(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】クォータガラスウェザストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/777 20160101AFI20240612BHJP
B60J 10/22 20160101ALI20240612BHJP
B60J 10/24 20160101ALI20240612BHJP
【FI】
B60J10/777
B60J10/22
B60J10/24
(21)【出願番号】P 2020052224
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】森 紘亮
(72)【発明者】
【氏名】玉置 清隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊栄
(72)【発明者】
【氏名】羽山 暢夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-164001(JP,A)
【文献】特開平11-147443(JP,A)
【文献】特開2012-131399(JP,A)
【文献】特開2010-083390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/777
B60J 10/22
B60J 10/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クォータガラスに取付けられ、該クォータガラスと、開閉可能なルーフに取付けられるルーフサイドウェザストリップと、ドアガラスとの間をシールするクォータガラスウェザストリップであって、
該クォータガラスウェザストリップは、取付基部と、中空部と、該取付基部の前記ドアガラス側の位置から車外側、且つ前記クォータガラス側に延出するリップ部を有し、
前記クォータガラスウェザストリップの前記ドアガラス側の上縁部には、前記中空部と前記リップ部間の上方空間を遮断すると共に、前記ドアガラスに被さって当接する庇部が形成され、
前記リップ部は、前記庇部の下方において、略Y字状に分岐し、前記ドアガラス側に第2リップ
部が形成され、
前記第2リップ部は、前記リップ部との分岐部において、前記リップ部より車外側に突出していることを特徴とするクォータガラスウェザストリップ。
【請求項2】
前記第2リップ部には、前記ルーフサイドウェザストリップに当接する肉薄のヒレ部が形成されている請求項1に記載のクォータガラスウェザストリップ。
【請求項3】
前記第2リップ部の前記ヒレ部の下方には、肉厚部が形成されている請求項2に記載のクォータガラスウェザストリップ。
【請求項4】
前記ヒレ部の前記ルーフサイドウェザストリップと当接する部分の肉厚は、0.1mm以上、0.3mm以下である請求項2又は請求項3に記載のクォータガラスウェザストリップ。
【請求項5】
前記クォータガラスウェザストリップは、前記クォータガラスウェザストリップの前記上縁部が、前記ドアガラスの後側縦辺部から離れて上昇し、前記ドアガラスの
上縁角部方向に、斜め上方にスライドして前記ドアガラスに当接するタイプの前記クォータガラスに取付けられる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクォータガラスウェザストリップ。
【請求項6】
前記クォータガラスウェザストリップは、前記クォータガラスウェザストリップの前記上縁部が、前記ドアガラスの後側縦辺部から離れて上昇し、前記ドアガラスの上縁角部方向に、斜め上方にスライドして前記ドアガラスに当接するタイプの前記クォータガラスに取付けられ、
前記第2リップ部の前記ヒレ部及び前記肉厚部の先端は、前記クォータガラスの昇降軌道に対して前記ドアガラスの車内側に位置する請求項
3に記載のクォータガラスウェザストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能なルーフを有するコンバーチブル車のクォータガラスに取付けられるクォータガラスウェザストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
開閉可能なルーフを有するコンバーチブル車のクォータガラス(クォータウインドウ)においては、クォータガラスの車両前側の縦辺部に、ドアガラス(サイドガラス)の後側縦辺部と当接してドアガラスの後側縦辺部とクォータガラスの車両前側の縦辺部の間をシールし、且つドアガラスの後側縦辺部の昇降をガイドするクォータガラスウェザストリップが取付けられている。
【0003】
又、クォータガラスウェザストリップの車両前側の上縁部では、クォータガラスウェザストリップと、開閉可能なルーフの側端に沿って車両前後方向に延設されるルーフサイドウェザストリップがドアガラスに対して当接することによりシール構造が形成されている。
【0004】
ところで、ルーフサイドウェザストリップは、ドアガラスの上縁部とクォータガラスウェザストリップの上縁部に当接しているが、ドアガラスとクォータガラスウェザストリップの間の段差のため、この部分に略三角状の隙間が発生し、例えば、高圧洗車等によりドアガラスとクォータガラスウェザストリップの間を下方から水が駆け上がると、この略三角状の隙間から車室内に水が浸入する問題が発生する。
【0005】
我々は、クォータガラスウェザストリップに関し、先に出願した特許文献1において、上記の問題の解決方法として、以下の技術を提案した。
【0006】
特許文献1のクォータガラスウェザストリップ5について、
図1と
図10に基づいて説明する。特許文献1のクォータガラスウェザストリップ500は、本体部510と上縁部520から構成され、共に、取付基部540と、取付基部540から車外側に突出する弧形状を有する中空部550と、取付基部540のドアガラス3側の先端より車外側、且つクォータガラス4側に延出するリップ部560を有している。又、クォータガラスウェザストリップ500のドアガラス3側の上縁部520には、車内側に膨らみを有すると共に、車外側に突出する庇部570が形成されている。
【0007】
そして、クォータガラスウェザストリップ500の庇部570は、ルーフサイドウェザストリップ7によって、上方から押さえられると共に、ドアガラス3によって下方から押えられることにより、ドアガラス3の上部を、車内側から車外側に回り込んで被さるように変形してルーフサイドウェザストリップ7とドアガラス3に当接する。その結果、下方から駆け上がる水が車室内側に浸入することを抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、クォータガラスウェザストリップ500が取付けられたクォータガラス4においては、ドアガラス3の後側縦辺部に沿って昇降するタイプではなく、クォータガラスウェザストリップ500の上縁部520がドアガラス3の後側縦辺部から離れて上昇し、ドアガラス3の上縁角部方向に、斜め上方にスライドして、ドアガラス3に当接するタイプもある。
【0010】
このタイプのクォータガラスウェザストリップ500が取付けられたクォータガラス4では、特にドアガラス3がクォータガラス4よりも先に完全に閉じた位置に到達する場合には、特許文献1の車内側に膨らみを有すると共に、車外側に突出した庇部570を有するクォータガラスウェザストリップ500において、ドアガラス3の上縁角部に当接する時に、庇部570が折れ曲がる、若しくは波打つような異常な変形を生じる現象が発生することがある。
【0011】
その結果、その後にルーフサイドウェザストリップ7に当接した時に、庇部570の上記の異常な変形に伴い、庇部570とドアガラス3との間、庇部570とルーフサイドウェザストリップ7との間に隙間が発生し、下方から駆け上がった水が車室内側に浸入する問題が発生した。
【0012】
ところで、ドアガラス3がクォータガラス4よりも先に完全に閉じた位置に到達する場合には、庇部570より充分下方にある本来の当接開始位置より上方で、クォータガラスウェザストリップ5の上縁部52とドアガラス3の当接が開始される。この時、
図10のクォータガラスウェザストリップ5においては、庇部570は、リップ部56の車内側への変形が少ない状態で、且つ庇部570の途中部分からドアガラス3との当接が開始されることになり、庇部570が所定の変形することができないことが原因と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、クォータガラスに取付けられ、クォータガラスと、開閉可能なルーフに取付けられるルーフサイドウェザストリップと、ドアガラスとの間をシールするクォータガラスウェザストリップであって、クォータガラスウェザストリップは、取付基部と、中空部と、取付基部のドアガラス側の位置から車外側、且つクォータガラス側に延出するリップ部を有し、クォータガラスウェザストリップのドアガラス側の上縁部には、中空部とリップ部間の上方空間を遮断すると共に、ドアガラスに被さって当接する庇部が形成され、リップ部は、庇部の下方において、略Y字状に分岐し、ドアガラス側に第2リップ部が形成され、第2リップ部は、リップ部との分岐部において、リップ部より車外側に突出していることを特徴とするクォータガラスウェザストリップである。
【0014】
請求項1の本発明では、クォータガラスウェザストリップのドアガラス側の上縁部には、中空部とリップ部間の上方空間を遮断する庇部が形成されているので、クォータガラスウェザストリップの上端部が、ドアガラスの後側縦辺部から離れて上昇し、ドアガラスの上縁角部方向に、斜め上方にスライドしてドアガラスに当接するタイプにおいて、ドアガラスがクォータガラスよりも先に完全に閉じた位置に到達した場合ドであっても、庇部は、ドアガラスの後側上縁角部の車内側にスムーズに入り込み、ドアガラスに被さるように変形する。その結果、庇部に異常な変形は発生しない。
【0015】
又、ドアガラスに被さる庇部がルーフサイドウェザストリップによって、上方から押さえられると共に、ドアガラスによって下方から押えられることにより、クォータガラスウェザストリップの庇部が、ルーフサイドウェザストリップとドアガラスに当接する。その結果、下方から駆け上がる水を庇部でブロックし、中空部とリップ部間の空間を利用して、水を下方に戻すことができるので車室内側に浸入することを抑制することができる。
【0017】
又、リップ部は、庇部の下方において、略Y字状に分岐し、ドアガラス側に第2リップ部が形成されているので、下方から駆け上がる水の力が強く、庇部を乗り越えた場合であっても、第2リップ部によって、水が車室内側に浸入することを抑制することができる。
【0019】
又、第2リップ部は、リップ部との分岐部において、リップ部より車外側に突出しているので、水が庇部を乗り越えて第2リップ部側に侵入した場合に、第2リップ部とリップ部との段差を利用して、水を中空部とリップ部間の空間に戻すことができる。
【0020】
請求項2の本発明は、第2リップ部には、ルーフサイドウェザストリップに当接する肉薄のヒレ部が形成されているクォータガラスウェザストリップである。
【0021】
請求項2の本発明では、第2リップ部には、ルーフサイドウェザストリップに当接する肉薄のヒレ部が形成されているので、水の力が更に強く、水が第2リップ部を乗り越え、クォータガラスウェザストリップとルーフサイドウェザストリップとの当接部側に進行した場合であっても、クォータガラスウェザストリップが、そのヒレ部によってルーフサイドウェザストリップの形状に追従するように変形してルーフサイドウェザストリップに当接する。
【0022】
その結果、クォータガラスウェザストリップとルーフサイドウェザストリップとを確実にシールすることができるので、クォータガラスウェザストリップとルーフサイドウェザストリップの間から水が車室内側に浸入することを防止することができる。
【0023】
請求項3の本発明は、第2リップ部のヒレ部の下方には、肉厚部が形成されているクォータガラスウェザストリップである。請求項3の本発明では、第2リップ部のヒレ部の下方には、肉厚部が形成されているので、肉薄のヒレ部の下方領域の剛性が確保され、ヒレ部及び肉厚部をドアガラスの上縁角部の車内側に確実に潜り込ませることができる。
【0024】
請求項4の本発明は、クォータガラスのヒレ部のルーフサイドウェザストリップと当接する部分の肉厚は、0.1mm以上、0.3mm以下であるクォータガラスウェザストリップである。
【0025】
請求項4の本発明では、ヒレ部のルーフサイドウェザストリップと当接する部分の肉厚は、0.3mm以下であるので、ヒレ部の厚さは非常に薄く、クォータガラスウェザストリップが、そのヒレ部によってルーフサイドウェザストリップに当接する時に、ルーフサイドウェザストリップの形状に追従して変形することができ、ヒレ部とルーフサイドウェザストリップ間を確実にシールし、水が車室内側に浸入することを防止することができる。
【0026】
なお、ヒレ部のルーフサイドウェザストリップと当接する部分の肉厚が、0.3mmを越えると、ルーフサイドウェザストリップの形状への追従性が低下して、ヒレ部のルーフサイドウェザストリップ間に隙間が発生する可能性が増加する。その結果、水が車室内側に浸入する可能性があり、好ましくない。
【0027】
又、0.1mm未満の場合は、成形時に材料が先端部まで流れきれず、形状欠けが発生する。その結果、形状欠けが発生した部分、すなわち、本来あるべきヒレ部が欠けた部分の厚みは逆に厚くなり、ルーフサイドウェザストリップの形状への追従性が低下する。
【0028】
請求項5の本発明は、クォータガラスウェザストリップは、クォータガラスウェザストリップの上端部が、ドアガラスの後側縦辺部から離れて上昇し、ドアガラスの上縁角部方向に、斜め上方にスライドしてドアガラスに当接するタイプのクォータガラスに取付けられるクォータガラスウェザストリップである。
【0029】
請求項5の本発明では、クォータガラスウェザストリップは、クォータガラスウェザストリップの上端部が、ドアガラスの後側縦辺部から離れて上昇し、ドアガラスの上縁角部方向に、斜め上方にスライドしてドアガラスに当接するタイプのクォータガラスに取付けられるので、ドアガラスがクォータガラスよりも先に完全に閉じた位置に到達した場合であっても、庇部は、ドアガラスの後側上縁角部の車内側にスムーズに入り込み、ドアガラスに被さるように変形する。その結果、庇部に異常な変形は発生せず、下方から駆け上がる水を庇部で受止め、車室内側に浸入することを抑制することができる。
【0030】
請求項6の本発明は、クォータガラスウェザストリップは、クォータガラスウェザストリップの上縁部が、ドアガラスの後側縦辺部から離れて上昇し、ドアガラスの上縁角部方向に、斜め上方にスライドしてドアガラスに当接するタイプのクォータガラスに取付けられ、第2リップ部のヒレ部及び肉厚部の先端は、クォータガラスの昇降軌道に対してドアガラスの車内側に位置するクォータガラスウェザストリップである。
【0031】
請求項6の本発明では、第2リップ部のヒレ部及び肉厚部の先端は、クォータガラスの昇降軌道に対してドアガラスの車内側に位置するので、ヒレ部及び肉厚部をドアガラスの上縁角部の車内側に確実に潜り込ませることができる。
【発明の効果】
【0032】
クォータガラスウェザストリップのドアガラス側の上縁部には、中空部とリップ部間の空間を遮断する庇部が形成されているので、クォータガラスウェザストリップの上端部が、ドアガラスの後側縦辺部から離れて上昇し、ドアガラスの上縁角部方向に、斜め上方にスライドしてドアガラスに当接するタイプにおいて、ドアガラスがクォータガラスよりも先に完全に閉じた位置に到達した場合であっても、庇部は、ドアガラスの後側上縁角部の車内側にスムーズに入り込み、ドアガラスに被さるように変形する。その結果、庇部に異常な変形は発生しない。
【0033】
又、ドアガラスに被さる庇部がルーフサイドウェザストリップによって、上方から押さえられると共に、ドアガラスによって下方から押えられることにより、クォータガラスウェザストリップの庇部が、ルーフサイドウェザストリップとドアガラスに当接する。その結果、下方から駆け上がる水を庇部でブロックし、中空部とリップ部間の空間を利用して、水を下方に戻すことができるので車室内側に浸入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】開閉可能なルーフを備えた車両の側面図である。
【
図3】(a)は、本発明の実施形態に用いるクォータガラスウェザストリップの上縁部付近の斜視図(下方は断面)であり、(b)は、
図2におけるクォータガラス及びドアガラスとの位置関係を示す斜視図である。
【
図8】クォータガラスが上昇する時のドアガラスと、クォータガラスウェザストリップが取付けられたクォータガラスとの関係を示す車内側から見た斜視図である。
【
図10】背景技術のクォータガラスウェザストリップの上縁部付近の斜視図(下方は断面)である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態について
図1から
図9に基づき説明する。
図1で示される車両はコンバーチブル車であり、車体1は、ハードタイプのルーフを備え、2サイドドア、2列、4座タイプである。ただし、このタイプに限定されるものではない。なお、本実施形態の車体構造は、左右対称または左右略対称であり、図面では車両右側のみを示している。
【0036】
ここで、「コンバーチブル」とは、屋根がないか、もしくは屋根が開放可能な乗用自動車を指す言葉であり、ロードスター(Roadster )、ドロップヘッドクーペ(Drophead Coupe )、カブリオレ・カブリオレット(Cabriolet / Kabriolett )、カブリオ (Cabrio )と同義である。また、格納可能若しくは取り外し可能なルーフには、樹脂製のハードタイプと布製の幌を用いたソフトタイプが含まれる。
【0037】
したがって、以下に説明する本実施形態は、ハードタイプのルーフを対象にしているが、本発明は、布製の幌を用いたソフトタイプにも、当然に適用されるものである。
【0038】
フロントピラー10の後部には、車室が形成されており、ドアガラス3を備えたドア2を開閉すべく構成されている。また、ドアガラス3の後方にはクォータガラス4が、リアフェンダ8の車内側内部に上下に可動に組み込まれている。
【0039】
図1に示すように、車室の上方は、前席用ルーフに該当するフロントルーフ11、後席用ルーフに該当するリヤルーフ81、リヤガラス82を有するガラスユニット83と、フロントルーフ11、リヤルーフ81およびガラスユニット83を格納する格納部84を有している。フロントルーフ11、リヤルーフ81およびガラスユニット83が格納部84内に折りたたまれる形で格納されると車室上方には、開放された空間ができる。
【0040】
車幅方向における、フロントルーフ11とリヤルーフ81との隙間,リヤルーフ81とガラスユニット83との隙間、ガラスユニット83と格納部84との隙間は、それぞれルーフ間ウェザストリップ6、6、6でシールされている。一方、フロントルーフ11とドアガラス3との当接部、リヤルーフ81とクォータガラス4と後述するクォータガラスウェザストリップ5との当接部は、ルーフサイドウェザストリップ7、7でシールされている。
【0041】
なお、ルーフの分割部分や分割数は、上記と異なる場合でもよく、又、フロントルーフ11、リヤルーフ81およびガラスユニット83を一体にして製作し、取り外し式にしてもよい。又、布製の幌を用いたソフトタイプのルーフにおいても、折り畳み式や取り外し式であってもよい。
【0042】
クォータガラス4の車両前側の縦辺部40には、ドアガラス3の後側縦辺部32(
図8)に当接して、ドアガラス3の後側縦辺部32とクォータガラス4の前側の縦辺部40をシールするクォータガラスウェザストリップ5が取付けられている。そして、クォータガラス4に取付けられたクォータガラスウェザストリップ5は、クォータガラス4と共に昇降する。
【0043】
クォータガラスウェザストリップ5が取付けられたクォータガラス4は、クォータガラスウェザストリップ5の上縁部52(
図3(a))が、ドアガラス3の後側縦辺部32から離れて上昇し、ドアガラス3の上縁角部31方向に、斜め上方にスライドしてドアガラス3に当接するタイプである(
図8)。なお、クォータガラス4が下降する時は、上記の逆方向に移動する。
【0044】
クォータガラスウェザストリップ5は、
図3(a)に示すように、本体部51と上縁部52から構成され、クォータガラス4の前側の縦辺部40に取付けられる。本体部51は、ドアガラス3と、上縁部52は、ドアガラス3とルーフサイドウェザストリップ7に当接する。本体部51は、押出し成形法により成形され、上縁部52は型成形法により成形される。そして、上縁部52を型成形する時に、接続部53で、本体部51と上縁部52が接続される。
【0045】
クォータガラスウェザストリップ5の本体部51と上縁部52は共に、取付基部54と、取付基部54から車外側に突出する凸状の弧形状を有する中空部55と、取付基部54のドアガラス3側の先端より車外側、且つクォータガラス4側に延出するリップ部56を有している。
【0046】
又、クォータガラスウェザストリップ5の上縁部52には、上縁部52の上方端部において、中空部55の車外側とリップ部56の車外側を連結し、中空部55とリップ部56の間の上方空間を遮断する庇部57が形成されている。なお、庇部57がドアガラス3の上縁角部31に当接した時に変形し易くするため、庇部57に接続するリップ部56の上端部分を細く形成して庇部57に接続してもよい。
【0047】
リップ部56には、庇部57の下方の分岐部63において、車両前方方向にY字状に分岐した第2リップ部60が形成されている。又、分岐部63において、第2リップ部60は、リップ部56より車外側に突出している。
【0048】
又、第2リップ部60には、ルーフサイドウェザストリップ7に当接する領域に、肉薄のヒレ部61が形成されている。なお、ヒレ部61は、先端方向(車両前方方向)に先細り形状であり、ルーフサイドウェザストリップ7と当接する先端部分の厚さは、0.2mmである。
【0049】
さらに、第2リップ部60には、ヒレ部61の下方に肉厚部62が形成されている。なお、肉厚部62も、先端方向(車両前方方向)と斜め下方に先細り形状になっている。
【0050】
又、
図9に示すように、クォータガラスウェザストリップ5をクォータガラス4に取付けた時、第2リップ部60のヒレ部61及び肉厚部62の先端は、クォータガラス4の昇降軌道に対してドアガラス3の車内側に位置するようになっている。
【0051】
クォータガラスウェザストリップ5は、材料としてEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を用い、本体部51の中空部55には、EPDMのスポンジ材を、本体部51の他の部分と上縁部52には、EPDMのソリッド材を用いた。クォータガラスウェザストリップ5は、取付基部54でクォータガラス4に、例えば、接着剤を用いて取付けられる。
【0052】
図2は、
図1におけるクォータガラスウェザストリップ5と、リヤルーフ81とドアガラス3が当接した時の側面図であり、
図1におけるX部の拡大図である。又、
図3(b)は、
図2におけるクォータガラスウェザストリップ5と、クォータガラス4及びドアガラス3との位置関係を示す斜視図である。
【0053】
図4に示すように、ドアガラス3は、クォータガラスウェザストリップ5のリップ部56を車外側から乗り越えて変形させると共に、ドアガラス3の後側縦辺部32が、クォータガラスウェザストリップ5の中空部55を車内側に変形させて当接しており、クォータガラスウェザストリップ5のリップ部56と中空部55によって、ドアガラス3との間をシールしている。
【0054】
クォータガラスウェザストリップ5の上縁部52が、ルーフサイドウェザストリップ7とドアガラス3が当接した時には、クォータガラスウェザストリップ5の庇部57は、ルーフサイドウェザストリップ7によって上方から押さえられ、さらに、クォータガラスウェザストリップ5の庇部57は、ドアガラス3によって下方から押さえられる。
【0055】
この時、
図5に示すように、クォータガラスウェザストリップ5の庇部57は、ドアガラス3によって変形し、ドアガラス3に被さるように当接する。又、庇部57の車内側ではドアガラス3と密着する。さらに、クォータガラスウェザストリップ5の車内側と上方、ドアガラス3の車外側は、ルーフサイドウェザストリップ7に当接する。
【0056】
図6に示すように、クォータガラスウェザストリップ5の上方の端部近傍では、ドアガラス3の上縁角部31に対して、リップ部56に加え、第2リップ部60でもシールされている。
【0057】
又、
図7に示すように、クォータガラスウェザストリップ5が、ドアガラス3に加え、ルーフサイドウェザストリップ7にも当接する部分では、第2リップ部60に形成された肉薄のヒレ部61でシールされている。
【0058】
図8に示すように、クォータガラスウェザストリップ5が取付けられたクォータガラス4は、クォータガラスウェザストリップ5の上縁部52が、ドアガラス3の後側縦辺部32から離れて上昇し、ドアガラス3の上縁角部31方向に、斜め上方、すなわち、矢印方向にスライドしてドアガラス3に当接する。
【0059】
この時、
図9に示すように、第2リップ部60のヒレ部61及び肉厚部62の先端は、クォータガラス4の昇降軌道に対してドアガラス3の車内側に位置しているので、ヒレ部61及び肉厚部62をドアガラス3の上縁角部31の車内側に確実に潜り込ませることができ、その後、クォータガラスウェザストリップ5をドアガラス3(及びルーフサイドウェザストリップ7)に当接させることができる。
【0060】
本実施形態において、高圧洗車等によりドアガラス3とクォータガラスウェザストリップ5の浸入した水が、下方から駆け上がった時の車内側への水の侵入抑制について以下に説明する。
【0061】
ドアガラス3とクォータガラスウェザストリップ5の浸入した水は、
図3において、クォータガラスウェザストリップ5の中空部55とリップ部56間の上方空間を遮断すると共に、ドアガラス3に被さって当接する庇部57によってブロックされる。なお、庇部57は、ドアガラス3との当接により変形するが、中空部55とリップ部56間の上方空間を遮断機能は維持されている。
【0062】
庇部57によって行く手を遮断された水は、中空部55とリップ部56間の空間を利用して、下方に戻すことができる。
【0063】
しかしながら、下方から駆け上がる水の力が強い場合は、庇部57を乗り越えることが想定される。この場合、ドアガラス3側には、第2リップ部60が形成されているので、第2リップ部60によって、庇部57を乗り越えた水が車室内側に浸入することを抑制することができる。
【0064】
又、第2リップ部60は、リップ部56との分岐部63において、リップ部56より車外側に突出しているので、第2リップ部60とリップ部56との段差を利用して、庇部57を乗り越えた水を中空部55とリップ部56間の空間にスムーズに戻すことができる。なお、庇部57を乗り越えた水の止水のみを目的とする場合は、分岐部63における第2リップ部60のリップ部56より車外側への突出は形成しなくてもよい。
【0065】
一方、庇部57を乗り越えた水の力が更に強い場合は、庇部57を乗り越えた水が、略Y字状の分岐部63方向とクォータガラスウェザストリップ5とルーフサイドウェザストリップ7との当接部方向に向かうことが想定される。
【0066】
この場合は、クォータガラスウェザストリップ5が、そのヒレ部61によってルーフサイドウェザストリップ7の形状に追従して当接しているので、クォータガラスウェザストリップ5とルーフサイドウェザストリップ7の間から水が車室内側に浸入することはない。
【0067】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0068】
本発明の実施形態では、クォータガラスウェザストリップ5は、材料としてEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を用いて作製したが、例えば、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)を用いて作製してもよい。
【0069】
本発明の実施形態では、クォータガラスウェザストリップ5は、取付基部54でクォータガラス4に接着剤を用いて取付けたが、クォータガラスウェザストリップ5を固定する部材、例えば、リテーナなどにクォータガラスウェザストリップ5を取付け、クォータガラス4をクォータガラスウェザストリップ5と上記の固定する部材で挟み込むようにして固定してもよい。
【0070】
本発明の実施形態では、リップ部56の第2リップ部60との分岐部63において、第2リップ部60を庇部57より車外側に突出するように形成したが、第2リップ部60とリップ部56を車外側で同一面とし、リップ部56において、第2リップ部60との分岐部63の庇部57側に凹部を形成し、この凹部を利用して、庇部57を乗り越え、第2リップ部60に侵入した水を下方の中空部55とリップ部56間の空間に戻すようにしてもよい。
【0071】
本実施形態では、ドアガラス3とクォータガラスウェザストリップ5間から浸入した水が、下方から駆け上がる対策として、庇部57、第2リップ部60(ヒレ部61、肉厚部62)について記載したが、第2リップ部60を形成しない庇部57のみであってもよい。
【0072】
本発明の実施形態は、クォータガラス4が、ドアガラス3の後側縦辺部32から離れて上昇し、ドアガラス3の上縁角部31方向に、斜め上方にスライドしてドアガラス3に当接するタイプについて説明したが、本発明は、クォータガラスウェザストリップ5が取付けられたクォータガラス4が、ドアガラス3の後側縦辺部32に沿って、昇降するタイプにも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 車体
3 ドアガラス
4 クォータガラス
5 クォータガラスウェザストリップ
7 ルーフサイドウェザストリップ
51 本体部
52 上縁部
53 接続部
54 取付基部
55 中空部
56 リップ部
57 庇部
60 第2リップ部
61 ヒレ部
62 肉厚部
63 分岐部