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特許7502815空気熔融を利用して行う加工に適したマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材及びその製造方法
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  • 特許-空気熔融を利用して行う加工に適したマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】空気熔融を利用して行う加工に適したマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 23/00 20060101AFI20240612BHJP
   C22C 23/02 20060101ALI20240612BHJP
   C22F 1/06 20060101ALI20240612BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
C22C23/00
C22C23/02
C22F1/06
C22F1/00 602
C22F1/00 611
C22F1/00 630K
C22F1/00 650A
C22F1/00 650Z
C22F1/00 681
C22F1/00 687
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023001147
(22)【出願日】2023-01-06
(65)【公開番号】P2023110866
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】111104005
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517009073
【氏名又は名称】安立材料科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】林俊凱
(72)【発明者】
【氏名】郭建奕
(72)【発明者】
【氏名】范謹▲ティン▼
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-025788(JP,A)
【文献】特開平04-176839(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121722(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110029254(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108456813(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108179335(CN,A)
【文献】国際公開第2016/152569(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108660347(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 23/00 - 23/06
C22F 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熔化温度と、前記熔化温度よりも高い引火温度とを有するマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金であって、かつ組成を重量百分率で表して、5~15wt%のLi、1.5~9.0wt%のAl、0.5~1.5wt%のZn、0.4~1.3wt%のY、0.18~1.01wt%のNd、0.09~0.65wt%のCe、及びバランス量のMgと不可避不純物からなることを特徴とする、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金。
【請求項2】
前記マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の引火点が620℃~700℃の間にあることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金。
【請求項3】
1%の冷間圧延率にて冷間圧延処理を行った後、降伏強度(yield strength)が201MPa~240MPaの間にあることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材
【請求項4】
1%の冷間圧延率にて冷間圧延処理を行った後、伸長率が20%~25%の間にあることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材
【請求項5】
解凝固を経た鋳放し状態または熱処理を経た後の熱処理状態であり、かつ前記熱処理は、時効硬化処理、焼鈍軟化処理及び均質化処理からなる群から選択されるいずれか1種の処理であることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材
【請求項6】
前記マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金鋳型成形または射出成形を利用して加工した構造部材であることを特徴とする、請求項3または4に記載のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材
【請求項7】
前記マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金、真空アーク熔融法、電熱糸加熱法、誘導加熱法、急速凝固法、機械的合金法及び粉末冶金法からなる群から選択される1種の製法を利用して作製されることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の技術分野に係り、特に、空気熔融を利用して行う加工に適したマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、軽量合金は、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム-リチウム合金の3種類に大別され、その内、マグネシウム-リチウム合金は、さらにマグネシウム-リチウム-亜鉛系合金(LZ-series alloy)、マグネシウム-リチウム-アルミニウム系合金(LA-series alloy)、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛系合金(LAZ-series alloy)に分けられる。なおかつ、研究資料には、LAZ系マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、熱放射放熱能力がLZ系マグネシウム-リチウム-亜鉛合金またはLA系マグネシウム-リチウム-アルミニウム合金よりも優れていることが指摘されている。
【0003】
近年、ノートブック型パソコンの軽量薄型化を絶えず求め続け、このため、高い放熱能力と低比重を兼ね備えるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金を、ノートブック型パソコンの外部筐体の最適な製造材料とすることになる。研究資料には、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、通常、9~12%のリチウムを含有し、かつその比重が約1.45~1.60であることが指摘されている。このほか、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、さらに高い比強度、良好な耐衝撃性、切削が容易でかつ電磁干渉の遮蔽が可能などの利点をも有し、このため、各種の軽量構造部材の加工に応用が可能となることから、自転車、自動車、あるいは航空機器の製造に広く応用されている。
【0004】
長期にわたって、金属構造部材の成形製造を熟知しているエンジニアであれば、金属構造部材の成形製造は、通常、以下のステップ(1)~(2)を含み、即ち、ステップ(1)にて、金属材料を坩堝内に装入し、空気熔融法を利用してそれを熔化し、次に、ステップ(2)にて、排滓完了後、坩堝内の熔融状態の金属材料を金型内に注入し、鋳型成形を経て構造部材となることが必ず知っているはずである。残念ながら、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、引火温度が通常その熔融温度よりも低いため、空気熔融法を利用してマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金を熔化させることができない。より詳細に説明すると、電気炉を利用して坩堝内に置かれたマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金を加熱する過程において、加熱を受けるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の温度が引火温度にまで上昇すると、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金に直ちにフラッシュオーバが生じ、この時、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の温度は、熔融温度にまだ達していない。これに鑑みて、真空熔融法を利用してマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の熔融を行うことしかできない。換言すれば、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、前述に紹介した金属構造部材の成形製造モードに適用することができない。
【0005】
前述の説明から分かるように、その引火温度を熔融温度よりも高くさせるに従って、空気熔融法を利用してそれを熔化することができるために、現有のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金に対して改良を行う必要がある。これに鑑みて、本願の発明者は、極力研究発明した結果、遂に本発明にかかる空気熔融を利用して行う加工に適したマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金及びその用途を研究開発して完成させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主要な目的は、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金を提供することである。本発明は、その引火点がその熔点よりも高いため、空気熔融を利用してそれを熔融することに適すると共に、そして鋳型成形または射出成形を利用して構造部材が加工されてなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明が提供するかかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の一実施例は、その組成を重量百分率で表して、5~15wt%のLi、1.5~9.0wt%のAl、0.5~1.5wt%のZn、0.4~1.3wt%のY、0.18~1.01wt%のNd、0.09~0.65wt%のCe、及びバランス量のMgと不可避不純物からなり、その内、かかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、引火点がその熔点よりも高いに従って、空気熔融を利用してそれを熔融することに適した。
【0008】
一実施例において、前記マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の引火点が620℃~700℃の間にある。
【0009】
一実施例において、かかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材は、51%の冷間圧延率にて冷間圧延処理を行った後、降伏強度(yield strength)が201MPa~240MPaの間にある。
【0010】
一実施例において、かかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材は、51%の冷間圧延率にて冷間圧延処理を行った後、伸長率が20%~25%の間にある。
【0011】
一実施例において、かかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材は、真空アーク熔融法、電熱糸加熱法、誘導加熱法、急速凝固法、機械的合金法及び粉末冶金法からなる群から選択される1種の製法を利用して作製される。
【0012】
一実行可能な実施例において、かかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、熔解・凝固を経て得られた合金バルク材である。
【0013】
別の実行可能な実施例において、かかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金から製造された部材は、熔解凝固を経た鋳放し状態または熱処理を経た後の熱処理状態であり、かつかかる熱処理は、時効硬化処理、焼鈍軟化処理及び均質化処理からなる群から選択されるいずれか1種の処理である。
【発明の効果】
【0014】
さらに、本発明は、一種のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の用途を同時に提供し、それが鋳型成形または射出成形を利用して加工されてなる構造部材に応用され、例えば、3C(パソコン・通信・消費性)製品の筐体部材、内部構成部材や車輪リムなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実験サンプルEのグレースケール画像を示す図である。
図2】実験サンプルFのグレースケール画像を示す図である。
図3】実験サンプルGと対照サンプルDとの伸長率(Percent elongation,%EL)を示す統計棒グラフである。
図4】実験サンプルGの降伏強度(Yield strength,YS)を示す統計棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明が提供する空気熔融を利用して行う加工に適したマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金をより明瞭に記述するために、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を以下に詳細に説明する。
【0017】
本発明が提供する一種のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、その組成を重量百分率で表して、5~15wt%のリチウム(Li)、1.5~9.0wt%のアルミニウム(Al)、0.5~1.5wt%の亜鉛(Zn)、0.01~1.3wt%のイットリウム(Y)、0.18~1.01wt%のネオジム(Nd)、0.09~0.65wt%のセリウム(Ce)、及びバランス量のマグネシウム(Mg)と不可避不純物を含む。特に、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、引火点がその熔点よりも高いため、空気熔融を利用してそれを熔融することに適すると共に、そして鋳型成形または射出成形を利用して構造部材が加工されてなる。
【0018】
実際の応用時に、かかるマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、熔解・凝固を経て得られた合金バルク材である。なおかつ、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、真空アーク熔融法、電熱糸加熱法、誘導加熱法や急速凝固法などを利用することができる。特に説明することは、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、熔解凝固を経た鋳放し状態の合金または熱処理を経た後の熱処理状態の合金であることがより好ましい。長期にわたって、合金の設計と製造を行う材料エンジニアであれば、かかる熱処理は、均質化処理、時効硬化処理、あるいは焼鈍軟化処理であってもよいことが分かるであろう。
【0019】
一般に、金属構造部材の成形製造は、通常、以下のステップ(1)~(2)を含み、即ち、ステップ(1)にて、金属材料を坩堝内に装入し、空気熔融法を利用してそれを熔化し、次に、ステップ(2)にて、排滓完了後、鋳型成形あるいは射出成形を利用して坩堝内の熔融状態の金属材料をかかる金属構造部材として成形する。しかしながら、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ521、LAZ721、LAZ771、LAZ921及びLAZ1491は、その引火温度が通常その熔融温度よりも低いため、空気熔融法を採用して熔融を行うことには適さず、従って前述に紹介した金属構造部材の成形製造モードに適用することができない。注意に値することは、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、引火点が620℃~700℃の間にあるので、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ521、LAZ721、LAZ771、LAZ921及びLAZ1491よりも高い点である。このため、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、前述の方法ステップを利用して、例えば、電子製品の筐体部材や自転車の車輪リムなどのような金属構造部材として加工することができる。
【0020】
上記本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、これによって的確に実施することが可能であることを実証するために、以下、多数組の実験資料の表現に沿って、実証を行った。
【実施例1】
【0021】
実験例1において、真空熔融炉を利用して本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金のサンプルを製造し、かかるサンプルの組成を下記の表1にまとめて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
上記の表1から、対照サンプルAは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ521であることが知見された。理解すべきことは、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ521は、5wt%のリチウム(Li)、2wt%のアルミニウム(Al)、1wt%の亜鉛、及びバランス量のマグネシウム(Mg)と不可避不純物(例えば、微量金属Mn)を含む。その一方、実験サンプルAは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ521、0.78wt%のイットリウム(Y)、0.65wt%のネオジム(Nd)及び0.41wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものである。
【実施例2】
【0024】
実験例2において、真空熔融炉を利用して本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金のサンプルを製造し、かかるサンプルの組成を下記の表2にまとめて示す。
【0025】
【表2】
【0026】
上記の表2から、対照サンプルBは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ721であることが知見された。理解すべきことは、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ721は、7wt%のリチウム(Li)、2wt%のアルミニウム(Al)、1wt%の亜鉛、及びバランス量のマグネシウム(Mg)と不可避不純物(例えば、微量金属Mn)を含む。その一方、実験サンプルBは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ721、0.34wt%のイットリウム(Y)、0.41wt%のネオジム(Nd)及び0.28wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものである。
【実施例3】
【0027】
実験例3において、真空熔融炉を利用して本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金のサンプルを製造し、かかるサンプルの組成を下記の表3にまとめて示す。
【0028】
【表3】
【0029】
上記の表3から、対照サンプルCは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ771であることが知見された。理解すべきことは、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ771は、7wt%のリチウム(Li)、7wt%のアルミニウム(Al)、1wt%の亜鉛、及びバランス量のマグネシウム(Mg)と不可避不純物(例えば、微量金属Mn)を含む。その一方、実験サンプルCは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ771、0.92wt%のイットリウム(Y)、0.46wt%のネオジム(Nd)及び0.28wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものである。
【実施例4】
【0030】
実験例4において、真空熔融炉を利用して本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金のサンプルを製造し、かかるサンプルの組成を下記の表4にまとめて示す。
【0031】
【表4】
【0032】
上記の表4から、対照サンプルDは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ921であることが知見された。理解すべきことは、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ921は、9wt%のリチウム(Li)、2wt%のアルミニウム(Al)、1wt%の亜鉛、及びバランス量のマグネシウム(Mg)と不可避不純物(例えば、微量金属Mn)を含む。その一方、実験サンプルDは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ921、0.63wt%のイットリウム(Y)、0.51wt%のネオジム(Nd)及び0.25wt%のセリウム(Ce)に対して真空アーク熔融を行ったことにより得られたものである。なおかつ、実験サンプルEは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ921、0.57wt%のイットリウム(Y)、0.14wt%のネオジム(Nd)及び0.08wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものである。
【実施例5】
【0033】
実験例5において、真空アーク熔融炉を利用して本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金のサンプルを製造し、かかるサンプルの組成を下記の表5にまとめて示す。
【0034】
【表5】
【0035】
上記の表5から、対照サンプルEは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ1491であることが知見された。理解すべきことは、マグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ1491は、14wt%のリチウム(Li)、9wt%のアルミニウム(Al)、1wt%の亜鉛、及びバランス量のマグネシウム(Mg)と不可避不純物(例えば、微量金属Mn)を含む。その一方、実験サンプルFは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ1491、1.2wt%のイットリウム(Y)、0.8wt%のネオジム(Nd)及び0.6wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものである。
【0036】
多数個の対照サンプルと多数個の実験サンプルに関連する測定データを下記の表6A、表6B、表7Aと表7Bにまとめて示す。
【0037】
【表6A】
【0038】
【表6B】
【0039】
【表7A】
【0040】
【表7B】
【0041】
図1は、実験サンプルEのグレースケール画像を示す図であり、かつ図2は、実験サンプルFのグレースケール画像を示す図である。注意に値することは、図1図2において図示するT1、T2とT3は、サンプリング位置を示している点である。サンプルのデータを測定する際、それぞれこれらの3つの位置でサンプリングをしたのち、引火点と熔点の測定及び組成分析を行った。このため、実験サンプルEの組成分析結果を下記の表8に示し、かつ実験サンプルFの組成分析結果を下記の表9に示す。
【0042】
【表8】
【0043】
【表9】
【実施例6】
【0044】
さらに、本願の発明者は、また、実験例6を完成した。実験例6において、真空アーク熔融炉を利用して本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金のサンプルを製造し、かかるサンプルの組成を下記の表10にまとめて示す。
【0045】
【表10】
【0046】
上記の表10から、実験サンプルGは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ921、0.35wt%のイットリウム(Y)、0.36wt%のネオジム(Nd)及び0.25wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものであることが知見された。なおかつ、実験サンプルHは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ921、0.57wt%のイットリウム(Y)、0.14wt%のネオジム(Nd)及び0.08wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものである。その一方、実験サンプルIは、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金LAZ921、0.58wt%のイットリウム(Y)、0.49wt%のネオジム(Nd)及び0.32wt%のセリウム(Ce)に対して真空熔融を行ったことにより得られたものである。なおかつ、実験サンプルG~Iに関連する測定データを下記の表11にまとめて示す。
【0047】
【表11】
【0048】
さらに、本願の発明者は、また、実験サンプルG(即ち、LAZ921+Y+Nd+Ce)及び対照サンプルD(即ち、LAZ921)に対して機械的性質の測定を行った。図3は、実験サンプルGと対照サンプルDとの伸長率(Percent elongation,%EL)を示す統計棒グラフである。図3に示すように、対照サンプルDは、鋳放し状態にて計測された伸長率が24.6%ELである。なおかつ、冷間圧延を経て51%の冷間圧延変形量を有する場合には、対照サンプルDで計測された伸長率が11.9%ELだけが残っていた。その一方、図3に示すように、実験サンプルGは、鋳放し状態にて計測された伸長率が31.0%ELである。なおかつ、冷間圧延を経て51%の冷間圧延変形量を有する場合には、実験サンプルGで計測された伸長率が23.7%ELである。このため、図3の実験データから、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金(例えば、LAZ921)に比べて、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、冷間加工ひずみ硬化に対する抑制力がより優れたものとなることが実証された。
【0049】
加えて、本願の発明者は、また、実験サンプルGに対して熱処理を行うと共に、その降伏強度(yield strength)を測定した。図4は、実験サンプルGの降伏強度(Yield strength,YS)を示す統計棒グラフである。図4に示すように、冷間圧延処理を経て51%の冷間圧延変形量を有する場合には、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金の降伏強度が201MPa~240MPaの間にある。このため、図4の実験データから、商業用のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金(例えば、LAZ921)に比べて、本発明のマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金は、圧延材強度がより優れたものとなることが実証された。
【0050】
こうして、上記のように、本発明にかかる空気熔融を利用して行う加工に適したマグネシウム-リチウム-アルミニウム-亜鉛合金を既に十分かつ明瞭に説明してきた。しかしながら、強調すべき点は、上記の詳細な説明は、本発明の実行可能な実施例を具体的に説明したものであり、但し、本発明の特許範囲はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的精神を逸脱しない限り、その等効果実施又は変更は、なお、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4