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特許75028524-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/02 20060101AFI20240612BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20240612BHJP
   C12P 13/00 20060101ALI20240612BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240612BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240612BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240612BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240612BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C12N9/02 ZNA
C12N15/53
C12P13/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019203523
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021073914
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 鏡士朗
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】Accession No. A0A4D7QEF0, Definition: 4-hydroxybenzoate 3-monooxygenase,Database: UniProt/GeneSeq [online],2019年07月31日,<URL: https://www.uniprot.org/ uniprot/A0A4D7QEF0>, [retrieved on 2020.12.18], UniProtKB - A0A4D7QEF0 (A0A4D7QEF0_9PROT)
【文献】Accession No. A0A2S0NEB7, Definition: 4-hydroxybenzoate 3-monooxygenase,Database: UniProt/GeneSeq [online],2018年07月18日,<URL: https://www.uniprot.org/ uniprot/A0A2S0NEB7>, [retrieved on 2020.12.18], UniProtKB - A0A2S0NEB7 (A0A2S0NEB7_9PROT)
【文献】The Journal of Biological Chemistry,1987年,Vol.262, No.13,pp.6060-6068
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/02
C12P 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2、4、6、8、10若しくは12で示されるアミノ酸配列、又はこれらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基がロイシンであるアミノ酸配列からなる、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2、4、6、8、10若しくは12で示されるアミノ酸配列、又はこれらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有する変異ポリペプチドの製造方法。
【請求項3】
配列番号2、4、6、8、10若しくは12で示されるアミノ酸配列、又はこれらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ安息香酸水酸化活性の向上方法。
【請求項4】
アミノ酸残基の置換がバリンからロイシンへの置換である、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5記載のポリヌクレオチドを含むベクター又はDNA断片。
【請求項7】
請求項6記載のベクター又はDNA断片を含有する形質転換細胞。
【請求項8】
大腸菌又はコリネバクテリム属菌である、請求項7記載の形質転換細胞。
【請求項9】
4-アミノ安息香酸類を供給可能な微生物である、請求項7又は8記載の形質転換細胞。
【請求項10】
4-アミノ安息香酸類の存在下、請求項7~9のいずれか1項記載の形質転換細胞を培養する工程、又は請求項9記載の形質転換細胞を培養する工程を含む、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【請求項11】
4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を培地から回収する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類が、下記の一般式(1):
【化1】
〔式中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基、エチル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基、又はエチル基を示し、X及びXは水素原子又はヒドロキシ基であって少なくとも一方はヒドロキシ基を示す。〕
で示される4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸誘導体であり、
4-アミノ安息香酸類が、下記の一般式(2):
【化2】
〔式中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基、エチル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基、又はエチル基を示す。〕
で示される4-アミノ安息香酸誘導体である請求項10又は11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンズオキサゾール(PBO)は耐熱性や力学強度に優れたエンジニアリングプラスチックとして知られており、繊維材料及び半導体素子の絶縁膜等に利用される(非特許文献1)。
【0003】
ベンズオキサゾール骨格はo-アミノフェノール骨格とカルボン酸との縮合により生成される。そのため、これらの官能基を分子内に有する4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸(4,3-AHBA)類はPBOモノマーとして有用であると期待される。実際に、4,3-AHBAを用いたポリベンズオキサゾールの合成と物性評価が検討されている(非特許文献2)。
【0004】
近年、地球環境負荷軽減等に向けて再生可能資源を原料とした微生物発酵による化合物の製造方法が注目されている。例えば、4,3-AHBAと類似した構造を有する3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸(3,4-AHBA)の微生物による生産とポリマー化の検討が行われている(特許文献1)。
【0005】
4,3-AHBAの製造に関してはこれまで化学的にニトロ芳香族を還元し合成する方法等が知られている(特許文献2)。微生物法による4,3-AHBA発酵生産を可能にする方策としては、微生物内での生合成が可能な4-アミノ安息香酸(4-ABA)の3位を水酸化することが考えられるが、このような反応に関しては、一部の4-ヒドロキシ安息香酸水酸化酵素がわずかに活性を有することが報告されているのみであった(非特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5445453号公報
【文献】特許第3821350号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】村瀬浩貴,SENI GAKKAISHI(繊維と工業), Vol.66, No.6 (2010)
【文献】Lon J. Mathias et al., Macromolecules, Vol.18, No.4, pp.616-622 (1985)
【文献】Barrie Entsch et al., The Journal of Biological Chemistry, Vol.262, No.13, pp.6060-6068 (1987)
【文献】Domenico L. Gatti et al., Biochemistry, Vol.35, No.2, pp.567-578 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド及びその利用法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定のアミノ酸配列を有する4-ヒドロキシ安息香酸水酸化酵素の変異体が、優れた4-アミノ安息香酸水酸化活性を有し、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の製造に有用であることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の1)~9)に係るものである。
1)配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基がロイシンである、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド。
2)配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基がロイシンに置換された、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有する変異ポリペプチド。
3)配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有する変異ポリペプチドの製造方法。
4)配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ安息香酸水酸化活性の向上方法。
5)配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドを用いて4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を製造する場合において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の生産性向上方法。
6)1)又は2)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
7)6)のポリヌクレオチドを含むベクター又はDNA断片。
8)7)のベクター又はDNA断片を含有する形質転換細胞。
9)8)の形質転換細胞を培養する工程を含む、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドは優れた4-アミノ安息香酸水酸化活性を有することから、これを用いることにより、4-アミノ安息香酸類から効率よく4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,227:1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX Ver.12のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0013】
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列上の「相当する位置」は、目的配列と参照配列(例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列)とを、最大の相同性を与えるように整列(アラインメント)させることにより決定することができる。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のアラインメントは、公知のアルゴリズムを用いて実行することができ、その手順は当業者に公知である。例えば、アラインメントは、Clustal Wマルチプルアラインメントプログラム(Thompson,J.D.et al,1994,Nucleic Acids Res.22:4673-4680)をデフォルト設定で用いることにより、行うことができる。あるいは、Clustal Wの改訂版であるClustal W2やClustal omegaを使用することもできる。Clustal W、Clustal W2及びClustal omegaは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute:EBI[www.ebi.ac.uk/index.html])や、国立遺伝学研究所が運営する日本DNAデータバンク(DDBJ[www.ddbj.nig.ac.jp/searches-j.html])のウェブサイト上で利用することができる。上述のアラインメントにより参照配列の任意の位置にアラインされた目的配列の位置は、当該任意の位置に「相当する位置」とみなされる。
【0014】
当業者であれば、上記で得られたアミノ酸配列のアラインメントを、最適化するようにさらに微調整することができる。そのような最適アラインメントは、アミノ酸配列の類似性や挿入されるギャップの頻度等を考慮して決定するのが好ましい。ここでアミノ酸配列の類似性とは、2つのアミノ酸配列をアラインメントしたときにその両方の配列に同一又は類似のアミノ酸残基が存在する位置の数の全長アミノ酸残基数に対する割合(%)をいう。類似のアミノ酸残基とは、タンパク質を構成する20種のアミノ酸のうち、極性や電荷の点で互いに類似した性質を有しており、いわゆる保存的置換を生じるようなアミノ酸残基を意味する。そのような類似のアミノ酸残基からなるグループは当業者にはよく知られており、例えば、アルギニンとリシン又はグルタミン;グルタミン酸とアスパラギン酸又はグルタミン;セリンとトレオニン又はアラニン;グルタミンとアスパラギン又はアルギニン;ロイシンとイソロイシン等がそれぞれ挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、タンパク質を構成する20種のアミノ酸残基、アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン(Gln又はQ)、グルタミン酸(Glu又はE)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リシン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)及びバリン(Val又はV)を意味する。
【0016】
本明細書において、プロモーター等の制御領域と遺伝子の「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
【0017】
本明細書において、遺伝子に関する「上流」及び「下流」とは、該遺伝子の転写方向の上流及び下流をいう。例えば、「プロモーターの下流に配置された遺伝子」とは、DNAセンス鎖においてプロモーターの3’側に該遺伝子が存在することを意味し、遺伝子の上流とは、DNAセンス鎖における該遺伝子の5’側の領域を意味する。
【0018】
本明細書において、細胞の機能や性状、形質に対して使用する用語「本来」とは、当該機能や性状、形質が当該細胞に元から存在していることを表すために使用される。対照的に、用語「外来」とは、当該細胞に元から存在するのではなく、外部から導入された機能や性状、形質を表すために使用される。例えば、「外来」遺伝子又はポリヌクレオチドとは、細胞に外部から導入された遺伝子又はポリヌクレオチドである。外来遺伝子又はポリヌクレオチドは、それが導入された細胞と同種の生物由来であっても、異種の生物由来(すなわち異種遺伝子又はポリヌクレオチド)であってもよい。
【0019】
<4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド>
本発明の4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド(「本発明のポリペプチド」と称す)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基がロイシンであるポリペプチドである。
斯かるポリペプチドは、基準となるポリペプチド、すなわち配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基がロイシンに置換された、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有する変異ポリペプチドである。
【0020】
本発明において、「4-アミノ安息香酸水酸化活性」とは、4-アミノ安息香酸類の水酸化を触媒する活性、好ましくは4-アミノ安息香酸類の3位の水酸化を触媒する活性を意味する。
4-アミノ安息香酸水酸化活性は、後述する実施例に示すとおり、本発明のポリペプチドを産生する微生物を培養し、生成する4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸量をHPLC等により測定することによって決定することができる。
【0021】
斯かる本発明のポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することにより製造できる。
ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドは、本発明のポリペプチドの「親」ポリペプチドである。
「親」ポリペプチドは、そのアミノ酸残基に所定の変異がなされることにより、本発明のポリペプチドとなる基準ポリペプチドを指す。
【0022】
本発明において、配列番号2で示されるアミノ酸配列(NCBI Reference Sequence:WP_010920262.1)からなるポリペプチドであるHFM122は、4-ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼ(EC1.14.13.2)として知られている。4-ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼは、4-ヒドロキシ安息香酸の3位を水酸化してプロトカテク酸を生成する反応とその逆反応のいずれかまたは両方を促進する触媒活性を有する酵素であり、4-ヒドロキシ安息香酸類の水酸化を触媒する酵素(4-ヒドロキシ安息香酸水酸化酵素)の一種である。
斯かるHFM122は、本出願人により、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有することが見出されている(特願2018-171849)。
【0023】
配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドとしては、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも47%の同一性、具体的には、47%以上、より好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドが挙げられる。具体的には、例えば、HFM388(配列番号4:配列番号2とのアミノ酸配列同一性は62%、NCBI Reference Sequence:WP_010976283.1)、HFM339(配列番号6:配列番号2とのアミノ酸配列同一性は61%、NCBI Reference Sequence: WP_011157287.1)、HFM77(配列番号8:配列番号2とのアミノ酸配列同一性は51%、NCBI Reference Sequence: WP_011089160.1)、HFM737(配列番号10:配列番号2とのアミノ酸配列同一性は51%、NCBI Reference Sequence: WP_011519894.1)、HFMss0-1(配列番号12:配列番号2とのアミノ酸配列同一性は47%、NCBI Reference Sequence: WP_027494688.1)等が挙げられ、このうち、本発明のポリペプチドが有する4-アミノ安息香酸水酸化活性の点から、HFM737、HFMss0-1が好ましい。
好適な「親」ポリペプチドとしては、配列番号2で示されるアミノ酸配列の他、配列番号2で示されるアミノ酸配列に対して、90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドが挙げられる。また、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10若しくは配列番号12で示されるアミノ酸配列、又はこれらのそれぞれに対して90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドが挙げられる。
【0024】
該親ポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置に何れもバリン残基を有するものが好ましく、本発明のポリペプチドは当該47位又はこれに相当する位置のバリンをロイシンに置換したものがより好ましい。
【0025】
<本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド>
本発明において、親ポリペプチドのアミノ酸残基を変異させる手段としては、当技術分野で公知の各種変異導入技術を使用することができる。例えば、親ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(以下、親遺伝子ともいう)において、変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を、変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列に変異させることにより、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。
【0026】
親遺伝子への目的の変異の導入は、基本的には、当業者に周知の様々な部位特異的変異導入法を用いて行うことができる。部位特異的変異導入法は、例えば、インバースPCR法やアニーリング法などの任意の手法により行うことができる。市販の部位特異的変異導入用キット(例えば、Stratagene社のQuickChange II Site-Directed Mutagenesis Kitや、QuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit等)を使用することもできる。
【0027】
親遺伝子への部位特異的変異導入は、最も一般的には、導入すべきヌクレオチド変異を含む変異用プライマーを用いて行うことができる。該変異用プライマーは、親遺伝子における変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を含む領域にアニーリングし、かつその変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)に代えて変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)を有するヌクレオチド配列を含むように設計すればよい。変異前及び変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)は、当業者であれば通常の教科書等に基づいて適宜認識し選択することができる。あるいは、部位特異的変異導入は、導入すべきヌクレオチド変異を含む相補的な2つのプライマーを別々に用いて変異部位の上流側及び下流側をそれぞれ増幅したDNA断片を、SOE(splicing by overlap extension)-PCR(Gene,1989,77(1):p61-68)により1つに連結する方法を用いることもできる。
【0028】
親遺伝子を含む鋳型DNAは、上述した4-ヒドロキシ安息香酸水酸化酵素を産生する微生物から、常法によりゲノムDNAを抽出するか、又はRNAを抽出し逆転写によりcDNAを合成することによって、調製することができる。あるいは、親ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて、対応するヌクレオチド配列を化学合成して鋳型DNAとして用いてもよい。4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドとして既述したHFM122、HFM388、HFM339、HFM77、HFM737、HFMss0-1をコードする塩基配列を含むDNA配列を、それぞれ配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11に示した。
【0029】
変異用プライマーは、ホスホロアミダイト法(Nucleic Acids R4esearch,1989,17:7059-7071)等の周知のオリゴヌクレオチド合成法により作製することができる。そのようなプライマー合成は、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成装置(ABI社製など)を用いて実施することもできる。該変異用プライマーを含むプライマーセットを使用し、親遺伝子を鋳型DNAとして上記のような部位特異的変異導入を行うことにより、目的の変異を有する本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。
【0030】
当該本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、一本鎖又は2本鎖のDNA、cDNA、RNAもしくは他の人工核酸を含み得る。該DNA、cDNA及びRNAは、化学合成されていてもよい。また当該ポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレーム(ORF)に加えて、非翻訳領域(UTR)のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また当該ポリヌクレオチドは、本発明の変異ポリペプチド産生用の形質転換体の種にあわせて、コドン至適化されていてもよい。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database([www.kazusa.or.jp/codon/])から入手可能である。
【0031】
<ベクター又はDNA断片>
得られた本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはベクターに組み込むことができる。当該ポリヌクレオチドを含有するベクターは、発現ベクターである。また好ましくは、該ベクターは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主微生物に導入することができ、かつ宿主微生物内で該ポリヌクレオチドを発現することができる発現ベクターである。好ましくは、該ベクターは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む。該ベクターは、プラスミド等の染色体外で自立増殖及び複製可能なベクターであってもよく、又は染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
【0032】
具体的なベクターの例としては、例えば、pBluescript II SK(-)(Stratagene)、pUC18/19、pUC118/119等のpUC系ベクター(タカラバイオ)、pET系ベクター(タカラバイオ)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア)、pCold系ベクター(タカラバイオ)、pHY300PLK(タカラバイオ)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,1986,Plasmid 15(2):93-103)、pBR322(タカラバイオ)、pRS403(Stratagene)、pMW218/219(ニッポンジーン)、pRI909/910等のpRI系ベクター(タカラバイオ)、pBI系ベクター(クロンテック)、IN3系ベクター(インプランタイノベーションズ)、pPTR1/2(タカラバイオ)、pDJB2(D.J.Ballance et al.,Gene,36,321-331,1985)、pAB4-1(van Hartingsveldt W et al.,Mol Gen Genet,206,71-75,1987)、pLeu4(M.I.G.Roncero et al.,Gene,84,335-343,1989)、pPyr225(C.D.Skory et al.,Mol Genet Genomics,268,397-406,2002)、pFG1(Gruber,F.et al.,Curr Genet,18,447-451,1990)等が挙げられる。
【0033】
また、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、これを含むDNA断片として構築されていてもよい。該DNA断片としては、例えば、PCR増幅DNA断片及び制限酵素切断DNA断片が挙げられる。好ましくは、該DNA断片は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む発現カセットであり得る。
【0034】
上記ベクター又はDNA断片に含まれる制御領域は、該ベクター又はDNA断片が導入された宿主細胞内で本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させるための配列であり、例えばプロモーターやターミネーター等の発現調節領域、複製開始点等が挙げられる。該制御領域の種類は、ベクター又はDNA断片を導入する宿主微生物の種類に応じて適宜選択することができる。必要に応じて、該ベクター又はDNA断片はさらに、抗生物質耐性遺伝子、アミノ酸合成関連遺伝子等の選択マーカー(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコールなどの薬剤の耐性遺伝子)を有していてもよい。
上記ベクター又はDNA断片には、4-アミノ安息香酸類を生合成するために必要なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が含まれていてもよい。4-アミノ安息香酸類を生合成するために必要なポリペプチドとしては、例えば、4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸シンターゼ(4-amino-4-deoxychorismate synthase, pabAB)や4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸リアーゼ(4-amino-4-deoxychorismate lyase, pabC)等が挙げられる。
【0035】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと上記制御領域や、マーカー遺伝子配列との連結は、上述したSOE-PCR法などの方法によって行うことができる。ベクターへの遺伝子配列の導入手順は、当該分野で周知である。プロモーター領域、ターミネーター、分泌シグナル領域等の制御領域の種類は、特に限定されず、導入する宿主に応じて、通常使用されるプロモーターや分泌シグナル配列を適宜選択して用いることができる。
【0036】
該制御領域の好適な例としては、野生型に比較して発現を強化できる強制御領域、例えば公知の高発現プロモーターであるT7プロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、trpプロモーター等が例示されるが、これらに特に限定されない。
【0037】
<形質転換細胞>
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主へ導入するか、又は本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA断片を宿主のゲノムに導入することにより、本発明の形質転換細胞を得ることができる。
斯かる形質転換細胞は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが発現可能なように導入された細胞であり、当該ポリヌクレオチドの発現が強化された細胞、ひいては本発明のポリペプチドの発現が強化された細胞であると言える。
【0038】
宿主細胞としては、真菌、酵母、放線菌、大腸菌、枯草菌等、いずれを用いてもよいが、大腸菌、放線菌が好ましい。放線菌としては、コリネバクテリウム属菌、マイコバクテリウム属菌、ロドコッカス属菌、ストレプトマイセス属菌、プロピオニバクテリウム属菌等が挙げられ、好ましくはコリネバクテリウム属菌であり、より好ましくはコリネバクテリウム・グルタミカムである。
中でも、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の生合成の基質となる4-アミノ安息香酸類を供給できる微生物が好ましく、4-アミノ安息香酸類の供給能が強化された微生物がより好ましい。微生物の4-アミノ安息香酸類の供給能を強化する方法としては、例えば、4-アミノ安息香酸類を生合成するために必要なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及びこれと作動可能に連結された制御領域を含むベクターを微生物に導入する方法や、微生物が本来有する4-アミノ安息香酸類を生合成するために必要なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの制御領域を強発現プロモーターに置換する方法などが挙げられる。
【0039】
宿主へのベクター又はDNA断片の導入の方法としては、例えばエレクトロポレーション法、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、パーティクル・ガン法、アグロバクテリウム法等を用いることができる。
【0040】
また、ポリヌクレオチドを宿主のゲノムに導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、該ポリヌクレオチドを含むDNA断片を用いた2重交差法が挙げられる。該DNA断片は、上述する宿主細胞において発現量の多い遺伝子のプロモーター配列の下流に導入されてもよく、あるいは、予め該DNA断片と上述した制御領域とを作動可能に連結した断片を作製し、当該連結断片を宿主のゲノムに導入してもよい。さらに、該DNA断片は、本発明のポリヌクレオチドが適切に導入された細胞を選択するためのマーカー(薬剤耐性遺伝子や栄養要求性相補遺伝子など)と予め連結されていてもよい。
【0041】
目的のベクター又はDNA断片が導入された形質転換細胞は、選択マーカーを利用して選択することができる。例えば、選択マーカーが抗生物質耐性遺伝子である場合、該抗生物質添加培地で培養することで、目的のベクター又はDNA断片が導入された形質転換細胞を選択することができる。また例えば、選択マーカーがアミノ酸合成関連遺伝子である場合、該アミノ酸要求性の宿主微生物に遺伝子導入した後、該アミノ酸要求性の有無を指標に、目的のベクター又はDNA断片が導入された形質転換細胞を選択することができる。あるいは、PCR等によって形質転換細胞のDNA配列を調べることで目的のベクター又はDNA断片の導入を確認することもできる。
【0042】
斯くして得られた形質転換細胞は、これを適切な培地で培養すれば、当該細胞に導入されたポリヌクレオチドが発現して、本発明のポリペプチドが生成される。すなわち、当該形質転換細胞は、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド産生菌となり得る。そして、後述する実施例に示すとおり、本発明の形質転換細胞を培養した場合、親ポリペプチドを産生する形質転換細胞を用いた場合に比べて4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の生産性が向上する。
すなわち、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換する変異は、4-アミノ安息香酸水酸化活性向上に有用であり、ひいては4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の生産性の向上に有用である。
そして、本発明の形質転換細胞は、4-アミノ安息香酸水酸化活性が向上されたポリペプチドの産生菌であり、有用な4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の生産株である。
【0043】
<4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の製造>
本発明の4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法は、本発明の形質転換細胞を培養する工程を含み、培地中から4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を回収することにより4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を取得できる。
本発明において、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類としては、具体的には下記の一般式(1):
【0044】
【化1】
【0045】
〔式中、Rは水素原子、ヒドロキシ基(-OH)、メトキシ基(-OCH)、アミノ基(-NH)、フッ素原子(-F)、塩素原子(-Cl)、臭素原子(-Br)、ヨウ素原子(-I)、カルボキシ基(-COOH)、メチル基(-CH)又はエチル基(-CHCH)を示し、Rは水素原子又はヒドロキシ基(-OH)、メトキシ基(-OCH)、アミノ基(-NH)、フッ素原子(-F)、塩素原子(-Cl)、臭素原子(-Br)、ヨウ素原子(-I)、カルボキシ基(-COOH)、メチル基(-CH)又はエチル基(-CHCH)を示し、X及びXは水素原子又はヒドロキシ基であって少なくとも一方はヒドロキシ基を示す。〕
で示される4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸誘導体が挙げられる。
【0046】
で示される官能基としては、水素原子、ヒドロキシ基(-OH)、メトキシ基(-OCH)、フッ素原子(-F)又はメチル基(-CH)が好ましい。
で示される官能基としては、水素原子、ヒドロキシ基(-OH)、メトキシ基(-OCH)、フッ素原子(-F)又はメチル基(-CH)が好ましい。
及びRは、共に水素原子であるのがより好ましい。
また、X及びXは、共にヒドロキシ基であってもよいが、X又はXの何れか一方がヒドロキシ基であるのが好ましい。
【0047】
なお、当該培地には、必要に応じて、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の生合成の基質となる4-アミノ安息香酸類を存在させることができる。
ここで、4-アミノ安息香酸類としては、下記一般式(2):
【0048】
【化2】
【0049】
〔式中、R及びRは前記と同じものを示す。〕
で示される4-アミノ安息香酸誘導体が挙げられる。
【0050】
形質転換細胞を培養する培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、本発明の形質転換細胞の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、例えば、グルコース等の糖類、グリセリン等のポリオール類、エタノール等のアルコール類、またはピルビン酸、コハク酸もしくはクエン酸等の有機酸類を使用することができる。また、窒素源としては、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物、メチルアミン等のアルキルアミン類、またはアンモニアもしくはその塩等を使用することができる。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛等の塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミン、消泡剤等も必要に応じて使用してもよい。
【0051】
培養は、通常、10℃~40℃で、6時間~72時間、好ましくは9時間~60時間、より好ましくは12時間~48時間、必要に応じ撹拌または振とうしながら行うことができる。また、培養中は必要に応じてアンピシリンやカナマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0052】
培養物からの4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の回収及び精製方法は特に制限されない。すなわち、周知のイオン交換樹脂法、沈澱法、晶析法、再結晶法、濃縮法その他の方法を組み合わせることにより実施できる。例えば、菌体を遠心分離等で除去した後、カチオン及びアニオン交換樹脂でイオン性の物質を除き、濃縮すれば4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を取得することができる。培養物中に蓄積された4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類は、そのまま単離することなく用いてもよい。
【0053】
本発明はまた、例示的実施形態として以下の物質、製造方法、用途、方法等を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<1>配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基がロイシンである、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチド。
<2>配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基がロイシンに置換された、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有する変異ポリペプチド。
<3>アミノ酸残基の置換がバリンからロイシンへの置換である、<2>の変異ポリペプチド。
<4>配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有する変異ポリペプチドの製造方法。
<5>アミノ酸残基の置換がバリンからロイシンへの置換である、<4>の方法。
<6>配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ安息香酸水酸化活性の向上方法。
<7>アミノ酸残基の置換がバリンからロイシンへの置換である、<6>の方法。
<8>配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと少なくとも47%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドを用いて4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を製造する場合において、配列番号2で示されるアミノ酸配列の47位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基をロイシンに置換することを含む、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の生産性向上方法。
<9>アミノ酸残基の置換がバリンからロイシンへの置換である、<8>の方法。
<10><1>~<3>のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
<11><10>のポリヌクレオチドを含むベクター又はDNA断片。
<12><11>のベクター又はDNA断片を含有する形質転換細胞。
<13>大腸菌又はコリネバクテリム属菌である、<12>記載の形質転換細胞。
<14>4-アミノ安息香酸類を供給可能な微生物である、<12>又は<13>の形質転換細胞。
<15>4-アミノ安息香酸類の供給能が向上した、<12>又は<13>の形質転換細胞。
<16><12>~<15>のいずれかの形質転換細胞を培養する工程を含む、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
<17>炭素源として糖類を含む培地で培養される、<16>の方法。
<18>4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類を培地から回収する工程を含む、<16>又は<17>の方法。
<19>培養が4-アミノ安息香酸類の存在下で行われる、<16>~<18>のいずれかの方法。
<20>4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸類が、下記の一般式(1):
【0054】
【化3】
【0055】
〔式中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基又はエチル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基又はエチル基を示し、X及びXは水素原子又はヒドロキシ基であって少なくとも一方はヒドロキシ基を示す。〕
で示される4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸誘導体である<16>~<19>のいずれかの方法。
<21>4-アミノ安息香酸類が、下記の一般式(2):
【0056】
【化4】
【0057】
〔式中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基又はエチル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシ基、メトキシ基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシ基、メチル基又はエチル基を示す。〕
で示される4-アミノ安息香酸誘導体である<19>又は<20>の方法。
【実施例
【0058】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
実施例1 4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の生産
以下の実施例において、PCRはPrimeSTAR Max Premix(タカラバイオ)を使用して行った。
(1)野生型酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドの作製
(a)プラスミドpECsf_gapS_pabABCの作製
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032株から常法によって抽出されたゲノムを鋳型に、プライマーGN14_127(配列番号13、TATTAATTAAATGCGCGTTTTAATTATTGATAATTATGATTC)とGN14_133(配列番号14、TTGCGGCCGCTTGTTTAAACCTCCTTACAGAAAAATGGTTGGGCG)を用いたPCRにて4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸シンターゼ及び4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸リアーゼをコードする遺伝子が含まれたDNA断片を増幅し、これをプラスミドpECsf_gapS(特願2015-25491参照)のPacI部位とNotI部位の間に挿入することで、プラスミドpECsf_gapS_pabABCを得た。
【0060】
(b)プラスミドpECsf_gapS_pabABC_HFM122の作製
上記で得られたプラスミドpECsf_gapS_pabABCを鋳型に、プライマーpabABCcory vec R(配列番号15、AAATTTAAACCTCCTTTACAGAAAAATGGTTGG)とpabABCcory vec F(配列番号16、GGAGGTTTAAACAAGCGGCCGCGATATC)を用いたPCRにてベクター用DNA断片を合成した。続いて4-アミノ安息香酸水酸化活性を有するポリペプチドHFM122をコードする遺伝子(配列番号1)を含むプラスミドを人工遺伝子合成により作製し、これを鋳型としてプライマーpECsfD HFM122 F(配列番号17、AGGAGGTTTAAATTTATGCGCACTCAGGTGGCTAT)とpECsfD HFM122 R(配列番号18、CTTGTTTAAACCTCCTTATACGAGTGGCAGTCCTA)を用いたPCRにてインサート用DNA断片を合成した。これらのPCR産物に対してDpnI(タカラバイオ)による処理を行った後、NucleoSpin Gel and PCR Clean-up(タカラバイオ)を用いて各DNA断片を精製し、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)により連結することでプラスミドpECsf_gapS_pabABC_HFM122を構築した。得られたプラスミド溶液を用いてECOS Competent E. coli DH5α株(ニッポンジーン)を形質転換し、細胞液をLBKm寒天培地(Bacto Trypton 1%、Yeast Extract 0.5%、NaCl 1%,カナマイシン硫酸塩50μg/mL、寒天 1.5%)に塗布した後37℃で一晩静置し、得られたコロニーに対しSapphire Amp(タカラバイオ)及びプライマーpabABC+pobA for CPCR F (配列番号19,GCTATCAAAACATTCGGCACATTGGTTTTCC)、pabABC+pobA for CPCR R(配列番号20,GGAAGATGCGTGATCTGATCCTTCAACTC)を用いたPCR反応を行い、目的DNA断片の導入が確認された形質転換株を選抜した。得られた形質転換株をLBKm液体培地(Bacto Trypton 1%、Yeast Extract 0.5%、NaCl 1%,カナマイシン硫酸塩50μg/mL)2mLに接種し、37℃で一晩培養した。この培養液よりNucleoSpin Plasmid EasyPure(タカラバイオ)を用いてプラスミドの精製を行った。
【0061】
(c)プラスミドpECsf_gapS_pabABC_tuD_HFM122の作製
上記で得られたプラスミドpECsf_gapS_pabABC_HFM122を鋳型に、プライマーpabC last R(配列番号21、TTACAGAAAAATGGTTGGGCGCAA)とHFM122 F(配列番号22、ATGCGCACTCAGGTGGCTATCG)を用いたPCRにてベクター用DNA断片を合成した。続いて、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株が有するtuf遺伝子(cg0587)のプロモーター(以下、tuプロモーターと称する)を含むDNA断片(配列番号23、TACGTACCTGCAGGTAGCGTGTCAGTAGGCGCGTAGGGTAAGTGGGGTAGCGGCTTGTTAGATATCTTGAAATCGGCTTTCAACAGCATTGATTTCGATGTATTTAGCTGGCCGTTACCCTGCGAATGTCCACAGGGTAGCTGGTAGTTTGAAAATCAACGCCGTTGCCCTTAGGATTCAGTAACTGGCACATTTTGTAATGCGCTAGATCTGTGTGCTCAGTCTTCCAGGCTGCTTATCACAGTGAAAGCAAAACCAATTCGTGGCTGCGAAAGTCGTAGCCACCACGAAGTCCAAAGGAGGATCTAAATTATGAATAATATAAAAGGAGGAATTAATTAA)を人工遺伝子合成により作製し、これを鋳型としてプライマーpabC-Ptu F(配列番号24、ACCATTTTTCTGTAATACGTACCTGCAGGTAGCGTG)とPtu-HFM122 R(配列番号25、CACCTGAGTGCGCATTTAATTAATTCCTCCTTTTA)を用いたPCRにてインサート用DNA断片を合成した。これらのPCR産物に対してDpnI(タカラバイオ)による処理を行った後、NucleoSpin Gel and PCR Clean-up(タカラバイオ)を用いて各DNA断片を精製し、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)により連結することでプラスミドpECsf_gapS_pabABC_tuD_HFM122を構築した。得られたプラスミド溶液を用いてECOS Competent E. coli DH5α株(ニッポンジーン)を形質転換し、細胞液をLBKm寒天培地に塗布した後37℃で一晩静置し、得られたコロニーに対しSapphire Amp(タカラバイオ)及びプライマーPtu seq 1(配列番号26,GCTTGTTAGATATCTTGAAATCGGCTTTC)、pabABC+pobA for CPCR R(配列番号20,GGAAGATGCGTGATCTGATCCTTCAACTC)を用いたPCR反応を行い、目的DNA断片の導入が確認された形質転換株を選抜した。得られた形質転換株をLBKm液体培地2mLに接種し、37℃で一晩培養した。この培養液よりNucleoSpin Plasmid EasyPure(タカラバイオ)を用いてプラスミドの精製を行った。
構築したプラスミドにおいては、gapプロモーターの制御下に4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸シンターゼ及び4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸リアーゼをコードする遺伝子が連結され、さらにtuプロモーターの制御下に野生型HFM122をコードする遺伝子が連結されている。
【0062】
(d)その他のプラスミドの作製
上記で得られたプラスミドpECsf_gapS_pabABC_tuD_HFM122を鋳型に、プライマーpGapABA_tu vec F(配列番号27、GGAGGTTTAAACAAGCGG)とpGapABA_tu vec R(配列番号28、AATTTAGATCCTCCTTTGGACTTCGTG)を用いたPCRにてベクター用DNA断片を合成した。続いて、4-アミノ安息香酸水酸化活性を有する各ポリペプチドをコードする遺伝子(配列番号3,5,7,9,11)を含むプラスミドを人工遺伝子合成により作製し、これを鋳型として表1の「プライマー」欄に示すプライマーを用いたPCRにてインサート用DNA断片を合成した。これらのPCR産物に対してDpnI(タカラバイオ)による処理を行った後、NucleoSpin Gel and PCR Clean-up(タカラバイオ)を用いて各DNA断片を精製し、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)により連結することで表1の「プラスミド」欄に示すプラスミドを構築した。得られたプラスミド溶液を用いてECOS Competent E. coli DH5α株(ニッポンジーン)を形質転換し、細胞液をLBKm寒天培地に塗布した後37℃で一晩静置し、得られたコロニーに対しSapphire Amp(タカラバイオ)及びプライマーPtu seq 1(配列番号26,GCTTGTTAGATATCTTGAAATCGGCTTTC)、pabABC+pobA for CPCR R(配列番号20,GGAAGATGCGTGATCTGATCCTTCAACTC)を用いたPCR反応を行い、目的DNA断片の導入が確認された形質転換株を選抜した。得られた形質転換株をLBKm液体培地2mLに接種し、37℃で一晩培養した。この培養液よりNucleoSpin Plasmid EasyPure(タカラバイオ)を用いてプラスミドの精製を行った。
構築したプラスミドにおいては、gapプロモーターの制御下に4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸シンターゼ及び4-アミノ-4-デオキシコリスミ酸リアーゼをコードする遺伝子が連結され、さらにtuプロモーターの制御下に野生型水酸化酵素をコードする遺伝子が連結されている。
【0063】
【表1】
【0064】
(2)変異型酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドの作製
変異型酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドの作製について、HFM77の47位のバリンがロイシンに置換された変異型酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドの作製を例として以下に示す。
プラスミドpECsf_gapS_pabABC_tu_HFM77を鋳型として、相補的プライマーHFM77 V47L F(配列番号39、GCCGGGCTCCTGGAACAGTCTACGGTT)、HFM77 V47L R(配列番号40、TTCCAGGAGCCCGGCGCGGATGGTCTG)を用いたPCRにてプラスミドpECsf_gapS_pabABC_tu_HFM77_V47Lを構築した。PCR産物に対してDpnI(タカラバイオ)による処理を行い、処理後の液を用いてECOS Competent E. coli DH5α株(ニッポンジーン)を形質転換し、細胞液をLBKm寒天培地に塗布した後37℃で一晩静置し、得られたコロニーを形質転換株として選抜した。形質転換株をLBKm液体培地2mLに接種し、37℃で一晩培養した。この培養液よりNucleoSpin Plasmid EasyPure(タカラバイオ)を用いてプラスミドの精製を行った。
同様に、プラスミドpECsf_gapS_pabABC_tu_HFM77に代えて表2の「鋳型」に示すプラスミドを用い、プライマーHFM77 V47L F及びHFM77 V47L Rに代えて表2の「プライマー」に示すプライマーを用いたPCRにて各酵素変異体をコードする遺伝子を含むプラスミドを得た。
【0065】
【表2】
【0066】
(3)プラスミドの宿主細胞への導入
上記で得られた各プラスミドを用いて、コリネバクテリウム・グルタミカムDRHG145株(特願2014-523757参照)をエレクトロポレーション法(Bio-rad)により形質転換した。得られた形質転換細胞液をLBKm寒天培地に塗布した後30℃で2日間静置し、得られたコロニーを形質転換株とした。
【0067】
(4)形質転換株の培養
上記で得られた形質転換株をそれぞれ表3に示すCGYE培地(カナマイシン硫酸塩50μg/mLを含む)1mLに接種し、30℃で一晩培養した。得られた培養液100μLを表4に示すCGXII培地(カナマイシン硫酸塩50μg/mLを含む)10mLに接種し、30℃で約48時間培養した後、遠心分離により菌体を除去したものを培養上清とした。得られた培養上清中の4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸濃度を参考例1の方法に従って定量し、下記式に従い4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の生産能向上率を算出した。ここで、「WT」は「野生型酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドが導入された形質転換株」を示し、「MT」は「当該野生型酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドから作製された変異型酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドが導入された形質転換株」を示す。
【0068】
(数1)
生産能向上率=MTの4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸生産能/WTの4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸生産能
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
(5)結果
表5に示す通り、各変異型酵素を導入した菌株は野生型酵素を導入した菌株よりも4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の生産能が向上した。
【0072】
【表5】
【0073】
参考例1 4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の定量
4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の定量はHPLCにより行った。HPLC分析に供する反応液を0.1%リン酸にて適宜希釈した後、アクロプレップ96フィルタープレート(0.2μmGHP膜、日本ポール)を用いて不溶物の除去を行なった。
HPLCの装置は、Chromaster(日立ハイテクサイエンス)を用いた。分析カラムには、L-カラム ODS(4.6mm I.D.×50cm、化学物質評価研究機構)を用い、溶離液Aを0.1M リン酸二水素カリウムの0.1%リン酸溶液、溶離液Bを70%メタノールとし、流速1.0mL/分、カラム温度40℃の条件にてグラジエント溶出を行なった。4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の検出にはUV検出器(検出波長280nm)を用いた。標準試料〔4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸(販売元コードA1194、東京化成工業)〕を用いて濃度検量線を作成し、濃度検量線に基づいて4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸の定量を行なった。
【配列表】
0007502852000001.app