(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】太陽電池および太陽電池製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240612BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20240612BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20240612BHJP
【FI】
H01L31/04 264
H01L31/04 266
H01L31/04 420
H01L31/06 455
(21)【出願番号】P 2020051037
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発、結晶Si太陽電池をベースとした複合型太陽電池モジュールの開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】古牧 周
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-171464(JP,A)
【文献】特開2017-139351(JP,A)
【文献】特開2009-193993(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016122(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133729(US,A1)
【文献】特開2012-060123(JP,A)
【文献】特開2011-142127(JP,A)
【文献】特開2013-157641(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0090670(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102576767(CN,A)
【文献】特開2013-239476(JP,A)
【文献】特開2015-122475(JP,A)
【文献】特開2006-060104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0224
H01L 31/04-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の裏面に、それぞれ第1方向に延びる帯状の第1半導体層および第2半導体層を前記第1方向と交差する第2方向に交互に積層する工程と、
前記半導体基板の裏面側に、前記第1半導体層および前記第2半導体層を覆うよう透明電極層を積層する工程と、
前記透明電極層の裏面側に、平面視で前記第1半導体層および前記第2半導体層の前記第2方向の中央部に重なるよう、金属粒子およびバインダを含む導電性ペーストを印刷することにより、前記第1方向に延びるベース電極を形成する工程と、
前記ベース電極をエッチングマスクとするエッチングにより、前記透明電極層を部分的に除去する工程と、
を備え、
前記ベース電極を形成する工程で、印刷された前記導電性ペーストが広がるように流動することによって、前記ベース電極の前記第2方向の幅が前記透明電極に向かって増大し、前記ベース電極の第2方向の両端部
の厚さが中央部よりも小さくなることで前記透明電極層を部分的に除去する工程において
、前記ベース電極の前記第2方向の両側部に前記エッチングマスクとして機能しない領域を形成するよう、前記導電性ペーストの印刷条件を設定する、太陽電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池および太陽電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。両面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面電極型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。特許文献1には、裏面電極型の太陽電池が開示されている。
【0003】
特許文献1には、裏面に形成される電極を光反射層としても利用することで、太陽電池の効率を向上することが記載されている。特許文献1に記載の太陽電池では、隣接し合う電極間の短絡を防止しながら電極の面積を大きくするために、一方の電極の高さを大きくし、高さが大きい方の電極の裏面側を鍔状に拡大している。このように、平面視における電極の面積を大きくすることで、より多くの光を半導体基板に戻すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の太陽電池では、電極間の分離のために複雑な立体構造を採用しているため、製造工程が複雑である。そこで、本発明は、製造が簡単な太陽電池および工程が簡単な太陽電池製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る太陽電池は、半導体基板と、前記半導体基板の裏面側に、それぞれ第1方向に延びる帯状に形成され、前記第1方向と交差する第2方向に交互に積層される第1半導体層および第2半導体層と、前記第1半導体層および第2半導体層の前記第2方向の中央部の裏面側にそれぞれ前記第1方向に延びるよう積層される透明電極と、前記透明電極の前記第2方向の裏面側にそれぞれ前記第1方向に延びるよう積層され、金属粒子とバインダとを含む材料から形成されるベース電極と、を備え、前記ベース電極の前記第2方向の幅は、前記透明電極に向かって増大し、前記ベース電極の前記第2方向の両端は、前記透明電極から突出する。
【0007】
本発明の別の態様に係る太陽電池製造方法は、半導体基板の裏面に、それぞれ第1方向に延びる帯状の第1半導体層および第2半導体層を前記第1方向と交差する第2方向に交互に積層する工程と、前記半導体基板の裏面側に、前記第1半導体層および前記第2半導体層を覆うよう透明電極層を積層する工程と、前記透明電極層の裏面側に、平面視で前記第1半導体層および前記第2半導体層の前記第2方向の中央部に重なるよう、金属粒子およびバインダを含む導電性ペーストを印刷することにより、前記第1方向に延びるベース電極を形成する工程と、前記ベース電極をエッチングマスクとするエッチングにより、前記透明電極層を部分的に除去する工程と、を備え、前記透明電極層を部分的に除去する工程で、印刷された前記導電性ペーストが広がるように流動することによって前記ベース電極の前記第2方向の両側部に前記エッチングマスクとして機能しない領域を形成するよう、前記導電性ペーストの印刷条件を設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造が簡単な太陽電池および工程が簡単な太陽電池製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池を示す裏面図である。
【
図3】
図1の太陽電池の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4A】
図3の太陽電池製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面ではハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池1の構成を示す模式裏面図である。
図2は、
図1の太陽電池1のA-A線断面図である。
【0012】
太陽電池1は、いわゆるヘテロ接合バックコンタクト型の太陽電池セルである。この太陽電池1は、半導体基板11と、半導体基板11の裏面(光の入射面と反対側の面)に配設される第1半導体層21および第2半導体層22と、第1半導体層21および第2半導体層22の裏面側にそれぞれ配設される第1透明電極31および第2透明電極32と、第1透明電極31および第2透明電極32の裏面側にそれぞれ配設される第1ベース電極41および第2ベース電極42と、第1ベース電極41および第2ベース電極42にそれぞれ配設される第1嵩上電極51および第2嵩上電極52と、第1嵩上電極51の間および第2嵩上電極52の間をそれぞれ接続する第1配線材61および第2配線材62と、を備える。
【0013】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0014】
第1半導体層21および第2半導体層22は、半導体基板11の裏面に、それぞれ第1方向に延びる帯状に形成される。第1半導体層21および第2半導体層22は、第1方向と交差する第2方向に交互に設けられる。第1半導体層21および第2半導体層22は、半導体基板11の略全面を覆うように配設されることが好ましい。
【0015】
第1半導体層21および第2半導体層22は、互いに異なる導電型を有する。例として、第1半導体層21はp型半導体から形成され、第2半導体層22はn型半導体から形成される。第1半導体層21および第2半導体層22は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。
【0016】
第1透明電極31は、それぞれの第1半導体層21の第2方向の中央部の裏面側に第1方向に延びるよう積層され、第2透明電極32は、それぞれの第2半導体層22の第2方向の中央部の裏面側に第1方向に延びるよう積層される。第1透明電極31および第2透明電極32は、第1半導体層21および第2半導体層22から集電し、第1ベース電極41および第2ベース電極42に接続する薄層である。また、第1透明電極31および第2透明電極32は、第1半導体層21および第2半導体層22と、第1ベース電極41および第2ベース電極42との材質の違い等によって生じる密着性の低下や界面における電気抵抗の増大を防止する中間層として機能する。
【0017】
第1透明電極31および第2透明電極32は、同じ材料から形成することができる。第1透明電極31および第2透明電極32を形成する材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)等を挙げることができる。
【0018】
第1透明電極31および第2透明電極32の平均厚さの下限としては、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、第1透明電極31および第2透明電極32の平均厚さの上限としては、500nmが好ましく、300nmがより好ましい。第1透明電極31および第2透明電極32の平均厚さを前記下限以上とすることによって、第1透明電極31および第2透明電極32を切れ目なく連続する膜状とすることができるので、第1透明電極31と第1ベース電極41との間および第2透明電極32と第2ベース電極42との間の接続を確実にすることができる。また、。第1透明電極31および第2透明電極32の平均厚さを前記上限以下とすることによって、第1透明電極31と第1ベース電極41との間および第2透明電極32と第2ベース電極42との間の電気抵抗が不必要に大きくなることを防止できる。
【0019】
第1ベース電極41は、それぞれの第1透明電極31の第2方向の裏面側に第1方向に延びるよう積層され、第2ベース電極42は、それぞれの第2透明電極32の第2方向の中央部の裏面側に第1方向に延びるよう積層される。第1ベース電極41および第2ベース電極42は、第1透明電極31および第2透明電極32を介して第1半導体層21および第2半導体層22から電力を収集する。また、第1ベース電極41および第2ベース電極42は、半導体基板11を通過した光を反射して、再度半導体基板11内に戻すことによって、キャリア生成効率を向上する。
【0020】
また、第1ベース電極41および第2ベース電極42の第2方向の両端は、第1透明電極31および第2透明電極32からそれぞれ突出する。これにより、第1ベース電極41および第2ベース電極42の面積が大きくなるので、より多くの光を反射して太陽電池1の効率を向上することができる。
【0021】
第1ベース電極41および第2ベース電極42の第1透明電極31および第2透明電極32からの第2方向の平均突出長さの下限としては、第1透明電極31および第2透明電極32の平均厚さの30倍が好ましく、50倍がより好ましい。一方、第1ベース電極41および第2ベース電極42の第1透明電極31および第2透明電極32からの第2方向の平均突出長さの上限としては、第1透明電極31および第2透明電極32の平均厚さの30倍が好ましく、50倍がより好ましい。第1ベース電極41および第2ベース電極42の第1透明電極31および第2透明電極32からの第2方向の平均突出長さを前記下限以上とすることによって、第1ベース電極41と第2ベース電極42との隙間を最小限とて第1ベース電極41および第2ベース電極42による光の反射面積を大きくした場合にも第1透明電極31と第2透明電極32との絶縁を確実にすることができる。また、第1ベース電極41および第2ベース電極42の第1透明電極31および第2透明電極32からの第2方向の平均突出長さを前記上限以下とすることによって、第1透明電極31および第2透明電極32の面積を大きくして、第1半導体層21および第2半導体層22からの集電効率を向上することができる。
【0022】
第1ベース電極41および第2ベース電極42の第1透明電極31および第2透明電極32からの第2方向の平均突出長さの具体的な値の下限としては、第1透明電極31と第2透明電極32との絶縁のために、20μmが好ましく、30μmがより好ましい。一方、第1ベース電極41および第2ベース電極42の第1透明電極31および第2透明電極32からの第2方向の平均突出長さの具体的な値の上限としては、第1透明電極31および第2透明電極32の面積を大きくするために、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。
【0023】
第1ベース電極41および第2ベース電極42は、金属粒子とそのバインダとを含む材料から形成することができる。金属粒子の材質としては、例えば銀、銅、ニッケル等が挙げられ、導電率および光反射率が大きい銀が特に好適に用いられる。バインダとしては、例えばエポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。つまり、第1ベース電極41および第2ベース電極42は、後で詳しく説明するように、例えば銀ペースト等の導電性ペーストを硬化することによって形成することができる。このため、第1ベース電極41および第2ベース電極42は、導電性ペーストの溶剤が揮発して形成される空孔を有し得る。
【0024】
第1ベース電極41および第2ベース電極42の第2方向の幅は、第1透明電極31および第2透明電極32に向かって増大する。第1ベース電極41および第2ベース電極42の第2方向の断面における裏面側の外縁の形状は、第2方向中央部において裏側に凸状であり、第2方向両側部において裏側に凹状であることが好ましい。これにより、第1透明電極31および第2透明電極32少ない材料で形成しながら、効率的に面積を大きくすることができる。具体例として、第1ベース電極41および第2ベース電極42の第2方向の断面形状は、例えば第1透明電極31および第2透明電極32の裏面をベースラインとするガウス分布曲線のような形状となり得る。
【0025】
第1ベース電極41および第2ベース電極42の第2方向の両側部は空孔が表裏に連続するので流体を通過させ得るが、第1ベース電極41および第2ベース電極42の第2方向の中央部は空孔が表裏に連続しないので流体を通過させない。なお、第1ベース電極41および第2ベース電極42の両側部においても、厚み方向視においては金属粒子が互いに重なり合うよう存在するため、第1ベース電極41および第2ベース電極42に表面側から入射する光は殆どが表面側に反射する。
【0026】
後述する製造方法によれば、第1ベース電極41および第2ベース電極42の厚みが5μm以下であれば、その表面側の第1透明電極31および第2透明電極32を除去することができる。このため、第1ベース電極41および第2ベース電極42の厚みが5μm以下である部分の第2方向の平均幅の下限としては、20μmが好ましく、30μmがより好ましい。一方、第1ベース電極41および第2ベース電極42の厚みが5μm以下である部分の第2方向の平均幅の上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。
【0027】
第1ベース電極41および第2ベース電極42の平均高さ(第2方向の複数の断面におけるそれぞれの最大高さの平均値)の下限としては、20μmが好ましく、25μmがより好ましい。一方、第1ベース電極41および第2ベース電極42の平均高さの上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましい。第1ベース電極41および第2ベース電極42の平均高さを前記下限以上とすることによって、第1ベース電極41および第2ベース電極42は、電気抵抗が小さく、中央部において流体を通過させないものとなる。また、第1ベース電極41および第2ベース電極42の平均高さを前記上限以下とすることによって、導電性ペーストの使用量を抑制して製造コストを小さくできるとともに、第1ベース電極41および第2ベース電極42の両側部の流体透過性を確保することができる。
【0028】
第1嵩上電極51および第2嵩上電極52は、第1ベース電極41および第2ベース電極42の裏面側にそれぞれ第1方向に部分的に積層される。より具体的には、第1嵩上電極51は、第2方向に一列または複数列に並ぶよう、それぞれの第1ベース電極41に部分的に積層される。第2嵩上電極52は、第2方向に一列または複数列に並び、且つ第2方向から見て第1嵩上電極51と互い違いなるよう、それぞれの第2ベース電極42に部分的に積層される。
【0029】
第1嵩上電極51および第2嵩上電極52は、第1ベース電極41および第2ベース電極42と同様に、導電性粒子とそのバインダとを含む材料から形成することができる。また、第1嵩上電極51および第2嵩上電極52は、局所的に高さを大きくするとともに電気抵抗を小さくすることができるよう、第1ベース電極41および第2ベース電極42を形成する導電性ペーストよりも流動性が小さい導電性ペーストから形成されることが好ましい。
【0030】
第1配線材61は、第2方向に並ぶ複数の第1嵩上電極51を接続し、第2配線材62は、第2方向に並ぶ複数の第2嵩上電極52を接続する。第1配線材61および第2配線材62は、第1嵩上電極51および第2嵩上電極52を介して、第1ベース電極41および第2ベース電極42からそれぞれ電流を取り出すために配設される。
【0031】
第1配線材61および第2配線材62は、例えば銅線等の導体によって形成することができる。第1配線材61および第2配線材62と第1嵩上電極51および第2嵩上電極52とは、例えば半田、導電性接着材等によって接続することができる。第1配線材61および第2配線材62として、外面を第1嵩上電極51および第2嵩上電極52と接続するための半田で被覆した金属線を用いてもよい。
【0032】
続いて、太陽電池1を製造する方法について説明する。太陽電池1は、
図3に示す太陽電池製造方法によって製造することができる。
図3の太陽電池製造方法は、本発明に係る太陽電池製造方法の一実施形態である。
【0033】
本実施形態の太陽電池製造方法は、半導体層形成工程(ステップS01)と、透明電極層積層工程(ステップS02)と、ベース電極形成工程(ステップS03)と、嵩上電極形成工程(ステップS04)と、エッチング工程(ステップS05)と、焼成工程(ステップS06)と、配線材接続工程(ステップS07)と、を備える
【0034】
ステップS01の半導体層形成工程では、
図4Aに示すように、半導体基板11の裏面に、第1半導体層21および第2半導体層22を第2方向に交互に並ぶよう形成する。具体的には、第1半導体層21および第2半導体層22は、半導体基板11の裏面にマスクを形成し、例えばCVD等の成膜技術によって半導体材料を積層することによって順番に形成することができる。
【0035】
ステップS02の透明電極層積層工程では、
図4Bに示すように、第1半導体層21および第2半導体層22を形成した半導体基板11の裏面側の略全体に、例えばCVDやPVD等の成膜技術によって第1透明電極31および第2透明電極32を形成する材料を積層することにより、透明電極層30を形成する。
【0036】
ステップS03のベース電極形成工程では、
図4Cに示すように、透明電極層30の裏面側に、平面視で第1半導体層21および第2半導体層22の第2方向の中央部に重なるよう第1導電性ペーストをそれぞれ積層することにより、第1方向に延びる第1ベース電極41および第2ベース電極42を形成する。
【0037】
第1導電性ペーストは、スクリーン印刷によって選択的に積層することができる。より詳しくは、ベース電極形成工程では、メッシュ基材と、メッシュ基材に支持され、一定の厚みを有し、印刷領域が開口した乳材とを備える印刷版を用いて、透明電極層30を上にして配置した半導体基板11に第1導電性ペースト印刷することにより、第1ベース電極41および第2ベース電極42を形成することができる。
【0038】
このベース電極形成工程では、印刷された第1導電性ペーストが広がるように流動することによって第1ベース電極41および第2ベース電極42の第2方向の両側部に次のエッチング工程においてエッチングマスクとして機能しない領域を形成するよう、第1導電性ペーストの印刷条件を設定する。第1導電性ペーストは、印刷版の開口内では一定の厚さを有するが、印刷版を除去した直後に、重力により流動して、上側の角がなくなり、両端の下側部分が外側に広がるように形状が崩れる。これにより、透明電極層30に向かって第2方向の幅が増大する第1ベース電極41および第2ベース電極42を形成することができる。第1導電性ペーストは、導電性粒子、バインダに加えて、溶剤を含むものを用いることができる。第1導電性ペーストは、溶剤の含有量等によって流動性(粘度)を調整することができる。また、印刷版の材料および形状、透明電極層30への圧接圧力、印刷版の開口に第1導電性ペーストを押し込むスキージの速度等によっても、形成される第1ベース電極41および第2ベース電極42の形状が変化し得る。
【0039】
また、ベース電極形成工程では、第1導電性ペーストに含まれる溶剤を揮発させ、形成した第1ベース電極41および第2ベース電極42が容易に変形しないようにするための乾燥を行うことが好ましい。
【0040】
ステップS04の嵩上電極形成工程では、
図4Dに示すように、第1ベース電極41および第2ベース電極42の裏面側に第2導電性ペーストを積層することにより、第1嵩上電極51および第2嵩上電極52を形成する。第2導電性ペーストとしては、第1導電性ペーストと同様のものを用いることができるが、第1嵩上電極51および第2嵩上電極52を局所的に高く積層しやすく、第1嵩上電極51および第2嵩上電極52の電気抵抗より小さくできるよう、第1導電性ペーストとは組成が異なるものを使用することが好ましい。
【0041】
第2方向に交互に配置されるよう形成される。第2導電性ペーストも、スクリーン印刷によって選択的に積層することができる。また、嵩上電極形成工程でも、第2導電性ペーストに含まれる溶剤を揮発させ、形成した第1嵩上電極51および第2嵩上電極52が容易に変形しないようにするための乾燥を行うことが好ましい。
【0042】
ステップS05のエッチング工程では、
図4Eに示すように、第1ベース電極41および第2ベース電極42をマスクとするエッチングにより、透明電極層30を部分的に除去する。具体的には透明電極層30の第1半導体層21と第2半導体層22とに跨る領域を選択的に除去し、これによって、平面視で第1半導体層21に内包される第1透明電極31と、平面視で第2半導体層22に内包される第2透明電極32とを画定する。ITOから形成される透明電極層30をエッチングすることができるエッチング液としては、例えば塩酸などを用いることができる。
【0043】
ステップS06の焼成工程では、加熱により、第1ベース電極41、第2ベース電極42、第1嵩上電極51および第2嵩上電極52を硬化させる。
【0044】
ステップS07の配線材接続工程では、第1配線材61および第2配線材62によって第2方向に並ぶ第1嵩上電極51の間および第2方向に並ぶ第2嵩上電極52の間をそれぞれ接続する。これによって、
図1および2に示す太陽電池1を得ることができる。
【0045】
本実施形態の太陽電池製造方法では、透明電極層積層工程で全面に透明電極層30を形成し、エッチング工程で第1ベース電極41および第2ベース電極42をマスクとするエッチングを行うことにより第1透明電極31および第2透明電極32を形成するので、第1透明電極31第2透明電極32を形成するための専用のマスクを形成する必要がない。したがって、本実施形態の太陽電池製造方法は、太陽電池1を比較簡単に製造することができる。つまり、上述の実施形態に係る太陽電池1は、比較的簡単かつ安価に製造することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の太陽電池製造方法では、第1導電性ペーストを流動させることにより第2方向の両側部にエッチングマスクとして機能しない領域を有する第1ベース電極41および第2ベース電極42を形成する。これにより、エッチング工程において、透明電極層30の第1ベース電極41および第2ベース電極42から露出する領域だけでなく第1ベース電極41および第2ベース電極42の両側部に被覆されている領域も除去することができる。これにより、光を反射する面積が大きい第1ベース電極41および第2ベース電極42を形成しても、第1透明電極と第2透明電極とを確実に分離することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、本発明に係る太陽電池は、上述した構成要素以外に、各構成要素間を絶縁する絶縁層、光の反射を抑制する反射防止膜、電極等を保護する保護膜等のさらなる構成要素を備えてもよい。
【0048】
本発明に係る太陽電池製造方法において、エッチング工程の前に焼成を行ってもよい。また、本発明に係る太陽電池製造方法ベース電極形成工程と嵩上電極形成工程との間でエッチング工程をおこなってもよい。また、本発明に係る太陽電池製造方法は、独立した焼成工程を設けず、ベース電極形成工程および嵩上電極形成工程のいずれかまたはそれぞれの工程において乾燥だけでなく焼成まで行ってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 太陽電池
11 半導体基板
21 第1半導体層
22 第2半導体層
30 透明電極層
31 第1透明電極
32 第2透明電極
41 第1ベース電極
42 第2ベース電極
51 第1嵩上電極
52 第2嵩上電極
61 第1配線材
62 第2配線材