濃縮されたDNT細胞と凍結保存後再生されたDNT細胞の細胞生存率、純度、細胞の生物学的効力およびDNT細胞の増幅倍率を比較し、結果を表2に示す。
【表2】
【0146】
表2からわかるように、新しくDNT細胞を濃縮した後、連続17日培養したDNT細胞のロットと、DNT細胞は異なる時間(7日、14日、30日)で凍結保存後、再生して体外培養したDNT細胞のロットとを比較すると、細胞の生存率(>85%)、細胞の純度(CD3+CD4-CD8-,>90%)、腫瘍殺傷活性(>50)および体外増幅倍率のいずれにも顕著な差がなく、ここで、各ロットの増幅倍率における差は、異なるドナー間のDNT細胞の特性に関連するが、いずれも臨床の輸液の要求に合致する。全体的に、本発明は、新しく濃縮されたDNT細胞および凍結保存後、再生されたDNT細胞の体外におけるDNT細胞の大量増幅に適し、最終製品のDNT細胞の生存率が85%以上で、純度が90%超で、生物学的効力が50%超で、DNT細胞の増幅倍率も8000倍以上に達する。
【0147】
以上の実施例で実証されたように、本発明によって提供される0日にDNT細胞を凍結保存後の効率的体外増幅プロセスは、臨床治療プランの細胞製造における柔軟性に適し、既存特許の増幅技術に基づき、生産プロセスをさらに改善し、DNT細胞の体外増幅レベルを17日内で8000倍向上させる。一回の増幅で得られるDNT細胞は複数の患者の臨床治療投与量を提供することができる。
【0148】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。