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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 C
B60C11/03 300C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019225885
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021094924
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190123(JP,A)
【文献】特開2016-215961(JP,A)
【文献】特開平06-278412(JP,A)
【文献】特開2017-128217(JP,A)
【文献】特開2013-184666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0217669(US,A1)
【文献】特開2016-016694(JP,A)
【文献】特開2019-119427(JP,A)
【文献】特開2017-213926(JP,A)
【文献】特開2015-123937(JP,A)
【文献】特開2017-100708(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016215776(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、
タイヤ赤道線の近傍からタイヤ幅方向の一方に延びタイヤ周方向に隣り合う2個の第1傾斜溝と、タイヤ赤道線の近傍からタイヤ幅方向の他方に延びる第2傾斜溝、前記タイヤ周方向に隣り合う2個の第1傾斜溝を接続する連通溝とを含む複数の溝部と、
前記複数の溝部によって前記タイヤ赤道線を含むセンター領域に形成される複数のセンターブロックと、
を備え、
前記センターブロックは、前記タイヤ周方向に隣り合う2個のうちの一方の前記第1傾斜溝によって形成される第1縁と、前記第2傾斜溝によって形成される第2縁と、前記タイヤ周方向に隣り合う2個のうちの他方の前記第1傾斜溝によって形成される第3縁と、前記連通溝によって形成される第4縁を有し、
記第1縁と前記第3縁はいずれも、前記第2縁と第4縁のいずれともタイヤ幅方向に延びる直線との成す角度が相違し、
前記トレッド部は、前記センター領域のタイヤ幅方向両側のメディエイト領域に複数のメディエイトブロックを備え、前記センター領域のセンターブロックと前記メディエイト領域のメディエイトブロックの個数の比率は、1:2であり、
個々の前記センターブロックには、タイヤ周方向に間隔をあけて並べられた複数のサイプが形成され、
前記複数のサイプの波数が、前記センターブロックの前記タイヤ周方向の中央部に設けられた前記サイプから、前記センターブロックの前記タイヤ周方向の端部に設けられた前記サイプに向かって漸減している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1傾斜溝の基端と終端は、タイヤ赤道線を挟んでそれぞれ反対側に配置され、
前記第2傾斜溝の基端と終端は、タイヤ赤道線を挟んでそれぞれ反対側に配置され、
前記第1傾斜溝の基端と前記第2傾斜溝の基端は、タイヤ赤道線を挟んで反対側に配置されている、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1縁と前記第3縁の前記第1縁とタイヤ幅方向に延びる直線との成す角度はいずれも、35°以上60°以下であり、前記第2縁と前記第4縁の前記第2縁とタイヤ幅方向に延びる直線との成す角度はいずれも、55°以上75°以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部に複数の傾斜主溝と傾斜陸部とを設けた空気入りタイヤが公知である(例えば、特許文献1から3参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の空気入りタイヤでは、走行時に陸部の縁が路面に衝突する際に発生するノイズが、トレッド部に形成されるトレッドパターンの影響を受ける点については考慮されていない。このため、レッドパターンの違いに起因するパターンノイズを低減させることについては十分に対策されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-190123号公報
【文献】特開2018-193056号公報
【文献】特許5770834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パターンノイズを低減できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決する手段として、トレッド部を有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ赤道線の近傍からタイヤ幅方向の一方に延びタイヤ周方向に隣り合う2個の第1傾斜溝と、タイヤ赤道線の近傍からタイヤ幅方向の他方に延びる第2傾斜溝、前記タイヤ周方向に隣り合う2個の第1傾斜溝を接続する連通溝とを含む複数の溝部と、前記複数の溝部によって前記タイヤ赤道線を含むセンター領域に形成される複数のセンターブロックと、備え、前記センターブロックは、前記タイヤ周方向に隣り合う2個のうちの一方の前記第1傾斜溝によって形成される第1縁と、前記第2傾斜溝によって形成される第2縁と、前記タイヤ周方向に隣り合う2個のうちの他方の前記第1傾斜溝によって形成される第3縁と、前記連通溝によって形成される第4縁を有し、記第1縁と前記第3縁はいずれも、前記第2縁と第4縁のいずれともタイヤ幅方向に延びる直線との成す角度が相違し、前記トレッド部は、前記センター領域のタイヤ幅方向両側のメディエイト領域に複数のメディエイトブロックを備え、前記センター領域のセンターブロックと前記メディエイト領域のメディエイトブロックの個数の比率は、1:2であり、個々の前記センターブロックには、タイヤ周方向に間隔をあけて並べられた複数のサイプが形成され、前記複数のサイプの波数が、前記センターブロックの前記タイヤ周方向の中央部に設けられた前記サイプから、前記センターブロックの前記タイヤ周方向の端部に設けられた前記サイプに向かって漸減している、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成により、センターブロックが路面に当接する際、第1縁と第2縁の路面への衝突状態を相違させることができる。つまり、第1縁と第2縁が路面に衝突してノイズが発生するタイミングをずらせることにより、パターンノイズの発生を低減することが可能となる。
【0009】
この構成により、路面との接触圧が大きいセンター領域に位置するセンターブロックを大きくして剛性を高めることができる。一方、センター領域に比べて接触圧が小さくなるメディエイト領域に位置するメディエイトブロックの数を増やしてエッジ効果を高めることができる。
【0011】
この構成により、異形状であるにも拘わらず、タイヤ幅方向のバランスを適切なものとすることができる。
【0012】
前記第1傾斜溝の基端と終端は、タイヤ赤道線を挟んでそれぞれ反対側に配置され、前記第2傾斜溝の基端と終端は、タイヤ赤道線を挟んでそれぞれ反対側に配置され、前記第1傾斜溝の基端と前記第2傾斜溝の基端は、タイヤ赤道線を挟んで反対側に配置されているのが好ましい。
【0013】
この構成により、タイヤ赤道線近傍にも確実に陸部の縁を配置でき、接地圧の最も高い領域でのエッジ効果を高めることが可能となる。
【0014】
前記第1縁と前記第3縁の前記第1縁とタイヤ幅方向に延びる直線との成す角度はいずれも、35°以上60°以下であり、前記第2縁と前記第4縁の前記第2縁とタイヤ幅方向に延びる直線との成す角度はいずれも、55°以上75°以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、センターブロックの第1縁と第3縁はいずれも第2縁と第4縁のいずれともタイヤ幅方向に延びる直線との成す角度を相違させるようにしたので、各縁が路面に衝突して行くタイミングをずらせることができる。この結果、パターンノイズを低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す展開図。
図2図1のセンター領域の部分拡大図。
図3図1の第1メディエイトブロックを含む部分拡大図。
図4図1の第2メディエイトブロックを含む部分拡大図。
図5】第1センターブロックの拡大図。
図6】第1センターブロックの斜視図。
図7A図6のA-A線に沿った第1センターブロックの断面図。
図7B図6のB1-B1線、B2-B2線に沿った第1センターブロックの断面図。
図7C図6のC-C線に沿った第1センターブロックの断面図。
図7D図6のD-D線に沿った第1センターブロックの断面図。
図8】第1メディエイトブロックの拡大図。
図9】第1メディエイトブロックの斜視図。
図10】変形例のブロックを示す模式図。
図11】変形例のブロックを示す模式図。
図12】変形例のブロックを示す模式図。
図13】変形例のブロックを示す模式図。
図14】変形例のブロックを示す模式図。
図15】変形例のブロックを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
本実施形態に係る空気入りタイヤは、図示しないが、一対のビードコア間にカーカスを掛け渡し、カーカスの中間部の外周側に巻き付けたベルトによって補強し、そのタイヤ外径側にトレッド部1を設けた構成である。図1は、この空気入りタイヤのトレッド部1を示す展開図である。図1において、符号TCはタイヤ周方向を示し、符号TWはタイヤ幅方向を示す。また、図1において符号Ceはタイヤ赤道線を示し、符号TFは接地形状を示し、符号TLは接地端を示す。さらに、図1において矢印Rはタイヤ回転方向を示す。
【0023】
トレッド部1には、複数の溝部によってトレッドパターンが形成されている。溝部には、タイヤ赤道線Ceの近傍からタイヤ幅方向の一方(図1中右側)に向かって斜めに延びる第1傾斜溝2と、タイヤ赤道線Ce近傍からタイヤ幅方向の他方(図1中左側)に向かって斜めに延びる第2傾斜溝3とが含まれる。
【0024】
まず、トレッドパターンのうちタイヤ赤道線Ceに対して図において右側の領域について説明する。
【0025】
第1傾斜溝2の基端は、タイヤ赤道線Ceを挟んで片側(図1中、左側)に位置し、第2傾斜溝3の途中に連通している。第1傾斜溝2は、基端からタイヤ周方向TCの一方に向かってタイヤ幅方向TWの一方(図1中、右斜め上方)へと徐々に幅寸法を増大させながら延びている。第1傾斜溝2は、タイヤ幅方向TWの一方に向かってタイヤ周方向TCの一方(タイヤ回転方向Rとは反対向きで、図1中、左斜め上方)へ凸状に湾曲し、タイヤ幅方向TWの一方(図1において左側の接地端TLよりもタイヤ幅方向TWの外側)で終端している。第1傾斜溝2は、タイヤ赤道線Ce側で、タイヤ幅方向TWに延びる直線に対する傾斜角度が大きく、タイヤ幅方向TWの一方に向かうに従ってこの傾斜角度が徐々に小さくなっている。
【0026】
第1傾斜溝2は、タイヤ周方向TCに所定間隔で複数設けられている。タイヤ周方向TCに隣り合う第1傾斜溝2同士は、第1連通溝4によって接続されている。第1連通溝4は直線状で、タイヤ周方向TCの一方から他方に向かって、つまりタイヤ回転方向Rに向かって、タイヤ赤道線Ce側からタイヤ幅方向TWの一方へ、つまり接地端TLに向けて傾斜している。
【0027】
第1連通溝4の中間部分からは、第3傾斜溝5が延びている。第3傾斜溝5は、タイヤ周方向TCに隣り合う一対の第1傾斜溝2の間に形成される陸部をタイヤ周方向に2分する。第3傾斜溝5の終端位置は、接地端TLよりもタイヤ幅方向TWの外側であるが、第1傾斜溝2の終端位置よりもタイヤ赤道線Ce側である。
【0028】
タイヤ周方向TCに隣り合う第1傾斜溝2と第3傾斜溝5とは第2連通溝6によって接続されている。第2連通溝6は、第1連通溝4よりもタイヤ幅方向TWの外側に設けられている。第1連通溝4は直線状で、タイヤ周方向TCの一方から他方に向かって、つまりタイヤ回転方向Rに向かって、タイヤ赤道線Ce側からタイヤ幅方向TWの一方へ、つまり接地端TLに向けて傾斜している。タイヤ周方向TCに隣り合う一対の第2連通溝6同士は、タイヤ幅方向TWに位置がずれている。すなわち、第2連通溝6は、タイヤ周方向TCに向かってタイヤ幅方向TWの一方側とタイヤ赤道線Ce側とに位置をずらせたものが交互に設けられている。
【0029】
タイヤ周方向TCに隣り合う2つの第1傾斜溝2、第2傾斜溝3、及び第1連通溝4によって第1センターブロック7が区画されている。第1センターブロック7は、タイヤ幅方向TWに比べてタイヤ周方向TCに延びた縦長形状である。第1センターブロック7は、タイヤ周方向TCに並んで第1センターブロック列を構成している。
【0030】
第1傾斜溝2、第3傾斜溝5、第1連通溝4、及び第2連通溝6によって第1メディエイトブロック8が区画されている。第1メディエイトブロック8は、タイヤ周方向TCに比べてタイヤ幅方向TWに延びた横長形状である。第1メディエイトブロック8は、タイヤ周方向TCに並んで第1メディエイトブロック列を構成している。第1メディエイトブロック列では、タイヤ周方向TCに隣り合う第1メディエイトブロック8の形状が、溝部の形状に起因して若干相違している。すなわち、第1連通溝4の溝幅が第3傾斜溝5に対してタイヤ回転方向R側(図1において下側)とタイヤ回転方向Rとは反対側(図1において上側)で相違している。また、タイヤ周方向TCに隣り合う第2連通溝6同士のタイヤ幅方向TWの位置がずれている。
【0031】
第1傾斜溝2、第3傾斜溝5、及び第2連通溝6によって第1ショルダーブロック9が区画されている。第1ショルダーブロック9は、タイヤ周方向TCよりもタイヤ幅方向TWに延びた横長形状である。第1ショルダーブロック9は、接地端TLを超えてタイヤ幅方向TWに延びており、第1メディエイトブロック8に比べてタイヤ幅方向TWさらに延びたより横長の形状を有する。第1ショルダーブロック9は、タイヤ周方向TCに並んで第1ショルダーブロック列を構成している。前述のように、第2連通溝6がタイヤ周方向TCに向かって交互にタイヤ幅方向TWに位置がずれているため、各第1ショルダーブロック9のタイヤ赤道線Ce側の端部の位置が相違している。
【0032】
1つの第1センターブロック7と、2つの第1メディエイトブロック8と、2つの第1ショルダーブロック9とで、1つのブロック集合体を構成している。個々のブロック集合体は、概ね、タイヤ赤道線Ce側から接地端側に向かって、タイヤ回転方向Rとは反対側に凸となるように湾曲している。
【0033】
次に、トレッドパターンのうちタイヤ赤道線Ceにおいて図において左側の領域について説明する。トレッドパターンの左右の領域は、タイヤ赤道線Ceに対し対称性を有する。具体的には、トレッドパターンの左側の領域を構成する要素、つまり第2傾斜溝3、第4傾斜溝11、第3連通溝10、第4連通溝12、第2センターブロック13、第2メディエイトブロック14、及び第2ショルダーブロック15はそれぞれ、第1傾斜溝2、第3傾斜溝5、第1連通溝4、第2連通溝6、第1センターブロック7、第1メディエイトブロック8、及び第1ショルダーブロック9の形状と、タイヤ赤道線Ceに対し対称性を有する。第1センターブロック7と第2センターブロック13は、タイヤ赤道線Ceを中心として概ね線対称である。また、トレッドパターンの左側の領域を構成する要素は、トレッドパターンの右側の領域の対応する要素のタイヤ周方向の配列ピッチの半ピッチずれた位置に配置されている。以下、トレッドパターンの左側の領域を構成する要素について説明するが、特に言及しない点は、トレッドパターンの右側の領域の対応する要素と同様である。
【0034】
第2傾斜溝3の基端は、タイヤ赤道線Ceを挟んで片側(図1中、右側)に位置し、第1傾斜溝2の途中に連通している。第2傾斜溝3は、基端からタイヤ周方向TCの他方に向かってタイヤ幅方向TWの他方(図1中、左斜め上方)へと徐々に幅寸法を増大させながら延びている。第2傾斜溝3は、タイヤ幅方向TWの他方に向かってタイヤ周方向TCの一方(タイヤ回転方向Rとは反対向きで、図1中、右斜め上方)へ凸状に湾曲し、タイヤ幅方向TWの他方(図1において右側の接地端TLよりもタイヤ幅方向TWの外側)で終端している。第2傾斜溝3は、タイヤ赤道線Ce側程、第1傾斜溝2と同様に、タイヤ幅方向TWに延びる直線に対する傾斜角度が大きい。但し、第2傾斜溝3は、タイヤ幅方向TWの他方に向かうに従って、第1傾斜溝2よりもさらにこの傾斜角度が徐々に小さくなっている。
【0035】
第2傾斜溝3は、タイヤ周方向TCに所定間隔(第1傾斜溝2と同一と同一の間隔)で複数設けられている。タイヤ周方向TCに隣り合う第2傾斜溝3同士は、第3連通溝10によって接続されている。第3連通溝10の中間部分からは、第4傾斜溝11が延びている。第4傾斜溝11は、タイヤ周方向TCに隣り合う第2傾斜溝3の間に形成される陸部を2分する。第2傾斜溝3と第4傾斜溝11は第4連通溝12によって接続されている。
【0036】
タイヤ周方向TCに隣り合う2つの第2傾斜溝3、第1傾斜溝2、及び第3連通溝10によって第2センターブロック13が区画されている。第2センターブロック13は、タイヤ周方向TCに並んで第2センターブロック列を構成している。
【0037】
第2傾斜溝3、第4傾斜溝11、第3連通溝10、及び第4連通溝12によって第2メディエイトブロック14が区画されている。第2メディエイトブロック14は、第1メディエイトブロック8に比べてタイヤ周方向TCよりもタイヤ幅方向TWに延びた横長形状である。第2メディエイトブロック14は、タイヤ周方向TCに並んで第2メディエイトブロック列を構成している。
【0038】
第2傾斜溝3、第4傾斜溝11、及び第4連通溝12によって第2ショルダーブロック15が区画されている。第2ショルダーブロック15は、タイヤ周方向TCに並んで第2ショルダーブロック列を構成している。
【0039】
1つの第2センターブロック13と、2つの第2メディエイトブロック14と、2つの第2ショルダーブロック15とで、1つのブロック集合体を構成している。
【0040】
第1傾斜溝2の基端がタイヤ赤道線Ceよりも図1において左側の第1連通部31で第2傾斜溝3の途中に連通し、第2傾斜溝はこの第1連通部31から図1において右斜め上方へと湾曲状態で延びている。そして、第1傾斜溝2に対してタイヤ周方向TCの隣の位置には、第2傾斜溝3の基端が、タイヤ赤道線Ceよりも図1において右側の第2連通部32で第1傾斜溝2の途中に連通し、第3傾斜溝はこの第2連通部32から図1において左斜め上方へと湾曲状態で延びている。つまり、第1傾斜溝2と第2傾斜溝3がV字状を成している。また、第1連通部31と第2連通部32は、タイヤ周方向TCに向かってタイヤ赤道線Ceを挟んで交互に左右に位置している。第1連通部31と第2連通部32をタイヤ周方向に交互に配置することで、タイヤ幅方向のバランスの適正化を図ることができる。
【0041】
第1傾斜溝2の基端(第1連通部31)と終端は、タイヤ赤道線Ceを挟んで互いに反対側に配置されている。同様に、第傾斜溝3の基端(第2連通部32)と終端は、タイヤ赤道線Ceを挟んで互いに反対側に配置されている。また、第1傾斜溝2の基端(第1連通部31)と第傾斜溝3の基端(第2連通部32)は、タイヤ赤道線Ceを挟んで互いに反対側に配置されている。同様に、第1傾斜溝2の終端と第2傾斜溝3の終端は、タイヤ赤道線Ceを挟んで互いに反対側に配置されている。これらの構成より、タイヤ赤道線Ce近傍にも確実に第1及び第2センターブロック7,13の縁を配置でき、接地圧の最も高い領域でのエッジ効果を高めることができる。
【0042】
第1センターブロック列及び第2センターブロック列が配置される領域がセンター領域16である。第1メディエイトブロック8及び第2メディエイトブロック14が配置される領域がメディエイト領域17である。第1ショルダーブロック9及び第2ショルダーブロック15が配置される領域がショルダー領域18である。各領域では、各ブロックの表面と各溝を構成する内側面との境界すなわち各ブロックの縁が路面、特に雪面や氷面に食い込んでエッジ効果を発揮する。
【0043】
センター領域16にある第1及び第2センターブロック7,13の個数と、メディエイト領域17にある第1及び第メディエイトブロック8,14の個数との比率は、1:2である。この比率設定により、路面との接触圧が大きいセンター領域16に位置する第1及び第2センターブロック7,13を大きくして剛性を高めることができる。一方、センター領域16に比べて接触圧が小さくなるメディエイト領域17に位置する第1及び第2メディエイトブロック8,14の数を増やしてエッジ効果を高めることができる。
【0044】
図2に示すように、第1センターブロック7は、4つの縁で囲まれた平面視四角形である。4つの縁のうち、第1傾斜溝2によって形成される第1縁19は円弧状である。第1縁19の両端P1,P2を結ぶ直線L1の長さは、以下に記載する3つの縁よりも短く、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ1は、35°≦θ1≦60°を満足するように設定されている。第2傾斜溝3によって形成される第2縁20は直線状で、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ2は、55°≦θ2≦75°を満足するように設定されている。タイヤ周方向TCに隣り合う他の第1傾斜溝2によって形成される第3縁21は円弧状である。第3縁21の両端P3,P4を結ぶ直線L2と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ3は、50°≦θ3≦70°を満足するように設定されている。第1連通溝4によって形成される第4縁22は直線状である。第4縁22の長さは他の3つの縁よりも長く、タイヤ幅方向TWに延びる直線TWと成す角度θ4は、70°≦θ4≦85°を満足するように設定されている。
【0045】
第2センターブロック13は、第1センターブロック7をタイヤ赤道線Ceを中心として線対称とし、タイヤ周方向TCに半ピッチ位置をずらせることにより得られ、4つの縁で囲まれている。4つの縁については、第1センターブロック7と同様であるので、対応する縁に同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
第1センターブロック7及び第2センターブロック13が配置されるセンター領域16は、路面走行時に最も路面から圧力を受ける部位であり、各センターブロックを区画する縁が路面に衝突する際、ノイズを発生させやすい。本実施形態では、各センターブロックに4つの縁を形成し、その傾斜角度や長さを変更するようにしている。このため、第1縁19と第2縁20が路面に衝突する場合であっても、先に第1縁19が路面から離れ、角度が変わる第4縁22に衝突位置が変更される。その後、第2縁20から第3縁21へと衝突位置が変更される。また、第1センターブロック7と第2センターブロック13の間でも路面に衝突するタイミングが半ピッチ分ずれている。したがって、複数のブロックの複数の縁が同時に路面に衝突することが少なくして、発生するノイズを抑制できる。
【0047】
第1メディエイトブロック8及び第2メディエイトブロック14は、4つの縁で囲まれた平面視四角形である。
【0048】
図3に示すように、第1メディエイトブロック8は、タイヤ周方向に隣り合うものの間でも形状が若干相違する。下方側の第1メディエイトブロック8aは、下縁(第5縁23)が第1傾斜溝2によって形成され、上縁(第6縁24)が第3傾斜溝5によって形成されている。第5縁23の両端P5,P6を結ぶ直線L3と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ5は、22°≦θ5≦46°を満足するように設定されている。第6縁24の両端P7,P8を結ぶ直線L4と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ6は、24°≦θ6≦48°を満足するように設定されている。上方側の第1メディエイトブロック8bは、下縁(第7縁25)が第3傾斜溝5によって形成され、上縁(第8縁26)が第1傾斜溝2によって形成されている。第7縁25の両端P9,P10を結ぶ直線L5と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ7は、27°≦θ7≦52°を満足するように設定されている。第8縁26の両端P11,P12を結ぶ直線L6と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ8は、28°≦θ8≦53°を満足するように設定されている。
【0049】
図4に示すように、第2メディエイトブロック14は、タイヤ周方向に隣り合うものの間でも形状が若干相違する。下方側の第2メディエイトブロック14aは、下縁(第9縁27)が第2傾斜溝3によって形成され、上縁(第10縁28)が第4傾斜溝11によって形成されている。第9縁27の両端P13,P14を結ぶ直線L7と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ9は、17°≦θ9≦39°を満足するように設定されている。第10縁28の両端P15,P16を結ぶ直線L8と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ10は、19°≦θ10≦41°を満足するように設定されている。上方側の第2メディエイトブロック14bは、下縁(第11縁29)が第4傾斜溝11によって形成され、上縁(第12縁30)が第2傾斜溝3によって形成されている。第11縁29の両端P17,P18を結ぶ直線L9と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ11は、22°≦θ11≦45°を満足するように設定されている。第1230の両端P19,P20を結ぶ直線L10と、タイヤ幅方向TWに延びる直線LWと成す角度θ12は、23°≦θ12≦46°を満足するように設定されている。
【0050】
第1メディエイトブロック8及び第2メディエイトブロック14が配置されるメディエイト領域17も、路面走行時に路面から圧力を受け、各メディエイトブロックを区画する縁が路面に衝突する際、ノイズを発生させる。第1メディエイトブロック8は、第1傾斜溝2と第3傾斜溝5によって湾曲した形状に形成されている。第2メディエイトブロック14は、第2傾斜溝3と第4傾斜溝11によって湾曲した形状に形成されている。但し、第2メディエイトブロック14の湾曲形状は、第1メディエイトブロック8に比べてタイヤ幅方向TWに傾いている。したがって、前記各センターブロックと同様に、各メディエイトブロックすなわちその縁が路面に衝突する際に発生させるノイズを低減することができる。
【0051】
次に、第1センターブロック7、第2センターブロック13、第1メディエイトブロック8a,8b、及び第2メディエイトブロック14a,14bに形成されているサイプについて説明する。本明細書において、サイプとは、ブロックに形成された幅が0.3mm以上1.5mm以下の切り込みをいう。
【0052】
第1センターブロック7に形成されたサイプについて説明する。第2センターブロック13は、タイヤ赤道線Ceに対して第1センターブロック7と概ね線対称の形状を有し、第2センターブロック13に形成されたサイプの形態並びに機能は、第1センターブロック7と同様である。以下の説明では、第1センターブロック7について説明し、第2センターブロック13については、図2において第1センターブロック7のものと対応するサイプに同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図5及び図6を参照すると、第1センターブロック7には、合計7本のサイプ、つまり1本の主サイプ40、2本の第1副サイプ41,41、2本の第2副サイプ42,42、及び2本の折線サイプ43,43が形成されている。これらのサイプ40~43はいずれも、全体としてタイヤ幅方向TWに延びるように設けられている。主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42は、波形部と直線部とを有するいわゆる複合サイプである。
【0054】
主サイプ40は、第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの中央部7aに設けられている。2本の第1副サイプ41,41は、主サイプ40に対して、タイヤ周方向TCの外側に間隔をあけて設けられている。2本の第2副サイプ42,42はそれぞれ、2本の第1副サイプ41,41の一方に対して、タイヤ周方向TCの外側に間隔をあけて設けられている。2本の折線サイプ43,43はそれぞれ、第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの端部7bに設けられ、2本の第1副サイプ41,41の一方に対して、タイヤ周方向TCの外側に間隔をあけて位置している。つまり、第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの中央部7aに設けられた主サイプ40に対して、タイヤ回転方向R及びその逆方向の両方について、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43が、タイヤ周方向TCに間隔をあけて並んでいる。
【0055】
主サイプ40は、タイヤ幅方向TWの中央の正弦波状の波形部40aと、その両端の一対の直線部40bとを備える。主サイプ40の一対の直線部40bは、それぞれ第2傾斜溝3と第2連通溝4に連通している。波形部40aは、サイプ幅方向の互いに異なる向きに突出する第1頂部40cと第2頂部40dがサイプ長手方向に交互に連続して配置されている。主サイプ40の波形部40aの長さはL0である。また、主サイプ40の波形部40aの波数、すなわち第1及び第2頂部40c,40dの合計個数は6個である。
【0056】
一対の第1副サイプ41はそれぞれ、タイヤ幅方向TWの中央の正弦波状の波形部41aと、その両端の一対の直線部41bとを備える。主サイプ40に対して図において上方に位置する第1副サイプ41の一対の直線部41bは、第1傾斜溝2と第2連通溝4に連通している。主サイプ40に対して図において下方に位置する第1副サイプ41の一対の直線部41bは、第2傾斜溝3と第2連通溝4に連通している。波形部41aは、サイプ幅方向の互いに異なる向きに突出する第1頂部41cと第2頂部41dがサイプ長手方向に交互に連続して配置されている。第1副サイプ41の波形部41aの長さはL1である。また、第1副サイプ41の波形部41aの波数、すなわち第1及び第2頂部41c,41dの合計個数は4個である。
【0057】
一対の第2副サイプ42はそれぞれ、タイヤ幅方向TWの中央の正弦波状の波形部42aと、その両端の一対の直線部42bとを備える。主サイプ40に対して図において上方に位置する第2副サイプ42の一対の直線部42bは、第1傾斜溝2と第2連通溝4に連通している。主サイプ40に対して図において下方に位置する第2副サイプ42の一対の直線部42bは、第2傾斜溝3と第2連通溝4に連通している。波形部42aは、サイプ幅方向の互いに異なる向きに突出する第1頂部42cと第2頂部42dがサイプ長手方向に交互に連続して配置されている。第2副サイプ42の波形部42aの長さはL2である。また、第2副サイプ42の波形部42aの波数、すなわち第1及び第2頂部42c,42dの合計個数は3個である。
【0058】
一対の折線サイプ43はそれぞれ、タイヤ幅方向TWに延びる直線状、つまり直線部である第1部分43aと、第1部分43aからタイヤ幅方向TWに傾斜して延びており、第1部分43aよりも短い直線状、つまり直線部である第2部分43bとを備える。主サイプ40に対して図において上方に位置する折線サイプ43は、第1部分43aの一端が第1センターブロック7内で終端しており、第2部分43bの一端が第2連通溝4に連通している。主サイプ40に対して図において下方に位置する折線サイプ43は、第1部分43aの一端が第1センターブロック7内で終端しており、第2部分43bの一端が第2傾斜溝3に連通している。折線サイプ43は、主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42とは異なり波形でないので、波数は0個である。
【0059】
第1センターブロック7が接地すると、主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、折線サイプ43により形成されたエッジが路面に作用する。つまり、エッジ効果が得られる。第1センターブロック7に形成された主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42は、それぞれ波形部40a,41a,42aを備える。波形部40a,41a,42aではサイプ密度が高くなり、エッジ成分が増加するので、高いエッジ効果が得られる。その結果、氷雪路面での走行性能向上を図ることができる。
【0060】
第1センターブロック7の波形部40a,41a,42aが形成された部分は、サイプ幅方向の荷重入力、つまり前後方向の荷重入力に対して倒れ込みを生じやすい。これは前後方向の荷重入力に対して、波形部40a,41a,42aを区画する対向するサイプ壁が点接触ないし線接触的に接触することに起因する。
【0061】
主サイプ40の波形部40aの長さL0、第1副サイプ41の波形部41aの長さL1、第2副サイプ42の波形部42aのL2は、長さL0、L1、L2の順で長い。また、折線サイプ43は波形部を有しない。つまり、第1センターブロック7では、タイヤ周方向TCの中央部7aに設けられた主サイプ40から、タイヤ周方向TCの端部7bに設けられた折線サイプ43に向かって、波形部40a~42aの長さL0~L2が減少している。また、前述のように、主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43の波数はそれぞれ、6個、4個、3個、0個である。つまり、第1センターブロック7では、タイヤ周方向TCの中央部7aに設けられた主サイプ40から、タイヤ周方向TCの端部7bに設けられた折線サイプ43に向かって、波数が減少している。そのため、相対的に高剛性であるタイヤ周方向TCの中央部7aでは、主サイプ40が形成されていることによる前後方向の荷重入力に対する剛性低下が相対的に大きい。その逆に、相対的に低剛性であるタイヤ周方向の端部7bでは、折線サイプ43が形成されていることによる前後方向の荷重入力に対する剛性低下が相対的に小さい。また、タイヤ周方向TCの第1副サイプ41が設けられた部分と、第2副サイプ42が設けられた部分では、前者よりも後者の方が、サイプが形成されていることによる前後方向の荷重入力に対する剛性低下が相対的に小さい。つまり、第1センターブロック7自体の剛性が高い中央部7aに近いほど、サイプによる剛性低下を相対的に大きくしている。言い換えれば、第1センターブロック7自体の剛性が低い端部7aに近いほど、サイプによる剛性低下を相対的に小さくしている。かかる設定の結果、波形部40a,41a,42aを備える主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42を設けたことによるエッジ効果を確保しつつ、前後方向の荷重入力に対する第1センターブロック全体としての必要な剛性を確保し、さらに第1センターブロック7のタイヤ周方向TCの中央部7aと端部7bとの間の剛性を均一化できる。かかる剛性確保と剛性の均一化により、前後方向の荷重入力に対する第1センターブロック7の倒れ込みを抑制できる。第1センターブロック7の倒れ込み抑制により、耐偏摩耗性、並びにウエット路面やドライ路面での操縦安定性の向上を図ることができる。
【0062】
主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42はそれぞれ、タイヤ幅方向TWに延びる直線部40b,41b,42bを備える。第1センターブロック7のこれらの直線部40b,41b,42bが形成された部分は、波形部40a,41a,42aが形成された部分よりも前後方向の荷重に対して倒れ込みを生じにくい。これは前後方向の荷重入力に対して、直線部40b,41b,42bを区画する対向するサイプ壁が面接触的に接触することに起因する。そのため、主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42の波形部40a,41a,42a以外の部分が直線部40b,41b,42bであることは、第1センターブロック7の倒れ込みの抑制の点で有利である。
【0063】
直線部である第1部分43aと第2部分43bのみからなる折線サイプ43は、前後方向の荷重に対する第1センターブロック7の倒れ込みを生じさせにくい。従って、相対的に低剛性である第1センターブロック7の端部7bに折線サイプ43を設けることは、エッジ効果を確保しつつ第1センターブロック7の倒れ込みを抑制する上で有利である。
【0064】
第1センターブロック7の波形部40a,41a,42aが形成された部分は、サイプ長手方向の荷重入力、つまり横方向の荷重入力に対しては、波形部40a,41a,42aを区画する一対の溝壁が互いに噛み合うため、倒れ込みを生じやすい。従って、波形部40a,41a,42aが設けられていることは、第1センターブロック7の横方向の荷重に対する倒れ込みの抑制の点で有利である。
【0065】
主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42のそれぞれ波形部40a,41a,42aの振幅は同一である。しかし、波形部40a,41a,42aの振幅を異ならせてもよい。
【0066】
第1センターブロック7に設けられた主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43のサイプ幅W0,W1,W2,W3について説明する。
【0067】
本実施形態では、主サイプ40のサイプ幅W0はサイプ長手方向に一定であり、この点は第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43のサイプ幅W1,W2,W3も同様である。また、本実施形態では、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43のサイプ幅W1,W2,W3は同一である。
【0068】
主サイプ40のサイプ幅W0は、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43のサイプ幅W1,W2,W3よりも広い。具体的には、主サイプ40のサイプ幅W0は、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43のサイプ幅W1,W2,W3の1.5倍以上2.5倍以下に設定している。
【0069】
タイヤ周方向TCの中央部7aに設けられた主サイプ40のサイプ幅W0を、他のサイプのサイプ幅W1,W2,W3よりも広く設定することで、第1センターブロック7は、主サイプ40によって概ね同じ大きさの2個の擬似的な小ブロックに分割されている。氷雪路面、つまり低摩擦路面では、前後方向の荷重入力に対して主サイプ40は開いた状態を維持し、2個の擬似的な小ブロックの主サイプ40に臨むエッジがトラックション発生に寄与する。一方、ウエット路面やドライ路面、つまり高摩擦路面では、前後方向の荷重入力に対して主サイプ40が閉じ、第1センターブロック7は2個の擬似的な小ブロックが一体化された状態で機能するので、剛性確保により倒れ込みが抑制され、耐片摩耗性、並びに操縦安定性の点で有利である。
【0070】
第1センターブロック7に設けられた主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43の深さについて説明する。
【0071】
図7Aを参照すると、主サイプ40の中央部40e(第1センターブロック7を頂面から見たときの波形部40aを含む)の深さD01より、端部40f(第1センターブロック7を頂面からみたときの直線部40bを含む)の深さD02が浅い。図7Bを参照すると、第1及び第2副サイプ41,42についても同様に、中央部41e,42e(第1センターブロック7を頂面から見たときの波形部41a,42aを含む)の深さD11,D21より、端部41f,42f(第1センターブロック7を頂面から見たときの直線部41b,42bを含む)の深さD12,D22が浅い。
【0072】
第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの中央部の剛性よりも、第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの端部の剛性は相対的に低い。逆に言えば、第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの端部の剛性よりも、第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの中央部の剛性が相対的に高い。相対的に高剛性である第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの中央部40e,41e,42eでは、サイプの深さD01,D11,D21を相対的に深くすることで、サイプが形成されていることによる剛性低下が相対的に大きい。一方、相対的に低剛性である第1センターブロック7のタイヤ幅方向TWの端部では、サイプの深さD02,D12,D22を相対的に浅く設定することで、サイプが形成されていることによる剛性低下が相対的に小さい。その結果、タイヤ幅方向TWにおける第1センターブロック7の剛性の分布を均一化できる。
【0073】
本実施形態では、主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42の中央部40e,41e,42eの深さD01,D11,D21は、5mm以上9mm以下(溝部の溝底からの第1センターブロック7の高さH1の60%以上80%以下)の範囲に設定されている。主サイプ40の端部40fの深さD02は中央部40eの深さD01に対して4mm以上7mm以下浅くなるように(中央部40eの深さD01の70%以上90%以下となるように)設定されている。さらに、図7C及び図7Dを参照すると、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42の端部41f,42fの深さD12,D22は、中央部41e,42eの深さD11,D21に対して2.0mm以上4.5mm以下浅くなるように(中央部41e,42eの深さD11,D21の20%以上55%以下となるように)設定されている。
【0074】
第1センターブロック7のタイヤ周方向TCの端部7bに設けられた折線サイプ43は、一定の深さD3を有する。折線サイプ43の深さD3は、主サイプ40の端部40fの深さD02に対して、2.0mm以上4.5mm以下浅くなるように(主サイプ40の端部40fの深さD02の20%以上55%以下となるように)設定されている。
【0075】
図8及び図9を参照すると、第1メディエイトブロック8aには、第1センターブロック7と同様の主サイプ40’、第1副サイプ41’、第2副サイプ42’、及び折線サイプ43’が形成されている。図8及び図9では、図5及び図6のものと対応する符号がアポストロフィーを付して使用されている。主サイプ40’、第1副サイプ41’、第2副サイプ42’、及び折線サイプ43’は、それぞれ第1センターブロック7の主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43に対応する。
【0076】
第1メディエイトブロック8aの主サイプ40’、第1副サイプ41’、及び第2副サイプ42’の波形部40a’,41a’,42a’の長さL0’,L1’,L2’の設定は、第1センターブロック7における主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42の波形部40a,41a,42aの長さL0,L1,L2の設定と同一である。また、第1メディエイトブロック8aの主サイプ40’、第1副サイプ41’、及び第2副サイプ42’の波数の設定は、第1センターブロック7における主サイプ40、第1副サイプ41、及び第2副サイプ42の波数の設定と同一である。さらに、第1メディエイトブロック8aの主サイプ40’、第1副サイプ41’、第2副サイプ42’、及び折線サイプ43’のサイプ幅と深さの設定は、第1センターブロック7の主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43と同様である。従って、第1メディエイトブロック8aについても、同様の効果ないし機能を発揮する。つまり、サイプのエッジ効果の確保による氷雪路面での走行性能向上を図りつつ、倒れ込み抑制により、耐片摩耗性、並びにウエット路面やドライ路面での操縦安定性の向上を図ることできる。
【0077】
第1センターブロック7の主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43がタイヤ周方向TCに直交する方向、つまりタイヤ幅方向TWに延びているのに対し、第1メディエイトブロック8aの主サイプ40’、第1副サイプ41’、第2副サイプ42’、及び折線サイプ43’は、タイヤ幅方向TWに対してある程度、例えば20°以下傾いている。これは、接地形状TF(図1参照)に合わせて、第1メディエイトブロック8aに対する荷重入力の方向が、よりこれらのサイプのサイプ幅方向に近づくようにするためである。
【0078】
例えば、図1を参照すると、前述のようにタイヤ幅方向TWに延びている第1センターブロック7の主サイプ40、第1副サイプ41、第2副サイプ42、及び折線サイプ43は、トレッド部1のセンター領域においてタイヤ周方向TCに近い方向に延びている第1~第4傾斜溝2,3,5,11に対して概ね直交して延びている。また、前述のようなタイヤ幅方向TWに対して傾斜して延びている第1メディエイトブロック8aの第1副サイプ41’、第2副サイプ42’、及び折線サイプ43’は、トレッド部1のメディエイト領域においてタイヤ周方向TC及びタイヤ幅方向TWに対して傾斜して延びている第1から第4傾斜溝2,3,5,11に対して直角ではない角度で交差して延びている。このようにサイプ40~43,40’~43’が第1から第4傾斜溝2,3,5,11に対して交差(直交を含む)している場合に、ブロックに中央部から端部に向かって波形部の長さが減少する構成を採用することは、サイプのエッジ効果の確保とブロックの倒れ込み抑制の両立の有利性が高い。
【0079】
第1メディエイトブロック8bは、前述したように第1メディエイトブロック8aと若干の形状の相違があるに過ぎない。また、第2メディエイトブロック14a,14bはそれぞれ、第1メディエイトブロック8a,8bと概ね線対称の形状を有する。第2メディエイトブロック14a,14bに形成されたサイプの形態並びに機能は、第1メディエイトブロック8a,8bと同様である。これらのサイプについは、図3及び図4において第1メディエイトブロック8bのものと対応するサイプに同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
第1ショルダーブロック9及び第2ショルダーブロック15には、タイヤ幅方向TWに延びる3本のサイプ51がタイヤ周方向TCに所定間隔で形成されている。
【0081】
前記構成の空気入りタイヤによれば、次のような効果を得ることができる。
(1)第1傾斜溝2と第2傾斜溝3をV字状を成すように形成し、各傾斜溝の傾斜角度がタイヤ赤道線Ce側とタイヤ幅方向TWの両側とで相違している。そして、各傾斜溝同士を連通溝で連通することにより、センター領域16にセンターブロックを形成している。これにより、センターブロックを区画する縁の傾斜角及び長さを相違させている。この構成により、走行時にセンターブロックが路面に衝突する際、センターブロックの各縁が衝突するタイミングがずれるため、発生するノイズが低減される。
(2)センターブロックは、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプ40~43によって複数の小ブロックに分割されている。このため、直進時、路面に当接する際に各小ブロックが個別に弾性変形し、そのエッジ部分が路面に作用する。つまり、良好なエッジ効果が得られる。しかも、各サイプ40~43には波形部分が形成されている。このため、タイヤ幅方向に力が作用した場合、波形部分が互いに作用し合って位置ずれが防止される。つまり、センターブロックのブロック剛性が高められる。
(3)メディエイトブロックは、タイヤ赤道線側の1つの縁を除く残り3つの縁の位置が第1メディエイトブロック8と第2メディエイトブロック14とでずれている。このため、センターブロックの場合と同様に、各縁が路面に衝突するタイミングがずれるため、発生するノイズが低減される。
(4)メディエイトブロックは、センターブロックと同様に、複数のサイプ40~43によって複数の小ブロックに分割されている。但し、サイプ40~43が延びる方向は、センターブロックとは相違する。このため、タイヤ周方向とタイヤ幅方向の間の一方の斜め方向に対しては小ブロックが変形してエッジ効果を発揮させ、この方向に直交する他方の斜め方向に対しては、小ブロック同士が波形部分で噛み合ってブロック剛性を高める働きをする。
【0082】
以下、本発明の実施形態の種々の変形例について説明する。
【0083】
センターブロック7,13、メディエイトブロック8a,8b,14a,14bは、実施形態のように4つの縁で囲まれた四角形に限定されず、五角形等、種々の他の形態であってもよい。
【0084】
図10に示す変形例では、第1センターブロックのサイプ幅は、主サイプ40のサイプ幅W0、第1副サイプ41のサイプ幅W1、第2副サイプ42のサイプ幅W2、及び折線サイプ43のサイプ幅W3の順で広い。言い換えれば、サイプ幅が第1センターブロック7のタイヤ周方向TCの中央部7aから端部7bに向けて減少している。このようなサイプ幅の設定よっても、前後方向の荷重入力に対する第1センターブロック全体としての必要な剛性を確保し、さらに第1センターブロック7のタイヤ周方向TCの中央部7aと端部7bとの間の剛性を均一化できる。
【0085】
図11から図14の変形例では、ブロック100は模式的に四角形状で示している。符号101は主サイプを示し、符号102,103は副サイプを示す。
【0086】
図11の変形例では、主サイプ101は波形部101aの両端にそれぞれ直線部101bを備えるが、副サイプ102,103はサイプ長手方向の一方が波状部102a,103aで構成され、他方が直線部102b,102bで構成されている。つまり、副サイプ102,103は単一の直線部102b,102bを備える。また、副サイプ102と副サイプ103とでは、直線部102b,102bのサイプ長手方向の位置を異ならせている。
【0087】
図12の変形例では、ブロック100に2本の主サイプ101が形成されている。2本の主サイプ101を設けたことで、ブロック100は3個の擬似的な小ブロックとして機能する。
【0088】
図13の変形例では、主サイプ101の波形部101aと副サイプ102,103の波状部102a,103aは、三角波状、ないし繰り返し折線状である。
【0089】
図14の変形例では、主サイプ101の波形部101aと副サイプ102,103の波状部102a,103aは、矩形波状である。
【0090】
図15の変形例では、主サイプ101の波形部101aと副サイプ102,103の波状部102a,103aは、鋸歯状である。
【符号の説明】
【0091】
トレッド
2 1傾斜溝
3 2傾斜溝
4 1連通溝
5 3傾斜溝
6 2連通溝
7 1センターブロック
7a 中央部
7b 端部
8 1メディエイトブロック
9 1ショルダーブロック
10 3連通溝
11 4傾斜溝
12 4連通溝
13 第2センターブロック
14 第2メディエイトブロック
15 第2ショルダーブロック
16 センター領域
17 メディエイト領域
18 ショルダー領域
19 第1縁
20 第2縁
21 第3縁
22 第4縁
23 第5縁
24 第6縁
25 第7縁
26 第8縁
27 第9縁
28 第10縁
29 第11縁
30 第12縁
31 第1連通部
32 第2連通部
40 主サイプ
40a 波形部
40b 直線部
40c 第1頂部
40d 第2頂部
40e 中央部
40f 端部
41 第1副サイプ
41a 波形部
41b 直線部
41c 第1頂部
41d 第2頂部
41e 中央部
41f 端部
42 第2副サイプ
42a 波形部
42b 直線部
42c 第1頂部
42d 第2頂部
42e 中央部
42f 端部
43 折線サイプ
43a 第1部分
43b 第2部分
51 サイプ
100 ブロック
101 主サイプ
101a 波形部
101b 直線部
102 副サイプ
102a 波形部
102b 直線部
103 副サイプ
103a 波形部
103b 直線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15