IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北海製罐株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-缶体 図1
  • 特許-缶体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】缶体
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019199889
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070523
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤川 誠
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-212857(JP,A)
【文献】特開2004-359347(JP,A)
【文献】特開2005-075354(JP,A)
【文献】特開平04-087939(JP,A)
【文献】特開2016-050041(JP,A)
【文献】実開昭57-202909(JP,U)
【文献】特開2019-119515(JP,A)
【文献】意匠登録第1567430(JP,S)
【文献】特開平05-212174(JP,A)
【文献】特開2001-105796(JP,A)
【文献】実開昭49-105224(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部を備える缶体において、
前記胴部の外面に、夫々、前記胴部の高さ方向に延びて周方向に所定間隔を存して配置させた複数の直線状の縦仮想線と、前記胴部の周方向に延びて高さ方向に所定間隔を存して配置させた複数の環状の横仮想線とにより形成される複数のマトリクス状の仮想升目の内側に選択的に形成されている多数のドット状凹部によって構成される文字表現による表示が設けられており、前記仮想升目は、前記胴部の高さ方向の長さ寸法が1mm~5mmであり、前記胴部の周方向の長さ寸法が1mm~5mmであることを特徴とする缶体。
【請求項2】
前記胴部の外面における前記表示は、前記凹部の形状、大小、深浅、粗密を組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1記載の缶体。
【請求項3】
前記胴部の外面における前記表示は、多数の前記凹部により包囲された未加工面を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の缶体。
【請求項4】
前記胴部の外面における前記表示は、多数の前記凹部が、該凹部よりも浅い他の凹部により包囲されていることを特徴とする請求項1又は2記載の缶体。
【請求項5】
前記胴部の外面における前記表示は、多数の前記凹部により形成されており、1つの前記凹部の形状と自己相似形になっていることを特徴とする請求項1又は2記載の缶体。
【請求項6】
前記胴部表面位置から前記凹部の最深部までの寸法を加工深さ寸法としたとき、前記凹部の加工深さ寸法は、0.2mm~2.0mmであることを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の缶体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料や食品等を収容する包装容器として用いられる缶体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の円筒状胴部の外面全周に、同一形状からなる多数の凹部により模様を形成した缶体が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
この缶体において、胴部の外面に形成されている比較的大きな凹部により構成された模様は、胴部の外面に立体的な装飾的効果が得られ、缶体の美観を向上させている。更に、胴部の外面の一部に凹部を形成しない面を残して、装飾効果に変化を持たせることも行われている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0004】
そして、これらの缶体は、胴部の外面に同一形状の多数の凹部を形成するだけでよいので、その製造も容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-26286号公報
【文献】特開2016-50041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、胴部の外面全周に設けた、比較的大きな同一形状を有する多数の凹部により構成される繰り返し模様からなる表現は変化に乏しく、デザイン性の向上や、文字等、一部情報を含むような表現への拡大は望めない。また、胴部の外面の一部に凹部を形成しない領域を残して表現しようとしても、その面との境界部の輪郭は、境界稜線で区切られ、凹部の形状や大きさに制限されるため、缶体に、例えば漢字やイラストを含むような表現や、文字列等の情報を含む表現を容易に施すことが困難であった。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、製造容易であることを維持しつつ、胴部の缶外面に、同一または複数の形状を有する、多数の比較的小さな凹部から構成される、模様、漢字等を含む文字列、情報等を胴部に形成することにより、デザイン性の向上のみならず、加工表現の領域拡大や、自由度を向上させた缶体を容易に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
円筒状の胴部を備える缶体において、前記胴部の外面に、夫々、前記胴部の高さ方向に延びて周方向に所定間隔を存して配置させた複数の直線状の縦仮想線と、前記胴部の周方向に延びて高さ方向に所定間隔を存して配置させた複数の環状の横仮想線とにより形成される複数のマトリクス状の仮想升目の内側に選択的に形成されている多数のドット状凹部によって構成される文字表現による表示が設けられており、前記仮想升目は、前記胴部の高さ方向の長さ寸法が1mm~5mmであり、前記胴部の周方向の長さ寸法が1mm~5mmであることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、従来に比べ、より多数の細かい凹部がドット状に設けられることにより、漢字などを含む文字表現による表示が形成された缶体を容易に得ることができる。
【0010】
また、本発明において、前記胴部の外面における前記表示は、前記凹部の形状、大小、深浅、粗密の何れかを組み合わせて構成されることを特徴とする。
【0011】
これによれば、従来のような同一形状による多数の凹部を用いた表現に比べて、その大きさや、様々な形状を有する凹部、及び各凹部の粗密(密集度合い)をドットパターンとして与えることで、変化に富んだ表現も缶体に付加することができ、デザイン性の向上を得ることができる。
【0012】
また、本発明において、前記胴部の外面における前記表示は、多数の前記凹部により包囲された未加工面を含むことを特徴とする。
【0013】
これによれば、従来技術による加工稜線による未加工部との加工境界ではなく、多数の細かな凹部により、文字形状の輪郭部分を形成し、加工領域と未加工領域をよりソフトな境界とすることで、平滑な未加工面を文字やイラストとする表示も行える。
【0014】
また、本発明において、前記胴部の外面における前記表示は、多数の前記凹部が、該凹部よりも浅い他の凹部により包囲されていることを特徴とする。
【0015】
例えば、具体的には、多数の凹部による文字等の表示を、更に該凹部よりも浅いディンプル面等の他の凹部で包囲することが挙げられる。これにより、文字表示の輪郭を装飾的に際立たせて視認性、デザイン性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明において、前記胴部の外面における前記表示は、多数の前記凹部により形成されており、1つの前記凹部の形状と自己相似形になっていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、複数の凹部の集合により形成される全体表示形状が、1つの凹部形状の自己相似形であるので、文字を含む、より美粧性の高い表示を形成することができる。
【0018】
なお、前記胴部表面位置から前記凹部の最深部までの寸法を加工深さ寸法としたとき、前記凹部の加工深さ寸法は、0.2mm~2.0mmであることが好ましい。凹部の加工深さ寸法が0.2mmより小さいと、視認性が低く表示としての明確性が得られないおそれがある。凹部の加工深さ寸法が2.0mmより大きいと、胴部における凹部の肉厚が極度に薄くなるおそれがある。従って、凹部の加工深さ寸法を0.2mm~2.0mmとすることにより、胴部の強度を低下させることなく高い視認性を有する表示を形成することができる。
【0019】
ところで、胴部に凹部を形成するときには、胴部の内面側に内型を当接し、胴部の外側から外型を圧接させる。内型は凹部を備え、外型は凸部を備える。そして、内型の凹部に胴部を介して外型の凸部が凹入することで、胴部に凹部が形成される。ここで、本発明において、前記胴部の外面における前記表示を構成する各凹部は、夫々、胴部の高さ方向に延びて周方向に所定間隔を存して配置させた複数の直線状の縦仮想線と、胴部の周方向に延びて高さ方向に所定間隔を存して配置させた複数の環状の横仮想線とにより形成される仮想のマトリックスの升目の中の何れかの位置に形成されていることを特徴とする。
【0020】
これによれば、例えば、内型の前記仮想の升目に対応する位置の全てに、一定の大きさの凹部を予め配列形成しておき、胴部に表示させる文字に対応する位置に、ドットの構成単位として、形状、粗密、大小、長短等を変えた凸部を設けた外型を用いることで、漢字のみならず、ドットによる文字等を胴部に容易に形成することができる。しかも、前記升目の位置に対応する位置の全てに、一定の大きさの凹部を予め配列形成した内型を用いたまま、外型を変更(凸部の配置や形状等を)するだけで、別の文字列情報等の新たな表示を外型の変更のみにより胴部に形成することが可能となる。
【0021】
更に、前記仮想升目は、前記胴部の高さ方向の長さ寸法が1mm~5mmであり、前記胴部の周方向の長さ寸法が1mm~5mmとされる。
【0022】
表示を構成する凹部は仮想升目の領域内に形成されるが、仮想升目が極度に小さい場合は、凹部の外径に影響して十分な深さの凹部が形成できず、鮮明な表示が形成できないおそれがある。また、仮想升目が過剰に大きいと、高精細な表示が形成できないおそれがある。本発明によれば、胴部の高さ方向の長さ寸法が1mm~5mmとし、胴部の周方向の長さ寸法が1mm~5mmとして仮想升目を設定することにより、当該仮想升目内に形成する凹部から、鮮明で高精細な表示を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】缶体を示す説明的側面図。
図2】胴部の文字表現の例を示す説明的展開図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面に基づき説明する。本実施形態の缶体1は、図1に示すように、円筒状の胴部2と、胴部2の上端に巻き締められた天蓋3と胴部2の下端に巻き締められた底蓋4とで構成される。
【0025】
胴部2の外面には、多数のドット状凹部5によって構成される文字表現による表示が設けられている。
【0026】
凹部5は、夫々、説明の便宜上図示した仮想升目6の内側に選択的に形成されている。仮想升目6は、胴部2の高さ方向に延びて周方向に等間隔で配置した複数の直線状の縦仮想線6aと、胴部2の周方向に延びて高さ方向に等間隔で配置した複数の環状の横仮想線6bとにより形成される。
【0027】
図2は、多数の凹部5によって胴部2に文字表現による表示を形成したものを、便宜上、缶胴周方向に展開した状態で示している。図2Aは漢字による表示であり、図2Bは英字による表示である。これらの文字表現による表示は、仮想升目6の該当箇所に凹部5を形成するだけで設けることができる。
【0030】
そして、表示として採用できる凹部5の形状は、図1、図2に示すものにおいては四角形を採用しているが、本発明の表示を形成する凹部5の形状は、これに限らず、仮想升目6に内接する円形状の凹部5、仮想升目6に内接する十字形状の凹部5、仮想升目6に内接する五角形状の凹部5、仮想升目6に一部を接する三角形状の凹部5でもよい。
【0033】
仮想升目6は、凹部5の配列設計等の際の位置決めのために有効である。仮想升目6は、胴部2の高さ方向の長さ寸法と胴部2の周方向の長さ寸法とが同じ寸法であってもよいが、胴部2の高さ方向の長さ寸法と胴部2の周方向の長さ寸法との比率を適宜設定することができる。これにより、表示する文字表現を多様化することができる。
【0034】
また、仮想升目6の大きさとして、胴部2の高さ方向の長さ寸法aを1mm~5mmとし、胴部2の周方向の長さ寸法bを1mm~5mmとすることで、比較的小さな凹部5を多数用いて精緻な表示を形成することができる。
【0035】
このとき、胴部2の高さ方向の長さ寸法a(H)と胴部2の周方向の長さ寸法b(W)との比率(H:W)と定義して、1:1~5:5の何れかの比率を設定することができる。
【0036】
また、胴部2の表面位置から凹部5の最深部までの寸法を加工深さ寸法としたとき、凹部5の加工深さ寸法は、0.2mm~2.0mmとしている。これにより、凹部5によって胴部2の強度が低下することもなく、表示の高い視認性が得られる。
【0039】
また、図示しないが、胴部の外面に、メタリック感を有する色調の装飾が施された印刷プラスチックフィルムを被覆してもよい。これによれば、凹部によって光の反射が増加するので、胴部全面の美観を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…缶体、2…胴部、5…凹部、6…仮想升目、6a…縦仮想線、6b…横仮想線、7…未加工面。
図1
図2