(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】研削加工装置及び研削加工装置の定盤精度出し方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/00 20120101AFI20240612BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20240612BHJP
B24B 53/02 20120101ALI20240612BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B24B37/00 Z
B24B37/12 D
B24B53/02
H01L21/304 622M
(21)【出願番号】P 2024025689
(22)【出願日】2024-02-22
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502330849
【氏名又は名称】有限会社サクセス
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 愼介
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-019434(JP,A)
【文献】特開2022-017062(JP,A)
【文献】特開2013-258179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00
B24B 37/12
B24B 53/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体結晶インゴットからスライス状に切り出されたウェハを研削加工する研削加工装置であって、前記ウェハを保持するウェハ保持手段と、前記ウェハ保持手段に支持したウェハの被研削面に対向する砥石定盤と、前記砥石定盤を取り付ける取付面を有して前記砥石定盤を支持するベース定盤と、前記ベース定盤の中心部に設けられて前記取付面から突出するセンター円盤と、前記砥石定盤に対向するドレッシング手段とを備えるものにおいて、
前記センター円盤は、前記ベース定盤の中央部に形成されたセンター抜き穴に着脱自在に挿着されており、
前記ベース定盤の前記取付面は、前記センター円盤を前記取付面から非突出とした状態で前記ドレッシング手段
のドレス加工により精度出しされ、高精度な基準面となっていることを特徴とする研削加工装置。
【請求項2】
半導体結晶インゴットからスライス状に切り出されたウェハを研削加工する研削加工装置の定盤精度出し方法であって、
前記研削加工装置が、前記ウェハを支持するウェハ保持手段と、前記ウェハ保持手段に支持したウェハの被研削面に対向する砥石定盤と、前記砥石定盤を取り付ける取付面を有して前記砥石定盤を支持するベース定盤と、前記ベース定盤の中心部に着脱自在に設けられて前記取付面から突出するセンター円盤と、前記砥石定盤に対向するドレッシング手段とを備えるものであるとき、
前記センター円盤を前記ベース定盤の前記取付面から非突出の退避状態とするセンター円盤退避工程と、
前記センター円盤退避工程により前記センター円盤を退避状態とした前記ベース定盤の前記取付面に、前記ドレッシング手段によるドレス加工を施して前記取付面を基準面とする基準面形成工程と、
を含むことを特徴とする研削加工装置の定盤精度出し方法。
【請求項3】
請求項2記載の研削加工装置の定盤精度出し方法において、
前記研削加工装置が、前記ベース定盤の前記取付面側を上面としたとき、前記ベース定盤の下面側に重合するベース下定盤を備えている場合には、
前記センター円盤退避工程に先だって、前記ベース定盤が非重合状態の前記ベース下定盤の上面側に、前記ドレッシング手段によるドレス加工を施して他の基準面とする他の基準面形成工程を行うことを特徴とする研削加工装置の定盤精度出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体結晶インゴットからスライス状に切り出されたウェハを研削加工するための研削加工装置及び研削加工装置が備えている定盤の精度出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体結晶インゴットからスライス状に切り出されたウェハに研削加工を施す研削加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の研削加工装置は、ベース定盤と、砥石定盤とを備えている。砥石定盤は、ベース定盤の上面に形成された取付面に取り付けられている。砥石定盤は、その上面に研削砥石を備えている。
【0004】
ベース定盤の中央部には、鉛直方向の軸線が回転軸線に一致するセンター円盤が一体に設けられている。センター円盤は、ベース定盤の取付部よりも上方に突出している。砥石定盤をベース定盤の取付面に取り付ける際には、砥石定盤の側縁(中央側)を、センター円盤の周壁に当接させることで砥石定盤を位置決めすることができる。
【0005】
ウェハ保持手段に保持されたウェハの被研削面(図中下側の面)は、研削砥石の上面に摺接し、これによってウェハの研削加工が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の研削加工装置においては、砥石定盤の研削精度を維持するために、研削砥石のドレッシングが行われる。
【0008】
しかし、砥石定盤の取り付け姿勢は、ベース定盤の取付面の状態に影響を受ける。このため、例えば、取付面の水平でない場合には、研削砥石の上面を水平にするためのドレス加工を行うが、ドレス加工の際の研削砥石の上面の削り量が大きくなる。
【0009】
それによって、ドレッシング時間が長くなることや、砥石定盤の交換頻度が増加する等が生じ、更には、複数のベース定盤間での砥石定盤を付け替えが困難となる不都合がある。
【0010】
そこで、ベース定盤の取付面に対してドレス用砥石を用いてドレス加工を施し、研削砥石の精度出しをする(例えば、平坦かつ水平にする)ことが考えられる。
【0011】
しかし、ベース定盤の取付面の中央部には、ベース定盤に一体に形成されているセンター円盤が突出しており、このセンター円盤にドレス用砥石が干渉してしまう。このため、ベース定盤の取付面に対して精度の高い加工を施すことは困難とされていた。
【0012】
上記の点に鑑み、本発明は、砥石定盤のドレス加工を容易として高い研削精度を維持することができる研削加工装置及び研削加工装置の定盤精度出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明は、半導体結晶インゴットからスライス状に切り出されたウェハを研削加工する研削加工装置であって、前記ウェハを保持するウェハ保持手段と、前記ウェハ保持手段に支持したウェハの被研削面に対向する砥石定盤と、前記砥石定盤を取り付ける取付面を有して前記砥石定盤を支持するベース定盤と、前記ベース定盤の中心部に設けられて前記取付面から突出するセンター円盤と、前記砥石定盤に対向するドレッシング手段とを備えるものにおいて、前記センター円盤は、前記ベース定盤の中央部に形成されたセンター抜き穴に着脱自在に挿着されており、前記ベース定盤の前記取付面は、前記センター円盤を前記取付面から非突出とした状態で前記ドレッシング手段のドレス加工により精度出しされ、高精度な基準面となっていることを特徴とする(第1発明)。
【0014】
上記構成の第1発明によれば、センター円盤がベース定盤の取付面から非突出状態(突出しない状態)とすることができる。よって、ベース定盤の取付面をドレッシング手段により精度出し加工を施すとき、ドレッシング手段とセンター円盤とが干渉しないようにすることができる。このことから、高精度な取付面を確実に得ることができ、砥石定盤のドレッシングを容易として高い研削精度を維持することができる。
【0015】
また、本発明は、半導体結晶インゴットからスライス状に切り出されたウェハを研削加工する研削加工装置の定盤精度出し方法であって、前記研削加工装置が、前記ウェハを支持するウェハ保持手段と、前記ウェハ保持手段に支持したウェハの被研削面に対向する砥石定盤と、前記砥石定盤を取り付ける取付面を有して前記砥石定盤を支持するベース定盤と、前記ベース定盤の中心部に着脱自在に設けられて前記取付面から突出するセンター円盤と、前記砥石定盤に対向するドレッシング手段とを備えるものであるとき、前記センター円盤を前記ベース定盤の前記取付面から非突出の退避状態とするセンター円盤退避工程と、前記センター円盤退避工程により前記センター円盤を退避状態とした前記ベース定盤の前記取付面に、前記ドレッシング手段によるドレス加工を施して前記取付面を基準面とする基準面形成工程と、を含むことを特徴とする(第2発明)。
【0016】
上記第2発明の方法によれば、まず、センター円盤退避工程により、センター円盤がベース定盤の取付面から非突出状態(退避状態)とする。その後、基準面形成工程により、ベース定盤の取付面に、ドレッシング手段によるドレス加工を施す。
【0017】
これにより、ドレッシング手段とセンター円盤とが干渉せず取付面のドレス加工が行える。よって、高精度な取付面を確実に得ることができ、砥石定盤のドレッシングを容易として高い研削精度を維持することができる。
【0018】
上記の第2発明において、前記研削加工装置が、前記ベース定盤の前記取付面側を上面としたとき、前記ベース定盤の下面側に重合するベース下定盤を備えている場合には、前記センター円盤退避工程に先だって、前記ベース定盤が非重合状態の前記ベース下定盤の上面側に、前記ドレッシング手段によるドレス加工を施して他の基準面とする他の基準面形成工程を行うことを特徴とする(第3発明)。
【0019】
第3発明のように、ベース定盤の下面側にベース下定盤が重合する研削加工装置の場合には、更に、ベース下定盤の上面側にドレッシング手段によるドレス加工を施すことで、ベース定盤の取付面および砥石定盤の精度出しを容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態である研削加工装置の構成を模式的に示す断面説明図。
【
図4】本発明の他の実施形態である研削加工装置の構成を模式的に示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の研削加工装置1は、半導体結晶インゴットからスライス状に切り出されたウェハWを研削加工するものであり、
図1に示すように、定盤2と、ドレス加工用ヘッド3と、ウェハ保持ヘッド4とを備えている。
【0022】
定盤2は、円盤状のベース定盤5と、ベース定盤5の中央部に設けられたセンター円盤6と、ベース定盤5の上面に支持された砥石定盤7とを備えている。砥石定盤7の上面には、研削砥石8が設けられている。
【0023】
ベース定盤5は、センター円盤6の周囲の上面が、砥石定盤7を取り付ける取付面9(
図2参照)となっている。
【0024】
センター円盤6は、ベース定盤5に取り付けられた状態では、取付面9から上方に突出する。このときの、センター円盤6の上面位置は、取付面9に取り付けられた砥石定盤7の上面位置よりも低い。
【0025】
更に、センター円盤6は、ベース定盤の中央部に形成されたセンター抜き穴10(
図2参照)に着脱自在に挿着されており、必要に応じてベース定盤5から取り外し可能に設けられている。
【0026】
ドレス加工用ヘッド3は、本発明におけるドレッシング手段に相当するものであり、ドレッサーボード11や、カップホイール12(
図3参照)を介して砥石13を保持する。ドレッサーボード11は、
図1に示すように、研削砥石8の上面にドレス加工を施す際に取り付けられる。後述するが、カップホイール12及び砥石13は、
図3に示すように、ベース定盤5の上面である取付面9にドレス加工を施す際に取り付けられる。
【0027】
ウェハ保持ヘッド4は、本発明におけるウェハ保持手段に相当するものであり、その下面にウェハWを吸着保持して昇降する。ウェハ保持ヘッド4は、ウェハWの被研削面を下方に向けて保持し、このウェハWを砥石定盤7の研削砥石8に摺接させることで、ウェハWの研削加工を行う。
【0028】
上記の構成による研削加工装置1は、ウェハWの研削加工に先立ち、次のようにして、定盤2のドレス加工を行う。
【0029】
即ち、
図2に示すように、センター円盤6及び砥石定盤7をベース定盤5から取り外す(センター円盤退避工程)。これにより、ベース定盤5から上方に突出するセンター円盤6が退避され、ベース定盤5の上面全面が露出状態となる。
【0030】
次いで、
図3に示すように、ドレス加工用ヘッド3にカップホイール12を介して砥石13を保持し、砥石13によって、ベース定盤5の上面全面にドレス加工を施すことで、精度出しする(基準面形成工程)。これにより、ベース定盤5の取付面9は高精度な基準面として用いることができるようになる。
【0031】
続いて、
図1に示すように、ベース定盤5のセンター抜き穴10にセンター円盤6を挿着する。これにより、ベース定盤5の取付面9からセンター円盤6の一部が突出する。そして、ベース定盤5の取付面9に砥石定盤7をセットする。このとき、突出状態のセンター円盤6に砥石定盤7の内側端部を当接させることで、砥石定盤7が位置決めされてた状態でセットされる。
【0032】
続いて、ドレス加工用ヘッド3にドレッサーボード11を保持し、研削砥石8の上面にドレス加工を施す。
【0033】
上述の基準面形成工程により、ベース定盤5の取付面9は高精度な基準面となっているため、砥石定盤7が水平状態に取り付けられ、これによって、研削砥石8の上面のドレス加工においても加工量が少なくなり、高精度なドレス加工が短時間で行える。
【0034】
その後、ウェハ保持ヘッド4がウェハWを保持し、研削砥石8の上面に摺接させて、ウェハWの研削加工を行う。
【0035】
また、他の実施形態として
図4に示すように、ベース定盤5の下面側に重合するベース下定盤14を備えている研削加工装置15においては、先ず、ベース下定盤14上に設けられているベース定盤5、センター円盤6、及び砥石定盤7を全て取り外す。これにより、ベース下定盤14の上面全面が露出する。
【0036】
次いで、
図5に示すように、ドレス加工用ヘッド3にカップホイール12を介して砥石13を保持し、この砥石13によって、ベース下定盤14の上面全面にドレス加工を施す(他の基準面形成工程)。これにより、ベース下定盤4の上面においても、高精度な他の基準面として用いることができ、ベース定盤5の取付面9及び砥石定盤7の精度出しも極めて容易となる。
【符号の説明】
【0037】
W…ウェハ、1,15…研削加工装置、3…ドレス加工用ヘッド(ドレッシング手段)、4…ウェハ保持ヘッド(ウェハ保持手段)、5…ベース定盤、6…センター円盤、7…砥石定盤、9…取付面、10…センター抜き穴、14…ベース下定盤。
【要約】
【課題】砥石定盤のドレス加工を容易として高い研削精度を維持することができる研削加工装置及び研削加工装置の定盤精度出し方法を提供する。
【解決手段】半導体結晶ウェハWを研削加工する研削加工装置1は、ウェハWを保持するウェハ保持手段4と、ウェハ保持手段4に支持したウェハWの被研削面に対向する砥石定盤7と、砥石定盤7を取り付ける取付面9を有して砥石定盤7を支持するベース定盤5と、ベース定盤5の中心部に設けられて取付面9から突出するセンター円盤6と、砥石定盤7に対向するドレッシング手段3とを備える。センター円盤6は、ベース定盤5の中央部に形成されたセンター抜き穴10に着脱自在に挿着されている。ベース定盤5の取付面9は、センター円盤6を取付面9から非突出とした状態でドレッシング手段3によりドレス加工が施されている。
【選択図】
図1