(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】健康状態の評価方法、健康状態評価システム、プログラム及び排便検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/483 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
G01N33/483 D
(21)【出願番号】P 2023566373
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2022045371
(87)【国際公開番号】W WO2023106383
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/045343
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515163313
【氏名又は名称】株式会社メタジェン
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】村上 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕義
(72)【発明者】
【氏名】野間口 達洋
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091496(JP,A)
【文献】特開2009-229315(JP,A)
【文献】特開平10-031016(JP,A)
【文献】特表2021-503088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109588339(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0131408(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0100725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0153414(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた前記便の温度に基づいて、前記動物の
腸内細菌の代謝物質に関する評価をする腸内環境評価ステップと、を含む、腸内環境の評価方法。
【請求項2】
前記腸内環境評価ステップは、前記動物の便中の短鎖脂肪酸濃度を評価することを特徴とする、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた前記便の温度に基づいて、前記動物の腸内
細菌による発酵の活発さに関する評価をする腸内環境評価ステップと、を含む、腸内環境の評価方法。
【請求項4】
前記測定ステップで得られた前記便の温度に基づいて、前記便の中心温度を予測する便
温度予測ステップを含む、
請求項1または3に記載の評価方法。
【請求項5】
前記評価は、前記測定ステップで得られた前記便の温度と、前記便温度予測ステップでえられた前記便の中心温度との差に基づいて行われる
、請求項4に記載の評価方法。
【請求項6】
さらに、前記便の温度の低下率を計算する低下率計算ステップを含み、
前記評価は、前記低下率計算ステップで得られた前記便の温度の低下率に基づいて行われる
、請求項1または3に記載の評価方法。
【請求項7】
前記評価は、前記便における便の先端部と末端部の温度差に基づいて行われる、
請求項1または3に記載の評価方法。
【請求項8】
前記対象とする動物の体温情報を取得する体温取得ステップ
をさらに含み、
前記評価は、前記体温と前記便の温度の関係性に基づいて行われる、
請求項1または3記載の評価方法。
【請求項9】
前記測定ステップは、前記便の表面温度、内部温度、先端温度及び末端温度から選ばれ
る少なくともいずれかの温度を測定するステップを含む、請求項1ないし
8のいずれか一
項に記載の評価方法。
【請求項10】
前記測定ステップは、排便直後に行われる、請求項1ないし
9のいずれか一項に記載の
評価方法。
【請求項11】
前記便の温度から前記動物に適した健康改善法を提案する提案ステップをさらに含む、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項12】
対象とする動物の便の温度を測定する測定手段と、
前記測定手段で得られた前記便の温度に基づいて、前記動物の腸内
細菌の代謝物質に関する評価をする腸内環境評価手段とを備える、腸内環境評価システム。
【請求項13】
さらに、前記測定手段で得られた前記便の温度に基づいて、前記動物に適した生活習慣のアドバイスを提案する生活習慣提案手段と、を備える、請求項
12に記載の評価システム。
【請求項14】
プログラムであって、
コンピュータに請求項1ないし11のいずれか一項に記載の評価方法の各ステップを実
行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康状態の評価方法、健康状態評価システム、プログラム及び排便検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象とする動物の便に含まれる細菌や代謝物等を定量することにより、その動物の健康状態を評価する方法が知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便に含まれる物質を定量するためには、便を採取し、その便から目的物質を抽出して分析する工程が必要となるため、時間や手間がかかる。また、それだけでなく、採便者は自らの大便を自ら採取すること、分析者は他人の大便を処理することにより、心理的な負担を伴う場合が多い。このため、便を採取して目的物質を抽出することなく、より簡便に便から健康状態を評価することは、便検査の普及や分析者の労働衛生の観点から有益である。
【0005】
本発明は、より簡便に便から健康状態を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた前記便の温度に基づいて、前記動物に適した生活習慣のアドバイスを提案する生活習慣提案ステップと、を含む、健康状態の評価方法である。
【0007】
その他、本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より簡便に便から健康状態を評価する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】健康状態評価システムを構成する端末のハードウェア構成例を示す図。
【
図4】健康状態評価システムを構成する端末のソフトウェア構成例を示す図。
【
図5】健康状態評価システムを構成する端末において実行される処理の流れを示す図。
【
図6】(a)便の内部温度と便中の酢酸の量との相関を示す図。(b)便の外部温度と便中の酢酸の量との相関を示す図。
【
図7】(a)便の内部温度と便中のプロピオン酸の量との相関を示す図。(b)便の外部温度と便中のプロピオン酸の量との相関を示す図。
【
図8】(a)便の内部温度と便中の酪酸の量との相関を示す図。(b)便の外部温度と便中の酪酸の量との相関を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、健康状態の評価方法、健康状態評価システム、プログラム及び排便検出方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
本発明は、例えば、以下のような構成を備える。
[項目1]
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた前記便の温度に基づいて、前記動物に適した生活習慣のアドバイスを提案する生活習慣提案ステップと、を含む、健康状態の評価方法。
[項目2]
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた前記便の温度に基づいて、前記動物の腸内環境を評価する腸内環境評価ステップと、を含む、健康状態の評価方法。
[項目3]
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた前記便の温度に基づいて、前記便の中心温度を予測する便温度予測ステップを含む、健康状態の評価方法。
[項目4]
さらに、前記測定ステップで得られた前記便の温度と、前記便温度予測ステップでえられた前記便の中心温度との差に基づいて、前記動物の健康状態を評価する健康状態評価ステップを含む、項目2に評価方法。
[項目5]
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた前記便の温度から、前記便の温度の低下率を計算する低下率計算ステップと、
前記低下率計算ステップで得られた前記便の温度の低下率に基づいて、前記動物の健康状態を評価する健康状態評価ステップを含む、健康状態の評価方法。
[項目6]
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップを含む、健康状態の評価方法であって、
前記健康状態の評価は、前記便における温度差に基づいて行われる、健康状態の評価方法。
[項目7]
対象とする動物の便の温度を測定する測定ステップと、
前記対象とする動物の体温情報を取得する体温取得ステップと、を含む健康状態の評価方法であって、
前記健康状態の評価は、前記体温と前記便の温度の関係性に基づいて行われる、健康状態の評価方法。
[項目8]
前記測定ステップは、前記便の表面温度、内部温度、先端温度及び末端温度から選ばれる少なくともいずれかの温度を測定するステップを含む、項目1ないし7のいずれか一つに記載の評価方法。
[項目9]
前記測定ステップは、排便直後に行われる、項目1ないし8のいずれか一つに記載の評価方法。
[項目10]
さらに、前記測定ステップで得られた前記便の温度から、前記便の中心温度を予測する便温度予測ステップを含む、項目1ないし9のいずれか一つに記載の評価方法。
[項目11]
さらに、前記測定ステップで得られた前記便の温度から、前記便の温度の低下率を計算する低下率計算ステップを含む、項目1ないし10のいずれか一つに記載の評価方法。
[項目12]
さらに、前記測定ステップで得られた前記便の温度から、前記動物の腸内環境を評価する腸内環境評価ステップを含む、項目1ないし11のいずれか一つに記載の評価方法。
[項目13]
さらに、前記測定ステップで得られた前記便の温度から、前記動物の健康状態を評価する健康状態評価ステップを含む、項目1ないし12のいずれか一つに記載の評価方法。
[項目14]
さらに、前記便の温度から前記動物に適した健康改善法を提案する提案ステップを含む、項目1ないし13のいずれか一つに記載の評価方法。
[項目15]
対象とする動物の便の温度データを取得する便温度データ取得手段と、
前記便温度データ取得手段が取得した前記便の温度に基づいて、前記動物に適した生活習慣のアドバイスを提案する生活習慣提案手段と、を備える、健康状態評価システム。
[項目16]
対象とする動物の便の温度を測定する測定手段と、
前記測定手段で得られた前記便の温度に基づいて、前記動物の腸内環境を評価する腸内環境評価手段と、を備える、健康状態評価システム。
[項目17]
対象とする動物の便の温度を測定する測定手段と、
前記測定手段で得られた前記便の温度に基づいて、前記便の中心温度を予測する便温度予測手段を含む、健康状態評価システム。
[項目18]
対象とする動物の便の温度を測定する測定手段と、
前記測定手段で得られた前記便の温度から、前記便の温度の低下率を計算する低下率計算手段と、
前記低下率計算手段で得られた前記便の温度の低下率に基づいて、前記動物の健康状態を評価する健康状態評価手段を含む、健康状態評価システム。
[項目19]
対象とする動物の便の温度を測定する測定手段を含む、健康状態の評価システムであって、
前記健康状態の評価は、前記便における温度差に基づいて行われる、健康状態評価システム。
[項目20]
対象とする動物の便の温度を測定する測定手段と、
前記対象とする動物の体温情報を取得する体温取得手段と、を含む、健康状態の評価システムであって、
前記健康状態の評価は、前記体温と前記便の温度の関係性に基づいて行われる、健康状態評価システム。
[項目21]
対象とする動物の便の温度を測定する測定手段と、
前記測定手段で得られた前記便の温度に基づいて、前記動物に適した生活習慣のアドバイスを提案する生活習慣提案手段と、を備える、健康状態評価システム。
[項目22]
プログラムであって、
コンピュータに請求項1ないし14のいずれか一項に記載の評価方法の各ステップを実行させる、プログラム。
[項目23]
対象とする動物の排泄物が排泄されうる空間の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで得られた結果に基づいて、排便の有無を評価する評価ステップと、を含む、排便検出方法。
【0012】
<概要>
まず、
図1を用いて、本発明の実施の形態に係る健康状態の評価方法の一例の概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る健康状態の評価方法の流れの概要を示す図である。
【0013】
ステップ1では、例えば、便器の内部に設置されたサーマルカメラ等の便温度測定部により、排便されたヒトの便の表面温度を測定する。
【0014】
ステップ2では、ステップ1で取得した便の温度から、排便したヒトの腸内環境を評価する。例えば、便温度が高い場合には腸内における腸内細菌による発酵が活発であることが予想されるため、便温度が高い場合には、排便したヒトの腸内環境が良好であると評価する。ここで、「便温度が高い」とは、例えば、一般的なヒトの体温よりも少し高い37℃前後である場合や、同一個人の便温度を経時的に相対比較して高い状態を含むが、これに限られない。
【0015】
ステップ3では、ステップ2で得られた腸内環境の評価結果、又はステップ1で取得した便の温度から、排便したヒトの健康状態を評価する。例えば、便温度が高く、排便したヒトの腸内環境が良好である場合には健康状態が良好であると評価する。
【0016】
ステップ4では、ステップ3で得られたヒトの健康状態の評価から、又はステップ1で取得した便の温度から、排便したヒトに適した生活習慣のアドバイス等の健康改善法を提案する。例えば、便温度が高く、健康状態が良好であると評価された場合には、現在の食事や生活習慣を維持することを提案する。これに対し、例えば、便温度が低く、健康状態が良好ではないと評価された場合には、評価の度合いに応じて、適した食事や生活習慣を提案する。
【0017】
このように、便の温度を測定するだけで、簡便に便から健康状態を評価し、排便したヒト等に適した生活習慣のアドバイスを提案する。これにより、例えば、便の温度を定期的に測定し、その変化を追うことで、排便したヒトの健康状態の経時的変化をモニタリングすることができる。また、提案された改善法による効果を検証することができる。
【0018】
(実施形態1)
<構成>
本発明の一実施形態に係る健康状態の評価方法を実施するための健康状態評価システム100の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、添付図面において、同一又は類似の要素には同一又は類似の参照符号及び名称が付され、各実施形態の説明において同一又は類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0019】
図2は、本実施形態の健康状態評価システム100の一例を示す図である。
図2に示されるように、本実施形態の健康状態評価システム100は、例えば、端末1と、便器2とを有する。端末1は、例えば、トイレ内又はトイレとは別に設置され、便器2が備えるデバイスと有線又は無線にて互いに通信可能に接続される情報処理手段である。例えば、端末1は、クラウド(図示せず)を介して便器2と接続されるコンピュータやサーバであることができ、または、スマートフォン等のユーザ端末であることができる。また、端末1は、本実施形態に係る健康状態評価システムにおいて情報処理を行う手段であることができ、また、評価システムで得られた健康状態の評価等の情報が表示される手段であることができる。さらに、端末1がユーザ端末である場合、端末1は、個人(必ずしも便を排出した人とは限られず家族や介護者等も含まれる)が所有するスマートフォンの他に、病院の端末であることができ、また、対象とする動物がペットの場合には、端末1は飼い主の端末であることができる。
【0020】
便器2は、例えば、トイレに設置され、少なくとも便器本体21及び便座22と、図示しない便温度測定部や排便を感知するセンサ等を備えたデバイスとを有する。ここでは、便の温度を測定する手段としての便温度測定部は、便器2に組み込まれたものであってもよく、便温度測定部は便器2に組み込まれない取り外し可能なセンサ付きデバイスとすることができる。また、便器2は、便の温度が測れる手段を備えるものであればトイレに設置されるものに限られず、例えば、便器2はポータブル式のものであってもよく、ペットや家畜用のトイレであってもよく、便器2の代わりにおむつであることができる。おむつの場合、おむつに設置される小型デバイスによって便の温度を測定することができる。また、便器2の便温度測定部は、温度により色が変わる薬剤を含む紙等と、前記紙等の情報を取得するデバイスの組み合わせにより構成されるものであってもよい。この場合は、当該デバイスと端末1が有線又は無線にて互いに通信可能に接続される情報処理手段となる。
【0021】
<端末1>
図3は、端末1のハードウェア構成を示す図である。端末1は、例えば、パーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。例えば、端末1のプロセッサ10に設けられる一部または全ての機能が外部のサーバや別端末により実行されてもよい。
【0022】
端末1は、少なくとも、プロセッサ10、メモリ11、ストレージ12、送受信部13、入出力部14等を備え、これらはバス15を通じて相互に電気的に接続される。
【0023】
プロセッサ10は、端末1全体の動作を制御し、少なくとも便器2が備えるデバイスと通信するものである。本実施形態では便器2に設置された便温度測定部とのデータ等の送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えばプロセッサ10はCPU(Central Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)であり、ストレージ12に格納されメモリ11に展開された本システムのためのプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0024】
メモリ11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ11は、プロセッサ10のワークエリア等として使用され、また、端末1の起動時に実行されるBIOS(Basic Input / Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0025】
ストレージ12は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベースがストレージ12に構築されていてもよい。
【0026】
送受信部13は、端末1と、便器2の便温度測定部等とデータ等の送受信を行う。なお、送受信部13は、有線又は無線により構成されおり、無線である場合には、例えば、WiFiやBluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インターフェースにより構成されていてもよい。
【0027】
入出力部14は、例えば、端末1がパーソナルコンピュータで構成されている場合は情報出力機器(例えば、ディスプレイ)と情報入力機器(例えば、キーボードやマウス)により構成され、スマートフォン又はタブレット端末で構成されている場合はタッチパネル等の情報入出力機器により構成されている。
【0028】
バス15は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0029】
<便器>
図2に戻り、本実施形態において、便器2は便座に腰掛けて使用する腰掛式(洋式)大便器であり、少なくとも便器本体21及び便座22と、図示しない便温度測定部を有する。また、図示しないセンサを有することもできる。
【0030】
本実施形態において、便温度測定部は測定対象とする動物としてのヒトの便の温度を測定する。便温度測定部は、例えば、便器本体21内部に一般的に設置される、肛門洗浄用のノズルの近傍に設置される非接触の温度計(例えば、赤外線温度計、サーモカメラやサーモグラフィックカメラ)であってもよく、画像センサなどであってもよい。便温度測定部は、便座22に設けてもよい。便温度測定部は、有線又は無線で続された端末1によりその動作を制御されてもよい。
【0031】
センサは、例えば便座22の表面に設けられ、便座22に腰掛けるヒトの太腿の裏側の温度を測定する。センサは、便座22でそこに腰掛けるヒトの体温を感知するものであればよい。センサは、便座22にヒトが腰掛けたことを感知して自動的に体温を感知するように設定してもよいし、有線又は無線で便座22と接続されたコントローラ3によりその動作を制御されてもよい。また、センサは、便温度測定部の機能を有し、便の温度を感知するものであってもよい。
【0032】
<端末1の機能>
図4は、端末1に実装される機能を例示したブロック図である。本実施の形態においては、端末1のプロセッサ10は、少なくとも便温度データ取得部101と、それに加えて便中心温度予測部102、便温度低下率計算部103、腸内環境評価部104、健康状態評価部105、健康改善法提案部106のうち1つ以上を有する。また、端末1のストレージ12は、便温度データ記憶部121と、それに加えて腸内環境評価結果記憶部122、健康状態評価結果記憶部123、健康改善法記憶部124のうち1つ以上を有する。
【0033】
便温度データ取得部101は、例えば、端末1の入出力部14からの指示により便器2の動作を制御し、便温度測定部やセンサを動作させて対象物であるヒトの便(図示せず)の便温度データを取得する。取得した便温度データは、例えば、便温度データ記憶部121に記憶される。便温度データ取得部101による便温度データの取得は、ユーザが所定のタイミングで温度を測る操作による入出力部14からの指示の他に、例えば、ヒトの排便の動作を感知する手段による排便のタイミングに合わせて自動で取得することもできる。
【0034】
便中心温度予測部102は、取得された便温度データと所定のパラメータとに基づいて、便の中心温度を予測する。予測した便の中心温度のデータは、例えば、便温度データ記憶部121に記憶される。
【0035】
便温度低下率計算部103は、取得された排便後の便温度データと排便後に所定時間経過した後の便温度データから、便の温度の低下率を計算する。得られた便の温度の低下率のデータは、例えば、便温度データ記憶部121に記憶される。
【0036】
腸内環境評価部104は、取得した各便温度データと所定の評価基準とに基づいて、排便したヒトの腸内環境を評価する。腸内環境評価部104で評価された評価結果の情報は、例えば、腸内環境評価結果記憶部122に記憶される。
【0037】
健康状態評価部105は、取得した各便温度データ及び/又は腸内環境評価結果と所定の評価基準とに基づいて、排便したヒトの健康状態を評価する。健康状態評価部105で評価された評価結果の情報は、例えば、健康状態評価結果記憶部123に記憶される。
【0038】
健康改善法提案部106は、取得した各便温度データ及び/又は健康状態評価結果と健康改善法記憶部124に記憶された提案データとに基づいて、排便したヒトに適した生活習慣のアドバイス等の健康改善法を提案する。
【0039】
<健康状態評価方法のフローチャート>
図5は、本実施の形態の健康状態評価システム100で実施される健康状態評価方法のフローチャートの一例である。
【0040】
まず、ステップ101では、便温度データ取得部101により、便温度データを取得する。便温度データの取得は、例えば、ユーザが排便される予定の便の温度データを取得する指令を端末1から入力し、便器2に設けられた便温度測定部を動作させることにより開始する。また、便温度データの取得は、便座22に設けられたセンサが、ユーザが便座22に腰掛けた時にユーザの体温を感知すると、便温度測定部が動作するように予めシステムを設定することにより開始してもよい。便温度測定部又はセンサが便の温度を感知することにより、便温度データを取得してもよい。
【0041】
ステップ101において、便温度データの取得は、例えば、便器本体21内部に設置された便温度測定部により、便器内部に向けて排便されたヒトの便の表面温度を測定する。便温度データの取得は、便温度測定部に面する側の便の表面温度を1回だけ測定することにより取得してもよく、排便直後から排便が終るまでの便の表面温度を測り続けることにより取得してもよく、先端温度及び/又は末端温度のみを測定したり、便の中間部の表面温度を測定することにより取得してもよい。また、便の先端部と末端部との温度差を測定したデータを取得してもよい。
【0042】
ステップ102では、ステップ101で取得した便温度データと所定の評価基準とに基づいて、腸内環境評価部104により排便したヒトの腸内環境を評価する。例えば、便温度が高い場合には腸内における腸内細菌による発酵が活発であることが予想されるため、便温度が高い場合には、排便したヒトの腸内環境が良好であると評価する。これに対し、例えば、便温度が低い場合には腸内における腸内細菌による発酵が活発ではないことが予想されるため、便温度が低い場合には、排便したヒトの腸内環境が良好ではないと評価する。便温度が高い場合には、排便したヒトの腸内環境が良好であると評価する根拠としては、例えば、腸内細菌のバランスや腸内細菌の代謝が良好であれば、腸内細菌によって腸管内で生産される所定の短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids:SCFA)量等が高く、便中のSCFA量が多いことが挙げられる。腸内の酢酸、プロピオン酸、酪酸等の代謝物質は、ヒトが食べたもののうち、消化できなかった食物繊維などを腸内細菌が餌として食べることで作り出され、腸管周辺の細胞へ影響することをはじめ、血液を介して全身を巡ることから、健康への影響が大きいため、腸内環境の状態を評価するのに適している。これらSCFAが多量に生産される状況においては腸内の発酵が活発であることに基づく熱放出が増加すると予想され、その結果として便の温度が高い状態になると考えられることから、便の温度を基準に所定の評価基準を設定することができる。また、各SCFA(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)について異なる所定の評価基準を設定することもでき、他にも、所定の評価基準は便温度データとアミノ酸、ビタミン類、胆汁酸量やIgA量等との関連性に基づいて設定されることもできる。
【0043】
ステップ103では、ステップ102で取得した腸内環境の評価結果と所定の評価基準とに基づいて、排便したヒトの健康状態を評価する。例えば、便温度が高く、排便したヒトの腸内環境が良好であるヒトは健康状態が良好であることが予想される。つまり、便温度が高いヒトほど健康状態が良好な状態であると評価する。これに対し、例えば、便温度が低く、排便したヒトの腸内環境が良好ではないヒトは健康状態が良好ではないことが予想される。つまり、便温度が低いヒトほど健康状態が良好な状態ではないと評価する。
【0044】
ステップ102、103において、「便温度が高い」とは、例えば、所定の基準値よりも高い場合としてもよい。ここで、「所定の基準値」とは、例えば、体温よりも少し高い37℃前後とすることもできるし、同一個人の過去の便温度に基づいて設定した基準値としてもよい。
【0045】
ステップ104では、ステップ103で得られたヒトの健康状態の評価結果と所定の評価基準とに基づいて、排便したヒトに適した健康改善法を提案する。例えば、便温度が高く、健康状態が良好であると評価されたヒトに対しては、現在の食事や生活習慣を維持することを提案する。これに対し、例えば、便温度が低く、健康状態が良好ではないと評価されたヒトに対しては、評価の度合いに応じて、例えば、適した食事や生活習慣を提案する。提案は、端末1の表示手段に表示することにより行ってもよく、端末1の警告手段によってアラートを鳴らすこと等で注意を喚起する方法であることもできる。
【0046】
このように、便の温度を測定するだけで、簡便に便から健康状態を評価する。
【0047】
なお、便の温度を測定する際には、サーマルカメラ以外の温度計により便の温度を測定してもよく、また、便の内部温度を測定してもよい。また、便の表面温度の測定結果と内部温度の測定結果とを組み合わせで用いてもよい。さらに、便中心温度予測部102により便の表面温度から便の中心温度を予測するステップを行ってもよい。また、便温度低下率計算部103により排便後の便温度と排便後に所定時間経過した後の便温度を測定し、便の温度の低下率を計算するステップを行ってもよい。あるいは、便を直接的に測定せず、便器中の水に便が入水する前後の、便器中の水の温度を測定する方法であってもよいし、便を直接的に測定する手段と、便器中の水の温度を測定する手段を組み合わせる方法であってもよい。
【0048】
また、腸内環境及び健康状態を評価する際には、便座に温度センサを設置し、温度センサで感知する太腿の裏側の体温と便温度との差から、排便したヒトの腸内環境及び健康状態を評価してもよい。排便の度に毎回便の温度を測定し、その経時的変化を追うことで腸内環境及び健康状態を評価してもよい。また、体温と便温度の関係性に基づいて健康状態を評価してもよい。この場合、例えば、便の表面温度と中心温度との差や、便の温度の低下率から排便したヒトの腸内環境及び健康状態を評価してもよく、便の温度を定期的に測定し、その変化を追うことで、提案された改善法による効果を検証してもよい。なお、便器2や便器2が設置されるトイレ等には、同一個人の便の温度を定期的に測定することを目的に、個人を識別する手段(指紋認証、顔認証、個人に付与された磁気カードを読み取る装置等)が備えられていてもよい。
【0049】
便の温度は、便器を設置しているトイレの室温によりにノーマライズしてもよく、日内変動を加味して、排便時刻でノーマライズしてもよい。また、便と共に排泄されることが多い尿や屁の温度を誤って測定しない機構を備えることも重要である。例えば、排泄物の移動速度や流体の輪郭等を合わせて測定し、尿や屁ではなく便の温度を正確に測定する機構を備えることもできる。または、尿や屁の温度も測定し、便の温度と比較することで便の温度を正確に測定する仕組みを備えることもできる。このように、対象とする動物の排泄物が排泄されうる空間の温度を測定し、得られた結果に基づいて排便の有無を評価することで、排便を検出することもできる。
【0050】
また、端末1のストレージ12は、例えば、ユーザデータ記憶部、腸内環境データ記憶部、腸内環境情報記憶部(いずれも図示せず)を備える構成としてもよい。
【0051】
この場合、ユーザデータ記憶部には、ユーザの基本データ及び腸内環境データを記憶する構成とすることができる。例えば、腸内環境データは、腸内環境に関するデータであり、腸内細菌データ、代謝物質データ等を含む。これらの情報は、ユーザ情報(ID)に紐づけられて格納される。基本データは、ユーザの氏名、性別、年齢、職業、出身地、居住地等の属性に関する情報、持病、既往歴、アレルギー、体質(肥満、虚弱など)、処方薬、常用薬等の体調に関する情報、食生活、飲酒、喫煙、運動習慣等の生活習慣に関する情報等を含む。これら例示したものの他に、遺伝子データ、健康診断データ等を含んでもよい。これらの基本データは、ユーザ自身に登録させてもよく、アンケート等により得た回答を登録してもよい。
【0052】
腸内細菌データは、ユーザの腸内細菌に関する情報を含む構成とすることができる。ユーザの腸内細菌に関する情報は、ユーザの糞便サンプルから抽出した遺伝子の配列データ、及び定量データそのものであってもよく、これらのデータを分析することによって同定される微生物の属・種の別、及びそれらの定量データや比率といった腸内細菌叢に関する情報であってもよい。腸内細菌データは、ユーザから提供された糞便サンプルから全DNAを抽出し、それらの配列を読み取り、その配列と遺伝子のデータベース(例えばKEGG)をもとに定量することが可能である。微生物の定量は、例えば、糞便サンプルから全DNAを抽出し、それらの配列を読取り、その配列と16SリボソームRNAデータベース(例えば、SILVA)をもとに行うことができる。
【0053】
代謝物質データは、ユーザの腸内環境中の代謝物質に関するデータである。本実施の形態における代謝物質データは、腸内環境中の各化合物の種別及びこれらの定量データを含む。代謝物質は、例えばユーザの糞便サンプルからCE-MS、LC-MS、GC-MS等の質量分析計を備えた分析装置等を用いることにより網羅的に定量することができる。
【0054】
ユーザデータ記憶部には、基本データ、腸内細菌データ、代謝物質データ等の各種データをデータ取得日ごとに複数格納することができる。
【0055】
腸内環境データ記憶部は、過去に取得されたヒトの腸内細菌データ、代謝物質データ、及び基本データを含むデータを記憶するデータベースである。これらの各データの内容は上記ユーザデータと同様のものを含み得る。当該データは、自身で取得し分析することによって得たデータに限られず、外部から入手したデータを含むこともできる。
【0056】
腸内環境情報記憶部は、各腸内環境に関する情報を記憶する。例えば、腸内環境情報は、腸内環境タイプに関する情報を含む。腸内環境タイプは、例えば、腸内細菌叢のパターンによって分類されるエンテロタイプ(例えば、ルミノコッカスエンテロタイプ、バクテロイデスエンテロタイプ、プレボテラエンテロタイプの3つの分類。)や、腸内環境に関する所定の指標を用いた分類が挙げられる。腸内環境情報記憶部は、各腸内環境タイプについて、食生活や運動習慣等の生活習慣の傾向、疾病のかかりやすさ、アレルギーの傾向、体質、特定の食品を摂取したことによる効果・効能の有無等、各タイプに属する人の特徴を表す情報(特徴情報)や、食生活や運動習慣の改善方針、疾病の予防方法、体質改善方法等、各タイプに属する人に対する健康上のアドバイス情報等を含むことができる。その他、腸内環境に関する情報としては、腸内環境スコアに関する情報、例えば、腸内細菌や代謝物質など腸内環境に関係する指標を用いて、腸内環境の状態を所定の基準に基づいて算出される数値で表したものであってもよく、腸内細菌の多様性指標に関する情報であってもよい。
【0057】
また、端末1のプロセッサ10は、ユーザデータ取得部(図示せず)を備える構成としてもよい。この場合、ユーザデータ取得部は、ユーザの基本データ、腸内細菌データ、代謝物質データ等を取得する構成とすることができる。これらのデータの取得は、ユーザがユーザ端末を介して入力してもよいし、他の端末やデータベースから取得してもよい。また、アンケート等に回答させる形式で、データを取得してもよい。
【0058】
この場合、
図4に示す腸内環境評価部104は、ユーザの基本データ、腸内細菌データ、代謝物質データ等から、ユーザの腸内環境を評価する構成としてもよい。腸内環境の評価の例として、腸内環境タイプの分類、腸内環境スコアや多様性指標の算出等を行うことができる。また、腸内環境評価部104は、各代謝物質についてスコアを算出してもよく、さらに、複数の代謝物質のスコアに基づいて総合スコアを算出してもよい。総合スコアの算出方法としては、例えば各代謝物質のスコアの平均値をとってもよいが、特に制限はない。平均値をとる場合、必要に応じて影響力の高い特定の代謝物質のスコアに重み付けをしてもよい。このような便中の各代謝物質のスコアから、排便した動物の健康評価することとしてもよい。
【0059】
(実施形態2)
上記実施形態の健康状態評価システム100において、便温度測定部を、便器2ではなく、例えば、便器を設置しているトイレの、排便時にヒトの背面側となる壁部(図示せず)に設置してもよい。それ以外の構成は上記実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0060】
本実施形態において、便温度測定部を壁部に設置することにより、腰掛けずに使用する大便器(和式)が設置されている場合であっても、便温度データを取得することが可能である。
【0061】
(実施形態3)
本発明の一実施形態に係る健康状態の評価方法を実施するための健康状態評価装置として、便温度測定部が、便器ではなく、手持ち式(ハンディタイプ)の赤外線温度計、サーモカメラやサーモグラフィックカメラ等に設けられる構成とすることができる。この場合、手持ち式のカメラ等が、上記実施形態における端末1の機能も兼ね備える構成としてもよい。この構成により、ポータブル式の装置とすることができ、便器で排便することができない要介護者や、乳幼児等の便を対象とする場合であっても、便温度データを取得することが可能である。また、ペットや産業動物(例えば、家畜や競走馬)等、ヒト以外の動物の便を対象とすることもできる。
【実施例】
【0062】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
1.実験方法
A~Gの6人に対し、便を6回採取し、便中の短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids:SCFA)量の定量評価を実施した。なお、便を採取する6回のうち、3回は通常通りに生活してもらい、残りの3回については腹巻を着用して生活してもらった。便の内部温度は、採取した便に電極型温度計を挿して測定した。便の外部温度は、赤外線型温度計を用いて測定した。
【0064】
便中の短鎖脂肪酸量の定量評価は次のように実施した。まず、有機溶媒を用いた液液抽出により便から代謝物質を抽出し、短鎖脂肪酸測定用サンプルとした。短鎖脂肪酸測定用サンプルは、誘導体化処理を施した後、溶出時間補正用の内部標準物質を添加してGC-MSを用いて測定し、検出されたピークのカラム保持時間、質量電荷比(m/z)、ピーク面積を取得した。これらの情報を標準試料の測定結果と照合することで各ピークが対応する短鎖脂肪酸を同定した。これらのピークは、検体ごとに内部標準物質との面積比が一定になるように補正し、サンプル間で相対定量が可能な値(相対面積比)に変換し、濃度既知の標準試料を用いて作成した検量線と比較することにより、絶対定量を行った。
【0065】
2.実験結果
図6~8に実験結果を示す。
図6~8より、便温度が一定よりも低い場合(例えば、内部温度で34℃以下、外部温度で29℃以下)には、SCFA濃度が低い可能性が示された。このことから、ステップ102では、ユーザの便温度とSCFA濃度との関係に基づいて設定した評価基準を設けることで、便温度からSCFA濃度の低下を推測することができる。便温度が低い場合には腸内における腸内細菌による発酵が活発ではないことが予想されるため、便温度が低い場合には排便したヒトの腸内環境が良好ではく、健康状態が良好な状態ではないと評価できることが示唆された。なお、前記温度はあくまでSCFAに対する所定の評価基準の例であり、腸内環境指標、測定環境、排便者の個人差等により、異なる評価基準を設定することができる。
【0066】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0067】
例えば、
図2に示す端末1のプロセッサ10に設けられる一部または全ての機能が外部のサーバや別端末により実行される場合、複数のユーザ端末(図示せず)と通信ネットワークを介して通信可能に接続される構成としてもよい。サーバは複数のサーバから構成されてもよい。
【0068】
また、本実施形態において、便温度測定部又はセンサが便の温度を検知することにより便温度データを取得する態様や、おむつに設置される小型デバイスによって便の温度を測定する態様においては、排便があったか否かそのものを検知できる仕組みとなる。これらの態様においては、例えば、対象とする動物の排泄物が排泄されうる空間の温度を測定する測定ステップと、測定ステップで得られた結果に基づいて排便の有無を評価する評価ステップとを含むことにより、排便の有無を検出することができる。便の温度を測定するためには、便と共に排泄されることが多い尿や屁の温度と、便の温度を比較・区別する機構やシステムが組み込まれることも当然に想定されることであるが、これは排尿や放屁と、排便という行為を判別することにも有用である。この場合、乳幼児の排便や、介護施設での排便の管理に有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 端末
2 便器
21 便器本体
22 便座
100 健康状態評価システム