(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】レーダ・ビームフォーミング方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20240612BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240612BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20240612BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240612BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20240612BHJP
H01Q 3/42 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G01S7/02 216
H04B7/08 422
H04B7/0413 300
H01Q3/26 Z
H01Q21/08
H01Q3/42
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019008418
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519024245
【氏名又は名称】シバース ワイヤレス アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100141162
【氏名又は名称】森 啓
(72)【発明者】
【氏名】ホーカン バリ
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-064114(JP,A)
【文献】特開2016-057168(JP,A)
【文献】特開2015-141041(JP,A)
【文献】特開2011-257150(JP,A)
【文献】特開2005-265779(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014008195(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0229033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 - 3/74
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
H01Q 3/00 - 3/46
H01Q 21/00 - 25/04
H04B 7/02 - 7/12
H04L 1/02 - 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの受信アンテナ素子を含むアンテナアレイを備える、受信アンテナのためのビームフォーミング方法であって、
前記方法は、
前記受信アンテナ素子で反射レーダ信号を受信し、前記受信アンテナ素子から受信信号を取得するステップと、
前記受信信号を受信処理するステップであって、該受信処理は周波数ダウンコンバート、およびアナログデジタル変換を含み、それによっていくつかのデジタル信号を生成する、ステップと、
前記デジタル信号を、所定の入射角に整列させるステップと、
少なくとも2つの整列された前記デジタル信号を合計することによって決定される和ビームフォーミング信号と、少なくとも2つの整列された前記デジタル信号を乗算することによって決定される積ビームフォーミング信号とを含むいくつかの信号を乗算することによってビームフォーミング信号を決定するステップであって、
該積ビームフォーミング信号は、前記和ビームフォーミング信号と乗算されたときに前記和ビームフォーミング信号のグレーティングローブを抑制するグレーティングローブ抑制信号である、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも前記アンテナアレイの両端における受信アンテナ素子からの整列されたデジタル信号を乗算することによって前記積ビームフォーミング信号を決定するステップを備える、請求項1に記載のビームフォーミング方法。
【請求項3】
前記受信アンテナ素子を、λ/2を超える相互距離に配置するステップを含み、λは前記反射レーダ信号の搬送波の波長である、請求項1または2に記載のビームフォーミング方法。
【請求項4】
前記受信処理するステップは、前記ビームフォーミング信号を決定する前に、前記整列されたデジタル信号を周波数領域に変換するステップをさらに含む、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のビームフォーミング方法。
【請求項5】
前記反射レーダ信号の帯域幅によって与えられる距離分解能は、前記受信アンテナの幅と同程度かそれよりも小さい、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のビームフォーミング方法。
【請求項6】
前記和ビームフォーミング信号に対応するビームのメインローブの幅は、前記積ビームフォーミング信号に対応するビームのメインローブの幅よりも狭い、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のビームフォーミング方法。
【請求項7】
少なくとも2つの隣接する受信アンテナ素子を、λを超える相互距離に配置するステップであって、λは前記反射レーダ信号の搬送波の波長である、ステップを備える、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のビームフォーミング方法。
【請求項8】
前記整列させるステップは、対応する前記受信信号の到着時間に関して前記デジタル信号を整列させることによって実行される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のビームフォーミング方法。
【請求項9】
受信信号を生成するように構成された、いくつかの受信アンテナ素子(104-108)を含むアンテナアレイを有する受信アンテナ(103)と、
前記受信アンテナ素子に接続された周波数ダウンコンバータ(110)と、
前記周波数ダウンコンバータに接続されており、デジタル信号を生成するように構成されたアナログ-デジタル変換器(111)と、
前記アナログ-デジタル変換器に接続された、所定の入射角に前記デジタル信号を整列させるアライメント要素(112)と、
前記アナログ-デジタル変換器に接続されており、
所定の入射角に少なくとも2つの整列された前記デジタル信号を合計することによって決定される和ビームフォーミング信号と、
少なくとも2つの整列された前記デジタル信号を乗算することによって決定される 積ビームフォーミング信号であって、前記積ビームフォーミング信号は、前記和ビームフォーミング信号と乗算されたときに前記和ビームフォーミング信号のグレーティングローブを抑制するグレーティングローブ抑制信号である、積ビームフォーミング信号と、
を含む、いくつかの信号を乗算することによってビームフォーミング信号を決定するように構成されたビームフォーミング装置(114)と、
を備える受信デバイス(102)。
【請求項10】
請求項9に記載の受信デバイス(102)を備えるレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はレーダ・ビームフォーミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続波レーダ、例えば、FMCW(周波数変調連続波)レーダ、または、パルスレーダ、例えば、MTI(移動目標インジケータ)レーダのようなレーダが使用される多くのアプリケーションにおいて、所望の情報を検索するためには、受信レーダ信号とともに、送信レーダ信号とのビームを形成できることが必要である。現代の技術は、アンテナを物理的に動かすことなく異なる方向にビームを生成することができるレーダンテナを提供してきた。すなわち、アンテナは電子的に操縦可能である。本願発明は、受信レーダ信号の信号処理、すなわち送信レーダ信号の反射に関する。アクティブ電子走査アレイとも呼ばれるアクティブ電子制御アンテナ(AESA)を実現するための伝統的な方法は、受信周波数の波長の約半分の間隔で配置された受信アンテナ素子のアレイを有することである。各受信アンテナ素子は、個々の受信アンテナ素子からの信号が合計される前に信号を遅延させる回路を有する。これは、以下に説明するように、主に3つの方法で行われる。当該技術分野においてよく知られているように、受信アンテナ素子の間隔が波長の半分未満である場合、これは、グレイティング・ローブ、すなわち、所望の方向以外の方向に形成される有意なビームを得ることなく、アンテナを操縦する可能性を提供する。
【0003】
ビームフォーミングの1つの方法はアナログ・ビームフォーミングと呼ばれ、各受信アンテナ素子はそれぞれのチャネルの一部であり、それは、
図1aに示すように、受信アンテナ素子に続く制御可能な遅延または移相器をさらに含む。狭帯域信号、すなわち、BW<<c
0/Dの場合、BWは信号の帯域幅、c
0は光速、そして、Dはアンテナの幅であり、移相器はうまく機能する。さもなければ制御可能な遅延が実行されなければならず、それは大きなアンテナにとっては大きくなり損失が大きくなる。位相シフト/遅延の後、チャネル信号は合計されて
図2に示すようにビームを生成する。このソリューションの利点は、とにかくマイクロ波受信機が必要とされ、そして1つのデジタル受信機で十分であるのでそれがかなり安いということである。その欠点は、1つのビームしか同時に合成できないことである。
【0004】
デジタルビームフォーミングは別の代替方法である。各チャンネルがA/D変換器を組み込んでいる場合には、遅延、それによるビームフォーミングはサンプリング後に行うことができる(
図2a参照)。各チャネル信号のデータが保存されるため、これにより、同時に複数の方向を調べることができる。遅延およびデータの合計、したがってビームフォーミングは、厳密に数学的に行われる。このソリューションを用いる利点は、いくつかのビームを同時に形成することができることである(
図2b参照)。しかしながら、送信ビームによってカバーされる角度で受信ビームを形成することだけが有用である。不利な点は、A/D変換器の数が多く、それらを同期させる必要があることである。処理する膨大な量のデータもあるが、これ自体は、先進的な信号処理をするASICにおいては、それほど問題にはならない。
【0005】
レーダの送信ビームは通常それほど広くはないので、そのビーム内で同時にビームを形成することができれば十分であることが多い。ハイブリッドビームフォーミングと呼ばれるさらに別のソリューションでは、これは、マイクロ波周波数で移相器を持ち、次にグループ化されたチャネル信号をサンプリングすることによって、
図3aに示すように、行われる。このデータは、各グループによって形成されたより広いビーム内に狭いビームを形成するために、
図3bに示すように、使用することができる。
【0006】
しかしながら、現在のAESAの一般的な欠点は、マイクロ波受信機の数がアンテナサイズによって規定されることである。これは、狭ビームアンテナでは、アンテナが大きく、マイクロ波受信機の数が多いことを意味する。マイクロ波受信機とデジタルチャンネルの数は、多分に、従来のAESAにおけるコスト、電力消費、および高価な冷却システムの大きさが何かである。
【発明の概要】
【0007】
上述の共通の欠点を軽減するソリューションを提供することは有利である。
【0008】
この懸念に対処するために、本願発明摸第1の態様では、能動的な電子的に操縦可能な受信アンテナのためのビームフォーミング方法が提示されている。この受信アンテナは、いくつかの受信アンテナ素子を含むアンテナアレイを備え、このの方法は、受信アンテナ素子で反射レーダ信号を受信し、受信アンテナ素子から受信信号を取得するステップと、受信信号を受信処理するステップであって、この受信処理は、周波数ダウンコンバート、およびアナログデジタル変換を含み、それによって、いくつかのデジタル信号を生成する、ステップと、受信信号またはデジタル信号を所定の入射角に整列させるステップと、和ビームフォーミング信号(sum beamforming signal)を含むいくつかの信号を乗算することを含む、ビームフォーミング信号を決定するステップであって、この和ビームフォーミング信号は、少なくとも2つのデジタル信号と、少なくとも2つのデジタル信号を乗算することによって決定される積ビームフォーミング信号とを合計することによって決定される、ステップと、を含み、ここで、積ビームフォーミング信号は、グレイティング・ローブ抑制信号であり、それは、和ビームフォーミング信号と乗算したとき、和ビームフォーミング信号のグレイティング・ローブを抑制する。
【0009】
このビームフォーミング方法は、受信アンテナ素子をまばらに取り付けることができる、すなわち、狭いメインローブおよび大幅に抑制されたグレイティング・ローブの望ましい最終ビームパターンを維持しながら、半波長より大きな間隔で取り付けられるという点で有利である。まばらな取り付けのために、従来技術の受信機と比較して、受信アンテナ素子の数は、これにより、性能を損なうことなく、コストと消費電力が削減される。
【0010】
本ビームフォーミング方法は、受信アンテナに対するビームフォーミングが使用されることになっている任意のレーダシステムにおいて使用することができる。ただし、ベースバンド周波数が小さいため、広帯域FMCWレーダには特に有用である。多くのレーダシステム、例えば、監視レーダでは、広い送信ビームが使用され、ターゲットへの方向は、複数の狭い受信ビームを持つことによって規定される。これらはA/D変換後にデジタル合成することができる。
【0011】
この方法をうまく動作させるためには、レーダ信号の帯域幅とアンテナの幅との間の関係が、好ましくは、帯域幅が、少なくともアンテナの幅程度の距離分解能を提供するのに十分に大きいということである。
【0012】
本願方法の一実施形態によれば、それは、アンテナアレイの両端にある受信アンテナ素子からのデジタル信号を乗算することによって積ビームフォーミング信号を決定することを含む。
【0013】
本願方法の一実施形態によれば、受信アンテナ素子を、λ/2を超える相互距離に配置することを含む。ここで、λは反射レーダ信号の搬送波の波長である。
【0014】
本願方法の一実施形態によれば、受信処理は、ビームフォーミング信号を決定する前にデジタル信号を周波数領域に変換することをさらに含む。
【0015】
本願方法の一実施形態によれば、レーダビームの距離分解能は、受信アンテナの幅と同程度である。
【0016】
本願方法の一実施形態によれば、和ビームフォーミング信号に対応するビームのメインローブの幅は、積ビームフォーミング信号に対応するビームのメインローブの幅よりも狭い。
【0017】
本願方法の一実施形態によれば、それは、少なくとも2つの隣接する受信アンテナ素子を、λを超える相互距離で配置することを含む。ここで、λは反射レーダ信号の搬送波の波長である。
【0018】
方法の一実施形態によれば、整列は、対応する受信信号の到着時間に関してデジタル信号を整列させることによって行われる。
【0019】
本願発明の別の態様によれば、受信信号を生成するように構成された、いくつかの受信アンテナ素子、を含むアンテナアレイを有するアクティブ電子制御受信アンテナが提供される。受信アンテナ素子に接続された周波数ダウンコンバータ、デジタル信号を生成するように構成された、周波数ダウンコンバータに接続されたアナログ - デジタル変換器、そして、複数の信号を乗算することによってビームフォーミング信号を決定するように構成された、アナログデジタル変換器に接続されたビームフォーミング装置、ビームフォーミング信号は、少なくとも2つのデジタル信号を合計することによって決定される和ビームフォーミング信号と積ビームフォーミング信号とを含む。積ビームフォーミング信号は、少なくとも2つのデジタル信号を乗算することによって決定され、積ビームフォーミング信号はグレイティング・ローブ抑制信号である。グレイティング・ローブ抑制信号は、和ビームフォーミング信号と乗算されたときに、和ビームフォーミング信号のグレイティング・ローブを抑制する。受信アンテナは、上述の方法と同様の対応する利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本願発明をさらに詳細に説明する。
【
図4】
図4は、本願発明による受信機構造の一実施形態を示す概略ブロック図である。
【
図8】
図8は、本願発明による方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明はレーダの受信機部分に焦点を合わせており、したがって、送信機部分は簡単に参照されるだけである。送信機部分は、当業者に周知の共通の構造を有するからである。受信機部分は、アナログおよびデジタルの両方のビームフォーミングを有する上述のハイブリッド受信機、またはデジタル受信機などの異なる原理に従って設計することができる。以下の説明では、
図4に示す設計のデジタル受信機が使用されると仮定する。
【0022】
図4は、1つまたは複数の送信アンテナ素子を含む送信アンテナ101と受信装置102とを備えるFMCWレーダなどの例示的なレーダ装置の一部100の実施形態を示す。FMCWレーダは、サンプリング周波数、ひいてはデータ量を比較的低く抑えることができるという点で他のレーダタイプと比較して利点を有し、これは各チャネルにおける信号処理を容易にする。受信装置102は、デジタルビームフォーミングまたはステアリングを実行し、受信アンテナ103を備える。ここでは、一列に配置されたいくつかの受信アンテナ素子104、105、106、107、108のアレイによって例示される。より具体的には、この例では、アンテナアレイは5つの受信アンテナ素子104-108を含む。中央受信アンテナ素子106と、その中央受信アンテナ素子106の両側の隣接受信アンテナ素子105、107との間の第1の距離は、d
1である。そして、中央受信アンテナ素子106と受信アンテナ103のそれぞれの端部における受信アンテナ素子104、108との間の第2の距離はd
2である。これらは、
図4に示される。したがって、受信アンテナ103の全幅は2d
2となる。受信装置102は、各受信アンテナ素子104-108に対する受信チャネルを備える。ここで、各受信チャネルは、受信アンテナ素子104-108と接続された増幅器109と、周波数ダウンコンバータ、ここでは増幅器109と接続されたミキサ110と、ミキサ110と接続されたアナログデジタル変換器111と、アナログ/デジタル(A/D)変換器111に接続された整列要素112と、および高速フーリエ変換(FFT)ユニット113とを備える。請求項の記載における規定のために、そして全体的な理解のために、増幅器109は、受信アンテナ素子104-108に含まれると見なすことができ、また、当業者によって理解されるように他の組み合わせも可能であることに留意する。同様に、機能全体に必要な他の一般的に使用される回路構成要素も、たとえ、それらが図面に明示的に示されていないか、または説明において言及されていなくても、もちろん含まれる。本願発明の説明に関連する構成要素のみが開示されている。受信装置102はさらに、すべてのFFTユニット113に接続されてそれらの出力FFT信号を受信するビームフォーミングユニット114を含む。ビームフォーミングユニット114は、以下に説明されるように、FFT信号の合計および乗算を組み合わせることによって所望のビームを生成する。当業者には容易に理解されるように、受信装置102は、ビームフォーミングユニット114の出力に接続されたさらなる信号処理装置を含むことができる。しかし、そのようなさらなる信号処理装置は、基本的な発明概念の一部を形成しないので、それはこの説明から省略されている。
【0023】
その最も単純化された構成では、受信装置は、受信アンテナ素子、ミキサ、アナログ - デジタル変換器、およびビームフォーミングユニットを備えると見なすことができることに留意する。受信機デバイス102が、各受信チャネルに1つまたは複数のフィルタユニットをさらに備えることができることが当業者によって理解されることにも留意する。さらに、周波数下方変換は、本明細書に例示されているように、1つのステップではなく、いくつかのステップで行うことができる。
【0024】
一般にFMCWレーダ、特に受信装置102は、以下のように動作する。送信装置101はレーダ信号を送信し、その周波数は2つの部分、すなわち第1の部分とそれに続く第2の部分とを有する周波数ランプをたどる。最初の部分では、周波数は低い方の開始周波数から高い方の終了周波数へ、またはその逆に上昇する。そして第2部分の間、出力信号の周波数は開始周波数に戻される。第1部分と第2部分の持続時間は、等しくてもよいが、通常、リセット部分とも呼ばれる第2部分の持続時間はかなり短い。この部分の組み合わせは連続的に繰り返される。連続的な増加/減少、不連続、例えば、ステップ状の増加/減少など、使用されるランプの形状は数多くある。送信されたレーダ信号x
tx(t)は、ターゲットと呼ばれる遠隔の物体に対して反射される。反射信号x
rx(t)は、受信装置102の受信アンテナ103で受信される。典型的には、反射信号は、受信アンテナ素子104-108の法線方向に対して角度θで受信される。受信アンテナ素子104-108は受信信号x
n(t)を出力し、ここで、nは受信信号がどの受信アンテナ素子104-108から来るかを示す。これは、
図8のステップ81に示される。当業者によって理解されるように、反射物体と受信アンテナ素子104-108との間の距離の差のために、周波数そして位相は、受信信号x
n(t)ごとにわずかに異なり、一意である。受信信号x
n(t)は、ミキサ110の手段によって周波数ダウンコンバートされる。ステップ82において、A/D変換器111によってデジタル信号x’
n(t)にアナログ - デジタル変換される。ステップ83において、デジタル信号は整列素子112によって整列され、そして最後にFFTユニット113によって周波数領域に変換される。位置合わせは、異なる受信アンテナ素子104-108における反射信号の到着時間の差によって行われる。しかしながら、この実施形態では、FMCWレーダでは、時間差は周波数差と一致し、したがって、位置合わせは周波数シフトによって行われることに留意する。その結果、受信アンテナ素子104-108から発生するすべての信号は、選択された入射角θに対する、それらの位相および周波数に関して整列される。実際には、これは、この実施形態では、受信信号と位置合わせ信号とを乗算することによって行われるので、位置合わせ要素112はミキサ記号で示されている。しかし、他の実施形態では、および他のレーダタイプの場合、位相シフトなどによって位置合わせを実行することができる。位置合わせ後、デジタル信号をy
n(t,θ
0)と表す。ここで、θ
0はビームの所望の中心角である。FFT部113から出力されるとき、デジタル信号はY
n(f,θ
0)と表される。ビームフォーミングは、以下のように、FFT信号Y
n(f,θ
0)によって、すなわち周波数領域のデジタル信号によって実行される。当業者によって理解されるように、任意の周波数変換が使用され得るが、FFTは、その計算の比較的複雑さが低いために広く使用されていることに留意する。さらに、ビームフォーミング信号を生成するための以下の計算は、デジタル信号を周波数変換せずに、すなわち時間領域で行うことができるが、現在のところそれはあまり望ましくない。ことに留意する。
【0025】
AESAのアンテナエレメント間の間隔は、周波数とそれがサポートするステアリングの量から決められる。好ましくは、キャリアの半波長未満であるべきである。そうでなければ、マイクロ波の反復的な振る舞いのためにグレイティング・ローブが生成される。この実施形態では、上述のように、受信アンテナ103は5つの受信アンテナ素子104-108を含むと仮定する。従来技術と異なり、ASEAを設計する従来の方法とは対照的に、この実施形態では、第1の距離d1=1.5λ、および第2の距離d2=4.5λであり、ここで、λはキャリアの波長である。これは、それぞれの端部受信アンテナ素子104、108と、そのそれぞれに隣接する受信アンテナ素子105、107との間の距離が、d2-d1=3λであることを意味する。隣接する受信アンテナ素子104-108の間のそのような大きな距離、すなわち間隔によって、結果として得られるFFT信号Yn(f,θ0)のビームは、通常、メインローブと、メインローブの近くに発生している、メインローブと同程度の大きさであっても、相当な大きさのグレイティング・ローブを有する。ビームフォーミングのための一般的な方法のいずれかを使用する場合、グレイティング・ローブは、FFT信号Yn(f,θ0)が、従来技術で十分に示されているように、さらなる信号処理に非常に有用であろう程度に抑制されない。同じサイズの従来の受信アンテナは、間隔をλ/2以下に保つために、5個の代わりに少なくとも約16個の受信アンテナ素子を有する。
【0026】
しかしながら、本願実施形態によれば、この問題は、デジタル信号を加算することと乗算することとの組み合わせ、より詳細には、周波数変換されたデジタル信号Y
n(f,θ
0)によって解決される。
図4の左から右へ、FFT信号はY
1(f,θ
0)からY
5(f,θ
0)で示される。言い換えれば、受信アンテナ103の左端にある端部受信アンテナ素子104からの受信信号に基づいて決定されたFFT信号は、Y
1(f,θ
0)と表される。その右側に隣接する受信アンテナ素子105のFFT信号は、Y
2(f,θ
0)と表される。以下同様に、右端の受信アンテナ素子108のFFT信号にY
5(f,θ
0)を付す。上述のように、FFT信号は周波数および位相に関して整列され、整列は時間領域で行われた。代わりにFFT信号にアラインメントを実行することは可能である。しかし、計算負荷が高いため、現時点ではあまり好ましくない。さらに、そのような整列は、受信信号をダウンコンバートする前に既に実行することが可能である。すなわち、アラインメント素子を構成する実時間遅延回路によって、RF状態にある。しかしながら、そのような構成にはいくつかの欠点がある。
【0027】
一般的に表現すると、ビームフォーミング信号の決定は以下のステップを含む。ステップ84において、少なくとも2つのデジタル信号Yn(f,θ0)のうちの少なくとも2つを合計することによって、少なくとも1つの和ビームフォーミング信号が決定される。さらに、ステップ85において、少なくとも2つのデジタル信号Yn(f,θ0)のうちの少なくとも2つを乗算することによって、少なくとも1つの積ビームフォーミング信号が決定される。これは、適切であれば、和ビームフォーミング信号を互いに乗算することによって、1つまたは複数の追加の積ビームフォーミング信号を決定することができることを含む。最後に、ビームフォーミング信号は、1つ以上の和ビームフォーミング信号を1つ以上の積ビームフォーミング信号と乗算することによって決定される。これは、ステップ86に示される。
【0028】
反射ターゲットが動いていない、すなわち、ドップラー周波数偏移がなく、かつ有意でない雑音レベルを伴うシミュレーションが行われた。結果として得られるFFT信号は、以下に説明されるように合計され乗算され、
図5-7に示されるように中間および最終ビームパターンをレンダリングする。ここで、度数で表した反射角θはx軸で表し、dBで表した抑制はy軸で表す。
【0029】
第1の和ビームフォーミング信号S
1は、端部受信アンテナ素子104、108、108のFFT信号と、センタ受信アンテナ素子106との合計として計算された。すなわち、S
1(f,θ
0)=Y
1(f,θ
0)+Y
3(f,θ
0)+Y
5(f,θ
0)である。
図5を参照する。第1の和ビームフォーミング信号S
1は有意なグレイティング・ローブを有する。第2の和ビームフォーミング信号S
2は、受信アンテナ103の中央にある3つの受信アンテナ素子105、106、107のFFT信号の合計として計算された。すなわち、S
2(f,θ
0)=Y
2(f,θ
0)+Y
3(f,θ
0)+Y
4(f,θ
0)である。
図5を参照すると、第2の和ビームフォーミング信号S
2も同様に有意なグレイティング・ローブを有する。さらに、第1および第2の和ビームフォーミング信号を互いに乗算することによって、第1の積ビームフォーミング信号P
1(f,θ
0)を計算した。すなわち、P
1=S
1*S
2であり、狭いメインローブを有し、わずかに、ないし、著しく抑制されたグレイティング・ローブを有するビームを生成する。第2の積ビームフォーミング信号P
2は、端部受信アンテナ素子104、108のFFT信号を乗算することによって計算される、すなわち、P
2(f,θ
0)=Y
1(f,θ
0)*Y
5(f,θ
0)である(
図6参照)。第2の積ビームフォーミング信号P
2によって生成されたビームは、広いメインローブと著しく抑制されたグレイティング・ローブを有する。合計および第2の積ビームフォーミング信号を乗算することによって、第3の積ビームフォーミング信号P
3=P
1×P
2が生成される(
図7参照)。第3の積信号は結果として得られるビームフォーミング信号であり、これは一般にS
tot(f,θ
0)と表される。それはさらなる信号処理のためにビームフォーミングユニット114から出力される。そのさらなる処理は、それ自体としては、当業者に公知であり、したがって本明細書ではこれ以上説明しない。
図7に示すように、第3の積信号P
3に対応するビームパターンは、
図7に図示されるように、狭いメインローブと著しく抑制されたグレイティング・ローブを有する。より一般的に表現すると、少なくとも1つの和ビームフォーミング信号は、和ビームフォーミング信号ごとに、少なくとも2つのデジタル信号を合計することによって決定される。そして、少なくとも1つの積ビームフォーミング信号は、各製品ビームフォーミング信号に対して、少なくとも2つのデジタル信号の乗算によって決定される。最後に、ビームフォーミング信号、すなわち結果として生じる信号は、少なくとも1つの和ビームフォーミング信号を少なくとも1つの積ビームフォーミング信号と乗算することによって生成される。したがって、最も単純な場合では、1つの和ビームフォーミング信号が1つの積ビームフォーミング信号と乗算され、一方、上記の例では、2つの和ビームフォーミング信号が使用された。追加のビームフォーミング信号を提供するために、より多くの合計および積を決定することができ、それらはすべて最終的に一緒に乗算されてビームフォーミング信号を生成する。さらなる例として、全てのFFT信号を互いに乗算することができるが、それは計算の不必要な負担を引き起こす。
【0030】
上記の例に対する代替案として、5つの受信アンテナ素子104-108の同じ例に対して、以下の計算を行うことができる。第1の和ビームフォーミング信号はS
1=Y
1+Y
2+Y
3+Y
4+Y
5として決定され、第1の積ビームフォーミング信号はP
1=Y
1*Y
1として決定され、ビームフォーミング信号はS
tot=S
1*P
1として決定される。信号についての数式を導入すると、計算は以下のように説明することができる。例示的なFMCWレーダの場合、送信信号は、x
t(t)で、
【数1】
として表すことができる。ここで、f
1tは差周波数を表す。FMCWレーダの周波数変調の基本的な例では、周波数は掃引中に直線的に増加し、その後開始周波数に戻る。これは、f
1=BW/τで表すことができる。ここで、τは掃引時間である。そして、受信アンテナ素子信号は、
【数2】
である。ここで、R
0は、反射物体から受信アンテナにおける基準点、例えば受信アンテナ103の中心点または端点までの伝搬距離である。Rnはそれぞれの受信アンテナ素子104-108までの追加の距離であり、これは、R
0=d
nsinθのように、入射角θに依存する。ここで、d
nは、基準点とそれぞれの受信アンテナ素子104-108との間の横方向の距離である。A/D変換後のデジタル信号は、
【数3】
である。次のアライメントは、
【数4】
のように表すことができる。
【数5】
を考えると、
【数6】
となる。最終的なFFT信号は次のように表される。
【数7】
FFT信号の式では、項
【数8】
は、受信アンテナ素子104-108の位相差を規定する。そして、項d
n(sinθ-sinθ
0)/λ
BWは、受信アンテナ素子104-108に対する周波数差を規定する。
【0031】
和ビームフォーミング信号および積ビームフォーミング信号は、
【数9】
【数10】
のように表すことができる。そして最終ビームフォーミング信号S
totは、
【数11】
のようになる。あるいは、もっと一般的には、
【数12】
である。
【0032】
反射角θ≠θ0に対して、θが変化するとき、和信号Sn(f,θ0)の振幅は急速に変化するが、しかし、周期性が原因で大きな振幅が繰り返され、大きなグレイティング・ローブが発生することに留意する。一方、積信号Pn(f,θ0)の振幅は、θが変化するとゆっくりと変化し、高い振幅はそれ自体繰り返さない。
【0033】
上記の例から明らかなように、5つの受信アンテナ素子104ー108だけで非常に狭いビームを形成することが可能である。ただし、この方法はうまく機能するためのいくつかの要件に基づいている。送信/反射信号の相対帯域幅BWrel=BW/f0は、大きくなければならない。相対帯域幅が大きい場合、ターゲットまでの距離の違いによるアンテナ上の周波数差を使用して、グレイティング・ローブのない広いビームを形成できる。距離分解能がアンテナのサイズに匹敵する場合、これは可能である。例として、次の図が使用されている。搬送波周波数f0=60GHz、受信アンテナの幅D=9λ0=45mm、絶対帯域幅BWabs=6GHz、レンジ分解能r≒c0/BWabs=50mm。しかしながら、この方法は、当然のことながら、マイクロ波帯域内の任意の搬送波周波数に適用可能である。
【0034】
その結果、広い帯域幅から与えられる距離分解能とビームフォーミングとを組み合わせることによって、本願方法によれば、わずかな受信アンテナ素子で狭いビームを形成することができる。それは、部分的には、受信アンテナ素子を、通常最大数波長までの大きな間隔で配置できるからである。これにより、コスト、消費電力、および処理するデータ量の両方を削減できる。当業者によって理解されるように、この方法は、例えば、より広い受信アンテナを設計すること、または二次元アンテナを設計することが望まれる場合、上に例示されたものよりもかなり多くの受信アンテナ素子を有する受信アンテナにも適用可能である。しかしながら、これらの場合においても、受信アンテナ素子は、半波長よりも大きい間隔で、まばらに配置することができる。
【0035】
図面および前述の説明において、本願発明を詳細に図示および説明してきたが、そのような例示および説明は、説明的または例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本願発明は開示された実施形態に限定されない。
【0036】
例えば、この方法は、それらが少なくとも2つである限り、受信アンテナ素子の数には依存しない。上記で説明したように、この方法の効果は、レーダンテナの物理的サイズに関係なく、従来のアンテナよりも少ない数の受信アンテナ素子を使用することができる、すなわち、受信アンテナ素子間により大きな間隔を適用することができる。
【0037】
開示された実施形態に対する他の変形は、請求項の発明を実施する際に、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の検討から当業者によって理解され達成されることができる。請求項において、単語「備える、含む(comprising)」は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は複数を排除するものではない。単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に記載のいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項中の如何なる参照符号も範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
[構成1]
いくつかの受信アンテナ素子を含むアンテナアレイを備える、能動的電子的に操縦可能な受信アンテナのためのビームフォーミング方法であって、
前記受信アンテナ素子で反射レーダ信号を受信し、前記受信アンテナ素子から受信信号を取得するステップと、 前記受信信号を受信処理するステップであって、該受信処理は周波数ダウンコンバート、およびアナログデジタル変換を含み、それによっていくつかのデジタル信号を生成する、ステップと、
前記受信信号または前記デジタル信号を、所定の入射角に整列させるステップと、
和ビームフォーミング信号を含むいくつかの信号を乗算することを含むビームフォーミング信号を決定するステップであって、該和ビームフォーミング信号は、少なくとも2つのデジタル信号と積ビームフォーミング信号とを合計することによって決定され、少なくとも2つの前記デジタル信号を乗算することによって決定され、ここで、該積ビームフォーミング信号はグレイティング・ローブ抑制信号であり、該グレイティング・ローブ抑制信号は、前記和ビームフォーミング信号と乗算されたときに、前記和ビームフォーミング信号のグレイティング・ローブを抑制するものである、ステップと、
を含む方法。
[構成2]
少なくとも前記アンテナアレイの両端における受信アンテナ素子からのデジタル信号を乗算することによって前記積ビームフォーミング信号を決定するステップを含む、構成1に記載のビームフォーミング方法。
[構成3]
前記受信アンテナ素子を、λ/2を超える相互距離に配置するステップを含み、λは、前記反射レーダ信号の搬送波の波長である、構成1または2に記載のビームフォーミング方法。
[構成4]
前記受信処理するステップは、前記ビームフォーミング信号を決定する前にデジタル信号を周波数領域に変換するステップをさらに含む、構成1ないし3のいずれか1つに記載のビームフォーミング方法。
[構成5]
前記レーダ信号の前記帯域幅によって与えられる前記距離分解能は、前記受信アンテナの幅と同程度かそれよりも小さい、構成1ないし4のいずれか1つに記載のビームフォーミング方法。
[構成6]
前記和ビームフォーミング信号に対応するビームのメインローブの幅は、前記積ビームフォーミング信号に対応するビームのメインローブの幅よりも狭い、構成1ないし5のいずれか1つに記載のビームフォーミング方法。
[構成7]
少なくとも2つの隣接する受信アンテナ素子を、λを超える相互距離に配置するステップであって、λは前記反射レーダ信号の搬送波の波長である、ステップを含む、構成1ないし6のいずれか1つに記載のビームフォーミング方法。
[構成8]
前記位置合わせするステップは、前記対応する受信信号の到着時間に関して前記デジタル信号を位置合わせすることによって実行される、構成1ないし7の1項に記載のビームフォーミング方法。
[構成9]
受信信号、周波数ダウンコンバータ(110)を生成するように構成されたいくつかの受信アンテナ素子(104-108)を含むアンテナアレイを有し、
前記受信アンテナ素子、アナログ-デジタル変換器(111)に接続されており、前
記周波数ダウンコンバータに接続されており、
デジタル信号、アライメント要素(112)を生成するように構成されており、
前記アナログ-デジタル変換器または前記受信アンテナ素子、およびビームフォーミング装置(114)と接続されており、
前記アナログ-デジタル変換器に接続されており、
少なくとも2つの前記デジタル信号を合計することによって決定される和ビームフォーミング信号と、少なくとも2つのデジタル信号を乗算することによって決定される積ビームフォーミング信号とを含むいくつかの信号を乗算することによってビームフォーミング信号を決定するように構成され、
ここで、前記積ビームフォーミング信号は、前記和ビームフォーミング信号と乗算されたときに前記和ビームフォーミング信号のグレイティング・ローブを抑制するグレイティング・ローブ抑制信号である、
アクティブ電子制御受信アンテナ(103)。
[構成10]
構成9に記載の受信アンテナ(103)を備えるレーダ装置。